(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858413
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】偶発的なターンオンを防止する受動素子を備える二重ベース接続バイポーラトランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/06 20060101AFI20210405BHJP
H01L 21/331 20060101ALI20210405BHJP
H01L 29/732 20060101ALI20210405BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20210405BHJP
H01L 21/8222 20060101ALI20210405BHJP
H01L 21/8248 20060101ALI20210405BHJP
H01L 21/8249 20060101ALI20210405BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20210405BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
H01L27/06 101P
H01L29/72 P
H01L29/44 Y
H01L27/06 101D
H01L27/06 101U
H01L27/06 321B
H01L27/06 321H
H01L27/04 H
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-548742(P2018-548742)
(86)(22)【出願日】2016年12月30日
(65)【公表番号】特表2019-512885(P2019-512885A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】US2016069618
(87)【国際公開番号】WO2017160380
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年12月26日
(31)【優先権主張番号】62/308,660
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515358931
【氏名又は名称】アイディール パワー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ウィリアム シー.
【審査官】
市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0375287(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104919595(CN,A)
【文献】
特開平09−139521(JP,A)
【文献】
特開昭58−223364(JP,A)
【文献】
特開昭61−263316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/06
H01L 21/331
H01L 21/822
H01L 21/8222
H01L 21/8248
H01L 21/8249
H01L 27/04
H01L 29/41
H01L 29/732
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路であって、
第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域を第2導電型半導体ダイの第1及び第2のそれぞれの表面上に備え、第1及び第2エミッタ接合と、前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第1ベース接触領域と、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第2ベース接触領域と、を個別に規定し、両方のベース接触領域が、前記第2導電型半導体ダイに対してオーミック接触を個別に形成する、電力半導体デバイスと、
オンの場合に、前記第1ベース接触領域を前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第1駆動トランジスタ、及び、オンの場合に、前記第2ベース接触領域を前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第2駆動トランジスタと、
電圧スルーレートを前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域にわたって電気的に接続して、エミッタ側駆動トランジスタを作動させ、エミッタ作動領域と、該エミッタ作動領域に対応する前記ベース接触領域との間の電圧を制限するように動作可能に接続された過渡結合回路と、
を備え、
前記エミッタ作動領域は、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちどちらかエミッタになっている方に対応し、
前記エミッタ側駆動トランジスタは、前記第1駆動トランジスタ及び前記第2駆動トランジスタのうちの、前記エミッタ作動領域に接続される方に対応し、
前記スイッチング回路は、さらに、
導通のターンオン及びターンオフを制御するために前記第1及び第2ベース接触領域を独立して駆動し、前記第1駆動トランジスタ及び第2駆動トランジスタが前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちの少なくとも1つを、該少なくとも1つに対応するベース接触領域に接続するスイッチング位相を含む、制御回路と、
を備え、
前記第1エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第1エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限され、前記第2エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第2エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限されることにより、前記制御回路が作動しない場合に漏れ電流が増幅されず、ブレークダウン電圧が漏れ電流の増幅により低下しない、
スイッチング回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング回路であって、
前記第2導電型半導体ダイは、シリコンである、
スイッチング回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチング回路であって、
前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域は、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第1の前記表面上の前記ベース接触領域は、前記第2導電型半導体ダイ自体を通ることを除き、前記第2の前記表面上の前記ベース接触領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項5】
スイッチング回路であって、
第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域を第2導電型半導体ダイの第1及び第2のそれぞれの表面上に備え、第1及び第2エミッタ接合と、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域とそれぞれ同一の2つの表面上の第1及び第2ベース接触領域とを個別に規定し、両方のベース接触領域が、前記第2導電型半導体ダイに対して、オーミック接触を個別に形成する、電力半導体デバイスと、
オンの場合に、前記第1ベース接触領域を前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第1駆動トランジスタ、及び、オンの場合に、前記第2ベース接触領域を、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第2駆動トランジスタと、
コレクタ作動領域から電圧スルーレートを電気的に接続して、反対側駆動トランジスタを作動させる過渡結合回路と、
を備え、
前記コレクタ作動領域は、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちのコレクタ側の方に対応し、
前記反対側駆動トランジスタは、前記第1駆動トランジスタ及び前記第2駆動トランジスタのうちの、反対側領域に接続される方に対応し、
前記反対側領域は、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちの前記コレクタ作動領域とは異なる方に対応し、
前記スイッチング回路は、さらに、
前記第1及び第2ベース接触領域を独立して駆動し、前記第1駆動トランジスタ及び/または前記第2駆動トランジスタが、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちの少なくとも1つを、該少なくとも1つに対応する前記ベース接触領域に接続するスイッチング位相を含む、制御回路と、
を備え、
前記第1エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第1エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下よりも低くなるように制限され、前記第2エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第2エミッタ接合の固有の前記順方向ダイオード電圧降下よりも低く制限される、
スイッチング回路。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチング回路であって、
前記第2導電型半導体ダイは、シリコンである、
スイッチング回路。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のスイッチング回路であって、
前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域は、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第1の前記表面上の前記ベース接触領域は、前記第2導電型半導体ダイ自体を通ることを除き、前記第2の前記表面上の前記ベース接触領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項9】
スイッチング回路であって、
第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域を第2導電型半導体ダイのそれぞれの表面上に備え、第1及び第2エミッタ接合と、前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第1ベース接触領域と、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第2ベース接触領域と、を個別に規定し、両方のベース接触領域が、前記第2導電型半導体ダイに対してオーミック接触を個別に形成する、電力半導体デバイスと、
オンの場合に、前記第1ベース接触領域を前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第1駆動トランジスタ、及び、オンの場合に、前記第2ベース接触領域を前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第2駆動トランジスタと、
少なくとも1つの直列抵抗を備え、電圧スルーレートを前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域にわたって電気的に接続して、エミッタ側駆動トランジスタを作動させ、エミッタ作動領域と、該エミッタ作動領域に対応する前記ベース接触領域との間の電圧を制限するように動作可能に接続された過渡結合回路と、
を備え、
前記エミッタ作動領域は、前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちどちらかエミッタになっている方に対応し、
前記エミッタ側駆動トランジスタは、前記第1駆動トランジスタ及び前記第2駆動トランジスタのうちの、前記エミッタ作動領域に接続される方に対応し、
前記スイッチング回路は、さらに、
導通のターンオン及びターンオフを制御するために前記第1及び第2ベース接触領域を独立して駆動し、前記第1駆動トランジスタ及び第2駆動トランジスタが前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域のうちの少なくとも1つを、該少なくとも1つに対応するベース接触領域に接続するスイッチング位相を含む、制御回路と、
を備え、
前記第1エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第1エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限され、前記第2エミッタ接合上の順方向電圧が、前記第2エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限されることにより、前記制御回路が作動しない場合に漏れ電流が増幅されず、ブレークダウン電圧が漏れ電流の増幅により低下しない、
スイッチング回路。
【請求項10】
請求項9に記載のスイッチング回路であって、
前記第2導電型半導体ダイは、シリコンである、
スイッチング回路。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のスイッチング回路であって、
前記第2導電型半導体ダイ自体を通ることを除き、前記第1の第1導電型エミッタ/コレクタ領域は、前記第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第1の前記表面上の前記ベース接触領域は、前記第2導電型半導体ダイ自体を通ることを除き、前記第2の前記表面上の前記ベース接触領域に電気的に接続されない、
スイッチング回路。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域は両方ともn型である、
スイッチング回路。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第2導電型半導体ダイはp型である、
スイッチング回路。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記第1及び第2ベース接触領域は両方ともp型である、
スイッチング回路。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1項に記載のスイッチング回路であって、
前記過渡結合回路は、いかなる直列接続された能動デバイスも含まない
スイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[相互参照]
優先権が、米国仮出願第62/308,660号から主張され、この米国仮出願が、参照により本明細書に援用される。
[背景]
本出願は、バイポーラ導通を用いる半導体スイッチに関し、より具体的には、2つのベース接続を用いるバイポーラトランジスタに関する。
【0002】
以下で説明される点は、開示された発明から得られる後知恵を反映している可能性があり、必ずしも従来技術であると認められないことに留意されたい。
(参照によりその全体が本明細書に援用される)米国出願公開第2014−0375287号は、(特に)「B−TRAN」として知られる新たな双方向バイポーラトランジスタを開示する。B−TRANデバイス及びその動作モードのさらなる改良が、出願第14/937,814号及び第14/882,316号にて開示されている。
【0003】
B−TRANの1つの例示的な実施形態が
図1Bに見られる。ダイの2つの表面は、本質的に同一であることに留意されたい。
サンプル回路記号が
図2に示されている。この回路記号は、2つのベース接続が示されていることを除いては、バイポーラ接合トランジスタの回路記号に類似する。この回路記号は、2つの異なるベース接触領域が、ダイの2つの表面上に配置されているという
図1Bのデバイス構造に対応している。
【0004】
図3は、親出願において広範囲に説明されたような、B−TRAN駆動回路の1つの例示的実施形態を示す。
図4は、B−TRANの別の例示的実施形態を示す。本実施形態において、トレンチは、フィールドプレートを含み、フィールドプレートへの静電結合は、垂直方向の周辺電圧勾配を滑らかにすることに役立つ。
【0005】
BTRANの好ましい動作モードは、驚くほど複雑である。双方向デバイスにおいて、確実に高いバイポーラゲインを達成するために、親出願は、以下の動作段階が用いられうると教示する。
【0006】
ターンオン時、電流の初期の流れは、バイポーラトランジスタ動作が始まる前の「ダイオードモード」にて生じることができる。ダイオードモードにおいて、デバイス間の電圧降下は、(言うまでもなく)少なくともダイオード電圧降下であり、しかし、ベース電流駆動が適用される場合、順方向電圧降下は、数百ミリボルトに減少しうる。
【0007】
ターンオフ時、ベース電流がまず停止されて、デバイスは再びダイオードとして動作する。その後、デバイスは、2つの接合のうちの1つが逆方向バイアスされて電流を阻止する「能動オフ」モードにされうる。
【0008】
親出願において教示されるさらなる驚くべきモードは、「受動オフ」モードである。完全に双方向のデバイスの問題は、バイポーラゲインが、オフ状態において、電流の阻止を妨げうることである。これを回避するために、デバイスのいずれかの表面上のエミッタ接合が、あらゆる顕著な順方向バイアスを避けるようにクランプされる。(適切には、ここで言及される「エミッタ接合」は、(典型的にはn型)エミッタ/コレクタ領域のいずれかと、(典型的にはp型)基板と、の間の接合である。)エミッタ接合がターンオンすることを十分に防ぐことにより、少数キャリアの注入は制限され、バイポーラトランジスタのゲインは、ブレークダウン電圧を低下させない。
【0009】
本出願は、B−TRANのようなデバイスのための「受動オフ」保護を提供することに対する新たなアプローチを開示する。たとえ制御回路構成が作動しなくても、AC結合は、外部端子の過渡電圧を用いて、エミッタ接合に順方向バイアスがかかることを防止する。それゆえに、トランジスタのゲインは、デバイスがオフの場合にブレークダウン電圧を下げることを自動的に防止される。好ましくは、デバイスの各表面は、ベース接触領域及びエミッタ/コレクタ領域を備え、外部から印加される電圧の極性は、2つのエミッタ/コレクタ領域のいずれがエミッタとして作用することになり、いずれがコレクタとして作用することになるかを決定することになる。受動ターンオフ回路は、各ベース接触領域を、隣接するエミッタ/コレクタ領域からのダイオード電圧降下よりも低くクランプし、その結果、バイポーラトランジスタの動作が回避される。
【0010】
新たな受動オフ回路構成は、例えばパワーパケットスイッチング(PPSA)コンバータなどのようなソフトスイッチされるアプリケーションにおいて、特に(しかし、それだけではなく)有利である。
【0011】
開示される発明が、添付図面を参照して説明され、添付図面は、重要な例示的実施形態を示し、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】過渡の増幅によるブレークダウン電圧の低下を回避する「受動オフ」回路構成を備える、B−TRANスイッチング回路の例を示す。
【
図1B】B−TRANの1つの例示的実施形態を示す。
【
図2】B−TRANのためのサンプル回路記号を示す。
【
図3】B−TRAN駆動回路の1つの例示的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[例示的実施形態の詳細な説明]
本出願の多数の革新的な教示は、(限定としてではなく、例としての)現在の好ましい実施形態を特に参照して説明される。本出願は、いくつかの発明を説明するが、以下の記述のいずれも、概して、請求項を限定するものとして捉えられるべきではない。
【0014】
本出願は、米国出願公開第2014−0375287号に記載されている受動オフモードの新たな実施を説明する。
本出願は、B−TRANのようなデバイスのための「受動オフ」保護を提供することに対する新たなアプローチを開示する。たとえ制御回路構成が作動しなくても、AC結合は、外部端子の過渡電圧を用いて、エミッタ接合に順方向バイアスがかかることを防止する。
【0015】
図1Aの例示的な回路は、外部電圧がコレクタ−エミッタ間(Vce)に印加された場合に、ベース制御電源が有効となる前に、eベースをエミッタに短絡させ、B−TRANが、印加されたVceを阻止することを可能とする。
【0016】
新たな受動オフ回路構成は、例えばパワーパケットスイッチング(PPSA)コンバータなどのような、ソフトスイッチされるアプリケーションに特に適用できる。ハードスイッチされるアプリケーションのために、コンデンサC1は、スイッチング速度を遅らせることになる。半導体スイッチを(または機械的なリレーをも)備える電圧制限回路は、このようなアプリケーションにおいて、より有利となり得る。
【0017】
デバイス101は、「B−TRAN」型トランジスタ、つまり、個別に動作される2つのベース接触領域を備えるバイポーラトランジスタである。デバイス101は、両方向で電圧阻止及び電流導通が可能な、完全に双方向性のデバイスである。本例においては、B−TRAN101は、npnデバイス、つまり、エミッタ/コレクタ領域はn型、基板はp型、さらに、ベース接触領域はp型、であると仮定される。(他のデバイス構造もまた存在しうる。)
本例では、ページ最上部の外部端子がハイになり始め、制御回路構成は作動していないと仮定する。これにより、接続部EC2はコレクタ端子となり、接続部EC1はエミッタ端子となることになる。したがって、接続部B1はeベースとして動作し、接続部B2はcベースとして動作する。
【0018】
いくつかの電荷は必然的に移動して、導通を阻止するために必要とされる空乏領域を形成することになる。しかしながら、課題は、ブレークダウン電圧を低下させるであろうエミッタ側のいかなるゲインをも回避することである。エミッタ接合(EC1/B1)における電圧は、それゆえに、ダイオード電圧降下よりも低く維持されなければならない。
【0019】
抵抗R1は、デバイスが完全にパワーダウンされた場合に、コンデンサC1をゼロ電圧に維持する。端子EC2が正になり始めると、C1を介して電流が流れ、MOSトランジスタQ5及びQ6のゲートをハイにプルすることになる。MOSトランジスタQ5及びQ6のゲートをハイにプルすることでMOSトランジスタQ5及びQ6をオンし、eベース端子(この時点ではB1)をエミッタ(この時点ではEC1)の方へプルする。
【0020】
ダイオードモード及び事前ターンオフモードに用いられる、MOSトランジスタQ3+Q4及びQ5+Q6は、ここでは、受動オフ回路構成の一部としても用いられることに留意されたい。これは、B−TRANデバイスの動作に関する先の出願に開示されている受動オフ回路構成とは著しく異なる。
【0021】
抵抗R2は、pチャネルMOSトランジスタQ1及びQ2のゲートを共に接続することにも留意されたい。この分岐回路は、Q5及びQ6がターンオンしている間、トランジスタQ3及びQ4をオフに維持することに役立つ。
【0022】
本出願は、米国出願公開第2014−0375287号に記載されている受動オフモードの新たな実施を説明する。
図5は、受動オフ機能の代替の回路実現を示す。(WO2014/210072の
図12に対応する
図3においてJFETとして実装されている)常時オンスイッチが、抵抗器に置き替えられている。
【0023】
常時オンスイッチを置き換える抵抗器の選択においては、オン状態の挙動及びオフ状態の挙動のバランスがとられなければならない。受動オフモードにおけるブレークダウン電圧は、大幅にゲインを低下させない一方で、十分に高くなければならない。
【0024】
B−TRANは、eベース(エミッタ側のベース)がエミッタに短絡され、cベース(コレクタ側のベース)が開放されている場合、「能動オフ状態」にある。NPN B−TRANのこの状態においては、コレクタがアノード(高電圧側)であり、エミッタが、カソード(低電圧側)である。
【0025】
B−TRANは、両方のベースが開放されている場合もまたオフであるが、この状態におけるB−TRANの高いゲインにより、ブレークダウン電圧は低い。それぞれのエミッタ/コレクタ上の各ベースの間に取り付けられる、(以前のバージョンとして
図3に示されている)常時オンJFET及びショットキーダイオード、または、(本明細書での教示として
図5に示されている)抵抗器及びショットキーダイオードの直列の組み合わせが、以前に開示されたように、この「受動オフ状態」において、阻止電圧を大幅に上昇させることになる。JFETは、もし存在するのであれば、通常動作中はオフされる。
【0026】
ターンオンのための1つの有利な例示的方法は、能動オフ状態で順方向電圧が阻止されているところから、cベースをコレクタに短絡しながら、同時に、eベースのエミッタへの短絡を開放することである。これにより、電荷キャリアがコレクタ/ベース接合の周囲の空乏領域の最も高いフィールド領域へ即座に導入されて、IGBTターンオンに非常に類似する、ハードスイッチングのための非常に高速な順方向バイアスでのターンオンが達成される。
【0027】
能動オフ状態からの他の有利な例示的ターンオン方法は、B−TRANを含む回路にB−TRANの極性を反転させることで、ハードターンオン方法において説明されたのと同一のベース状態であるがゼロ電圧に近い状態を作り出すことである。つまり、B−TRAN電圧が能動オフ状態の極性から反転すると、エミッタに短絡されたeベースは、コレクタに短絡されたcベースになる。そして、この場合もやはり、ターンオンは高速である。
【0028】
能動オフ状態からの第3の例示的ターンオン方法において、eベースは、エミッタから切断され、ベース領域に電荷キャリアを注入するのに十分な電圧の電流源または電圧源に接続される。この方法は、電荷キャリアが空乏領域の直下のベースに入るため、より遅くなりうる。また、eベースへのキャリア注入は、cベースへのキャリア注入と比べて低いゲインをもたらすことが知られている。
【0029】
cベースを用いる方法のいずれかにてターンオンが達成された後、Vceは、ダイオード電圧降下を上回る。Vceをダイオード電圧降下より低く駆動するために、ターンオンは、電圧源または電流源を介してcベースへ増加された電荷を注入する第2段階に進む。増加された電荷注入量は、Vceがダイオード電圧降下未満でどれだけ低下されるかを決定する。eベースへの注入もまたVceを低下させることになるが、ゲインは、cベース注入を用いるよりも大幅に低い。
【0030】
ターンオフは、いくつかの方法のいずれかにより達成されうる。最も有利な方法は、2ステッププロセスである。第1のステップでは、以前に開放されているeベースがエミッタに短絡される一方で、cベースが、電荷注入電源から切断され、コレクタに短絡される。このことは、各ベースとそのエミッタ/コレクタとの間に大きな電流の流れをもたらし、ドリフト領域から電荷キャリアを急速に除去する。このことは、次に、ドリフト領域の抵抗率が上昇するにつれてVceが上昇することをもたらす。ベースが短絡された後のある最適時期にて、cベースとコレクタとの間の接続は開放され、その後、コレクタ/ベース接合の周囲に空乏領域が形成されるにつれて、Vceは急速に上昇する。
【0031】
代替として、ターンオフは、単純にcベースを開放するとともにeベースをエミッタに短絡することにより達成されうるが、これは、ドリフト領域(ベース)が、空乏領域の形成開始時に高いレベルの電荷キャリアを有することになるので、より大きなターンオフ損失をもたらすことになる。
【0032】
または、ターンオフは、単純にcベースを開放するとともにeベースを開放したままにすることにより達成されうるが、これは、最大のターンオフ損失、及び、低いブレークダウン電圧ももたらすことになる。
[利点]
開示されたイノベーションは、種々の実施形態において、少なくとも以下の利点のうちの1つ以上を提供する。しかしながら、これらの利点の全てが、開示されたイノベーションの全てに起因するものではなく、この利点のリストは、種々の請求された発明を限定しない。
【0033】
・電力変換システムにおける効率の改善
・より耐久性のある電力半導体デバイス
・より高いブレークダウン電圧を有する電力半導体デバイス
・より低いオン抵抗を有する電力半導体デバイス
・より低コストの電力半導体デバイス
必ずしも全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態によれば、以下のことがもたらされる:本出願が、B−TRANのようなデバイスのための「受動オフ」保護を提供することに対する新たなアプローチを開示する。たとえ制御回路構成が作動しなくても、AC結合は、外部端子の過渡電圧を用いて、エミッタ接合に順方向バイアスがかかることを防止する。好ましくは、ダイオードモード及び事前ターンオフ動作を実行する同一のスイッチが、受動オフ回路動作の一部として用いられる。
【0034】
必ずしも全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態によれば、以下のことが提供される:第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域を第2導電型半導体ダイのそれぞれの表面上に備え、第1及び第2エミッタ接合と、上記第1エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第1ベース接触領域と、上記第2エミッタ/コレクタ領域と同一表面上の第2ベース接触領域とを個別に規定し、両方の上記ベース接触領域が、上記半導体ダイに対してオーミック接触を個別に形成する、電力半導体デバイスと、オンの場合に、上記第1ベース接触領域を上記第1エミッタ/コレクタに動作可能に接続する第1駆動トランジスタと、オンの場合に、上記第2ベース接触領域を上記第2エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第2駆動トランジスタと、上記エミッタ/コレクタ領域にわたって電圧スルーを電気的に接続して、上記エミッタ/コレクタ領域のどちらでもエミッタになる上記駆動トランジスタを作動させ、上記エミッタ/コレクタ領域と、それに対応するベース接触領域との間の電圧を制限するように動作可能に接続される過渡結合回路と、導通のターンオン及びターンオフを制御するために上記第1及び第2ベース接触領域を独立して駆動し、上記第1駆動トランジスタ及び第2駆動トランジスタが上記エミッタ/コレクタ領域のうちの少なくとも1つをこの少なくとも1つに対応するベース接触領域に接続するスイッチング位相を含む、制御回路と、を備え、上記第1エミッタ接合上の順方向電圧が、上記第1エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限され、上記第2エミッタ接合上の順方向電圧が、上記第2エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下より低く制限されることにより、上記制御回路が作動しない場合に漏れ電流が増幅されず、ブレークダウン電圧が漏れ電流の増幅により低下しない、スイッチング回路。
【0035】
必ずしも全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態によれば、以下のことが提供される:第1及び第2の第1導電型エミッタ/コレクタ領域を第2導電型半導体ダイのそれぞれの表面上に備え、第1及び第2エミッタ接合と、上記第1及び第2エミッタ/コレクタ領域とそれぞれ同一の2つの表面上の第1及び第2ベース接触領域とを個別に規定し、両方の上記ベース接触領域は、上記半導体ダイに対してオーミック接触を個別に形成する、電力半導体デバイスと、オンの場合に、上記第1ベース接触領域を上記第1エミッタ/コレクタに動作可能に接続する第1駆動トランジスタと、オンの場合に、上記第2ベース接触領域を上記第2エミッタ/コレクタ領域に動作可能に接続する第2駆動トランジスタと、上記エミッタ/コレクタ領域のうちのコレクタ側の1つから電圧スルーを電気的に接続して、反対側の上記エミッタ/コレクタの上記駆動トランジスタを作動させる過渡結合回路と、上記第1及び第2ベース接触領域を独立して駆動し、上記第1駆動トランジスタ及び/または上記第2駆動トランジスタが上記エミッタ/コレクタ領域のうちの少なくとも1つをその少なくとも1つに対応する上記ベース接触領域に接続するスイッチング位相を含む、制御回路と、を備え、上記第1エミッタ接合上の順方向電圧が、上記第1エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下よりも低く制限され、上記第2エミッタ接合上の順方向電圧が、上記第2エミッタ接合の固有の順方向ダイオード電圧降下よりも低く制限される、スイッチング回路。
[変更及び変形]
当業者に認識されるであろうように、本出願において説明された革新的概念は、非常に大きな応用範囲にわたり変更及び変形されてもよく、従って、特許される主題の範囲は、与えられた特定の例示的な教示のいずれによっても限定されない。添付された請求項の精神及び広い範囲に該当する、全てのこのような代替、変更及び変形を包含することが意図される。
【0036】
本出願におけるどの記載も、あらゆる特定の要素、ステップ、または、機能が、特許請求の範囲に含まれなければならない本質的な要素であることを示唆するものとして読み取られるべきではなく:特許される主題の範囲は、許可された請求項によってのみ規定される。さらに、これらの請求項のいずれも、「means for」という正確な語句が分詞の後に続かない限り、米国特許法第112条第6段落を発動することは意図されていない。
【0037】
出願時の請求項は、可能な限り包括的であることが意図されており、いずれの主題も意図的に、放棄されないし、専用とされないし、または断念されない。
特許請求の範囲は、とりわけ(そして、独創的で、及び/または、意外性があり、及び/または、有利であるものとして本明細書に示されるその他の点に加えて、例外なく)以下のとおりである。