(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示されているような帯状の皮から打ち抜きで皮を得る場合、打ち抜いた部分を回収する手段が必要になったり、周囲の皮も含むように多量の皮の材料を準備する必要がある。また、特許文献4、5のように型を用いる場合、型から取り出すのが難しい場合がある。また、特許文献6のような構成とするには特殊な機構の円盤等を備えた装置が必要となる。また、これらの特許文献1〜6の皮の成形に用いられる装置は、連続して製造するための大型の装置に関するものである。また、特許文献7のような成形機を用いる場合、ローラー間距離を調整しながら複数回圧延する必要があり、さらに、ローラーに対する皮の原料の向きを変えながら圧延する必要がある。
【0006】
家庭用や小規模の飲食店では、大型の装置を導入することが難しく、また大型の装置の製造量で餃子の皮を製造する必要性が低い。また、餃子の皮はその組成によっては接着しやすく、重ね合わせて置くことができないため、予め大量に製造しておくことが好ましくない場合がある。
【0007】
本発明は、厚みが一定の薄い丸型とする必要がある餃子の皮の製造に関する。従来の餃子の皮の少量製造にあたっては、熟練の業が必要だった。また、特許文献1〜7に開示される装置等は上述のような各種課題があった。
かかる状況下、本発明の目的は、このような熟練の業を必要とすることなく、均一な厚みの餃子の皮を、少量から必要な枚数だけ効率よく製造することに適した成形機を提供することである。
また、本発明の目的は、このような成形機での圧延による成形に適した餃子の皮用塊状体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0009】
<A1> 餃子の皮用塊状体を圧延して餃子の皮を成形する餃子の皮の成形機であって、餃子の皮用塊状体を鉛直方向下側に向けて圧延して略長楕円状の半製品とする第一のローラーと、前記第一のローラーの鉛直方向下側に配置され振り子を有する方向転換器であり、前記振り子が、振り子の支点と、前記振り子の支点の鉛直方向下側に、前記支点の直下よりも前記第一のローラーの中央側に前記半製品の先端を載せるための先端受け部とを有し、前記半製品が載ったとき前記半製品の方向を転換する振り子である方向転換器と、前記第一のローラーの鉛直方向下側に配置され、前記方向転換器で方向が転換された前記半製品を鉛直方向下側に向けて圧延して餃子の皮とする第二のローラーと、を有する成形機。
この成形機によれば、第一のローラーで圧延された半製品の向きを、方向転換器で転換することで、第二のローラーが第一のローラーとは異なる角度で半製品を圧延する。これにより、複数の軸方向に圧延され、より短径と長径の差が小さい楕円状や略円状に圧延された餃子の皮を、効率よく容易に得ることができる。
【0010】
<A2> 前記振り子が、前記第一のローラーの壁側に設けられた振り子の回転を留める留め部と、前記支点の鉛直方向の下側に設けられたおもりを有する、前記<A1>記載の成形機。
このような振り子とすることで、方向転換器内の振り子が、半製品が先端受け部に載ったとき過剰に回転することを防止して、半製品が第二のローラーに送り出された後、おもりにより振り子が待機位置に速やかに復帰する。これにより、次の半製品が導入されたときに適切な位置に振り子が位置することとなり、繰り返し、効率よく餃子の皮を得ることができる。
【0011】
<A3> 前記第一のローラーの上部に、前記餃子の皮用塊状体の挿入口の誘導手段を有する、前記<A1>または<A2>記載の成形機。
このような誘導手段を有することで、皮用塊状体が圧延された半製品の先端が、振り子の先端受け部に向かって圧延される。これにより、半製品が振り子に載ることなく通過したり、振り子に引っ掛かり送り出されなくなることを防止し、半製品の方向転換が適切に行われる。
【0012】
<A4> 前記第一のローラーと、前記第二のローラーとが連動して回転する回転機構を有する、前記<A1>〜<A3>のいずれかに記載の成形機。
このような回転機構とすることで、ローラーの回転手段を一つとして第一のローラーと第二のローラーが連動して回転する。これにより、成形機の使用者は、成形機内での餃子の皮用塊状体や、半製品、餃子の皮の位置を気にすることなく、各ローラーを回転させる一のハンドルを動かすなどの簡易な操作で、餃子の皮を得ることができる。
【0013】
<A5> 前記第一のローラー、前記第二ローラーを内蔵する胴部を有し、前記胴部が、前記方向転換器を前記胴部に差し替え自在とする差込口を有する、<A1>〜<A4>のいずれかに記載の成形機。
このような差し込み口を有することで、汚れやすかったり、餃子の皮の大きさに応じて適宜振り子の大きさなどを変更したい方向転換器の差し替えが自在となる。これにより、方向転換器を取り換えたり、取り外して洗浄したりすることができる。
【0014】
<B1> 小麦粉と水とを含む混練物を含み、円盤状の周方向および/または底面の少なくとも一部に切欠部を有する冷凍された餃子の皮用塊状体。
また、本発明は、前記<A1>〜<A5>のいずれかに記載の成形機に用いるための餃子の皮用塊状体であって、小麦粉と水とを含む混練物を含み、円盤状の周方向および/または底面の少なくとも一部に切欠部を有する冷凍された餃子の皮用塊状体とすることができる。
このような皮用塊状体は、解凍して前述したような成形機の皮用塊状体として好適に用いることができる。このような皮用塊状体は、切欠部を、成形機内の振り子の先端受け部に向けて挿入したり、案内手段への位置や向きを適切に認識して挿入することができる。これにより、適切に方向転換された餃子の皮を得ることができる。また、冷凍されていることで、保管時はまとめて同一容器内で保管しても互いに接着するなどの問題を防止して、予め準備でき、流通にも適したものとなり、使用時には解凍するだけで直ちに用いることができる。
【0015】
<B2> 重量が、5〜9gであり、直径が、20〜40mmであり、厚みが、5〜20mmである、<B1>記載の餃子の皮用塊状体。
このような皮用塊状体は、特に前述したような成形機での成形に適した形状や大きさである。これにより、餃子の皮として適した大きさのものを効率よく得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の成形機によれば、餃子の皮を少量から所望の数、効率よく製造することができる。また、本発明の餃子の皮用塊状体は、本発明の成形機での成形に適しており、効率よく安定した餃子の皮の成形に適している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0019】
[本発明の成形機]
本発明の成形機は、餃子の皮用塊状体を圧延して餃子の皮を成形する餃子の皮の成形機であって、
餃子の皮用塊状体を鉛直方向下側に向けて圧延して略長楕円状の半製品とする第一のローラーと、
前記第一のローラーの鉛直方向下側に配置され振り子を有する方向転換器であり、前記振り子が、振り子の支点と、前記振り子の支点の鉛直方向下側に、前記支点の直下よりも前記第一のローラーの中央側に前記半製品の先端を載せるための先端受け部とを有し、前記半製品が載ったとき前記半製品の方向を転換する振り子である方向転換器と、
前記第一のローラーの鉛直方向下側に配置され、前記方向転換器で方向が転換された前記半製品を鉛直方向下側に向けて圧延して餃子の皮とする第二のローラーと、を有する。
本発明の成形機によれば、餃子の皮を少量から所望の数、効率よく製造することができる。
【0020】
[本発明の皮用塊状体]
本発明の皮用塊状体は、小麦粉と水とを含む混練物を含み、円盤状の周方向および/または底面の少なくとも一部に切欠部を有する冷凍された餃子の皮用塊状体である。本発明の餃子の皮用塊状体は、本発明の成形機での成形に適しており、効率よく安定した餃子の皮の成形に適している。この皮用塊状体は、本発明の成形機の振り子の先端受け部に合わせた位置に誘導しやすいように切欠部を成形機の第一のローラー上で配置して送り出すことで、振り子での方向転換が安定し成形しやすくなる。特に、誘導部を有する構成の成形機において、誘導部に合わせることでより簡易な操作で安定した成形ができる。
なお、本願において本発明の餃子の皮用塊状体は、本発明の成形機での成形に用いることができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0021】
[第一の実施形態]
図1は、本発明に係る成形機の第一の実施形態の略斜視図である。
図2は、成形機1の正面方向から見た略断面図である。
図3(a)は、成形機1の胴部の略中央付近の断面を示すものであり、
図3(b)は、成形機1の胴部の右側の側壁付近の回転機構の断面を示すものである。
【0022】
図1に示すように、成形機1の外観は、脚部421、422に支えられた胴部41を有し、方向転換器30(
図2等参照)を差込自在とする差込口43を有し、第一のローラー11、12(
図2等参照)や、第二のローラー21、22(
図2等参照)を回転させるためのハンドル44を有し、皮用塊状体を入れるための挿入口16を有している。胴部41の上部には、挿入口16へ皮用塊状体をいれるときの位置を特定しやすいように案内部161が設けられている。挿入口16から皮用塊状体を入れハンドル44を回転させることで、胴部41の下方から、薄い丸状に圧延された餃子の皮が得られる。なお、案内部161は、挿入口16に目印となる線や点、矢印などの表記をしたものとすることができる。また、案内部161の表記に代え、挿入口16の皮用塊状体を挿入する部分以外は閉じることで案内するものとしてもよい。
【0023】
図2は成形機1を正面方向からみたときの、胴部41の中央付近の略断面図である。
胴部41内には、挿入口16の鉛直方向下側に、第一のローラー11、方向転換器30、第二のローラー21の順に配置されている。第二のローラー21の鉛直方向下側には、送出部26が設けられている。方向転換器30は、先端受け部311、留め部312、おもり313を有し、支点314で支持されている振り子31を内蔵している。第一のローラー11や、第二のローラー21は、側壁61、62に設けられた孔を通して配置されており、側壁61、62に回動自在な状態で支持されている。第一のローラー11の側壁61側の端部には歯車17が設けられている。第二のローラー21の側壁61側の端部には歯車27が設けられている。胴部41より下側の側壁61は脚部421の、胴部41より下側の側壁62は脚部422の一部である。
【0024】
図3は、成形機1を
図1におけるx1方向である右側からみた側面の略断面図である。
図3(a)は、胴部41の中央付近の断面図である。挿入口16の下方には、第一のローラー11、12へ誘導する形状が設けられている。第一のローラー11、12の下方には、方向転換器30が設けられている。方向転換器30の下方には、第二のローラー21、22が設けられている。第二のローラー21、22の下方には送出部26が設けられている。
【0025】
図3(b)は側壁61の右側からみた側壁61付近の断面図である。第一のローラー11の端部には歯車17が取り付けられている。第一のローラー11は、ハンドル44を回すことで回転する。第二のローラー12の端部には歯車18が取り付けられている。第二のローラー21の端部には歯車27が設けられている。第二のローラ22の端部には歯車28が設けられている。歯車17の回転を歯車27に伝達するために、歯車32が歯車17と歯車27との間に設けられている。
【0026】
ハンドル44を回転させると、第一のローラー11が回転する。第一のローラー11の端部に設けられた歯車17は歯車18と噛み合わせられている。歯車17が回転することで、歯車18は歯車17と対向する方向に回転する。これにより、第一のローラー11、12は対向する方向に回転する。
【0027】
歯車17は歯車32と噛み合わせられており、歯車32は歯車27と噛み合わせられている。歯車17と歯車32とが対向する噛み合わせとなり、歯車32と歯車27が対向する噛み合わせとなることで、ハンドル44を回して歯車17を回転させることで、歯車17と歯車27は同じ周方向に回転する。
【0028】
第二のローラー21の端部に設けられた歯車27は歯車28と噛み合わせられている。歯車27が回転することで、歯車28は歯車27と対向する方向に回転する。これにより、第二のローラー21、22は対向する方向に回転する。この歯車によって、
図1における成形機1を左側からみたとき、時計回りにハンドル44を回すことで、第一のローラー11、12がともに下側に送り出す方向に回転する。また、同時に第二のローラー21、22もともに下側に送り出す方向に回転する。
【0029】
成形機1は、第一のローラー11、12と、第二のローラー21、22とが、同じ方向にそれぞれ皮用塊状体、半製品を圧延して送り出す。このため、歯車17、18、32、27、28のような連動して回転するものとする構成としやすい。また、これらの歯車が連動して回転することで、成形機1の使用者は、ハンドル44を回すだけで皮用塊状体から餃子の皮を成形することができる。すなわち成形機1は、成形時の操作性にも非常に優れている。また、成形機1は、鉛直方向下側に皮用塊状体や、半製品を送り出し、ハンドルは手動で回転させることができるため、成形機1を用いるときの動力源を少ないものとすることができる。
【0030】
第一のローラー11には近接する位置に刃13が設けられている。また、第一のローラー12には近接する位置に刃14が設けられている。また、第二のローラー21には近接する位置に刃23が設けられている。また、第二のローラー22には近接する位置に刃24が設けられている。それぞれに近接する刃により、それぞれのローラーに付着した粉や塊等が削り落されることでローラーは清浄な状態で保たれる。
【0031】
[第一のローラー11、12]
第一のローラー11、12とは、対向して回転する対のローラーである。第一のローラー11、12は挿入口16から挿入された皮用塊状体を圧延して、鉛直方向下側に送り出す。皮用塊状体は、第一のローラー11と第一のローラー12の隙間15の広さに相当する厚さに圧延される。
【0032】
隙間15は、成形する餃子の皮の厚さに応じて適宜設計される。例えば、餃子の皮の厚さの1.3倍〜2.5倍を目安に設定される。また、より具体的には、1mm〜3.5mm程度、より好ましくは、1.5〜3.0mm程度の厚さとすることができる。
【0033】
第一のローラー11、12の長さ(
図2における横方向)は、餃子の皮の大きさに応じて適宜設定することができる。餃子の皮の大きさは、おおむね直径が6cm〜12cm、好ましくは7〜9cm程度の範囲内のため、この大きさの餃子の皮が通過することができる大きさであればよい。餃子の皮の半製品を方向転換器30において方向転換するため、方向転換器30内の振り子31の大きさやその振り子としての移動範囲も考慮して、第一のローラー11、12は、約15cm以上であることが好ましく、18cm以上が好ましい。この長さは、特に上限を設けなくてもよいが、過剰に大きいと成形機1の重量が重くなったり、取り扱いにくくなる場合があるため、30cm以下や、25cm以下のような大きさとしてもよい。第一のローラー11、12を通るときの餃子の皮用塊状体の幅は狭い状態で通過するため、第二のローラー21、22よりも短いものでもよい。また、第一のローラー11、12の長さは、第二のローラー21、22と同様の長さとしてもよく、同程度の長さとすることで製造しやすさ、回転しやすさが向上しやすい。
【0034】
成形機1において、第一のローラー11、12は円柱状の部材を用いている。この円柱の直径は特に制限はなく、材質などに応じて適宜設定できる。例えば、10mm〜30mm程度である。
【0035】
第一のローラー11、12は対向する対のローラーを用いる構成とすることで、皮用塊状体の両側から圧延しながら送り出す力が均等に働く構造となる。これにより、半製品の厚さも均一なものとなり、餃子の皮の成形も安定するものとなる。また、皮用塊状体の挿入や、半製品の送り出しが安定する。
【0036】
[第二のローラー21、22]
第二のローラー21、22とは、対向して回転する対のローラーである。第二のローラー21、22は方向転換器30を通って挿入された半製品を圧延して、鉛直方向下側に送り出す。半製品は、第二のローラー21と第二のローラー22の隙間25の広さに相当する厚さに圧延される。
【0037】
隙間25は、成形する餃子の皮の厚さに応じて適宜設計される。例えば、0.5mm〜2mm程度、より好ましくは、0.8〜1.5mm程度の厚さとすることができる。この隙間25が、餃子の皮の厚さに相当するものとなる。
【0038】
第二のローラー21、22は、第一のローラ11、12の長さに準じた長さとすることができる。また、第二のローラー21、22と同様に対とすることで、半製品を圧延して成形するとき、厚さを均一なものとして、安定した成形ができる。なお、第一のローラー11、12および第二のローラー21、22の材質は特に限定はなく、金属部材や、木材、樹脂などを用いることができる。金属部材の場合、錆などが生じにくいようにSUS材などを用いることが好ましい。
【0039】
[方向転換器30]
方向転換器30は、先端受け部311、留め部312、おもり313を有し、支点314で支持されている振り子31を内蔵している。方向転換器30は、2枚の板状部材を隙間33を設けて離隔するようにスペーサーを隅に設けて固定した形状の内部に、振り子31を支点314で保持している。振り子31は、支点314を中心に振れるものとなっている。方向転換器30は第一のローラー11、12と、第二のローラー21、22との間に配置される。この方向転換器30は、差込口43から差込自在のカートリッジ式である。差込自在とすることで、餃子の皮の大きさなどに合わせたものを差し込んで使用したり、取り出して洗浄や付け替え等を行うことができる。方向転換器30内は、洗浄しにくい部分が多いため、半製品等が通過することで汚れが残りやすいが、差込自在とすると洗浄や付け替えも容易に行うことができる。また、方向転換器30を取り外した状態で、帯状に圧延して麺帯を製造する装置として併用することもできる。
【0040】
[振り子31]
振り子31は、支点314が方向転換器30を構成する板状部材に保持されている。この保持は、振り子31が振り子として振れることができるように、回動可能なピン留めなどで保持される。
【0041】
先端受け部311は、支点314の下方で、第一のローラー11や中央側c0(
図4参照)から、側壁62側への方向d1(
図4参照)側と第二のローラー21側に向かって凸状の弧の形状である。この形状とすることで、振り子31は、先端受け部311側が、第一のローラー11側に凹状の弧の形状となる。このため、この振り子31の凹状の弧に、圧延された半製品が、振り子31の上部で干渉されずに入り込むように送り出される。
【0042】
先端受け部311は、支点314よりも下部で圧延された半製品の先端を受けるように、支点314の鉛直方向下側から第一のローラー11の中央側に向けて延伸された部位である。この先端受け部311は、支点314の鉛直方向下側から、先端に向けて湾曲したものである。また、先端受け部311は、その最先端がわずかにかぎ爪状の強い湾曲部分を1〜5mm程度の大きさで設けてもよい。
【0043】
留め部312は、支点314の鉛直方向下側において、先端受け部311と反対側に設けられた部分である。この留め部312は、側壁62側へ向かう方向d1に向かって、凸状の弧を描く形状とすることができる。振り子31は、方向転換器30内で、半製品512が載ったとき側壁62側に向かって退避するように振れる。この振り子として十分に振れるように、留め部312は側壁62方向に向かって、先端受け部311の長さよりも短いことが好ましい。一方で、過剰に回転することを防止するために、側壁62方向に向かって凸状とする。これにより、留め部312は短くても、先端受け部311とのバランスがとれたものとなる。
【0044】
おもり313は、支点314の鉛直方向下側に設けられる。おもり313は、振り子31が所定の位置に復帰しやすいように設けられる。おもり313は、振り子31を構成する部材よりも重い部材を埋め込んだり、厚さを厚くすることで、おもりとして機能するものとすることができる。
【0045】
図4を用いて、成形機1内での半製品のより詳しい方向転換の流れを説明する。
図4は、
図2の第一のローラー11、方向転換器30、第二のローラー21を中心とした領域R1(
図2中の破線で囲む領域)を拡大した概略図である。なお、第一のローラー12は第一のローラー11と、第二のローラー22は第二のローラー21と対となり回転して皮用塊状体や半製品を圧延して送り出すが、
図4においては、第一のローラー12と、第二のローラー22とを省略して説明する。
【0046】
図4(a)に示すように、まず、略球状や、円盤状の皮用塊状体51が、第一のローラー11上の挿入口16(
図1)から挿入される。案内部161(
図1)は、皮用塊状体51が圧延された後、その半製品512の先端部5121が振り子31の先端受け部311に載りやすいように、その先端受け部311の直上周辺の位置を示した部分である。切欠511(
図7(b)参照)が設けられた皮用塊状体51が、内部161に向き合うように合わせて挿入される。
【0047】
図4(b)に示すように、皮用塊状体51は、第一のローラー11を回転させることで、第一のローラー11により圧延されながら送り出される。圧延された半製品512は先端部5121が、振り子31の先端受け部311に向かって送り出される。振り子31の先端受け部311は、半製品512の先端部5121がそのまま通過して、第二のローラー21に入り込み、帯状圧延体となることを防止する。
【0048】
図4(c)に示すように、皮用塊状体51が第一のローラー11で圧延され終えると、半製品512は振り子31の先端受け部311に載る。先端受け部311に半製品512が載ると、半製品512の重さで、振り子31は支点314を中心に側壁62側の方向d1に退避するように弧を描きながら振れる。振り子31の下端側が側壁62側に振れると、その反動で半製品512は、後端部5122が側壁61側に向かうように、
図4(c)において同一面内で時計回りに弧を描いて回転し約90度方向転換する。なお、振り子31には先端受け部311と反対側の、胴部41の中央から離隔する方向となる側壁62側に留め部312が設けられている。振り子31が大きく振れると、留め部312が側壁62や、方向転換器60のケースなどに衝突し、振り子31の過剰な回転を防止する。
【0049】
図4(d)に示すように、半製品512は振り子31が弧を描いて振れる反動で、方向転換して、略長楕円状の半製品512の短径側が鉛直方向の上下を向く状態となる。そして、半製品512の長径方向が水平方向よりの向き、短径方向が鉛直方向よりの向きの状態で、第二のローラー21へと入る。なお、皮用塊状体51の切欠は、圧延時に周囲の生地が入り込むように変形して、視認してもわかりにくい程度に滑らかなものとなる。
【0050】
図4(e)に示すように、半製品512の短径方向を鉛直方向側に向けた状態に方向転換して、第二のローラー21が半製品512を圧延する。半製品512は圧延されることで短径方向が引き延ばされる形状になり、略円状の餃子の皮513となる。
【0051】
振り子31は、半製品512が先端受け部311に載ることで、側壁62側に退避するように振れる。半製品512が第二のローラー21に圧延され送り出されると、方向転換器30内が空になる。方向転換器30内が空のとき、振り子31には、おもり313が設けられているため、支点314の鉛直方向下側におもり313が配置されるように重力で移動する。これにより、振り子31の先端受け部313は、半製品が挿入されたときに方向転換するための位置に復帰する。
【0052】
餃子の皮は、厚さ0.5mm〜2.5mm程度の厚みで、適宜調整される。この厚さは第二のローラー21、22の隙間25に相当するものとなる。このため、厚さを変える場合は、第二のローラー21、22の隙間25や、その前段となる第一のローラー11、12の隙間15を変更することが好ましい。このため、成形機1は、この隙間15や25を調節する調節手段を有するものとしてもよい。
【0053】
餃子の皮の大きさは、おおむね直径が6cm〜12cm、好ましくは7〜9cm程度の範囲内である。第一のローラー11、12を通過した後の半製品512の長径も、およそこの皮の直径と同程度の大きさとなる。このため、第一のローラー11、12と第二のローラー21、22との鉛直方向の距離(L1)は、成形する餃子の皮の大きさより大きいものとする。具体的には、この距離(L1)は餃子の皮の大きさよりも3cm以上が好ましく、5cm以上がより好ましい。特に上限を設けなくてもよいが、離れすぎている場合、第二のローラー21、22に到達する前に折り重なるように変形したりする恐れがあるため、15cm以下や10cm以下の上限を設けてもよい。
【0054】
また、方向転換器30は、その内部に半製品512が第一のローラー11、12から離れた状態で入ることで方向転換する。このため方向転換器30の鉛直方向の長さ(L2)は、成形する餃子の皮の大きさよりも大きいものとする。具体的には、この距離(L2)は餃子の皮の大きさよりも1cm以上が好ましく、3cm以上がより好ましい。特に上限を設けなくてもよいが、離れすぎている場合、第二のローラー21、22に到達する前に折り重なるように変形したりする恐れがあるため、10cm以下や8cm以下の上限を設けてもよい。
【0055】
また、方向転換器30は、2枚の板状部の間に、半製品512が入る形状とすることが好ましく、この板状部に振り子31の支点が設けられるものとすることが好ましい。この板状部の間を半製品512が通ることで、半製品512は第一のローラー11、12を通って薄くなり折り重なる恐れがある厚みのままでも、形状を維持したまま第二のローラー21、22に誘導される。方向転換器30の2枚の板状部の隙間33は、半製品512が誘導されやすいものであればよいが、例えば、5mm〜15mm程度とすることができる。
【0056】
図5は、本発明の成形機の設計例の写真である。この成形機は前述の第一の実施形態に係る成形機1に相当する構成を有しており、皮用塊状体を圧延して餃子の皮を成形することができる。この成形機は、一対の第一のローラー間の隙間を2mmとして、振り子を有する方向転換器を配置して、一対の第二のローラー間の隙間を1mmとした。
【0057】
また、
図6は、この
図5の成形機により成形された餃子の皮の一例である。この餃子の皮は、水50質量部と小麦粉(中力粉)50質量部を混合し混練した混練物を用いたものである。混練物約8gを球状に成形し、厚い円盤状に対向する面を押圧した皮用塊状体とした。次に皮用塊状体を、成形機の挿入口に入れ、ハンドルを回して第一のローラー、方向転換器、第二のローラーを通って圧延され、成形されたものである。直径は、約8cm程度であり、短径、長径の差が少ない略円状のものとなった。この皮は、そのまま具を包んだ後、縁となる部分を指で押圧することで、容易に接着する。また、この餃子を焼いたり、ゆでたり、揚げたり、蒸したりのように調理して食べると、剥離剤等を含んでおらず、水と小麦粉とからなるためモチモチ感があり美味しいものとなる。
【0058】
なお、圧延された皮を重ね合わせるだけで、しばらく放置すると接着する。しかし、本発明の成形機によれば、必要な枚数の餃子の皮を、随時、簡易な操作で製造することができる。このため、互いに接着する組成の皮の使用にも適している。また、仮に、皮が接着しても、再度適量を皮用塊状体に再成形し、成形機で圧延することで、直ちに餃子の皮として利用することができる。
【0059】
[餃子の皮用塊状体]
本発明の餃子の皮用塊状体は、小麦粉と水とを含む混練物を含み、円盤状の周方向および/または底面の少なくとも一部に切欠部を有する冷凍された餃子の皮用塊状体である。この餃子の皮用塊状体は、冷凍された状態から、解凍して、餃子の皮の成形に用いることができる。この餃子の皮用塊状体は、本発明の成形機での成形に適している。通常、餃子の皮を成形するための塊状体の状態から切欠部を設ける必要はなく、形状が不安定な理由となることを懸念して縁はなだらかなものとすることが多い。しかし、切欠部を有することで、本発明の成形機における振り子の先端受け部の鉛直方向上部に、先端受け部に向けて切欠部を配置して成形することで、より簡易な操作で安定した餃子の皮の成形ができる。
【0060】
また、餃子の皮用塊状体は、冷蔵や常温で保管すると互いに接着する場合があるが、冷凍しておくことで保管時に接着することを防止することができる。このため、具を包むときに利便性が高い接着性が高い組成の餃子の皮に用いるための塊状体として保管することができる。
【0061】
餃子の皮用塊状体において、円盤状とは、平面視したとき円に近い形状のものである。この円盤状は、平面視したときの形状は完全に円である必要はなく、線状や弧を描く部分が含まれたものであってもよく、全体として円に近いものを含む。また、円盤状は側面視したとき中央付近が厚く、皮用塊状体の周である両端に向かうにつれ厚みが漸減するものであってよい。
【0062】
切欠部は、円盤状の周方向および/または底面の少なくとも一部に設けられる。よって、周方向の一部のみでもよいし、底面の一部であってもよい。なお、円盤状の塊状体は、容易に裏返すことができるため側部の周に囲まれた上面、下面の双方を含み底面とよぶ。この底面の一方のみや、双方に切欠部が設けられるものも底面の一部に切欠部が設けられた状態に含む。切欠部は、周方向と底面との双方に設けられてもよい。また、周方向と底面に設けられた切欠部は連続していても、断続的なものでも、不連続なものでもよい。この切欠部は、本発明の成形機で成形するとき案内部等に誘導する向きや位置を特定することができればよい。例えば、底面の中央付近を縦断するように溝状に設けることができる。
【0063】
図7は、皮用塊状体の形状例を示す図である。
図7(a)、(b)は、皮用塊状体51を示す図である。
図7(a)は、皮用塊状体51を平面視したものであり、
図7(b)は、皮用塊状体51を正面視したものである。皮用塊状体51の底面の略中央に切欠511が設けられている。この切欠511を、成形機1の案内部161に合わせて成形することで、皮用塊状体51が圧延されたとき、半製品512の先端部5121が振り子31の先端受け部311上に安定して送り出され、振り子31により方向転換して圧延され、熟練した技術や慣れを必要とせずに略円状の餃子の皮を安定して成形できる。切欠511は、
図7(b)における上側の底面にのみ、その中央を縦断するように溝状に設けられたものである。
【0064】
図7(c)、(d)は、皮用塊状体52を示す図である。
図7(c)は、皮用塊状体52を平面視したものであり、
図7(d)は、皮用塊状体52を正面視したものである。皮用塊状体52は、切欠521を皮用塊状体の両底面の中心をとおって周状に設けてある。この切欠は、厚い円盤状である皮用塊状体52の厚さ方向の周を通るように設けられている。このように中心に線状に切欠521が設けられていることで、皮用塊状体52はその切欠521の向きを鉛直方向に向けて成形機1の案内部161に向けて挿入して成形する。これにより、非常に安定した餃子の皮の成形ができる。
【0065】
図7(e)、(f)は、皮用塊状体53を示す図である。
図7(e)は、皮用塊状体53を平面視したものであり、
図7(f)は、皮用塊状体53を正面視したものである。皮用塊状体53は、切欠531が、円盤状の周方向2か所に、対向するように設けられている。成形機1で成形するとき、成形機1の使用者は、皮用塊状体53の切欠531間の仮想線を想定して、案内部161に向けて挿入して成形する。これにより、さらに安定した餃子の皮の成形ができる。
【0066】
図7(g)、(h)は、皮用塊状体54を示す図である。
図7(g)は、皮用塊状体54を平面視したものであり、
図7(h)は、皮用塊状体54を正面視したものである。皮用塊状体54の周の1か所に、切欠541が設けられている。この切欠541を、成形機1の案内部161に合わせて成形することで、皮用塊状体54が圧延されたとき、半製品512の先端部が振り子31の先端受け部311上に安定して送り出され、振り子31により方向転換して圧延され、熟練した技術や慣れを必要とせずに略円状の餃子の皮を安定して成形できる。
【0067】
本発明の餃子の皮用塊状体は、小麦粉と水とを混合して混錬した混練物を用いる。小麦粉と水との混合比率は質量比で、小麦粉:水が、45〜55:55〜45程度の範囲で調整することが好ましい。これらを混ぜてこねることで弾性を有し生地ともよばれるような混練物とする。混練物は、適宜、味付けや防腐等の目的で、添加剤等を混合して製造してもよい。混練物における小麦粉と水とが占める割合((小麦粉の質量+水の質量)/混練物の質量×100)は、95質量%以上が好ましく、98質量%以上や、99質量%以上がより好ましい。実質的に、小麦粉と水とからなるものであってもよい。小麦粉と水とが占める割合が大きいことで、使用時に接着しやすいものとなり、餃子の皮として具を包んだ状態で縁を手で押圧するだけで直ちに閉じることができる。
【0068】
餃子の皮を大量に製造する場合、皮同士が接着しないように処理する必要がある。この対策として接着防止剤等が塗布される場合があるが、味が変わる原因となる。また、餡を包むときも皮同士が接着しにくいため、皮の縁を水で濡らして接着させるなどの手間がかかる場合がある。小麦粉と水とからなる皮(生地)は味がよいが、前述のように延ばした皮の状態で何枚も重ねると接着する。このため、餃子を作るときに必要な量・枚数を成形するほうが効率がよい。なお、本発明の餃子の皮用塊状体は、接着防止剤や離形剤を実質含まないものとすることができ、例えば、このような接着防止剤や離形剤の含有量が1質量%以下や、0.5質量%以下、0.1質量%以下のように上限管理して、実質含まないものとしてもよい。
【0069】
餃子の皮用塊状体は、生地を皮用塊状体の形状に成形して冷凍することで冷凍されたものとすることができる。冷凍されていることで、保管時に形状が安定したものとなり、さらに皮用塊状体同士が接着することを防止することができる。皮用塊状体の冷凍は、皮用塊状体の形として、互いに接触しないように離間して冷凍処理することで冷凍品とすることができる。皮用塊状体の切欠は冷凍前の状態で切欠を設けて成形しておいてもよいし、冷凍後に切欠部分を切取ることで設けてもよい。
【0070】
本発明の餃子の皮用塊状体の重量は、5〜9gであることが好ましい。重さは、5.5〜8.5gがより好ましく、6〜8gとなるように調製することが特に好ましい。このような重量の時、餃子の皮としたときに適した大きさの餃子の皮を製造しやすい。また、本発明の餃子の皮用塊状体の直径は、20〜40mmであることが好ましい。このような直径とすることで、成形機に挿入しやすく、かつ圧延により厚さが均一になりやすくなる。また、保管時もかさばりにくい。また、本発明の餃子の皮用塊状体の厚みは、5〜20mmであることが好ましい。なお、この厚みは、両底面間の最も離れた直線距離である。直径よりも厚みが少ない球をつぶした厚い円盤状とすることでその略平端部をさらに圧延する方向として餃子の皮への成形が行いやすくなる。餃子の皮用塊状体は、主として小麦粉と水とでできた混練物を用いており、その大きさが餃子の皮自体の大きさや厚みに大きな影響を与える。また、餃子の皮は多数を同時に製造することも多い。しかし、混練物から餃子の皮用塊状体として適した量を測り取るのは一般家庭や小規模な飲食店で利用する数に対しても煩雑となる。また、手作業で適量を見分けるのは個人の技能の差が大きく出てしまったり、熟練するまで相当の時間がかかる場合がある。本発明の餃子の皮用塊状体としておいたものを用いると、このような問題点を解決して、適した量を効率よく得ることができる。