特許第6858428号(P6858428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6858428フィルター製造方法およびフィルター製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6858428
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】フィルター製造方法およびフィルター製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/06 20060101AFI20210405BHJP
   B01D 33/044 20060101ALI20210405BHJP
   B01D 39/18 20060101ALI20210405BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B01D33/06 Z
   B01D33/12
   B01D39/18
   B01D39/16 E
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2020-139930(P2020-139930)
(22)【出願日】2020年8月21日
【審査請求日】2020年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519101498
【氏名又は名称】株式会社ニッシン
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】作間 雄次
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−170511(JP,A)
【文献】 特開2017−177091(JP,A)
【文献】 特開2006−305430(JP,A)
【文献】 特開2014−151293(JP,A)
【文献】 特開2015−112523(JP,A)
【文献】 特開2013−230453(JP,A)
【文献】 特開2020−059947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00−35/04、35/08−37/08、
39/00−41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の片面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するものである、前記フィルターの製造方法であって、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けロール状に巻いて前記フィルターを得る一連の処理工程として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着工程と、
前記乾燥定着工程で片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程とを含み、
前記補強層形成工程は、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出し走行する前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である
ことを特徴とするフィルター製造方法。
【請求項2】
メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の両面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するものである、前記フィルターの製造方法であって、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設ける一連の処理工程として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着工程とを含み、
前記第1乾燥定着工程での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理工程として、
前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着工程とを含み、
さらに、前記第2乾燥定着工程の処理を終えて前記フィルター躯体の両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程を含み、
前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程は、
前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である
ことを特徴とするフィルター製造方法。
【請求項3】
前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程は、
前記回転ドラムの外周の補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、一部を前記回転ドラムの円筒網部に巻き付けた前記フィルター躯体に含侵させ、他の一部を前記フィルター躯体に突き刺させ、残り多量部を様々な方向に向いた状態に前記フィルター躯体の表面に積層させかつ前記突き刺した状態のセルロースナノファイバーと絡ませるとともに積層部分のセルロースナノファイバーの繊維と前記フィルター躯体から延びる繊維とを絡ませた状態のセルロースナノファイバー層を形成する処理する構成である
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルター製造方法。
【請求項4】
前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程は、
前記水にカチオン性澱粉が所要割合で溶解させ、この溶解水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している前記補強層形成液とすることにより、前記セルロースナノファイバー層の網状構造を強化し、平坦化保持力を高め、前記セルロースナノファイバー層と前記フィルター躯体との結合を強化する処理する構成である
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルター製造方法。
【請求項5】
前記第1乾燥定着工程および前記第2乾燥定着工程は、
前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程を終えて導かれる前記セルロースナノファイバー層が形成された前記フィルター躯体に対し、前記セルロースナノファイバー層が形成された面と反対側の面に接触回転して吸水し、次いで、乾燥を行い残りの水分を除去し、次いで、前記セルロースナノファイバー層に押圧力を加えることにより、前記セルロースナノファイバー層の平坦化を図るとともに前記補強層形成工程において前記フィルター躯体に突き刺さった前記セルロースナノファイバーをさらに深く突き刺さるようにする処理する構成である
ことを特徴とする請求項または4に記載のフィルター製造方法。
【請求項6】
前記第1乾燥定着工程および前記第2乾燥定着工程は、伝熱、輻射熱、または熱風を当てる処理である
ことを特徴とする請求項または4に記載のフィルター製造方法。
【請求項7】
前記フィルター躯体は、ろ紙、不織布、織布、またはプラスチックフィルムに微細孔を一面に隙間なく分散してなるウエブを用いる
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフィルター製造方法。
【請求項8】
メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の片面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するものである、フィルター製造装置であって、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着し不純物処理装置フィルターに再使用可能なロール状に巻き取り前記フィルターを得る一連の処理手段として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着部と、
前記乾燥定着部の処理を終えて片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備え、
前記補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつ前記ファイバー積層用処理タンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記ファイバー積層用処理タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である
ことを特徴とするフィルター製造装置。
【請求項9】
メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の両面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するものである、フィルター製造装置であって、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着する一連の処理手段として、
前記フィルター躯体の前記一方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着部とを備え、
前記第1乾燥定着部での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理手段として、
前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着部とを備え、
さらに、前記第2乾燥定着部の処理を終えて両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備え、
前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつ前記ファイバー積層用処理タンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記ファイバー積層用処理タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液を前記ファイバー積層用処理タンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である
ことを特徴とするフィルター製造装置。
【請求項10】
前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
前記回転ドラムの外周の補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、一部を前記回転ドラムの円筒網部に巻き付けた前記フィルター躯体に含侵させ、他の一部を前記フィルター躯体に突き刺させ、残り多量部を様々な方向に向いた状態に前記フィルター躯体の表面に積層させかつ前記突き刺した状態のセルロースナノファイバーと絡ませるとともに積層部分のセルロースナノファイバーの繊維と前記フィルター躯体から延びる繊維とを絡ませた状態のセルロースナノファイバー層を形成する処理部である
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルター製造装置。
【請求項11】
記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
前記水にカチオン性澱粉が所要割合で溶解させ、この溶解水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している前記補強層形成液とすることにより、前記セルロースナノファイバー層の網状構造を強化し、平坦化保持力を高め、前記セルロースナノファイバー層と前記フィルター躯体との結合を強化する処理部である
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルター製造装置。
【請求項12】
記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部の少なくとも1つには、セルロースナノファイバーの分散濃度が低い前記補強層形成液を貯留する低濃度用液貯留タンクと、セルロースナノファイバーの分散濃度が高い前記補強層形成液を貯留する高濃度用液貯留タンクとを備えて切り替え式に給液可能に備えている
ことを特徴とする請求項11に記載のフィルター製造装置。
【請求項13】
記第1乾燥定着部および前記第2乾燥定着部は、
前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部の処理を終えて導かれる前記セルロースナノファイバー層が形成された前記フィルター躯体に対し、前記セルロースナノファイバー層が形成された面と反対側の面に接触回転して吸水し、次いで、乾燥を行い残りの水分を除去し、次いで、前記セルロースナノファイバー層に押圧力を加えることにより、前記セルロースナノファイバー層の平坦化を図るとともに前記補強層形成部において前記フィルター躯体に突き刺さった前記セルロースナノファイバーをさらに深く突き刺さるようにする処理する構成である
ことを特徴とする請求項ないし12のいずれか1項に記載のフィルター製造装置。
【請求項14】
前記第1乾燥定着部および前記第2乾燥定着部におけ前記乾燥理は、伝熱、輻射熱、または熱風を当てる処理である
ことを特徴とする請求項ないし13のいずれか1項に記載のフィルター製造装置。
【請求項15】
前記フィルター躯体は、ろ紙、不織布、織布、またはプラスチックフィルムに微細孔を一面に隙間なく分散してなるウエブを用いる
ことを特徴とする請求項8ないし14のいずれか1項に記載のフィルター製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター製造方法およびフィルター製造装置に関し、特に、水性液を通流させるとともに水性液中の固形不純物を捕捉する再使用可能なフィルター製造方法およびフィルター製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砥石研削加工等において金属工作物の被加工面に供給され、潤滑・冷却・洗い流し等のために使われた後のクーラント液には、金属の切粉、砥粒などの固形分、および潤滑油や防錆油などの不純油を含んでいる。このため、クーラント液を循環して使い続けることは、研削精度の低下、ひいては工作物の品質の低下を惹き起こす要因になる。
【0003】
そこで、フィルターをロール状に巻かれた状態から繰り出し固形不純物を含む水性液の流れを堰き止める状態にセットし、フィルターを面方向に連続移動する。そして、フィルターに水性液を通流させるとともに固形不純物を捕捉する(特許文献1、2参照)。
【0004】
以下の特許文献1、2の説明で使用する符号は、各特許文献中で使用している符号である。
【0005】
特許文献1に示される連続濾過装置は、ロール体3から引き出される濾過フィルター4が、供給用ローラー20を介して濾過ドラム10の外周面に巻き付けられた後、排出用ローラー30を介して汚濁槽2の外部に導かれており、濾過ドラム10と排出用ローラー30とが回転することにより、濾過フィルター4を連続的に濾過ドラム10に巻き付けて移動しつつ、真空ポンプ5の負圧により汚濁液1の固形物と浄化液体とを濾過フィルター4を境界面として分離し、濾過フィルター4に付着した固形物を濾過フィルター4と共にガイドローラー60を介して回収容器70内に回収することができる。
【0006】
このように、特許文献1に示される連続濾過装置によれば、使用済みの濾過フィルター4は、回収容器70から回収し固形物が付着した状態で焼却処理され、再使用しない技術を提供している。
【0007】
濾過フィルター4を目詰まりによって一回のみの使用で廃棄しなければならない場合、濾過フィルター4をコストの増大、環境負荷の増大などを招来する。使用済みの濾過フィルター4を繰り返し利用するためには、フィルターに付着した固形分を付着面にブラッシングすることにより分離・除去し、次いで、付着面と反対側からノズル噴射により洗浄水を勢いよく噴射することによりフィルターの目詰りを解消し、次いで、フィルターに付着した不純油をフィルターから分離・除去することが必要になる。
【0008】
特許文献2に示される切削液の濾過装置は、被処理液がバツフルプレート12間を上昇する過程で沈降する被処理液中の粗粒度の切削屑をバツフルプレート12上に受けて滑落させ、濾過タンク1内底面を走行する排出コンベア14上に受け止められ折返し部14aに搬送されスクレーパ15で掻落されスラツジボツクス16内に回収し、バツフルプレート12間を上方へ通過した被処理液をスクリーンベルト濾材27の下側走行部分を上方へ通過させ、この際に微細粒度の切削屑をスクリーンベルト濾材27で捕捉する。
【0009】
スクリーンベルト濾材27を繰り返し使用すると、スクリーンベルト濾材27のメッシュ孔に微細粒度の切削屑が詰まりフィルター精度が低下するので、切削屑を取り除くため、非濾過時にブラシローラー40でスクリーンベルト濾材27をブラッシングするとともに、逆洗ノズル39でスクリーンベルト濾材27の裏面に浄化液を噴射する。
【0010】
このように、特許文献2に示される切削液の濾過装置によれば、スクリーンベルト濾材27を再使用できる技術を提供し、スクリーンベルト濾材27のコストパフォーマンスを上げられる技術を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−305430号公報
【特許文献2】特開昭58−170511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に示される切削液の濾過装置によれば、スクリーンベルト濾材27を再使用できる技術を提供している。しかしながら、この技術に示されるスクリーンベルト濾材27を再使用する実例はこれまでのところ全く見受けられない。そこで、本発明者がフィルターを再使用することについて実験を通じて検討したところ、以下のような問題点があることが分かった。
【0013】
まず、ろ紙は再使用回数が増えるに連れて紙力が低下する。特に、ろ紙を再使用するために、ろ紙の固形分が付着した面にブラッシングして固形分を掃き落とす工程が入ることや、ろ紙を曲がりくねって巻き掛け走行するので、ろ紙が紙力を大きく低下するものとなっている。また、ろ紙が紙力を大きく低下すると、メッシュ孔が大きく広がるようになり、ろ過性能が低下していく。
【0014】
さらに、ろ紙が紙力を低下すると、しわが発生し平面性が損なわれ当初の帯状で直線形状が蛇行する状態になり、綺麗なロール状に巻き取れなくなり、そして、ろ紙が紙力を低下すると、ろ過中にフィルターの側縁に亀裂が入り、亀裂が一度入ることに加えてしわが発生することでろ紙を巻き掛け走行が円滑に行われないときに大きく変化するテンションにより、亀裂に応力集中が起きて急激に大きな亀裂に発展しろ紙が破裂してしまうという危険がある。
【0015】
ろ過中にろ紙の破裂を招くと、ろ紙を交換する手間がかかるという問題にとどまらず、それまでのろ過済みの液にろ過していない液が混ざってしまい、最初からろ過をやり直さなければならないという大きな問題になる。
【0016】
そのため、ろ紙の破裂を招く恐れがないという安全性の面からはろ紙の再使用回数を小さく抑えることの要求が存在する。そのため、実験を通じてフィルターの種類ごとに側縁に小さな亀裂が生じる恐れがある再使用回数について必要回数データ取りし、その中の最小の再使用回数よりも小さい再使用回数に抑えて使用することが1つの問題解決手法である。
【0017】
他方、市販されているろ紙やろ布について、再使用回数を大きくする工夫をして、フィルター材料のコストパフォーマンスを高めることが他の1つの問題解決手法である。上記の状況において、従来は、ろ紙の再使用できる回数を大幅に増やす改善提案は見受けられない。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるようろ紙等をベースとして強化されたフィルター製造方法およびフィルター製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る第1,第2のフィルター製造方法および第1,第2のフィルター製造装置は、いずれも上記目的を達成するため、メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の片面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するものである。
【0020】
本発明に係る第1の態様のフィルター製造方法は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けロール状に巻いて前記フィルターを得る一連の処理工程として、前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成工程と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着工程と、
前記乾燥定着工程で片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程とを含む。
【0021】
そして、本発明に係る第1の態様のフィルター製造方法は、
前記補強層形成工程は、前記ロール状に巻いた状態から繰り出し走行する前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する処理する構成である。
【0022】
次に、本発明に係る第2の態様のフィルター製造方法は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設ける一連の処理工程として、前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成工程と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着工程とを含み、前記第1乾燥定着工程での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理工程として、前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2の補強層形成工程と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着工程とを含み、さらに、前記第2乾燥定着工程の処理を終えて前記フィルター躯体の両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程を含んでいる。
【0023】
そして、本発明に係る第2の態様のフィルター製造方法における前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程は、
前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する処理する構成である。
【0024】
本発明に係る第1の態様のフィルター製造装置は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着し不純物処理装置フィルターに再使用可能なロール状に巻き取り前記フィルターを得る一連の処理手段として、前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成部と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着部と、前記乾燥定着部の処理を終えて片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備えた構成である。
【0025】
そして、本発明に係る第1の態様のフィルター製造装置の前記補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつタンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体をタンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である。
【0026】
そして、前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着する一連の処理手段として、前記フィルター躯体の前記一方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成部と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着部とを備え、
前記第1乾燥定着部での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理手段として、前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2補強層形成部と、前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着部とを備え、さらに、前記第2乾燥定着部の処理を終えて両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備えた構成である。
【0027】
さらに、本発明に係る第2の態様のフィルター製造装置の前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつタンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体をタンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるようろ紙等をベースとして強化されたフィルター製造方法およびフィルター製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明装置により製造されるフィルターが適用される不純物除去装置をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べたブロック図である。
図2】本発明装置により製造されるフィルターであって、図2(A)はフィルターの斜視図を示し、図2(B)はフィルター躯体の一部拡大断面図を示し、図2(C)はフィルター躯体の片面に補強層を固着したフィルターの一部拡大断面図を示し、図2(D)はフィルター躯体の両面に補強層を固着したフィルターの一部拡大断面図を示す。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係り、各構成要素をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べたフィルター製造装置の原理図である。
図4図4は、図3に示すフィルター製造原理図と実質同一の実施の形態に係るフィルター製造装置の縦断正面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態に係り、各構成要素をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べたフィルター製造装置の原理図である。
図6図6は、図5に示すフィルター製造原理図と実質同一の実施の形態に係るフィルター製造装置の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係るフィルター製造方法およびフィルター製造装置について図面を参照して説明する。
【0031】
[本発明装置により製造されるフィルターの適用例]
図1は、本発明の実施の形態に係るフィルター製造装置により製造されるフィルターが適用される不純物除去装置をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べたブロック図である。不純物除去装置は、例えば、フィルター供給部1と、ろ過タンク部2と、ブラッシング部3と、メッシュ孔目詰り解消部4と、水分除去部5と、フィルター巻取部6とを有する。
【0032】
次に、不純物除去装置を説明する。後述の図2(A)に示す本実施の形態に係るフィルターF1(F2)は、ロール状に巻かれており、フィルター供給部1に支持された状態から一定速度で連続して繰り出され、ろ過タンク部2に導かれ固形不純物を含む水性液(例えば研削機械の使用済クーラント液)の流れを堰き止める状態にセットされ面長方向に移動する。そして、フィルターF1(F2)は、ろ過タンク部2において、水性液についてはフィルターの堰き止め面に作用する上流側の液圧と下流側の液圧との圧力差(上流側の液圧を昇圧させるか、または下流側の液圧を減圧させること)を利用してメッシュ孔に能動的に通流させ、固形不純物についてはメッシュ孔を通流させず液圧の圧力差で密着させた状態に捕捉する。次いで、フィルターF1(F2)は、堰き止め位置からブラッシング部3に移動しブラッシングにより捕捉した固形不純物を掃き落とされる。続いて、フィルターF1(F2)は、メッシュ孔目詰り解消部4に移動され、捕捉面と反対側の面からメッシュ孔に流体圧力を加えてメッシュ孔の目詰りとなっている微細固形不純物をメッシュ孔・捕捉面より離脱させることでメッシュ孔の目詰りを解消する。その後、フィルターF1(F2)は、水分除去部5で水分除去されてからフィルター巻取部6において再びロール状に巻かれることにより、繰り返し使用できるものである。
【0033】
このように、フィルターF1(F2)は、ロール状に巻かれた状態から一定速度で連続して繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めるように膜状に張設され、かつ連続移動する状態において、堰き止め位置において被処理液をメッシュ孔に通流させ、被処理液中の固形不純物を下流側に通流させず捕捉するフィルターである。
【0034】
[本発明の製造方法・装置で製造されるフィルターの概略の構成]
図2(A)は、後述する第1,第2の実施の形態に係るフィルターF1,F2のロール形態の斜視図を示す。図2(B)はフィルターを構成するメッシュ孔11aを有するフィルター躯体11(従来のろ紙と同等品)の一部拡大断面図を示し、図2(C)はフィルター躯体11の片面に補強層12を固着してなるフィルターF1の一部拡大断面図を示し、図2(D)はフィルター躯体11の一方の面に補強層12Aを固着し、他方の面に補強層12Bを固着してなるフィルターF2の一部拡大断面図を示す。フィルターF1,F2は、図1に示す不純物除去装置に繰り返し適用するフィルターとして、ろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるようろ紙等をベースとして強化されたものである。
【0035】
[第1の実施の形態]
[第1のフィルター製造装置]
まず、図3を参照して本発明の第1の実施の形態のフィルター製造装置20の概略の構成を説明する。図3は、各構成要素をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べたフィルターF1の製造原理図である。フィルター製造装置20は、フィルター躯体供給部21と、補強層形成部22と、乾燥定着部23と、フィルター巻取部24とを備え、図2(B)に示すロール状に巻かれた状態から繰り出されるフィルター躯体11の片面に図2(C)に示すように補強層12を固着し、図2(A)に示すロール状に巻かれたフィルターF1を製造することができる。
【0036】
図3において、フィルター躯体供給部21にロール状に巻かれているフィルター躯体11は、補強層形成部22において片面(下面)に補強層(セルロースナノファイバー層)12が所要厚さの薄膜層として吸着により積層される。次いで、乾燥定着部23で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、最後に、フィルター巻取部24においてロール状に巻き取られ、もって、フィルター躯体11の片面に補強層12が積層固着されたフィルターF1が製造される。
【0037】
続いて、図4を参照してフィルター製造装置20の詳細な構成を説明する。図4は、図3に示すフィルター製造装置20の原理図と実質同一の実施の形態に係るフィルター製造装置20の縦断正面図である。図4に示すフィルター製造装置20は、乾燥定着部23とフィルター巻取部24との間にアキュムレータ25を備えている。
【0038】
フィルター躯体供給部21は、ブラケット21aと、ブラケット21aに自由回転可能に片持ち支持され、かつ弱いブレーキ力を調整可能に加えられる回転軸21bと、回転軸21bに組み込まれており回転軸21bの外周に被嵌されるロール状のフィルター躯体11のボビンに対し内径面をチャックするチャック機構(図示なし、符号なし)と、モータ21eにより定速で駆動回転されるフィルター躯体繰り出しロール21dと、フィルター躯体繰り出しロール21dの転圧するフリー回転可能なニップロール21cとを備えている。回転軸21bに被嵌されるロール状のフィルター躯体11は、ニップロール21cとフィルター躯体繰り出しロール21dとに順に巻き掛けされ、補強層形成部22に導かれる。フィルター躯体11は、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムのいずれか1つであり、ロール状に巻かれるメッシュウエブ製である。
【0039】
補強層形成部22は、ファイバー積層用処理タンク22aと、ファイバー積層用処理タンク22a内に設けられた回転ドラム22bと、回転ドラム22b内に設けられた概略扇状の吸引ボックス22cとを備え、フィルター躯体11の一方の面に、フィルター躯体11の破裂強度の増強およびしわが縒り難い平面保持性を付与するとともに、フィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与する所要厚さの多孔質膜のセルロースナノファイバー層12を吸着形成する。
【0040】
ファイバー積層用処理タンク22aは、タンク本体22a1と、タンク本体22a1の底面部の中央部に一段低く形成された液導入部22a2と、液導入部22a2の側面部設けられた液導入口22a3と、液導入部22a2の底面円錐部の中央部に設けられた液抜き取り口22a4と、液抜き取り口22a4に設けられた液抜き取り弁22a5と、タンク本体22a1内に貯留するファイバー層形成液の液面レベルを制御する液面高位レベルセンサ22a6および液面低位レベルセンサ22a7とを備えている。液面高位レベルセンサ22a6と液面低位レベルセンサ22a7とを備えることで、ファイバー積層用処理タンク22aには、常に一定濃度に管理されたファイバー層形成液が貯蔵管理される。
【0041】
回転ドラム22bは、タンク本体22a1に両端支持される水平軸22b1と、タンク外面に支持されており水平軸22b1の一方の一端と水平軸22b1と連結され水平軸22b1を回転駆動するモータ22b2と、円筒網部22b3とを備えている。円筒網部22b3は、水平軸22b1のタンク内の一端(図面垂直上方端)に軸支され、円筒網部22b3の一側を閉じている円盤状フレーム(図示しない、符号なし)に支持されており、これにより、円盤状フレームが吸引ボックス22cとの干渉を回避して回転できる。円筒網部22b3は、例えば、10mm角の孔部を1mm幅の線状繋ぎ部とからなるステンレス製多孔円筒体よりなる。
【0042】
フィルター躯体供給部21より導かれるフィルター躯体11は、円筒網部22b3に全幅で覆うように巻き付けられる。円筒網部22b3の周速がフィルター躯体繰り出しロール21dにより送られるフィルター躯体11の速度と一致するように、水平軸22b1がモータ22b2により駆動回転される。なお、モータ22b2を廃止し、モータ21eを動力を分岐し水平軸22b1を駆動するよう構成することができる。
【0043】
吸引ボックス22cは、弧状円筒部22c1と、ボックス本体22c2と、液出口22c3とを備えている。弧状円筒部22c1は、回転ドラム22bの円筒網部22b3の内周長の例えば1/3の長さを有し円筒網部22b3の下側部分の内面に近接している。弧状円筒部22c1は、回転ドラム22bの円筒網部22b3と同様に、例えば、10mm角の孔部を1mm幅の線状繋ぎ部とからなるステンレス製多孔円筒体よりなり、回転ドラム22bの円筒網部22b3の内周面に近接している。ボックス本体22c2は、タンク本体22a1に支持されており、弧状円筒部22c1以外の周囲が閉塞しているステンレス製のボックス形態である。液出口22c3は、ボックス本体22c2の弧状円筒部22c1より離れている上部に設けられた短管よりなり、タンク本体22a1の側面部をタンク外へ貫通している。
【0044】
補強層形成部22は、一端(下端)が液貯留タンク26内の底部に垂下し他端が液導入口22a3に連通接続された給液管27と、給液管27の中途に設けられた給液用ポンプ28とを備え、液貯留タンク26内に貯留された補強層形成液を液導入部22a2の内周面に沿ってタンク本体22a1内に流入し、液面高位レベルセンサ22a6と液面低位レベルセンサ22a7とにより2つのセンサ間の高さレベルに制御される。補強層形成液は、水に所定割合のカチオン性澱粉を溶融させた水溶液と、この水溶液に所定割合となるように分散させたセルロースナノファイバーとからなる。セルロースナノファイバーは、両親媒性を有するセルロースナノファイバーが用いられる。
【0045】
補強層形成部22は、一端(下端)が受液タンク29内に垂下し他端(上端)が吸引ボックス22cの液出口22c3に連通接続された吸引管30と、吸引管30の中途に設けられた吸引用ポンプ31とを備え、吸引用ポンプ31により吸引ボックス22c内の液を吸引して受液タンク29内に流下させるようになっている。
【0046】
したがって、フィルター躯体供給部21より導かれるフィルター躯体11は、円筒網部22b3に全幅で覆うように巻き付けられることでタンク本体22a1に貯留される補強層形成液を堰き止めている。こうして堰き止められる補強層形成液は、吸引ボックス22c内の液が吸引用ポンプ31で吸引排出され陰圧になることから、フィルター躯体11のメッシュ孔を通流して吸引ボックス22c内に流入することができ、補強層形成液に分散しているセルロースナノファイバーは、フィルター躯体11のメッシュ孔を通流させずに表面に捕捉しセルロースナノファイバー層を形成する。また、一定量のセルロースナノファイバーがフィルター躯体11に含侵し、これにより、フィルター躯体11の破裂強度が大きくなる。
【0047】
フィルター躯体11は、回転ドラム22bの円筒網部22b3に巻き付いて走行しセルロースナノファイバー層12を形成され乾燥定着部23へ導かれるようになっている。
【0048】
乾燥定着部23は、吸水ロール23bと、電熱ヒータ対23fと、転圧ロール対23gとを備えており、回転ドラム22bから導かれるセルロースナノファイバー層12を形成されたフィルター躯体11をガイドロール23a,23dにより吸水ロール23bに巻き付け角度を大きく確保され、次いで、ガイドロール対23eと電熱ヒータ対23fと転圧ロール対23gとに順次通されアキュムレータ25に導かれるようになっている。
【0049】
吸水ロール23bは、例えばスポンジ等の多孔質材料製のロールであり、ロール軸が中空かつ多孔筒体よりなり、両端が回転フリーに軸支され一端が閉塞されかつ他端が回転ジョイントを介してバキュームパイプ23cと接続されている。バキュームパイプ23cは、上端が図示しない真空ポンプに接続されているとともに、管立ち上がり部の管内底部に設けられている水切り板に阻止される水を下向きの水出口より流出するようになっている。
【0050】
電熱ヒータ対23fは、セルロースナノファイバー層12を形成されたフィルター躯体11を非接触で通し、輻射熱(熱線)により加熱するようになっている。電熱ヒータ対23fの加熱は、所要温度に調節可能である。
【0051】
転圧ロール対23gは、間隔調整可能で転圧ロール力を調整可能に設けられ、セルロースナノファイバー層12を形成されたフィルター躯体11に転圧力を加え、これによりセルロースナノファイバー層12を層厚さを任意に調整圧縮して平坦化するとともに、セルロースナノファイバー層12の中のフィルター躯体11に向いたセルロースナノファイバーが突き刺さるとともに、セルロースナノファイバーとフィルター躯体11の繊維とが絡まることにより、セルロースナノファイバー層12とフィルター躯体11との密着力が大きく保持される。
【0052】
なお、乾燥定着部23のガイドロール対23eと電熱ヒータ対23fと転圧ロール対23gに対する変形例として、図4中に示す乾燥定着部23Aを設けることができる。乾燥定着部23Aは、セルロースナノファイバー層12が積層されたフィルター躯体11がローラー間の距離(ギャップ)を調整可能なヒーターロール23h,23iにより加熱(伝熱)される。この例では、セルロースナノファイバー層12が積層されたフィルター躯体11がヒーターロール23h,23iに対しガイドロール23k,23mにより巻き付け角度を大きくなるよう巻き掛けされる。ヒーターロール23iの下流側には、ガイドロール23m,23nの間にローラー間の距離(ギャップ)を調整可能な転圧ロール対23jをそれぞれフリー回転可能に備えている。これらの用途の異なったローラーの組み合わせを有することで、セルロースナノファイバー分散液を含み、膨潤、変形したろ紙から余分な水分を除去し、ろ紙の表面を平準化及び厚みを均一化することで、補強層(セルロースナノファイバー層)のろ紙への安定した定着化が可能となる。そのほか、乾燥定着部23に対する部分変形例として、熱風を吹き付ける構成であっても良い。さらに、電熱ヒータ対23fと転圧ロール対23gとの間に、ヒーターロール対を設けてもよく、このようにすると、乾燥定着部23Aの変形例は含まれる。なお、電熱ヒータ対23fは加熱温度を調整できるものとする。
【0053】
アキュムレータ25は、フィルター躯体牽引ロール25bと、フィルター躯体牽引ロール25bを駆動回転するモータ25cと、フィルター躯体11の片面にセルロースナノファイバー層12が定着され強化されたフィルターFをフィルター躯体牽引ロール25bに対する巻き付け角度を大きく保持するガイドロール25a,25dと、段差ロール25eと、ガイドロール25fとを備えている。なお、モータ25cを廃止し、モータ21eを動力を分岐しフィルター躯体牽引ロール25bを駆動回転するよう構成することができる。
【0054】
フィルター巻取部24は、ブラケット24aと、ブラケット24aに自由回転可能に片持ち支持された巻取用回転軸24bと、巻取用回転軸24bを駆動回転するモータ24cと、巻取用回転軸24bに組み込まれており巻取用回転軸24bの外周に被嵌されるフィルターF1のボビンに対し内径面をチャックするチャック機構(図示なし、符号なし)と、ガイドロール24dとを備えている。モータ24cの駆動と段差ロール25eと昇降は、包装技術で普及している制御が適用される。
【0055】
続いて、図4に示すフィルター製造装置20の作用を説明する。なお、この作用の説明を通じて第1の実施の形態に係るフィルター製造方法を説明する。
【0056】
[運転の開始]
まず、ボビンに巻いたロール形態であるフィルター躯体11をフィルター躯体供給部21の回転軸21bに取り付け、円筒網部22b3の外周面下部、吸水ロール23bに順に巻き付け、電熱ヒータ対23fに通し、アキュムレータ25に掛けてフィルター巻取部24の巻取軸24bに取り付けるボビンに先端部を固着する。しかる後、給液用ポンプ28を稼働し、補強層形成部22内に補強層形成液を液面レベルを所定高さになるよう供給する。これにより、補強層形成液が、回転ドラム22bの円筒網部22b3と吸引ボックス22cの弧状円筒部22c1との僅かな隙間を通して吸引ボックス22c内に充満する(初期充満)。
【0057】
次いで、吸引用ポンプ31を稼働し、そして、例えば数秒ないし十数秒が経過したらモータ21e,22b2,25c,24cを駆動し、吸引管30およびバキュームパイプ23cよりバキュームを開始する。
【0058】
[補強層形成部22の作用]
吸引ボックス22cの液出口22c3に連通接続された吸引管30に設けられた吸引用ポンプ31を稼働すると、吸引ボックス22c内の補強層形成液が吸引され吸引ボックス22c内の液圧が陰圧になり、タンク本体22a1内の補強層形成液が吸引ボックス22cへ向かう流動を開始する。上記の数秒ないし十数秒経過すると、回転ドラム22bが駆動回転され、回転ドラム22bに巻き付けられたフィルター躯体11が走行開始する。
【0059】
吸引ボックス22cの弧状円筒部22c1に対応する領域でタンク本体22a1内の補強層形成液が吸引ボックス22cへ向かう流動を開始する。補強層形成液の流動において、水はフィルター躯体11のメッシュ孔を通流する。補強層形成液中のセルロースナノファイバーはフィルター躯体11のメッシュ孔を通流することができず、陰圧吸引力によりフィルター躯体11の表面に引き付けられ積層される。セルロースナノファイバーが積層される過程において、セルロースナノファイバーの一部はフィルター躯体11に含侵してフィルター躯体11の破裂強度を大きくすることに関与し、またセルロースナノファイバーの他の一部がフィルター躯体11の表面に向いて突き刺さり、そして、さまざまな三次元方向に向いた状態のセルロースナノファイバーの残部(大部分)が、上記の突き刺さったセルロースナノファイバーおよびフィルター躯体11の表面から延びる繊維が絡み着くことになる。これにより、フィルター躯体11と、フィルター躯体11の表面に形成されるセルロースナノファイバー層とが固着力を生じる。補強層形成液はカチオン性澱粉が溶けているので、セルロースナノファイバー層12にはカチオン性澱粉を含むことになり、セルロースナノファイバー層12は、カチオン性澱粉に起因してフィルター躯体11への固着力を一層高めることになるとともに、セルロースナノファイバー層12の網状構造の強度を大きくする。カチオン性澱粉は、フィルター躯体とセルロースナノファイバー繊維の補強層との複合構造体に対して、その複合構造体の内部紙力及び表面紙質向上剤として紙力増強効果(紙力増強剤)がある。
【0060】
[乾燥定着部23の作用]
上記のように、補強層形成部22においてセルロースナノファイバー層12が積層されフィルター躯体11は、水を多く含んで厚く膨潤しており、バキュームパイプ23cよりバキュームが行われることにより、ロール表面より内部に向かい吸水作用をする吸水ロール23bに巻き付いて通過する過程でフィルター躯体11のセルロースナノファイバー層12の積層面と反対側の面より吸水される。これにより、セルロースナノファイバー層12がフィルター躯体11の表面に一層強く密着するとともに、次の電熱ヒータ対23fによる加熱乾燥を効果的に行うことができる。
【0061】
電熱ヒータ対23fは、吸水ロール23bにより吸水が行われた後のセルロースナノファイバー層12が積層されたフィルター躯体11が、ガイドロール対23gから転圧ロール対23jまで水平移動する過程で輻射加熱し残りの水分を除去する。転圧ロール対23jは、水分を除去したセルロースナノファイバー層12が積層されたフィルター躯体11に対し転圧し平坦化する。これにより、ロール圧が作用することで補強層形成部22において、フィルター躯体11に突き刺さったセルロースナノファイバーがさらに深く突き刺さり、もって、フィルター躯体11とセルロースナノファイバー層12とが固着力をさらに大きくする。
【0062】
転圧ロール対23g(または23j)を通過したセルロースナノァイバー層12が積層されたフィルター躯体11はフィルターF1として完成され、アキュムレータ25を経てフィルター巻取部24の巻取軸24bに巻き取られる。
【0063】
[フィルターの継ぎ足し処理]
フィルター製造が促進してフィルター躯体供給部21にセットしたロール状のフィルター躯体11の巻き終わり端がボビンから離れる少し前の時点で、ポンプ28,31およびモータ21e,22b2,25c,24cの稼働を停止する。そして、ボビンを回転軸21bから取り外し、次のロール状のフィルター躯体11をフィルター躯体供給部21にセットし繰り出し端を上記のフィルター躯体11の巻き終わり端と粘着テープで接続する。次いで、再びポンプ28,31およびモータ21e,22b2,25c,24cを稼働する。粘着テープによる継ぎ足し位置がフィルター巻取部24に到達したら、再びポンプ28,31およびモータ21e,22b2,25c,24cの稼働を停止する。そして、継ぎ足しを解除してフィルター巻取部24からロール状のフィルターF1を取り外し、新しいボビンを巻取用回転軸24bに取り付け、このボビンに継ぎ足しを解除した後のフィルターF1の先端を固定して複数回巻き付け、再びポンプ28,31およびモータ21e,22b2,25c,24cを稼働する。以上により、フィルターの継ぎ足し処理を完了する。このようなフィルターの継ぎ足し処理をすれば、フィルター躯体供給部21にセットする新しいロール状のフィルター躯体11を繰り出してフィルター巻取部24までの巻き掛け操作を自動的に行うことができるとともに、フィルターの継ぎ足し処理のための巻き掛け操作タンク本体22a1内の補強層形成液の全量を一時的に排液することを回避することができる。
【0064】
[第1の実施の形態の変形例]
補強層の厚さを変更するための1つの変形例として、液貯留タンク26を2つ設け、2つのタンク内にはセルロースナノファイバーの分散濃度が異なる補強層形成液をそれぞれ貯留する。すなわち、液貯留タンク26は、補強層形成部に対応して、低濃度用液貯留タンクと、高濃度用液貯留タンクとを備えて切り替え式に給液可能に備えていてもよい。そして、フィルター躯体に層の厚さが小さい補強層形成を形成する際は、セルロースナノファイバーの分散濃度が低い補強層形成液を貯留している液貯留タンク26を選択し、またフィルター躯体に層の厚さが大きい補強層形成を形成する際は、セルロースナノファイバーの分散濃度が高い補強層形成液を貯留している液貯留タンク26を選択し、該選択したタンク内の補強層形成液をファイバー積層用処理タンク22a内に供給しても良い。
【0065】
補強層の厚さを変更するための他の変形例として、回転ドラム22bの円筒網部22b3に巻き付いて走行するフィルター躯体11の走行速度を変更してもよい。
【0066】
回転ドラム22bの設け方として、モータ22による駆動回転とはしないで、回転可能に設けるものとして、円筒網部22b3に巻き付いて走行するフィルター躯体11の巻き付き力により牽引されて回転するようにしてもよい。
【0067】
回転ドラム22bの設け方として、回転ドラム22bの中心に設ける水平軸22b1に支持される構成に替えて、円筒網部22b3の両側外周縁部を係合案内するガイドをタンク本体22a1の内面に設けるようにしてもよい。
【0068】
乾燥定着部23と乾燥定着部23Aとを1つにまとめた構成としてもよい。具体的には、フィルター躯体11の走行方向上流側から順に、吸水ロール23bと、電熱ヒータ対23fと、ガイドロール対23eと、ヒーターロール23h,23iと、転圧ロール対23gと、転圧ロール対23jとを設ける構成としてもよい。
【0069】
フィルター躯体11を走行する他の構成として、フィルター躯体供給部21の回転軸21bに設けるフィルター躯体繰り出し用モータと、フィルター巻取部24の巻取用回転軸24bに設けるフィルター巻取用のモータ24cとの2つのモータのみを設け、回転ドラム22bの円筒網部22b3に巻き付いて走行するフィルター躯体11の走行速度を検出するとともにフィルター躯体11に走行中に作用するテンションとを常時に検出し、走行速度一定、テンション一定となるように2つのモータをソフトウエア制御する。
【0070】
フィルター躯体牽引ロール25bとモータ25cとアキュムレータ25を設けず、フィルター巻取用のモータ24cにサーボモータを用い、フィルターF1のフィルム巻取速度(走行速度)が所定の速度となるようにフィルターF1の巻取径を常時測定してモータ回転数を漸次に低速していくように回転駆動してもよい。
【0071】
フィルター躯体11を走行する他の構成として、図4ではフィルター巻取用のモータ24cの手前にアキュムレータ25を設ける構成としたが、フィルター躯体繰り出しロール21dと回転ドラム22bとの間にもフィルター躯体11の走行長さを吸収してテンションを確保するアキュムレータを設ける構成とすることができる。すなわち、アキュムレータを設けることで、モータ25cを所要の回転数となるよう定速回転させフィルター躯体牽引ロール25bによるフィルター躯体11の牽引走行を一定速度とすることができ、アキュムレータを構成する段差ロールの重量によってフィルター躯体11に作用するテンションを一定の大きさとすることができ、そして、フィルター躯体繰り出し用のモータ21eの回転速度については、段差ロールが高い閾値レベルに上昇したときに増速回転させ、段差ロールが低い閾値レベルに下降したときに減速回転させるように駆動することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
[第2のフィルター製造装置]
図5は、本発明の第2の実施の形態のフィルター製造装置40に係り、各構成要素をシンボリックな図で表し、かつ処理工程順に並べた概略のフィルターF2の製造原理図である。フィルター製造装置40は、フィルター躯体供給部41と、第1補強層形成部42と、第1乾燥定着部43と、第2補強層形成部44と、第2乾燥定着部45と、フィルター巻取部46とを備え、図2(B)に示すロール状に巻かれた状態から繰り出されるフィルター躯体11の片面に図2(D)に示すように補強層12A,12Bを固着し、図2(A)に示すロール状に巻かれたフィルターF2を製造することができる。
【0073】
図5において、フィルター躯体供給部41にロール状に巻かれているフィルター躯体11は、第1補強層形成部42においてセルロースナノファイバー層形成液により一方の面(下面)にセルロースナノファイバー層12Aが所要厚さの薄膜層として吸着され、次いで、第1乾燥定着部43で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥される。
【0074】
続いて、第2補強層形成部44においてセルロースナノファイバー層形成液により他方の面(下面)にセルロースナノファイバー層12Bが所要厚さの薄膜層として吸着され、次いで、第2乾燥定着部45で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、最後に、フィルター巻取部46においてロール状に巻き取られ、もって、フィルター躯体11の両面に補強層12A,12Bが積層固着されたフィルターF2が製造される。
【0075】
図6に示す装置においても、図示していないが、図4に示す液貯留タンク26および受液タンク29とに対応するように、第1補強層形成部42のタンク本体42aに補強層形成液を供給するための第1液貯留タンクおよび第2補強層形成部44のタンク本体44aに補強層形成液を供給するための第2液貯留タンク、並びに、第1補強層形成部42の吸引ボックス42cから吐出させる処理済液を受ける第1受液タンクおよび第2補強層形成部44の吸引ボックス44cから吐出させる処理済液を受ける第2受液タンクを備えている。
【0076】
さらに、補強層形成液を貯留する第1液貯留タンクと第2液貯留タンクは、それぞれ2つ有し、セルロースナノファイバーの分散濃度が高い補強層形成液と分散濃度が低い補強層形成液とを貯留し、これにより、第1液貯留タンクと第2液貯留タンクへのセルロースナノファイバーの分散濃度の異なる補強層形成液を切り替えて行うことができる。したがって、第1補強層形成部42と第2補強層形成部44のそれぞれにおいて形成する補強層の厚みを変更することができ、フィルター躯体11の両面に補強層12A,12Bの厚みを同一とし、または相違させることができる。
【0077】
続いて、図6を参照してフィルター製造装置40の構成・作用を説明する。図6は、図4に示すフィルター製造装置20の原理図と実質同一の実施の形態に係るフィルター製造装置40の縦断正面図である。
【0078】
図6に示すように、フィルター製造装置40は、フィルター躯体供給部41と、第1補強層形成部42と、第1乾燥定着部43とが上段に配置され、第2補強層形成部44と、第2乾燥定着部45と、フィルター巻取部46とが下段に配置されている。
【0079】
この実施の形態では、フィルター躯体供給部41から繰り出されるフィルター躯体11が第1補強層形成部42を走行する過程でフィルター躯体11に補強層であるセルロースナノファイバー層12Aが形成される。そして、セルロースナノファイバー層12Aが形成されたフィルター躯体11は、第1フィルター移行部50により第1乾燥定着部43から第2補強層形成部44へ導かれる。第1フィルター移行部50は、牽引用駆動ロール50aと、牽引用駆動ロール50aを駆動するモータ50bと、フリー回転可能に設けられ牽引用駆動ロール50aに当接するニップロール50cと、ガイドロール50d,50e,50fを備え、ガイドロール50fから第2補強層形成部44の回転ドラム44bに導かれる。
【0080】
またこの実施の形態では、フィルター躯体11に形成された補強層であるセルロースナノファイバー層12Aが第2補強層形成部44の回転ドラム44bに密着した状態で第2補強層形成部44を通過するとフィルター躯体11に補強層であるセルロースナノファイバー層12Bが形成される。そして、フィルター躯体11の一方の面にセルロースナノファイバー層12Aが形成され次いで他方の面にセルロースナノファイバー層12Bが形成されたフィルターF2が第2乾燥定着部45において水分除去・加熱定着・加圧平坦化されてから、第2のフィルター移行部60によりフィルター巻取部46へ導かれる。第2のフィルター移行部60は、巻き付け角度を大きくとるためのガイドロール60aと、ガイドロール60aにフィルターF2を巻き付け角度を大きく保持するガイドロール60b,60cとを備える。そして、この実施の形態では、アキュムレータがなく、フィルター巻取部46の巻取用回転軸を回転駆動するモータにはトルクモータが用いられる。
【0081】
図6に示すフィルター躯体供給部41とフィルター巻取部46は、図4に示すフィルター躯体供給部21とフィルター巻取部24とそれぞれ実質同一であり、図6に示す第1補強層形成部42と第2補強層形成部44は、図4に示す補強層形成部22と実質同一である。図6に示す第1乾燥定着部43は、ファイバー積層用処理タンク42a内に回転ドラム42bを有しさらに回転ドラム42b内に吸引ボックス42cを有し、また第2乾燥定着部45は、ファイバー積層用処理タンク44a内に回転ドラム44bを有しさらに回転ドラム44b内に吸引ボックス44cを有し、この構成は図4に示す乾燥定着部23とタンク本体22a1内に回転ドラム22bを有しさらに回転ドラム22b内に吸引ボックス22cを有する構成と実質同一である。
【0082】
第1補強層形成部42は、フィルター躯体11の一方の面に、フィルター躯体11の破裂強度の増強およびしわが縒り難い平面保持性を付与するとともに、フィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与する所要厚さの多孔質膜のセルロースナノファイバー層12Aを吸着形成する。
【0083】
第2補強層形成部44は、フィルター躯体11の他方の面に、フィルター躯体11の破裂強度の増強およびしわが縒り難い平面保持性を付与するとともに、フィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与する所要厚さの多孔質膜のセルロースナノファイバー層12Bを吸着形成する。
【0084】
フィルター製造装置40のさらなる詳細な構成・作用の説明は省略するものとする。
【0085】
[本発明の製造方法・装置による製造されるフィルターF1およびフィルターF2の特性]
図2(A),(C)に示すフィルターF1は、図3図4に示すフィルター製造装置20により製造され、また、図2(A),(D)に示すフィルターF2は、図5図6に示すフィルター製造装置40により製造され、以下の共通する特徴を有する。
【0086】
フィルター躯体11は、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムのいずれか1つであり、ロール状に巻かれるメッシュウエブ製である。補強層であるセルロースナノファイバー層12,12A,12Bは、フィルター躯体11の一方または両方の面に固着されるセルロースナノファイバー層であり、所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられ、フィルター躯体11のメッシュ孔の大きさが所望の捕捉性能が得られる口径よりも大きく、セルロースナノファイバー層の網状構造がメッシュ孔に被さり、網状構造の厚さに応じて所望の捕捉性能が得られるようになっている。
【0087】
セルロースナノファイバー層12,12A,12Bは、一部のセルロースナノファイバーがフィルター躯体11に含侵し、他の一部のセルロースナノファイバーがフィルター躯体11に突き刺さり、残り大部分が複雑に絡み付き、フィルター躯体11の破裂強度を補強し、フィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与する。
【0088】
そして、カチオン性澱粉が、フィルター躯体11に含侵することでフィルター躯体11の強度を大きくし、またフィルター躯体11とセルロースナノファイバーとの固着剤として介在しているとともに、セルロースナノファイバー同士を網状構造の層状となるよう結着剤として介在し、もって、しわが縒り難い平面保持性を付与している。
【0089】
また、セルロースナノファイバーが針状体であることによりフィルター躯体11の方向に向いているセルロースナノファイバーが押圧力を受けることでフィルター躯体11に突き刺さり係止し、さらに、セルロースナノファイバーの繊維がフィルター躯体11の繊維間での繊維同士の絡み付き、もってセルロースナノファイバー層(補強層12,12A,12B)がフィルター躯体11に強く結合する。
【0090】
セルロースナノファイバー層(補強層12,12A,12B)は、好ましくは、フィルター駆体との固着面が親和性であり、フィルター駆体との固着面の反対側の面が撥水性となる両親媒性を有するものであると、流失が小さく抑えられる。
【0091】
フィルターF1,F2は、フィルター躯体11の一方または両方の面への補強層であるセルロースナノァイバー層12,12A,12Bの固着(セルロースナノァイバーの含侵と突き刺さりと繊維同士の絡みつきとカチオン性澱粉による接着作用)により、フィルター躯体11の破裂強度を大きくしおよびしわが縒り難い平面保持性を付与するとともに、フィルター躯体のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与する所要厚さの多孔質膜のセルロースナノファイバー層を吸着形成する。フィルターF1,F2は、従来のろ紙のみで使用する場合の許容繰り返し使用回数を大幅に上回る許容繰り返し使用回数が得られる。
【0092】
フィルター躯体11は、補強層12,12A,12Bが積層される前の形態がロール状に巻かれるメッシュウエブが用意される。フィルター躯体11は、具体的には、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムの中のいずれか1種を用いることができる。フィルター躯体11は、目の細かさが異なる幾つかの種類、例えばφ1,2,4,6,8,10μmなどが作られた定量ろ紙や定量ろ布等が市販されているので、これらの中から、ろ過対象の大きさ、単位時間当たりのろ過量などの目的に応じて適切なものを選択できる。
【0093】
ろ紙は、一般的には綿繊維(セルロース)を用いることができ、あるいは生物学的に不活性な、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物であるもの、ガラス繊維ろ紙からなるもの、PTFEメンブレンを親水化処理したもの、高純度の微細シリカ繊維を使用した石英ろ紙を用いることができる。
【0094】
ろ布は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、耐熱ナイロン、ポリイミド、PPS、ガラス、PTFE、ガラスPTFEのいずれかの原料製の糸であって、スパン糸(短繊維糸)、マルチフィラメント(長繊維糸)、またはモノフィラメント(長単繊維糸)のいずれかの糸で、平織、綾織、朱子織、二重織、ニードルパンチングフェルトの加工を施し、メッシュフィルターとしてものであればよい。
【0095】
不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等のいずれかからなるスパン糸(短繊維糸)より不織加工によりメッシュフィルターとしたものであればよい。
【0096】
単層メッシュフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等のいずれかの二軸延伸フィルムにニードルパンチングまたはレーザー加工によりピンホールが互いに近接する分布状態で面全体に設けられているものである。
【0097】
補強層12は、太さが1−100nmでかつ長さに規定がなく様々であり配向性が全く無く複雑に絡み合うセルロースナノファイバーを水に分散した状態でフィルター躯体11の一方または両方の面に例えばロールコーターにより積層され、吸水ロール等で水分を除去されかつ加圧されることにより平坦化され、その際に、セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に突き刺さり、強く固着するのでフィルター躯体11が湾曲してもブラッシングされても容易に剥離しない密着強度が得られる。
【0098】
図4に示すフィルター製造装置で、ファイバー積層用処理タンク22aに貯留するセルロースナノファイバー層形成液としてカチオン性澱粉を用いないようにして、セルロースナノファイバーをフィルター躯体に含侵させかつセルロースナノファイバー層を形成し、続いて、ファイバー積層用処理タンク22aに水のみを貯留して吸引ボックス22cを負圧にして水をフィルターに通流させることにより、セルロースナノファイバー層の厚さを変えずに前述のフィルター躯体に含侵させたセルロースナノファイバーをフィルター躯体のさらに深い内部に移行させることができる。
【0099】
[補強層12,12A,12Bの固着力]
セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に含侵し、またロール圧により突き刺さることについては、セルロースナノファイバーは、鉄の5倍程度の強度がある針状体であることに基づくものである。図4では、いずれもセルロースナノファイバーがカチオン性澱粉とともにフィルター躯体11に減圧含侵するものであり、含侵量および含侵深度が大となる。
【0100】
フィルター躯体11が回転ドラム22bの円筒網面の下側、部分に密着して移動する過程でセルロースナノファイバー層12として積層される際に、吸引ボックス22cが陰圧となることにより、回転ドラム22bの外側のセルロースナノファイバー層形成液が吸引ボックス22cに吸引され、セルロースナノファイバーのフィルター躯体11の方向へ配向する本数が多く生じ、これらセルロースナノファイバーが陰圧吸引力でフィルター躯体11に含侵し、また吸着されることから、フィルター躯体11の強度が高まるとともに、フィルター躯体11に向かって配向しているセルロースナノファイバーがフィルター躯体11のメッシュ孔の孔壁に斜めに深く突き刺さり係止し、また、フィルター躯体11のメッシュ孔以外の面部に対し略垂直方向に配向しているセルロースナノファイバーが深く突き刺さり係止し、さらに、これら突き刺さっているセルロースナノファイバーが塗布後の平坦化するためのロール加圧によりさらに深く突き刺さり係止するとともに、セルロースナノファイバーの繊維がフィルター躯体の繊維間での繊維同士の絡みつくものである。
【0101】
セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に突き刺さる量についても、図3では減圧作用によりセルロースナノファイバーのフィルター躯体11へ配向する本数が多くなるのでセルロースナノファイバーのフィルター躯体11に突き刺さる本数が多くなり、密着力が高まる。
【0102】
したがって、カチオン性澱粉がセルロースナノファイバー同士の絡みつきが強くすること、カチオン性澱粉がろ紙に含侵して強度が大きくなること、ろ紙に含侵しているカチオン性澱粉がセルロースナノファイバー同士の強く絡みつけているカチオン性澱粉とが一体につながっていることでろ紙とセルロースナノファイバーとの密着力を有すること、特に、図4では、吸引ボックス22cが陰圧になることで回転ドラム22bの外側のセルロースナノファイバー層形成液が吸引ボックス22cに吸引されることから、吸引ボックス22cが陰圧となることにより吸引力でセルロースナノファイバー層形成液中のセルロースナノファイバーがフィルター躯体11のメッシュ孔以外の面部に対し略垂直方向に配向する数が多くなり突き刺さり、さらにロールによる圧力が加わることより突き刺さりが深くなり、もってフィルター躯体11にセルロースナノファイバー層12が強く係止するものである。
【0103】
さらに、カチオン性澱粉が、セルロースナノファイバー層12のフィルター躯体11への固着力を一層高めることになるとともに、セルロースナノファイバー層12の網状構造の強度を大きくする。カチオン性澱粉は、フィルター躯体とセルロースナノファイバー繊維の補強層との複合構造体に対して、その複合構造体の内部紙力及び表面紙質向上剤として紙力増強効果(紙力増強剤)がある。そして、カチオン性澱粉が、網状構造の強度を大きくするのでセルロースナノファイバー層12にしわが発生するのを抑制し、平面性を補強することになり、図1に示す不純物除去装置にフィルターを適用したときに繰り返し使用回数が多くなっても、フィルターが蛇行を伴わない滑らかな移動を実現でき、フィルターが破裂する原因になる大きなテンションが生じる恐れがなくなる。
【0104】
補強層12が乾燥され、もって補強層12は、所要厚さの薄膜状で網目構造が得られ、フィルター躯体11に強い密着強度で積層されるセルロースナノファイバー層となる。補強層12は、フィルター躯体11のメッシュ孔に被さり、メッシュ孔の大きさよりも細かい目を長期間にわたり安定して実現できる。以上の事項は図6でも同様である。
【0105】
フィルター躯体11の片面または両面に補強層12(12A,12B)が固着されたフィルターF1(F2)は、最終形態としてロール状に巻き取られものである。これは再使用のために、不純物除去装置に装着される形態とするためである。
【0106】
フィルターF1(F2)は、フィルター躯体11に対し所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられセルロースナノファイバー層12(12A,12B)により破裂強度を大幅に高めるとともに、網目構造を長時間にわたり保持してフィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を長時間にわたり保持するものとなる。
【0107】
フィルターFは、フィルター躯体11のメッシュ孔の大きさが所望の捕捉性能が得られる口径よりも大きく、セルロースナノファイバー層の網状構造がメッシュ孔に被さり、網状構造の厚さに応じて所望の捕捉性能が得られるようになっている。
【0108】
本実施の形態に係るフィルターF(F2)によれば、ロール状に巻かれた状態から繰り出され固形不純物を含む水性液の流れを堰き止める状態にセットされ面方向に移動しつつ固形不純物を捕捉することができ、固形不純物を除去、メッシュ孔の目詰りを解消して繰り返し再使用できるフィルターであって、セルロースナノファイバー層12(12A,12B)が、網状構造であり崩壊強度が高く、フィルター躯体11のメッシュ孔のみの捕捉性能を大幅に上回る安定した捕捉性能を得られ、従来のフィルター躯体のみで使用する場合の許容繰り返し使用回数を大幅に上回る許容繰り返し使用回数が得られ、また、補強層形成液のcnf濃度及びフィルター躯体の走行速度、吸引ボックス内の減圧を調整することで、セルロースナノファイバー層の厚み(網状構造の厚み)を制御することができ、もって捕捉性能を制御することができ、さらに、特に、収縮率が相違するフィルター躯体とセルロースナノファイバー層とがクッション性を有する接着剤であるカチオン性澱粉によって接着されているので、フィルター躯体11にしわが発生するのを抑制し、抗張力を分担し平面性を補強することができ、従来のフィルター躯体のみで使用する場合の許容繰り返し使用回数よりもかなり大きな繰り返し使用回数で使用することができ、繰り返し使用回数が高くなっても部分的な引き剥がれが生じず、部分的なメッシュ孔の捕捉性能の劣化が生じない。特に、固形不純物の捕捉性能を制御でき、ろ紙のみを使用する場合に比べて大幅に上回る安定した捕捉性能を得られ、またろ紙のみを使用する場合に比べて大幅に上回る繰り返し使用回数が得られる。
【0109】
本発明によれば、ろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるようろ紙等をベースとして強化されたフィルター製造方法およびフィルター製造装置を提供することができる。より具体的には、ろ紙等をベースに補強層を積層することでフィルター全体としての強度が増大しかつ強度の劣化が少なくしわが発生することなく平面性が保持され、およびメッシュ孔が大きくなり難くろ過性能の劣化が小さく、もってろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるフィルターを製造する方法および装置を提供することができる。
【0110】
[付記]
本願は、上述した実施の形態には以下に列記する発明を包含するものである。
本発明は、いずれも、メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の片面に積層された補強層であるセルロースナノファイバー層とがロール状に巻かれてなるフィルターであって、前記フィルターが、前記ロール状に巻かれた状態から繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記固形不純物については、通流させずフィルター表面に捕捉するフィルターに関するものである。
【0111】
[第1の発明]
第1の発明に係るフィルター製造方法は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けロール状に巻いて前記フィルターを得る一連の処理工程として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着工程と、
前記乾燥定着工程で片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程とを含む構成である。
【0112】
そしてさらに、前記補強層形成工程は、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出し走行する前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する処理する構成である。
【0113】
[第2の発明]
第2の発明に係るフィルター製造方法は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設ける一連の処理工程として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着工程とを含み、
前記第1乾燥定着工程での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理工程として、
前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2の補強層形成工程と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着工程とを含み、
さらに、前記第2乾燥定着工程の処理を終えて前記フィルター躯体の両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取工程を含む構成である。
【0114】
そして、前記第1補強層形成工程および前記第2補強層形成工程は、
前記フィルター躯体を、水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンク内に導き、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記回転ドラム内に設ける吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する処理する構成である。
【0115】
[第3の発明]
第1または第2の発明に係るフィルター製造方法における、前記第1の補強層形成工程および前記第2の補強層形成工程は、
前記回転ドラムの外周の補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、一部を前記回転ドラムの円筒網部に巻き付けた前記フィルター躯体に含侵させ、他の一部を前記フィルター躯体に突き刺させ、残り多量部を様々な方向に向いた状態に前記フィルター躯体の表面に積層させかつ前記突き刺した状態のセルロースナノファイバーと絡ませるとともに積層部分のセルロースナノファイバーの繊維と前記フィルター躯体から延びる繊維とを絡ませた状態のセルロースナノファイバー層を形成する構成である。
【0116】
[第4の発明]
第1−第3の発明に係るフィルター製造方法における、前記第1の補強層形成工程および前記第2の補強層形成工程は、
前記水にカチオン性澱粉が所要割合で溶解させ、この溶解水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している前記補強層形成液とすることにより、前記セルロースナノファイバー層の網状構造を強化し、平坦化保持力を高め、前記セルロースナノファイバー層と前記フィルター躯体との結合を強化する構成である。
【0117】
[第5の発明]
第1−第4の発明に係るフィルター製造方法における、前記第1乾燥定着工程および前記第2乾燥定着工程は、
前記補強層形成工程を終えて導かれる前記セルロースナノファイバー層が形成された前記フィルター躯体に対し、前記セルロースナノファイバー層が形成された面と反対側の面に接触回転して吸水し、次いで、乾燥を行い残りの水分を除去し、次いで、前記セルロースナノファイバー層に押圧力を加えることにより、前記セルロースナノファイバー層の平坦化を図るとともに前記補強層形成工程において前記フィルター躯体に突き刺さった前記セルロースナノファイバーをさらに深く突き刺さるようにする処理する構成である。
【0118】
[第6の発明]
第1−第5の発明に係るフィルター製造方法における、前記第1乾燥定着工程および前記第2乾燥定着工程における前記乾燥処理は、伝熱、輻射熱、または熱風を当てるよう処理する構成である。
【0119】
[第7の発明]
第1−第6の発明に係るフィルター製造方法における、前記フィルター躯体は、ろ紙、不織布、織布、またはプラスチックフィルムに微細孔を一面に隙間なく分散してなるウエブを用いる。
【0120】
[第8の発明]
第8の発明に係るフィルター製造装置は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着し不純物処理装置フィルターに再使用可能なロール状に巻き取り前記フィルターを得る一連の処理手段として、
前記フィルター躯体の片面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる乾燥定着部と、
前記乾燥定着部の処理を終えて片面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備えた構成である。
【0121】
そして、前記補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつタンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体をタンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である。
【0122】
[第9の発明]
第9の発明に係るフィルター製造装置は、
前記フィルター躯体をロール状に巻いた状態から繰り出し走行し前記フィルター躯体の一方の面に前記補強層を設けて乾燥定着する一連の処理手段として、
前記フィルター躯体の前記一方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第1補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第1乾燥定着部とを備え、
前記第1乾燥定着部での処理後の前記フィルター躯体の他方の面に前記補強層を設けて前記フィルターを得る一連の処理手段として、
前記フィルター躯体に形成した前記補強層の反対側の前記他方の面に前記補強層となる前記セルロースナノファイバーを膜状に形成する第2補強層形成部と、
前記フィルター躯体の走行中に前記積層された前記セルロースナノファイバー層を乾燥し押圧する前記フィルター躯体に定着させる第2乾燥定着部とを備え、
さらに、前記第2乾燥定着部の処理を終えて両面に前記セルロースナノファイバー層を形成した前記フィルター躯体をロール状に巻き取り不純物処理装置フィルターに再使用可能な前記フィルターを得るフィルター巻取部とを備えた構成である。
【0123】
そして、前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している補強層形成液を貯留するファイバー積層用処理タンクと、前記ファイバー積層用処理タンク内に駆動回転されるようにまたは回転可能に備えた円筒網部を有する回転ドラムと、前記円筒網部の内周面に近接する弧状円筒部と、前記回転ドラム内に設けられかつタンク本体に支持され弧状円筒部以外の周囲を閉塞し前記弧状円筒部を保持するボックス本体と、前記ボックス本体と前記タンク本体を貫通して設けられ前記ボックス本体内の液体をタンク外に排出する排液口とを有する吸引ボックスとを備え、
前記ロール状に巻いた状態から繰り出す前記フィルター躯体を前記回転ドラムの前記円筒網部に巻き付けて走行し、前記吸引ボックス内の液をタンク外に排出することにより、前記吸引ボックス内の液圧を前記回転ドラムの外周の補強層形成液の液圧よりも低くなるよう減圧し、この減圧の作用下で前記回転ドラムの外周の補強層形成液の水分を前記フィルター躯体のメッシュ孔に通流させ、かつ補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、通流させず、前記フィルター躯体の表面に積層させてセルロースナノファイバー層を形成する構成である。
【0124】
[第10の発明]
第8または第9の発明に係るフィルター製造装置における、前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
前記回転ドラムの外周の補強層形成液に分散する前記セルロースナノファイバーについては、一部を前記回転ドラムの円筒網部に巻き付けた前記フィルター躯体に含侵させ、他の一部を前記フィルター躯体に突き刺させ、残り多量部を様々な方向に向いた状態に前記フィルター躯体の表面に積層させかつ前記突き刺した状態のセルロースナノファイバーと絡ませるとともに積層部分のセルロースナノファイバーの繊維と前記フィルター躯体から延びる繊維とを絡ませた状態のセルロースナノファイバー層を形成する処理部である構成である。
【0125】
[第11の発明]
第8または第9の発明に係るフィルター製造装置における、前記補強層形成部、前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部は、
前記水にカチオン性澱粉が所要割合で溶解させ、この溶解水にセルロースナノファイバーが所要割合で分散している前記補強層形成液とすることにより、前記セルロースナノファイバー層の網状構造を強化し、平坦化保持力を高め、前記セルロースナノファイバー層と前記フィルター躯体との結合を強化するよう処理する構成である。
【0126】
[第12の発明]
第11の発明に係るフィルター製造装置における、前記液貯留タンクは、前記補強層形成部、前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部のそれぞれに対応して、かつ、前記補強層形成部、前記第1補強層形成部および前記第2補強層形成部の少なくとも1つには、セルロースナノファイバーの分散濃度が低い前記補強層形成液を貯留する低濃度用液貯留タンクと、セルロースナノファイバーの分散濃度が高い前記補強層形成液を貯留する高濃度用液貯留タンクとを備えて切り替え式に給液可能に備えている構成である。
【0127】
[第13の発明]
第8−第12の発明に係るフィルター製造装置における、前記乾燥定着部、前記第1乾燥定着部および前記第2乾燥定着部は、
前記補強層形成部の処理を終えて導かれる前記セルロースナノファイバー層が形成された前記フィルター躯体に対し、前記セルロースナノファイバー層が形成された面と反対側の面に接触回転して吸水し、次いで、乾燥を行い残りの水分を除去し、次いで、前記セルロースナノファイバー層に押圧力を加えることにより、前記セルロースナノファイバー層の平坦化を図るとともに前記補強層形成部において前記フィルター躯体に突き刺さった前記セルロースナノファイバーをさらに深く突き刺さるようにする処理する構成である。
【0128】
[第14の発明]
第8−第13の発明に係るフィルター製造装置における、前記第1乾燥定着部および前記第2乾燥定着部における前記乾燥処理は、伝熱、輻射熱、または熱風を当てるよう処理する構成である。
【0129】
[第15の発明]
第8−第14の発明に係るフィルター製造装置における、前記フィルター躯体は、ろ紙、不織布、織布、またはプラスチックフィルムに微細孔を一面に隙間なく分散してなるウエブを用いる構成である。
【0130】
上記の実施の形態には上記の第1−第15の発明のほかに以下の発明も含まれる。
(1)片面コートで、タンクを2つ設けて濃度の異なるCNF分散液を貯留し、膜厚に相違を付けるときに使うタンクを切り替える構成。
(2)両面コートで、上側のCNF形成タンクに対応してCNF分散液貯留タンクを2つ設けて濃度の異なるCNF分散液を貯留し、膜厚に相違を付けるときに使うタンクを切り替えるとともに、下側のCNF形成タンクに対応してCNF分散液貯留タンクを2つ設けて濃度の異なるCNF分散液を貯留し、膜厚に相違を付けるときに使うタンクを切り替える構成。
(3)タンクに供給する一方の面のCNF層の膜厚と他方の面のCNF層の膜厚とに相違を付ける構成。
【符号の説明】
【0131】
F1,F2…フィルター、
1…フィルター供給部、
2…ろ過タンク部、
3…ブラッシング部、
4…メッシュ孔目詰り解消部、
5…乾燥定着部、
6…フィルター巻取部、
11…フィルター躯体、
11a…メッシュ孔、
12,12A,12B…補強層(セルロースナノファイバー層)、
20…フィルター製造装置、
21…フィルター躯体供給部、
21a…ブラケット、
21b…回転軸、
21c…ニップロール、
21d…フィルター躯体繰り出しロール、
21e…モータ、
…モータ21e,22b2,25c,24c、
22…補強層形成部、
22a…ファイバー積層用処理タンク、
22a1…タンク本体、
22a2…液導入部、
22a3…液導入口、
22a4…液抜き取り口、
22a5…液抜き取り弁、
22a6…液面高位レベルセンサ、
22a7…液面低位レベルセンサ、
22b…回転ドラム、
22b1…水平軸、
22b2…モータ、
22b3…円筒網部、
22c…吸引ボックス、
22c1…弧状円筒部、
22c2…ボックス本体、
22c3…液出口、
23,23A…乾燥定着部、
23a,23d…ガイドロール、
23b…吸水ロール、
23c…バキュームパイプ、
23e…ガイドロール対、
23f…電熱ヒータ対、
23g…ガイドロール対、
23h,23i…ヒーターロール、
23j…転圧ロール対、
23k,23m,23n…ガイドロール、
24…フィルター巻取部、
24a…ブラケット、
24b…巻取用回転軸、
24c…モータ、
24d…ガイドロール、
25…アキュムレータ、
25a,25d…ガイドロール、
25b…フィルター躯体牽引ロール、
25c…モータ、
25e…段差ロール、
25f…ガイドロール、
26…液貯留タンク、
27…給液管、
28…給液用ポンプ、
29…受液タンク、
30…吸引管、
31…吸引用ポンプ、
40…フィルター製造装置、
41…フィルター躯体供給部、
42…第1補強層形成部、
42a…ファイバー積層用処理タンク、
42b…回転ドラム、
42c…吸引ボックス、
43…第1乾燥定着部、
44…第2補強層形成部、
44a…ファイバー積層用処理タンク、
44b…回転ドラム、
44c…吸引ボックス、
45…第2乾燥定着部、
46…フィルター巻取部、
50…第1フィルター移行部、
50a…牽引用駆動ロール、
50b…モータ、
50c…ニップロール、
50d,50e,50f…ガイドロール、
60…第2のフィルター移行部、
60a…ガイドロール、
60b,60c…ガイドロール。
【要約】
【課題】ろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるようろ紙等をベースとして強化されたフィルターを製造すること。
【解決手段】フィルター製造装置20は、フィルター躯体供給部21と、補強層形成部22と、乾燥定着部23と、フィルター巻取部24とを備え、フィルター躯体供給部21にロール状に巻かれているフィルター躯体11は、補強層形成部22において片面(下面)に補強層(セルロースナノファイバー層)12が所要厚さの薄膜層として吸着により積層され、次いで、乾燥定着部23で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、最後に、フィルター巻取部24においてロール状に巻き取られ、もって、フィルター躯体11の片面に補強層12が積層固着されたフィルターF1を製造できる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6