特許第6858430号(P6858430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6858430巻き簾(す)状およびシート状の運搬器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6858430
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】巻き簾(す)状およびシート状の運搬器具
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/12 20060101AFI20210405BHJP
   A45C 13/38 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B65G7/12 C
   A45C13/38
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-163793(P2020-163793)
(22)【出願日】2020年9月29日
【審査請求日】2020年10月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309016533
【氏名又は名称】株式会社オクト工業
(74)【代理人】
【識別番号】100103986
【弁理士】
【氏名又は名称】花田 久丸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕一
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3207275(JP,U)
【文献】 実開昭58−029326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 7/12
A45C 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き簾(す)状の荷物載置すだれ(2)と、
該荷物載置すだれの左右両端に取付けた一対の握持バー(3、3)と、
該荷物載置すだれの握持バーに隣接する位置に設けた指を差込むための指差込口(4、4)、とを具備し、宅配車両の荷台にある小型重量物を持ち上げることなく摺動動作により引き寄せて積み込み、或いは積み込まれた小型重量物を持ち上げることなく摺動動作により配達先の床面へ降ろすための巻き簾(す)状の運搬器具であって;
前記巻き簾(す)状の荷物載置すだれ(2)の上部表面には、載置される荷物が容易に摺動移動できる摺動面が形成され、該摺動面は左右方向には容易に折れ曲がり、前後方向には折れ曲がり難い剛性を有する簾(す)状の樹脂製であり、かつ該荷物載置すだれの前端部は床面に傾斜を付けて接地する形状を有し、更に載置される荷物の横幅サイズに応じて屈曲自在であり、
前記握持バーの直径は、親指と人差し指で回し握持できるサイズであり、
前記指差込口は、該握持バーを人差し指から小指の第三関節までを深く差し回して握持可能なサイズであり、かつ該握持バーを親指でも差し回して握持可能なサイズであり、左右両腕により該一対の握持バーを十分に握持することで2点支持できるように構成されたことを特徴とする小型重量物を運搬するための巻き簾(す)状の運搬器具(1)。
【請求項2】
請求項1記載の小型重量物を運搬するための巻き簾(す)状の運搬器具(1)の前記荷物載置すだれ(2)の中央部手前端に、更にフック係合部(11)を設け、該フック係合部にはフック開口部(12)を有し、腹部フック帯(13A)または首掛けフック帯(13B)の下端に取付けたフック部(14)と該フック開口部とを係合させることにより3点支持することで、前記握持バー(3、3)を握持する両腕の負荷を軽減できるように構成されたことを特徴とする小型重量物を運搬するための巻き簾(す)状の運搬器具(10)。
【請求項3】
請求項1記載の小型重量物を運搬するための巻き簾(す)状の運搬器具(1)の前記荷物載置すだれ(2)に代え、一枚のプラスチック・シート(21)で構成されたことを特徴とする小型重量物を運搬するためのシート状の運搬器具(20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、荷物を運搬する際に使用する巻き簾(す)状の運搬器具とシート状の運搬器具に関するものである。「巻き簾」とは元々は巻き寿司を作る際に用いる日本独自の竹製調理道具であり、本願発明はこの「巻き簾」の概念を運搬器具に応用した発明に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット通販の急成長に従い、宅配便も年々大幅に増加しつつある。それは単に宅配便の荷物数が増加するだけでなく、同時に昔は通販物品の範疇には無かったような重量物もネット経由で販売されるようになり、宅配現場での大きな負担となっている。ここで指称する重量物とは、一例を挙げればミネラルウォーター入り大型ペットボトルであり、例えば12L入り2本が段ボール入りで宅配され、その重量は約25kgにもなる。他にもケース入り缶ビールや、10Kg或いは30Kg袋入りの米等、重量が嵩張る多くの商品が宅配される時代となっている。一方宅配便での女性ドライバーの進出に伴い、宅配車両から玄関先まで女性ドライバーがこれ等の重量物を一人で運搬しなければならず、女性にとっては大変な重労働になっている。この運搬の際、上記のような段ボール入り重量物を持ち上げる作業では、図1に示すように段ボール底の左右から差込んだ人差し指から小指までの、第二関節から先の指先にのみ荷重が加わる。従って人間工学的にはこの4本の指の第二関節に負荷が集中し、最も力が入り易い親指は荷物を持ち上げる作業には役立たない。この様に重量物を持ち上げる際には、単に背骨に負荷が掛かるだけではなく、同時に人差し指から小指4本の指先にだけ負荷が集中するため疲労感が一層増大するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために宅配業者の多くは、折り畳みキャリーカートや台車を用いて、宅配車両から配達先の玄関まで重量物の配達を行っている。しかしながら宅配車両から重量物をこれ等のカートや台車へ移し替える作業自体や、玄関先で重量物を降ろす作業にも、結局は更に労力を要することになり効率が悪いのが現状である。また仮に玄関への通路に段差があれば、反って効率が悪い結果となり易い。また更に、エレベータが設置されていない低層マンションへの重量物の配達で、受取人の不在時にはその重量物は持ち帰らねばならず、現場での疲労感は想像を絶するレベルになり易い。
【0004】
この様な不便さを解消するために、宅配のように比較的小型荷物が多い場合には、もっと簡便に肩や首に掛けるトレーに小型重量物を乗せて宅配車両から玄関先まで運搬する方法も考えられる。すなわちその昔、駅のプラットホームでの駅弁売りが肩から掛けて駅弁を売り歩いた「番重」と呼ばれる薄型の肩掛け運搬容器を応用して、上記小型重量物を運搬してもよい。同様な簡便な運搬手段としては、実開平7-44417、実用新案登録第3169947、実用新案登録第3171470、等に散見される。この「肩または首掛けトレー」では、上述のように小型重量物を両腕で抱えて運搬する方式と比べると、指先に荷重が集中することもなく比較的楽に運搬することが可能であり、一定程度の労力軽減が可能である。しかしながらこれ等の「肩または首掛けトレー」でも、小型重量物を一旦「持ち上げてからトレー上に置く」という動作を前提とするため、この動作に余計な労力を要する欠点を有し、同様に運搬先である玄関でも「トレーから持ち上げて玄関に置く」という作業が必要となる欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7-44417号公報
【特許文献2】実用新案登録第3169947号公報
【特許文献3】実用新案登録第3171470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、小型重量物を短距離運搬するための、1)指先にのみ荷重を集中させず、2)かつ積み降ろし容易な、簡便な運搬器具が無い点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は小型重量物の短距離運搬用に、掌で握持するに適した直径を有する握持バーを左右両端に取付けた巻き簾(す)状およびシート状の運搬器具を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の巻き簾(す)状およびシート状の運搬器具は、荷台から巻き簾またはシート上に小型重量物を摺動移動させて載置した後に、図2に示すように左右両端の握持バーを、人差し指から小指の第三関節まで深く差し回し、かつ親指で深く握持する構造であるために、指先のみに荷重を集中させることなく小型重量物の短距離運搬が可能であるという利点がある。また運搬先で荷物を降ろす時にも、逆に巻き簾またはシートの上から小型重量物を単に摺動移動させるので、積み降ろし労力の軽減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は素手で段ボール入り小型重量物を持ち上げるときの指先の状態を示す概念図である。
図2図2は本願発明に用いる握持バーを掌で握持するときの指先の状態を示す概念図である。
図3図3は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具を用いて小型重量物を運搬している状態を示す概念図である。
図4図4は本願発明に係る巻き簾(す)状の運搬器具の平面図である(第一実施例)。
図5図5は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具の両端にある握持バーを持ち上げた時に、荷物載置すだれが柔軟に折れ曲る状態を示す概念図である。
図6図6は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具に、小型重量物を宅配車両の荷台から積み込む時の状態を示す概念図である。
図7図7は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具に小型重量物が載置され、両端の握持バーを持ち上げた時の状態を示す概念図である。
図8図8は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具から小型重量物を、摺動移動させて床面に降ろしている状態を示す概念図である。
図9図9(A)は本願発明に係る巻き簾状の運搬器具の中央部手前端にフック係合部を設けた概念図であり(第二実施例)、(B)および(C)はそれに用いるフック帯の概念図である。
図10図10は本願発明に係るシート状の運搬器具の平面図である(第三実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
指先にのみ荷重を集中させず、かつ積み降ろし容易に、小型重量物を短距離運搬するという目的を最小の部品構成で実現した。
【実施例1】
【0011】
図3は本願発明に係る巻き簾(す)状の運搬器具1を用いて小型重量物を運搬している状態を示す概念図である。荷物の運搬中は、同図に示すように握持バー3、3を水平または少し運搬者の腹部方向へ傾斜を付けて握持すれば、摺動面を有する荷物載置すだれ2の上に小型重量物を安定的に載置しながら運搬可能である。なお巻き簾状の荷物載置すだれ2の左右両端に取付けた一対の握持バー3、3の直径は、親指と人差し指で十分に回し握持できるサイズである。また指差込口4、4は、握持バー3、3を人差し指から小指の第三関節までを深く差し回して握持可能なサイズであり、かつ同時にこの握持バーを親指でも差し回して握持可能なサイズである。従って例えば比較的握力が弱い女性でも、左右両腕でこの一対の握持バー3、3を握持して本願発明に係る巻き簾(す)状の運搬器具1を2点支持できるという利点を有する。これにより図1に示した従来の様に単に第二関節までの指先のみで小型重量物を抱える場合に比較すると、感覚としては7割ほどの力で握持バー3、3を第三関節まで差し回して握持することができるため、全体として労力の軽減が可能となる。
【0012】
図4は本願発明に係る巻き簾(す)状の運搬器具1の平面図である。この運搬器具1は、例えば縦横は略60cm X 90cm程度の巻き簾(す)状の荷物載置すだれ2と、左右両側には図4に示したような一対の握持バー3、3と、指を差込む指差込口4、4とでシンプルに構成されている。巻き簾状の荷物載置すだれ2は、摺動移動が容易な摺動面を有する一体成型された屈曲自在なプラスチック製である。また図5に示すように左右方向には容易に折れ曲がり、前後方向には折れ曲がり難い剛性を有している。従って巻き簾状の運搬器具1は、収納時には左右方向に巻いてコンパクトに収納可能である。また巻き簾状の荷物載置すだれ2の表面はプラスチック等の樹脂製で摺動面を形成し、前端部は床面に傾斜を付けて接地する形状を有している。このため図6図7に示すように宅配車両の荷台にある小型重量物を持ち上げることなく摺動動作により、巻き簾状の荷物載置すだれ2上へ引き寄せて積み込みが可能である。また反対に配達先では、図8に示すように巻き簾状の荷物載置すだれ2から、小型重量物を持ち上げることなく摺動動作により、少し反動を付けて小型重量物を配達先の床面に摺動移動させて降ろすことが可能である。なお本願発明に係る巻き簾(す)状の運搬器具1では、荷物の横幅サイズに応じて荷物載置すだれ2自体が折れ曲がるため、固定サイズのトレーとは異なり余分なスペースが無い最小限サイズの運搬器具となり、狭い通路でも小回りが利く利便性を有する。
【0013】
なお上記荷物載置すだれ2、握持バー3、3、そして指差込口4、4は、プラスチック等で容易に一体成型が可能であり、安価に製造可能であるという利点を有する。また荷物載置すだれ2の中央部底面に、必要に応じて補強用の金属パネルを添えてもよい。
【実施例2】
【0014】
更に本願発明の第二実施例として、図9(A)には荷物載置すだれ2の中央部手前端にフック係合部11を設けた本願発明に係る巻き簾状の運搬器具10の概念図が示されている。そして同図(B)および(C)にはそれに用いる腹部フック帯13A、首掛けフック帯13Bが示されている。第一実施例では左右両端に取付けた握持バー3、3による2点支持で巻き簾状の運搬器具1が握持保持されるのに対し、この第二実施例の係る巻き簾状の運搬器具10では、握持バー3、3に加えて、フック係合部11のフック開口部12に係合させたフック部14により3点支持することで、握持バー3、3を握持する両腕の負荷を軽減する構成である。なおフック部14は、(B)に示す腹部フック帯13A、または首掛けフック帯13Bにより安定的に保持される。なお腹部フック帯13A、または首掛けフック帯13Bは、運搬者の体型に合わせる長さ調整具が装着されている。運搬者は、まず小型重量物を荷物載置すだれ2へ摺動移動させつつ手前に引き寄せた後に、フック開口部12にフック部14を係合させ、腹部フック帯13Aまたは首掛けフック帯13Bにより少しだけフック係合部11を吊り上げ、同時に握持バー3、3を握持保持して、小型重量物を荷物載置すだれ2上に載置して運搬する。運搬先である例えば玄関では、荷物載置すだれ2の前方先端を玄関の床面へ接した後に、荷物載置すだれ2の後部を腹部フック帯13Aまたは首掛けフック帯13Bにより少し吊り上げたまま小型重量物を前方へ摺動移動させつつ、握持バー3、3を後方移動させて巻き簾状の運搬器具10を抜き取る。この摺動動作により、いちいち小型重量物を持ち上げることなく運搬を終えることが可能である。
【実施例3】
【0015】
更に本願発明の第三実施例として図10には、第一実施例のプラスチック成型された荷物載置すだれ2に代えて、一枚のプラスチック・シート21で構成したシート状の運搬器具20が図示されている。このシート21は、例えば#3000程度の比較的厚手の補強糸入りブルーシートや薄手のプラスチック・シートで構成してもよい。この様な素材を使用すれば、更に軽量かつ安価に製造可能である。なおこのブルーシートは、ポリエチレン製の本体フィルムが用いられている。
【産業上の利用可能性】
【0016】
指先にのみ荷重を集中させず、かつ積み降ろし容易に小型重量物を短距離運搬するという目的を、簡単なプラスチック成型のすだれ状の巻き簾(す)状やシート状の運搬器具1、10、または20で実現させた。すなわち荷物載置すだれ2に取付けた握持バー3、3を人差し指から小指の第三関節まで深く差し回し、かつ親指で深く握持することにより、大幅に運搬労力の軽減を図ることが可能となる。また荷物の横幅サイズに応じて荷物載置すだれ2自体が折れ曲がるため、固定サイズのトレーとは異なり余分なスペースが無く、狭い通路でも小回りが利く利便性を有し、本願発明に係る運搬器具1、10、20は宅配その他の運搬業務に広く使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0017】
1 巻き簾(す)状の運搬器具(第一実施例)
2 荷物載置すだれ
3 握持バー
4 指差込口
10 巻き簾(す)状の運搬器具(第二実施例)
11 フック係合部
12 フック開口部
13A 腹部フック帯
13B 首掛けフック帯
14 フック部
20 シート状の運搬器具(第三実施例)
21 シート
【要約】
【課題】指先にのみ荷重を集中させず、かつ積み降ろし容易に、小型重量物を短距離運搬するという目的を最小の部品構成で構成する。
【解決手段】掌で握持するに適した直径を有する握持バーを左右両端に取付けた巻き簾(す)状の運搬器具を開示する。荷台からこの巻き簾上に小型重量物を摺動移動させて載置した後に、左右両端の握持バーを、人差し指から小指の第三関節まで深く差し回し、かつ親指で深く握持する。これにより指先のみに荷重を集中させることなく小型重量物の短距離運搬が可能である。また運搬先で荷物を下ろす時にも、逆に巻き簾上から小型重量物を単に摺動移動させるので、積み降ろし労力の軽減が可能である。また荷物の横幅サイズに応じて荷物載置すだれ自体が折れ曲がるため、固定サイズのトレーとは異なり余分なスペースが無い最小限サイズの運搬器具となり、狭い通路でも小回りが利く利便性を有する
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10