【実施例1】
【0057】
(1)浸水検出システムの全体配置
図1は、本発明の実施例1に係る浸水検出システムの全体配置の一例を示す図である。本実施例1の浸水検出システムは、浸水検出装置1と一乃至複数のRFセンサ2とを備えている。
【0058】
RFセンサ2は、定期的に、所定の信号パターンの電波応答信号を無線発信する無線モジュールである。本実施例では、RFセンサ2は、定期的に(1秒間隔で)電波応答信号を自発的に無線発信する自発発信型のものを例として示す。電波応答信号には、RFセンサ2を特定するための識別符号(以下「センサID」という。)が含まれている。
【0059】
尚、RFセンサ2としては、RFIDシステム(Radio Frequency IDentification System)で用いられるRFタグ(RF tag)のように、浸水検出装置1から定期的に送信される質問信号(interrogation signal)に対して電波応答信号を無線発信する受動発信型のものを用いることもできる。
【0060】
浸水検出装置1は、RFセンサ2から送信される電波応答信号を受信すると共に、電波応答信号の受信状態から、RFセンサ2の周囲の浸水の有無を判定する装置である。この浸水検出装置1の詳細については後述する。
図1に示すように、浸水検出装置1は、増水時にも浸水しないように、RFセンサ2よるも高所に設置される。
【0061】
RFセンサ2は、
図1(a)のように、1つの浸水検出装置1に対して1つ設けてもよいし、
図1(b),(c)のように、1つの浸水検出装置1に対して複数設け、各RFセンサ2の設置高さを変えたり、設置場所を変えたりして配置することができる。1つの浸水検出装置1に対して複数のRFセンサ2を設けた場合には、浸水検出装置1において受信される各RFセンサ2からの電波応答信号は、各電波応答信号に含まれるセンサIDを参照することによって、どのRFセンサ2からの電波応答信号であるかが識別される。
【0062】
(2)浸水検出装置1の構成
図2は、浸水検出装置1の構成を示すブロック図である。本実施例の浸水検出装置1は、センサ通信アンテナ11、送受信I/Fモジュール12、マイコン13、上位通信I/Fモジュール14、上位通信アンテナ15、及び初期化スイッチ16を備えている。
【0063】
センサ通信アンテナ11は、RFセンサ2との間での電波の送受信を行うアンテナである。小型化のため、プリント基板などに形成された平面アンテナを用いることが好ましい。送受信インタフェース・モジュール12(以下「送受信I/Fモジュール12」)は、センサ通信アンテナ11を介してRFセンサ2との間の通信処理を行うモジュールである。本実施例では、送受信インタフェース・モジュール12の一例として、長い通信距離を確保するため、スペクトル拡散通信を用いた通信インタフェース・モジュールを使用する。この送受信I/Fモジュール12は、センサ通信アンテナ11によりRFセンサ2より受信される電波応答信号から、復調処理や復号処理を行い、受信応答信号を生成する。受信応答信号には、上述したセンサIDが含まれている。コンピュータ13は、浸水検出装置1の動作制御を行う。コンピュータ13としては、マイコンや、PLD(programmable logic device),FPGA(field-programmable gate array)等のリコンフィギャラブル・コンピュータ(reconfigurable computer)などを用いることができる。上位通信インタフェース・モジュール14(以下「上位通信I/Fモジュール14」)は、RFセンサの浸水の検出を示す浸水検出信号や、RFセンサが浸水はしていないがその下方が浸水していることを検出する浸水注意信号を、上位のサーバやインターネット等の上位ネットワークに送信するための通信を行うモジュールである。本実施例では、Bluetooth(登録商標)(IEEE 802.15規格)やWi-Fi(登録商標)(IEEE 802.11規格)等の、汎用性の高い通信インタフェース・モジュールが使用される。尚、本実施例では、浸水検出装置1を上位ネットワークに接続する手段として、上位通信I/Fモジュール14による無線接続手段を使用する例を示すが、ケーブルにより有線接続する構成とすることも可能である。上位通信アンテナ15は、上位通信I/Fモジュール14が上位ネットワークに接続する際の無線通信に用いられるアンテナである。この上位通信アンテナ15も、小型化のため、プリント基板などに形成された平面アンテナを用いることが好ましい。初期化スイッチ16は、RFセンサの浸水やRFセンサの下方が浸水を判定するための各種閾値を機械学習により設定するための初期化指示を入力するスイッチである。
【0064】
また、上述のコンピュータ13は、
図2に示した様に、受信信号強度検出部21、受信強度散布度検出部22、分散閾値設定部23、正常受信率検出部24、正常受信率閾値設定部25、受信信号強度変動検出部26、強度変動閾値設定部26a、浸水判定部27、浸水注意報判定部28、及び判定信号送信部29を備えている。これらの各構成部分は、コンピュータ13にプログラムを読み込ませて実行することによって、コンピュータ13内部に機能的に構成される機能モジュールである。
【0065】
受信信号強度検出部21は、各時刻tにおいて、送受信I/Fモジュール12により出力される受信応答信号の強度である受信信号強度(RSS)I(t)を検出する処理を行うモジュールである。尚、水面波によるノイズの影響を低減するため、受信信号強度検出部21は、時刻tから前の一定の時間内のRSSの平均値(移動平均値)をI(t)として出力するように構成してもよい。受信強度散布度検出部22は、各時刻tにおいて、受信信号強度検出部21が検出するRSS I(t)の一定時間Δt
1内の分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])を検出する処理を行うモジュールである。分散閾値設定部23は、地面が冠水していない平時の場合のRSS I(t)の分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])の平均値σ
2av0を機械学習し、平均値σ
2av0に所定の係数r
σ(r
σ>1)を乗じた値を閾値σ
2th1に設定する処理を行うモジュールである。
【0066】
正常受信率検出部24は、各時刻tにおいて、一定の時間Δt
2内に受信応答信号が正常に受信された割合である正常受信率R([t−Δt
2,t])を検出する処理を行うモジュールである。正常受信率閾値設定部25は、地面が冠水していない平時の場合の正常受信率R([t−Δt
2,t])の平均値R
av0を機械学習し、平均値R
av0に所定の係数r
R(0<r
R<1)を乗じた値を閾値R
th1に設定する処理を行うモジュールである。
【0067】
受信信号強度変動検出部26は、各時刻tにおいて、RSS I(t)の時間変化値DI(t)=I(t)−I(t−δt)又はI(t)/I(t−δt)の絶対値である受信信号強度変動度(VRSS)|DI(t)|を検出する処理を行うモジュールである。ここで、δtは、前回の電波応答信号の受信時刻から今回(時刻t)の電波応答信号の受信時刻までの時間を表す。強度変動閾値設定部26aは、地面が冠水していない平時の場合のVRSS |DI(t)|の平均値|DI|
av0を機械学習し、平均値|DI|
av0に所定の係数r
DI(r
DI>1)を乗じた値を閾値DI
thに設定する処理を行うモジュールである。
【0068】
浸水判定部27は、受信強度散布度検出部22が出力する分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])が閾値σ
2th1以上で、且つ正常受信率検出部24が出力する正常受信率R([t−Δt
2,t])が所定の閾値R
th1以下となった場合に、浸水検出信号を出力する処理を行うモジュールである。
【0069】
浸水注意報判定部28は、RFセンサが浸水はしていないがその下方が浸水したことの検出の有無を表す浸水注意信号を生成し出力する処理を行うモジュールである。浸水注意報判定部28は、受信強度散布度検出部22が出力する分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])が閾値σ
2th2以上となった場合や、一定の時間Δt
3内にVRSS |DI(t)|が閾値DI
thを超えた回数N
DIが、所定の閾値N
DIthを超えた場合に、浸水注意信号を出力する。
【0070】
判定信号送信部29は、浸水判定部27が出力する浸水検出信号や、浸水注意報判定部28が出力する浸水注意信号を、上位通信I/Fモジュール14を通して上位ネットワークに送信する処理を行うモジュールである。
【0071】
尚、本実施例では、RSS I(t)の「散布度」として、分散値σ
2(I(t))を用いた例を示すが、本発明に於いては、「散布度」として、これ以外に、標準偏差,不偏分散,平均偏差,データの範囲などを用いることもできる。
【0072】
(3)浸水検出の原理
次に、本実施例の浸水検出システムに於いて、RFセンサの浸水や、RFセンサが浸水はしていないがその下方が浸水したことの検出を行う原理について説明する。
【0073】
まず、浸水検出装置1において受信される電波応答信号のRSS I(t)とRFセンサ2の周辺の水位レベルとの関係について説明する。RFセンサ2から浸水検出装置1のセンサ通信アンテナ11へ電波応答信号が送信される場合において、RFセンサ2の下方に水面が存在する場合を考える。ここでは、原理的な説明なので、理解を容易にするため、水面は波が全くない静水面であると仮定する。この場合、電波応答信号の伝搬経路は、
図3に示したようになる。
図3において、RFセンサ2を送信点A、センサ通信アンテナ11を受信点Bとし、点A,Bは静水面上にあるとして、
図3に示した様に、点A,Bを含む鉛直面内に、水平向きにx軸、鉛直向きにy軸をとったx−y座標系を設定する。送信点Aの座標を(0, y
A)、受信点Bの座標を(x
B, y
B)とし、水面をy=y
0とする。送信点Aから発射される電磁波(電波応答信号)は、放射状に広がる球面波であると仮定したとき、受信点Bに到達する電磁波の経路は、(1) 送信点Aから受信点Bへ直接至る経路p
AB、(2) 送信点Aから水面上の反射点Cで反射され、受信点Bへ至る経路p
ACB、(3) 送信点Aから水面上の屈折点Dで屈折して水中へ進入し、水底面上の反射点Eで反射され、水面上の屈折点Cで屈折し、受信点Bへ至る経路p
ADECB、…などが考えられる。今想定している電磁波の周波数は、RFIDやBluetooth(登録商標)などの通常の電波無線通信で使用される周波数帯(900MHz〜十数GHz)である。この周波数帯においては、水の比誘電率は80程度であり、水の屈折率は8〜9程度と非常に大きい。そのため、水面での電磁波の反射率が大きく、水中での電磁波の誘電損失による減衰も非常に大きいと考えられるので、ここでは、経路p
AB, p
ACBのみを考えることとする。水面から送信点Aまでの距離をy
A0、水面から受信点Bまでの距離をy
B0、h
BA=y
B-y
Aとする。このとき、経路p
ABの経路長l
AB、経路p
ACBの経路長l
ACB、経路p
ACBの反射点Cのx座標x
C、反射点Cの入射・反射角θ
C、及び受信点Bにおいて経路p
AB,p
ACBが成す角θ
Bは、其々、次のように表される。
【0074】
【数1】
【0075】
また、経路p
AB,p
ACBを通って受信点Bに入射される電磁波の電場成分を、其々、E
1, E
2とし、磁場成分を、其々、H
1, H
2とし、電場E
1, E
2のp偏光成分をE
1p, E
2p、磁場H
1, H
2のp偏光成分をH
1p, H
2p、電場E
1, E
2のs偏光成分をE
1s, E
2s、磁場H
1, H
2のs偏光成分をH
1s, H
2sとし、E
1p, E
2p, E
1s, E
2s, H
1p, H
2p, H
1s, H
2sを、其々、次のように表す(
図4参照)。
【0076】
【数2】
ここで、i
1, i
2は、其々、電場E
1, E
2の向きを表す単位ベクトル、i
zはx-y平面に垂直な向きの単位ベクトル、ωは電磁波の角周波数、φ
12は、受信点Bにおける電磁波(E
1, H
1)に対する電磁波(E
2, H
2)の位相シフト量である。
【0077】
このとき、受信点Bにおけるp偏光電磁波及びs偏光電磁波のエネルギー密度の時間平均値<U
p>,<U
s>は、其々、次のように表される。ここで、<U
1p>,<U
1s>は送信点Aから経路p
ABを通って受信点Bに到達する電磁波(直接波)のp偏光成分,s偏光成分のエネルギー密度の時間平均値、<U
2p>,<U
2s>は送信点Aから経路p
ACBを通って受信点Bに到達する電磁波(反射波)のp偏光成分,s偏光成分のエネルギー密度の時間平均値である。
【0078】
【数3】
【0079】
また、電磁波の波長をλとすると、位相シフト量φ
12は次のように表される。
【0080】
【数4】
【0081】
今、送信点Aから発射される電磁波は球面波であると仮定しているので、送信点Aからの光路長をlとすると、電磁波のエネルギー密度は1/l
2に比例して減衰する。従って、送信点Aから発射されるp偏光電磁波,s偏光電磁波のエネルギー密度の時間平均値を<U
p0>,<U
s0>とすると、<U
1p>,<U
1s>,<U
2p>,<U
2s>は、其々次のように表される。
【0082】
【数5】
ここで、R
p, R
sは、其々、p偏光,s偏光の水面における強度反射率であり、水の屈折率をn(周波数2.4GHzではn=8.94(水温10℃))とすると次のように表される。
【0083】
【数6】
【0084】
以上の各式により、受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度(受信点Bの電場エネルギー密度を送信点Aの電場エネルギー密度で除した値)の時間平均<U
p>,<U
s> と水面の高さy
A0との関係を計算すると、
図5,
図6のようになる。ここで、h
BA=1mとし、
図5ではx
B=1m、
図6ではx
B=10mとしている。
図5,
図6より、水面が送信点Aに近づくにつれて、直接波と反射波との干渉が大きくなるため、受信点Bにおいて受信される電磁波の電場成分の相対エネルギー密度のy
A0の変化による振動が大きくなる。実際の水面は疑似ランダムに振動しているため、水面が送信点Aに近づくにつれて、受信点Bにおける電磁波の受信強度の分散が大きくなる現象として観測される。
【0085】
以上の考察は水面が静水面と仮定した場合についてのものであるが、実際の水面は波立っている。そこで、次に、波のある水面について考察する。実際の水面は3次元な広がりがあるが、ここでは定性的な簡単な評価のみをおこなうこととして、送信点と受信点を含む鉛直平面(以下「反射平面」(reflection plane)という。)内のみについて考えることとする。
【0086】
図7は、波がある水面における反射平面内の電磁波の伝搬経路を表す図である。
図7において、送信点Aから受信点Bに向かって電磁波が伝達する場合を考える。平均水面(平均水位の水平面)を含む水平面上にx軸を設定し、鉛直上方に向けてz軸を設定し、送信点Aからx軸に下ろした足に原点Oを設定する。電磁波は、送信点Aから受信点Bへ直接到達する経路ABのほかに、送信点Aから水波面上の反射点Cで反射されて受信点Bへ到達する経路ACBをとるとする。反射点Cにおける水波面の接線が水平面と成す角をφとし、該接線が経路AC及び経路CBと成す角をψとし、反射点Cにおける水波面の法線が経路AC及び経路CBと成す角をθとする。θは反射点Cにおける電磁波の入射・反射角である。反射点Cからx軸に下ろした垂線の足をC’、受信点Bからx軸に下ろした垂線の足をB’とする。各部の長さを、OA=h
A,B’B=h
B,C’C=h
C,OB’=l,OC’=l
0,C’B’=l
1,AB=l
AB,AC=l
AC,CB=l
CBとおく。また、反射点Cに対する送信点A及び受信点Bの高さを、其々、h
0=h
A−h
C,h
1=h
B−h
Cとおく。このとき、入射・反射角θは次のように表される。
【0087】
【数7】
【0088】
また、経路AB及び経路ACBの経路長l
AB,l
ACBは、其々次のように表される。
【0089】
【数8】
【0090】
送信点Aから経路ABを通り受信点Bに到達する電磁波(直接波)w(AB)に対する、送信点Aから経路ACBを通り受信点Bに到達する電磁波(反射波)w(ACB)の位相差をΔΦとする。反射点Cで位相がπ[rad]ずれることを考慮すれば、位相差ΔΦは次のように表される。ここで、λは電磁波の波長、ωは電磁波の各周波数、cは光速である。
【0091】
【数9】
【0092】
従って、受信点Bで受信される電磁波の受信強度I
Bは、次のように表される。ここで、I
ABは受信点Bにおける直接波w(AB)の強度、I
ACBは受信点Bにおける反射波w(ACB)の強度、R(θ)は式(6a)又は式(6b)で表される強度反射率、I
0は送信点Aから送信される電磁波の強度、cosξは経路ベクトル(AB)及び経路ベクトル(CB)の間の方向余弦を表す。
【0093】
【数10】
【0094】
実際の水波面の動きは極めて複雑であるが、ここでは簡単に、水波面を正弦波で近似することとし、水波の振幅をh
w、波長をλ
w、角振動数をω
wとして、反射点の高さh
Cを次のように表す。ここで、tは時刻、x
Cは反射点Cのx座標でありx
C=l
0である。
【0095】
【数11】
【0096】
ここで、通常の水波面ではλ
w=k
w・2πh
w(kw=1〜1.5)程度である。反射点Cにおける接線傾斜角φの正接は式(11)をx
Cで偏微分することによって得られるので、結局、接線傾斜角φは次のように表される。
【0097】
【数12】
【0098】
今、時刻tは任意変数であるので、ξ=2πx
C/λ
w−ω
wtも任意変数である。そこで、(h
C,φ)を任意変数ξの函数とみなし、次のように表す。
【0099】
【数13】
【0100】
そして、
(i)まず、ξを区間[0,2π)の一様乱数で発生させて(h
C,φ)を決定する。
(ii)次に、発生させた(h
C,φ)から、式(7a)により入射・反射角θを決定する。
(iii)次に、(φ,θ)から、式(8b)により反射経路長l
ACBを決定する。
(iv)次に、l
ACBから、式(9a)により位相差ΔΦを決定する。
(v)最後に、(l
ACB,ΔΦ)から、式(10a)により電磁波の受信強度I
Bを決定する。
という一連の処理を繰り返し実行し、電磁波の受信強度I
Bの分布をモンテカルロ法により計算する。尚、この計算に於いては、異なる2つ以上の経路の反射波が同時に干渉する場合については、発生確率が小さいであろうと仮定して考慮していない。
【0101】
図8は、(a)反射点Cの高さh
Cの確率分布函数f
hC(h
C)、及び(b)水面に波がある場合の受信点Bにおける相対受信強度I
B/I
0の確率分布函数f
IB(I
B/I
0)の計算結果を表す図である。
図8(b)の計算では、S波を使用した。
図8(b)の計算に於いて、各定数は、水の比屈折率n
r=8.944、送受信点間水平距離l=10m、送信点高さh
A=0.5m、受信点高さh
B=1.0m、水波振幅h
w=0.1m、水波波長λ
w=1.5×2πh
w=0.942m、電磁波周波数f=2.0GHzとした。また、モンテカルロ計算回数は10,000,000回とした。上述の通り水波面を正弦波で近似したので、h
Cの確率分布函数f
hC(h
C)は、
図8(a)に示すような逆正弦分布関数となる。そして、受信強度I
Bの確率分布函数f
IB(I
B)は、この確率分布函数f
hC(h
C)が反映されたものとなる。
【0102】
図9は、水位の変化に伴う相対受信強度I
B/I
0の平均値ave(I
B/I
0)の変化の計算結果を表す図である。
図10は、水位の変化に伴う相対受信強度I
B/I
0の標準偏差σ(I
B/I
0)の変化の計算結果を表す図である。
図9,
図10の計算では、S波を使用した。
図9,
図10に於いて、各定数は、水の比屈折率n
r=8.944、送受信点間水平距離l=10m、送信点高さh
A=2.0m、受信点高さh
B=5.0m、水波波長λ
w=1.5×2πh
w、電磁波周波数f=2.0GHzとした。また、水位1点あたりのモンテカルロ計算回数は200,000回とした。横軸の「水位レベル」は、平均水面の高さ(z座標)であり、
図9,
図10に於いては、水位が2.0mに達したときに平均水面は送信点Aの高さh
Aまで達する。
図9より、水面波の振幅h
wが大きくなるにつれて、反射波の経路長l
ACBの分散が大きくなるために反射波の位相差ΔΦの分散が大きくなり、相対受信強度I
B/I
0において現れる反射波の干渉の影響が小さくなる傾向が見られる。また、干渉による相対受信強度I
B/I
0の平均値ave(I
B/I
0)の変動振幅の大きさ及び相対受信強度I
B/I
0の標準偏差σ(I
B/I
0)は、水位が送信点に接近するに従って大きくなる傾向が見られる。
【0103】
以上は、受信点に於いて1つの直接波が1つの反射波と干渉する場合についての検討であったが、次に、送信点から発射された電磁波が受信点に直接到達すると共に、複数の反射点で反射された反射波が受信点に於いて多重干渉する場合についても検討する。実際の水面は3次元的な拡がりを有するので、一般的な議論については3次元空間に於いて行う必要がある。然し、ここでは簡単に定性的な机上検討を行うことを目的とし、送信点と受信点を含む鉛直平面S内に於ける電磁波の反射と干渉についての検討をする。
【0104】
図11に示したように、空間内の或る点Pに対して(N+1)方向から同一周波数の電磁波が入射して干渉する場合を考える。点Pに入射する電磁波をray
0,ray
1,…,ray
Nとする。電磁波ray
0,ray
1,…,ray
Nは全て同一平面S内にあるとし、平面Sを「光軸平面」(optic axial plane)と呼ぶ。電場が光軸平面S内にあり磁場が光軸平面Sに垂直である電磁波ray
i(i=0,…,N)の成分(P偏光成分)の電場をE
i(p)、磁場をH
i(p)と記す。電場が光軸平面Sに垂直であり磁場が光軸平面S内にある電磁波ray
i(i=0,…,N)の成分(S偏光成分)の電場をE
i(s)、磁場をH
i(s)と記す。また、電磁波ray
i(i=0,…,N)の光軸が水平線と成す角をθ
iと記す。
【0105】
まず、P偏光成分について考える。電磁波ray
0,ray
1,…,ray
NのP偏光成分の電場及び磁場を、其々次のように表す。
【0106】
【数14】
【0107】
ここで、ベクトルi
0,…,i
Nは、其々、光軸平面S内で且つ電磁波ray
0,ray
1,…,ray
Nの光軸に垂直な方向の単位ベクトル、i
zは光軸平面Sに垂直な方向の単位ベクトル、φ
0,…,φ
Nは、其々、電磁波ray
0,ray
1,…,ray
Nの点Pにおける位相である。このとき、点Pにおける干渉波の電場及び磁場は次のようになる。
【0108】
【数15】
【0109】
これから、点Pにおける電場エネルギーU
E(p)及び磁場エネルギーU
H(p)の時間平均値<U
E(p)>,<U
H(p)>を計算すると、其々、次のようになる。
【0110】
【数16】
【0111】
故に、点PにおけるP偏光成分の電磁場エネルギーU
(p)の時間平均<U
(p)>は次のようになる。
【0112】
【数17】
【0113】
ここで、<U
i(p)>(i=0,…,N)は、電磁波ray
iのP偏光成分の時間平均エネルギー(即ち、電磁波ray
iのP偏光成分の点Pでの強度I
i(p))である。S偏光成分についても、同様に計算することが出来て、点PにおけるS偏光成分の電磁場エネルギーU
(s)の時間平均<U
(s)>は次のようになる。ここで、<U
i(s)>(i=0,…,N)は、電磁波ray
iのS偏光成分の時間平均エネルギー(即ち、電磁波ray
iのP偏光成分の点Pでの強度I
i(s))である。
【0114】
【数18】
【0115】
次に、波立った水面上の送信点Aから、水平距離lだけ離れた同水面上の受信点Bに対して電磁波が送信される場合について考える。送信点Aと受信点Bを含む鉛直平面Sを「光軸平面」又は「反射平面」と呼び、この反射平面S内での反射・干渉について考える。反射平面S内の水平方向にx軸、鉛直方向にy軸を設定し、反射平面Sに垂直な方向にz軸を設定する。水面はz方向に対して並進対称であると仮定する。反射平面S内についてのみ考察する場合、水面は、反射平面S内で振動する水面曲線f
w(x,t)として表される。波立った水面に於いて電磁波が反射する場合、反射の法則により、反射点Cにおいて、水面の法線に対する電磁波の入射角と反射角とは等しくなる。即ち、反射点Cにおける入射経路と反射経路との中線が、反射点Cに於ける水面曲線f
w(x
C,t)の接線に対して垂直となる。以下、これを「反射条件」(reflection condition)と呼ぶ。送信点Aから発射されて反射条件を満たして水面で反射され受信点Bへ至る経路を「反射経路」(reflection path)と呼ぶ。
【0116】
反射平面S内で振動する水面曲線f
w(x,t)は、xに対して振動する関数なので、一般に反射経路は複数個存在する。そして、これら複数の反射経路を経由した各反射波と、送信点Aから受信点Bへ直接到達する直接波とが、受信点Bにおいて多重干渉し、干渉波を形成する。
図12に、波立った水面での反射による多重干渉の一例を示す。
図12において、水面曲線f
w(x, t)は正弦波曲線f
w(x, t)=sin(2πx/λ
w+ω
wt)(t=0)としている。この場合、送信点Aから水面上で反射され、反射条件を満たして受信点Bへ至る反射経路は19個存在する。其々の反射経路中の反射点を、
図12の通りC
1,C
2,…,C
19とする。これら19の反射経路のうち、経路AC
12,AC
14,AC
16,AC
18は、水面曲線f
w(x, t)と交叉しているため、これらの反射経路を採ることは出来ない。「反射経路は水面曲線と交叉しない」という条件を「非交叉条件」(non-crossing condition)と呼ぶ。詰まり、送信点Aから受信点Bへ至る反射経路のうち非交差条件を満たすものが「有効反射経路」(significant reflection path)となる。水面曲線f
w(x, t)の形状が同じ場合であっても、水位レベルによって有効反射経路の数は変化する。これは、送受信点と水面とが接近するに従って、反射経路の水面法線に対する入射角が大きくなるため、(1)反射条件を満たす反射経路の数が減少し、(2)反射経路が水面と交叉しやすくなるため非交叉条件を満たす反射経路の数も減少するためである。特に、送受信点と水面とが水面波の波高の数倍程度以下まで接近すると、有効反射経路数n
Cは急激に減少する。
図13に、水位レベルの変化に伴う有効反射経路数の変化の様子を示す。
図13において、水面曲線は正弦波曲線f
w(x, t)= h
w・sin(ω
wt + 2πx/λ
w+y
w0)とし、時間tは固定(t=0)としている。各パラメータは、送信点Aの高さh
A=5.0m、受信点Bの高さh
B=8.0m、水波振幅h
w=0.05m、水波波長λ
w=1.5×2πh
w=0.942mとし、水位レベルy
w0を0.2〜4.0mの範囲で変化させている。
図14に、水位レベル(h
A-y
w0)と有効反射経路数n
Cとの関係を示す。
【0117】
送信点Aから受信点Bへ直接到達する直接波ray
0の強度I
0(p)(=<U
0(p)>),I
0(s)(=<U
0(s)>)と、各有効反射経路に対して受信点Bにおける反射波ray
i(i=1,…,n
C)の強度I
i(p)(=<U
i(p)>),I
i(s)(=<U
i(s)>)を式(5a),(5b)により計算し、式(17),(18)によって受信点Bにおける干渉波の強度I
B(p)(=<U
(p)>),I
B(s)(=<U
(s)>)を計算する。また、水波曲線は時刻tに従って変動するので、時刻tを1周期T=2π/ω
wだけ等間隔ステップΔtで変化させて、各時刻t=Δt・iで干渉波の強度I
(p),I
(s)を計算してその平均及び分散をとることで、各水位レベル(h
A-y
w0)及び各水波振幅h
wに対する干渉波の平均強度及び分散を計算することができる。
図15に水位レベルと相対受信強度の平均値ave(I
B/I
0)の関係を示す。
図16に水位レベルと相対受信強度の標準偏差σ(I
B/I
0)の関係を示す。
図15,
図16に於いて、各定数は、水の比屈折率n
r=8.944、送受信点間水平距離l=10m、送信点高さh
A=2.0m、受信点高さh
B=5.0m、水波波長λ
w=1.5×2πh
w、電磁波周波数f=2.4GHzとした。横軸の「水位レベル」は、平均水面から送信点Aまでの距離(h
A-y
w0)である。
図15より、P偏光・S偏光ともに、水位レベル(h
A-y
w0)の変化に伴い相対受信強度の平均値ave(I
B/I
0)が振動することが分かる。これは、直接波と単一の反射波とが干渉する場合と同様である。また、水位レベル(h
A-y
w0)が0〜1.5m付近で、相対受信強度の平均値ave(I
B/I
0)が振動しながら増加する傾向が見られるが、これは、この領域では水位レベル(h
A-y
w0)が増加するに従って有効反射経路数n
Cが急激に増加することが反映されたものと考えられる。これは、今回の計算を反射平面S内に限っており、水面が反射平面Sに垂直な方向(z方向)に対して並進対称であると仮定したことによるものであり、実際の3次元的な水面では、この領域での有効反射経路数n
Cの増加はより緩やかになると考えられる。
【0118】
(4)試験結果
(4.1)室内試験
次に、実際にビーコン(beacon)(RFセンサ)と受信器を用いて、水面による電波の受信状況の変化に関して実験を行った結果について説明する。
図17は、実験室において実際にアクティブ型ビーコン(active beacon)を用いて、送信点Aと水面との距離の変化による受信強度の変化を測定した結果である。
図17において横軸は時間、縦軸は受信強度(dB)を表す。また、
図18は、
図17の測定の測定条件を示す図である。測定は、水槽内にポールを設置して、125cm間隔で高さを変えてアクティブ型ビーコンを設置し、水槽に水を注水しながら水槽外部の受信機で各ビーコンから送信される信号の受信強度を観測することによって実施した。
図17の(a),(b),(c)の測定結果は、其々、
図18の(a),(b),(c)のビーコンからの信号の受信強度を表している。
【0119】
図17より、水槽内に水が注水され始めると、受信強度の分散が大きくなり始め、水面が各ビーコンに接近するにつれて受信強度の分散が大きくなる。これは、水面がビーコンに接近するにつれて、ビーコンから受信アンテナへ伝搬する直接波と反射波との干渉の影響が大きくなり(
図5,
図6)、水面の揺れによる受信強度の変化が大きくなるためであると解される。水面がビーコンにさらに接近すると、〜10cm以下まで接近した辺りから、受信強度の平均値が徐々に低下し始めるとともに、受信信号の有効サンプリング数(受信に成功した信号の数)が低下し始める。これは、水面がビーコンに非常に近くまで近接すると、反射波の水面への入射角がブリュースタ角に近づくため、p偏光波の反射があまり生じなくなり、その分だけ全体の受信強度が低下するためであると解される。
図19は、周波数f=2.4GHzにおける入射角θ
Cに対する水の強度反射率R
p, R
sの変化を表す図である。
図19より、周波数f=2.4GHzにおいては、空気-水間の反射のブリュースタ角は約84度であり、入射角θ
Cが60度を超えた付近からp偏光波の反射率は急激に低下していることが分かる。
【0120】
そして、ビーコンが水没すると、受信強度は急激に低下する。これは、水中のビーコンから発射された電波が水面で反射及び屈折されるためであると解される。尚、周波数f=2.4GHzにおいては屈折率が大きいため、水中から水面に入射される電磁波の屈折角は、ほぼ90度となり、屈折波の殆どは水面に沿って伝搬するため、水面から離れた位置にある受信アンテナへ到達する電波強度は大きく弱まると考えられる。さらに、水没後にビーコンの水深が大きくなると、水中のビーコンから発射された電波は水中で大きく減衰するため、受信強度はさらに急激に低下して、通信途絶に至る。
【0121】
従って、受信点(センサ通信アンテナ11)において、送信点(RFセンサ2)からの信号の受信強度の分散の増加を観測することにより、浸水が始まったことを検出することが可能であることが分かる。また、受信強度の平均値の低下を観測することによって、送信点(RFセンサ2)が近接又は水没したことを検出することが可能であることが分かる。
【0122】
(4.2)外部環境試験I
次に、実際の外部環境に於いて行った試験測定結果について説明する。河川増水や洪水のような発生頻度の極めて低い事象での試験は事実上困難であるため、今回の外部環境測定試験は、海岸に於ける潮の干満を利用して試験を実施した。外部環境測定試験の実施場所は、干満差のある干潟で行った。
図20は、外部環境測定試験で使用した試験システムの外観写真である。
図20(a)はRFセンサ2の設置状態を示す写真であり、
図20(b)は電波受信測定系の設置状態を示す写真である。干潟に沓石ブロック(deck block)を設置して、沓石ブロックに支柱を立てて、この支柱の高さの異なる3カ所に、其々、RFセンサ2を固定した。沓石ブロックの上面から各RFセンサ2までの高さは、其々、39.7cm,79.7cm,118.2cmとした(
図20(a)の左下小図参照)。各RFセンサ2は、自発発信型のものを使用し、1秒毎に電波応答信号を発信するように設定した。また、電波応答信号の使用周波数帯域は2.4GHzを用い、スペクトル拡散通信による通信を行うように設定した。また、電波応答信号の受信と同時に、そのときの水深も測定するため、沓石ブロックの上面に水深センサを設置した。尚、干潟地面から沓石ブロック上面までの高さは約20cmとしたため、沓石ブロックの周囲の水位が20cmを超えた場合に水深センサにより水深が検出される。また、電波受信測定系は、
図20(b)に示した様に、海岸の堤防上に設置した。沓石ブロックから電波受信測定系の受信アンテナまでの水平距離は6.6m、沓石ブロックが設置された干潟地面から受信アンテナまでの垂直距離は4.2mとした。受信アンテナは、S偏光を最も高感度で受信できるように、電界が水平方向に振動する電波の受信感度が最大となる向きとなるように設置した。また、電波受信測定時における実際の水面の様子も同時に記録するため、受信アンテナの脇にビデオカメラを設置してRFセンサ2の周囲の撮影を行った。
【0123】
図21は、外部環境に於けるRFセンサ2周囲の水位レベルとRSSとの測定結果を示す図である。尚、
図21の結果は、
図20(a)の3つのRFセンサ2のうちの最も下のもので測定されたデータである。
図21において、横軸は測定時刻(8時〜11時)、左縦軸はRSS[dB]、右縦軸は水位レベル[m](沓石ブロックの上面を0とした水深)を表す。実際に各時刻に測定されるRSSは、水面波の影響によるノイズが大きいため、各時刻tにおいて、その時刻tから時間区間[t-Δt, t](Δt=2min)の時間平均をとることにより、ノイズの低減化処理を行った。尚、水位レベルのほうは、水深センサにより各時刻tに計測された値を示している。ビデオカメラで記録した映像から、時刻9:00から沓石ブロックの周囲が浸水しはじめ、時刻9:47に最下部のRFセンサ2に水面が到達した。
図22に、各時刻におけるRFセンサ2の周囲の浸水状況を示す。
図22(a)は時刻9:00におけるRFセンサ2の周囲の浸水状況、
図22(b)は時刻9:00におけるRFセンサ2の周囲の浸水状況である。RFセンサ2の周囲の地面が冠水すると、水面反射により、受信アンテナで受信される電波応答信号の干渉が大きくなり、水面がRFセンサ2に近づくに従って干渉の影響は増大する。そして、水面がRFセンサ2に近づくとともに、RSSの水位レベルに対する振動が増加し、水面がRFセンサ2の高さにまで達すると、RSSは急激に低下する。この結果は、
図5,
図6,
図9に示した様な計算結果と定性的によく一致していることが分かる。
【0124】
図23は、外部環境に於けるRFセンサ2の周囲の水位レベルとRSSの分散σ
2(RSS)との測定結果を示す図である。
図23の測定データは、
図21と同じ電波応答信号によるものである。
図23において、横軸は測定時刻(8時〜11時)、左縦軸はRSSの分散σ
2(RSS)[dB]、右縦軸は水位レベル[m](沓石ブロックの上面を0とした水深)を表す。RSSの分散σ
2(RSS)は、RFセンサ2の周囲の冠水が始まると急激に大きくなる。これは、通常のノイズに水面波振動によるRSSの揺らぎが加わるためと考えられる。また、RFセンサ2と水面との間の距離が一定程度まで近づくと急激に大きくなり、その後RFセンサ2と水面との間の距離が近づくにつれて振動しながら増加する。これは、水面波によって水面が上下動をすることが影響して、このような現象が観測されると考えられる。この結果は、
図10に示した様な計算結果と定性的によく一致していることが分かる。
【0125】
図24は、外部環境に於けるRFセンサ2の周囲の水位レベルと正常受信回数との測定結果を示す図である。
図24の測定データは、
図21と同じ電波応答信号によるものである。
図24において、横軸は測定時刻(8時〜11時)、左縦軸は正常受信回数[回]、右縦軸は水位レベル[m](沓石ブロックの上面を0とした水深)を表す。ここで、「正常受信回数」とは、一定の時間内に受信応答信号が正常に受信された回数をいう。正常受信回数を、その時間内にRFセンサ2から電波応答信号が送信された回数で割れば、「正常受信率」が求められる。
図24においては、1.5分あたりに受信応答信号が正常に受信された回数を示している。正常受信回数は、RFセンサ2の周囲の地面が冠水してもあまり変化は見られない。これは、送受信I/Fモジュール12における通信プロトコル上のエラー訂正機能により、ある程度のマルチパス・フェージングによる干渉ノイズによる受信信号の部分的なエラーは、エラー訂正がされるためであると考えられる。RFセンサ2と水面との間の距離が20cmよりも近づくと、電波応答信号のマルチパス・フェージングの影響が極めて大きくなるため正常受信回数は低下しはじめ、水面がRFセンサ2の高さに達すると正常受信回数は急激に減少する。従って、正常受信回数(又は正常受信率)の急激な減少を検出することにより、RFセンサ2の浸水を検出することができることが分かる。
【0126】
図25は、外部環境に於けるRFセンサ2の周囲の水位レベルとVRSSとの測定結果を示す図である。
図25の測定データは、
図21と同じ電波応答信号によるものである。
図25において、横軸は測定時刻(8時〜11時)、左縦軸はVRSS[dB]、右縦軸は水位レベル[m](沓石ブロックの上面を0とした水深)を表す。尚、
図25においては、受信信号強度I(t)の時間変化値DI(t)をDI(t)=I(t)/I(t−δt)と定義している。VRSSはDI(t)の絶対値|DI(t)|である。
図25より、VRSSは、RFセンサ2の周囲の地面の冠水が始まると急激に大きくなり、その後RFセンサ2と水面との間の距離が近づくにつれて増加し、水面がRFセンサ2の高さまで達するとさらに増大する。これは、
図21に示したRSSの変化に対応したものである。尚、
図25から分かるように、RFセンサ2の周囲の地面が冠水して以降のVRSSの値は非常にばらつきが大きい。従って、VRSSの値からRFセンサ2の周囲の地面の冠水の有無を判定するには、単純にVRSSの値|DI(t)|が閾値DI
thを超えたか否かで判定するよりも、一定の時間Δt
3内にVRSSの値|DI(t)|が閾値DI
thを超えた回数N
DIが、所定の閾値N
DIthを超えたか否かで判定することが好ましいと考えられる。
【0127】
(4.3)外部環境試験II
次に、水位変化が大きい福岡県の筑後川の河口付近に於いて水位検出試験を行った試験測定結果について説明する。この試験では、浸水検出装置1と各RFセンサ2との間の通信方式として、Bluetooth 5.0(登録商標)規格を使用した。無線周波数帯域は2.4 GHzである。RFセンサからの電波応答信号の間隔は10秒とした。
図26−
図28に、浸水検出装置1及び各RFセンサ2a,2b,2cを設置した場所の周辺環境とそれらの位置関係を示す。
図27に示すように、河川の岸付近に立てられた木杭に、3つのRFセンサ2a,2b,2cを、約50cm間隔で高さを変えて固定設置した。この各RFセンサ2の設置場所の隣には、国土交通省の水位計が設置されており、各時刻の水位に関してはこの水位計の観測データを利用した。
図28に示すように、浸水検出装置1は、RFセンサ2を設置した川岸の対岸にある建物の屋上に設置した。浸水検出装置1と各RFセンサ2との位置関係は、
図26に示すように、河川を挟み、水平距離で80.2m、垂直距離で15.0m、直線距離で81.6m(測量値)とし、浸水検出装置1から各RFセンサ2が直接見通せるようにした。
【0128】
図29に、水位レベルとRFセンサ2aに対するRSSの時間変化の実測値を示す。
図30に、水位レベルとRFセンサ2aに対する正常受信回数(normal reception count;以下「NRC」という。)の時間変化の実測値を示す。
図31に、水位レベルとRFセンサ2aに対するRSS分散の時間変化の実測値を示す。
図29−
図31において、横軸は時刻(時:分)を表す。
図29の縦軸は水位(左軸)及びRSS(右軸)、
図30の縦軸は水位(左軸)及びNRC(右軸)、
図31の縦軸は水位(左軸)及びRSS分散値(右軸)を表す。水位の基準面(0m面)は、RFセンサ2a直下の河床から0.13mの高さとされ、浸水が生じていない状態(RFセンサ2a直下の河床に水がない状態)において水位は−0.13mである。また、最上部のRFセンサ2aの設置された高さは、水位基準面から2.1mの高さである。
図29のRSSの値は、10秒毎に測定される標本値を前2分間の期間で平均した移動平均値である。また、
図31のRSS分散は、各時刻における該時刻から前3分の間にサンプリングされたRSS値の分散を表す。
【0129】
図29−
図31において、水位の観測値を見ると8:00頃から河床の冠水が発生し、10:00−12:10の間にはRFセンサ2aが没水し、15:00頃に河床の冠水が終息していることが分かる。河床の冠水が始まってRFセンサ2aが没水するまでの間(8:00頃−10:00)、及びRFセンサ2aの没水が終わってから河床の冠水が終息するまでの間(12:10−15:00頃)は、RFセンサ2aの周囲には水面が存在し、時間と共に水面とRFセンサ2aとの間の空間の距離が変化する。この区間を「非水没冠水期間」(non-submerge flooding period)と呼ぶ。RSSの観測結果(
図29)を見ると、非水没冠水期間にはRFセンサ2aと水面との間の距離の変化に伴って、RSSの振動変化が明確に観測されている。この振動については、
図5,
図6で説明した通りである。また、RFセンサ2aが冠水すると、RSSは急激な減少が始まり、水深が増すと軈て通信が途絶することが分かる。これは、水中での2.4 GHz近傍の電磁波の誘電損失が極めて大きいためである。
【0130】
次に、NRCの観測結果(
図30)を見ると、非水没冠水期間においてはNRCの目立った変化はなく、河床が冠水していない期間(以下「非冠水期間」(non-flooding period)という。)との判別はできない。これは、浸水検出装置1における受信器のエラー訂正機能により、水面反射により生じるマルチパスフェージングノイズの影響が相殺されるためであると考えられる。従って、NRCを観測しただけでは、冠水の発生は検出するのは難しいことが分かる。一方、RFセンサ2aが没水すると、RSSが急激に減少することに伴いNRCも0となり通信が途絶する。従って、NRCを観測することにより、RFセンサ2aが没水したか否かを鋭敏に検出することができることが分かる。
【0131】
次に、RSS分散の観測結果(
図31)を見ると、非水没冠水期間においては、RFセンサ2aの周囲の河床が冠水して水深が浅いときには、RSS分散は水深の変化に対して大振幅で変化する。そして、水深が大きくなるに従って、RSS分散は振動しながらその振幅が減少していく。水深が1mを超えるあたりでは、RSS分散は非冠水期間とほぼ同じレベルとなる。一方、RFセンサ2aが没水する直前の付近及び没水が終了する直後の付近では、RSS分散は急激に増大する。従って、RSS分散が急激に増加したことを観測することによって、RFセンサ2aの周囲の地面が冠水したこと又はRFセンサ2aが没水する直前であることを検出することができると考えられる。
【0132】
図32は、
図29に示した各時刻の水位レベルの実測値及びRFセンサ2aに対するRSSの実測値を、横軸を水位レベル、縦軸をRSSとしてプロットした図である。尚、
図29においては、水位レベルの0m面は河床面から0.13mのオフセットがあるので、
図32では、河床面が0mとなるように水位レベルをシフト変換している。
図32より、RFセンサ2aに対するRSSの観測値は、水位レベルの変化に対してΔLv=32.7±2.5cmの略一定周期で振動していることが分かる。従って、垂直方向に複数のRFセンサ2を並べて設置して、各時刻で各RFセンサ2に対するRSSを観測することによって、各時刻でRSSの水位レベルに対する振動をリアルタイムに捉えることが出来ることが分かる。
【0133】
ここで、水位レベルの変化に対するRSSの振動周期とRFセンサ2a及び浸水検出装置1の受信アンテナの位置の関係について説明する。実際のRFセンサ2aから浸水検出装置1の受信アンテナへの電波伝搬を簡単化し、
図33に示した様な水面反射干渉モデルを考える。この場合、点Aに設置されたRFセンサ2aから放射された電波は、光路AB及び光路ACBを通って、点Bに設置された浸水検出装置1の受信アンテナに到達し、点Bにおいて干渉する。点Cは水面上の反射点である。光路ACBを含む垂直面を反射平面とし点Aを原点(0,0)とする。反射平面内の水平方向にx軸、垂直方向にy軸を設定する。点Bの座標を(x
0,y
0)とする。水面から点A(原点)までの距離をdとする。光路AB,AC,CBの長さを、其々l
0、l
11,l
12とする。今、(y
0/x
0)
4<<1、((y
0+2d)/x
0)
4<<1とすると、光路ABの光路長l
0及び光路ACBの光路長l
11+l
12並びに両者の光路差Δlは次のようになる。
【0134】
【数19】
【0135】
このとき、点Bにおいて受信アンテナで受信される受信信号sのフェーザ(phasor)は次式(20a)のようになる。ここで、k,λ,fは放射電波の波数,波長,周波数であり、cは光速、s
0は直接波の受信強度、ηは点Cでの光路差Δl,水面での反射率R(θ),直接波と反射波の受信アンテナへの入射角φ
0,φ
1及び受信アンテナの指向性関数g(φ)により決まる1より小さい反射波減衰係数である。
【0136】
【数20】
【0137】
故に、水位レベルの変化に対するRSSの振動周期Λは次式のように表される。
【0138】
【数21】
【0139】
周波数fが2.4GHzの場合c/2f=6.25×10
−2[m]である。x
0=80[m]、y
0=15[m]とすると、式(21)よりΛ=0.33[m]となり、
図32の実測値とほぼ一致する。
【0140】
図34は、水位レベル及びRFセンサ2a,2b,2cに対するRSSの時間変化の実測値を示す図である。尚、
図34に示した測定データは、
図29−
図31に示したデータの測定日とは異なる日に測定したものである。
図34において、各RFセンサ2a,2b,2cの非水没冠水期間では、水位の上昇又は下降に伴い、最上部のRFセンサ2aのRSSは、最下部のRFセンサ2cのRSSと略同位相で振動している。また、中央部のRFセンサ2bのRSSは、水位の上昇又は下降に伴い、RFセンサ2a,2cのRSSとは、ほぼ逆位相で振動している。各RFセンサ2a,2b,2cの間隔は約50cmであるので、RFセンサ2a,2bの間隔d
abは約50cm、RFセンサ2a,2cの間隔d
acは約100cmである。水位変化に対するRSSの振動の周期ΔLvは、
図32より、ΔLv≒33cmであるので、d
ab/ΔLv≒1.5、d
ac/ΔLv≒2.0であり、d
ab/ΔLvはほぼ半整数、d
ac/ΔLvはほぼ整数となっている。従って、RFセンサ2a,2bの水位変化に対するRSS振動の位相は逆位相、RFセンサ2a,2cの水位変化に対するRSS振動の位相は同位相となることが予測され、
図34の測定結果はその予想を裏付けている。このように、ΔLvの半整数倍となる間隔で設置した2つのRFセンサ2a,2b(又は2b,2c)に対するRSSを同時に測定してその比(dB値の差分)を取ることで、水位変化に対するRSS振動をリアルタイムに高感度で検出することが可能となる。
図35に、2つのRFセンサ2a,2bに対するRSSの比RSS(2a)/RSS(2b)の時間変化を示す。RFセンサ2a,2bの水位変化に対するRSS振動の位相は逆位相であるため、非冠水期間と比べて、非水没冠水期間には比RSS(2a)/RSS(2b)の顕著な振動が検出されることが分かる。
【0141】
(5)浸水検出装置1の動作
最後に、本実施例の浸水検出システムの動作について説明する。本実施例の浸水検出システムにおける浸水検出装置1では、RFセンサ2からの電波応答信号の受信信号強度I(t)の一定時間Δt
1内の分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])と一定時間Δt
2内の正常受信率R([t−Δt
2,t])の閾値判定により、RFセンサ2の浸水を検出する。また、分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])の閾値判定、又は受信信号強度変動度|DI(t)|の閾値判定を用いて、RFセンサ2の周辺の地面の冠水を検出する。そのため、これらの閾値判定の際の閾値を適切な値に設定する必要がある。然し乍ら、受信信号強度I(t)やその分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])、正常受信率R([t−Δt
2,t])等は、RFセンサ2と浸水検出装置1が設置される周辺環境に依存して変化すると考えられる。従って、本実施例の浸水検出装置1では、地面が冠水していない平時において受信信号強度I(t)、分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])、正常受信率R([t−Δt
2,t])等をサンプリングして、機械学習によって其々の閾値を周囲環境に適応して設定する。
【0142】
各閾値を設定する場合、使用者は、地面が冠水していない平時において、初期化スイッチ16により初期化指示を浸水検出装置1に対して入力する。初期化指示が入力されると、分散閾値設定部23は、一定の時間、RFセンサ2から定期的に送信される電波応答信号の受信応答信号をサンプリングして、地面が冠水していない平時の場合のRSS I(t)の分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])の平均値σ
2av0を機械学習し、平均値σ
2av0に所定の係数r
σ(r
σ>1)を乗じた値を閾値σ
2th1に設定する。ここで、係数r
σは実験によって予め適宜設定される定数である。また、正常受信率閾値設定部25は、地面が冠水していない平時の場合の正常受信率R([t−Δt
2,t])の平均値R
av0を機械学習し、平均値R
av0に所定の係数r
R(0<r
R<1)を乗じた値を閾値R
th1に設定する。ここで、係数r
Rは実験によって予め適宜設定される定数である。また、強度変動閾値設定部26aは、地面が冠水していない平時の場合のVRSS |DI(t)|の平均値|DI|
av0を機械学習し、平均値|DI|
av0に所定の係数r
DI(r
DI>1)を乗じた値を閾値DI
thに設定する。ここで、係数r
DIは実験によって予め適宜設定される定数である。
【0143】
以上の初期設定が完了した後、浸水検出装置1は、RFセンサ2の周囲の地面の冠水の有無、及びRFセンサ2の浸水・冠水の有無の検出動作を継続的に実行する。
図36は、浸水検出装置1の浸水・冠水の有無の検出動作を表すフローチャートである。
【0144】
まず、時刻t
nにおいてセンサ通信アンテナ11でRFセンサ2からの電波応答信号が受信されると、送受信I/Fモジュール12は電波応答信号を復調・復号して受信応答信号を出力する(S1)。
【0145】
次に、受信信号強度検出部21は、時刻t
nにおけるRSS I(t
n)を検出し出力する。また、受信信号強度変動検出部26は、時刻t
nにおけるVRSS |DI(t
n)|を演算し出力する(S2)。
【0146】
次に、受信強度散布度検出部22は、時刻t
nにおいて、RSS I(t)の一定時間Δt
1内の分散値σ
2(I;[t
n−Δt
1,t
n])を演算し出力する(S3)。ここで、分散計算のためのサンプリング時間Δt
1は予め設定された定数値である。
【0147】
次に、正常受信率検出部24は、時刻t
nにおいて、時刻t
nから前の一定の時間Δt
2内に受信応答信号が正常に受信された割合である正常受信率R([t
n−Δt
2,t
n])を演算し出力する(S4)。ここで、正常受信率の計算のためのサンプリング時間Δt
2は予め設定された定数値である。
【0148】
次に、浸水判定部27は、受信強度散布度検出部22が出力する分散値σ
2(I;[t
n−Δt
1,t
n])が閾値σ
2th1以上で、且つ正常受信率検出部24が出力する正常受信率R([t
n−Δt
2,t
n])が所定の閾値R
th1以下となったか否かを判定する(S5)。ここで、判定条件「σ
2(I;[t
n−Δt
1,t
n])≧σ
2th1 ∩ R([t
n−Δt
2,t
n])≦R
th1」が満たされた場合、浸水判定部27は、浸水検出信号を出力し、上位通信I/Fモジュール14は、浸水検出信号を、上位通信アンテナ15を介して上位ネットワークへ送信する(S6)。
【0149】
一方、ステップS5において、判定条件「σ
2(I;[t
n−Δt
1,t
n])>σ
2th1 ∩ R([t
n−Δt
2,t
n])<R
th1」が満たされていない場合には、浸水注意報判定部28は、次のいずれかの冠水判定条件が満たされているか否かを判定する(S7)。
(判定条件1)受信強度散布度検出部22が出力する分散値σ
2(I;[t−Δt
1,t])が閾値σ
2th2に対してσ
2(I;[t−Δt
1,t])≧σ
2th2となった。
(判定条件2)一定のサンプリング時間Δt
3内にVRSS |DI(t)|が閾値DI
thを超えた回数N
DIが、所定の閾値N
DIthを超えた。
上記(判定条件1)又は(判定条件2)が満たされた場合には、浸水注意報判定部28は、浸水注意信号を出力し、上位通信I/Fモジュール14は、浸水注意信号を、上位通信アンテナ15を介して上位ネットワークへ送信する(S8)。
【0150】
以下は、上記ステップS1〜S8までの動作が反復して実行される。上位ネットワークにおいて、例えば、上位ネットワーク上の管理サーバ(図示せず)が浸水検出装置1から送信された浸水検出信号を受信すると、その浸水検出装置1の周辺に設置されたRFセンサ2において浸水が発生したことを知ることが出来る。また、管理サーバが浸水検出装置1から送信された浸水注意信号を受信すると、その浸水検出装置1の周辺に設置されたRFセンサ2の周辺に於いて地面が冠水したことを知ることが出来る。このようにして、本実施例の浸水検出システムは、RFセンサ2の周囲の浸水又は冠水状況を適確に検出することが出来る。
【実施例3】
【0156】
図39は、本発明の実施例3に係る浸水検出システムの全体配置図の一例を示す図である。基本的な配置は、実施例1と同様であるが、本実施例では、浸水検出装置1がセンサ通信アンテナとしてアレイアンテナ11aを備えている点が、実施例1とは相違している。
図40は、
図39の浸水検出装置1の構成を示すブロック図である。
図40において、実施例1の
図2と同様の構成部分については同符号を付している。実施例1と比較すると、本実施例の浸水検出装置1は、センサ通信アンテナとして、複数のアンテナ素子がアレイ状に配列されたアレイアンテナ11aを備えている。アレイアンテナ11aの各アンテナ素子は、垂直向きに一定の間隔で縦列配置されている。また、アレイアンテナ11aの各アンテナ素子に一対一に対応して移相器11bを備え、各移相器11bで受信される出力を加算する加算器11cを備えている点が相違している。また、コンピュータ13の機能モジュールとして、ウエイト設定部30,方位スペクトル検出部31,水位推定部32,水位信号送信部33を備えている。ウエイト設定部30は、各移相器11bのウエイト(移相量及びゲイン)を設定する処理を行うモジュールである。方位スペクトル検出部31は、アレイアンテナの受信出力に基づき受信方向に対する受信強度のスペクトル(以下「角度電力スペクトル」(angular power spectrum:APS)という。)を計算する処理を行うモジュールである。水位推定部32は、方位スペクトル検出部31から出力されるAPSに基づき、降雨の有無及び冠水水位を推定する処理を行うモジュールである。水位信号送信部33は、上位通信I/Fモジュール14により水位推定部32が出力する降雨の有無及び冠水水位を上位のサーバやインターネット等の上位ネットワークに送信するための通信を行うモジュールである。
【0157】
以上のように構成された本実施例に係る浸水検出システムについて、以下その動作を説明する。尚、ここでは、実施例1と同様の部分についての説明は省略し、新たに追加したアレイアンテナによるAPSの検出とそれに基づく降雨の有無及び冠水水位を推定する処理に関して説明する。アレイアンテナ11aは、
図41に示した様に、N個(Nは2以上の整数)のアンテナ素子A
1,A
2,…,A
Nが鉛直直線L
a上に配列している。尚、
図41では、図示の便宜上、90度回転させて表示している。鉛直直線L
a上の適当な位置に原点Oを設定して、各アンテナ素子A
i(i=1,2,…,N)の原点に対する距離をd
iとする。このアレイアンテナ11aに対して、水平方向に対する頂角(入射角)がθの方向から平面波の電波(到来波)s(t)が入射する場合を考える。このとき、アンテナ素子A
iには受信信号x
i(t)が誘導される。原点Oにおける到来波s(t)の位相を0とすれば、アンテナ素子A
iに入射する到来波s(t)の位相進行量φ
iはφ
i=kd
isin(θ
i)=2πd
isin(θ
i)/λである。ここで、k,λは、到来波の波数,波長である。従って、受信信号x
i(t)は、アンテナ素子A
iの指向性をg(θ)とすれば、
【0158】
【数22】
である。アンテナ素子A
iの受信信号x
i(t)は、移相器11bにおいて移相され増幅される。アンテナ素子A
iに対する移相器11bの移相量をδ
i、ゲインをW
iとし、この移相器11bの複素ウエイトw
iを
【0159】
【数23】
とする。このとき、アンテナ素子A
iに対する移相器11bの出力はw
ix
i(t)となるので、加算器11cの出力y(t)は、
【0160】
【数24】
となる。D(θ)はアレイファクタ(array factor)と呼ばれている。
【0161】
このようなアレイアンテナ11aにおいて、任意の入射角θ
sの方向のアレイファクタの大きさを最大とする場合、ウエイト設定部30は各アンテナ素子に対する移相器11bの移相量δ
iをつぎのように設定する。
【0162】
【数25】
このとき、頂角θ
sをステアリング角(steering angle)という。
【0163】
方位スペクトル検出部31は、ウエイト設定部30によりステアリング角θ
sを走査範囲[θ
min,θ
max]内(−90°<θ
min<θ
max<90°)で変化させ、各ステアリング角θ
sにおいて受信強度検出部21により受信強度|y(t)|
2を検出することによりAPSを測定することができる。実際には、受信信号x
i(t)にはノイズ(アンテナ素子内の内部ノイズや、アンテナ素子外の外部ノイズ)が加算されているので、方位スペクトル検出部31がAPSを測定する際には多数の受信強度の標本値から統計的な処理を行うことによってAPSを算出する。この手法は、現在ではビームフォーマ法(beamformer method)やCapon法(Capon method)、線型予測法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などの各種手法が周知であり、これらの手法を用いてAPSの測定を行うことができる(例えば、非特許文献1参照)。例えば、Capon法によりAPSを測定する場合、方位スペクトル検出部31は、次のような統計計算によってAPS P
CP(θ)の算出を行う。
【0164】
【数26】
ここで、E[…]は期待値(アンサンブル平均)、( )
Tは転置、( )
Hはエルミート共役を表す。ベクトルx(t)は入力ベクトル(input vector)、ベクトルa(θ)はアレイ応答ベクトル(array response vector)、行列R
xxは入力相関行列(input correlation matrix)と呼ばれている。また、ビームフォーマ法によりAPSを測定する場合、方位スペクトル検出部31は、次のような統計計算によってAPS P
BF(θ)の算出を行う。
【0165】
【数27】
また、線型予測法によりAPSを測定する場合、方位スペクトル検出部31は、次のような統計計算によってAPS P
LP(θ)の算出を行う。
【0166】
【数28】
ベクトルw
LPは、最適ウエイトベクトルと呼ばれる。
また、MUSIC法によりAPSを測定する場合、方位スペクトル検出部31は、次のような統計計算によってAPS P
MU(θ)の算出を行う。
【0167】
【数29】
ここで、θ
iは各到来波の入射角、Lは到来波の個数、ベクトルe
iは入力相関行列A
xxの固有ベクトル、Nは入力相関行列A
xxの固有値・固有ベクトルの数(アンテナ素子の素子数)である。行列Aは方向行列と呼ばれている。尚、方位スペクトル検出部31によるAPSの計算方法については、これ以外にも各種公知の方法を用いることができる。
【0168】
水位推定部32は、このようにして得られるAPSに基づき、降雨による地面の冠水及びその水位の検出及び推定を行う。例えば、
図33のように、送信点AのRFセンサ2から光路ABを通り受信点Bのアレイアンテナ11aに到来する直接波と、送信点AのRFセンサ2から光路ACBを通り受信点Bのアレイアンテナ11aに到来する反射波とについて考える。光路ABが水平軸(x軸)と成す角をθ
0、光路CBが水平軸(x軸)と成す角をθ
1とする。一例として、θ
0=10°,θ
1=20°,アレイアンテナ11aのアンテナ素子数が21の場合について考える。
図42に、この条件に於いてアレイアンテナ11aにより得られる電波のAPSの例を示す。地面が冠水しておらず、光路ACBを通り受信点Bに到来する反射波が無視できる場合、
図42(a)のようなAPSが得られる。この場合、アンテナ入射角θがθ
0=10°の位置にメインローブLobe
0が1つ生じ、その周囲に極めて低レベル(−10dB以下)のサイドローブが多数生じる。一方、地面が冠水して光路ACBを通り受信点Bに到来する反射波が生じた場合には、
図42(b)のようなAPSが得られる。この場合、アンテナ入射角θがθ
0=10°の位置のメインローブLobe
0に加えて、アンテナ入射角θがθ
1=20°の位置に、反射波による第2ローブLobe
1が現れる。第2ローブLobe
1の強度は他のサイドローブよりも遙かに大きいため、他のサイドローブとは容易に区別できる。水位推定部32は、この第2ローブLobe
1が発生したことを検出することにより、地面が冠水したことを検出することができる。また、メインローブLobe
0のピークの位置(θ=θ
0)及び第2ローブLobe
1のピークの位置(θ=θ
1)を検出することにより、次のようにして水位dを検出することができる。
【0169】
【数30】
【0170】
ここで、l
0は、
図33に示した通り、送信点Aから受信点Bまでの距離であり、これは予め測定して水位推定部32に予め設定されているものを用いる。
【0171】
水位推定部32により降雨による地面の冠水が検出された場合、水位信号送信部33は、水位推定部32により検出された水位dを、上位通信I/Fモジュール14により上位のサーバやインターネット等の上位ネットワークに送信する。また、浸水注意報判定部28は、水位推定部32により検出された水位dが予め設定された所定の条件を満たした場合(この場合、水位dは水面からRFセンサ2までの距離で定義しているので(
図33参照)、例えば、水位dが予め設定された所定の閾値d
min以下となった場合など)にも、浸水注意信号を出力する。
【0172】
以上のように、本実施例の浸水検出システムでは、浸水検出装置1がセンサ通信アンテナとしてアレイアンテナ11a、移相器11b、加算器11c、ウエイト設定部30、方位スペクトル検出部31、及び水位推定部32を備え、アレイアンテナ11aを用いてステアリング角の走査による受信される電波のAPSを検出する。そして、検出されたAPSの第2ローブLobe
1の有無から地面の冠水の発生又は降雨による地面の濡れの状態を検出することができる。また、メインローブLobe
0と第2ローブLobe
1の入射角θ
0,θ
1を検出し、この2つの入射角θ
0,θ
1により、冠水した地面の冠水水位を検出することができる。
【実施例4】
【0173】
図43は、本発明の実施例4に係る浸水検出システムの全体配置図の一例を示す図である。基本的な配置は、実施例1と同様であるが、本実施例では、RFセンサ2としてアレイRFセンサ2aを備えている点が、実施例1とは相違している。アレイRFセンサ2aは、複数のRFセンサ2を鉛直方向にアレイ状に配列したものである。尚、
図43では、アレイRFセンサ2aは、一つの基板2b上に複数のRFセンサ2を直線状に配設して一体のアッセンブリ(Assembly)としたものを示しているが、アレイRFセンサ2aとしては基板2bは省略してもよく、RFセンサ2を取り付けるポールなどの地上構造物の表面に複数のRFセンサ2を鉛直直線上に配列して固定配置したものを用いてもよい。アレイRFセンサ2aを構成するRFセンサ2の個数は2個以上であれば任意の数とすることができるが、水位レベルの変化に対するRSSの振動の形状プロファイルが検出可能な十分な数とすることが好ましい。また、アレイRFセンサ2aのRFセンサ2の配列長についても任意の長さとすることができるが、水位レベルの変化に対するRSSの振動の形状プロファイルを精度よく検出する観点から、式(21)で定義される水位レベルの変化に対するRSSの振動周期Λの1/2よりも長い長さとすることが好ましい。また、RSSの振動周期Λよりも長い長さとすればより好ましい。
【0174】
図44は、
図43の浸水検出装置1の構成を示すブロック図である。
図40において、実施例1の
図2と同様の構成部分については同符号を付している。実施例1と比較すると、本実施例の浸水検出装置1は、新たに、干渉波形検出部35、干渉波形シフト量検出部36、水位推定部32、水位信号送信部33を備えた点で相違している。干渉波形検出部35は、アレイRFセンサ2aの各RFセンサ2から送信される電波の受信信号から、直接波と反射波の干渉による強度変動波形を検出する処理を行うモジュールである。干渉波形シフト量検出部36は、干渉波形検出部35で検出される強度変動波形のシフト量を検出する処理を行うモジュールである。水位推定部32は、干渉波形シフト量検出部36が検出する強度変動波形のシフト量から、冠水水位の推定値を計算する処理を行うモジュールである。水位信号送信部33は、上位通信I/Fモジュール14により、水位推定部32により算出された冠水水位を、上位のサーバやインターネット等の上位ネットワークに送信するための通信を行うモジュールである。
【0175】
以上のように構成された本実施例に係る浸水検出システムについて、以下その動作を説明する。尚、ここでは、実施例1と同様の部分についての説明は省略し、新たに追加したアレイRFセンサ2aを用いた冠水検出及び冠水水位の推定に関するする処理について説明する。以下では、説明の便宜上、アレイRFセンサ2aの各RFセンサ2を、下側からS
1,S
2,…,S
Nと付号し、RFセンサS
i(i=1,…,N)の地面からの高さをh
iとする。RFセンサS
i(i=1,…,N)の高さh
iのデータは予め測定して、浸水検出装置1の干渉波形検出部35に記憶されているものとする。
【0176】
まず、浸水検出装置1は、アレイRFセンサ2aの各RFセンサS
i(i=1,…,N)から送信される電波を受信する。ここで、アレイRFセンサ2aの各RFセンサS
iは同時に電波を送信するのではなく、一定の時間バンドΔT内にそれぞれがタイミングをずらして電波送信を行う。各RFセンサS
iからの送信波が干渉しないようにするためである。時間バンドの長さΔTは、該時間バンドΔTの期間内に大きな水位変化が生じない程度の長さであれば任意に設定することができる。時間バンドΔT内にセンサ周囲の冠水状態が変化しないという観点から、時間バンドΔTは各RFセンサS
iの送信波が干渉しない程度であれば、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、ΔTは数秒〜数十秒とすることができる。浸水検出装置1は、時間バンドΔT内に、アレイRFセンサ2aの各RFセンサS
iからの電波を受信すると、受信強度検出部21はその受信信号の強度P
iを検出する。干渉波形検出部35は、各RFセンサS
iの高さh
iと受信信号強度P
iから、直接波と反射波との干渉波形が出現したか否かを検出する。以下にこの検出手法について説明する。
【0177】
図45は、アレイRFセンサ2aの各RFセンサS
iとセンサ通信アンテナ11との位置関係を示す図である。
図45において、各RFセンサは点S
i(i=1,…,N)に配置され、センサ通信アンテナ11は、各RFセンサから水平距離でx
0離れた、点S
i(i=1,…,N)よりも高所の点Bに配置されている。点S
i(i=1,…,N)及び点Bを含む鉛直平面を反射平面と呼ぶ。点S
i(i=1,…,N)に沿って上向きにy軸を設定し、y軸が地面と交叉する点を原点Oとし、原点Oを通る反射平面内の水平軸をx軸とする。点Bの座標を(x
0,y
0)、点S
i(i=1,…,N)の座標を(0,h
i)とする。h
iはRFセンサS
iの高さである。また、各高さh
i(i=1,…,N)の平均をh
0とする。RFセンサS
iの高さの偏差Δh
iをΔh
i=h
i−h
0と定義する。各点S
i(i=1,…,N)から点Bまでの距離をl
0iとし、各距離l
0i(i=1,…,N)の平均をl
0とする。アレイRFセンサ2aの周囲の地面が冠水しており水深(冠水水位)がd
wである場合、RFセンサS
iから送信されてセンサ通信アンテナ11で受信される電波の受信信号強度s
iは、式(20a)より次のようになる。
【0178】
【数31】
【0179】
RFセンサS
iの平均高さh
0から受信アンテナBまでの高低差をy
0’=y
0−h
0とすると、Δh
i<<h
0’の場合には水位レベルの変化に対するRSSの振動周期Λ
iは次のように近似できる。
【0180】
【数32】
【0181】
従って、受信信号強度s
i及び受信信号電力P
iは次のようになる。
【0182】
【数33】
【0183】
図46に、各水位d
wに対する各高さに設置されたRFセンサからの受信信号の強度との関係の一例を示す。
図46において、横軸hは各RFセンサの高さ[m]、縦軸は受信信号電力P[dB]を表す。アレイRFセンサ2aでは、複数の高さh
iにRFセンサS
iが設置され、1つの時間バンドΔT内に各RFセンサS
iからの信号が受信される。アレイRFセンサ2aの周囲の地面が冠水した非水没冠水期間では、1つの時間バンドΔT内で受信されたこれらの信号の強度を線で結ぶと、
図46に示した様な周期的に振動する曲線となる。尚、地面が冠水しておらずアレイRFセンサ2aの周囲に水面(反射面)がない非冠水期間には、
図46の「水面なし」と付記した直線となる。従って、干渉波形検出部35は、各時間バンドΔT内において、各RFセンサS
iからの信号が
図46に示した様な変動する曲線となる場合には、アレイRFセンサ2aの周囲の地面が冠水したと判定する。また、各RFセンサS
iからの信号が
図46の「水面なし」と付記した直線の様になる場合には、アレイRFセンサ2aの周囲の地面は冠水していないと判定することができる。降雨により地面が濡れて、地面の反射係数が大きく上昇した場合にも、
図46に示した様な変動曲線が観測される。この場合、変動曲線は
図46のd
w=0[m]と付記した曲線となり、地面の湿り度が大きくなるに従って地面の反射係数が増大するため、曲線の振動振幅が大きくなる。これにより、アレイRFセンサ2aの周囲の地面がどの程度濡れているかについても検出が可能で有り、従って、降雨の有無を検出することもできる。
【0184】
また、アレイRFセンサ2aの周囲の地面が完全に冠水し、その冠水水位d
wが上昇すると、
図46の矢印v
1,v
2,v
3,v
4で示した様に、高さhに対する受信強度の振動波形が右方向(hが大きくなる方向)に連続的にシフトしてゆく。逆に、冠水水位d
wが下降すると振動波形が左方向(hが小さくなる方向)に連続的にシフトしてゆく。従って、干渉波形シフト量検出部36は、干渉波形検出部35がアレイRFセンサ2a周囲の地面が冠水したと判定した時点から、この振動波形のシフト量を継続して検出することにより、冠水水位d
wの変化を検出することができる。この場合、d
w=0[m]の振動波形からの振動波形のシフト量(hの増加方向へのシフト量)が、そのまま冠水水位d
wを表している。
【0185】
このようにして干渉波形検出部35により振動波形のシフト量が検出されると、水位推定部32はこのシフト量を冠水水位d
wに換算し、水位信号送信部33は、水位推定部32により検出された水位dを、上位通信I/Fモジュール14により上位のサーバやインターネット等の上位ネットワークに送信する。また、浸水注意報判定部28は、水位推定部32により検出された冠水水位d
wが予め設定された所定の閾値を超えた場合にも、浸水注意信号を出力する。
【0186】
以上のように、本実施例の浸水検出システムでは、複数のRFセンサ2を鉛直方向にアレイ状に配列したアレイRFセンサ2aを備え、一定の時間バンドΔTごとに、このアレイRFセンサ2aの各RFセンサ2から送信される電波をセンサ通信アンテナ11で受信した受信強度から、RFセンサ2の高さhに対する受信強度の振動波形の有無を検出することにより、アレイRFセンサ2aの周囲の地面が冠水したか又は地面が濡れたか否かを検出することができる。また、RFセンサ2の高さhに対する受信強度の振動波形が、冠水深度d
w=0[m]からシフトしたシフト量を継続的に検出することにより、アレイRFセンサ2aの周囲の地面の冠水水位d
wを検出することができる。
【0187】
尚、
図43では、アレイRFセンサ2aとして、複数のRFセンサ2を配列した構成例を示したが、アレイRFセンサ2aの構成としては、1つのRFセンサ2に対して複数のアンテナ素子2eを接続して、アンテナ素子2eをアレイ状に配列する構成とすることもできる。
図47に、1つのRFセンサ2にアレイ状に配列したアンテナ素子2eを接続したアレイRFセンサ2aの例を示す。RFセンサ2は、浸水検出装置1に対して電波信号の送信を行うための回路を含む送受信モジュールと、電波信号の送信に用いるアンテナ素子2eを選択して切り替えるアンテナ切替器2dを備えている。アンテナ切替器2dは、N個のアンテナ素子2eの其々に接続されており、送受信モジュール2cに接続するアンテナ素子2eの切り替えを行う。各アンテナ素子2eは、
図45の送信点S
i(i=1,…,N)に相当する。送受信モジュール2cは、アンテナ切替器2dにより電波信号を発信するアンテナ素子2eを順次切り替えながら電波信号の送信を行うことにより、各送信点S
i(i=1,…,N)から浸水検出装置1へ電波信号を送信する。このような構成とすれば、送受信モジュール2cにより各時間バンドΔT内に各アンテナ素子2eからタイミングをずらして電波信号を確実に送信することができる。