特許第6858461号(P6858461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6858461-電力変換装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858461
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-40391(P2018-40391)
(22)【出願日】2018年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-160820(P2019-160820A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】大竹 飛鳥
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−007058(JP,A)
【文献】 特開2017−219670(JP,A)
【文献】 実開昭62−188157(JP,U)
【文献】 特開昭57−091543(JP,A)
【文献】 特開2013−090302(JP,A)
【文献】 特開2017−153052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0091262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料で形成された絶縁支柱を介して上下に設けられ、電力変換動作する複数のモジュールと、
前記複数のモジュールのそれぞれに設けられ、冷却水の漏水レベルを検出する漏水センサと、
前記漏水センサの各出力を切り換えて順次送信する光スイッチと、
前記光スイッチから受信した前記漏水センサの各出力に応じて前記複数のモジュールの電力変換動作を停止する制御装置と、
を備え、
前記漏水センサと前記光スイッチとの間の信号の授受、および、前記光スイッチと前記制御装置との間の信号の授受は、ライトガイドによって行われ
前記制御装置と前記複数のモジュールとの距離は、前記光スイッチと前記複数のモジュールとの距離よりも離れている電力変換装置。
【請求項2】
前記漏水センサは、
発光部と、
前記発光部から照射された出力光を入射する貯水部と、
前記貯水部に貯水された冷却水が所定の貯水レベルに達するまで前記出力光を受光する受光部と、
を含む請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記光スイッチは、あらかじめ設定された周期で前記各出力を切り換える請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記光スイッチは、前記制御装置から供給される切換信号にしたがって前記各出力を切り換える請求項1〜3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記各出力は、異なる信号形式を有し、
前記制御装置は、前記異なる信号形式にもとづいて前記各出力を識別する請求項1〜4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水冷の冷却装置を含む電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の電力変換装置では、電力変換用のパワー半導体等を冷却するために、水冷式冷却装置を用いることがある。水冷式冷却装置は、冷却フィンに冷却水が循環する管を結合させて、冷却対象物を冷却する。
【0003】
管から漏れた冷却水は、そのまま放置すると、電力変換器の絶縁不良の原因となるため、漏水の監視をする必要がある。
【0004】
電力変換器は、多層に積み上げられたモジュール構成をなしており、複数のモジュールそれぞれについて漏水の有無を監視する必要がある。しかし、モジュール間は電気的に絶縁される必要があり、また、漏水の状態を監視する制御装置は離れた場所に設置されている場合が多い。漏水の監視情報をモジュールごとにライトガイドを用いて制御装置に伝送する場合には、多数のライトガイドを長距離にわたって引き回す必要があり、配線の処理が煩雑になり、高コスト化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−260559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、多数本のライトガイドを長距離にわたって引き回すことなく、すべてのモジュールの漏水を監視できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る電力変換装置は、絶縁材料で形成された絶縁支柱を介して上下に設けられ、電力変換動作する複数のモジュールと、前記複数のモジュールのそれぞれに設けられ、冷却水の漏水レベルを検出する漏水センサと、前記漏水センサの各出力を切り換えて順次送信する光スイッチと、前記光スイッチから受信した前記漏水センサの各出力に応じて前記複数のモジュールの電力変換動作を停止する制御装置と、を備える。前記漏水センサと前記光スイッチとの間の信号の授受、および、前記光スイッチと前記制御装置との間の信号の授受は、ライトガイドによって行われる。前記制御装置と前記複数のモジュールとの距離は、前記光スイッチと前記複数のモジュールとの距離よりも離れている。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、複数のモジュールのそれぞれに設けられた漏水センサによって、各モジュールの漏水を監視することができる。切換器によって、各モジュールと制御装置とを電気的に絶縁し順次切り換えて漏水センサの出力を接続することができるので、ライトガイドの本数を増やさずに長距離を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】比較例の電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置10は、複数のモジュール22と、複数のモジュール22のそれぞれに設けられた漏水センサ30と、光スイッチ40と、制御装置50と、を備える。
【0012】
複数のモジュール22のそれぞれは、金属製または絶縁物製の筐体を有する。複数のモジュール22のそれぞれは、絶縁性の材料で形成された絶縁支柱24を介して、上下に設けられている。上下に積み上げられた複数のモジュール22は、金属製のベース26を介して、設置面に設置される。
【0013】
複数のモジュール22、複数の絶縁支柱24およびベース26は、電力変換器20の一部を構成している。電力変換器20は、たとえばサイリスタバルブである。
【0014】
複数のモジュール22のそれぞれには、パワー半導体を複数含むスタックおよび制御基板等が搭載されている。スタックは、パワー半導体と水冷フィンとを圧接した構造となる。水冷フィンには、それぞれ管が結合されており、別に設けられたポンプやコンプレッサ等によって、冷却水が管中を循環する。
【0015】
複数のモジュール22のそれぞれの底面には、漏れた冷却水を収集する収集溝が形成されており、漏れた冷却水は、収集溝を通って、漏水センサ30に滞留する。
【0016】
漏水センサ30は、光学式センサを用いた漏水のレベル検出器である。漏水センサ30は、発光部31と、貯水部32と、受光部33と、を含む。発光部31は、たとえばレーザ発光装置である。発光部31は、たとえば、パルス幅やデューティがあらかじめ設定されたパルス信号で駆動される。発光部31は、直流信号で駆動されてもよい。
【0017】
貯水部32は、収集溝の終点に設けられた容器であり、漏水を貯水する。貯水部32は、透明のガラスや合成樹脂等の絶縁性の材料で形成されている。貯水部32は、発光部31と受光部33との間に設けられている。受光部33は、発光部31の出力光の出射方向に設けられている。発光部31から出射された出力光は、貯水部32を通って、受光部33に到達する。貯水部32に漏水がたまると、出力光の光路が遮られて、受光部33では、出力光の受光が遮断される。受光部33において、出力光が遮断されたことをもって、漏水レベルを検知することができる。
【0018】
受光部33は、ライトガイド38の一端に接続されている。受光部33は、貯水部32を通過した出力光を受光してライトガイド38に出力光を供給する。
【0019】
ライトガイド38は、モジュール22の漏水センサ30ごとに設けれており、各ライトガイド38の他端は、光スイッチ40に接続されている。
【0020】
光スイッチ40には、さらに他のライトガイド42の一端が接続されている。光スイッチ40は、各モジュール22の漏水センサ30から供給される各出力光を、他の1つのライトガイド42に順次切り換えて供給する。このライトガイド42の他端は、制御装置50に接続されている。
【0021】
複数のモジュール22、複数の絶縁支柱24およびベース26を含む電力変換器20は、高電圧を発生する領域に設けられる。光スイッチ40は、ライトガイドによって光信号を送受信するので、電力変換器20とは電気的に絶縁される。そのため、光スイッチ40は、電力変換器20の近傍(図の実線の枠内)に配置することができる。
【0022】
制御装置50は、保護回路52を含む。保護回路52には、ライトガイド42の他端が接続されている。保護回路52は、光電変換回路を有しており、ライトガイド42を介して送信されてくる各漏水センサ30の出力光の信号を受信する。保護回路52は、出力光が停止したことを検出した場合には、いずれかの漏水センサ30において、漏水検知レベルに達したものと判定し、たとえばゲートブロック信号を生成する。電力変換装置10は、保護回路52が生成したゲートブロック信号によって動作を停止する。
【0023】
光スイッチ40は、たとえば自己が生成する切換信号によって、各漏水センサ30からの出力光を1つの出力光に順次切り換える。
【0024】
各漏水センサ30の出力光の切換信号は、制御装置50によって生成し、制御装置50から供給するようにしてもよい。
【0025】
各漏水センサ30の出力光は、同一のパターン(パルス幅、デューティ)のパルス信号でもよいが、漏水センサ30ごとに異なるパターンのパルス信号や異なる周波数のパルス信号等、異なる形式の信号としてもよい。出力光を受光する制御装置50側で、漏水センサ30に応じたパルスパターンを判定するようにしておけば、どの漏水センサ30で漏水が発生したのかを制御装置50側で知ることができる。
【0026】
実施形態の電力変換装置の効果について、比較例の電力変換装置と比較しつつ説明する。
図2は、比較例の電力変換装置を例示するブロック図である。
図2に示すように、モジュール122は、絶縁支柱24を介して、上下に設けられている。最下端のモジュール122には、絶縁支柱24を介して、ベース26が設けられている。この例では、ベース26上に漏水センサ30が設けられている。モジュール122、絶縁支柱24およびベースは、電力変換器120の一部をなしている。電力変換器120は、たとえば、サイリスタバルブである。
【0027】
上段のモジュール122には、漏水センサ30の直上に位置するように漏斗130が設けられている。漏斗130は、モジュール122の底面に形成された収集溝の終点に設けられており、そのモジュール122内の冷却水が循環する管からの漏水が漏斗130に集められる。
【0028】
漏斗130に集められた漏水は、直下のモジュール122の同じ位置に設けられた漏斗130に供給される。この漏斗130は、そのモジュール122の漏水とともに、滴下された漏水をさらに下方に供給する。
【0029】
漏水センサ30の貯水部32によって、上方に配置されたモジュールの漏水が所定のレベルに達した場合に、発光部31からの出力光が遮断される。漏水センサ30の発光部31からの出力光は、ライトガイド138を介して、制御装置50の保護回路52に伝送される。保護回路52は、出力光が遮断されたことをもって、漏水が検出レベルに達したものと判定する。
【0030】
このような比較例の電力変換装置110では、最下段に配置された漏水センサ30が所定のレベルの漏水を検知するまで、漏水を検出することができない。つまり、ベース26よりも上段にあるモジュール122の1つで漏水が発生したり、複数のモジュール122で漏水が発生したりしても、漏水センサ30の貯水部32に所定レベルに貯水するまでは、電力変換装置は動作を継続する。
【0031】
これに対して、実施形態の電力変換装置10では、各モジュール22に漏水センサ30を設けているので、モジュール22単位で漏水レベルを監視することができる。
【0032】
実施形態の電力変換装置10では、光スイッチ40によって、各漏水センサ30の出力光を順次切り換えて制御装置50に送信する。光スイッチ40は、ライトガイド38によって、各モジュール22間から電気的に絶縁されているので、高電圧部のベース26上やその近傍に配置することができる。そのため、ライトガイド42によって、光スイッチ40によって切り換えられた1つの出力光を、制御装置50に送信することができる。高電圧部と制御装置50とは、離れた場所に配置される場合があり、その距離も長くなることもある。そのような長距離の信号伝送に、1本のライトガイド42を用いることができるので、配線のための施工の自由度が高く、低コストとすることができる。
【0033】
実施形態の電力変換装置10では、モジュール22ごとに漏水センサ30の発光部31の発光パターンを異ならせることができ、その場合には、出力光を受信した制御装置50側で、どのモジュール22で、漏水が発生したかを把握することができる。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、多数本のライトガイドを長距離にわたって引き回すことなく、すべてのモジュールの漏水を監視できる電力変換装置を実現することができる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 電力変換装置、22 モジュール、24 絶縁支柱、26 ベース、30 漏水センサ、31 発光部、32 貯水部、33 受光部、38,42 ライトガイド、40 光スイッチ、50 制御装置、52 保護回路
図1
図2