特許第6858484号(P6858484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858484
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】防水シート及びトンネルの防水構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   E21D11/38 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-234891(P2015-234891)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101450(P2017-101450A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】岸本 修
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚
(72)【発明者】
【氏名】宮野 真人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直人
(72)【発明者】
【氏名】北川 悟
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−195696(JP,A)
【文献】 特開2014−240596(JP,A)
【文献】 特開2001−214698(JP,A)
【文献】 特開2000−080896(JP,A)
【文献】 特開2012−082603(JP,A)
【文献】 特開平08−028194(JP,A)
【文献】 特開平04−286642(JP,A)
【文献】 実開平07−023099(JP,U)
【文献】 米国特許第04915542(US,A)
【文献】 名内慎助 他,山岳トンネルにおける防水シート平滑化施工について−一般国道229号梅川トンネルにおけるハイ・イータス工法の適用事例報告−,寒地土木研究所 平成23年度技術研究発表会,2012年 2月23日,pp.1-5
【文献】 賀川昌純,新覆工工法「背面平滑型トンネルライニング工法(FILM)」,建設機械,2014年 2月,Vol.50 No.2,pp.47-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−11/40
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工法のひとつであるFILM工法に用いられる防水シートであって、
トンネル掘穿坑道の地山側に展張される表裏平坦な遮水シートと、
前記遮水シートと略同一の面積を有して前記遮水シートの地山側の面に固定され、前記地山と前記遮水シートの間で充填され硬化する充填剤が浸透し、該充填剤を介して前記地山側に固定される不織布と、
長手方向が前記トンネル掘穿坑道のトンネル内周長で設けられるとともに、幅方向が前記遮水シートの前記トンネル掘穿坑道に沿う方向の長さよりも短い長さで設けられ、前記遮水シートと前記不織布の間に挟持されて前記トンネル内周長に沿って連続した通水空間を形成する嵩上げ材と、
を具備し、
前記嵩上げ材には、熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体が設けられ、該帯体のトンネル掘穿坑道の地山側に対向する面側に、前記通水空間が形成されることを特徴とする防水シート。
【請求項2】
トンネル工法のひとつであるFILM工法に用いられる防水シートであって、
トンネル掘穿坑道の地山側に展張される表裏平坦な遮水シートと、
前記遮水シートと略同一の面積を有して前記遮水シートの地山側の面に固定され、前記地山と前記遮水シートの間で充填され硬化する充填剤が浸透し、該充填剤を介して前記地山側に固定される不織布と、
長手方向が前記トンネル掘穿坑道のトンネル内周長で設けられるとともに、幅方向が前記遮水シートの前記トンネル掘穿坑道に沿う方向の長さよりも短い長さで設けられ、前記遮水シートと前記不織布の間に挟持されて前記トンネル内周長に沿って連続した通水空間を形成する嵩上げ材と、
を具備し、
前記嵩上げ材は、熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体のトンネル掘穿坑道の地山側に対向する面に、相互間が前記通水空間となる複数の凸部が一体に形成される通水空間形成材であることを特徴とする防水シート。
【請求項3】
請求項2記載の防水シートであって、
前記凸部が、複数の突起であることを特徴とする防水シート。
【請求項4】
請求項1記載の防水シートであって、
前記嵩上げ材が、前記長手方向に沿って設けられ、前記通水空間を有する線状集合材、多孔質材または連続気泡材のいずれか1つであることを特徴とする防水シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の防水シートであって、
前記トンネル掘穿坑道に沿う方向に所定長で形成された複数枚の前記遮水シート及び前記不織布が、前記トンネル掘穿坑道に沿う方向で隣接端縁同士を接合して一体に形成され、
前記遮水シート及び前記不織布の接合部同士の間に前記嵩上げ材が挟持されることを特徴とする防水シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シートを有するトンネルの防水構造であって、
一次覆工と二次覆工との間に前記防水シートが埋入され、
前記防水シートの前記一次覆工に対向する面側に、前記トンネルの少なくとも天井部から側底部までの周方向に沿う前記通水空間を形成したことを特徴とするトンネルの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FILM工法やNATM工法に用いて好適な防水シート及びトンネルの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
湧水が多いトンネルの施工現場では防水シートが用いられる(特許文献1,2等参照)。防水シートは、一般に遮水シートと不織布を積層して用いられることが多い。この防水シートは、例えばNATM工法やFILM工法に用いられる。
NATM工法は、地山或いは地山にコンクリートを吹付けた後の吹付けコンクリート面に防水シートを固定し、防水シート面と所定間隔で型枠を配置し、その空間にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築する。
FILM工法は、坑内に構築した型枠の外周表面に予め防水シートを広げて設置し、その防水シートと地山側との間に充填を行うことで、充填剤が防水シートの不織布に絡み、染み込み硬化後の充填剤の坑内側の面に防水シートが展張状態となる。
これらいずれの工法においても、防水シートを構成する不織布は、緩衝作用と通水作用とを担うこととなる。すなわち、不織布は、施工面に存在する突出部分による遮水シートの損傷を防止するための緩衝材としての機能と、通水性により地盤から漏出する水を排水する機能とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3025160号公報
【特許文献2】特開2001−214698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防水シートは、地山側と反対側の背面から二次覆工コンクリートを打設する際、コンクリートの圧力によって不織布が圧縮されてしまうと、本来の通水性を損なってしまう場合がある。防水シートは、不織布の通水性に問題があると、湧水量が少ない場合であっても、排水処理がうまくできず、はらみや脱落を生じる虞がある。特にFILM工法では、地山側と型枠の間に隙間なくセメントやモルタル等の充填剤が充填される。充填剤は、不織布との接着作用、すなわちアンカー効果を得るために、不織布に染み込み浸透する。その結果、防水シートは、不織布が硬化してしまい、施工時の緩衝作用は得られるが、硬化した不織布により水が流れにくくなる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた通水性を確保できる防水シート及びトンネルの防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の防水シート11は、
トンネル工法のひとつであるFILM工法に用いられる防水シートであって、
トンネル掘穿坑道19の地山側に展張される表裏平坦な遮水シート13と、
前記遮水シート13と略同一の面積を有して前記遮水シート13の地山側の面に固定され、前記地山と前記遮水シート13の間で充填され硬化する充填剤37が浸透し、該充填剤37を介して前記地山側に固定される不織布15と、
長手方向が前記トンネル掘穿坑道19のトンネル内周長で設けられるとともに、幅方向が前記遮水シート13の前記トンネル掘穿坑道19に沿う方向の長さよりも短い長さで設けられ、前記遮水シート13と前記不織布15の間に挟持されて前記トンネル内周長に沿って連続した通水空間21を形成する嵩上げ材17と、
を具備し、
前記嵩上げ材17,57,61には、熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体29が設けられ、該帯体29のトンネル掘穿坑道19の地山側に対向する面側に、前記通水空間21が形成されることを特徴とする。
【0007】
この防水シート11では、遮水シート13の地山側に設けられる不織布15が、地山側の凹凸に対する緩衝効果及び打設コンクリートに対するアンカー効果を有する。また、この不織布15は、通水性を有する。通水性を有した不織布15は、地山側からの水を、嵩上げ材17により形成された通水空間21へと導く。一方、不織布15は、遮水シート13の上から二次覆工コンクリートを打設する際、コンクリートの圧力によって圧縮され、本来の通水性を損なう場合がある。この場合においても、水は、少なからず不織布15にしみこむ。不織布15にしみこんだ水は、所定間隔に設けられた嵩上げ材17により形成された通水空間21に導水される。すなわち、不織布15は、毛管路的に作用する。嵩上げ材17は、コンクリートの圧力によっても潰れない強度を有する。これにより、防水シート11は、長期に渡り確実な排水を可能にすることができる。また、防水シート11は、嵩上げ材17を局所的に設ければよいので、安価に製造できる。
【0008】
また、この防水シートでは、帯体29の地山側に通水空間21が配置される。この通水空間21は、地山側が不織布15によって覆われる。通水空間21の坑道19側の面に帯体29が配置されることで、地山側からの水は帯体29に沿って導かれる。また、通水空間21の坑道側の面が帯体29にて平坦面となるので、遮水シート13の二次覆工側の面、すなわち、防水シート施工面を平滑化できる。
【0009】
本発明の請求項2記載の防水シート11は、
トンネル工法のひとつであるFILM工法に用いられる防水シートであって、
トンネル掘穿坑道の地山側に展張される表裏平坦な遮水シートと、
前記遮水シートと略同一の面積を有して前記遮水シートの地山側の面に固定され、前記地山と前記遮水シートの間で充填され硬化する充填剤が浸透し、該充填剤を介して前記地山側に固定される不織布と、
長手方向が前記トンネル掘穿坑道のトンネル内周長で設けられるとともに、幅方向が前記遮水シートの前記トンネル掘穿坑道に沿う方向の長さよりも短い長さで設けられ、前記遮水シートと前記不織布の間に挟持されて前記トンネル内周長に沿って連続した通水空間を形成する嵩上げ材と、
を具備し、
前記嵩上げ材は、熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体29のトンネル掘穿坑道19の地山側に対向する面に、相互間が前記通水空間21となる複数の凸部31が一体に形成される通水空間形成材17であることを特徴とする。
【0010】
この防水シート11では、通水空間形成材17の地山側に通水空間21が配置される。この通水空間21は、地山側が不織布15によって覆われる。一次覆工内面など地山側から流入する遊離石灰は、不織布15によって補足され、通水空間21への侵入が抑制される。これにより、通水空間21は、長期間に渡り目詰まりが抑制される。また、通水空間形成材17は、坑道側の面が帯体29にて平坦面となるので、遮水シート13の二次覆工側の面、すなわち、防水シート施工面を平滑化できる。
【0011】
本発明の請求項3記載の防水シート11は、請求項2記載の防水シート11であって、
前記凸部が、複数の突起53であることを特徴とする。
【0012】
この防水シート11では、凸部が、例えば非連続な島状となる複数の突起53となることで、連続形成のリブ形状等である場合に比べ、潰れたり倒れにくくなる。また、突起53は、トンネル内周方向に連続するリブ形状等に比べ、水を縦横に通水可能とするので、排水性を高めることができる。
【0013】
本発明の請求項4記載の防水シート59は、請求項1記載の防水シート11であって、
前記嵩上げ材が、前記長手方向に沿って設けられ、前記通水空間21を有する線状集合材61、多孔質材または連続気泡材のいずれか1つであることを特徴とする。
【0014】
この防水シート59では、遮水シート13と不織布15の間に、線状集合材61、多孔質材または連続気泡材のいずれか1つが、トンネル内周に沿って設けられる。線状集合材61、多孔質材または連続気泡材は、外周が遮水シート13と不織布15により包囲されてもよい。水は、不織布15にしみこんで線状集合材61、多孔質材または連続気泡材に到達すると、これらが有する通水空間21によってトンネル27の側底部25へと導水される。
【0015】
本発明の請求項5記載の防水シート11は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の防水シート11であって、
前記トンネル掘穿坑道19に沿う方向に所定長で形成された複数枚の前記遮水シート13及び前記不織布15が、前記トンネル掘穿坑道19に沿う方向で隣接端縁同士を接合して一体に形成され、
前記遮水シート13及び前記不織布15の接合部同士の間に前記嵩上げ材17が挟持されることを特徴とする。
【0016】
この防水シート11では、短幅の不織布15及び遮水シート13が複数枚接合されて広幅の防水シート11が形成される。例えば6mもの広幅シートを均一の厚さに製造することは困難であるためである。防水シート11は、6m以上の広幅となることで、例えばFILM工法において防水シート施工面の平滑化や作業効率を向上させることができる。防水シート11は、このような広幅となる場合においても、短幅の遮水シート13及び不織布15の接合部同士の間に所定間隔で嵩上げ材17を設けることができ、安定した通水性能を確保することができる。
【0017】
本発明の請求項6記載のトンネル27の防水構造は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シート11を有するトンネル27の防水構造であって、
一次覆工33と二次覆工35との間に前記防水シート11が埋入され、
前記防水シート11の前記一次覆工33に対向する面側に、前記トンネル27の少なくとも天井部23から側底部25までの周方向に沿う前記通水空間21を形成したことを特徴とする。
【0018】
このトンネル27の防水構造では、地山側に防水シート11を展張することにより、遮水シート13の地山側に通水空間21が同時に形成される。すなわち、このトンネル27の防水構造では、防水シート11を施工する前に、地山表面の全面にシート状排水材を施工しておくなどの工程が必要なく、工事の手間を省くことができる。また、防水シート11は、特にFILM工法においては、不織布15が打設コンクリートに埋入され、アンカー効果を有する。このため、トンネル27の防水構造は、防水シート11の浮き上がりや剥離を防止して、平滑化された防水シート施工面を得ることができ、そして、通水空間21にて側底部25への排水が行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1記載の防水シートによれば、嵩上げ材により形成される通水空間によって優れた通水性を確保でき、帯体によって通水空間を通る地山側からの水を、この帯体に沿わせて排水することができる。また、帯体を遮水シートへ固定させることで、地山側に通水空間を配置することができる。
【0020】
本発明に係る請求項2記載の防水シートによれば、帯体によって坑道側の面が平滑化でき、二次覆工の施工品質を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る請求項3記載の防水シートによれば、凸部の圧縮強度を高くすることができる。
【0022】
本発明に係る請求項4記載の防水シートによれば、通水空間に不織布を侵入させずに、確実に通水空間を確保することができる。
【0023】
本発明に係る請求項5記載の防水シートによれば、短幅の遮水シート及び不織布を接合して広幅とした防水シートを用いるトンネルの防水構造において、短幅の遮水シート及び不織布の接合部同士の間に、嵩上げ材を等間隔で設けることができる。
【0024】
本発明に係る請求項6記載のトンネルの防水構造によれば、嵩上げ材により排水機能を確実に且つ長期に確保できるとともに、二次覆工の施工品質を向上させることができ、しかも、嵩上げ材が局所的に設けられているので、安価にトンネルを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る防水シートを備えたトンネルの概略斜視図である。
図2図1に示した防水シートにおける嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
図3】(a)は複数継ぎされて広幅に形成された防水シートの平断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
図4】防水シートを用いたNATM工法の施工例を説明する平断面図である。
図5】防水シートを用いたFILM工法の施工例を説明する平断面図である。
図6】遮水シートの幅方向中央部分に嵩上げ材が設けられた変形例に係る防水シートの嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
図7】遮水シートの幅方向に複数の嵩上げ材が設けられた変形例に係る防水シートの嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
図8】凸部が断面三角形の突条である嵩上げ材の斜視図である。
図9】凸部が断面半円形の突条である変形例に係る嵩上げ材の斜視図である。
図10】(a)は突条が断続形成された変形例に係る嵩上げ材の斜視図、(b)は凸部が複数の半球状の突起である変形例に係る嵩上げ材の斜視図である。
図11】嵩上げ材が長尺体である変形例に係る防水シートの斜視図である。
図12】嵩上げ材が線状集合材である変形例に係る防水シートの線状集合材の長手方向に直交する方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る防水シートを備えたトンネルの概略斜視図である。
本実施形態に係る防水シート11は、遮水シート13と、不織布15と、嵩上げ材、例えば後述の通水空間形成材17と、を有する。遮水シート13は、所定の長さ、すなわちトンネル内周に沿う長さ、及び幅長、すなわち坑道に沿う方向の長さを有し、トンネル掘穿坑道19の地山側に展張される。遮水シート13は、表裏平坦な面で形成される。遮水シート13は、例えばEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)からなる。遮水シート13は、例えば厚さが0.8mm以上(JIS A 6008準拠)で形成される。
【0027】
不織布15は、遮水シート13と略同一の面積を有し、遮水シート13の地山側の面に固定される。固定は、溶着または接着によって行われる。不織布15は、厚さが3mm以上(JIS L 1096)で形成される。不織布15は、例えばポリエステル、ポリアマイド、ポリプロピレン等の有機合成繊維フィラメントを堆積させて得る。不織布15は、いわゆるスパンボンド法により多数個のオリフィスを有する紡糸ノズルからスダレ状に紡糸された多数本のフィラメントをエアージェット等で索引細化延伸し、下方に吹きつけ、このフィラメントを下方で水平移動する金網コンベアーの面上に所定の目付で堆積させてウエップとして得ることができる。但し、この場合、不織布15は、遊離石灰の補足性を高めるために、目付が、20〜150g/m2 の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、30〜80g/m2 の範囲であることが望ましい。不織布15の目付が20g/m2 より小さいと、遊離石灰が浸み込みやすくなり、目付が150g/m2 より大きいと、後述の通水空間への透水性が低下する。
【0028】
遮水シート13及び不織布15は、トンネル掘穿坑道19の内周の長さを有し、幅方向(坑道に沿う方向)に複数枚のものが接合されて一体に形成される。本実施形態では、後述するように幅方向に3枚が接合、すなわち3枚継ぎとされて、所定の幅長、例えば約6mの幅広のものとなる。防水シート11は、幅広のものが、坑道に沿う方向に連結部分で接合されて行く。
【0029】
本実施形態において、嵩上げ材は、通水空間形成材17となる。通水空間形成材17は、遮水シート13と不織布15の間に挟持されてトンネル内周長に沿って連続した通水空間21(図2参照)を形成する。通水空間形成材17は、長手方向がトンネル掘穿坑道19の周方向における少なくとも天井部23から側底部25までの長さを連続して有する。通水空間形成材17は、上記の倍の長さ、すなわち、トンネル内周長を有するものであっても勿論よい。また、通水空間形成材17は、天井部23から側底部近傍までの任意の位置から側底部25までの長さを有するものとしてもよい。本実施形態において、通水空間形成材17は、長手方向がトンネル内周長で設けられる。通水空間形成材17は、幅方向が遮水シート13のトンネル掘穿坑道19に沿う方向の長さよりも短い長さで設けられる。すなわち、防水シート11は、通水空間形成材17が、トンネル掘穿坑の内周を全長として、トンネル27の延在方向に所定の間隔を有して配設される。
【0030】
図2図1に示した防水シートにおける嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
通水空間形成材17は、帯体29を有する。帯体29は、熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する。帯体29は、表裏が平坦面である一方、トンネル掘穿坑道19の地山側に対向する面に、複数の凸部が一体に形成される。つまり、帯体29を構成要素に持った通水空間形成材17は、トンネル掘穿坑道19の地山側に対向する面が凸部により凹凸面となる。本実施形態において、凸部は、突条31となる。突条31は、帯体29の長手方向に沿って延在し、長手方向に直交する方向(帯幅方向)に複数のものが平行に一体成形される。突条31は、延在方向に直交する断面形状が例えば三角形に形成される。なお、この突条31の断面形状は、その他の形状、例えば矩形や台形、或いはリブ状に形成されてもよい。通水空間形成材17は、突条31の相互間が通水空間21となる。従って、トンネル掘穿坑道19の天井部23から通水空間形成材17に流下した水は、突条31同士の間の通水空間21に導かれて側底部25へと排水される。つまり、通水空間形成材17は、樋としての作用を有する。
【0031】
なお、通水空間形成材17は、遮水シート13の約2000mmの幅長に対し、600〜1300mm程度が好適となる。突条31の高さは、1〜30mmが好適となる。通水空間形成材17の通水部分は、帯体29に対する面積割合で20〜80%とすることが好ましい。また、通水空間形成材17の通水部分は、全体幅に対する割合を5〜80%とすることが好ましい。
【0032】
通水空間形成材17は、帯体29が、遮水シート13に溶着または接着によって固定される。また、通水空間形成材17は、突条31の先端に、不織布15が固定される。不織布15と通水空間形成材17との固定は、溶着や接着等によって行われる。不織布15は、通水性を有して通水空間21を覆う。
【0033】
不織布15は、水を通すが、地山側である一次覆工内面から流れ出る遊離石灰等を効果的に補足する。不織布15には、例えば多孔質材が代用されてもよい。また、不織布15には、いわゆる麺塊構造を有する後述の線材集合材が代用されてもよい。また、不織布15には、ウレタンスポンジ等の連続気泡のスポンジ等が代用されてもよい。
【0034】
本実施形態に係るトンネル27の防水構造は、一次覆工33と二次覆工35との間に防水シート11が埋入される。防水シート11と地山(または一次覆工33)との間には、充填剤37が充填される。充填剤37には、凝固剤が混入される。凝固剤は、合成樹脂系、ボンド系、セメント系等の各種接着剤である。防水シート11は、充填剤37がしみこむ不織布15がアンカー効果を有し、充填剤37に固定される。これにより、トンネル27の防水構造は、防水シート11の一次覆工33に対向する面側に、トンネル27の少なくとも天井部23から側底部25までの周方向に沿う連続した通水空間21を形成する。
【0035】
図3(a)は複数継ぎされて広幅に形成された防水シートの平断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
防水シート11は、トンネル掘穿坑道19に沿う方向に所定長で形成された複数枚の遮水シート13及び不織布15が、トンネル掘穿坑道19に沿う方向で隣接端縁同士を接合して一体に形成される。本実施形態では、約2mの短幅で形成された遮水シート13及び不織布15が、幅方向に3枚接合、すなわち3枚継ぎとされて広幅(約6m)の防水シート11を形成する。通水空間形成材17は、これら遮水シート13及び不織布15の接合部同士の間に挟持される。
【0036】
FILM工法においては、作業効率の向上や、仕上がりの平滑性のために、防水シート11の構造として、約2mの短幅のシートを幅方向に3枚繋いで約6mの広幅長のシートを用いている。その製作過程で、継目の部分に通水空間形成材17を配置固定する。従って、約6m幅の防水シート11に2つの排水構造が、施工現場搬入以前に設けられることになる。
【0037】
また、トンネル施工時には、約6m幅の防水シート11を展張する際、前工程の防水シート11の後端と次に展張される防水シート11の前端とを溶着接続する。この際に、不織布15は不織布同士で、遮水シート13は遮水シート同士で、溶着や接着で接続される。このとき、遮水シート13と不織布15の間に通水空間形成材17を配置し、溶着や接着にて固定してから、各部を接続固定する。これにより、約2mの間隔で通水空間形成材17を配置することができる。
【0038】
なお、短幅の防水シート11及びの継ぎ数は、これに限定されるものではなく、2枚継ぎであってもよく、3枚以上の4枚継ぎや5枚継ぎ以上の複数継ぎであってもよい。
【0039】
次に、防水シート11を用いたトンネル27の防水構造における施工方法の例を説明する。
図4は防水シートを用いたNATM工法の施工例を説明する平断面図である。
トンネル27の防水構造は、トンネル27の地山表面から一次覆工33、充填剤37、防水シート11及び二次覆工35が順次設けられる。ロックボルト・吹付けコンクリートトンネル工法、いわゆるNATM工法では、ロックボルトを介して地山に吹付け施工した一次覆工33と、トンネル27の内周面となる二次覆工35との間に、防水シート11を介在させる。防水シート11を展張する際、前工程の防水シート11の後端と次に展張される防水シート11の前端とにおいて、先ず、不織布15同士を重ね合わせ、コンクリート釘39等を用いて一次覆工33に固定する。
【0040】
次いで、前工程の遮水シート13の後端に通水空間形成材17を溶着や接着によって固定する。通水空間形成材17の固定された前工程の遮水シート13の通水空間形成材17と反対面に次工程の遮水シート13の前端を溶着や接着により接続する。その結果、通水空間形成材17は、約2mの間隔で配置されることになる。これにより、一次覆工側からの湧水等が二次覆工側に漏れ出ることを防止する。
【0041】
図5は防水シートを用いたFILM工法の施工例を説明する平断面図である。
FILM工法では、トンネル掘穿坑道19の内周面に沿った型枠41を備えた型枠台車を、トンネル掘穿坑道19に沿って移動させ、防水シート11を順次トンネル内周面に展張して行く。先ず、型枠台車上に防水シート11を設置する。充填剤37のリークを防止するため、トンネル内周方向に充填剤封止部材(エアバルク)を設置する。次いで、地山側と防水シート11との間に充填剤37を充填する。充填剤37の養生後、型枠41を脱型することにより生じたエアバルクによる空隙は、通水空間形成材17の設置施工空間に利用することができる。
【0042】
型枠台車は、前工程の防水シート11の展張を終えた後、次工程の位置まで移動される。型枠台車には、次工程の防水シート11が設置される。
次いで、前工程の不織布15の後端に次工程の不織布15の前端を溶着や接着により固定する。前工程の遮水シート13の後端に通水空間形成材17を溶着や接着によって固定する。通水空間形成材17の固定された前工程の遮水シート13の通水空間形成材17と反対面に次工程の遮水シート13の前端を溶着や接着により接続する。再び次工程の防水シート11の前端をエアバルクにより塞ぐ。以下同様に、地山側と防水シート11との間に充填剤37を充填し、トンネル内周面に防水シート11を展張して行く。その結果、通水空間形成材17は、工程ごとの接続部分の間隔で配置されることになる。これにより、一次覆工側からの湧水等が二次覆工側に漏れ出ることを防止し、その湧水を側底部25へ排水できる。
【0043】
図6は遮水シートの幅方向中央部分に嵩上げ材が設けられた変形例に係る防水シートの嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
防水シート11は、短幅のシートの幅方向中央に、通水空間形成材17を設けてもよい。この場合、例えば上記した3枚の短幅のシートを接合してなる防水シート11の例では、2箇所の接合部、すなわち隣り合う短幅のシートの接合部に2つの通水空間形成材17と、それぞれの短幅のシートの中央部に設けた3つの通水空間形成材17との合計5つの通水空間形成材17を備えることができる。また、接合部には通水空間形成材17を設けずに、それぞれの中央部分に通水空間形成材17を備えた防水シート11として構成でき、この場合には接合部における通水空間形成材17の固定工程を省略できる。
【0044】
図7は遮水シートの幅方向に複数の嵩上げ材が設けられた変形例に係る防水シートの嵩上げ材の長手方向に直交する方向の断面図である。
防水シート11は、短幅のシートの幅方向に、複数(図例では2つ)の通水空間形成材17を設けてもよい。この場合、上記した3枚の短幅のシートを接合してなる防水シート11の例では、2箇所の接合部に2つの通水空間形成材17と、それぞれのシートの中央部に設けた6つの通水空間形成材17との合計8つの通水空間形成材17を備えることになる。このように、防水シート11は、通水空間形成材17を多数備えることで、特に湧水が多い山岳トンネルの現場においても優れた排水機能を発揮する。
【0045】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る防水シート11では、遮水シート13の地山側に設けられる不織布15が、地山側の凹凸に対する緩衝効果及び打設コンクリートに対するアンカー効果を有する。また、不織布15は、通水性を有する。通水性を有した不織布15は、地山側からの水を、通水空間形成材17により形成された通水空間21へと導く。一方、不織布15は、遮水シート13の上から二次覆工コンクリートを打設する際、コンクリートの圧力によって圧縮され、本来の通水性を損なう場合がある。この場合においても、水は、少なからず不織布15にしみこみ、完全に通水性を失うことはない。不織布15にしみこんだ水は、所定間隔に設けられた通水空間形成材17により形成された通水空間21に導水される。すなわち、不織布15は、毛管路的に作用する。通水空間形成材17は、コンクリートの圧力によっても潰れない強度を有する。これにより、防水シート11は、長期に渡り確実な排水を可能にすることができる。また、防水シート11は、通水空間形成材17を局所的に設ければよいので、安価に製造できる。
【0046】
また、防水シート11では、通水空間形成材17の地山側に通水空間21が配置される。この通水空間21は、地山側が不織布15によって覆われる。一次覆工内面から流入する遊離石灰は、不織布15によって補足され、通水空間21への侵入が抑制される。このため、通水空間21は、長期間に渡り目詰まりが抑制される。また、通水空間形成材17は、坑道側の面が平坦面となるので、遮水シート13の二次覆工側の面、すなわち、防水シート施工面を平滑化できる。その結果、帯体29によって坑道側の面が平滑化でき、二次覆工35の施工品質を向上させることができる。
【0047】
また、防水シート11では、短幅の不織布15及び遮水シート13が複数枚接合されて広幅の防水シート11が形成される。約6mもの広幅シートを均一の厚さに製造することは困難であるためである。防水シート11は、6m以上の広幅となることで、例えばFILM工法において防水シート施工面の平滑化や作業効率を向上させることができる。防水シート11は、このような広幅となる場合においても、短幅の遮水シート13及び不織布15の接合部同士の間に所定間隔で通水空間形成材17を設けることができ、安定した通水性能を確保することができる。その結果、短幅の遮水シート13及び不織布15を接合して広幅とした防水シート11を用いるトンネル27の防水構造において、短幅の遮水シート13及び不織布15の接合部同士の間に、通水空間形成材17を等間隔で設けることができる。
【0048】
トンネル27の防水構造は、地山側に防水シート11を展張することにより、遮水シート13の地山側に通水空間21が同時に形成される。すなわち、このトンネル27の防水構造では、防水シート11を施工する前に、地山表面の全面にシート状排水材を施工しておく必要がなく、工事の手間を省くことができる。また、防水シート11は、特にFILM工法において、不織布15が打設コンクリートに埋入され、アンカー効果を有する。このため、トンネル27の防水構造は、防水シート11の浮き上がりや剥離を防止して、平滑化された高品質な防水シート施工面を得ることができる。
【0049】
図8は凸部が断面三角形の突条である嵩上げ材の斜視図である。
上記構成の突条31は、図8に示すように、延在方向に直交する断面形状が例えば三角形に形成される。突条31は、断面三角形で形成されることにより、高い圧縮強度を有し、耐久性が高められている。
【0050】
次に、上記構成の変形例を説明する。
図9は凸部が断面半円形の突条である変形例に係る嵩上げ材の斜視図である。
凸部のその他の形状として、図9に示すように、通水空間形成材43の凸部は、延在方向に直交する断面形状が半円形の突条45であってもよい。
この突条45によれば、断面三角形のものに比べ、不織布15との固定面積を大きくすることができる。また、突条45は、断面三角形のものに比べ、圧縮強度をさらに高めることができる。また、突条45は、断面三角形のものに比べ、トンネル内周に沿う方向の曲げを容易にすることもできる。
【0051】
図10(a)は突条が断続形成された変形例に係る嵩上げ材の斜視図、(b)は凸部が複数の半球状の突起である変形例に係る嵩上げ材の斜視図である。
図10(a)に示すように、通水空間形成材47の凸部は、断続する突条49であってもよい。すなわち、突条49は、連続して形成されなくてもよい。
この突条49によれば、通水空間21が帯幅方向にも形成されることとなって帯幅方向の通水も可能となり、排水効果を高め、より目詰まりを生じにくくすることができる。また、通水空間形成材47は、地山表面の曲面に沿わして湾曲しやすくでき、施工性を向上させることができる。
【0052】
また、図10(b)に示すように、通水空間形成材51の凸部は、複数の突起53であってもよい。
この通水空間形成材51では、凸部が、非連続な島状の突起53となることで、連続形成されたリブ形状等である場合に比べ、潰れたり倒れにくくなる。その結果、凸部の圧縮強度をさらに高くすることができる。また、突起53は、トンネル内周方向に連続するリブ形状等に比べ、幅方向にも通水空間21を有することとなって水を縦横に通水可能とするので、排水性を高めることができる。また、通水空間形成材51は、地山表面の曲面に沿わして湾曲しやすくでき、施工性を向上させることもできる。
【0053】
図11は嵩上げ材が長尺体である変形例に係る防水シートの斜視図である。
防水シート55は、嵩上げ材が、長手方向に沿って設けられる少なくとも1本のレール状の長尺体57であってもよい。長尺体57は、例えば長手方向に直交する方向の断面形状が四角形に形成される。この他、長尺体57の断面形状は、三角形や半円形であってもよい。長尺体57は、底面が遮水シート13に溶着または接着により固定される。長尺体57は、2本以上設けられることが好ましい。防水シート55は、2本の長尺体57の上端に張架された不織布15により断面四角形の通水空間21が形成される。
【0054】
この防水シート55では、例えば長尺体57が1本の場合、遮水シート13と不織布15との間には、長尺体57を挟む両側に隙間が形成される。この隙間が、通水空間21となる。長尺体57は、上記のように、2本以上設けられることが好ましい。これにより、遮水シート13、不織布15及び長尺体57に包囲された断面四角形の通水空間21が形成される。長尺体57は、別部材を遮水シート13に溶着や接着することができる。また、長尺体57は、遮水シート13の製造工程において、遮水シート13を押し出し成形する口金形状を変えることにより遮水シート13と一体成形することも可能となる。その結果、簡素な構造で、安価に通水性を確保することができる。なお、この長尺体57は、例えば複数で構成される際に、これら長尺体57を、上記した帯体29のような熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体の一方の面に接着等により固定して一体的に配置構成させることができる。
【0055】
図12は嵩上げ材が線状集合材である変形例に係る防水シートの線状集合材の長手方向に直交する方向の断面図である。
防水シート59は、嵩上げ材が、長手方向に沿って設けられ通水空間21を有する線状集合材61、多孔質材(図示略)または連続気泡材(図示略)のいずれか1つであってもよい。これら線状集合材61、多孔質材または連続気泡は、通水性が良好で、且つ圧縮強度、耐久性を有し、接着材等の固定手段で遮水シート13及び不織布15と一体化される。線状集合材61を構成する線材の材質は、植物繊維、ガラス繊維、合成繊維、金属等を用いることができる。なお、この線状集合材61、多孔質材または連続気泡材は、上記した帯体29のような熱可塑性樹脂からなり可撓性及び遮水性を有する表裏平坦な帯体の一方の面に接着等により固定する構成としてもよい。
【0056】
この防水シート59では、遮水シート13と不織布15の間に、麺塊構造を有する線状集合材61、多孔質材または連続気泡材のいずれか1つが、トンネル内周に沿って設けられる。線状集合材61、多孔質材または連続気泡材は、外周が遮水シート13と不織布15により包囲されてもよい。水は、不織布15にしみこんで線状集合材61、多孔質材または連続気泡材に到達すると、これらが有する通水空間21によってトンネル27の側底部25へと導水される。その結果、通水空間21に不織布15を侵入させずに、確実に通水空間21を確保することができる。
【0057】
なお、防水シート11は、嵩上げ材を挟んで遮水シート13の反対側に、異なる目付の不織布15を二層に設けるものであってもよい。つまり、不織布15を2枚構成とする。この場合、嵩上げ材に固定される下層の不織布15の目付を大きくし(20〜150g/m2 )、表面側となる上層の不織布15の目付を小さくする(20g/m2 以下)。これにより、上層の不織布15により確実にアンカー効果を得ながら、下層の不織布15により遊離石灰の補足性を高めることができる。
【0058】
従って、本実施形態に係る防水シート11,55,59によれば、優れた通水性を確保できる。
【0059】
本実施形態に係るトンネル27の防水構造によれば、嵩上げ材としての通水空間形成材17,43,47,51、長尺体57、線状集合材61により排水機能を確実に且つ長期に確保できるとともに、二次覆工35の施工品質を向上させることができ、しかも、嵩上げ材が局所的に設けられているので、安価にトンネル27を構築できる。
【符号の説明】
【0060】
11,55,59…防水シート
13…遮水シート
15…不織布
17…嵩上げ材(通水空間形成材)
19…トンネル掘穿坑道
21…通水空間
23…天井部
25…側底部
27…トンネル
29…帯体
31,45,49…凸部(突条)
33…一次覆工
35…二次覆工
43,47,51…嵩上げ材(通水空間形成材)
53…突起(凸部)
57…嵩上げ材(長尺体)
61…嵩上げ材(線状集合材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12