(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、前記第1配向膜の電極直上におけるアンカリングエネルギーが相対的に小さくなっていることを検証する方法であって、
前記液晶層の電極直上の領域において、前記第2ガラス基板の側の液晶分子を一定の角度βだけ回転させたときの前記第1ガラス基板の側の液晶分子の回転角度α1を測定する第1のステップと、
前記液晶層の電極間の領域において、前記第2ガラス基板の側の液晶分子を前記角度βだけ回転させたときの前記第1ガラス基板の側の液晶分子の回転角度α2を測定する第2のステップと、
前記回転角度α1と前記回転角度α2の差(=α1−α2)が所定の閾値を超えている場合に、前記第1配向膜の電極直上におけるアンカリングエネルギーが相対的に小さくなっていると判定する判定ステップと、
を有する検証方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下で説明する図面において、同じ機能を有するものは同一の符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0012】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る液晶表示装置について
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略図である。
図1に示す液晶表示装置は、液晶パネル1およびバックライトユニット2を備える。液晶パネル1とバックライトユニット2の間には、光拡散シートやプリズムシート等を配置してもよい。
【0013】
液晶パネル1は、液晶層11を挟んで対向する一対のガラス基板12a、12bを備える。ガラス基板12a、12bのうち、バックライトユニット2側のガラス基板12aには、複数の電極10が設けられている。液晶表示装置の制御部(図示せず)は、ガラス基板12aの電極10に電圧を印加して液晶層11と平行な電界を生成し、液晶分子を回転させることにより液晶表示装置の表示を制御する。
【0014】
液晶パネル1には、ガラス基板12a、12bを挟み込むように、偏光板14a、14bが外側のそれぞれの面に設けられている。偏光板14a、14bの偏光軸の向きは、電極10に電圧が印加されたときにバックライトユニット2から照明される光が通過または遮断されるよう設定されている。例えば
図1に示す偏光板14a、14bの偏光軸の向きは互いに直交している。
【0015】
液晶パネル1のガラス基板12a、12bと液晶層11との間には、それぞれ配向膜13a、13bが設けられている。また、液晶パネル1のガラス基板12bと配向膜13bとの間にはカラーフィルタ15が設けられている。配向膜13a、13bは、電極10の電圧OFF時の液晶層11の液晶分子の配向を揃える。また、カラーフィルタ15は、バックライトユニット2から照明される光のうちR(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長域の光を通過させる。
【0016】
バックライトユニット2は、エッジライト方式のバックライトであり、LED素子を有するLED光源22を導光板21の端部に備えている。LED光源22は、液晶パネル1を照明する光を、導光板21を介して供給する。
【0017】
図1に示す本実施形態の液晶パネル1は、液晶層11と平行な横電界を生成し、液晶分子を液晶層11の面内で回転させて表示を制御するIPS方式の液晶表示装置である。しかし、前述のようにIPS方式では、電界を生成するための電極10の直上における電界の横方向成分が小さく、電極10の直上の液晶分子を十分に回転させることができないため、白表示における明るさが不足してしまう。
【0018】
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、配向膜13aの電極10の直上のアンカリングエネルギーを小さくして配向規制力を弱くしている。これにより、電界の横方向成分が小さい場合でも電極10の直上の液晶分子が回転するため、電極10の直上においても十分な明るさを確保することができる。
【0019】
更に本実施形態では、配向膜13aの電極10の直上以外の領域におけるアンカリングエネルギーは大きいままなので、電極10の電圧OFF時における液晶分子の復元力はほとんど低下せず、液晶表示の応答性の低下を抑制することができる。すなわち、液晶表示の明るさと応答性を両立することができる。以下、
図1に示す本実施形態の液晶表示装置の製造方法についてより具体的に説明する。
【0020】
まず、対向する1対のガラス基板12a、12bの間に、誘電率異方性が正のネマティック液晶材料(誘電率異方性Δε=10、屈折率異方性Δn=0.100)を封入し、液晶層11を形成した。ガラス基板12a、12bの厚さはそれぞれ0.5(mm)とし、液晶層11の厚みは3.4(μm)とした。
【0021】
ガラス基板12bと液晶層11との間には、R(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長域の光を通過させるカラーフィルタ15を形成した。一方、ガラス基板12aと液晶層11の間には、液晶層11と平行な電界を生成するための線状の電極10を形成した。電極10の幅は3(μm)、電極10の間隔は10(μm)とした。
【0022】
ガラス基板12aと液晶層11の間には配向膜13aを形成し、カラーフィルタ15と液晶層11の間には配向膜13bを形成した。配向膜13aのアンカリングエネルギーは、電極10の直上では10
−7(J/m
2)となるようにし、電極10の直上を除く領域では10
−2(J/m
2)となるようにした。一方、配向膜13bのアンカリングエネルギーは10
−2(J/m
2)とした。
【0023】
この際、配向膜13aのアンカリングエネルギーが、電極10の直上で10
−7(J/m
2)と相対的に小さくなるように、以下の手順により配向膜13aを形成した。まず、ガラス基板12aに10
−2(J/m
2)のアンカリングエネルギーを有するポリイミド膜を形成した。そして、ポリイミド膜をラビング処理し、液晶層11の液晶分子の配向方向が線状の電極10の長手方向に対して約20度で均一に配向するようにした。続いて、マスク露光により、電極10の直上のポリイミド膜のみにUV光を約1000(mJ/m
2)照射して、電極10の直上のアンカリングエネルギーを10
−7(J/m
2)と小さくした。
【0024】
その後、互いに吸収軸が直交する偏光板14a、14bを、ガラス基板12a、12bを挟み込むように配置した。この際、電圧OFF時の液晶層11の液晶分子の配向方向が、偏光板14a、14bのうちの一方の吸収軸と平行となり他方の吸収軸と直交するようにした。そして、導光板21の端部に白色のLED光源22を備えるバックライトユニット2を、液晶パネル1の背面側に配置した。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る液晶表示装置の光通過特性を示す図である。
図2は、隣接する電極10間に0〜10(V)の電圧差を印加したときの液晶パネル1の光透過率(%)の実測値を示す。本実施形態における液晶パネル1の光通過特性T1は、配向膜13aの電極10の直上のアンカリングエネルギーのみ相対的に小さくして測定した。一方、従来の光通過特性T2は、配向膜13aの全域でアンカリングエネルギーを10
−2(J/m
2)と大きく(強く)して測定した。また、
図2には、配向膜13aの全域でアンカリングエネルギーを10
−7(J/m
2)と小さく(弱く)して測定した光通過特性T3を、比較例として示した。配向膜13bのアンカリングエネルギーは、いずれの光通過特性T1、T2、T3の測定でも、全域で10
−2(J/m
2)と大きくした。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の液晶パネル1の光通過特性T1は、従来の液晶パネルの光通過特性T2と比較して大きく向上した。これは、本実施形態の液晶パネル1では、電極10の直上の配向膜13aのアンカリングエネルギーを小さくしたため、電極10の直上の液晶分子が横電界に対して応答しやすくなったからである。
【0027】
配向膜13aのアンカリングエネルギーを全域で小さくした比較例の光通過特性T3は、本実施形態の光通過特性T1よりも更に向上した。これは、液晶層11の配向膜13a側の液晶分子が全域で応答しやすくなったためである。しかし前述のように、配向膜13aのアンカリングエネルギーを全域で一様に小さくすると、電極10の電圧OFF時の復元力が低下して液晶表示の応答性が低下してしまう。このような液晶表示の応答特性の測定結果について次に説明する。
【0028】
図3は、第1実施形態に係る液晶表示装置の応答特性を示す図である。
図3は、電極10の電圧を0(ms)においてONとし、200(ms)においてOFFとしたときの液晶パネル1の光透過率(%)の時間変化の実測値を示す。
図3では、電極10の電圧ON後の定常状態における光透過率が100(%)となるように光透過率が規格化されている。
【0029】
図3より、配向膜13aのアンカリングエネルギーを全域で小さくした従来の液晶パネルの応答特性R3は、電圧OFF時における応答性が大きく低下してしまっている。一方、本実施形態の液晶パネル1の応答特性R2は、従来の液晶パネルの応答特性R1と比較しても、電圧OFF時の応答性の低下が抑えられている。すなわち、本実施形態の液晶表示装置によれば、液晶表示の応答性の低下を抑制しつつ液晶表示の明るさを向上させることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置では、第1配向膜(配向膜13a)の電極直上におけるアンカリングエネルギーを、第1配向膜の電極間におけるアンカリングエネルギーよりも小さくしている。これにより、液晶表示の応答性の低下を抑制しつつ液晶表示の明るさを向上させることが可能な液晶表示装置を得ることができる。
【0031】
また、電極直上における液晶分子が応答しやすくなるので、電極間に印加する電界をより小さくすることができ、液晶表示装置の消費電力を低減することができる。なお、第1配向膜(配向膜13a)の電極直上におけるアンカリングエネルギーは、第2配向膜(配向膜13b)のアンカリングエネルギーに対しても小さいことが望ましいが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
【0032】
アンカリングエネルギーを小さくする配向膜13aの領域は若干の位置ずれは問題なく、ガラス基板12aに形成された電極10の直上の液晶分子の配向規制力が相対的に弱くなっていればよい。また、以上の説明では、複数の電極10を同じ配線層に形成したが、これに限定されるものではない。例えば第2実施形態に示すように、SiNxやSiOx等により互いに絶縁された異なる配線層に、それぞれ画素電極と共通電極を別々に形成してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、電極10の主材料として、85%の高い光透過率Tを有するIZO(indium zinc oxide)を採用したが、これに限定されるものではない。電極10は高い光透過率を有する導体膜であればよい。IZOの代わりに、例えばITO(Indium tin oxide、T=88%)、AZO(aluminum doped zinc oxide、T=92%)を用いることが可能である。あるいは、GZO(gallium doped zinc oxide、T=92%)、ATO(antimony tin oxide、T=87%)等を用いてもよい。
【0034】
また、以上の説明では、電極10の直上のみアンカリングエネルギーを相対的に小さくするために、配向膜13aの電極10の直上にUV照射したが、これに限定されるものではない。例えば第2実施形態に示すように、配向膜13aの電極10の直上の領域に、フォトリソグラフィ法を用いて、アンカリングエネルギーが小さいポリマーブラシを形成してもよい。または、配向膜13aの電極10の直上の領域に、インクジェット法を用いて、アンカリングエネルギーが小さいポリマーブラシを選択的に形成してもよい。
【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る液晶表示装置について
図4〜
図6を用いて説明する。
図4は、第2実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略図である。
図4に示す液晶表示装置は、
図1に示す第1実施形態の液晶表示装置と比較して、主に電極10の構造が異なっている。その他の構成については第1実施形態と基本的に同じである。但し、液晶パネル1がIPS方式であればその他の構成等に関わらず本発明の効果が得られることを示すために、液晶層11の材料や厚みを変えている。以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0036】
第1本実施形態では、
図1に示すようにガラス基板12aと液晶層11の間の配線層に線状の電極10を複数形成した。一方、本実施形態では、
図4に示すように、ガラス基板12aと液晶層11の間の第1の配線層には線状の画素電極10aのみを複数形成し、第1の配線層と異なる第2の配線層に矩形状の共通電極10bを形成した。そして、画素電極10aと共通電極10bとの間に電圧を印加して表示を制御した。これにより、本実施形態では、
図4に示すように、画素電極10aに近づくほど共通電極10bまでの距離が短くなり電界が強くなるので、画素電極10a付近の液晶分子の動作性をより向上させることができる。以下、
図4に示す本実施形態の液晶表示装置の製造方法についてより具体的に説明する。
【0037】
まず、対向する1対のガラス基板12a、12bの間に、誘電率異方性が負のネマティック液晶材料(誘電率異方性Δε=−3、屈折率異方性Δn=0.100)を封入し、液晶層11を形成した。ガラス基板12a、12bの厚さはそれぞれ0.5(mm)とし、液晶層11の厚みは4.0(μm)とした。誘電率異方性が負のネマティック液晶材料は種類が少ないため液晶材料の選択の自由度は減少するものの、誘電率異方性が負のネマティック液晶材料を用いることで、液晶分子の電界に対する液晶の動作性を向上させることができる。
【0038】
ガラス基板12bと液晶層11との間には、R(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長域の光を通過させるカラーフィルタ15を形成した。一方、ガラス基板12aと液晶層11の間の第1の配線層には、線状の画素電極10aを形成した。そして、第1の配線層とは異なる第2の配線層に矩形状の共通電極10bを形成した。画素電極10aの幅は2(μm)、画素電極10aの間隔は4(μm)とした。第1の配線層と第2の配線層の間には、3000(Å)厚のSiNx膜からなる絶縁層16を形成した。画素電極10aと共通電極10bとは、
図4に示すように、ガラス基板12aの面に垂直な方向からの平面視において重なる領域が存在するようにした。
【0039】
ガラス基板12aと液晶層11の間には配向膜13aを形成し、カラーフィルタ15と液晶層11の間には配向膜13bを形成した。配向膜13aのアンカリングエネルギーは、画素電極10aの直上では10
−6(J/m
2)となるようにし、画素電極10aの直上を除く領域では10
3(J/m
2)となるようにした。一方、配向膜13bのアンカリングエネルギーは10
3(J/m
2)とした。
【0040】
この際、配向膜13aのアンカリングエネルギーが、画素電極10aの直上で10
−6(J/m
2)と相対的に小さくなるように、以下の手順により配向膜13aを形成した。まず、ガラス基板12aの画素電極10aの直上の領域に、フォトリソグラフィ法等を用いて、アンカリングエネルギーが小さいポリマーブラシを形成した。次に、ガラス基板12aの画素電極10aの直上を除く領域に、ポリマーブラシよりもアンカリングエネルギーが大きいポリイミド膜を形成した。このとき、画素電極10aの直上のポリマーブラシ上にポリイミド膜が積層しないよう、ポリマーブラシがはじく溶剤(例えばN−メチル−2−ピロリドン)を用いた。その後、配向膜13aの全域をラビング処理し、液晶層11の液晶分子の配向方向が線状の画素電極10aの長手方向に対して約83度で均一に配向するようにした。
【0041】
その後、互いに吸収軸が直交する偏光板14a、14bを、ガラス基板12a、12bを挟み込むように配置した。この際、電圧OFF時の液晶層11の液晶分子の配向方向が、偏光板14a、14bのうちの一方の吸収軸と平行となり他方の吸収軸と直交するようにした。そして、導光板21の端部に白色のLED光源22を備えるバックライトユニット2を、液晶パネル1の背面側に配置した。
【0042】
図5は、第2実施形態に係る液晶表示装置の光通過特性を示す図である。また、
図6は、第2実施形態に係る液晶表示装置の応答特性を示す図である。
図5および
図6に示す本実施形態の液晶表示装置における測定は、
図2および
図3に示す第1実施形態の液晶表示装置における測定と同じ方法および同じ条件で行った。以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0043】
図5および
図6に示すように、本実施形態では、全ての光通過特性T1、T2、T3、および全ての応答特性R1、R2、R3が、
図2および
図3に示す第1実施形態のときよりも向上していることが分かる。これは、本実施形態では電極10の構造を改善することにより、画素電極10a付近の液晶分子の動作性及び応答性が向上したためである。また、光通過特性T1、T2、T3のそれぞれの間の関係、および応答特性R1、R2、R3のそれぞれの間の関係は、第1実施形態と同じであることが分かる。すなわち、本実施形態の液晶表示装置によれば、液晶表示の応答性の低下を抑制しつつ液晶表示の明るさを向上させることができる。このように、本実施形態の液晶表示装置によれば、液晶パネル1がIPS方式であればその他の構成等に関わらず第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置では、第1ガラス基板の第1の配線層に設けられた線状の画素電極と、第1の配線層とは異なる第2の配線層に設けられた矩形状の共通電極との間に電圧を印加して表示を制御している。これにより、液晶表示の応答性の低下を抑制しつつ液晶表示の明るさを更に向上させることが可能な液晶表示装置を得ることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、画素電極10aおよび共通電極10bの主材料として88%の高い光透過率Tを有するITO(Indium tin oxide)を採用したが、これに限定されるものではない。画素電極10aおよび共通電極10bは高い光透過率を有する導体膜であればよい。ITOの代わりに、例えばIZO(indium zinc oxide T=85%)、AZO(aluminum doped zinc oxide、T=92%)を用いることが可能である。あるいは、GZO(gallium doped zinc oxide、T=92%)、ATO(antimony tin oxide、T=87%)等を用いてもよい。また、アンカリングエネルギーを小さくする配向膜13aの領域は若干の位置ずれは問題なく、ガラス基板12aに形成された画素電極10aの直上の液晶分子の配向規制力が相対的に弱くなっていればよい。
【0046】
また、以上の説明では、画素電極10aの直上のみアンカリングエネルギーを相対的に小さくするために、配向膜13aの画素電極10aの直上の領域にフォトリソグラフィ法を用いてポリマーブラシを形成したが、これに限定されるものではない。例えば第1実施形態に示したように、配向膜13aの画素電極10aの直上におけるアンカリングエネルギーを、UV照射により小さくしてもよい。または、配向膜13aの画素電極10aの直上の領域に、インクジェット法を用いて、アンカリングエネルギーが小さいポリマーブラシを形成してもよい。
【0047】
(第3実施形態)
本実施形態では、液晶パネル1の光通過特性に対する電極直上のアンカリングエネルギーの大きさの影響について検討する。本実施形態の液晶表示装置の構成は、
図4に示す第2実施形態の構成と基本的に同じである。但し、液晶パネル1がIPS方式であればその他の構成等に関わらず本発明の効果が得られることを示すために、液晶層11の材料や厚みを変えている。以下、第2実施形態と異なる部分について説明する。
【0048】
まず、対向する1対のガラス基板12a、12bの間に、誘電率異方性が正のネマティック液晶材料(誘電率異方性Δε=10、屈折率異方性Δn=0.100)を封入し、液晶層11を形成した。ガラス基板12a、12bの厚さはそれぞれ0.5(mm)とし、液晶層11の厚みは4.4(μm)とした。
【0049】
ガラス基板12bと液晶層11との間には、R(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長域の光を通過させるカラーフィルタ15を形成した。一方、ガラス基板12aと液晶層11の間の第1の配線層には、線状の画素電極10aを複数形成した。そして、第1の配線層とは異なる第2の配線層に矩形状の共通電極10bを形成した。画素電極10aの幅は2(μm)、画素電極10aの間隔は4(μm)とした。第1の配線層と第2の配線層の間には、3000(Å)厚のSiNx膜からなる絶縁層16を形成した。画素電極10aと共通電極10bとは、
図4に示すように、ガラス基板12aの面に垂直な方向からの平面視において重なる領域が存在するようにした。
【0050】
ガラス基板12aと液晶層11の間には配向膜13aを形成し、カラーフィルタ15と液晶層11の間には配向膜13bを形成した。配向膜13aのアンカリングエネルギーは、画素電極10aの直上では10
−8〜10
−1(J/m
2)となるようにし、画素電極10aの直上を除く領域では10
3(J/m
2)となるようにした。一方、配向膜13bのアンカリングエネルギーは10
3(J/m
2)とした。
【0051】
この際、配向膜13aのアンカリングエネルギーが、画素電極10aの直上で10
−6(J/m
2)と相対的に小さくなるように、以下の手順により配向膜13aを形成した。まず、配向膜13aの画素電極10aの直上の領域に、フォトリソグラフィ法等を用いて、アンカリングエネルギーが小さいポリマーブラシを形成した。次に、配向膜13aの画素電極10aの直上を除く領域に、ポリマーブラシよりもアンカリングエネルギーが大きいポリイミド膜を形成した。このとき、画素電極10aの直上のポリマーブラシ上にポリイミド膜が積層しないよう、ポリマーブラシがはじく溶剤(例えばN−メチル−2−ピロリドン)を用いた。その後、配向膜13aの全域をラビング処理し、液晶層11の液晶分子の配向方向が線状の画素電極10aの長手方向に対して約7度で均一に配向するようにした。
【0052】
その後、互いに吸収軸が直交する偏光板14a、14bを、ガラス基板12a、12bを挟み込むように配置した。この際、電圧OFF時の液晶層11の液晶分子の配向方向が、偏光板14a、14bのうちの一方の吸収軸と平行となり他方の吸収軸と直交するようにした。そして、導光板21の端部に白色のLED光源22を備えるバックライトユニット2を、液晶パネル1の背面側に配置した。
【0053】
図7は、第3実施形態に係る液晶表示装置の光通過特性を示す図である。
図7は、画素電極10aと共通電極10bとの間に0〜10(V)の電圧差を印加したときの液晶パネル1の光透過率(%)の実測値を示す。
図7では、配向膜13aの画素電極10aの直上におけるアンカリングエネルギーが10
−8、10
−7、10
−6、10
−5、10
−4、10
−3、10
−2、または10
−1(J/m
2)である場合の液晶パネル1の光通過特性を測定した。
【0054】
図7に示すように、画素電極10aの直上の配向膜13aのアンカリングエネルギーを10
−3(J/m
2)以上としたときの本実施形態の液晶表示装置による光通過特性は、アンカリングエネルギーを全域で大きくした従来の光通過特性と概ね同じであった。次に、画素電極10aの直上の配向膜13aのアンカリングエネルギーを10
−4以下にすると、アンカリングエネルギーを小さくするに従って光透過率は向上した。しかし、画素電極10aの直上の配向膜13aのアンカリングエネルギーを10
−6(J/m
2)以下に小さくしても、光透過率はそれ以上向上しなかった。
【0055】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置によれば、第1配向膜の電極直上におけるアンカリングエネルギーを10
−6(J/m
2)以下とすることで、液晶表示の明るさを大きく向上させることができる。また、アンカリングエネルギーを10
−6(J/m
2)以下にとすることで、光通過特性に対するアンカリングエネルギーのバラつきによる変化の影響を抑えることができるので、表示ムラが起こりにくく製造マージンが広い液晶表示装置を得ることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0057】
上述の実施形態の構成では、配向膜13aの電極直上におけるアンカリングエネルギーが相対的に小さくなっているので、電極直上の液晶分子は回転し易くなっている。このため、例えば、液晶層11の電極直上の領域において、第2ガラス基板(ガラス基板12b)の側の液晶分子を一定の角度βだけ回転させると、第1ガラス基板(ガラス基板12a)の側の液晶分子もそれに合わせて回転する。一方、液晶層11の電極間の領域においては、ガラス基板12bの側の液晶分子を一定の角度βだけ回転させても、ガラス基板12aの側の液晶分子はほとんど回転しない。このため、本発明の技術的特徴である配向膜13aの電極直上におけるアンカリングエネルギーが相対的に小さくなっている構成は、例えば次のような検証方法を用いて容易に検証することができる。
【0058】
第1のステップ:
液晶層11の電極直上の領域において、ガラス基板12bの側の液晶分子を一定の角度βだけ回転させたときのガラス基板12aの側の液晶分子の回転角度α1を測定する。
第2のステップ:
液晶層11の電極間の領域において、ガラス基板12bの側の液晶分子を一定の角度βだけ回転させたときのガラス基板12aの側の液晶分子の回転角度α2を測定する。
第3のステップ:
回転角度α1と回転角度α2の差(=α1−α2)が所定の閾値を超えている場合に、配向膜13aの電極直上におけるアンカリングエネルギーが相対的に小さくなっていると判定する。
【0059】
このように、本発明の技術的特徴は検証が容易であるため、例えば製造後の検査等において液晶表示装置が上述の実施形態の構成を有しているかの検査工程を簡素化することが可能である。