【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は塗装前処理設備に係り、その特徴は、
塗装前の被塗物を予備洗浄水により予備洗浄する予備洗浄部と、
この予備洗浄部で予備洗浄した前記被塗物を脱脂液により化学的に脱脂処理する脱脂部と、
この脱脂部で脱脂処理した前記被塗物を洗浄水により洗浄する水洗部とを備える塗装前処理設備であって、
前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水を、前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水として、前記予備洗浄部に供給する予備洗浄水供給路を設け、
前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるマイクロバブル発生装置を設け、
前記予備洗浄部は、予備洗浄用の装置と回収槽と配水槽とを備え、
前記予備洗浄用の装置は、前記予備洗浄水により前記被塗物を予備洗浄し、
前記回収槽は、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水を回収し、
前記配水槽には、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水が前記回収槽に回収されるのに伴って、前記回収槽に回収した前記予備洗浄水が導水路を通じて導かれるとともに、前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水が前記予備洗浄水として前記予備洗浄水供給路を通じて供給され、
前記予備洗浄用の装置には、前記配水槽における前記予備洗浄水が給水路を通じて供給され、
前記配水槽には循環路が装備されて、
前記回収槽―前記導水路―前記配水槽―前記給水路―前記予備洗浄用の装置の順に前記予備洗浄水が循環するのに併行して、前記配水槽から取り出された前記予備洗浄水が前記循環路を通じて短絡的に前記配水槽に戻され、
前記マイクロバブル発生装置は、前記循環路に介装されて、前記循環路を通過する前記予備洗浄水に前記マイクロバブルを含ませる点にある。
【0008】
つまり、脱脂部に続く水洗部には、脱脂部での脱脂処理で使用された脱脂液の一部が、脱脂部から水洗部に移動する被塗物に付着した状態で持ち込まれ、このため、水洗部で被塗物の洗浄に使用した後の洗浄水は、少量とは言え脱脂液を含んだもの(例えば、脱脂液に比べて1/10程度の濃度の脱脂液水溶液)になる。
【0009】
したがって、水洗部で被塗物の洗浄に用いた洗浄水を、予備洗浄部での被塗物の予備洗浄に用いる予備洗浄水として、予備洗浄水供給路により予備洗浄部に供給することで、予備洗浄部では、脱脂液を含む予備洗浄水により被塗物を予備洗浄することになる。
【0010】
また、予備洗浄部での被塗物の予備洗浄に用いる予備洗浄水には、マイクロバブル発生装置によりマイクロバブルを含ませるから、予備洗浄部では、脱脂液とマイクロバブルとを含む予備洗浄水により被塗物を予備洗浄することになる。
具体的には、上記第1特徴構成では(図2参照)、予備洗浄部(1)は、予備洗浄用の装置(5,6)と回収槽(7)と配水槽(8)とを備え、
予備洗浄用の装置(5,6)は、予備洗浄水(W3)により被塗物(B)を予備洗浄し、
回収槽(7)は、被塗物(B)の予備洗浄に用いた予備洗浄水(W3)を回収し、
配水槽(8)には、被塗物(B)の予備洗浄に用いた予備洗浄水(W3)が回収槽(7)に回収されるのに伴って、回収槽(7)に回収した予備洗浄水(W3)が導水路(9)を通じて導かれるとともに、水洗部(3)で被塗物(B)の洗浄に用いた洗浄水(W2)が予備洗浄水(W3)として予備洗浄水供給路(33)を通じて供給され、
予備洗浄用の装置(5,6)には、配水槽(8)における予備洗浄水(W3)が給水路(10,11)を通じて供給され、
配水槽(8)には循環路(37)が装備されて、
回収槽(7)―導水路(9)―配水槽(8)―給水路(10,11)―予備洗浄用の装置(5,6)の順に予備洗浄水(W3)が循環するのに併行して、配水槽(8)から取り出された予備洗浄水(W3)が循環路(37)を通じて短絡的に配水槽(8)に戻され、
マイクロバブル発生装置(34)は、前記循環路(37)に介装されて、前記循環路(37)を通過する予備洗浄水(W3)にマイクロバブルを含ませる。
即ち、水洗部(3)で被塗物(B)の洗浄に用いた洗浄水(W2)が予備洗浄水(W3)として予備洗浄水供給路(33)を通じて配水槽(8)に供給されることで、水洗部(3)で被塗物(B)の洗浄に用いた洗浄水(W2)に含まれる脱脂液(L)が、配水槽(8)における予備洗浄水(W3)に混合され、また、マイクロバブル発生装置(34)により、循環路(37)を通過する予備洗浄水(W3)にマイクロバブルが含ませられることで、配水槽(8)における予備洗浄水(W3)にマイクロバブルが混合され、これら脱脂液(L)及びマイクロバブルが混合された配水槽(8)における予備洗浄水(W3)が給水路(10,11)を通じて予備洗浄用の装置(5,6)に供給されることで、予備洗浄用の装置(5,6)による被塗物(B)の予備洗浄において、脱脂液(L)とマイクロバブルとを含む予備洗浄水(W3)により被塗物(B)が予備洗浄される。
【0011】
このことにより、予備洗浄部では、被塗物に付着した鉄粉などの塵埃を被塗物から除去する本来の予備洗浄処理に加えて、被塗物に付着した油分を被塗物から除去する脱脂処理も、マイクロバブルにより処理効果を高めた状態で、被塗物に施すことができる。
【0012】
そして、このように水洗部において用いた洗浄水に含まれる脱脂液(言わば、使用済みの脱脂液)を利用した状態で、予備洗浄部において被塗物を予備洗浄処理するとともに効果的に脱脂処理できることで、被塗物とともに脱脂部に持ち込まれる油分の量を削減して脱脂部での処理負荷を軽減することができ、これにより、脱脂液の消費量を少量化して設備のランニングコストを低減することができる。
【0013】
また、加熱により脱脂液を脱脂処理に適した温度を保つときには、脱脂液消費量の少量化に伴い、脱脂液の保温に要する熱エネルギも低減することができて、そのことでも設備のランニングコストを低減することができる。
【0014】
さらにまた、脱脂部での処理負荷が軽減されることで、脱脂部において被塗物から除去する油分の量も少量化するから、除去した油分を脱脂液から分離して回収する油分除去装置も小型化なもので済ませることができ、その分、設備を小型化するとともに、設備のイニシャルコスト及びランニングコストも一層低減することができる。
【0015】
なお、予備洗浄部では、水洗部で用いた洗浄水を予備洗浄水として導入することに対して、その導入量に相当する量の使用済みの予備洗浄水を予備洗浄部から排出するから、予備洗浄部での脱脂処理により被塗物から除去した油分が予備洗浄部において蓄積することはなく、その為、予備洗浄部に対して新たに油分除去装置を設ける必要もない。
【0016】
要するに、上記構成によれば、塗装前の被塗物に対する脱脂処理の処理効果をマイクロバブルの利用により十分に確保しながら、設備を小型化したり、設備のイニシャルコストやランニングコストを低減したりする効果も併せて得ることができる。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記脱脂部には、脱脂槽内の脱脂液に前記被塗物を浸漬させるディップ式の本脱脂部のみを設け、
このディップ式の本脱脂部での脱脂処理に先立って、前記被塗物を前記脱脂液により予備脱脂処理する予備脱脂部は省略してある点にある。
【0018】
前記した特許文献3に見られるように、従来の塗装前処理設備では(
図5参照)、脱脂部2として、脱脂槽15内の脱脂液Lに被塗物Bを浸漬させて被塗物Bを脱脂処理するディップ式の本脱脂部2Bと、この本脱脂部2Bでの脱脂処理に先立ち、被塗物Bを脱脂液Lにより予備脱脂処理するスプレー式などの予備脱脂部2Aとが設けられる。
【0019】
これに対し、上記構成では
(図2参照)、前述の如く予備洗浄部
(1)において被塗物
(B)を予備洗浄処理するのに伴い効果的に脱脂処理できることから、予備脱脂部を省略し、予備洗浄部
(1)での処理を終えた被塗物
(B)は、そのままディップ式の本脱脂部
(2B)において脱脂処理する。
【0020】
したがって、この構成によれば、予備脱脂部の省略により、設備を一層小型化することができ、また、予備脱脂部に付随するポンプなどの付随機器も省略できることで、設備のイニシャルコストやランニングコストを一層低減することができる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記導水路には鉄粉除去装置が介装され、
前記鉄粉除去装置は、前記予備洗浄部で前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水に含まれる鉄粉を、予備洗浄水と鉄粉との比重差により前記予備洗浄水から分離
し、
この鉄粉除去装置に送る前記予備洗浄水から、その予備洗浄水に含まれる気泡を除去するガス抜き手段
が設けられ、
前記ガス抜き手段として空気逃がし弁が、前記予備洗浄水の流れ方向において前記鉄粉除去装置よりも上流側で、前記導水路に装備されている点にある。
【0022】
この構成では
(図2参照)、被塗物
(B)の予備洗浄に用いた予備洗浄水
(W3)に含まれる鉄粉(即ち、予備洗浄処理で被塗物から除去した鉄粉)を、
導水路(9)に介装した鉄粉除去装置
(12)により予備洗浄水
(W3)から分離除去するが、この鉄粉除去装置
(12)は予備洗浄水
(W3)と鉄粉との比重差により予備洗浄水
(W3)から鉄粉を分離するため、予備洗浄に用いた予備洗浄水
(W3)がマイクロバブルなどの気泡を含む場合、その気泡(特に大径の気泡)に鉄粉が付着して、気泡の浮力により鉄粉の見掛け上の重量が小さくなることで、鉄粉除去装置
(12)の鉄粉分離機能が低下してしまう。
【0023】
これに対し、上記構成では、
導水路(9)を通じて鉄粉除去装置
(12)に送る予備洗浄水
(W3)から気泡を除去するガス抜き手段
として、予備洗浄水(W3)の流れ方向において鉄粉除去装置(12)よりも上流側で、導水路(9)に空気逃がし弁(36)を装備するから、予備洗浄水
(W3)にマイクロバブルを含ませるようにしながらも、このガス抜き手段
としての空気逃がし弁(36)による気泡の除去により、鉄粉除去装置
(12)の鉄粉分離機能を高く保つことができる。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記予備洗浄部には、前記予備洗浄用の装置として、前記被塗物に対して前記予備洗浄水を噴流状態で吹き付ける予備洗浄用の吐水装置と、前記被塗物に対して前記予備洗浄水をスプレーする予備洗浄用のスプレー装置とが装備され、
前記吐水装置には、前記マイクロバブルを含む前記予備洗浄水が前記配水槽から前記給水路を通じて供給され、
前記スプレー装置には、前記マイクロバブルを含む前記予備洗浄水が前記配水槽から前記給水路を通じて供給される点にある。
【0025】
この構成では
(図2参照)、予備洗浄部(1)において吐水装置(5)やスプレー装置(6)による予備洗浄水(W3)の吹き付けやスプレーにより塗装前の被塗物(B)を予備洗浄することで、被塗物(B)に付着している鉄粉等の塵埃を除去する。
【0026】
そして、吐水装置(5)やスプレー装置(6)に供給する予備洗浄水(W3)に対してマイクロバブル供給装置(34)によりマイクロバブルを含ませることで、予備洗浄部(1)では被塗物(B)に対する予備洗浄処理に伴い、脱脂部(2)での脱脂処理に先行する脱脂処理を、マイクロバブルにより処理効果を高めた状態で被塗物(B)に施す。
【0027】
なお、予備洗浄部(1)において吐出装置(5)から被塗物(B)に対して吹き付ける予備洗浄水(W3)にマイクロバブルが含まれることでは、主として、被塗物(B)に付着した油分の疎水基に対するマイクロバブルの付着性により、被塗物(B)に対する脱脂効果を高めることができる。
【0028】
また、予備洗浄部(1)においてスプレー装置(6)から被塗物(B)に対してスプレーする予備洗浄水(W3)にマイクロバブルが含まれることでは、主として、スプレーした予備洗浄水(W3)中でマイクロバブルが破裂する際に放出される衝撃波により、被塗物(B)に対する脱脂効果を高めることができる。