(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を、基材にインクジェット印刷方式で印刷して塗膜を形成し、光重合により前記塗膜を硬化させてなることを特徴とする印刷物。
前記基材は、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、及び、ポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種からなる基材である請求項4に記載の印刷物。
請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を、基材にインクジェット印刷方式で印刷して塗膜を形成し、光重合により前記塗膜を硬化させた後、熱成形して得られてなることを特徴とする成形品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう)について具体的に説明する。
<光重合性化合物>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、複数種の光重合性化合物を含有する。
上記光重合性化合物は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、N−ビニルカプロラクタム、ベンジルアクリレートを合計で80.0質量%以上含有し、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを5.0〜25.0質量%含有し、N−ビニルカプロラクタムを30.0〜40.0質量%含有するものである。さらに、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に、二官能以上の(メタ)アクリレート化合物を3.0質量%以下含有する。
【0011】
二官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アクリレートエステル(ジオキサングリコールジアクリレート)、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化脂肪族ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
そして、二官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に3.0質量%以下含有することが好ましい。二官能以上の(メタ)アクリレート化合物の含有量が3.0質量%を超えると架橋密度が多くなり過ぎて、クラックが発生し、延伸性が低下する傾向がある。
【0012】
さらに、単官能光重合性化合物として、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中にアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、N−ビニルカプロラクタム、ベンジルアクリレートを合計で、80.0質量%以上含有し、なかでも、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを5.0〜25.0質量%含有し、5.0〜15.0質量%含有することが好ましい。N−ビニルカプロラクタムを30.0〜40.0質量%含有することが好ましい。N−ビニルカプロラクタムの含有量が30.0質量%未満であるとタック性が低下する傾向があり、一方40.0質量%を超えると吐出安定性が低下する傾向がある。
上記合計含有量が80.0質量%未満であると、架橋密度が多くなり過ぎて、クラックが発生し、延伸性が低下する傾向がある。
また、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量が5.0質量%未満であると耐性が低下する傾向があり、一方25.0質量%を超えると架橋密度が多くなり過ぎて、クラックが発生し、延伸性が低下する傾向がある。
【0013】
上記の単官能光重合性化合物の他に本発明の目的とする性能が低下しない範囲において、その他の単官能光重合性化合物を含有していてもよい。
上記のその他の単官能光重合性化合物としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の複素環を有する単官能モノマー、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する単官能モノマー、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、等の光重合性モノマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の光重合性オリゴマー等の光重合が可能なエチレン性二重結合含有化合物を挙げることができる。
【0014】
(ケトン樹脂)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、タック性を向上させるために、ケトン樹脂を含有させることもできる。
上記ケトン樹脂としては、上述の光重合性化合物に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、公知のケトン樹脂が使用できる。
ケトン樹脂としては水酸基を有するケトン樹脂が好ましく、具体的には、例えば、(1)アセトフェノン等の芳香族系ケトン化合物、シクロヘキサノンやトリメチルシクロヘキサノン等の脂環族系ケトン化合物といったケトン基含有化合物と、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物とを反応させて得られたケトン樹脂を水素添加して得られる水酸基を有するケトン樹脂、(2)イソシアネート化合物と反応可能な置換基を有するケトン樹脂にイソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を反応させて得られる水酸基を含有するウレタン変性ケトン樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
そして、これらの水酸基を有するケトン樹脂は市販されており、具体的には、例えば、デグサ製等のSK、PZZ−1201等がある。
上記水酸基を有するケトン樹脂の含有量は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中0.05〜5.0質量%であることが好ましい。上記水酸基を有するケトン樹脂の含有量が0.05質量%未満では、タックが過剰となり、一方5.0質量%を超えると、罫線割れが発生する傾向にあるので好ましくない。
【0015】
<光重合開始剤>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、450〜300nmの波長の光により開始剤機能が発現するアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する。なお、上記「450〜300nmの波長の光により開始剤機能が発現する」とは、450〜300nmの波長全域にわたって光吸収特性を有することをいう。このような光重合開始剤を用いることで、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に、さらに発光ダイオード(LED)光に対する硬化性を付与することができる。
【0016】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジメチルフォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,3,3−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が例示される。具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドとしてTPO(Lamberti社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドとしてIRGACURE819(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)等が例示される。
【0017】
さらに、上記光重合開始剤に加え、さらに、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系開始剤(例えば、商品名TAZ−204、みどり化学(株)製)等を含有させることもできる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
上記光重合開始剤は、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に3.0〜15.0質量%含有することが好ましい。上記光重合開始剤の含有量が3.0質量%未満では、発光ダイオード(LED)光に対する硬化性が十分でないことがある。一方、15.0質量%を超えると、光重合開始剤としての効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。上記光重合開始剤の含有量は、4.0〜10.0質量%であることがより好ましい。
【0018】
(増感剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、さらに、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を促進するために、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤(化合物)を併用使用することができる。
なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。このような増感剤を用いることで、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物のLED硬化性を促進させることができる。
上記光増感剤としては、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等で、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
具体的には、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。市販品の代表例としては、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製)、チオキサントン系増感剤としては、DETX、ITX(LAMBSON社製)等が例示できる。
【0019】
このような増感剤の含有量は、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に好ましくは0〜5.0質量%の範囲である。増感剤の含有量が5.0質量%を超えると、効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用した場合は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を黄色に変色させる傾向があるため、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるので、色毎に、チオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。
具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物及びクリアーインク組成物では、増感剤とてして、チオキサントン系増感剤を含まないようにすることが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では、光重合性化合物としてビニルアミド化合物を併用使用しているので、黄色に変色した硬化塗膜が退色し、色相の変化が問題となるので、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、及びイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しないのと、光重合性が他の色相より乏しいことから、光重合開始剤として、チオキサントン系増感剤を併用使用することが好ましい。
【0020】
(着色剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、各色相の着色剤を含有させて、各色の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることもできる。
このような着色剤としては、通常の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物で従来から使用されている顔料、染料を特に制限なく使用できるが、耐光性の点より、有機顔料又は無機顔料等の顔料が好ましい。
そして有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
また、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の代表的な色相ごとの顔料の具体例としては以下のものが挙げられる。
まず、光硬化型インクジェット印刷用イエローインク組成物として使用するためのイエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられ、好ましくは、C.I.Pigment Yellow150、155、180、213等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用マゼンタインク組成物として使用するためのマゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられ、好ましくは、C.I.Pigment Red 122、202、Pigment Violet 19等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用シアンインク組成物として使用するためのシアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15;1、15;2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等で、好ましくは、C.I.Pigment Blue15:4等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用ブラックインク組成物として使用するためのブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用ホワイトインク組成物として使用するためのホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、好ましくは、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタンが挙げられる。
【0022】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における着色剤の含有量は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の全量に対して1.0〜20.0質量%であることが好ましい。着色剤の含有量が1.0質量%未満では、得られる印刷物の画像品質が低下する傾向がある。一方、20.0質量%を超えると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度特性に悪影響を与える傾向がある。
【0023】
(顔料分散剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、必要に応じて顔料分散剤を含有していてもよい。
顔料分散剤は、顔料の分散性、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の保存安定性を向上させるために使用するもので、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子分散剤を使用することが好ましい。このような顔料分散剤としては、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
上記顔料分散剤は、使用する全顔料の量を100質量部としたときに、1〜200質量部含有することが好ましい。顔料分散剤の含有量が1質量部未満では、顔料分散性、本発明のインク組成物の保存安定性が低下する場合がある。一方、200質量部を超えて含有させることもできるが効果に差がでない場合もある。顔料分散剤の含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0024】
(界面活性剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、使用するインクジェットヘッドに応じて、界面活性剤として好ましくは従来から光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に使用されているシリコン系界面活性剤等の界面活性剤を、吐出安定性を改良するために含有することが好ましい。
シリコン系界面活性剤の具体例としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における、界面活性剤の含有量は0.005〜1.0質量%である。0.005質量%未満であると、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の表面張力が高くなり、インクジェットヘッドからの吐出安定性が低下する。一方、1.0質量%を超えると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に泡が増加し吐出安定性が低下する。
【0025】
(溶剤)
溶剤は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に適宜配合されてもよい。溶剤としては、エステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤等が例示される。また、溶剤としては、常圧(1.013×10
2kPa)における沸点が150〜220℃であるものが例示される。有機溶剤は、インク組成物の硬化性、環境問題等の観点から、極力使用されないことが好ましい。そのため、有機溶剤の含有量は、インク組成物中5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、使用されないことがさらに好ましい。
【0026】
(その他添加剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を添加することができる。具体的には、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。
【0027】
(インク組成物の調製方法)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を調製する方法としては、特に限定されず、上述した材料を全て添加してビーズミルや3本ロールミル等で混合して調製することができる。なお、顔料を用いる場合は、顔料、上記顔料分散剤及び上記光重合性化合物を混合することにより、予めコンクベースインクを得て、そこに所望の組成となるよう上記の成分の残余の分を添加して調製することもできる。
【0028】
(インク組成物の特性)
(1)インク組成物の硬化塗膜の延伸率
本発明のインク組成物では、加熱下で延伸・曲げ加工を可能にするために、上記インク組成物を光重合させて得られた硬化塗膜の25℃における延伸率が150%以上であることが好ましい。
なお、上記インク組成物の硬化塗膜の延伸率とは、以下の方法により測定した延伸率をいう。
延伸率の測定方法
ポリカーボネート板(厚さ0.5mm)に、インク組成物を#12のバーコーターにより塗工し、厚さ20μmの塗膜を形成する。この塗膜に、照射手段としてヘレウス(株)製UVランプ(Z−8ランプ)を用いて、120W/cm×23m/min、距離10cm(1パス当たりの積算光量60mJ/cm
2)の照射条件で塗膜が完全に硬化するまで硬化させる。硬化後、硬化塗膜を2cm×10cmのサイズに切り出して測定試料片を作製し、その測定試料片を、引張試験機により、180℃の環境下で引張速度50mm/minで延伸し、硬化塗膜がひび割れずに延伸できる長さにより延伸率を測定する。
ここで、
図1に示すように、測定試料片の中心を挟むように記した中心部の黒点と黒点との距離が、延伸前の1cmから延伸によりXcmになった場合に、延伸率を{(X−1)/1}×100[%]とする。
【0029】
(2)粘度
本発明のインク組成物は、良好なインク吐出性能、厚膜の印刷塗膜を得る等の観点から、25℃における粘度が10mPa・s以下である。
なお、本明細書において、上記25℃における粘度は、B型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて測定したものである。
【0030】
(印刷物の製造)
次に、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を用いて得られる印刷物について説明する。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印字する基材としては、従来公知の紫外線光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が適用可能なプラスチック等の基材であれば特に限定されない。なかでも、上記基材としては、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、及び、ポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種からなるプラスチック基材であることが好ましい。
次に、本発明の上記インク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明の上記インク組成物を基材に吐出した後、基材に着弾したインク組成物を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
具体的には、例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明の上記インク組成物をインクジェット記録方式用プリンター装置のプリンターヘッドに供給し、このプリンターヘッドから被記録材に塗膜の膜厚が1〜20μmとなるように該インク組成物を吐出することにより行うことができる。光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として被記録材に塗工された該インク組成物に光を照射することにより行うことができる。
本発明の上記インク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット録方式用プリンター装置を用いる場合は、インク組成物にさらに導電性付与剤を加え、電導度の調節をすることが好ましい。
画像の硬化における光源としては、紫外線、電子線、可視光線、発光ダイオード(LED)等を挙げることができる。
このように、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を、基材にインクジェット印刷方式で印刷して塗膜を形成し、光重合により上記塗膜を硬化させてなる印刷物もまた本発明の印刷物に包含される。
【0031】
(印刷物の成形)
上述の方法により得られた印刷物は、後に延伸・曲げ加工、切断加工等の各種の機械加工がなされる分野で好適に利用できる。上記延伸・曲げ加工等の機械加工の方法としては、慣用の延伸装置による延伸、加熱下あるいは非加熱下で所定の形状の金型によりプレス加工、切断加工する方法等の各種の一般的な方法が挙げられる。
そして、美粧印刷を簡単に実現するインクジェット印刷方式と、光硬化性で基材に対する密着性、延伸性、耐熱性、及び、各種加工適性に優れた本発明のインク組成物の硬化塗膜の性能との相乗効果により、簡単で綺麗に印刷物を得ることができ、さらに、得られた印刷物は、熱エネルギーの節約につながる低温度から、熱成形加工が容易な高温度に至るまで、より過酷な条件であっても延伸・曲げ加工が好適にできる。さらに、上記印刷物は、切断加工等の機械加工をされても、硬化塗膜の割れや剥がれが発生せず、優れた印刷品質を維持したままで、目的とする形状に加工することができる。
このように、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を、基材にインクジェット印刷方式で印刷して塗膜を形成し、光重合により上記塗膜を硬化させた後、延伸・曲げ加工、切断加工等の機械加工等の成形を行って得られる成形品もまた本発明に包含される。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例、比較例で使用する材料は次の通りである。
<顔料分散剤>
アジスパーPB821(味の素(株)製)
ソルスパース56000(日本ルーブリゾール(株)製)
<光重合性化合物>
V#160:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
VCAP :N−ビニルカプロラクタム
VEEA :ビニロキシエトキシエチルアクリレート((株)日本触媒製)
ジプロピレングリコールジアクリレート
<光重合開始剤>
TPO :2,4,6−trimethylbenzoyl diphenyl pho sphine oxide(LAMBERTI社製)
DETX:2,4−ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
<添加剤>
BYK−315(シリコーン添加剤)(BYK Chemie社製)
<ケトン樹脂>
SKレジン(エボニックジャパン(株)製)
【0033】
<光硬化型インクジェット印刷用コンクベースの調製>
(ブラック)
顔料(ピグメントブラック7(PB7))と顔料分散剤(アジスパーPB821)と光重合性化合物(ベンジルアクリレート)とを配合比率(質量比)が20/8/72となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
(イエロー)
顔料(ピグメントイエロー150(PY150))と顔料分散剤(ソルスパース56000)と光重合性化合物(ベンジルアクリレート)とを配合比率(質量比)が16/9.6/74.4となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
(シアン)
顔料(ピグメントブルー15:4(PB15:4))と顔料分散剤(ソルスパース56000)と光重合性化合物(ベンジルアクリレート)とを配合比率(質量比)が20/8/72となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
(マゼンタ)
顔料(ピグメントレッド122(PR122))と顔料分散剤(ソルスパース56000)と光重合性化合物(ベンジルアクリレート)とを配合比率(質量比)が16/9.6/74.4となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
(ホワイト)
酸化チタンと顔料分散剤(アジスパーPB821)と光重合性化合物(ベンジルアクリレート)とを配合比率(質量比)が40/8/52となるように配合した混合物を、アペックスミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。
【0034】
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の調製>
上記で得られた各コンクベースを用いて、表1及び2の配合組成(質量%)となるように配合し、実施例1〜13、比較例1〜9の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。
【0035】
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の性能評価>
実施例1〜13、比較例1〜9で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をポリカーボネート板上(厚さ0.5mm)に#12のバーコーターで塗工し、次いでフォセオンテクノロジー社製LEDランプにて硬化(積算量40mJ/cm
2)させ、硬化塗膜(膜厚20μm)を形成した。ポリカーボネート板上に形成された硬化塗膜の印字直後及び印字1週間後の延伸性、タック性、耐摩擦性、吐出安定性を下記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0036】
(粘度)
粘度は25℃における粘度であり、B型粘度計(商品名:REl00L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて測定したものである。
【0037】
(LED硬化性)
実施例1〜13、比較例1〜9で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をポリカーボネート板上(厚さ0.5mm)に#12のバーコーターで塗工し、次いでフォセオンテクノロジー社製LEDランプにて硬化(積算量40mJ/cm
2)させ表面のタックがなくなるまでの照射エネルギーの積算量を求めた。
【0038】
(タック性)
各硬化塗膜(基材=ポリカーボネート板)を指触して、その塗膜表面の状態を目視で確認することにより、タック性を評価した。
○:塗膜に指紋が付着しない
△:塗膜に僅かに指紋が付着する
×:塗膜に指紋が付着する
【0039】
(延伸性)
ポリカーボネート板(厚さ0.5mm)に、インク組成物を#12のバーコーターにより塗工し、厚さ20μmの塗膜を形成する。この塗膜に、照射手段としてヘレウス(株)製UVランプ(Z−8ランプ)を用いて、120W/cm×23m/min、距離10cm(1パス当たりの積算光量60mJ/cm
2)の照射条件で塗膜が完全に硬化するまで硬化させる。硬化後、硬化塗膜を2cm×10cmのサイズに切り出して測定試料片を作製し、25℃で1週間保管後、その測定試料片を、引張試験機により、25℃の環境下で引張速度50mm/minで延伸し、硬化塗膜がひび割れずに延伸できる長さにより延伸率を測定し、その延伸率を延伸性とした。
ここで、
図1に示すように、測定試料片の中心を挟むように記した中心部の黒点と黒点との距離が、延伸前の1cmから延伸によりXcmになった場合に、延伸率を{(X−1)/1}×100[%]とする。
【0040】
(耐摩擦性)
学振型堅牢度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用いて、晒し布で500g×100回塗膜を擦ったときの、塗膜の取られ具合を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:塗膜の取られ無し
△:塗膜の表面に傷がある
×:塗膜が取られ基材がみえる
【0041】
(吐出安定性)
雰囲気温度が25℃である空間に、インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、実施例1〜13、比較例1〜9で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置および実施例1〜12、比較例1〜10で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の温度を25℃に合わせた。その後、25℃の雰囲気温度下で、実施例1〜13、比較例1〜9で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を用いてポリカーボネート板上(厚さ0.5mm)基材(PVC80(リンテック(株)製))上に、連続的に印字し、以下の基準に基づいて吐出安定性を評価した。
〇:印刷の乱れがなく、安定して吐出できた
×:印刷の乱れがあるか、または安定して吐出できなかった
【0042】
【表1】
【0043】
表1に記載の結果によると、本発明に沿った例である実施例1〜12によれば、低粘度でLED硬化性による硬化性、延伸性、耐摩擦性及び吐出安定性のバランスに優れ、タックがない塗膜を得ることができる。そのため印刷基材と共に、塗膜に悪影響を与えることなく、延伸することができる。
また実施例13は多少タック性を有するが、そのタック性は、実際にはほとんど支障がない程度である。
しかしながら、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートを多く含有する比較例1及び2、及び逆に少ない比較例9によれば延伸性に劣ることになり、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、N−ビニルカプロラクタム、ベンジルアクリレートを合計で80質量%以上含有しない比較例3によっても延伸性に劣る結果となった。
ケトン樹脂を過剰に含有する比較例4によると吐出安定性に劣る結果となった。
N−ビニルカプロラクタムの含有量が少ない比較例5によるとタック性及び延伸性に劣り、N−ビニルカプロラクタムが過剰に含有された比較例6によれば、吐出安定性に劣っていた。
そして、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量が少ない比較例7によればタック性に劣り、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが過剰に含有された比較例8によれば延伸性に劣る結果となった。