特許第6858511号(P6858511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858511
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】跳ねだしブラケット
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/06 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   E04G5/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-170321(P2016-170321)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-35593(P2018-35593A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501415659
【氏名又は名称】JFE機材フォーミング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 光夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 弘郷
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185173(JP,A)
【文献】 実開昭60−172950(JP,U)
【文献】 特開2006−070486(JP,A)
【文献】 特開2012−241492(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0067955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00−7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、
前記基端部側である一方の端部に前記主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に前記副支柱を受ける副支柱受け材を有し、前記上側連結部を介して前記主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、
前記水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、
上端部において前記補助水平材に固定され、下端部に前記主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、
前記水平材および前記補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて前記上側連結部に対する前記副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、
前記斜材は、前記2つの繋ぎ材のうちの前記水平材の先端部側に設けられた繋ぎ材の真下においてその上端部が前記補助水平材に固定されるものである、ことを特徴とする跳ねだしブラケット。
【請求項2】
基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、
前記基端部側である一方の端部に前記主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に前記副支柱を受ける副支柱受け材を有し、前記上側連結部を介して前記主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、
前記水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、
上端部において前記補助水平材に固定され、下端部に前記主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、
前記水平材および前記補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて前記上側連結部に対する前記副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、
前記副支柱受け材は、前記伸縮機構に連結されたものである、ことを特徴とする跳ねだしブラケット。
【請求項3】
基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、
前記基端部側である一方の端部に前記主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に前記副支柱を受ける副支柱受け材を有し、前記上側連結部を介して前記主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、
前記水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、
上端部において前記補助水平材に固定され、下端部に前記主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、
前記水平材および前記補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて前記上側連結部に対する前記副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、
前記斜材は、前記2つの繋ぎ材のうちの前記水平材の先端部側に設けられた繋ぎ材の真下においてその上端部が前記補助水平材に固定されるものであり、前記副支柱受け材は、前記伸縮機構に連結されたものである、ことを特徴とする跳ねだしブラケット。
【請求項4】
各伸縮機構は、外管材と該外管材に出入自在に挿入された内管材とを有することを特徴とする請求項1から3までの何れか一項に記載の跳ねだしブラケット。
【請求項5】
前記水平材と前記斜材とを前記主支柱に沿って繋ぐ補剛材を備えることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載の跳ねだしブラケット。
【請求項6】
前記斜材は、その下端部に前記主支柱に沿って延びる垂下片を有し、該垂下片は、その下部に前記下側連結部が配置され、その上部に前記主支柱の側面に当接するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1からまでの何れか一項に記載の跳ねだしブラケット。
【請求項7】
前記跳ねだしブラケットは、高架橋の跳ねだし部用のブラケットであり、前記上側連結部に対する前記副支柱受け材の離間距離は1600mmから2000mmの範囲内で調整可能であることを特徴とする請求項1からまでの何れか一項に記載の跳ねだしブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端部において足場の支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で他の支柱を支持する跳ねだしブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物工事においては、建築物に隣接して支柱を所定間隔毎に配置し、これらの支柱をはり間方向およびけた行方向に布材で連結して仮設足場を組むことが行われている。この際、建築物に跳ねだし部(張出し部)があり、地上から支柱等を立てられない場合には、建築物の途中から外側に跳ねだしブラケット(張出しブラケットともいう。)を取り付けて、この上に足場を構築する手法が一般に用いられている。
【0003】
跳ねだしブラケットとしては、例えば特許文献1に記載されたものがあり、このブラケットは、基端部に支柱に設けられたソケットに着脱自在に緊結されるくさび片を有し、先端部に他の支柱を支持する外装筒が設けられた水平材と、水平材の中間部下面から基端部方向に向かって斜め下方に延びる補強材とからなるものであり、くさび片を介して水平材を支柱に取り付けるだけで、そのブラケット上への踏板や別の支柱の設置が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−275770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の跳ねだしブラケットは、住宅の軒やベランダ等、跳ねだし幅(突出長さ)の比較的小さな跳ねだし部への使用を前提に設計されており、このような跳ねだしブラケットを、鉄道や道路等の高架橋のような跳ねだし幅の比較的大きい跳ねだし部に適用することはできない。また、跳ねだし部の跳ねだし幅は高架橋毎に異なる場合が多く、この点においても水平材の長さが一定である従来の跳ねだしブラケットは、高架橋への使用に適したものとはいえない。
【0006】
そのため、従来では、高架橋等の大型の建築物において、跳ねだし部の外側に跳ねだし足場を構築する場合には単管式足場を使用せざるを得ず、具体的には、図7(a)に示すように、先ず高架橋Bの橋脚B3に沿って地表から建枠、踏板、筋かい、手摺り等で足場pを構築していき、床版B1の下面の手前まできたところで単管からなる水平材phをクランプcにより足場pの建枠に固定し、つづいて図7(b)に示すように水平材phの上に踏板gを敷設した後、水平材phの先端部に単管からなる斜材ptの上端部をクランプcにより接合するとともにこの斜材ptの下端部を下層側の作業者がクランプcにより建枠に接合し、次いで図7(c)に示すように、水平材phの先端部にクランプcにより単管からなる支柱pvをクランプcで接合して立設し、そして図7(d)に示すように支柱pvに跳ねだしブラケットbr等を取り付ける手法が採られている。
【0007】
しかしながら、単管式足場を用いた跳ねだし足場の構築では、跳ねだし幅の大きな跳ねだし部に対応して長い単管を水平に取り付ける必要があるため、施工に手間がかかるとともに危険が伴っていた。また、単管を現場で位置合わせしながら組み上げていくため、跳ねだし足場の設置状況が施工者毎に異なり、跳ねだし足場の強度を含め安全性が異なるおそれもある。
【0008】
それ故本発明は、上記従来技術の問題を解消し、建築物の跳ねだし部の跳ねだし幅に応じて支柱を立てる位置を調整でき、かつ、安全性および施工性の高い跳ねだしブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、基端部側である一方の端部に主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に副支柱を受ける副支柱受け材を有し、上側連結部を介して主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、上端部において補助水平材に固定され、下端部に主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、水平材および補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて上側連結部に対する副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、斜材は、2つの繋ぎ材のうちの水平材の先端部側に設けられた繋ぎ材の真下においてその上端部が補助水平材に固定されるものである、ことを特徴とするものである。また、本発明は、基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、基端部側である一方の端部に主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に副支柱を受ける副支柱受け材を有し、上側連結部を介して主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、上端部において補助水平材に固定され、下端部に主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、水平材および補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて上側連結部に対する副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、副支柱受け材は記伸縮機構に連結されたものである、ことを特徴とする跳ねだしブラケットであり、さらに、本発明は、基端部において足場の主支柱に設けられた受け金具に支持され、先端部において建築物の跳ねだし部の外側で副支柱を支持する跳ねだしブラケットであって、基端部側である一方の端部に主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に副支柱を受ける副支柱受け材を有し、上側連結部を介して主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した2つの繋ぎ材に固定される補助水平材と、上端部において補助水平材に固定され、下端部に主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材と、を備え、水平材および補助水平材は、建築物の跳ねだし幅に応じて上側連結部に対する副支柱受け材の離間距離を調整可能な伸縮機構をそれぞれ有し、斜材は、2つの繋ぎ材のうちの水平材の先端部側に設けられた繋ぎ材の真下においてその上端部が補助水平材に固定されるものであり、副支柱受け材は、伸縮機構に連結されたものである、ことを特徴とする跳ねだしブラケットである。
【0010】
なお、本発明の跳ねだしブラケットにあっては、各伸縮機構は、外管材と該外管材に出入自在に挿入された内管材とを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の跳ねだしブラケットにあっては、水平材と斜材とを主支柱に沿って繋ぐ補剛材を備えることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の跳ねだしブラケットにあっては、斜材は、その下端部に主支柱に沿って延びる垂下片を有し、該垂下片は、その下部に下側連結部が配置され、その上部に主支柱の側面に当接するストッパが設けられていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の跳ねだしブラケットにあっては、跳ねだしブラケットは、高架橋の跳ねだし部用のブラケットであり、上側連結部に対する副支柱受け材の離間距離は1600mmから2000mmの範囲内で調整可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の跳ねだしブラケットによれば、基端部側である一方の端部に主支柱の受け金具に連結される上側連結部を有し、他方の端部に副支柱を受ける副支柱受け材を有し、上側連結部を介して主支柱に連結された状態において該主支柱に対して直角をなす水平材と、水平材の下方位置で該水平材と平行に配置されるとともに該水平材から垂下した繋ぎ材に固定される補助水平材と、上端部において補助水平材に固定され、下端部に主支柱の他の受け金具に連結される下側連結部を有する斜材とを備えているため、上側連結部および下側連結部を主支柱の受け金具に連結することで跳ねだしブラケットを簡単に設置することができ、優れた作業性を得ることができるとともに設置状況が施工者毎に異なることもない。さらに、水平材の長尺化により懸念される荷重によるたわみ量の増大に対して、跳ねだしブラケットの先端部において水平材および補助水平材による二重の支持構造を採用したことで、先端部におけるたわみを抑制ないし防止することができる。さらに、水平材および補助水平材にそれぞれ、その長さを変更自在とする伸縮機構を設けたことにより、跳ねだし幅の異なる建築物に対しても確実に適合させることができるとともに、地上において予め水平材および補助水平材の長さ調整を行っておくことにより、高所での作業を減らし安全性の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットを用いて、建築物の一例としての高架橋の跳ねだし部の外側に跳ねだし足場を構築した状態を示す図である。
図2図2は、本実施形態の跳ねだしブラケットを取り付ける支柱の一部、または本実施形態の跳ねだしブラケットによって支持される支柱の一部を示す斜視図である。
図3図3は、図1で示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットの詳細を示す側面図である。
図4図4は、図1で示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットの詳細を示す正面図である。
図5図5は、図1で示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットを用いた、本発明の一実施形態の跳ねだし足場の構築方法を示した図である。
図6図6は、本発明の跳ねだしブラケットにおいて、上側連結部および下側連結部と主支柱との緊結構造の変形例の一例を示す図であり、(a)は受け金具の変形例を示し、(b)は(a)の受け金具に適合する上側連結部および下側連結部の変形例を示すものである。
図7図7は、従来の単管式足場を用いて高架橋の跳ねだし部の外側に跳ねだし足場を構築する手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここで図1は、本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットを用いて、建築物の一例としての高架橋の跳ねだし部の外側に跳ねだし足場を構築した様子を示す図であり、図2は、本実施形態の跳ねだしブラケットを取り付ける支柱の一部、または本実施形態の跳ねだしブラケットによって支持される支柱の一部を示す斜視図であり、図3は、図1に示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットの詳細を示す側面図であり、図4は、図1に示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケットの詳細を示す正面図である。
【0017】
図1に示すように、高架橋Bの床版B1の端部から立ち上がる高欄B2の外側に沿って跳ねだし足場Spを構築する場合、跳ねだし足場Spを支える基礎足場Sbが高架橋Bの橋脚B3に沿って組み立てられる。基礎足場Sbは、垂直方向に沿って配置される複数の支柱(以下、跳ねだし足場Spの支柱と区別するため「主支柱」という。)p1、各主支柱p1間にそれぞれ水平方向に沿って架け渡される布材hおよび踏板gのほか、これらの部材間に傾斜姿勢で掛け渡される筋かいや手摺り等を備えている。
【0018】
図2に示すように、主支柱p1は、金属パイプによって構成されており、その外周面には布材hや手摺り、跳ねだしブラケット10等を連結するための複数の受け金具kを有している。図示例では、受け金具kは主支柱p1の外周面に四方向にそれぞれ突出するようにして取り付けられた断面コ字形のソケットkから構成される。各ソケットkは、その両側壁の先端縁が支柱の外周面に溶接固定されており、ソケットkの内部は上下方向にそれぞれ開放されている。
【0019】
図1に示すように、主支柱p1は、高架橋Bの床版B1下面の手前位置まで積み上げられ、該主支柱p1には、高架橋Bの跳ねだし部B4を避けるように外側に向けて跳ねだしブラケット10が取り付けられている。さらに跳ねだしブラケット10の先端部には、跳ねだし足場Spの支柱(以下、区別のため「副支柱」という。)p2が立設されている。副支柱p2も、図2に示すように、主支柱p1と同じ構造であり、その外周面には布材hや手摺り等を連結するための複数の受け金具kを有している。また、副支柱p2または副支柱p2に連結された布材hは、壁つなぎ材wを介して高架橋Bの高欄B2に連結、固定されている。
【0020】
図3は、図1に示した本発明の一実施形態の跳ねだしブラケット10を示す側面図であり、図4は正面図である。この図に示すように、この跳ねだしブラケット10は、主として、水平材11と、補助水平材12と、斜材13とを備えている。
【0021】
水平材11は、基端部側である一方の端部に主支柱p1の受け金具kに連結される上側連結部15を有し、他方の端部に副支柱p2を受ける副支柱受け材16を有する。水平材11は、上側連結部15を介して主支柱p1に連結された状態では該主支柱p1に対して直角に配置される。上側連結部15は、断面コ字形をなし、その開放側を外側(主支柱p1側)に向けて水平材11の端部に固着された差込金具15aと、差込金具15a内に昇降自在に保持され、降下時に主支柱p1の外周面と差込金具15aとの間に圧入されるくさび15bとを有し、差込金具15aを受け金具k内に差し込み、くさび15bを下方に打ち込むことによって水平材11は主支柱p1に連結される。なお、図1で示した布材h等もこれと同様のくさび緊結方式によって主支柱p1または副支柱p2に連結することができる。
【0022】
水平材11は、基端部側の端部に上側連結部15を有する外管材11aと、該外管材11aに出入自在に挿入され、先端部側の端部に副支柱受け材16が固着された内管材11bとから構成される。これらの外管材11aおよび内管材11bは、水平材11の伸縮機構11Mを構成する。内管材11bには固定ボルト18が螺合され、固定ボルト18はダブルナット19により緩み止めされている。これにより、外管材11aと内管材11bとの相対位置は固定され、使用時における水平材11の長さ変動は防止される。
【0023】
副支柱受け材16は、短尺の金属パイプによって構成されており、その上端部に副支柱p2の下端部内に挿入されて該副支柱p2を支持する挿入部16aを有している。図4に示すように、副支柱受け材16の中間部外周面には、主支柱p1の受け金具kと同様の構造を有する受け金具16cが固着されている。
【0024】
補助水平材12は、水平材11よりも短尺であり、水平材11の下方位置で該水平材11と平行に配置されるとともに該水平材11から垂下した繋ぎ材21に固着されている。補助水平材12は、繋ぎ材21によって水平材11に支持された外管材12aと、該外管材12aに出入自在に挿入され、先端部側の端部に副支柱受け材16が固着された内管材12bとから構成される。これらの外管材12aおよび内管材12bは、補助水平材12の伸縮機構12Mを構成する。
【0025】
斜材13は、金属パイプによって構成されており、その上端部は水平材11の先端部側に設けられた繋ぎ材21の真下において補助水平材12の外管材12aに固着されている。斜材13の下端部には主支柱p1に沿って延びる垂下片13aが固設されている。垂下片13aには主支柱p1の受け金具kに連結される下側連結部23と、下側連結部23の上方隣接位置で主支柱p1の外周面に当接可能なストッパ24とが配設されている。
【0026】
下側連結部23は、斜材13の垂下片13aに固定され主支柱p1の受け金具kを上下において挟み込む挟持金具23aと、この挟持金具23aおよび受け金具kを上下に貫いてそれらを相互に離脱不能に連結するくさび部材23bとを有している。くさび部材23bにはくさび部材23bの延在方向(上下方向)に沿って延びる縦穴(貫通穴)23cが形成されており、くさび部材23bは、この縦穴23cに挿通されたピン23dを介して挟持金具23aに昇降自在に保持されている。
【0027】
また、本実施形態の跳ねだしブラケット10においては、水平材11と斜材13との間はこれらを上下方向に繋ぐ補剛材28によって補強され、補助水平材12と斜材13との間はこれらを上下方向に繋ぐ束材29によって補強されている。
【0028】
このように構成された跳ねだしブラケット10を用いて、高架橋Bの床版B1の端部から立ち上がる高欄B2の外側に跳ねだし足場Spを構築するには、先ず、図5(a)に示すように、高架橋Bの橋脚B3に沿って地表から床版B1下面の手間まで主支柱p1、布材h、踏板g、筋かい、手摺り等で足場(基礎足場)Sbを構築する。
【0029】
次に、予め地上において水平材11および補助水平材12の長さを、伸縮機構11M,12Mを介して跳ねだし部B4の跳ねだし幅を考慮して調整しておき、図5(a)に示すように、基礎足場Sbの上層側にいる作業者が跳ねだしブラケット10をロープ等を用いて引き上げる。
【0030】
そして図5(b)に示すように、上層側の作業者が跳ねだしブラケット10の上側連結部15を主支柱p1の受け金具kに連結、固定し、下層側の作業者が跳ねだしブラケット10の下側連結部23を主支柱p1の、上側連結部15が連結された受け金具kより下方に位置する他の受け金具kに連結、固定する。このとき、斜材13の下端部に配設されたストッパ24が当該受け金具kに隣接した位置で主支柱p1の外周面に当接するため、下側連結部23への荷重負荷が軽減されるとともに安定性が図られる。
【0031】
こうして跳ねだしブラケット10を主支柱p1に取り付けた後、図5(c)に示すように、跳ねだしブラケット10の水平材11に適当な枚数の踏板gを架け渡して作業床を形成し、つづいて跳ねだしブラケット10の先端部に位置する副支柱受け材16に副支柱p2を立てるとともに、従来の小幅の跳ねだしブラケット40や踏板g、筋交い、手摺り、壁つなぎ材等を適宜組み付けることで、図1に示すように、高架橋Bの高欄B2の外側に跳ねだし足場Spが構築される。
【0032】
以上のように、この跳ねだしブラケット10を用いて跳ねだし足場Spを構築する場合、上側連結部15および下側連結部23を主支柱p1の受け金具kに連結することで跳ねだしブラケット10を設置することができることから、優れた作業性を得ることができるとともに設置状況が施工者毎に異なることもない。
【0033】
さらに、水平材11の長尺化により懸念される荷重によるたわみ量の増大に対して、跳ねだしブラケット10の先端部において水平材11および補助水平材12による二重の支持構造を採用したことで、先端部におけるたわみを抑制ないし防止することができる。このような先端部における特殊な支持構造を備えた跳ねだしブラケット10は、高架橋用跳ねだしブラケットとして適しており、この場合、上側連結部15に対する副支柱受け材16の離間距離を1600mmから2000mmの範囲内で調整可能とすると、高架橋Bの跳ねだし部B4に有利に適合させることができる。
【0034】
さらに、水平材11および補助水平材12にそれぞれ、その長さを変更自在とする伸縮機構11M,12Mを設けたことにより、跳ねだし幅の異なる建築物に対しても確実に適合させることができるとともに、地上において予め水平材11および補助水平材12の長さ調整を行っておくことにより、高所での作業を減らし安全性の向上を図ることができる。
【0035】
なお、上側連結部15および下側連結部23と主支柱p1との緊結構造は、上記実施形態に示されるものだけに限られることはない。例えば、主支柱p1の受け金具kを、図6(a)に示すようにソケットに代えて係合孔kh付きのフランジk’とするとともに、上側連結部14および下側連結部23を、図6(b)に示すようにこの係合孔khに適合する係合片またはくさび金具36と、このくさび金具36に係止される端部金具37とを有するものとして構成し、上側連結部15および下側連結部23と主支柱p1とを緊結させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
かくして本発明によれば、建築物の跳ねだし部の跳ねだし幅に応じて支柱を立てる位置を調整でき、かつ、安全性および施工性の高い跳ねだしブラケットを提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 跳ねだしブラケット
11 水平材
11a 外管材
11b 内管材
11M 伸縮機構
12 補助水平材
12a 外管材
12b 内管材
12M 伸縮機構
13 斜材
15 上側連結部
16 副支柱受け材
21 繋ぎ材
23 下側連結部
24 ストッパ
28 補剛材
p1 主支柱
p2 副支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7