(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子ペンの内部には、筒状の軸筒が固定して配置されており、前記軸筒の先端側に、前記芯繰出し部が挿入されており、前記芯繰出し部には、前記軸筒の先端面の前方に、前記先端面と対向するフランジが設けられており、前記フランジ及び前記先端面の一方に、前記筆圧検知部が設けられており、前記筆圧検知部が、前記先端面或いは前記フランジに押圧されて、前記筆圧が検知されることを特徴とする請求項1に記載の手書き入力装置。
前記座標入力装置には、前記用紙を前記座標検知面上に固定するための固定部が設けられ、前記固定部にて前記用紙の有無が検知可能とされており、前記用紙が無いと判断されると、前記筆跡データの取得が停止されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の手書き入力装置。
前記座標入力装置には、前記用紙が、前記座標検知面上の所定位置に配置されたか否かを検知する位置ずれ検知部が設けられ、前記位置ずれ検知部にて、前記用紙が所定位置に配置されていないと判断されると、前記筆跡データの取得が停止されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の手書き入力装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における手書き入力装置の模式図である。
図2は、本実施の形態における手書き入力装置のブロック図である。
図3Aは、本実施の形態における電子ペンの平面図であり、
図3Bは、
図3Aに示す電子ペンの断面図である。
図4Aは、非筆記状態における本実施の形態の電子ペンの部分拡大断面図であり、
図4Bは、筆圧が芯に加わった状態における本実施の形態の電子ペンの部分拡大断面図である。
図5は、
図3とは別の本実施の形態の非筆記状態を示す電子ペンの断面図である。
図6は、
図5に示す電子ペンの部分拡大断面図である。
図7は、
図5の電子ペンにおいて、ノックして芯を送り出す状態を示す断面図である。
図8は、
図5に示す電子ペンの筆記状態を示す断面図である。
図9は、
図5の電子ペンにおいて、筆圧が芯に加わった状態を示す断面図である。
図10Aは、本実施の形態における電子消し具の平面図であり、
図10Bは、
図10Aに示す電子消し具の断面図である。
図11Aは、
図10とは別の実施の形態における電子消し具の平面図であり、
図11Bは、
図11Aに示す電子消し具の断面図である。
図12Aは、
図10及び
図11とは別の実施の形態における電子消し具の平面図であり、
図12Bは、
図12Aに示す電子消し具の断面図である。
【0021】
なお、本明細書において「筆記」とは、用紙に文字や絵等を、シャープペンシルの芯により書くことを指し、「筆跡」とは、文字や絵等の用紙7に書かれたものを指す。また、電子ペン3、4において、「前方」とは、芯が先端から突出する側(X1側)を指し、「後方」とは、その反対側(X2側)を指す。また、電子消し具5において、「前方」とは、消し具51が存在し、用紙7に書かれた文字等を消す側(X1側)を指し、「後方」とは、その反対側(X2側)を指す。
【0022】
図1に示すように、手書き入力装置1は、座標入力装置2と、電子ペン3と、電子消し具5とを有して構成される。なお、本実施の形態において、座標入力装置2と、電子ペン3は、必須の構成部材であるが、電子消し具5は、選択可能であり、無くてもよい。
【0023】
図1に示す手書き入力装置1は、座標入力装置2と、電子ペン3及び電子消し具5との電磁誘導作用により、座標入力装置2の座標検知面2a(
図1及び
図2を参照)上での電子ペン3及び、電子消し具5の各座標データ(入力位置情報)が取得可能な電磁誘導方式デジタイザである。
【0024】
(座標入力装置)
座標入力装置2は、座標検知面2aを備えたデジタイザ本体であり、座標検知面2aの内側には、互いに直交する2次元方向に複数のアンテナコイル(図示せず)が並設されている。座標入力装置2では、アンテナコイルを順次切り替えて、座標検知面2aをスキャンする。このとき、座標検知面2a上において、電子ペン3に最も近いアンテナコイルからは、最も強い信号が生じる。この信号に基づいて、電子ペン3の座標検知面2a上での座標データを、
図2に示す座標入力装置2の制御部2bにて算出することができる。同様に、電子消し具5の座標検知面2a上での座標データを、
図2に示す制御部2bにて算出することができる。
【0025】
制御部2bにて算出された座標データは、
図2に示す記録部2cにて記録される。また、座標データは、送信部2dから、手書き入力装置1の外部に接続された、パーソナルコンピュータや携帯端末等の表示装置6に送信することができる。表示装置6では、用紙7に書いた筆跡9を表示することができる。なお、表示装置6の接続は、任意である。
【0026】
(電子ペン)
電子ペン3の構成について、主に、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3A及び
図3Bに示すように、電子ペン3の外郭は、先軸30aと後軸30bとで構成される軸筒30と、先軸30aの外周に位置するグリップ31と、先軸30aの前方(
図3Bに示すX1側)に位置する口金32と、後軸30bの後方(
図3BのX2側)に位置するノック部33と、を有して構成される。
【0027】
図3Bに示すように電子ペン3には、内部に、筆記ユニットとしてシャープペンシルユニット34が配置されている。よって、
図1に示すように、座標検知面2a上に載置した用紙7上に、電子ペン3を用いて筆記することができる。「用紙」は、シャープペンシルユニット34の芯8で筆記可能なものであれば、その材質を問うものではない。以下、電子ペン3に設けられるシャープペンシルユニット34について詳述する。
【0028】
シャープペンシルユニット34は、後述する共振回路40、筆圧検知部45、外郭としての軸筒30、及びグリップ31を除き、芯8を収容して、例えば、ノック式にて芯8を口金32の先端部32aから前方に送り出す機構部全体を指す(
図4B参照)。したがって、具体的には、本実施の形態におけるシャープペンシルユニット34は、主に
図3B及び
図4Aに示すように、口金32の先端部32aから、先軸30aの内部に位置する芯繰出し部36、芯ケース37、及び芯ケース37の後端側に配置されたノック部33にまで至る機構部とされる。
【0029】
口金32は、中空状の略円錐形状を成し、前方に突出した先端部32aが一体的に形成されている。先端部32aには、
図4Bに示す芯8と同径の貫通孔が設けられているが、先端部32aよりも後端側の略円錐形状の内部では、該貫通孔と連通する孔径は徐々に広がっている。特に、口金32の後述する芯繰出し部36と対向する後端側では、芯繰出し部36を構成するチャック360の把持部360aが入り込めるスペースが設けられている。
図4Aに示すように、口金32の内部であって先端部32aの後端位置には、保持チャック35が設けられている。口金32の材質を限定するものでないが、例えば、セラミックス、ステンレス及び樹脂等である。また、保持チャック35は、ゴム製であることが好ましい。
【0030】
次に、芯繰出し部36について説明する。
図4Aに示すように、芯繰出し部36は、チャック360と、締め具361と、継手362と、継手362と芯ケース37との間を接続するチャックスプリング363と、を有して構成される。
図4Aに示すように、芯繰出し部36は、先軸30aの先端側(X1側)に挿入されている。
【0031】
図4Aに示すように、チャック360の前方側(X1側)には、周方向に複数(例えば3つ)に分割された把持部360aが設けられ、把持部360aは、例えば、真ちゅうによりリング状に形成された締め具361内に遊びを有した状態で嵌められている。
【0032】
図4Aに示すように、チャック360は、その前方周囲を覆う円筒状の継手362の内側にて、軸方向O(X1−X2方向)に摺動可能に装着されており、継手362の外周面は、先軸30aの前方部の内周面に位置している。そして、先軸30aの内部では、継手362の後端部と、該後端部と対向する、先軸30aの内周面に設けられた内周端部との間が、クッションスプリング38にて接続されている。
【0033】
また、先軸30a内では、継手362の後端部と芯ケース37の先端部との間が、コイル状のチャックスプリング363で接続されている。
【0034】
電子ペン3の口金32側を下向きに、ノック部33を上向きに持ち、
図3に示すノック部33を前方にノックすると、芯ケース37が前進し、チャックスプリング363は圧縮され、チャック360は前方に突き出される。このとき、チャック360の分割された把持部360aは開き、また、芯ケース37に収容された芯8は、自重で落下してチャック360内を通過する。芯8は、口金32の内部に設けられた保持チャック35の位置で、自重による落下が阻止される。ノック部33を元の位置に戻すと、芯ケース37が後方に戻り、チャック360の把持部360aは、締め具361で締め付けられる。これにより、芯8が、チャック360の把持部360aで把持される。このノック動作を繰り返すことで、芯8が、少しずつ保持チャック35よりも前方への前進と、把持部360aによる把持とを繰り返し、やがて、芯8は、口金32の先端部32aから前方に突出する。
【0035】
本実施の形態における電子ペン3は、
図4Aに示すように、先軸30aの外周側にて略円筒状に形成されたフェライトコア43と、フェライトコア43の外周に巻回されたコイル41と、後軸30b側に配置されたコンデンサ42と、を有して構成された第1の共振回路40を備える。
【0036】
また、本実施の形態における電子ペン3は、内部に、筆圧検知部45を備える。
図4Aに示すように、本実施の形態では、筆圧検知部45が、先軸30aの前方側(X1側)の先端面30a1に設けられている。
図4Aに示すように、先軸30aの先端面30a1の前方には、芯繰出し部36を構成する継手362と一体的に設けられたフランジ362aが対向している。そして、先軸30aの先端面30a1に設けられた筆圧検知部45と、フランジ362aとの間にストローク幅Sが設けられている。ストローク幅Sは、0mm以上0.5mm以下であることが好ましい。ストローク幅Sが、0mmの場合、筆圧検知部45とフランジ362aとは、常に接触した状態を保つ。
【0037】
図4Aは、芯8が芯ケース37に収容されておらず、或いは、芯8が芯ケース37に収容されていても、芯8が口金32の先端部32aから突出していない非筆記状態である。この非筆記状態で、電子ペン3を用いて、
図1に示す用紙7上に筆記しても、芯8による筆跡9は、用紙7上に残らず、また、筆圧検知部45は作動せず筆圧が検知されることはない。
【0038】
一方、
図4Bは、芯8が、口金32の先端部32aから突出した状態にある筆記可能状態である。
図4Bの状態では、芯8に加わる筆圧を受けて、クッションスプリング38が圧縮され、芯繰出し部36がX2方向に後退する。これにより、筆圧検知部45がフランジ362aに押圧されて筆圧が検知される。
【0039】
筆圧検知部45は、例えば、感圧センサであり、押圧力を受けて抵抗値や静電容量が変化する。筆圧検知部45は、第1の共振回路40に、抵抗器或いは可変容量コンデンサとして組み込まれている。筆圧を受けることで、第1の共振回路40の共振特性は変化し、座標入力装置2の制御部2bでは、筆圧を検知することができる。例えば、座標入力装置2側では、アンテナコイルに、電子ペン3から送信される信号(電波)により誘電電圧が生じており、誘電電圧の電圧値のレベルに基づいて、電子ペン3の座標値が算出される。また、制御部2bでは、電子ペン3より送信された信号(電波)と、受信した電波との位相差に応じた信号レベルに基づいて電圧を検知することができる。
【0040】
図5、
図6に示す電子ペン4は、
図3、
図4に示す電子ペン3と一部構成が異なっている。
図5、
図6の電子ペン4は、芯ホルダ(ホルダタイプ)と呼ばれる構造である。ここで、便宜上、
図5、
図6において、
図3、
図4の電子ペン3と同一、又は類似の構成部材に関しては、同じ符号を付した。なお、
図5、
図6に示した電子ペン4は、
図1、
図2に示す手書き入力装置の電子ペンとして適用される。
【0041】
図5に示すように、電子ペン4の外郭は、先軸30aと後軸30bとで構成される軸筒30と、先軸30aの外周に位置するグリップ31と、先軸30aの前方(
図5に示すX1側)に位置する口先部材72と、後軸30bの後方(
図5のX2側)に位置するノック部33と、を有して構成される。
図5に示す電子ペン4には、
図3Bに示す保持チャック35を備えた口金32は設けられていない。
【0042】
図5、
図6に示す電子ペン4のシャープペンシルユニット74は、口先部材72、芯繰出し部36、芯ケース37、及び芯ケース37の後端側に配置されたノック部33にまで至る機構部とされる。
【0043】
芯繰出し部36の構成は、
図4Aで説明した通りであり、すなわち、芯繰出し部36は、チャック360と、締め具361と、継手362と、継手362と芯ケース37との間を接続するチャックスプリング363と、を有して構成される。
図6に示す構成では、締め具361と、継手362と、更には、フランジ362aとが、一体に形成されている。
【0044】
図6に示すように、チャック360の前方側(X1側)には、周方向に複数に分割された把持部360aが設けられており、また、チャック360は、継手362の内側にて、軸方向O(X1−X2方向)に摺動可能に装着されている。
図6に示すように、先軸30aの内部では、継手362の後端部と、該後端部と対向する、先軸30aの内周面に設けられた内周端部との間が、クッションスプリング38にて接続されている。また、先軸30a内では、継手362の後端部と芯ケース37の先端部との間が、コイル状のチャックスプリング363で接続されている。
【0045】
図7は、
図5の電子ペンにおいて、ノックして芯を送り出す状態を示す断面図である。
図7に示すように、ノック部33を前方(X1)にノックすると、芯ケース37が前進し、チャックスプリング363は圧縮され、チャック360は、口先部材72から前方に突き出される。このとき、チャック360の分割された把持部360aは開き、また、芯ケース37に収容された芯8は、自重で落下してチャック360内を通過する。このとき、ノック部33を元の位置に戻すと、芯ケース37が後方(X2)に戻り、チャック360の把持部360aは、締め具361で締め付けられる。これにより、
図8に示すように、芯8が、チャック360の把持部360aで把持される。
【0046】
また、本実施の形態における電子ペン4は、
図4に示す電子ペン3と同様に、
図6に示すように、先軸30aの外周側にて略円筒状に形成されたフェライトコア43と、フェライトコア43の外周に巻回されたコイル41と、後軸30b側に配置されたコンデンサ42と、を有して構成された第1の共振回路40を備える。
【0047】
図6に示すように、電子ペン4は、内部に、筆圧検知部45を備える。筆圧検知部45は、例えば、先軸30aの先端面に配置されている。また、
図6に示すように、筆圧検知部45の前方側(X1側)には、芯繰出し部36を構成する継手362と一体的に設けられたフランジ362aが対向している。筆圧検知部45と、フランジ362aとの間に設けられたストローク幅Sについては、
図4での説明を参照されたい。
【0048】
図6では、芯が芯ケース37に収容されておらず、或いは、芯が芯ケース37に収容されていても、芯が把持部360aの先端から突出していない非筆記状態である。この非筆記状態で、電子ペン4を用いて、
図1に示す用紙7上に筆記しても、芯による筆跡9は、用紙7上に残らず、また、筆圧検知部45は作動せず筆圧が検知されることはない。
【0049】
すなわち、
図6に示すように、非筆記状態では、把持部360aは、口先部材72の内側にほぼ収まった状態にある。口先部材72は、加圧力を受けても移動しない部分である。よって、非筆記状態にて、把持部360aが加圧力を受けることはなく、したがって、芯繰出し部36は後方に移動せず、筆圧検知部45が、フランジ362aにて押圧されることがない。また、非筆記状態にて、把持部360aが多少、口先部材72から突き出しており、その突き出し分だけ、芯繰出し部36の後方への移動が許容されていても、その移動距離は、筆圧検知部45が、フランジ362aにて押圧されることがない長さとされている。
【0050】
一方、
図9に示すように、芯8が、把持部360aの先端から突出した筆記可能状態では、芯8に加わる筆圧を受けて、クッションスプリング38が圧縮され、芯繰出し部36がX2方向に後退する。これにより、筆圧検知部45がフランジ362aに押圧されて筆圧が検知される。
【0051】
(電子消し具)
続いて、電子消し具5について、主に
図10〜
図12を参照しながら説明する。
図10Aに示すように、電子消し具5の外郭は、筒状の本体50と、本体50の前方(X1側)から挿入され、一部が本体50の前方(X1側)から突出した状態で保持される消しゴム等の消し具51と、本体50の後方(X2側)の蓋材としての尾栓52と、を有して構成される。よって、
図1に示すように、用紙7上に書かれた筆跡9を、電子消し具5を用いて消去することができる。
【0052】
図10Bに示すように、本体50の内部には、消し具51の後端側(X2側)に位置し、消し具51を保持する消し具受け台53と、尾栓52の先端側に保持される消去圧検知部54と、消し具受け台53と尾栓52との間に接続されるクッションスプリング55と、コイル57、コンデンサ58及びフェライトコア59を有して構成される第2の共振回路56と、を有して構成される。消し具受け台53には、前方(X1方向)に突出する筒状部53aが設けられており、消し具51は、筒状部53a内に圧入されて保持されている。
【0053】
また、コイル57は、略円筒状のフェライトコア59の外周に巻回されており、コイル57及びフェライトコア59は、本体50と尾栓52との間、及び本体50と消し具受け台53の間の隙間に配置されている。また、コンデンサ58は、例えば、尾栓52の内部空間に保持されている。
【0054】
図10Bに示す構成では、消し具51が、消し具受け台53とともに、軸方向O(X1−X2)に移動可能に支持されている。よって、X2方向に押圧力を受けると、消し具51とともに消し具受け台53がX2方向に後退して、消去圧検知部54を押圧し、消去圧を検知することができる。
【0055】
また、
図11に示す電子消し具5は、消し具51の後端側形状と、消し具51の保持部材の形状が
図10とは異なるのみで、他の構成部材は、
図10と同じである。
【0056】
図11Bに示すように、消し具51には後端側に凹部51aが設けられており、この凹部51a内に、消し具台座59の前方(X1方向)に突出する筒状部59aが圧入されている。これにより、消し具51が、消し具台座59に保持される。
【0057】
図10及び
図11に示す電子消し具5は、いずれも消し具51の外周側に、略円筒状のフェライトコア59及びコイル57が配置された構造となっている。これに対して、
図12に示す電子消し具5は、
図10、
図11に示す構造と異なり、棒状のフェライトコア59の外周に巻回とされたコイル57の外周側に、消し具51が配置された構造となっている。なお、
図12の電子消し具5において、
図10、
図11と同じ符号の部分は、
図10及び
図11と同じ部材を示している。
【0058】
図12Bに示すように、消し具台座60の内部には後端側から前方に向けて凹部60aが形成されており、凹部60a内に、フェライトコア59及びコイル57が設けられている。そして、フェライトコア59の後端側は、台座尾栓60cで塞がれている。また、消し具台座60の前方には、突出する突部60bが設けられており、突部60bが、消し具51の後端側に形成された凹部内に圧入されている。これにより、消し具51が、消し具台座60に保持される。
【0059】
また、
図10、
図11及び
図12に示すように、電子消し具5には、消去圧検知部54が設けられており、消去圧検知部54は、例えば、感圧センサであり、押圧力を受けて抵抗値や静電容量が変化する。消去圧検知部54は、第2の共振回路56に、抵抗器或いは可変容量コンデンサとして組み込まれている。消去圧を受けることで、第2の共振回路56の共振特性は変化し、座標入力装置2の制御部2bでは、消去圧を検知することができる。例えば、座標入力装置2側では、アンテナコイルに、電子消し具5から送信される信号(電波)により誘電電圧が生じており、誘電電圧の電圧値のレベルに基づいて電子消し具5の座標値が算出される。また、制御部2bでは、電子消し具5より送信された信号(電波)と、受信した電波との位相差に応じた信号レベルに基づいて消去圧を検知することができる。
【0060】
従来では、電子ペンにて書かれた内容は、外部ディスプレイやパーソナルコンピュータ等で表示して確認することが必要であったが、本実施の形態によれば、用紙7をディスプレイ代わりにして、外部ディスプレイ等への接続なしに簡単に筆跡データを取得できる。
【0061】
本実施の形態では、用紙7に筆記していないのに座標入力装置2側では、筆跡データを取得してしまうといった不正入力を抑制すべく、芯8に加わる筆圧を検知し、筆圧が検知されたとき、座標入力装置2では、電子ペン3の筆跡データ(座標データ)を取得する。一方、筆圧が検知されないときは、筆跡データを取得しない。
【0062】
本実施の形態では、シャープペンシルユニット34全体が、筆圧を受けて押圧される形態ではない。シャープペンシルユニット34全体とは、芯8が外部へ繰出されるペン先(
図3、
図4では、口金32の先端部32aであり、
図5、
図6では、チャック360の把持部360aや口先部材72)からノック部33まで全てを含むユニットである。そして、シャープペンシルユニット34全体が、筆圧を受けて押圧される構成の場合、ペン先が押圧されると筆圧を検知するため、芯8が先端から出ていない状態でも筆圧を検知してしまう。まさに、特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、筆記ユニット全体が、筆圧を受けて押圧される構成であり、芯8が先端から出ていない状態でも筆圧を検知する。
【0063】
これに対して、本実施の形態では、シャープペンシルユニット34全体ではなく、芯8に加わる筆圧を受けると、シャープペンシルユニット34の一部だけが移動する構成である。すなわち、シャープペンシルユニット34を構成する口金32の先端部32a(
図3、
図4参照)や、口先部材72(
図5、
図6参照)は押圧されても移動することはなく、移動するのは、電子ペン3、4の内部に位置する芯繰出し部36である。よって、芯が、口金32や口先部材72の先端から突出していない
図4Aや
図6では、先端部32aや口先部材72が押されても、芯繰出し部36は後退せず、あるいは後退量は小さく、筆圧検知部45がフランジ362aに押圧されることはない。したがって、筆圧検知部45は作動せず、筆圧を検知しない。
【0064】
一方、
図4Bのように、芯8が先端部32aから突出した状態では、芯8に加わる筆圧を受けて、芯8を把持した芯繰出し部36が後退し、筆圧検知部45がフランジ362aに押圧されて筆圧検知部45が作動する。なお、
図4Bは、芯繰出し部36が後退して筆圧検知部45が押圧された状態を示している。また、
図6に示す実施の形態においても、芯が把持部360aの先端から突出した状態では、芯8に加わる筆圧を受けて、芯繰出し部36が後退し、筆圧検知部45がフランジ362aに押圧されて筆圧検知部45が作動する(
図9参照)。
【0065】
また、
図4Aに示すように、フランジ362aと筆圧検知部45との間に所定のストローク幅Sを有する構成では、例えば、フランジ362aが筆圧検知部45に接触した後、筆圧検知部45を作動させることができるが、ストローク途中で作動させてもよい。また、フランジ362aと筆圧検知部45とを常に接触させた状態としておき、筆圧検知部45を作動させた後に、筆圧検知部45が押圧される構成とすることもできる。また、
図4では、筆圧検知部45が先軸30aの先端面30a1に配置されているが、先軸30aの先端面30a1と対向するフランジ362aの後端面に配置されていてもよい。ストローク幅Sや、筆圧検知部45の配置に関しては、
図5、
図6に示す実施の形態においても適用可能である。
【0066】
このように、本実施の形態では、芯8に加わる筆圧を検知したときに、座標入力装置2では、電子ペン3、4の筆跡データを取得するので、電子ペン3、4にて、用紙7への筆記と同時に、筆跡に対応する筆跡データとを取得することができる。このため、本実施の形態では、紙データと、座標入力装置2にて取得される筆跡データとを同時に且つ整合性よく得ることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、筆圧の有無の検知のみを行う構成であってもよいが、筆圧の大きさが検知可能な構成であると、筆圧の大きさ情報も筆跡データに取り入れることで、筆圧が大きいと、表示装置6に表示される線を太くするといった処理が可能であり、より筆跡に近い筆跡データを記録することが可能である。
【0068】
本実施の形態では、シャープペンシルユニット34の前方部分で筆圧検知が行われる構成であることが好ましい。これにより、筆圧検知の応答性を良好なものにできる。
【0069】
図3、
図4に示す実施の形態では、先端部32aよりも後方に位置する芯繰出し部36が、先端部32aとは独立して電子ペン3の内部で進退可能に設けられている。芯繰出し部36は、シャープペンシルユニット34の先端から芯8が突出した状態にて筆圧を受けると、芯8とともに、軸方向Oに後退する。そして、筆圧による芯繰出部36の移動を受けて、筆圧検知部45が作動する。これにより、芯繰出し部36は、芯8が、口金32の先端部32aから突出していない状態では、筆圧を受けても、電子ペン3の内部で移動しない。よって、芯8が出ていない状態では筆圧を検知せず、座標入力装置2にて筆跡データを取得することを防止することができる。一方、シャープペンシルユニット34の先端部32aから芯8が突出した状態では、筆圧を受けて、芯繰出し部36が、電子ペン3の内部を移動できる。これにより、筆圧検知部45が作動し、用紙7に筆記している際には、適切に、筆跡データを取得することができる。
【0070】
図5、
図6に示す実施の形態では、進退可能な芯繰出し部36は、口先部材72の内側に配置されており、芯が、把持部360aから突出した筆記状態のとき、芯繰出し部36が移動して筆圧検知部45が作動する。一方、非筆記状態では、芯筆圧を受けても、芯繰出し部36は電子ペン4の内部で移動しない。或いは、移動してもその移動量は非常に小さい。これにより、筆記状態では、筆圧検知部45が作動し、用紙7に筆記している際には、適切に、筆跡データを取得することができる。一方、非筆記状態では、筆圧を検知せず、座標入力装置2にて筆跡データを取得することを防止することができる。
【0071】
また、電子ペン3の内部には、筒状の軸筒30が固定して配置されており、
図4に示すように、軸筒30を構成する先軸30aの先端側に、芯繰出し部36の一部が挿入されている。また、芯繰出し部36には、先軸30aの先端面30a1の前方に、該先端面30a1と対向するフランジ362aが設けられており、フランジ362a及び先端面30a1の一方に、筆圧検知部45が設けられている。そして、筆圧検知部45が先端面30a1或いはフランジ362aに押圧されて、筆圧が検知される。これにより、電子ペン3の内部にて固定される軸筒30を利用して、芯繰出し部36との間で筆圧検知を、精度よく且つ簡単な構成で行うことができる。
図6に示す実施の形態の電子ペン4においても同様である。
【0072】
また、芯繰出し部36の周囲の一部に、緩衝材が配置されていることが好ましい。例えば、芯繰出し部36と先軸30aとの間の隙間や、
図4Bに示すフランジ362aと口金32との間の空間Aに、緩衝材を介在させることができる。緩衝材としては、例えば、グリースを例示することができる。或いは、機械的なダンパー機構を備えたものであってもよい。また、
図6に示す実施の形態においても、緩衝材を、フランジ362aと口先部材72との間の隙間等に介在させることができる。
【0073】
緩衝材を配置することで、芯繰出し部36の進退移動に基づく異音の発生を抑制できる。また、芯繰出し部36が、筆圧の有無で急速な進退移動をしないように、やや抵抗を持たせることができる。これにより、電子ペン3、4での書き心地を良好なものにできる。
【0074】
また、筆圧による芯繰出し部36の移動量(
図4Aや
図6に示すストローク幅S)が、0mm以上0.5mm以下であることが好ましい。このように、移動量を短くすることで、電子ペン3、4での書き心地を良好なものにできる。また、弱い筆圧でも検知することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、筆圧検知部45を、感圧センサで構成することができる。このように、感圧センサを用いることで、薄型のセンサを構成でき、電子ペン3、4の内部にて適切に配置することができる。また、感圧センサを用いることで、加圧センシング性を高めることができ、筆圧を高精度に検知することができる。
【0076】
また、
図1に示すように、座標入力装置2には、用紙7を座標検知面2a上に固定するための固定部(例えば、用箋ばさみ)10に、用紙7の有無が検知可能なセンサ(図示せず)が取り付けられている。このため、固定部10にて用紙7が座標検知面2a上にセットされていないことが検知されると、座標入力装置2では、電子ペン3、4の筆跡データを取得しないように制御できる。このように、座標検知面2a上に用紙7がセットされていない状態で筆記しても、電子ペン3、4の筆跡データの取得は停止されるので、用紙7が無い状態を、不正入力として適切に抑制することができる。
【0077】
また、
図1に示すように、座標入力装置2には、用紙7が、座標検知面2a上の所定位置に配置されたか否かを検知する位置ずれ検知部11が設けられている。位置ずれ検知部11にて、用紙7が所定位置に配置されていないと判断されると、電子ペン3、4の筆跡データの取得が停止される。位置ずれ検知部11の設置位置や数を限定するものではないが、位置ずれ検知部11を複数個とし、且つ座標検知面2aの隅に配置することが好ましい。例えば、
図1に示すように、位置ずれ検知部11を、座標検知面2aの四隅に配置する。これにより、用紙7の位置が座標検知面2aに対してずれて配置され、複数の位置ずれ検知部11のうち、少なくとも一つの位置ずれ検知部11と用紙7とが重なっていない場合、位置ずれ検知部11にて位置ずれが生じたと判断できる。このように、用紙7の位置ずれが生じた状態で筆跡しても、電子ペン3、4の筆跡データの取得は停止されるので、用紙7の位置ずれが生じた状態を、不正入力として適切に抑制することができる。
【0078】
なお、固定部10に配置されたセンサ及び、位置ずれ検知部11には、赤外線センサ、照度センサ、及び、タッチセンサ等を選択することができる。また、用紙7がない場合や、用紙7の位置ずれが生じている場合に、使用者に対して、音や光等で報知可能な構成としてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、手書き入力装置1には、座標入力装置2及び電子ペン3、4の他に、更に、電子消し具5を備えた構成とすることができる。
【0080】
このとき、第1の共振回路40を有する電子ペン3、4と、座標入力装置2との間で作用する電磁誘導による共振周波数と、第2の共振回路56を有する電子消し具5と、座標入力装置2との間で作用する電磁誘導による共振周波数とを、異なせることができる。よって、座標検知面2a上での電子ペン3、4と、電子消し具5との各座標データを、適切に識別することが可能である。
【0081】
本実施の形態における電子消し具5には、用紙7に書かれた筆跡9を消去可能な消し具51を備える。よって、
図1に示すように、電子消し具5にて、用紙7上の筆跡9を消すと同時に、座標入力装置2にて取得される電子消し具5の座標データ(消去データ)に基づいて、記録部2cに記録された筆跡データを、消去された筆跡9に応じて消去制御することが可能である。
【0082】
これにより、用紙7に筆記した筆跡9の消去と、それに対応する筆跡データの消去制御とを、同時に行うことができる。ここで、「筆跡データの消去制御」については、制御部2bにて、電子ペン3、4による筆跡データと、電子消し具5による消去データとを取得した際、消去データと重なるデータを、記録部2cに記録された筆跡データから消去して記録し直すことの他、例えば、筆跡データと消去データとを階層に分けて記録しておき、送信部2dから、筆跡データと消去データとを夫々送信可能な状態等も含まれる。すなわち、筆跡データをデータとして消去せずに、表示装置6に表示する際に、消去された筆記9と対応できるようにデータを置いておく状態も、筆跡データを消去制御した状態に含まれる。
【0083】
本実施の形態では、電子消し具5の内部には、消去圧を検知可能な消去圧検知部54が設けられている。
図10、
図11及び
図12の構成では、消し具51が押圧されると、消し具51が後退して消去圧検知部54が作動し、消去圧が検知される。そして、本実施の形態では、消去圧の検知により、記録部2cに記録された筆跡データを消去するように制御することができる。用紙に書かれた筆跡9は、ある程度の消去圧が無ければ適切に消すことはできない。このため、消去圧を検知したときに、筆跡データを消去することができるように制御することで、用紙7に筆記した筆跡9の消去と、それに対応する筆跡データの消去とを、より整合させることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、消去圧検知部54にて、消去圧の有無の検知のみを行うように制御してもよい。ただし、消去圧の大きさが検知可能な構成であると、消去圧の大きさ情報も取り入れることで、消去圧が大きいと、筆跡に対する消去幅が大きくなるようなデータ処理が可能である。
【0085】
また、本実施の形態では、消去圧検知部54を、感圧センサにて構成することができる。感圧センサを用いることで、薄型のセンサを構成でき、電子消し具5の内部にて適切に配置することができる。また、感圧センサを用いることで、加圧センシング性を高めることができ、消去圧を高精度に検知することができる。
【0086】
また、電子消し具5の内部における、消し具51とコイル57及びフェライトコア59との位置関係においては、
図10及び
図11に示すように、消し具51の後端側の外周に、コイル57及びフェライトコア59が配置されても、
図12に示すように、コイル57及びフェライトコア59の前端側の外周から、コイル57及びフェライトコア59の前方にかけて消し具51が配置されてもどちらでもよい。これにより、電子消し具5の内部に、簡単な構成でコンパクトに、コイル57及びフェライトコア59と消し具51とを配置することができる。また、本実施の形態では、コイル57と消し具51とを接近して配置でき、コイル57と消し具51との間の位置ずれを最小限に抑えることができる。よって、座標入力装置2側で取得される消去位置のデータと、用紙7上での消し具51による消し位置とのずれを小さくできる。このため、用紙7に筆記した筆跡9の消去と、それに対応する筆跡データの消去との整合性をより向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態において、消し具51の径は、5mm以下であることが好ましい。なお、消し具51が円形以外の場合、消し具51の径とは最大径を指す。消し具51の径を5mm以下に設定することで、コイル57と消し具51との間の位置ずれをより小さくできる。よって、用紙7に筆記した筆跡9の消去と、それに対応する筆跡データの消去との整合性をより向上させることができる。
【0088】
図10、
図11及び
図12に示す消し具51は、いずれも、消し具受け台53や消し具台座59、60に対して圧入により保持された構成であり、消し具51を適宜交換することができる。このように、電子消し具5のうち消し具51の部分だけを交換して使用できるので経済的である。また、使用による消し具51の形状変形により、座標入力装置2との電磁誘導による共振特性が変化する恐れがあるため、適宜、消し具51を交換することで、紙データの消去と、筆跡データの消去との整合性を向上させることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、消し具51は、コイル57との距離をほぼ一定に保つ素材で形成されていることが好ましい。例えば、塩基性炭酸カルシウム多孔体等の吸液性多孔体を、消し具51の素材として選択することができる。これにより、シャープペンシルユニット34の芯8による筆跡9に対して、確実に消去することができると共に、消しカスがでない(重量変化しない)消し具51とすることができる。このように、消し具51による消去作業によっても、消し具51の形状を略一定に保つことができるため、コイル57との距離をほぼ一定に保つことができる。このため、座標入力装置2との電磁誘導による共振特性は変化せず、紙データと筆跡データとの整合性をより向上させることができる。
【0090】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0091】
例えば、電子ペン3、4と電子消し具5とを、同時に使用することができる。例えば、ある使用者が電子ペン3、4で用紙に書きながら、他の使用者が用紙に書かれた筆跡9を電子消し具5で消去するような使い方を例示することができる。また、例えば、電子消し具5は、電子ペン3、4の尾部に設けられており、電子ペン3、4と電子消し具5とが一体化していてもよい。
【0092】
また、例えば、座標入力装置2には、
図2に示すブロック図において、時計部が設けられ、記録部2cには時刻情報も加味して記録することができる。例えば、筆跡データと電子消し具5の消去データとを時間に分けて階層的に記録しておくことで、きめ細かいデータ保存を行うことができる。