(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム芯線を有する被覆電線における前記アルミニウム芯線を露出させた端部に巻き付けられて圧着されるバレル部と、接続対象と接続される端子部と、が所定の軸方向に配列された圧着端子であって、
前記バレル部は、前記被覆電線の前記端部が載せられる、前記軸方向に延在する底板部と、当該底板部に対する平面視で前記軸方向と交差する交差方向の両側に前記底板部から延出した内バレル片及び外バレル片と、を有し、圧着時には前記内バレル片を内側にして前記端部に巻き付けられるものであり、
前記外バレル片を前記軸方向に縦断する第1領域、前記アルミニウム芯線よりも前記端子部寄りで前記バレル部の内面を前記交差方向に横断する第2領域、及び前記端部の被覆部分と交差するように前記内面を前記交差方向に横断する第3領域、に亘って設けられ、圧着後に、前記内バレル片と前記外バレル片との間と、筒状となる前記バレル部の前記端子部側の開口と、前記被覆部分と前記バレル部との間と、を密封する粘着ジェルシール部材を備え、
前記バレル部の前記内面には、当該内面に対する平面視で円形又は楕円形の凹部が複数分散して設けられており、
前記粘着ジェルシール部材は、前記第1領域で前記軸方向に帯状に延在する第1シール部分と、前記第2領域で前記交差方向に帯状に延在する第2シール部分と、前記第3領域で前記交差方向に帯状に延在する第3シール部分と、を備えており、
前記第2シール部分及び前記第3シール部分それぞれと、前記第1シール部分と、の間には間隙が開いていることを特徴とする圧着端子。
前記バレル部の前記底板部には、前記被覆電線の前記端部における前記アルミニウム芯線が載せられる位置に凸部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧着端子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について各種説明する。まず、第1実施形態について適宜に変形例を交えながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる圧着端子を説明するための図である。
【0022】
本実施形態における圧着端子1は、アルミニウム芯線W11を有する被覆電線W1におけるアルミニウム芯線W11を露出させた端部W1aに圧着されるものである。圧着端子1は、バレル部11と、端子部12と、シール部材14と、を備えている。尚、
図1では、圧着端子1が2つ示されているが、一方の圧着端子1については、バレル部11の内面形状が目視できるように、シール部材14を除いた状態で示されている。
【0023】
バレル部11及び端子部12は、銅合金等の金属板から打抜き加工と板金加工によって作製され表面に錫メッキや金メッキが施される。バレル部11及び端子部12は、所定の軸方向D11に配列されている。ここで、本実施形態では、バレル部11及び端子部12は、帯板状の連結片1aで圧着端子1の複数個分が繋げられた状態でまとめて形成される。バレル部11は、被覆電線W1の端部W1aに、アルミニウム芯線W11と被覆部分W12とを周方向に包むように巻き付けられて圧着される板状の部位である。端子部12は、接続対象である不図示のピン端子と接続される四角筒状の雌型端子である。
【0024】
バレル部11は、底板部111と、内バレル片112と、外バレル片113と、を有している。底板部111は、上記の軸方向D11に延在する部位である。内バレル片112及び外バレル片113は、底板部111に対する平面視で軸方向D11と交差する交差方向D12の両側に底板部111から延出した部位である。バレル部11は、被覆電線W1の端部W1aへの圧着時には、後述するように内バレル片112を内側に、外バレル片113を外側にして端部W1aに巻き付けられる。
【0025】
ここで、バレル部11の内面11aには、複数の凹部114が分散して設けられている。各凹部114は、バレル部11の内面11aに対する平面視で円形に形成されている。また、バレル部11の底板部111には、被覆電線W1の端部W1aにおけるアルミニウム芯線W11が載せられる位置に外面側からのプレス加工により凸部115が形成されている。複数の凹部114のうちの一部は、この凸部115上にも形成されている。
【0026】
そして、バレル部11の内面11aには、複数の凹部114を平面視で三方から囲むように粘着ジェルシートで形成されたシール部材14が貼付されている。シール部材14は、次のように貼付されている。尚、粘着ジェルシートとしては、例えばアクリル系粘着剤を用いたもの等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
図2は、
図1に示されているシール部材がバレル部の内面に貼付される様子を示す模式図である。
【0028】
シール部材14は、粘着ジェルシートで形成されて、バレル部11の内面11aにおける第1領域11a−1、第2領域11a−2、及び第3領域11a−3、の3つの領域に亘って配置される。第1領域11a−1は、外バレル片113を軸方向D11に縦断する領域である。第2領域11a−2は、端部W1aが載せられたときのアルミニウム芯線W11よりも端子部12寄りで内面11aを交差方向D12に横断する領域である。第3領域11a−3は、端部W1aの被覆部分W12と交差するように内面11aを交差方向D12に横断する領域である。
【0029】
図1及び
図2に示されているように、本実施形態では、シール部材14が、第1シール部分141と、第2シール部分142と、第3シール部分143と、の3つの部分からなる。第1シール部分141は、第1領域11a−1で軸方向D11に帯状に延在する部分である。第2シール部分142は、第2領域11a−2で交差方向D12に帯状に延在する部分である。第3シール部分143は、第3領域11a−3で交差方向D12に帯状に延在する部分である。
【0030】
本実施形態では、シール部材14は、第2領域11a−2から第1領域11a−1を経て第3領域11a−3に至る経路11a−4の中途で分割された状態で貼付されている。具体的には、シール部材14が、第2シール部分142と第3シール部分143との両方が、第1シール部分141と分割された状態で貼付されている。また、第2シール部分142及び第3シール部分143は、何れも上記の経路11a−4を軸方向D11に横切って第1シール部分141と分割された状態で貼付されている。第2シール部分142及び第3シール部分143と、第1シール部分141との間には若干の間隙G11が開いている。
【0031】
また、本実施形態では、バレル部11の内面11aでは、第1領域11a−1、第2領域11a−2、及び第3領域11a−3に、シール部材14と重なるように溝部116が形成されている。溝部116は、第1領域11a−1では、中途で鋸歯状に曲折しつつ軸方向D11に1本が延びている。第2領域11a−2では、交差方向D12に直線状に1本が延びており、第3領域11a−3では、交差方向D12に直線状に3本が延びて第1領域11a−1側で互いに合流している。そして、複数の凹部114は、溝部116を避けて設けられている。
【0032】
第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143は、各々が第1領域11a−1、第2領域11a−2、及び第3領域11a−3の溝部116と重なるように貼付される。ここで、複数の凹部114は、シール部材14と一部が重なるように設けられている。具体的には、
図2に示されているように、最も外バレル片113の縁側の凹部114が、第1領域11a−1と部分的に重なり、最も端子部12側の凹部114が、第2領域11a−2と部分的に重なるように設けられている。その結果、第1領域11a−1に貼付される第1シール部分141及び第2領域11a−2に貼付される第2シール部分142と、一部の凹部114と、が部分的に重なる。
【0033】
以上に説明した圧着端子1は、次のような端子製造方法で製造される。
【0034】
この端子製造方法では、まず、シール部材14の貼付前の構造物を形成する板金加工工程が行われる。板金加工工程では、バレル部11が、端子部12とともに金属板から形成される。上述したように、本実施形態では、この板金加工工程において、バレル部11及び端子部12が、帯板状の連結片1aで圧着端子1の複数個分が繋げられた状態でまとめて形成される。この板金加工工程では、バレル部11の内面11aにおける複数の凹部114の形成、凸部115の形成、及び溝部116の形成も行われる。
【0035】
続いて、粘着ジェルシートでシール部材14を形成するとともに、シール部材14を、第1領域11a−1、第2領域11a−2、及び第3領域11a−3、に亘って貼付するシール部材貼付工程が行われる。このシール部材貼付工程は、第2領域11a−2から第1領域11a−1を経て第3領域11a−3に至る経路11a−4の中途で分割された状態でシール部材14を貼付する工程である。即ち、上記の第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143が個別にバレル部11の内面11aに貼付される。
【0036】
また、シール部材貼付工程では、第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143について、粘着ジェルシートから型抜きされるとともに、バレル部11の内面11aに貼付される。各シール部分の型抜き用カッターで、バレル部11の内面11aにおける各貼付箇所に向かって粘着ジェルシートを型抜きつつ貼付箇所へと押し付けることで、型抜きと貼付とがほぼ同時に行われる。
【0037】
このように製造された圧着端子1は、被覆電線W1の端部W1aに次のように圧着される。
【0038】
図3は、
図1及び
図2に示されている圧着端子について、被覆電線の端部に圧着するための準備が整うまでの手順を示す図であり、
図4は、
図3に示されている手順に続いて圧着端子が被覆電線の端部に圧着されるまでの手順を示す図である。
【0039】
図3には、上述した端子製造方法における板金加工工程(S11)及びシール部材貼付工程(S12)も示されている。板金加工工程(S11)で、バレル部11及び端子部12が形成され、シール部材貼付工程(S12)で、シール部材14をなす第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143が貼付される。
【0040】
被覆電線W1の端部W1aに圧着するに当たっては、まず、
図1に示されている連結片1aから圧着対象の圧着端子1が切り離される。そして、そのバレル部11について、被覆電線W1の端部W1aを載せるための準備として、湾曲変形が行われる(S13)。この湾曲変形は、内バレル片112と外バレル片113とを互いに近づけて、軸方向D11と交差する断面が、略U字型となるように行われる。
【0041】
続いて、湾曲変形後のバレル部11に被覆電線W1の端部W1aが載せられる(S14)。このときには、アルミニウム芯線W11の先端が、第2シール部分142に重ならないように端部W1aが載せられる。尚、多少であれば、アルミニウム芯線W11の先端と、第2シール部分142と、の重なりは許容される。続いて、内バレル片112を内側にして外バレル片113が重ねられるようにバレル部11が端部W1aに巻き付けられて圧着される(S15)。
【0042】
このような圧着により、シール部材14が、次のように圧着端子1の各所を密封する。
【0043】
図5は、
図4にも示されている圧着後の圧着端子を示す図である。
図6は、
図5中のV11−V11線断面、V12−V12線断面、及びV13−V13線断面における、圧着作業中の変化を示す図である。
【0044】
圧着作業の第1段階(S151)では、凸部115上のアルミニウム芯線W11と、その近傍の被覆部分W12とに巻き付くように内バレル片112と外バレル片113の曲げ加工が開始される。このとき、第1シール部分141がアルミニウム芯線W11に接し、第3シール部分143が被覆部分W12に接し、第2シール部分142の大部分は何れとも略接しないような位置関係となる。巻き付きが若干進んだ第2段階(S152)及び第3段階(S153)では、バレル部11が筒状となる。そして、第1シール部分141が内バレル片112と外バレル片113との間に挟まれ、第3シール部分143が被覆部分W12とバレル部11との間に挟まれた状態で延ばされていく。
【0045】
アルミニウム芯線W11等に圧力が掛かる第4段階(S154)、第5段階(S155)、及び第6段階(S156)で、アルミニウム芯線W11に、複数の凹部114の縁が食い込んでいく。また、このときには、アルミニウム芯線W11の下部に位置する凸部115によってアルミニウム芯線W11の素線がばらされて拡がり、バレル部11とこれらの素線との接触本数が増加する。同時にシール部材14の延びも進行する。
【0046】
ここで、上述したように、本実施形態では、第2シール部分142及び第3シール部分143と、第1シール部分141との間には若干の間隙G11が開いている。この間隙G11が、圧着時の上記のシール部材14の延びにより塞がる。
【0047】
図7は、
図2に示されている第2シール部分及び第3シール部分と、第1シール部分との間の間隙が、圧着時のシール部材の延びにより塞がる様子を示す模式図である。
【0048】
この
図7に示されているように、圧着時には、第2シール部分142及び第3シール部分143が、その長さ方向と一致する交差方向D12に延ばされる。この延びにより、第2シール部分142及び第3シール部分143が、第1シール部分141と繋がり、上記の間隙G11が塞がる。
【0049】
次に、第6段階(S156)において、内バレル片112と外バレル片113との間と、筒状のバレル部11の端子部12側の開口11bと、被覆部分W12とバレル部11との間と、が延ばされたシール部材14によって密封される。
【0050】
図8は、圧着後に圧着端子のバレル部における各所をシール部材が密封している様子を、
図5中のV14−V14線断面で示す図である。この
図8に示されているように、内バレル片112と外バレル片113との間は第1シール部分141によって密封され、バレル部11の端子部12側の開口11bは第2シール部分142によって密封される。また、被覆部分W12とバレル部11との間が第3シール部分143によって密封される。
【0051】
このとき、本実施形態では、圧着後のバレル部11において主として圧力が掛かる
図8中上下方向の寸法(以後、クリンプハイトCH11と呼ぶ)が、次のような寸法に設定される。即ち、ある程度の厚みと幅のある粘着ジェルシートで形成されたシール部材14の一部が、バレル部11の開口11bから突出する程度に筒状のバレル部11を潰す寸法に設定される。クリンプハイトCH11をこのような寸法とすることで、バレル部11の開口11bが高いレベルで密封されることとなっている。また、シール部材14の一部は、バレル部11における被覆電線W1の延出側においても、被覆部分W12とバレル部11との間から一部が突出して当該箇所を高いレベルで密封している。言い換えると、シール部材14をなす第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143の各部分の幅等の寸法は、圧着後のこのような密封に必要十分な寸法となっている。
【0052】
また、シール部材14における各部分を、バレル部11の開口11bや被覆電線W1の延出側から突出する寸法で形成することで、圧着後にこれらの箇所が確かにシール部材14で密封されていることを目視確認することが可能となっている。
【0053】
図9は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第1変形例の圧着端子を示す図であり、
図10は、
図9に示されている第1変形例の圧着端子の、
図8と同様の断面を示す図である。尚、
図9及び
図10では、
図1〜
図8に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図1〜
図8と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を省略する。
【0054】
この第1変形例の圧着端子2は、圧着後のバレル部21における端子部12側(以後、前端部211と呼ぶ)のクリンプハイトCH21が、アルミニウム芯線W11の圧着部212のクリンプハイトCH22よりも大きくなるように圧着される。この場合であっても前端部211のクリンプハイトCH21は、バレル部11の開口11bからシール部材14の一部が突出して高いレベルで密封される寸法となっている。シール部材14をなす第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143の各部分の幅等の寸法は、圧着後のこのような密封に必要十分な寸法に形成されている。そして、圧着部212のクリンプハイトCH22を上記のように相対的に小さくすることで、アルミニウム芯線W11の圧着を強化し、圧着端子2との接触信頼性を向上させている。
【0055】
以上に説明した本実施形態の圧着端子1では、圧着によって、バレル部11の内面11aに設けられた各凹部114の縁がアルミニウム芯線W1aに食い込むことで被覆電線W1と圧着端子1との良好な導通が得られる。そして、粘着ジェルシートで形成されたシール部材14がバレル部11の内面11aに貼付されている。このシール部材14が、圧着後に、内バレル片112と外バレル片113との間と、筒状となるバレル部11の端子部12側の開口11bと、被覆部分W12とバレル部11との間と、を密封する。このシール部材14により、アルミニウム芯線W1aとバレル部11の内面11aとの異種金属接触となる接触部位に対する防水性が確保される。ここで、本実施形態の圧着端子1では、このシール部材14が、上記の第2領域11a−2から第1領域11a−1を経て第3領域11a−3に至る経路11a−4の中途で分割された状態で貼付されている。即ち、防水性を得るために上記のような経路11a−4を辿って複雑な形状となりがちなシール部材14が、分割された個々のピースごとに貼付される。
【0056】
図11は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第2変形例の圧着端子を説明するための図であり、
図12は、
図11に示されているシール部材がバレル部の内面に貼付される様子を示す模式図である。尚、
図11及び
図12でも、
図1〜
図8に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図1〜
図8と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を省略する。また、
図11でも、圧着端子3が2つ示されているが、一方の圧着端子3については、バレル部11の内面形状が目視できるように、シール部材34を除いた状態で示されている。
【0057】
この第2変形例の圧着端子3では、シール部材34が、分割されておらず、第1シール部分341から2本の腕状に第2シール部分342と第3シール部分343とが延出して一体に繋がった平面視でC字状に形成されたものとなっている。このシール部材34が、バレル部11の内面11aにおける溝部116と、複数の凹部114のうちの一部と重なる平面視でC字状の領域11a−5に貼付される。圧着時には、第1シール部分341が内バレル片112と外バレル片113との間を密封し、第2シール部分342が筒状のバレル部11の端子部12側の開口を密封し、第3シール部分343が被覆部分W12とバレル部11との間を密封する。
【0058】
この第2変形例に比べれば、上述した第1実施形態の圧着端子1では、3分割された個々のピースごとに貼付されるシール部材14の貼付作業が容易なものとなる。このように、本実施形態の圧着端子1によれば、アルミニウム芯線W1aとの接触部位に対する防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0059】
また、本実施形態の圧着端子1では、このシール部材14が予め厚みの決まった粘着ジェルのシートであるので、シール部材14の面積により、上記のような箇所を過不足なく密封するためのジェルの量を製造時に容易かつ正確に調整することができる。本実施形態の圧着端子1によれば、この意味においても、例えばゲル状の樹脂材料をシール用に塗付すること等に比べて、高いレベルで防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0060】
ここで、本実施形態の圧着端子1では、分割されたシール部材14は、
図7を参照して上述したように圧着により延ばされて繋がるものとなっているが、圧着による延び率は、軸方向D11よりも交差方向D12の方が大きくなる。本実施形態の圧着端子1では、シール部材14が、上記の経路11a−4を軸方向D11に横切って分割されているので、圧着時には、延び率の大きな交差方向D12の延びにより分割箇所が繋がることとなる。従って、一層高い防水性を確保することができる。
【0061】
また、本実施形態の圧着端子1では、シール部材14が、第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143の全てが1本の帯状という非常に単純な形状で貼付されることとなる。これにより、本実施形態の圧着端子1によれば、製造上の困難さを更に緩和することができる。
【0062】
また、本実施形態の圧着端子1では、バレル部11の内面11aには、シール部材14と重なるように溝部116が形成されており、複数の凹部114は、溝部116を避けて設けられている。これにより、圧着時に掛かる圧力によるシール部材14の動きが、シール部材14と重なる溝部116によって抑制される。従って、本実施形態の圧着端子1によれば、より高いレベルで防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0063】
また、バレル部11の内面11aに設けられる溝部116は、次のような点でも、高いレベルでの防水性の確保に寄与する。
【0064】
図13は、バレル部の内面に設けられる溝部が、高いレベルでの防水性の確保に寄与することを説明するための比較例として、バレル部の内面に溝部が設けられていない例を示す模式図である。また、
図14は、バレル部の内面に設けられる溝部が、高いレベルでの防水性の確保に寄与することを
図13の例と対比して示す図である。
【0065】
図13に示されている比較例では、外バレル片113’に貼付されているシール部材14が、圧着時に内バレル片112’の縁によって片側に寄せられる場合がある。これに対し、シール部材14と重なるように溝部116が設けられていると、
図14に示されているように、シール部材14が仮に片側に寄せられたとしても、少なくとも溝部116の内部に一部が確保される。これにより、バレル部11の内面11aに設けられる溝部116は、高いレベルでの防水性の確保に寄与することとなっている。
【0066】
また、
図1及び
図2を参照して説明した第1実施形態の端子製造方法によれば、シール部材14を分割した状態で貼付するので、アルミニウム芯線W1aとの接触部位に対する防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。また、本実施形態の端子製造方法によれば、粘着ジェルシートでシール部材14を形成することから、高いレベルで防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0067】
ここで、本実施形態の圧着端子1では、上述したように、圧着によって、バレル部11の内面11aに設けられた各凹部114の縁がアルミニウム芯線W11に食い込むことで被覆電線W1と圧着端子1との良好な導通が得られる。即ち、バレル部11の内面11aには、凹部114が複数分散して設けられセレーションが形成されているといえる。セレーションにおける導通の程度は、単位面積当たりでアルミニウム芯線W11に食い込む部分の長さの合計によって決まる。
【0068】
図15は、
図1〜
図8に示されている圧着端子において、アルミニウム芯線との導通の程度が、単位面積当たりでアルミニウム芯線に食い込む部分の長さの合計によって決まることを示す模式図である。
【0069】
圧着端子1では、アルミニウム芯線W11に食い込む部分の長さの合計が、円形に形成された凹部114の周長の合計となる。他方、例えば
図49に示されているセレーション74をなす溝741では、直線状に延在する溝741の縁の長さの合計となるが、単位面積当たりで見た場合、この合計は、円形に形成された複数の凹部114の周長の合計の方が長くなる。言い換えると、本実施形態の圧着端子1によれば、被覆電線W11と圧着端子1との良好な導通を得るのに必要なセレーションの領域を、例えば
図49に示されている従来の圧着端子7等に比べて抑えることができる。そして、セレーションの領域が抑えられる分、アルミニウム芯線W11との接触部位に対する防水性を確保するためにシール部材14を設けるスペースを広くとることが可能となり、製造上の困難さを緩和することができる。つまり、本実施形態の圧着端子1によれば、この点においても、アルミニウム芯線W11との接触部位に対する防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0070】
また、円形の凹部114は、バレル部11の内面11aの面内方向に凹部114を広げようとする力に対する抵抗力が、例えば直線状の溝等に比べて強い。圧着時にバレル部11に掛かる圧力は、まさにバレル部11の内面11aの面内方向に働く力であり、本実施形態の圧着端子1では、このような圧力に対する各凹部における抵抗力が強い。
【0071】
図16は、圧着時にバレル部に掛かる圧力を示す模式図である。
【0072】
この
図16に示されているように、圧着時には、不図示のプレス装置等により、圧着端子1のバレル部11を押し潰そうとする力F11がバレル部11に掛かる。このような力F11が掛かると、バレル部11には、内面11aの面内方向に凹部114を広げようとする力F12が発生する。
【0073】
図17は、凹部に替えて直線状の溝が設けられたバレル部を比較例に挙げ、圧着時にバレル部に発生する力による影響について説明する図である。尚、この
図17では、
図1〜
図8に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図1〜
図8と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を省略する。
【0074】
この
図17の比較例では、セレーションの役割を担うものとして、第1実施形態の圧着端子1における円形の凹部114に替えて、直線状の溝114aが複数並列に設けられている。各溝114aは、軸方向D11と交差する交差方向D12に沿って設けられている。この比較例において
図16に示されているような面内方向の力F12が掛かると、各溝114aは、その幅が広がった変形溝114a’へと変形する。各溝114aが変形溝114a’へと変形することで、バレル部11’は軸方向D11に延びることとなる。この場合、バレル部11’に設けられるシール部材14も追随して延ばされるが、この延びが大き過ぎると、例えば、内バレル片112と外バレル片113との間のシール部材14等において、シール部材14のムラ等が生じ、防水性を低下させる恐れがある。
【0075】
この比較例に対し、第1実施形態の圧着端子1では、内面11aの面内方向に凹部114を広げようとする力F12に対する抵抗力が強い。
【0076】
図18は、第1実施形態の圧着端子では、凹部を広げようとする力に対する抵抗力が強いことについて説明する図である。
【0077】
円形の凹部114では、その内周面の大部分が、力F12に対して斜めに交差することとなり、凹部114を広げる変形を抑える働きをする。これにより、本実施形態の圧着端子1では、圧着時に掛かる圧力F11によるバレル部11の延びが抑制される。その結果、シール部材14における延びも抑制されることとなり、高いレベルで防水性を確保することができる。本実施形態の圧着端子1によれば、この意味においても、アルミニウム芯線W1aとの接触部位に対する防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。
【0078】
以下、第1実施形態の圧着端子1に対する上述した第1変形例及び第2変形例の他の変形例として、バレル部11の内面11aに設けられる凹部114の変形例について説明する。
【0079】
図19は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第3変形例における凹部を示す図である。また、
図20は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第4変形例における凹部を示す図である。また、
図21は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第5変形例における凹部を示す図である。
【0080】
図19に示されている第3変形例における凹部114bは、平面視で楕円形に形成されたものである。また、
図20に示されている第4変形例における凹部114cは、平面視で平行四辺形に形成されたものである。また、
図21に示されている第5変形例における凹部114dは、平面視で六角形に形成されたものである。
【0081】
第1実施形態の圧着端子1における凹部114に対する変形例としては、この他にも平面視で三角形や他の多角形に形成された等が挙げられる。これら何れの変形例も、
図17に示されている直線状の溝114aと比較すれば、内面11aの面内方向に広げようとする力F12に対する抵抗力が強い。尚、第3変形例における楕円形の凹部114bについては、第1実施形態における円形の凹部114と同程度の強さを有する。他方、第4変形例における平行四辺形の凹部114cや、第5変形例における六角形の凹部114dについては、第1実施形態における円形の凹部114や第3変形例における楕円形の凹部114bに比べれば抵抗力が弱くなる。
【0082】
ここで、第1実施形態の圧着端子1では、上述したように、バレル部11の内面11aに設けられた複数の凹部114の一部がシール部材14と重なる。第1実施形態の圧着端子1は、この点において、以下のような有利な点を有している。
【0083】
図22は、複数の凹部の一部がシール部材と重なることによる有利な点について説明する図である。
【0084】
第1実施形態の圧着端子1では、シール部材14のうち、まず、外バレル片113側に貼付される第1シール部分141が、複数の凹部114のうち、最も外バレル片113の縁側に位置する凹部114−1と部分的に重なる。これにより、第1シール部分141と重なる位置の凹部114−1を、バレル部11の内面11aに第1シール部分141を設ける際の目印として利用することができる。また、端子部12側に貼付される第2シール部分142も、最も端子部12側に位置する凹部114−1と部分的に重なる。これにより、第2シール部分142と重なる位置の凹部114−1を、バレル部11の内面11aに第2シール部分142を設ける際の目印として利用することができる。本実施形態の圧着端子1によれば、これらの点において製造上の困難さを緩和することができる。また、第1シール部分141や第2シール部分142と重なる凹部114−1は、圧着時に掛かる圧力による第1シール部分141や第2シール部分142の動きを抑制し、より高いレベルでの防水性の確保にも寄与する。このように、本実施形態の圧着端子1によれば、アルミニウム芯線W11との接触部位に対する防水性を確保しつつも、被覆電線W1と圧着端子1との良好な導通のために設けられる凹部114の一部を利用することで、製造上の困難さを緩和することができる。
【0085】
また、第1実施形態の圧着端子1によれば、圧着時に掛かる圧力によるシール部材14の動きが、シール部材14と重なる溝部116によっても抑制される。第1実施形態の圧着端子1によれば、この点において、より高いレベルで防水性を確保しつつも製造上の困難さを緩和することができる。また、シール部材14と重なる溝部116についても、バレル部11の内面11aにシール部材14を設ける際の目印として利用することができ、この点において製造上の困難さを一層緩和することができる。
【0086】
更に、第1実施形態の圧着端子1では、上述したように、複数の凹部114によってセレーションを形成することで、高い導通の程度を確保していることから、シール部材14が多少大目に凹部114と重なったとしても、導通への影響が小さい。このため、シール部材14の貼付に当たって、位置合わせをそれ程厳密に行う必要がなく、この点においても製造上の困難さを一層緩和することができる。
【0087】
次に、第1実施形態の圧着端子1に対する上述した第1変形例〜第5変形例の他の変形例として、バレル部11の内面11aに貼付されるシール部材14の形状の変形例について説明する。
【0088】
図23は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第6変形例を示す図である。尚、この第6変形例では、シール部材の形状だけでなく、凹部の形状も、第1実施形態の圧着端子1とは異なっている。また、
図23では、
図1〜
図8に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図1〜
図8と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を省略する。
【0089】
この第6変形例の圧着端子4では、まず、バレル部41の内面41aに設けられる凹部414が、
図20に第4変形例として示した平面視で平行四辺形の凹部となっている。
【0090】
そして、この第6変形例におけるシール部材44は、第2シール部分442及び第3シール部分443が、何れも上記の経路11a−4を、交差方向D12に横切って第1シール部分441と分割されている。第2シール部分442及び第3シール部分443と、第1シール部分441との間には若干の間隙G41が軸方向D11に開いている。この間隙G41が、圧着時の上記のシール部材44の延びにより塞がる。
【0091】
図24は、
図23に示されている第2シール部分及び第3シール部分と、第1シール部分との間の間隙が、圧着時のシール部材の延びにより塞がる様子を示す模式図である。
【0092】
この
図24に示されているように、圧着時には、第1シール部分441が、その長さ方向と一致する軸方向D11に延ばされる。この延びにより、第2シール部分442及び第3シール部分443が、第1シール部分441と繋がり、上記の間隙G41が塞がる。尚、圧着時の延び率については、軸方向D11よりも交差方向D12の方が大きくなる。このため、延びの程度は、
図7等を参照して説明した第1実施形態の場合と比較すると小さくなるが、貼付時に生じる間隙G41を適宜に調節することにより、圧着時に間隙G41を塞いで高いレベルの防水性を確保することができる。
【0093】
次に、第1実施形態におけるシール部材14の形状に対する更なる変形例について説明する。
【0094】
図25は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第7変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図26は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第8変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図27は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第9変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図28は、
図1〜
図8に示されている第1実施形態の圧着端子に対する第10変形例におけるシール部材を示す図である。
【0095】
図25に示されている第7変形例におけるシール部材44aは、第1シール部分441aと第2シール部分442aとが分割されて、交差方向D12の間隙G41aが開いている。他方、第1シール部分441aと第3シール部分443aとは繋がっており、両者で平面視でL字状に形成されている。つまり、このシール部材44aは、2分割状態となっている。圧着時には、第2シール部分442aが交差方向D12に延ばされる。この延びにより、第2シール部分442aが、第1シール部分441aと繋がり、上記の間隙G41aが塞がる。
【0096】
図26に示されている第8変形例におけるシール部材44bは、第1シール部分441bと第2シール部分442bとが分割されて軸方向D11の間隙G41bが開いている。他方、第1シール部分441bと第3シール部分443bとは繋がっており、両者で平面視でL字状に形成されている。圧着時には、第1シール部分441bが軸方向D11に延ばされる。この延びにより、第1シール部分441bが、第2シール部分442bと繋がり、上記の間隙G41bが塞がる。
【0097】
図27に示されている第9変形例におけるシール部材44cは、第1シール部分441cと第3シール部分443cとが分割されて交差方向D12の間隙G41cが開いている。他方、第1シール部分441cと第2シール部分442cとは繋がっており、両者で平面視で逆L字状に形成されている。圧着時には、第3シール部分443cが交差方向D12に延ばされる。この延びにより、第3シール部分443cが、第1シール部分441cと繋がり、上記の間隙G41cが塞がる。
【0098】
図28に示されている第10変形例におけるシール部材44dは、第1シール部分441dと第3シール部分443dとが分割されて軸方向D11の間隙G41dが開いている。他方、第1シール部分441dと第2シール部分442dとは繋がっており、両者で平面視で逆L字状に形成されている。圧着時には、第1シール部分441dが軸方向D11に延ばされる。この延びにより、第1シール部分441dが、第3シール部分443dと繋がり、上記の間隙G41dが塞がる。
【0099】
以上で、第1実施形態について、その変形例も含めた説明を終了し、次に、第2実施形態について、その変形例とともに説明する。この第2実施形態は、バレル部の内面に設けられる複数の凹部が第1実施形態と異なっている。以下では、第2実施形態について、第1実施形態との相違点に注目して説明を行う。
【0100】
図29は、本発明の第2実施形態にかかる圧着端子を説明するための図である。
図30は、
図29に示されているシール部材がバレル部の内面に貼付される様子を示す模式図である。尚、
図29及び
図30では、
図1〜
図8に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図1〜
図8と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を省略する。また、
図29でも、圧着端子5が2つ示されているが、一方の圧着端子5については、バレル部51の内面形状が目視できるように、シール部材14を除いた状態で示されている。
【0101】
本実施形態における圧着端子5では、バレル部51の内面51aには、第1領域51a−1、第2領域51a−2、及び第3領域51a−3を含む略全域に亘って複数の凹部514が分散して設けられている。この内面51aには、アルミニウム芯線W11が載せられる位置に外面側からのプレス加工により凸部515も形成されている。第1領域51a−1は、外バレル片513を軸方向D11に縦断する領域である。第2領域51a−2は、アルミニウム芯線W11よりも端子部12寄りで、底板部511を含むバレル部51の内面51aを、交差方向D12に内バレル片512側と外バレル片513側との間に亘って横断する領域である。また、第3領域51a−3は、端部W1aの被覆部分W12と交差するように内面51aを、交差方向D12に内バレル片512側と外バレル片513側との間に亘って横断する領域である。
【0102】
そして、第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143からなるシール部材14が、第1領域51a−1、第2領域51a−2、及び第3領域51a−3それぞれの凹部514と重なるように貼付されている。第2シール部分142及び第3シール部分143は、第1シール部分141との間には、第2領域51a−2から第1領域51a−1を経て第3領域51a−3に至る経路51a−4を軸方向D11に横切る間隙G11が開いている。
【0103】
以上に説明した圧着端子5は、次のような端子製造方法で製造される。
【0104】
この端子製造方法では、まず、シール部材14の貼付前の構造物を形成する板金加工工程が行われる。板金加工工程では、バレル部51が、端子部12とともに金属板から形成される。本実施形態でも、この板金加工工程において、バレル部51及び端子部12は、帯板状の連結片5aで圧着端子5の複数個分が繋げられた状態でまとめて形成される。この板金加工工程では、バレル部51の内面51aにおける複数の凹部514の形成、及び凸部515の形成も行われる。
【0105】
続いて、粘着ジェルシートでシール部材14を形成するとともに、シール部材14を、第1領域51a−1、第2領域51a−2、及び第3領域51a−3、に亘って貼付するシール部材貼付工程が行われる。このシール部材貼付工程は、上記の経路51a−4の中途で分割された状態でシール部材14を貼付する工程である。即ち、上記の第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143が個別にバレル部51の内面51aに貼付される。
【0106】
本実施形態でもシール部材貼付工程では、上述した第1実施形態と同様に、第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143について、粘着ジェルシートから型抜きされるとともに、バレル部51の内面51aに貼付される。
【0107】
このように製造された圧着端子5は、被覆電線W1の端部W1aに次のように圧着される。
【0108】
図31は、
図29及び
図30に示されている圧着端子について、被覆電線の端部に圧着するための準備が整うまでの手順を示す図であり、
図32は、
図31に示されている手順に続いて圧着端子が被覆電線の端部に圧着されるまでの手順を示す図である。
【0109】
図31には、上述した端子製造方法における板金加工工程(S51)及びシール部材貼付工程(S52)も示されている。板金加工工程(S51)で、バレル部51及び端子部12が形成され、シール部材貼付工程(S52)で、シール部材14をなす第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143が貼付される。
【0110】
被覆電線W1の端部W1aに圧着するに当たっては、まず、
図29に示されている連結部5aから圧着対象の圧着端子5が切り離される。そして、そのバレル部51について、被覆電線W1の端部W1aを載せるための準備として、湾曲変形が行われる(S53)。この湾曲変形は、内バレル片512と外バレル片513とを互いに近づけて、軸方向D11と交差する断面が、略U字型となるように行われる。
【0111】
続いて、湾曲変形後のバレル部51に被覆電線W1の端部W1aが載せられる(S54)。このときには、アルミニウム芯線W11の先端が、第2シール部分142に重ならないように端部W1aが載せられる。尚、多少であれば、アルミニウム芯線W11の先端と、第2シール部分142と、の重なりは許容される。続いて、内バレル片512を内側にして外バレル片513が重ねられるようにバレル部51が端部W1aに巻き付けられて圧着される(S55)。
【0112】
このような圧着により、シール部材14が、次のように圧着端子5の各所を密封する。
【0113】
図33は、
図32にも示されている圧着後の圧着端子を示す図である。
図34は、
図33中のV51−V51線断面、V52−V52線断面、及びV53−V53線断面を示す図である。また、
図35は、
図33中のV54−V54線断面を示す図である。
【0114】
本実施形態では、第1実施形態における溝部116の役割を、シール部材14と重なる凹部514が担っている。圧着に際しては、圧着時に掛かる圧力によるシール部材14の動きが、シール部材14と重なる凹部514によって抑制される。圧着の際に、シール部材14における第2シール部分142及び第3シール部分143と、第1シール部分141との間の間隙G11が、第2シール部分142及び第3シール部分143の交差方向D11の延びによって繋がる。圧着後には、内バレル片512と外バレル片513との間が、シール部材14の第1シール部分141で密封される。また、筒状のバレル部51の端子部12側の開口51bが第2シール部分142で密封され、被覆部分W12とバレル部51との間が第3シール部分143で密封される。
【0115】
また、圧着後のバレル部51におけるクリンプハイトCH51は、シール部材14の一部が、バレル部51の開口51bから突出する程度に筒状のバレル部51を潰す寸法に設定される。これにより、バレル部51の開口51bが高いレベルで密封されることとなっている。また、シール部材14の一部は、バレル部51における被覆電線W1の延出側においても、被覆部分W12とバレル部51との間から一部が突出して当該箇所を高いレベルで密封している。シール部材14をなす第1シール部分141、第2シール部分142、及び第3シール部分143の各部分の幅等の寸法は、圧着後のこのような密封に必要十分な寸法に形成されている。また、バレル部51の開口51bや、その反対側からのシール部材14の突出により、それらの箇所での密封を目視確認することが可能となっている。
【0116】
以上に説明した第2実施形態の圧着端子5では、圧着によって、バレル部51の内面51aに設けられた各凹部514の縁がアルミニウム芯線W11に食い込むことで被覆電線W1と圧着端子5との良好な導通が得られる。そして、バレル部51の内面に設けられた複数の凹部514の一部が、アルミニウム芯線W11との接触部位に対する防水性を確保するためのシール部材14と重なる。このため、シール部材14と重なる位置の凹部514を、バレル部51の内面51aにシール部材14を設ける際の目印として利用することができ、この点において製造上の困難さを緩和することができる。また、シール部材14と重なる凹部514は、圧着時に掛かる圧力によるシール部材14の動きを抑制し、より高いレベルでの防水性の確保にも寄与する。このように、本実施形態の圧着端子5によれば、アルミニウム芯線W11との接触部位に対する防水性を確保しつつも、被覆電線W1と圧着端子5との良好な導通のために設けられる凹部514の一部を利用することで、製造上の困難さを緩和することができる。
【0117】
また、本実施形態の圧着端子5によれば、バレル部51の内面形状が、略全域に亘って複数の凹部514が分散して設けられているというように単純化されているので、バレル部51の成形について製造上の困難さを一層緩和することができる。また、シール部材14を設けるに当たっては、凡そバレル部51の外周に沿って設ければ、多少傾いている等といった状態になったとしても、シール部材14と凹部514が重なるように設けることができる。即ち、シール部材14を設けるに当たって、それほど高い位置精度が不要となるので、この点においても、製造上の困難さを一層緩和することができる。
【0118】
次に、第2実施形態の圧着端子5に対する変形例として、バレル部51に貼付されるシール部材14の貼り方や形状についての変形例について説明する。
【0119】
図36は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第1変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図37は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第2変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図38は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第3変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図39は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第4変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図40は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第5変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図41は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第6変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図42は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第7変形例におけるシール部材を示す図である。
【0120】
図36に示されている第1変形例におけるシール部材54aは、第2シール部分542a及び第3シール部分543aと、第1シール部分541aとの間に、軸方向D11の間隙G51aが開いている。この第1変形例では、圧着時に、第1シール部分541aが軸方向D11に延びて間隙G51aを塞いで高いレベルの防水性を確保することができる。
【0121】
図37に示されている第2変形例におけるシール部材54bでは、第1シール部分541bが短めに形成され、シール部材54b全体が、第1変形例に比べると端子部12寄りに偏った位置に貼付される。第2変形例でも、第2シール部分542b及び第3シール部分543bと、第1シール部分541bとの間に軸方向D11の間隙G51bが開いており、圧着時の延びによって間隙G51bが塞がる。この第2変形例では、シール部材54bで密封される領域が狭くはなるが、その貼付位置は、アルミニウム芯線W11とバレル部51との接触部位に対する防水性が得られる位置に設定されていることが前提となっている。この第2変形例は、その上で、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることによる貼付位置の自由度の高さに基づいて、シール部材54bの貼付位置を設定したものである。この第2変形例によれば、第1シール部分541bを短くした分、粘着ジェルシートの使用量を抑えて、コストの低減を図ることができる。
【0122】
図38に示されている第3変形例におけるシール部材54cは、第2シール部分542c及び第3シール部分543cと、第1シール部分541cとの間に、交差方向D12の間隙G51cが開いている。この間隙G51cは、圧着時に、第2シール部分542c及び第3シール部分543cが交差方向D12に延びて塞がる。また、この第3変形例では、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることによる貼付位置の自由度の高さに基づいて、第3シール部分543cの貼付位置が、端子部12寄りに偏った位置となっている。
【0123】
図39に示されている第4変形例におけるシール部材54dは、上述した第3変形例を変形したものとなっており、第1シール部分541dを短くし、第2シール部分542d及び第3シール部分543dの長さを略同じ長さとしたものである。
【0124】
図40に示されている第5変形例におけるシール部材54eは、第2シール部分542e及び第3シール部分543eと、第1シール部分541eとの間に、交差方向D12の間隙G51eが開いている。この間隙G51eは、圧着時に、第2シール部分542e及び第3シール部分543eが交差方向D12に延びて塞がる。また、この第5変形例では、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることによる貼付位置の自由度の高さに基づいて、第1シール部分541eが傾いて貼付されたものとなっている。
【0125】
図41に示されている第6変形例におけるシール部材54fは、
図36に示されている第1変形例を変形したものとなっており、第1シール部分541fを短くしたものである。また、この第6変形例では、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることによる貼付位置の自由度の高さに基づいて、第2シール部分542fが傾いて貼付されたものとなっている。第3シール部分543fは、
図36の第1変形例と同等なものとなっている。
【0126】
図42に示されている第7変形例におけるシール部材54gも、
図36に示されている第1変形例を変形したものである。この第7変形例では、第1シール部分541gが短くなり、第2シール部分542gが長くなっている。また、第3シール部分543gが、長くなるとともに幅広に形成されている。
【0127】
以上、様々な変形例を挙げたように、第2実施形態の圧着端子5では、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることにより、シール部材について、その貼り方や形状を高い自由度で適宜設定することが可能となっている。
【0128】
続いて、第2実施形態の圧着端子5に対する更なる変形例について説明する。
【0129】
図43は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第8変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図44は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第9変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図45は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第10変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図46は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第11変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図47は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第12変形例におけるシール部材を示す図である。また、
図48は、
図29〜
図35に示されている第2実施形態の圧着端子に対する第13変形例におけるシール部材を示す図である。
【0130】
図43に示されている第8変形例におけるシール部材55aは、分割されておらず、第1シール部分551aから2本の腕状に第2シール部分552aと第3シール部分553aとが延出して一体に繋がった平面視でC字状に形成されたものとなっている。
【0131】
以下に説明する
図44〜
図47に示されている各変形例は、何れも上述した第8変形例を変形したものとなっている。
【0132】
図44に示されている第9変形例におけるシール部材55bは、平面視でC字状のシール部材55bが、
図44中で、時計回りに傾いた状態でバレル部51に貼付されたものとなっている。
【0133】
図45に示されている第10変形例におけるシール部材55cは、平面視でC字状のシール部材55cが、
図45中で、反時計回りに傾いた状態でバレル部51に貼付されたものとなっている。
【0134】
図46に示されている第11変形例におけるシール部材55dは、短く形成された第2シール部分552dと第3シール部分553dとを第1シール部分551dで繋いだものとなっている。そして、この第11変形例では、シール部材55dが、全体として、バレル部51の内バレル片512寄りに偏った状態で貼付されたものとなっている。
【0135】
図47に示されている第12変形例におけるシール部材55eも、短く形成された第2シール部分552eと第3シール部分553eとを第1シール部分551eで繋いだものとなっている。ただし、この第12変形例では、シール部材55eが、全体として、バレル部51の外バレル片513寄りに偏った状態で貼付されたものとなっている。
【0136】
図48に示されている第13変形例におけるシール部材55fは、短く形成された第1シール部分551fで第2シール部分552fと第3シール部分553fとを繋いだものとなっている。そして、この第13変形例では、シール部材55fが、全体として、バレル部51の端子部12寄りに偏った状態で貼付されたものとなっている。
【0137】
以上、様々な変形例を挙げたように、第2実施形態の圧着端子5では、一体となったシール部材を用いる場合でも、バレル部51の略全面に凹部514が形成されていることにより、その貼り方や形状を高い自由度で適宜設定することが可能となっている。
【0138】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0139】
例えば、上述した実施形態や各種変形例では、バレル部に、外面側からのプレス加工によって凸部が設けられた形態が例示されている。しかしながら、バレル部は、この形態に限るものではなく、この凸部に関しては省略してもよい。ただし、凸部を設けることで、アルミニウム芯線の素線をばらして拡げバレル部との接触本数を増加させることができることは上述した通りである。
【0140】
また、上述した実施形態や各種変形例では、端子部の一例として、何れも、四角筒状の雌型端子としての端子部12を有する圧着端子が例示されている。しかしながら、端子部は、これに限るものではなく、その具体的な形状や接続態様を問うものではない。