特許第6858554号(P6858554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858554
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20210405BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20210405BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B65D47/34 100
   F04B9/14 C
   B05B11/00 102J
   B05B11/00 102E
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-254100(P2016-254100)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104055(P2018-104055A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年7月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−170978(JP,A)
【文献】 特開2003−230854(JP,A)
【文献】 実開平06−015752(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0223647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D39/00−55/16
B05B11/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動自在に配設されたステムと、
前記ステムの上端部に装着され、内容物の吐出孔が形成された吐出ヘッドと、
前記ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、
前記ピストンが上下摺動自在に収容されたシリンダと、
前記ステムから下方に向けて延設され、前記ピストンの内側を上下方向に貫くピストンガイドと、を備え、
前記ステムおよび前記ピストンガイドを前記シリンダに対して下方移動させたときに、前記シリンダ内の内容物が前記ステム内を通して前記吐出孔から吐出される吐出器であって、
前記ピストンが、前記ピストンガイドに上下動自在に外装され、かつ前記ステム内と前記シリンダ内との連通を遮断する閉塞部を有し、
前記閉塞部が、前記ピストンに対する前記ピストンガイドの下方移動時に、前記ステム内と前記シリンダ内とを連通させ、
前記ステムと前記ピストンとの間には、前記ピストンに対する前記ステムおよび前記ピストンガイドの下方移動に伴って、前記ピストンおよび前記ステムにより上下方向の圧縮力が加えられる弾性片が配設され、
前記ピストンには、前記ピストンに対する前記ステムおよび前記ピストンガイドの下方移動に伴って、前記弾性片が摺接する摺接面と、前記摺接面上を摺動した前記弾性片が進入する進入凹部と、が形成され
前記進入凹部は、前記摺接面に対して下方に窪んでいることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
前記弾性片の下端部は、前記摺接面から上方に離間していることを特徴とする請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記摺接面および前記進入凹部は互いに径方向に連なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の吐出器。
【請求項4】
前記摺接面は、前記進入凹部側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びていることを特徴とする請求項3に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、上方付勢状態で下方移動自在に配設されたステムと、ステムの上端部に装着され、内容物の吐出孔が形成された吐出ヘッドと、ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、ピストンが上下摺動自在に収容されたシリンダと、ステムから下方に向けて延設され、ピストンの内側を上下方向に貫く有底筒状のピストンガイドと、を備え、ステムおよびピストンガイドをシリンダに対して下方移動させたときに、シリンダ内の内容物がステム内を通して吐出孔から吐出される吐出器が知られている。
このような吐出器では、まずステムおよびピストンガイドがピストンとともに下方移動し、シリンダの内圧を上昇させ、その後、ステムおよびピストンガイドがピストンに対して下方移動し、シリンダ内の内容物が、ピストンガイドの外周面とピストンの内周面との間、並びにステム内を通して吐出ヘッド内に至り、吐出孔から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−030798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような吐出器では、シリンダの内圧が十分に上昇する前、つまりシリンダ内が十分に蓄圧される前に、ピストンがステムおよびピストンガイドに対して相対的に上方に移動してしまい、内容物が吐出されることがある。このため、吐出される内容物の勢いなどにばらつきが生じてしまうことがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、吐出される内容物の勢いなどの吐出態様を安定させることができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の吐出器は、上方付勢状態で下方移動自在に配設されたステムと、前記ステムの上端部に装着され、内容物の吐出孔が形成された吐出ヘッドと、前記ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、前記ピストンが上下摺動自在に収容されたシリンダと、前記ステムから下方に向けて延設され、前記ピストンの内側を上下方向に貫くピストンガイドと、を備え、前記ステムおよび前記ピストンガイドを前記シリンダに対して下方移動させたときに、前記シリンダ内の内容物が前記ステム内を通して前記吐出孔から吐出される吐出器であって、前記ピストンが、前記ピストンガイドに上下動自在に外装され、かつ前記ステム内と前記シリンダ内との連通を遮断する閉塞部を有し、前記閉塞部が、前記ピストンに対する前記ピストンガイドの下方移動時に、前記ステム内と前記シリンダ内とを連通させ、前記ステムと前記ピストンとの間には、前記ピストンに対する前記ステムおよび前記ピストンガイドの下方移動に伴って、前記ピストンおよび前記ステムにより上下方向の圧縮力が加えられる弾性片が配設され、前記ピストンには、前記ピストンに対する前記ステムおよび前記ピストンガイドの下方移動に伴って、前記弾性片が摺接する摺接面と、前記摺接面上を摺動した前記弾性片が進入する進入凹部と、が形成され、前記進入凹部は、前記摺接面に対して下方に窪んでいることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ステムとピストンとの間に弾性片が配設されているため、ステムをピストンガイドとともに押し下げると、ステムに加えられた押し下げ力が、弾性片を介してピストンに伝えられ、ピストンがステムおよびピストンガイドと一体となって、シリンダに対して下方移動する。これにより、ピストンの閉塞部がステム内とシリンダ内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ内が加圧される。この状態でステムをさらに押し下げると、シリンダの上昇した内圧によりピストンの下方移動が抑止されることとなり、ステムおよびピストンガイドが、ピストンに対して下方移動する。
このため、ステムおよびピストンガイドは、ステムとピストンとの間に配設された弾性片に上下方向の圧縮力を加えて弾性片を弾性変形させ、かつ閉塞部によるステム内とシリンダ内との連通の遮断を解除させた状態で、ピストンに対して下方移動する。これにより、シリンダ内の内容物が、ステム内を通して吐出孔から吐出される。
このように、まずステム、ピストンガイドおよびピストンが一体にシリンダに対して下方移動し、シリンダの内圧をある程度上昇させた後に、弾性片が弾性変形することで、ステムおよびピストンガイドをピストンに対して下方移動させ、ステム内をシリンダ内に対して開放させる。このため、シリンダの内圧が一定以上となってはじめて、内容物を吐出させることができ、吐出される内容物の勢いなどの吐出態様を安定させることができる。これにより、例えば噴霧パターン等を高精度に安定させることができる。
【0008】
特に、ピストンに、摺接面および進入凹部が形成されているので、シリンダの内圧がある程度上昇した後、ステムおよびピストンガイドがピストンに対して下方移動する過程において、摺接面上を弾性変形しつつ摺動した弾性片が、進入凹部に到達した際に、弾性片が進入凹部に進入することとなり、ピストンガイドおよびピストンの上下方向の相対的な位置を、大きくかつ瞬時に変化させることが可能になる。したがって、ステムおよびピストンガイドがピストンに対して下方移動する過程で、ステム内とシリンダ内とを、徐々にではなく瞬時に全開状態で連通させることが可能になり、吐出される内容物の吐出態様を確実に安定させることができる。
【0009】
ここで、前記弾性片の下端部は、前記摺接面から上方に離間してもよい。
この場合、弾性片の下端部が、摺接面から上方に離間しているので、吐出器の不使用時に、弾性片の下端部を無負荷状態に保つことが可能になり、弾性片に癖が付くのを抑えることができる。
【0010】
また、前記摺接面および前記進入凹部は互いに径方向に連なってもよい。
この場合、摺接面および進入凹部が互いに径方向に連なっているので、摺接面上を摺動した弾性片を、引っ掛かり少なく円滑に進入凹部に進入させることができる。
【0011】
また、前記摺接面は、前記進入凹部側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びてもよい。
この場合、摺接面が、進入凹部側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びているので、摺接面上を摺動した弾性片を、より一層引っ掛かり少なく円滑に進入凹部に進入させることができるとともに、弾性片が摺接面上を摺動する際に、弾性片に加えられる負荷を抑えることが可能になり、弾性片に癖が付くのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吐出される内容物の勢いなどの吐出態様を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る一実施形態として示した吐出器に、正倒立両用アダプタが装着された状態を示す縦断面図である。
図2図1に示す吐出器の縦断面図である。
図3図1に示す吐出器の要部を示す拡大図である。
図4図2に示す吐出器であって、ステムおよびピストンガイドをシリンダに対して押し下げた状態を示す縦断面図である。
図5図4に示す吐出器の要部を示す拡大図である。
図6図1に示す正倒立両用アダプタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
吐出器1は、容器本体2の口部3に取り付けられる有頂筒状の装着キャップ11と、上方付勢状態で下方移動自在に配設されたステム12と、ステム12の上端部に装着され、内容物の吐出孔13Aが形成された吐出ヘッド13と、ステム12の上下動に連係する筒状のピストン41と、ピストン41が上下摺動自在に収容されたシリンダ42と、ステム12から下方に向けて延設され、ピストン41の内側を上下方向に貫くピストンガイド43と、を備えている。
なお図示の例では、吐出器1に、後述する正倒立両用アダプタ200が装着されている。
【0016】
ここで、装着キャップ11、ステム12、ピストン41、シリンダ42、およびピストンガイド43は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、中心軸線Oに直交する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。前記平面視において、径方向のうち、吐出ヘッド13の吐出孔13Aが開口する方向を前方といい、その逆方向を後方といい、また、上下方向および前後方向の双方向に直交する方向を左右方向という。
【0017】
装着キャップ11は、中央に開口部11cが形成された円環状の頂壁部11aと、頂壁部11aの外周縁から下方に向けて延びる円筒状の周壁部11bと、を有する。周壁部11bの内周面には、容器本体2の口部3における外周面に形成された雄ネジに螺着する雌ネジが形成されている。
【0018】
ステム12は、容器本体2の口部3に上方付勢状態で下方移動自在に立設されている。
ステム12の下部の内径および外径は、ステム12の上部の内径および外径よりも大きい。ステム12の上部と下部との間には、テーパ状の段筒部12Aが形成されている。
図2および図3に示すように、ステム12とピストン41との間には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、ピストン41およびステム12により上下方向の圧縮力が加えられる弾性片25が配設されている。
【0019】
弾性片25は、表裏面が径方向を向き、上下方向に延びる板状に形成されている。弾性片25は、ステム12の下端開口縁に形成され、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では6つ)配置されている。弾性片25はステム12と一体に形成されている。複数の弾性片25は、互いに同等の形状で同等の大きさで形成されている。弾性片25の径方向の大きさ(厚み)は、ステム12の厚みよりも薄くなっている。なお、ステム12および弾性片25は、弾性片25が一定の力が加えられたときに変形するような、ある程度剛性を有する材質、例えばポリプロピレン等で形成される。
【0020】
吐出ヘッド13は、ステム12の上端部に装着された有頂筒状の装着筒部31と、装着筒部31から前方に向けて突設された筒状のノズル筒部32と、を有している。
装着筒部31は、ステム12内に嵌合されている。装着筒部31の上端部には、左右方向に突出する軸部10Aが形成されている。軸部10Aは左右方向から見て円形状を呈している。装着筒部31の上端部に、後方に向けて突出する被係止部120が形成されている。
【0021】
被係止部120は、左右方向に開口する一対の肉抜き孔121を有するブロック状に形成されている。被係止部120には、後述するストッパー130の規制位置から規制解除位置への移動を抑止するための係合突起122が形成されている。
係合突起122は、被係止部120の後端部から下方に突設されている。係合突起122の下端は、ステム12の上端よりも上方に位置する。係合突起122の後部には、後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる傾斜面122aが形成されている。
【0022】
ノズル筒部32内には、前後方向に延在する芯棒体35と、芯棒体35の前端部に被着された有頂筒状のチップ36と、が配設されている。
芯棒体35の外周面には、前後方向に延びるとともに、ノズル筒部32の内周面との間で内容物の流動を可能とする複数の流路溝部35Aが形成されている。チップ36は、芯棒体35と同軸上に配設されており、内側に芯棒体35が嵌合された円筒状のチップ筒部37と、チップ筒部37の前端部に設けられた端壁部38と、を有している。
【0023】
チップ筒部37は、ノズル筒部32内に嵌合されている。端壁部38は、芯棒体35の前端面に当接している。端壁部38のうち芯棒体35の前端面に当接する後面には、芯棒体35の流路溝部35Aに連通するスピン流路38Aが形成されている。端壁部38の中央部分には、スピン流路38Aに連通する吐出孔13Aが前方に向けて開口している。
チップ36により、内容物を霧状に吐出することができる。また、チップ36およびノズル先端形状等を変更することで、内容物を泡状および直線状等に吐出することが可能となる。例えば、本実施形態のノズル先端にメッシュ等の発泡部材を設けることで、泡状吐出が可能となる。
【0024】
ピストン41は、シリンダ42内に上下摺動自在に嵌合された外筒ピストン51と、外筒ピストン51における径方向の内側に配置され、ピストンガイド43を径方向の外側から囲繞する内筒ピストン52と、外筒ピストン51と内筒ピストン52とを連結する環状連結部53と、を備えている。これら外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53はそれぞれ、中心軸線Oと同軸に配設されている。図示の例では、外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53は一体に形成されている。
【0025】
外筒ピストン51は、図3に示すように、環状連結部53から上方に突出する上筒部51aと、環状連結部53から下方に突出する筒状の摺接部51bと、を備えている。
上筒部51aの外周面は、シリンダ42の内周面に当接若しくは近接している。上筒部51aは、弾性片25との間に径方向の隙間をあけて配設されており、弾性片25を径方向の外側から囲繞している。上筒部51aは、弾性片25の上端よりも上方に位置している。摺接部51bの下端部は、シリンダ42の内周面に当接している。
【0026】
内筒ピストン52は、環状連結部53から上方に突出し、上端部がステム12内に上下摺動自在に嵌合された内筒部52aと、環状連結部53から下方に突出し、ピストンガイド43に上下動自在に外装され、かつステム12内とシリンダ42内との連通を遮断する筒状の閉塞部52bと、を備えている。
【0027】
内筒部52aのうち、ステム12内に位置する上部は、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。内筒部52aは、ピストンガイド43の外周面、および弾性片25と径方向に隙間をあけて配設されている。なお、内筒部52aは、弾性片25と当接していてもよい。
閉塞部52bは、上方から下方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びている。閉塞部52bの下端部は、ピストンガイド43の外周面に当接している。閉塞部52bの下端部は、摺接部51bの下端部より上方に位置している。
【0028】
環状連結部53は、外筒ピストン51および内筒ピストン52それぞれの上下方向の中間部分に配設され、中心軸線Oと同軸に配設された環状をなしている。環状連結部53の上面には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、弾性片25が摺接する摺接面54と、摺接面54上を摺動した弾性片25が進入する進入凹部55と、が形成されている。摺接面54および進入凹部55は、全周にわたって連続して延在している。なお、摺接面54および進入凹部55は、全周にわたって断続的に延在してもよい。
【0029】
弾性片25の下端部は、摺接面54から上方に離間している。摺接面54および進入凹部55は互いに径方向に連なっている。摺接面54は、進入凹部55より径方向の内側に位置している。弾性片25における径方向の内側部分と、摺接面54における径方向の外側部分と、が上下方向で互いに対向し、弾性片25における径方向の外側部分と、進入凹部55における径方向の内側部分と、が上下方向で互いに対向している。摺接面54は、進入凹部55側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。進入凹部55における径方向の幅は、弾性片25の厚さより大きくなっている。進入凹部55の深さは、弾性片25における上下方向の長さより小さくなっている。
【0030】
シリンダ42は、多段の円筒状に形成されており、図2に示されるように、上下方向に延在する大径部62と、大径部62の下端部から下方に向けて延在し、大径部62よりも内径および外径が小さい中径部63と、中径部63の下端部から下方に向けて延在し、中径部63よりも内径および外径が小さい小径部64と、を備える。
【0031】
大径部62の上部に、大径部62の内外を連通させる空気孔62Bが形成されている。大径部62の上端部には、径方向の外側に向けて突出する円環状の支持板部61が形成されている。支持板部61の上面における外周部に、装着キャップ11の頂壁部11aの下面が当接している。支持板部61と容器本体2の口部3における上端開口縁3aとの間に、第1パッキン66が配設されている。装着キャップ11の周壁部11bが、口部3に螺着されることにより、支持板部61および第1パッキン66が、装着キャップ11の頂壁部11aと、口部3と、の間に固定される。これら支持板部61、大径部62、中径部63、および小径部64は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0032】
支持板部61の上面には、上方に向けて延び、かつ装着キャップ11の開口部11cに挿通された立設筒部60が形成されている。立設筒部60の外径および内径は、大径部62の外径および内径よりも大きくなっている。立設筒部60の上端開口縁60Aは、ステム12の段筒部12Aと上下方向において同等の位置に位置している。
支持板部61の上面は、ピストン41の上筒部51aの上端開口縁と上下方向において同等の位置に位置している。支持板部61のうち、立設筒部60より径方向の内側に位置する内周部の上面、およびピストン41の上筒部51aの上端開口縁に一体に環状の第2パッキン56が配設されている。
【0033】
小径部64は、中径部63の下端部から下方に向けて真っ直ぐ延びる直筒部67と、直筒部67の下端部から下方に向かうに従い漸次、内径および外径が小さくなるテーパ筒部68と、を有している。テーパ筒部68の内側には、弁体44がテーパ筒部68のテーパ面に離着自在に配設されている。
なお、弁体44は、球状に形成された合成樹脂製のいわゆるボール弁とされている。弁体44は、廃棄時における分別の手間を抑制する観点で合成樹脂製とすることが好ましい。また、弁体44は、金属製等であってもよい。さらに、ボール弁に替わる種々の弁体を用いた逆止弁でもよい。
【0034】
テーパ筒部68の内周面には、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる規制突部68Aが突設されている。規制突部68Aの上端の内径は、弁体44の外径よりも小さくなっている。これにより、弁体44が規制突部68Aから上方に離脱するのを規制している。なお、規制突部68Aには、周方向の延在を中断する間隙が形成されている。
【0035】
ピストンガイド43は、ステム12から下方に向けて延びる周筒部43Dおよび底壁部を備える有底筒状に形成されている。ピストンガイド43の底壁部は、図3に示されるように、ピストン41の閉塞部52bよりも下方に位置している。底壁部には、径方向の外側に向けて突出する円環状のフランジ部43Aが形成されている。
ピストンガイド43における周筒部43Dの下端部に、外径がフランジ部43Aの上面から上方に向かうに従い漸次、縮径した当接部43Eが形成されている。この当接部43Eに、ピストン41の閉塞部52bの下端部が当接している。
【0036】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とシリンダ42内とを連通させる連通孔43Bが形成されている。連通孔43Bは、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。連通孔43Bは、当接部43Eよりも上方に位置している。これにより、連通孔43Bとシリンダ42の大径部62内との連通が遮断されている。
【0037】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、図2に示されるように、ピストンガイド43内とステム12内とを連通する貫通孔43Cが形成されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bと同様に、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bよりも上方に配置され、ステム12の段筒部12Aにおける内周面に向けて開口している。連通孔43Bおよび貫通孔43Cがピストンガイド43に形成されていることで、ピストンガイド43とピストン41との間、並びにピストンガイド43とステム12との間の空気が滞留するのを防ぐことができる。
ピストンガイド43のうち貫通孔43Cよりも上側に位置する部分は、ステム12内に嵌合している。これにより、ピストンガイド43は、ステム12と共に一体に上下動する。
【0038】
ピストンガイド43の下端部には、下方に向けて突出し、コイルバネ95が外装されるガイド突部43Fが形成されている。ガイド突部43Fは、表裏面が周方向を向く板体が中心軸線O回りに複数配置されて構成されている。ガイド突部43Fは、シリンダ42における大径部62の下部から中径部63の上部にわたって配設されている。
コイルバネ95のうち、上端部はフランジ部43Aの下面に当接し、下端部はシリンダ42における直筒部67の上端開口縁(段部)に当接している。これにより、ピストンガイド43はコイルバネ95から上向きの付勢力を受けている。
【0039】
さらに本実施形態では、吐出器1は、装着キャップ11の後部に立設された支持部材15と、支持部材15に回転軸L回りに回転自在に配設され、吐出ヘッド13を押下げる押下部材16と、吐出ヘッド13の下方移動を規制するストッパー130と、を備えている。なお、吐出器1は、支持部材15、押下部材16、およびストッパー130を有しなくてもよい。
【0040】
支持部材15は、シリンダ42の立設筒部60に外装された有頂筒状の囲繞筒部15aと、囲繞筒部15aの頂壁から上方に向けて延びるガイド筒15cと、囲繞筒部15aから後方に向けて突設され、左右方向に間隔をあけて配設された一対の側壁部77と、側壁部77の後端縁同士を左右方向に接続する後壁部78と、を有している。
【0041】
囲繞筒部15aの頂壁は環状に形成され、この頂壁の内周縁部にガイド筒15cが配置されている。
ガイド筒15c内には、ステム12が下方移動自在に挿通されている。
囲繞筒部15aの頂壁の下面には、内側にステム12が挿通された内側垂下筒部15dと、内側垂下筒部15dと囲繞筒部15aの周壁との間に配置された外側垂下筒部15eと、が形成されている。ガイド筒15c、内側垂下筒部15d、および外側垂下筒部15eは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0042】
囲繞筒部15aの周壁の下端部は、装着キャップ11の頂壁部11aと隙間を介して上下方向に対向している。
外側垂下筒部15eは、立設筒部60内に嵌合されている。外側垂下筒部15eの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、シリンダ42における支持板部61の内周部の上面に押し当てられている。
内側垂下筒部15dは、ステム12の下部に外装されている。内側垂下筒部15dの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、ピストン41の上筒部51aの上端開口縁に押し当てられている。
第2パッキン56は、ステム12の下端部に外嵌されている。第2パッキン56は、ステム12とガイド筒15cとの間に画成された外気導入路Rと、シリンダ42内のうち、ピストン41の摺接部51bより上方に位置する上部空間と、の連通を遮断可能である。
【0043】
側壁部77は、前側から後側に向かうに従い漸次、上側に向けて延びている。側壁部77の上端には、左右方向から見た正面視で上方に向けて突の半円形状に形成された突出片80が形成されている。突出片80には、円柱状の軸体77Aが左右方向の外側に向けて突設されている。軸体77Aは、ステム12より後方に配置されている。軸体77Aの中心を通り、かつ左右方向に延びる仮想の軸線が押下部材16の揺動軸Lとなる。これにより、揺動軸Lは、ステム12より後方に配置されるとともに左右方向に延びている。
後壁部78の内面には、上方に向かって突出し、一対の側壁部77の内面同士および突出片80同士を左右方向に一体に連結する補強壁78aが形成されている。
【0044】
押下部材16は、軸体77Aを介して支持部材15に取り付けられている。これにより、押下部材16は、支持部材15に対して揺動軸L回りに揺動可能に連結されている。
押下部材16は、吐出ヘッド13を上方から覆う天板部90と、天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる前板部91と、天板部90の左右両側の側端縁から下方に向けて延在し、左右方向に向かい合う一対の側板部92と、を有している。
そして、天板部90と一対の側板部92とで囲まれる内部空間に吐出ヘッド13が配置されている。よって、一対の側板部92は、吐出ヘッド13を左右方向から挟むように配置されている。
【0045】
天板部90は、上方に向けて膨らむように滑らかに湾曲した形状とされ、その後端部は支持部材15における後壁部78の上端部に上方から当接している。これにより、押下部材16は、揺動軸Lを中心としたこれ以上の上方への揺動が規制されている。
天板部90の前側部分には、天板部90を貫通する第1貫通孔93が形成されている。この第1貫通孔93は、天板部90における左右方向の中央部分に形成されているとともに、前方に開口している。これにより、天板部90の前側部分は、左右方向に二股に分かれた形状とされている。前板部91は、二股に分かれた天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延在している。
【0046】
第1貫通孔93内に吐出ヘッド13のノズル筒部32が挿通されている。これにより、ノズル筒部32は、第1貫通孔93を通して前板部91から前方に向けて突出しており、押下部材16と吐出ヘッド13との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。なお、前板部91の下側部分は、指先を掛けるための指掛部分とされている。
【0047】
押下部材16の一対の側板部92は、支持部材15の一対の側壁部77における上部を左右方向に挟んでいる。これにより、支持部材15と押下部材16との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。一対の側板部92の後部側の内面には、軸体77Aが挿通される軸孔部92Aが形成されている。これにより、押下部材16は、軸体77A回り、すなわち揺動軸L回りに揺動可能に支持される。
【0048】
押下部材16には、吐出ヘッド13の軸部10Aに係合する係合溝31Aが形成されている。係合溝31Aは、押下部材16の一対の側板部92から左右方向の内側に向けて張り出した板部の下端部に、下方に向けて開口する半円形状に形成されている。この係合溝31A内に軸部10Aが挿入されている。
以上の構成において、押下部材16を揺動軸L回りに下方に揺動すると、係合溝31Aの内周面が軸部10Aの外周面を下方に向けて押し込むことにより、ステム12およびピストンガイド43が、コイルバネ95の上方付勢力に抗して下降する。
【0049】
ストッパー130は、押下部材16の揺動軸Lに平行な軸体131回りに揺動可能に設けられ、吐出ヘッド13の下方移動を規制する。ストッパー130は、吐出ヘッド13の下方移動を規制する規制位置(図1および図2に示す位置)と、規制位置に対して軸体131回りに後方に揺動し、吐出ヘッド13の下方移動を許容する規制解除位置(図4に示す位置)と、の間を移動自在に配設されている。
【0050】
ストッパー130は、一対の側壁部77の間に架設された軸体131と、軸体131の上方に配設され、図1および図2に示す規制位置に位置するときに、被係止部120の下面とガイド筒15cの上端開口縁との間に挟み込まれる被挟持部132と、軸体131における左右方向の両端部に接続され、側板部92における左右方向の外側に位置する一対の摘み部134と、を備えている。
軸体131は、左右方向に延在する棒状に形成され、軸体131の左右方向の両端部は、一対の側壁部77に形成された支持凹部82に中心軸回りに回転可能に嵌め込まれている。支持凹部82は、ステム12よりも後方であって、揺動軸Lよりも前方に配置されている。
【0051】
図6に示すように、正倒立両用アダプタ200は、円筒状の本体筒部210を備える。本体筒部210は、中心軸線Oと同軸に配設されている。本体筒部210は、シリンダ42に外嵌された円筒状の外側筒部材211と、上部が外側筒部材211内に配設され、かつ下部が外側筒部材211から下方に突出した内側筒部材212と、を有する。内側筒部材212の下端部内には、容器本体2内の内容物を流通させる円筒状のパイプ213の上端部が嵌合されている。これら外側筒部材211、内側筒部材212、およびパイプ213は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0052】
外側筒部材211は、上端部内にシリンダ42の中径部63が嵌合された円筒状の外筒部214と、外筒部214の上下方向の中間部分に配設され、外筒部214の内部を上下に仕切る仕切壁部215と、仕切壁部215から下方に延設され内側筒部材212の上端部が連結される円筒状の下筒部217と、を有する。
【0053】
外筒部214のうち、仕切壁部215よりも上側に位置する上部における内径および外径は、仕切壁部215よりも下側に位置する下部における内径および外径よりも大きくなっている。外筒部214の上部は、仕切壁部215から上側に向かうに従い漸次、拡径した拡径部214aと、拡径部214aの上端と同じ径とされ拡径部214aから上方に向けて延びる筒部214bと、を備えている。筒部214bの内径は、シリンダ42の中径部63の外径と同等である。仕切壁部215には、上下方向に貫く通液孔219が形成されている。
【0054】
下筒部217の上端部のうち、一部の外周面は、外筒部214の内周面に接続され、他の部分の外周面は、外筒部214の内周面から径方向の内側に離間している。そして、外側筒部材211には、下筒部217の前記一部、外筒部214を一体に径方向に貫く倒立時導入孔221が形成されている。倒立時導入孔221は、吐出器1の倒立時に容器本体2内の内容液が導入可能である。
【0055】
内側筒部材212は、上端部が下筒部217に連結された円筒状の上側筒部222と、上側筒部222よりも下方に配設され、かつ下部が外側筒部材211から下方に突出した円筒状の下側筒部223と、上側筒部222と下側筒部223とを結合する円筒状の結合筒部224と、を有する。
【0056】
上側筒部222の上端部は、下筒部217に外嵌されている。そして、上側筒部222の外周面と外筒部214の内周面との間には、内容液を流通させる第1流路r1が形成されている。この第1流路r1は、通液孔219に連通している。上側筒部222の下端部は、内径および外径が下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状をなしており、上側筒部222の内側には、球状の切替弁225が配設されている。
【0057】
結合筒部224の外周面と、外筒部214の内周面と、の間には、内容液を流通させる第2流路r2が形成されている。この第2流路r2は、第1流路r1に連通している。結合筒部224には、その内部と第2流路r2とを連通する連絡孔226が形成されている。連絡孔226は、結合筒部224に周方向に間隔をあけて複数形成されている。
ここで連絡孔226、第2流路r2、第1流路r1および通液孔219は、内側筒部材212の下端の正立時導入孔229および倒立時導入孔221と、シリンダ42の下端開口部と、を連通する連通路r3を構成している。正立時導入孔229は、倒立時導入孔221より下方に配置されている。
【0058】
下側筒部223は、外側筒部材211の下端部内に嵌合されている。また、下側筒部223の上端部は、内径および外径が上方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状をなしており、下側筒部223の内側には、球状の下弁体227が配設されている。下側筒部223の内周面には、径方向内側に向けて突出し、上下方向に延在する複数の第2縦リブ部228が周方向に間隔をあけて形成されている。第2縦リブ部228の下端部は、径方向内側に向けて突出しており、下弁体227が第2縦リブ部228の下端部よりも下方に移動することを規制する。
【0059】
パイプ213の上端部は、下側筒部223の下端部内に嵌合されており、パイプ213の下端開口213Aは、容器本体2内の底部に向けて開口する。下端開口213Aおよび正立時導入孔229は、吐出器1の正立時に容器本体2内の内容液が導入可能である。正立時導入孔229には、パイプ213を通して内容物が導入される。
【0060】
次に、上述のように構成された吐出器1の使用方法について説明する。
まず、ストッパー130を図1および図2に示す規制位置から後方に揺動させて、図4に示す規制解除位置に移動させる。詳しく説明すると、摘み部134を操作して、被挟持部132の上端部が係合突起122を乗り越えて被係止部120よりも後方に位置するまで、ストッパー130を後方側に向けて軸体131回りに揺動させる。これにより、ストッパー130による吐出ヘッド13の下方移動の規制が解除され、押下部材16の下方への揺動が許容される。
【0061】
その後、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる。
この際、例えば押下部材16の前板部91の指掛部分に指先を掛けながら、コイルバネ95の付勢力に抗して押下部材16を下方に向けて回転させる。押下部材16を下方に向けて回転させると、吐出ヘッド13が下方移動し、弁体44によってシリンダ42のテーパ筒部68内を閉塞した状態で、ステム12およびピストン41をシリンダ42に対して押し込んで、シリンダ42内を正圧にする。すると、シリンダ42内の内容液がステム12内を上昇してノズル筒部32内に導入され、吐出ヘッド13の吐出孔13Aから吐出される。
【0062】
詳しくは、ステム12をピストンガイド43とともに押し下げると、ステム12に加えられた押し下げ力が、弾性片25を介してピストン41に伝えられ、ピストン41がステム12およびピストンガイド43と一体となって、シリンダ42に対して下方移動する。これにより、ピストン41の閉塞部52bがステム12内とシリンダ42内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ42内が加圧される。この状態でステム12をさらに押し下げると、シリンダ42の上昇した内圧によりピストン41の下方移動が抑止されることとなり、ステム12およびピストンガイド43が、ピストン41に対して下方移動する。
【0063】
このため、ステム12およびピストンガイド43は、ステム12とピストン41との間に配設された弾性片25に上下方向の圧縮力を加えて弾性片25を弾性変形させながら、ピストン41に対して下方移動する。この際、ピストン41の閉塞部52bの下端部が、ピストンガイド43の当接部43Eから上方に離間し、閉塞部52bの下端部とピストンガイド43の外周面との間に、径方向の間隙が形成される。そのため、連通孔43Bは、この間隙を通してシリンダ42内に対して開放される。なお、連通孔43Bがシリンダ42内に対して開放されるまで、シリンダ42の内圧はさらに上昇する。
【0064】
これにより、シリンダ42内の内容物は、閉塞部52bの内周面とピストンガイド43の外周面との間の間隙、並びに連通孔43Bを通ってピストンガイド43内に流入する。さらに、シリンダ42内の内容物は、閉塞部52bの内周面とピストンガイド43の外周面との間の間隙、ステム12における下部および段筒部12Aの各内周面とピストンガイド43の外周面との間の間隙、並びに貫通孔43Cを通ってピストンガイド43内に流入する。
そして、ピストンガイド43内に流入した内容物は、ステム12の上部内を流動してノズル筒部32に至り、ノズル筒部32の吐出孔13Aから吐出される。この結果、容器本体2内に収容された内容物を、吐出孔13Aを通じて外部に吐出することができる。
【0065】
その後、押下部材16の操作を解除すると、ステム12およびピストン41が、コイルバネ95からの付勢力に基づいてシリンダ42に対して復元移動する。このとき、シリンダ42内が負圧になり、この負圧が、弁体44に作用してテーパ筒部68内を開放し、図6に示す切替弁225および下弁体227のそれぞれに連通路r3を通して作用する。すると、吐出器1の正立時には、切替弁225が倒立時導入孔221と連通路r3との連通を遮断した状態に維持するとともに、下弁体227が第2縦リブ部228の下端部から上方に離反する。その結果、容器本体2内の内容液が、正立時導入孔229、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口部に到達してシリンダ42内に流入する。
【0066】
一方、吐出器1の倒立時には、容器本体2内の底部に開口するパイプ213の下端開口213Aが、容器本体2内の内容液の液面から突出している。しかも、倒立時導入孔221が、容器本体2内の内容液内に位置した状態で、切替弁225がその自重に基づいて上側筒部222の内側から離反しており、倒立時導入孔221と連通路r3とが本体筒部210内を通して連通している。したがって、シリンダ42内で負圧が発生することで、容器本体2内の内容液が、倒立時導入孔221、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口部に到達してシリンダ42内に流入する。
【0067】
吐出器1の正立時および倒立時いずれの場合であっても、吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41をシリンダ42に対して一体的に押下させると、シリンダ42内のうちピストン41より下方に位置する下部空間が加圧され、この下部空間内の内容物がステム12内を上昇して吐出孔13Aから吐出される。この過程において、第2パッキン56が外気導入路Rの下端開口を開放し、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間とが連通し、外気がシリンダ42内の上部空間に導入される。
【0068】
吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41の押下げを解除して、これらを上方に復元変位させると、シリンダ42内の下部空間が負圧になり、容器本体2内の内容物がシリンダ42内の下部空間に導入される。この過程において、上部空間の空気は、空気孔62Bを介してシリンダ42内の上部空間と容器本体2内とが連通することで、容器本体2内に導入される。
【0069】
その後、ステム12およびピストン41が元に戻ると、第2パッキン56により、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通が遮断され、外気導入路Rを通した容器本体2内と外部との連通が遮断される。
なお、吐出器1が倒立等しても、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通を遮断する第2パッキン56が配設されているので、容器本体2内の内容物がシリンダ42内の上部空間に到達しても、この内容物が外気導入路Rを通して外部に漏出することを防ぐことができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出器1によれば、内容物の吐出に際し、まずステム12、ピストンガイド43およびピストン41を一体にシリンダ42に対して下方移動させ、シリンダ42の内圧をある程度上昇させた後に、弾性片25が弾性変形することで、ステム12およびピストンガイド43をピストン41に対して下方移動させ、ステム12内をシリンダ42内に対して開放させる。このため、シリンダ42の内圧が一定以上となってはじめて、内容物を吐出させることができ、吐出される内容物の勢いなどの吐出態様を安定させることができる。これにより、例えば噴霧パターン等を高精度に安定させることができる。
【0071】
特に、ピストン41に、摺接面54および進入凹部55が形成されているので、シリンダ42の内圧がある程度上昇した後、ステム12およびピストンガイド43がピストン41に対して下方移動する過程において、摺接面54上を弾性変形しつつ摺動した弾性片25が、進入凹部55に到達した際に、弾性片25が進入凹部55に進入することとなり、ピストンガイド43およびピストン41の上下方向の相対的な位置を、大きくかつ瞬時に変化させることが可能になる。図示の例では、弾性片25が、進入凹部55に到達した際に径方向の外側に向けて延びるように大きくかつ瞬時に変形することとなる。したがって、ステム12およびピストンガイド43がピストン41に対して下方移動する過程で、ステム12内とシリンダ42内とを、徐々にではなく瞬時に全開状態で連通させることが可能になり、吐出される内容物の吐出態様を確実に安定させることができる。
本実施形態では、ピストン41における摺接面54と進入凹部55との連結部分、並びに弾性片25の下端部における径方向の内端部がそれぞれ、角形状となっているので、弾性片25が摺接面54を摺動して進入凹部55に進入する際に、弾性片25における径方向の内端部が、ピストン41における前記連結部分を乗り越えることとなり、前述の作用効果が確実に奏功されることとなる。
【0072】
また、弾性片25の下端部が、摺接面54から上方に離間しているので、吐出器1の不使用時に、弾性片25の下端部を無負荷状態に保つことが可能になり、弾性片25に癖が付くのを抑えることができる。
また、摺接面54および進入凹部55が互いに径方向に連なっているので、摺接面54上を摺動した弾性片25を、引っ掛かり少なく円滑に進入凹部55に進入させることができる。
また、摺接面54が、進入凹部55側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びているので、摺接面54上を摺動した弾性片25を、より一層引っ掛かり少なく円滑に進入凹部55に進入させることができるとともに、弾性片25が摺接面54上を摺動する際に、弾性片25に加えられる負荷を抑えることが可能になり、弾性片25に癖が付くのを確実に抑制することができる。
【0073】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0074】
例えば 前記実施形態では、弾性片25が、ステム12と一体に形成された構成を示したが、弾性片25はステム12と別部材であってもよい。
弾性片25の下端部は、吐出器1の不使用時に、摺接面54に当接させておいてもよい。
摺接面54および進入凹部55を互いに径方向に離間させてもよい。
摺接面54を、進入凹部55より径方向の外側に配置してもよい。この構成において、弾性片25における径方向の外側部分と、摺接面54における径方向の内側部分と、が上下方向で互いに対向し、弾性片25における径方向の内側部分と、進入凹部55における径方向の外側部分と、を上下方向で互いに対向させてもよい。
弾性片25の下端部を全域にわたって、摺接面54と上下方向で対向させてもよい。
摺接面54は、前記実施形態に限らず例えば、平坦面であってもよいし、進入凹部55側に向かうに従い漸次、上方に向けて延びてもよい。
進入凹部55の深さを、弾性片25における上下方向の長さより大きくしてもよい。
また、吐出器1に、正倒立両用アダプタ200を装着しなくてもよい。この場合、パイプ213はシリンダ42の下端に取り付けられる。
【0075】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 吐出器
12 ステム
13 吐出ヘッド
13A 吐出孔
25 弾性片
41 ピストン
42 シリンダ
43 ピストンガイド
52b 閉塞部
54 摺接面
55 進入凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6