【実施例】
【0131】
実施例1:トロンビン活性アッセイ
その精製及び濃縮型の水性液体トロンビン1000国際単位IU/mLは、室温で自己消化されて、例えば、異種基質に対する活性が著しく失われることがある。例えば、異種基質に対するトロンビン活性は、液体トロンビン製剤を室温で長期間(例えば、72〜144時間)インキュベートしたとき、特に、自己消化性分解によって低下する。水性液体溶液中における異種基質に対するトロンビン活性の低下は、許容温度(例えば、37℃)下で長期間後、トロンビン活性を測定することによって評価することができる。以下の実験では、トロンビンの安定性に対するペプチドの効果を、様々な条件下で試験した。
【0132】
水性液体精製及び濃縮トロンビン(1000IU/mL;約10μMと等価)を分注し、3日間(72時間)、7日間(168時間)、及び14日間(336時間)、37℃のインキュベータ内に置いた。インキュベートする前に、指定量の様々な試験ペプチド、又は対照トロンビン阻害剤:ベンズアミジン若しくはアルギニン
*HCl(「アルギニン」)をトロンビンサンプルに添加した。用いた具体的なペプチド、その濃度、及びトロンビン阻害剤は、各実施例に示す。インキュベート期間後、トロンビン活性を試験するまでサンプルを−80℃で冷凍した。トロンビン活性アッセイ試験直前に、全てのサンプルを解凍し、希釈バッファ(0.4%クエン酸三ナトリウム二水和物、0.9%塩化ナトリウム、及び1% BSA、pH=7.5)で100倍希釈して、サンプル中のトロンビン濃度をアッセイの仕様の範囲内(4〜10IU/mL)にし、サンプル中の試験ペプチドを無視できる濃度に希釈した。
【0133】
STart4凝固装置(Diagnostica Stago,Asnieres sur Seine,France)を用いて凝固時間を測定することによって、トロンビン活性を評価した。このアッセイは、欧州薬局方アッセイ手順1997、0903、p.858の変法である。簡潔に述べると、トロンビン標準と、0.1%フィブリノーゲン含量のフィブリノーゲン溶液(Enzyme Research Laboratories,IN,USA)とを混合することによって、検量線を作成した。次いで、その凝固時間によって、検量線から様々な試験サンプル中のトロンビン濃度を算出した(濃度は、検量線から外挿した)。
【0134】
ペプチドと共に又はペプチド無しで保存した後の1000IU/mLのトロンビンの安定性試験については、上記の通り試験を実施した。希釈(1:100)は、活性の測定前に実施した。
【0135】
阻害試験については、10IU/mLのトロンビンの凝固活性を、ペプチドの存在下又は非存在下で測定した。
【0136】
実施例2:トロンビンの安定化に対するトロンビンガンマループのアミノ酸配列を含むペプチドの効果
トロンビンの形成中に切断されるプロトロンビン配列を、
図1中に薄い灰色のシルエットとして示す。成熟アルファ−トロンビンポリペプチド配列を黒で示す。本明細書で利用するペプチド配列は、トロンビン一次配列においてシルエットで描かれており、分子の下に別個に示す(矢印によって示す)。ガンマループペプチド配列自体(配列番号1)を示し、N及びC末端の両方に隣接するアミノ酸を含むより長いペプチド内では角括弧で囲む(配列番号2;GNLKETWTANVGKGQPS;GLY−ASN−LEU−LYS−GLU−THR−TRP−THR−ALA−ASN−VAL−GLY−LYS−GLY−GLN−PRO−SER)。末端システイン残基を有するペプチドを合成することによって配列番号1を環化した(配列番号3;CKETWTANVGKC;CYS−LYS−GLU−THR−TRP−THR−ALA−ASN−VAL−GLY−LYS−CYS)。これらペプチドは、標準的な方法によって合成した。
【0137】
隣接するアミノ酸を有するガンマループペプチド(配列番号2)及び環状ペプチド(配列番号3)を用いて、トロンビン自己消化活性の阻害について試験した。トロンビンの公知の活性部位阻害剤であるアルギニン
*HCl(「アルギニン」)を、対照として用いた。
図2Aは、様々なアルギニン濃度においてトロンビン活性(10IU/mLトロンビンを用いて測定)に対してアルギニンが有する阻害効果を示す。
図2Bは、(グラフ中に示す通り)様々な濃度のアルギニンと共に37℃で最長48時間インキュベートした後に測定したトロンビン%を示す。アルギニンについての動作レンジを速やかに得るために、濃縮トロンビンをより短時間(最長48時間)用いた。アルギニンは、
図2Aにみられるその阻害効果に相関して、トロンビンの安定性に対して用量依存性効果を示す。
【0138】
図2Cは、漸増量のガンマループペプチド(配列番号2)又は一定濃度(3% w/v)のアルギニンと共にインキュベートした後のトロンビンの残存活性を示す。このアッセイは、37℃で72及び144時間後における1000IU/mLのトロンビンの残存活性の測定に基づいていた。
【0139】
0.1mMのペプチドでは、144時間後に安定化が既に検出され、0.2mMでは、72時間後に既に明らかであった。
図2Dは、漸増濃度のペプチドによるトロンビン活性(10IU/mLトロンビンで測定)の阻害を示す。0.2mMのペプチド濃度では、トロンビン活性は、それほど影響を受けない。
【0140】
結果:0.5〜5%(w/v)の範囲のアルギニンは、保存後にトロンビン活性を維持していた(
図2B)。しかし、アルギニンの存在により、トロンビンの生物活性は損なわれた(
図2Aを参照)。0.5%(w/v)アルギニンでさえも、トロンビン活性の約50%(w/v)が阻害され、2%(w/v)の濃度では>95%のトロンビン活性が阻害される(フィブリノーゲンを切断する能力によってアッセイしたとき;
図2A)。有効アルギニン濃度に基づいて、3%(w/v)アルギニンを、0.5mMの濃度のガンマループペプチド(配列番号2;
図2C)と比較した。驚くべきことに、0.5mMの安定化濃度でペプチドを用いたとき、トロンビン活性が高いままであった(約80%残存活性、
図2Dを参照)。この同じ実験において、3%(w/v)アルギニンは、トロンビン活性の維持について72時間ではあまり有効ではなく、144時間ではほんのわずかにしか有効ではなかった。これは、3%(w/v)アルギニン濃度が、トロンビンをほとんど完全に阻害すると推定することができる(
図2Aに基づいて)ので、重要である。
【0141】
0.5mMの濃度のペプチドでは、フィブリノーゲンに対するトロンビン活性の低下がわずか20%である(
図2D)と共に、トロンビン安定性の増大が観察された(
図2C)。理論に束縛されるものではないが、ガンマループペプチドは、少なくとも部分的に、トロンビンの分解のアロステリック阻害剤であると考えられる。
【0142】
実施例3:変異体ガンマループペプチドのスクリーニング
改善されたトロンビンへの結合を示し得るガンマループ変異体を同定するために、スクリーニングを実施した。これは、ガンマループペプチド変異体のアレイにおいて蛍光トロンビンを用いて実施した。最も高い結合効率を有する3つのこのような環化ペプチドを、フィブリノーゲンに対するトロンビン活性を損なわせることなくトロンビンを安定化させる能力について試験した(以下の実施例4を参照)。
【0143】
「ガンマループ」(配列番号1)は、トロンビンガンマループの野性型配列を示し;E03Nは、(配列番号4における)位置3におけるグルタミン酸のアスパラギンによる置換を指し;N08Yは、(配列番号5における)位置8におけるアスパラギンのチロシンによる置換を指し;G10Lは、(配列番号6における)位置10におけるグリシンのロイシンによる置換を指す。
【0144】
ペプチドのアミノ酸配列を、以下の本明細書における表1に示す:
【0145】
【表2】
【0146】
実施例4:ガンマループ結合ペプチドのスクリーニング
実施例2に開示した結果に基づいて、ガンマループペプチドをベイトとして用いて、トロンビンの安定性に正の影響を与え得る更なるペプチドを見出した。この目的のために、幾つかのペプチドアレイと共にインキュベートした蛍光ガンマループペプチドを用いて、結合スクリーニングを実施した。
【0147】
トロンビン自体、抗トロンビンIII(ATIII)、トロンボモジュリン、ヘパリン補因子II、ウシ膵トリプシン阻害剤(BPTI)、及びヒルジン、並びにトロンビンガンマループ配列の改変物等のトロンビンのガンマループと相互作用するタンパク質の配列にまたがる1,676個の15量体ペプチドのライブラリを作成した。SPOT合成(Wenschuh H,et al.(2000).Coherent membrane supports for parallel microsynthesis and screening of bioactive peptides.Biopolymers 55:188〜206)を用いてペプチドを合成し、記載の通り官能化スライドガラス上に化学選択的に固定した(Panse S,et al.(2004)Profiling of generic anti−phosphopeptide antibodies and kinases with peptide microarrays using radioactive and fluorescence−based assays.Mol Divers 8:291〜299.2.)。各ペプチドをマイクロアレイ上にトリプリケートでプリントした。結合試験については、100μgの精製トロンビン(Omrix biopharmaceuticals)をDyLight 650(DyLight(登録商標)Microscale Antibody Labeling Kits,Thermo Scientific,#84536)で直接標識し、ブロッキングバッファ(SuperBlockT20(TBS)Blocking Buffer,Thermo Scientific,#37536)で希釈した。マイクロアレイを、10μg/mLのDyLight 650−トロンビン又はフルオレセイン標識環状ガンマループ由来ペプチドと共に、HS4800マイクロアレイ処理ステーション(Tecan)において30℃で1時間インキュベートした(Masch A,et al.,(2010)Antibody signatures defined by high−content peptide microarray analysis.Methods Mol Biol 669:161〜172)。
【0148】
マイクロアレイを1x TBS中0.1% Tween−20、次いで、0.1x SSC中0.05% Tween−20で洗浄し、窒素流中で乾燥させた。各マイクロアレイを、GenePix Autoloader 4200AL(Molecular Devices,ピクセルサイズ:10μm)を用いてスキャンした。スポット認識ソフトウェアGenepix Pro 7.0分析ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて、シグナル強度を評価した。各ペプチドについて、3つのトリプリケートの平均シグナル強度を抽出した。更なる評価及び結果の表示を、統計学的計算及びグラフィクスソフトウェアR(バージョン2.11.1、www.r−project.org)を用いて実施した。
【0149】
あるアレイは、トロンビン配列に基づくペプチドを含んでいた。このライブラリから単離した任意のペプチドは、ガンマループと相互作用し得る、可能性のあるトロンビンタンパク質中の領域を反映し得る。第2のアレイは、幾つかの任意のペプチドがガンマループに対して親和性を示したランダムペプチドで構成されていた。最も強力な結合候補(ヒット)の蛍光を、0〜65535(2
16)の任意の尺度で定量した。トロンビン活性を実施例1に記載の通り評価した。
【0150】
トロンビン由来ペプチドアレイ(Thr;配列番号7〜11)及びランダムペプチドアレイ(Rnd;配列番号12〜13)からスクリーニングにおいて同定された候補ペプチドのアミノ酸配列を、以下の本明細書における表2に示す。
【0151】
【表3】
下線及び太字は、S置換である。
【0152】
これらペプチドの全て(実施例3で同定した「変異体ガンマループペプチド」、ランダムペプチド、トロンビン由来ペプチド、及び上記「ガンマループ結合ペプチド」)を、実施例2に記載の通り0.5mMの濃度でトロンビン活性を安定化させる能力について試験した。
【0153】
結果を以下の通り、図中に示す。
図3Aは、ガンマループに結合するランダム候補ペプチド(配列番号12及び配列番号13によって表されるランダムペプチド)を用いたトロンビン活性の安定化レベルを(残存活性%として)示す。
【0154】
図3Bは、ガンマループ配列、「直鎖状ガンマペプチド」(配列番号2)、及び分子内S−S結合を介する環状、「環状ガンマペプチド」(「CS」、配列番号3)を含むペプチドを用いたトロンビン活性の安定化レベルを(残存活性%として)示す。
【0155】
図3Cは、分子内S−S結合を介して環化されたガンマループ変異体ペプチドを用い、強化されたトロンビンへの結合を示す、トロンビン活性の安定化レベルを(残存活性%として)示す。
【0156】
図3Dは、トロンビン由来ペプチドThr−111(配列番号8)を用いたトロンビン活性の安定化レベルを(残存活性%として示す)示す。結果は、Thr−111(配列番号8)のトロンビンへの結合が、トロンビン分解を増加させたことを示すが、活性部位で結合しているのではないように思われた。
【0157】
図3Eは、トロンビン由来ペプチドThr−069(配列番号7)を用いたトロンビン活性の安定化レベルを(残存活性%として示す)示す。結果は、Thr−069(トロンビンに対して非常に弱い結合を示す配列番号7)もトロンビンの安定性に対して最小限の効果を示したことを示す。
【0158】
図3Fは、システイン残基がセリン残基によって置換されており、ガンマループに対して可変結合を示し、トロンビンが阻害されたときにその全てが若干の結合低減を示すトロンビン由来ペプチドの変異体を用いた、トロンビンの安定化レベルを(残存活性%として)示す。トロンビンペプチドのアミノ酸配列は、トロンビンの三次元構造に基づいており、必ずしもトロンビンペプチドの連続配列を含むものではない。トロンビン由来ペプチドの3つ変異体全てが、トロンビンを安定化させることができた。最も有効性の低いペプチドであるThr−136CS(配列番号11)は、最も弱い蛍光シグナルも有していた(表2、トロンビンに対して最も弱い結合)。
【0159】
表2及び
図3A〜3Fのデータは、以下を示す:
ガンマループ配列を含むペプチド(配列番号2及び配列番号3)は、直鎖状であろうと環状であろうと、トロンビン活性の同様の効率的な安定化を示した(
図3B)。
【0160】
比較的弱いトロンビン相互作用ペプチド[例えば、Thr−069(配列番号7)]及びThr−136CS[配列番号11)]は、同じ群の類似のペプチドよりも弱い安定化効果を示した(
図3E及び3F)。
【0161】
トロンビンと最も強い相互作用を有するペプチドThr−111(配列番号8)は、トロンビンに対して不安定化効果を有していた(
図3D)。
【0162】
ガンマループの残基E、N、又はGにおける変異体である環状ペプチド(それぞれ、配列番号4、5、及び6)によるトロンビンの安定化は、非効率であった(
図3C)。したがって、ガンマループペプチドとトロンビンとの間の相互作用は、特異的であり、重要な残基が変異した場合、結合親和性が増大し得るとしても、安定化効果は失われ得る。
【0163】
2つのランダムペプチド(配列番号12及び13)からは、いずれも、若干トロンビンの安定化効果が得られた(
図3A)。上記の通り、これらペプチドは、ガンマループに対する初期結合に基づいてランダムライブラリから選択され、これは、安定化能の優れた予測指標であると考えられる。
【0164】
実施例5:トロンビン阻害活性についてのペプチドの試験
トロンビン安定化活性を示したペプチドを、異種基質に対するトロンビンの活性に対する効果について試験した。
【0165】
アッセイは、実施例1に記載の通り実施した。
【0166】
図4A及びBは、ガンマループ/トロンビンガンマ結合ペプチドによるトロンビン阻害のレベルを示す(阻害は、グラフに示す残存活性%から算出することができる)。
【0167】
図4Aは、いずれもトロンビンに対して若干の安定化効果を示した2つのトロンビン由来ペプチド[Thr 031 CS(配列番号9)]、Thr 032 CS(配列番号10)]が、同濃度でトロンビンに対する阻害効果(例えば、0.5mMのペプチド:13〜14%阻害)も示したことを示す。より高いペプチド濃度(1mM)では、阻害は30%を超えた。環状ガンマペプチド(配列番号3)は、0.5mMでトロンビンを約7%しか阻害しなかったが、直鎖状ガンマペプチド(配列番号1)は、約20%の阻害を示した(
図2D)。両ペプチドは、この濃度において同様のトロンビンの安定化効果を示した。ペプチドRnd 316(配列番号12)は、試験したいずれの濃度でもトロンビン活性の阻害を全く示さなかった。
【0168】
同濃度(0.5mM)におけるベンズアミジンは、このアッセイにおいて20%の阻害を示し、これは、試験したペプチドのいずれよりも高かった。
【0169】
これらデータは、(ベンズアミジンの使用とは対照的に)トロンビン活性を損なわせることなく、トロンビンを安定化させるために特定のペプチドを使用することが可能であることを示す。
【0170】
図4Bは、直鎖状(配列番号1)及び環状(配列番号3)のトロンビンガンマループペプチドによるトロンビンの阻害(阻害は、グラフに示す残存活性%として算出することができる)を示す。
【0171】
環状ガンマペプチド(配列番号3)は、0.5mMで約7%の阻害しか示さず、直鎖状ガンマペプチド(配列番号1)は、約20%の阻害を示した。両ペプチドは、この濃度において同様のトロンビンの安定化効果を示した。
【0172】
要約すると、理論に束縛されるものではないが、3つの分類のペプチドがトロンビンを安定化させることが示される:
1)直鎖状若しくは環状(すなわち、分子内S−S結合)ガンマループペプチド、又はトロンビンガンマループの連続アミノ酸配列を含有する直鎖状若しくは環状ペプチド、
2)トロンビンと相互作用することが知られている(例えば、トロンビン自体)が、ガンマループへの結合を示す抗トロンビンIII、トロンボモジュリン、又はその他も含み得る分子から選択されるペプチド、
3)ガンマループと結合相互作用を示すランダムに選択されるペプチド。
【0173】
一般的に、上記ペプチドは、トロンビンを安定化させるのと同じ濃度では、トロンビンを阻害しない。トロンビンは、活性である上に安定であるので、これらペプチドを用いて、液体製剤中のトロンビンの活性を安定化させ、その異種基質に対する活性を保持することができる。
【0174】
本明細書では様々な実施形態について説明してきたが、その実施形態に対して多くの改変及び変更を行ってもよい。また、特定の構成要素に関して材料を開示したが、他の材料を使用してもよい。以上の明細書及び以下の「特許請求の範囲」は、このような改変及び変更を全て網羅することを意図する。
【0175】
全体的に又は一部において、本明細書に参照により援用すると言われるいずれの特許、刊行物、又は他の開示資料も、援用される資料が既存の定義、記載、又は本開示に記載されている他の開示資料と矛盾しない程度にのみ本明細書に援用するものとする。このように及び必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載されている開示は、参照により本明細書に援用される任意の矛盾する資料に優先するものとする。
【0176】
本出願のいずれの参照文献の引用又は指定も、このような参照文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0177】
セクション見出しは、本明細書では、明細書の理解を容易にするために用いられ、必要に応じて限定するものと解釈すべきではない。
【0178】
〔実施の態様〕
(1) 液体トロンビン製剤中のトロンビンの活性を安定化させることができる化合物であって、前記化合物が、トロンビンガンマループのアミノ酸配列を含む単離ペプチド、その誘導体又は塩、及びトロンビンガンマループ相互作用分子、その誘導体又は塩からなる群から選択される、化合物。
(2) 前記化合物が、前記トロンビンガンマループのアミノ酸配列を含む単離ペプチド、その誘導体又は塩である、実施態様1に記載の化合物。
(3) 前記単離ペプチドが、直鎖状又は環状である、実施態様2に記載の化合物。
(4) 前記トロンビンガンマループのアミノ酸配列が、配列番号1に記載されている、実施態様1〜3のいずれかに記載の化合物。
(5) 前記単離ペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩を含む、実施態様2又は3に記載の化合物。
【0179】
(6) 前記単離ペプチドが、配列番号3に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩を含む、実施態様2又は3に記載の化合物。
(7) 前記単離ペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩から本質的になる、実施態様2又は3に記載の化合物。
(8) 前記単離ペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩から本質的になる、実施態様2又は3に記載の化合物。
(9) 前記単離ペプチドが、配列番号3に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩から本質的になる、実施態様2又は3に記載の化合物。
(10) 前記ガンマループ相互作用分子が、単離相互作用ペプチド、その誘導体又は塩である、実施態様1に記載の化合物。
【0180】
(11) 前記単離相互作用ペプチドが、トロンビンペプチドである、実施態様10に記載の化合物。
(12) 前記単離相互作用ペプチドが、直鎖状又は環状である、実施態様11に記載の化合物。
(13) 前記単離相互作用ペプチドが、配列番号7、9、10、又は11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩を含む、実施態様12に記載の化合物。
(14) 前記単離相互作用ペプチドが、配列番号7、9、10、又は11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩から本質的になる、実施態様12に記載の化合物。
(15) 前記単離相互作用ペプチドが、ランダムペプチドライブラリから得られる、実施態様10に記載の化合物。
【0181】
(16) 前記単離相互作用ペプチドが、直鎖状又は環状である、実施態様15に記載の化合物。
(17) 前記単離相互作用ペプチドが、配列番号12又は13に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩を含む、実施態様16に記載の化合物。
(18) 前記単離相互作用ペプチドが、配列番号12又は13に記載のアミノ酸配列、その誘導体又は塩から本質的になる、実施態様16に記載の化合物。
(19) 実施態様1〜18のいずれかに記載の化合物と、薬理学的に許容し得る賦形剤とを含む、医薬組成物。
(20) トロンビンと、実施態様1〜18のいずれかに記載の化合物と、薬理学的に許容し得る賦形剤とを含む、トロンビン製剤。
【0182】
(21) 約1IU/mL〜10,000IU/mLのトロンビン活性を有する、実施態様20に記載の製剤。
(22) 約10IU/mL〜5,000IU/mLのトロンビン活性を有する、実施態様20に記載の製剤。
(23) 約10IU/mL〜1,000IU/mLのトロンビン活性を有する、実施態様20に記載の製剤。
(24) 前記化合物が、約0.01mM〜1mMの濃度で存在する、実施態様20〜23のいずれかに記載の製剤。
(25) 前記化合物が、約0.1mM〜0.5mMの濃度で存在する、実施態様24に記載の製剤。
【0183】
(26) 前記化合物が、約0.5mMの濃度で存在する、実施態様24に記載の製剤。
(27) フィブリンシーラント成分として使用するための、実施態様20〜26のいずれかに記載の製剤。
(28) 外表面にラベルが貼付されている密閉容器内に収容される、実施態様1〜18のいずれかに記載の化合物、実施態様19に記載の組成物、又は実施態様20〜27のいずれかに記載の製剤。
(29) トロンビン活性を安定化させる方法であって、前記トロンビンを実施態様1〜18のいずれかに記載の化合物又は実施態様19に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
(30) 液体形態のトロンビンの活性を安定化させることができる化合物をスクリーニングする方法であって、
a)トロンビンガンマループのアミノ酸配列を含む単離ペプチドを提供することと、
b)試験化合物のセットを提供することと、
c)(a)の前記単離ペプチドを(b)の前記化合物のセットと接触させることと、
d)前記ペプチドに結合する1つ又は2つ以上の試験化合物を同定することと、を含み、
前記結合が、トロンビン活性の安定化で使用するための可能性のある化合物を示す、方法。
【0184】
(31) 工程(d)で同定された前記1つ又は2つ以上の化合物を単離することを更に含む、実施態様30に記載の方法。
(32) 液体形態のトロンビンの活性の安定化における効果について、工程(d)で同定された前記1つ又は2つ以上の化合物を試験することを更に含む、実施態様30又は31に記載の方法。
(33) 実施態様2〜18のいずれかに記載の化合物をコードする、単離核酸配列。
(34) プロモータエレメントに機能的に連結している、実施態様33に記載の核酸配列を含む、ベクター。
(35) 実施態様34に記載のベクターを含む、宿主細胞。