特許第6858561号(P6858561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6858561シリンジ用組立体、プレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858561
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】シリンジ用組立体、プレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体包装体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20210405BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/28
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-551631(P2016-551631)
(86)(22)【出願日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2015073417
(87)【国際公開番号】WO2016051989
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-203838(P2014-203838)
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 剛
(72)【発明者】
【氏名】福士 景子
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/141471(WO,A1)
【文献】 特表2009−505741(JP,A)
【文献】 特開2006−314554(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114917(WO,A1)
【文献】 特表2007−517119(JP,A)
【文献】 特開昭56−050930(JP,A)
【文献】 特開平09−294809(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055803(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/052037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、さらに、
前記シールキャップは、内外面を含む前記シールキャップの全体がブチルゴムとブタジエンゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成され、前記ベースポリマーにおける前記ブチルゴムと前記ブタジエンゴムの比率は、70:30〜50:50であり、前記ゴム組成物における前記ブチルゴムおよび前記ブタジエンゴムは、架橋しており、かつ、前記シールキャップは、前記外筒に装着され、前記穿刺用針先が前記ゴム組成物により形成された前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入された状態となっており、前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のためのガス透過性を有し、さらに、前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌されており、前記シールキャップに刺入している前記穿刺針の刃先を含む前記シリンジ用組立体全体滅菌されていることを特徴とするシリンジ用組立体。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、フィラーを含有している請求項1に記載のシリンジ用組立体。
【請求項3】
前記穿刺針は、先端に前記穿刺用針先を有する中空針であり、かつ、基端部にて前記外筒本体部内と連通している請求項1または2に記載のシリンジ用組立体。
【請求項4】
前記シールキャップは、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記外筒の前記穿刺針取付部の外面が密着した状態となっている請求項1ないしのいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項5】
前記シールキャップの形成材料には、離型剤が配合されており、かつ、前記離型剤は、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン、脂肪族アルコールのエステルまたはパラフィンである請求項1ないしのいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
複数の請求項1ないしのいずれかに記載のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、
前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌されていることを特徴とするシリンジ用組立体包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、プレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
インシュリンシリンジなどの少量の薬剤投与用シリンジとして、外筒先端部に穿刺針が固定されているものが使用されている。そして、このようなタイプのシリンジを用いて、予め内部に薬剤を充填されたプレフィルドシリンジを構成する場合、針先をシールする必要がある。このような、針先シール可能なシールキャップとしては、例えば、特許文献1(特表2010−534546)、特許文献2(USP6719732)のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−534546
【特許文献2】USP6719732
【特許文献3】特開2013−43957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシールキャップ(シールド10)は、注射器(特許文献1の図2に一部が示される)の末端を覆うようになっている。注射器3の末端は、針6が固定されるハブ2を備える。シールド10は、開口した基端11と、閉塞した末端12と、基端11から閉塞した末端12まで延在する壁13とを有する。壁13の内面14は、注射器3の末端の一部を収容する空洞15を画定する。例えば、使用前、注射装置を輸送する間、該末端を保護するためにシールド10が注射器の末端に固定される場合、内面14の一部14aは、注射器3の末端のハブ2と接触するようになっている。
【0005】
特許文献2のシールキャップ(シリンジ針を保護する装置)は、特許文献2の図1〜5に示すように、開放基端22と閉鎖末端24の間に長手方向に伸びる弾性針キャップ20は、横方向の壁28および端壁30によって区切られる内部ハウジング26を有する。さらに、第1および第2の部分40とハウジング26のうちの第2部分42との間に、近位端22に向かっている第2部分42の端に、内側に膨張するように形成された環状ビード70(リブ)が設けられている。そして、この環状ビード70の変形性を改善するため、および加圧水蒸気の通過を容易にするために、ビード70には長手方向に伸びる4つのスロット72が設けられている。
【0006】
このタイプの針付きのプレフィラブルシリンジは、シリンジ内に薬液が充填されたいわゆるプレフィルドシリンジとして提供されることが多い。このため、外筒の針先を封止する機能を備えた上記のようなシールキャップが装着される。シールキャップは、針先のシールのため、針先により穿刺可能な弾性を備えたゴム材により成形される場合が多い。そして、プレフィルドシリンジの生産工程では、製品への異物付着に対する対策として静電気除去装置(イオナイザ)を設置しており、イオナイザよりオゾンが発生することが知られている。シールキャップの材質によっては、オゾンに対する耐性が低い場合が有り、上記のような生産工程では、シールキャップが劣化する恐れがある。また、通常の環境中にもオゾンは約20〜40ppb程度存在しているため、通常の環境下においても、オゾンによる劣化が発生する可能性がある。実際に、オゾン存在下での保存により、特に、外筒との嵌合部等ストレスのかかっている部分が劣化し、ヒビ割れや、亀裂を生じることが有ることを本発明者が知見した。劣化防止のためゴムに添加剤を加えることも検討したが、添加剤に起因するプレフィルドシリンジ内の薬剤変性の可能性も否定できない。よって、添加剤をできるだけ用いることなく、オゾン耐性を付与することが望ましい。
【0007】
特許文献3に開示されている針キャップは、ベースポリマー中の70〜100質量%がエチレンプロピレンジエンゴムである注射筒先端に装着された針を保護する針キャップ用ゴム組成物により形成されている。特許文献3のものでは、オゾン劣化は生じない点において優れている。しかし、後述するような穿刺針の針先外面へのシールキャップの形成材料の付着が生じることがあった。
【0008】
そして、上記のようなシリンジ組立体は、外筒にシールキャップが装着され、さらに、穿刺針がシールキャップに刺入された状態にて提供される。このため、シールキャップに穿刺針が刺入した状態、言い換えれば、穿刺針の先端部の外面がシールキャップの形成材料と密着した状態が、滅菌を含む製造、運搬、保管という使用までのある程度の期間、継続するものとなる。通常、穿刺針には、刺通時の抵抗低減のために、シリコーンが被覆されている。これにもかかわらず、保存環境等により、シールキャップを外筒より、離脱した時、シールキャップの形成材料が、穿刺針の外面に付着することがあった。このようなシールキャップの形成材料の穿刺針への付着は、刺通抵抗の増加要因となり、望ましいものではない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、添加剤をできるだけ用いることなく、オゾン耐性を有し、かつ、使用時までにある程度期間が経過しても、シールキャップの形成材料の穿刺針への付着が少ないシリンジ用組立体、プレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、さらに、前記シールキャップは、内外面を含む前記シールキャップの全体がブチルゴムとブタジエンゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成され、前記ベースポリマーにおける前記ブチルゴムと前記ブタジエンゴムの比率は、70:30〜50:50であり、前記ゴム組成物における前記ブチルゴムおよび前記ブタジエンゴムは、架橋しており、かつ、前記シールキャップは、前記外筒に装着され、前記穿刺用針先が前記ゴム組成物により形成された前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入された状態となっており、前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のためのガス透過性を有し、さらに、前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌されており、前記シールキャップに刺入している前記穿刺針の刃先を含む前記シリンジ用組立体全体滅菌されているシリンジ用組立体。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
上記のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0013】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
複数の上記のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、
前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌されているシリンジ用組立体包装体。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態のプレフィルドシリンジの正面図である。
図2図2は、図1のA−A線断面図である。
図3図3は、図1および図2のプレフィルドシリンジに用いられている本発明のシリンジ用組立体の拡大断面図である。
図4図4は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている本発明の穿刺針付外筒用シールキャップの拡大正面図である。
図5図5は、図4に示した穿刺針付外筒用シールキャップの底面図である。
図6図6は、図4のB−B線拡大断面図である。
図7図7は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている外筒の正面図である。
図8図8は、図7のC−C線拡大断面図である。
図9図9は、図7に示した外筒の斜視図である。
図10図10は、本発明の穿刺針付外筒用シールキャップの作用を説明するための説明図である。
図11図11は、本発明のシリンジ用組立体包装体の斜視図である。
図12図12は、図11に示したシリンジ用組立体包装体の内部形態を説明するための説明図である。
図13図13は、図11に示したシリンジ用組立体包装体の正面図である。
図14図14は、図13に示したシリンジ用組立体包装体の平面図である。
図15図15は、図14のD−D線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の穿刺針付外筒用シールキャップ、穿刺針付外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、穿刺針付外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジを図面に示す実施形態を用いて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、シリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤8とからなる。
【0016】
そして、本発明のシリンジ用組立体(言い換えれば、キャップが装着された穿刺針付き外筒)10は、先端に穿刺針固定部22を有する外筒本体部21と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針固定部22に基端部が固定された穿刺針6とを備える外筒2と、外筒2に装着されたシールキャップ3とからなる。
そして、シールキャップ3は、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に延び、穿刺針固定部22を収納可能な筒状の中空部30と、中空部30内に挿入された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33とを備える。そして、シールキャップ3は、ブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成されている。さらに、シールキャップ3は、外筒に装着され、穿刺針6の穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入された状態となっている。
【0017】
プレフィルドシリンジ1は、図1および図2に示すように、外筒2と、穿刺針の針先をシールするように外筒2に装着されたシールキャップ3とからなるシリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤8と、ガスケット4に取り付けられたもしくは使用時に取り付けられるプランジャー5とからなる。
【0018】
そして、薬剤8は、外筒2とガスケット4とシールキャップ3内により形成される空間内に充填されている。
充填される薬剤8としては、どのようなものでもよいが、例えば、通常注射剤として使用される薬剤であれば何でもよく、例えば抗体等の蛋白質性医薬品、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、血液製剤、各種感染症を予防するワクチン、抗がん剤、麻酔薬、麻薬、抗生物質、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、ヘパリン、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、脂肪乳剤、造影剤、覚せい剤等が挙げられる。
【0019】
外筒2は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた筒状(中空状)の穿刺針固定部22と、外筒本体部21の基端部に設けられたフランジ23と、基端部が穿刺針固定部22に固定された穿刺針6とを備える。
穿刺針6は、先端に穿刺用針先61を有する。穿刺針6の基端部は、穿刺針固定部22の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、穿刺針6の内部は、外筒2の内部空間20と連通している。言い換えれば、穿刺針6は、基端より若干先端側となる部分(基端を含まない基端部)が、外筒2の穿刺針固定部22に埋設した状態となっている。このため、穿刺針固定部22の中空部は、消失している。穿刺針6としては、先端に刃先を有する金属製中空針が用いられている。さらに、この実施例では、穿刺針6の少なくとも針先61には、潤滑剤が塗布されている。潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイルが挙げられる。これを用いることにより、穿刺時における刺通抵抗の低減が期待できる。
【0020】
そして、穿刺針6は、予め成形した外筒2の穿刺針固定部22の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により穿刺針固定部22に固定してもよい。また、外筒2に穿刺針6を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒2を成形することで、穿刺針固定部22は、穿刺針6が挿入された筒状(中空状)となり、穿刺針6は、その基端部が穿刺針固定部22の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0021】
外筒2は、透明もしくは半透明である。外筒本体部21は、ガスケット4を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、穿刺針固定部22は、外筒本体の先端部(肩部)より、前方に突出するとともに、外筒本体より小径の中空筒状となっている。また、穿刺針固定部22は、図7および図8に示すように、先端に設けられた頭部24と、頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパー状縮径部25と、テーパー状縮径部25の基端部と外筒本体部21の先端部とを連結する連結部27とを有し、テーパー状縮径部25により、凹部が形成されている。頭部24には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所26と、凹所26内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。
【0022】
連結部27の外面には、外筒2の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。なお、凹部25は、テーパー状でなく、頭部24の基端との間に段差が形成されるように単に縮径した形状であってもよい。また、連結部27を省略し、凹部(テーパー状縮径部25)の基端部と外筒本体部21の先端部とが直接連結されていてもよい。また、頭部24は、凹所26および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。なお、凹部25は、この実施例のように、環状凹部であることが好ましい。
【0023】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような樹脂が好ましい。
穿刺針6としては、先端に穿刺用針先61を有する中空状のものが用いられる。穿刺針6の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。
【0024】
ガスケット4は、図1および図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施形態では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒2の内面に液密に接触する。また、ガスケット4の先端面は、外筒2の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒2の先端内面形状に対応した形状となっている。
【0025】
ガスケット4の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、イソプレンゴム、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0026】
そして、ガスケット4には、その基端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー5の先端部に形成された突出部52の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー5は、ガスケット4より離脱しない。なお、プランジャー5は、取り外しておき、使用時に取り付けるようにしてもよい。また、プランジャー5は、先端の円盤部より前方に筒状に突出する突出部52を備え、突出部の外面にはガスケット4の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー5は、断面十字状の軸方向に延びる本体部51と、基端部に設けられた押圧用の円盤部53を備えている。
本発明の穿刺針付外筒用シールキャップ3は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられ、かつ、頭部24を有する筒状の穿刺針固定部22と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針固定部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える外筒に装着されて用いられるものである。
【0027】
シールキャップ3は、図に示すように、閉塞先端部31と、開口基端部と、開口基端部より先端側に位置し穿刺針固定部22を収納する穿刺針固定部収納部35と穿刺針固定部収納部35の先端に連続するテーパー状の穿刺針収納部とを備える中空部と、穿刺針収納部に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33と、穿刺針固定部収納部35の内面に形成された突出部36とを備える。また、この実施例のものでは、外筒2に装着されたシールキャップ3は、中空部30の少なくとも一部(具体的には、中空部の一部である穿刺針固定部収納部35およびその付近)が、図3に示すように、中空部30に収納された穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0028】
シールキャップ3は、ブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成されている。ゴム組成物におけるブチルゴムおよびジエン系ゴムは、架橋していることが好ましい。架橋は、それぞれのゴム材を架橋可能な架橋剤の添加により行うことができる。必要に応じて触媒を添加することもできる。また、ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムを主成分とするものであることが好ましい。そして、100%ブタジエンゴムであってもよく、70%以上がブタジエンゴムであることが好ましい。ジエン系ゴムとしては、上述したブタジエンゴムの他、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンイソプレンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴムなどのブタジエン系ゴムが好ましい。
【0029】
また、ベースポリマーにおけるブチルゴムとジエン系ゴムの比率は、7:3〜4:6であることが好ましく、特に、5:5〜6:4であることが好ましい。また、ゴム組成物は、ベースポリマー以外にフィラーを含有するものであってもよい。フィラーとしては、本発明においては特に制限されることはなく、無機フィラー、有機フィラー等、通常ゴム組成物に用いられるものを適宜用いることができる。無機フィラーとして、シリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、珪酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛が挙げられる。有機フィラーとしては、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素材料、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド系パルプ状繊維、ガラス繊維などが使用される。上述したフィラーは、単独で使用することも、2種以上をブレンドして使用することもできる。また、ゴム組成物におけるベースポリマーとフィラーの比率は、5:5〜8:2であることが好ましく、特に、6:4〜7:3であることが好ましい。
【0030】
なお、本発明のシールキャップ材料には、離型剤が配合されていることが好ましい。離型剤の配合量はベースポリマー100重量部に対して、0.3〜5重量部含まれていることが好ましく、より好ましくは0.3〜3重量部である。離型剤としては、例えばステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン、脂肪族アルコールのエステル、パラフィン等が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、本発明のシールキャップ材料には、必要に応じて、着色剤としてカーボンブラックや酸化チタン等の顔料、可塑剤としてパラフィンオイル等を含めることができる。
【0031】
そして、シールキャップ3の穿刺針取付部収納部35の内面と外筒2の穿刺針取付部22の外面が密着した状態となっている。
【0034】
そして、本発明のシリンジ用組立体10では、図3に示すように、外筒2の先端部(穿刺針取付部22)にシールキャップ3が装着され、かつ、穿刺針6の穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、液密状態にシールされ、かつ、穿刺針取付部22の頭部24の基端側に位置する凹部25と穿刺針取付部収納部35の内面に形成された突出部36とが係合し、かつ、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とが密着した状態となっている。また、この実施例のものでは、外筒2に装着されたシールキャップ3は、中空部30の少なくとも一部(具体的には、中空部の一部である穿刺針固定部収納部35およびその付近)が、図3に示すように、中空部30に収納された穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0036】
そして、シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されていることが好ましい。なお、本発明にて用いるシールキャップ3は、ガス透過性を有するため、それを装着したシリンジ組立体は、高圧蒸気、エチレンオキサイドガスにて、シールキャップに刺入している穿刺針の刃先を含む全体の滅菌が可能である。なお、滅菌としては、高圧蒸気滅菌が特に好ましい。
【0040】
そして、本発明のシリンジ用組立体10では、図3に示すように、外筒2の先端部(穿刺針固定部22)にシールキャップ3が装着され、かつ、穿刺針6の穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、液密状態にシールされ、かつ、穿刺針固定部22の凹部25(頭部24基端部)と穿刺針固定部収納部35の内面に形成された突出部36とが係合している。また、このとき、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0041】
この実施例のシールキャップ3の内面形態について説明する。
このシールキャップ3は、開口基端部32より所定長先端側に位置する内面に設けられた突出部36を備えている。突出部36は、最も突出した頂点部36aと、頂点部36aより先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する傾斜部(テーパー部)36bとを有している。特に、この実施例は、突出部36が、環状突出部となっており、傾斜部36bは、穿刺針固定部収納部35の内径が先端方向に向かって縮径するテーパー部となっている。
【0042】
頂点部36aにおける穿刺針固定部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針固定部22の頭部24の外径)より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、中空部の一部である穿刺針固定部収納部35およびその付近が、図3に示すように、中空部30に収納された穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となる。さらに、この実施例では、シールキャップ3の突出部36と凹部25が係合している。そして、先端側傾斜部36bは、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された状態で、凹部25よりも先端側まで延びている。先端側傾斜部36bの少なくとも先端部における穿刺針固定部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針固定部22の頭部24の外径より若干小さいものとなっている。
【0043】
このため、図に示すように、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、先端側傾斜部36bは、その内面全体が頭部24の外面に押し付けられて密着した状態となる。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。また、先端側傾斜部36bが頭部24の外面に押し付けられているため、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、頭部24により外側に押し広げられた状態となっている。
【0044】
また、この実施形態のシールキャップ3では、突出部36は、頂点部より開口端(基端)方向に向かって延びかつ突出高さが開口端(基端)方向に向かって漸次低下する基端側傾斜部を有している。これにより、シールキャップ3を外筒2の穿刺針固定部22に装着する際、突出部36の頂点部が穿刺針固定部22の頭部24を先端側から乗り越え易くなる。
【0045】
また、この実施形態のシールキャップ3では、図3および図6に示すように、穿刺針固定部収納部35は、突出部36の先端側傾斜部36bの先端部より先端方向に向かって所定長(具体的には穿刺針収納部34の基端部まで)延びる直線部36dを有している。この直線部36dにおける穿刺針固定部収納部35の内径は一定、かつ、外筒2の穿刺針固定部22の頭部24の外径より若干小さくなっている。このため、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、直線部36dは、頭部24の外面に押し付けられて密着した状態となる。また、直線部36dが頭部24の外面に押し付けられているため、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、頭部24により外側により押し広げられた状態となっている。
【0046】
また、この実施例では、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bの基端部は、外筒2の穿刺針固定部22の凹部25の周囲に位置し、先端側傾斜部36bの少なくとも基端部近傍における穿刺針固定部収納部35の内径は、環状の凹部25の外径より若干小さいものとなっている。よって、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bは、凹部25の外面に押し付けられて密着するものとなっている。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱をより少なくすることができる。
また、この実施例では、凹部25は、頭部24の基端側に設けられ、基端方向に向かって縮径するテーパー状縮径部からなる。これにより、シールキャップ3を外筒2から離脱させる際、シールキャップ3の突出部36が、凹部25に沿って外側に45拡げられ、頭部24を乗り越え易くなる。
【0047】
さらに、この実施形態のシールキャップ3では、中空部30は、シールキャップ3の開口基端部32から穿刺針固定部収納部35(突出部36)の基端にかけて形成され、ほぼ同一内径にて延びる穿刺針固定部導入部38を備えている。穿刺針固定部導入部38は、穿刺針固定部収納部35の最大内径よりも若干広い内径を有しており、外筒2の穿刺針固定部22の頭部24の外径より若干大きいものとなっている。このため、シールキャップ3を外筒2の穿刺針固定部22に装着する際の穿刺針固定部22の導入部として機能する。
【0048】
また、穿刺針固定部導入部38は、穿刺針固定部収納部35(突出部36)の基端との境界に、開口基端部32方向を向いて起立した環状起立面39を有している。よって、シールキャップ3の穿刺針固定部導入部38内に、外筒2の先端部が挿入されると、外筒2の穿刺針固定部22は、穿刺針固定部導入部38内に進入した後、図10に示すように、穿刺針固定部22の頭部24の環状先端面が、上記の環状起立面39に当接するものとなり、この状態にて、穿刺針6は、シールキャップ3の中心軸とほぼ平行なものとなり、穿刺針収納部34の小径先端部34a内に進入する状態となる。
【0049】
また、シールキャップ3の基端部には、外方に環状に突出する把持用のフランジ37が形成されており、さらに、フランジ37には、環状凹部が設けられている。フランジ37の先端側位置は、中空部30の環状起立面より先端側に位置し、かつ、突出部36の頂点部付近(頂点部より若干基端開口部32側)に位置するものとなっている。
【0050】
次に、本発明のシールキャップの製造方法について説明する。
本発明のシールキャップの製造方法は、先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える針付き外筒に装着されるシールキャップの製造方法である。
本発明のシールキャップの製造方法は、針付き外筒の穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、中空部内に挿入される穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、ブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成されたシールキャップを準備する工程と、シールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程とを行うものである。
【0051】
シールキャップを準備する工程は、例えば、針付き外筒の穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、中空部内に挿入される穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、例えば、図3ないし図5に示すような形態を有するシールキャップ本体を準備する。
シールキャップ本体の準備は、シールキャップの形成材料として上述したゴム組成物を用いて作製されたものを準備する。なお、図6および図10には、張付抑制被膜9を有するものが図示されている。
【0052】
次に、シールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程が行われる。
オゾン高濃度環境下は、例えば、コロナ放電方式の静電気除去環境、オゾン殺菌器内、オゾン殺菌しているクリーンルーム内、オゾンが発生する空気清浄機を使用している空間(例えば、病院)などである。シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒が静電気に帯電していると、製造工程中の塵等を吸着するおそれがある。このため、製造工程を静電気除去環境とし、静電気の除去が行われる。静電気除去環境は、例えば、コロナ放電式イオナイザを用いて発生させたイオンを、清浄な空気と共に製造工程中に導入することにより形成することができる。コロナ放電時には、イオンと共にオゾンが発生するため、シールキャップ装着済み外筒が、オゾンに接触することになる。しかし、本願発明のシールキャップ装着済み外筒では、上述したように、シールキャップは、耐オゾン性外面被覆層を備えるため、オゾンによる劣化が抑制されている。このため、オゾン接触工程に起因するキャップの劣化がきわめて少ない。なお、静電除去環境は、コロナ放電方式(電圧印加式又は自己放電式のいずれであってもよい)に限定されるものではなく、AC放電方式、DC放電方式、パルス放電方式などであってもよい。
【実施例】
【0053】
シールキャップ材料として、ブチルゴム(日本ブチル株式会社製、HT-1066)、ブタジエンゴム(JSR社製、BR01)、フィラー(シリカ:東ソー・シリカ社製、VN3、タルク:日本タルク社製、K−1)、および離型剤としてのステアリン酸アミドを準備した。そして、表1に示す配合割合に従って、架橋剤および触媒を配合したうえ密閉式混練機により混練し、未加硫ゴム配合物を得た。この未加硫ゴム配合物を、所定の成形金型を用い、加圧・加熱することで架橋させることにより、図2に示すような形状を有するシールキャップを作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
29ゲージステンレス製の穿刺針を用いて、また、外筒形成用樹脂としては環状オレフィンの単独重合体である環状オレフィンポリマー(COP)を用いて図7ないし図9に示すような形態を有し、かつ上述のシールキャップを装着可能な針付き外筒をインサート成形にて作製した。そして、穿刺針の針先に潤滑剤(シリコーンオイル)を塗布した後、上記の実施例1ないし3および比較例1および2のシールキャップを装着させ、穿刺針の針先がシールキャップに刺入したシリンジ組立体を作製した。そして、それらを高圧蒸気滅菌することにより、滅菌されたシリンジ組立体を各150本作製した。
【0057】
(実験1:固着確認試験)
上記のように作製した滅菌済みの実施例1ないし3および比較例1および2のシリンジ組立体各100本について、固着確認試験を行った。試験は、各シリンジ組立体より、シールキャップを取り外し、光学顕微鏡を用いて、穿刺針の針先付近におけるシールキャップ形成材料の固着の有無をカウントした。その結果を表に示す。なお、表中の固着試験欄における、○は、固着なし(刃先に0.03mmより大きい針シールドゴム片の固着が0本)、×は、固着あり(刃先に0.03mmより大きい針シールドゴム片の固着が1本以上)であることを示す。この実験により、本発明の実施例のシールキャップを用いたシリンジ組立体では、滅菌後においても、シールキャップの形成材料が、穿刺針に固着しないことが確認できた。
【0058】
(実験2:水蒸気透過度測定)
上記のように作製した実施例1ないし3および比較例1および2の未加硫のゴム配合物をシート状に加硫・成形し、各シートについて、水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度の測定は、JIS K7129(2008/03/20改定)に記載されている「プラスチック−フィルム及びシート−水蒸気透過度の求め方」に基づき、125℃における水蒸気試験を実施した。結果は、表3に示す通りであった。この実験により、実施例のシールキャップ材料は、良好な水蒸気透過性を有するものであることが確認できた。
【0059】
(実験3:滅菌性試験)
上述したように作製した滅菌済みの実施例1ないし3および比較例1および2のシールキャップおよび針付外筒を用い、かつ、各シールキャップ内に、BI菌(2.7×10CFU/ml)を封入後、外筒に装着したシリンジ組立体各20個を作製した。なお、装着時にシールキャップ内の内圧が上昇する為、シールキャップの開口部付近を変形させることにより外筒、シールキャップ間に隙間を作り、内圧解除を行った。そして、シールキャップの装着後、オートクレーブ処理(123℃、80分)を行った。滅菌後、7日間培地処理を行ったところ、表3に示す結果となった。なお、表3中の滅菌性欄における、○は、滅菌できた(全て菌死滅)、×は、滅菌できず(全ての菌が死滅せず)を示す。実施例のシールキャップはオートクレーブ滅菌性を有することが確認できた。
【0060】
(実験4:オゾン耐性試験)
上記のように作製した滅菌済みの実施例1ないし3および比較例1および2のシリンジ組立体各10本について、JIS K 6249(2004/03/20改定)に記載されている「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に基づき、試験を実施した。暴露後、各シールキャップを確認したところ、表3のような結果が得られた。なお、表3中における、○は、オゾン耐性あり(オゾン劣化に伴う外観上の劣化が認められなかった)、×は、オゾン耐性なし(オゾン劣化に伴う外観上の劣化が認められた)を示す。そして、実施例のシールキャップは、オゾン耐性を有することが確認できた。
【0061】
(実験5:刺通抵抗試験)
上記のように作製した滅菌済みの実施例1ないし3および比較例1および2のシリンジ組立体各20本について、刺通抵抗を測定した。シールキャップを取り外し、オートグラフを用いて、シリコーンゴム(t=0.5mm)に対する刺通抵抗を測定した。結果は、表3に示す通りであった。なお、刺通抵抗は低い方が好ましいと言える。
実施例のシールキャップを用いたものにおいて、穿刺後の針先は、十分な刺通性を有することが確認できた。
【0062】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のシリンジ用組立体は、以下のものである。
(1) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、さらに、
前記シールキャップは、ブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成され、かつ、前記シールキャップは、前記外筒に装着され、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入された状態となっているシリンジ用組立体。
【0064】
このシリンジ用組立体では、シールキャップがブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成されているため、特に前記外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面部分について、オゾンとの接触に起因する劣化、ヒビ割れ、亀裂の発生が少ない。また、本発明のシリンジ用組立体では、シールキャップの穿刺針取付部収納部の内面と外筒の穿刺針取付部の外面は、密着した状態となっているが、良好な水蒸気透過性を有しているため、良好なオートクレーブ滅菌性を呈する。また、穿刺針がシールキャップに刺入した状態にてある程度の期間経過した後、外筒よりシールキャップを離脱しても、穿刺針の外面に、シールキャップ形成材料が付着することがない。
【0065】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌されている上記(1)に記載のシリンジ用組立体。
(3) 前記ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムを主成分とするものである上記(1)または(2)に記載のシリンジ用組立体。
(4) 前記ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムである上記(1)または(2)に記載のシリンジ用組立体。
(5) 前記ゴム組成物は、フィラーを含有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(6) 前記ゴム組成物における前記ブチルゴムおよび前記ジエン系ゴムは、架橋している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(7) 前記穿刺針は、先端に前記穿刺用針先を有する中空針であり、かつ、基端部にて前記外筒本体部内と連通している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(8) 前記シールキャップは、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記外筒の前記穿刺針取付部の外面が密着した状態となっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0066】
本発明のプレフィルドシリンジは、以下のものである。
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0067】
本発明の穿刺針付外筒用シールキャップは、以下のものである。
(10) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が固定された穿刺針とを備える外筒に装着される穿刺針付外筒用シールキャップであって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部を収納する穿刺針取付部収納部と前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記穿刺針取付部収納部の内面に形成された突出部とを備え、さらに、
前記シールキャップは、ブチルゴムとジエン系ゴムとの混合物をベースポリマーとするゴム組成物により形成されている穿刺針付外筒用シールキャップ。
【0068】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(11) 前記ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムを主成分とするものである上記(10)に記載の穿刺針付外筒用シールキャップ。
(12) 前記ジエン系ゴムは、ブタジエンゴムである上記(10)に記載の穿刺針付外筒用シールキャップ。
(13) 前記シールキャップは、前記穿刺針取付部収納部の内面に形成された張付抑制面を備えている上記(10)ないし(12)のいずれかに記載の穿刺針付外筒用シールキャップ。
【0069】
本発明のシリンジ用組立体包装体は、以下のものである。
(14) 複数の上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、
前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌されているシリンジ用組立体包装体。
図1
図2
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図9
図10
図11
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