(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気供給源からの空気を気密容器内に流入させて内圧を上げて移送対象液を吐出するステップと、一定量の移送対象液の吐出後に液封が破れて前記気密容器内の内圧が下がるステップと、前記気密容器内の内圧低下に伴い移送対象液が前記気密容器内に流入するステップと、を繰り返すことにより、移送対象液を移送させる液移送方法であって、
前記圧力上昇によって圧力が第1の閾値を超え、圧力低下によって圧力が第2の閾値を下回ったことを検知することにより、前記移送対象液の流入と吐出のサイクルを検知し、当該サイクルが所定期間に所定回数となるように、前記空気供給源からの空気流入を制御することを特徴とする液移送方法。
空気供給源からの空気を気密容器内に流入させて内圧を上げて移送対象液を吐出するステップと、一定量の移送対象液の吐出後に液封が破れて前記気密容器内の内圧が下がるステップと、前記気密容器内の内圧低下に伴い移送対象液が前記気密容器内に流入するステップと、を繰り返すことにより、移送対象液を移送させる液移送方法であって、
液封が破れている状態を検知し、当該液封が破れている状態においては、前記空気供給源からの空気流入を停止又は抑止することを特徴とする液移送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニューマチックポンプは、構造が単純(即ち安価)であり、機械的な動作部分がないため故障しにくく、高粘性流体やSS含有液体でも移送可能である。また、1回の吐出量は正確なものとなる(U字管によって決まる水封の高さが一定であり、1回に吐出される液の体積が一定となる)ため、定量性が比較的良い。ニューマチックポンプは、これらの特徴を持った優れた液移送装置である。
しかし、動力源が空気であるために、時間当たりの移送量の制御がやや難しいという問題がある。前述のごとく1回の液体の吐出量自体は正確なものであるが、動力源となる空気の量を安定して任意に制御すること(空気量に基づいた制御を行うこと)が難しいため、液体の移送量を任意に変化させることが難しいものである。原理的には、所定量の空気を供給することで1回の液体の吐出が起こるものであるが、“所定量の空気を供給すること”をブロワ等の空気供給源に対する制御によって行うことは簡単なことではない。空気(気体)は体積変動や圧力変動の幅が大きく、且つ、温度等の環境条件の影響も受けやすいため、空気の量を安定して任意に制御することが難しく、よって、液体の移送量を任意に変化させることや、移送量の精度をより高くすることが難しいものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、ニューマチックポンプ(空気圧式ポンプ)において、液体の移送量を任意に変化させること、又は、液体の移送量の精度をより高くすることが可能な、液移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
移送対象液の液面レベルより少なくともその一部が低くなるように配置される気密容器と、前記気密容器に移送対象液を流入させる液流入部と、空気(気体)供給源からの空気(気体)を前記気密容器に流入させる空気(気体)流入部と、前記空気(気体)流入部からの空気(気体)の流入による圧力上昇によって前記気密容器内の移送対象液を吐出させる液吐出部と、移送対象液の吐出による前記気密容器内の移送対象液の液面の低下により液封が破れることによって前記気密容器内の圧力を低下させる液封部と、を備えることにより、前記気密容器への移送対象液の流入と、移送対象液の吐出を繰り返すことで移送対象液を移送させる液移送装置であって、前記移送対象液の流入と吐出のサイクルを検知するサイクル検知部と、前記サイクル検知部によって検知される吐出のサイクルが、所定期間に所定回数となるように、前記空気(気体)供給源を制御する制御信号を出力する制御部と、を備えることを特徴とする液移送装置。
【0007】
(構成2)
1サイクルにおける吐出量が予め記憶されており、入力部に対する単位時間当たりの移送量の設定に対し、前記1サイクルにおける吐出量に基づいて、所定期間内の必要サイクル数を算出し、前記空気(気体)供給源を制御する制御信号を出力することを特徴とする構成1に記載の液移送装置。
【0008】
(構成3)
移送対象液の液面レベルより少なくともその一部が低くなるように配置される気密容器と、前記気密容器に移送対象液を流入させる液流入部と、空気(気体)供給源からの空気(気体)を前記気密容器に流入させる空気(気体)流入部と、前記空気(気体)流入部からの空気(気体)の流入による圧力上昇によって前記気密容器内の移送対象液を吐出させる液吐出部と、移送対象液の吐出による前記気密容器内の移送対象液の液面の低下により液封が破れることによって前記気密容器内の圧力を低下させる液封部と、を備えることにより、前記気密容器への移送対象液の流入と、移送対象液の吐出を繰り返すことで移送対象液を移送させる液移送装置であって、液封が破れている状態を検知する状態検知部と、前記状態検知部によって、前記液封が破れている状態が検知された際に、空気(気体)供給を停止又は抑止するように前記空気(気体)供給源を制御する制御信号を出力する制御部と、を備えることを特徴とする液移送装置。
【0009】
(構成4)
前記サイクル検知部又は前記状態検知部が、圧力センサ若しくは水位センサによって構成されていることを特徴とする構成1から構成3の何れかに記載の液移送装置。
【0010】
(構成5)
空気(気体)供給源からの空気(気体)を気密容器内に流入させて内圧を上げて移送対象液を吐出するステップと、一定量の移送対象液の吐出後に液封が破れて前記気密容器内の内圧が下がるステップと、前記気密容器内の内圧低下に伴い移送対象液が前記気密容器内に流入するステップと、を繰り返すことにより、移送対象液を移送させる液移送方法であって、前記移送対象液の流入と吐出のサイクルを検知し、当該サイクルが所定期間に所定回数となるように、前記空気(気体)供給源からの空気(気体)流入を制御することを特徴とする液移送方法。
【0011】
(構成6)
空気(気体)供給源からの空気(気体)を気密容器内に流入させて内圧を上げて移送対象液を吐出するステップと、一定量の移送対象液の吐出後に液封が破れて前記気密容器内の内圧が下がるステップと、前記気密容器内の内圧低下に伴い移送対象液が前記気密容器内に流入するステップと、を繰り返すことにより、移送対象液を移送させる液移送方法であって、液封が破れている状態を検知し、当該液封が破れている状態においては、前記空気(気体)供給源からの空気(気体)流入を停止又は抑止することを特徴とする液移送方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液移送装置及び液移送方法によれば、液体の流入と吐出のサイクルを検知し、当該サイクルが所定期間に所定回数となるように、空気供給源からの空気流入を制御するため、液体の移送量を任意に変化させること、又は、液体の移送量の精度をより高くすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0015】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の液移送装置の構成の概略を示す図である。
本実施形態の液移送装置10は、前述したニューマチックポンプであり、
移送対象液の液面レベルより少なくともその一部が低くなるように配置される(本実施形態では、液面下に全体が水没して配置される)気密容器11と、
気密容器11に移送対象液を流入させる液流入部12と、
空気供給源(ブロワ50)から供給される空気を気密容器11に流入させる空気流入部13と、
空気流入部13からの空気の流入による圧力上昇に伴って気密容器11内の移送対象液を吐出させる液吐出部14と、
移送対象液の吐出による気密容器11内の移送対象液の液面の低下により水封が破れることによって気密容器11内の圧力を低下させる水封部15と、
移送対象液の流入と吐出のサイクルを検知するサイクル検知部16と、
サイクル検知部16によって検知される吐出のサイクルが、所定期間に所定回数となるように、空気供給源(ブロワ50)を制御する制御信号を出力する制御部17と、を備える。
【0016】
気密容器11は、内部に所定容量の移送対象液を流入させることができ、所定の強度(外部からの水圧や、内圧の上昇に耐え得る強度)を有するものであればよく、その素材や形状などは特に問わない。液移送装置10は、以下で説明するように、水頭圧によって移送対象液が液流入部12を介して気密容器11内に流入するものであるため、気密容器11は、移送対象液の液面レベルより少なくともその一部が低くなるように配置される。
【0017】
液流入部12は、気密容器11内に移送対象液を流入させることができ、且つ、液流入部12から気密容器11内に供給された空気が漏れること等によって意図しない圧力低下を生じさせることがないものであればよい。
図1では、液流入部12が「一端が気密容器11に接続され、他端が、水封が破れる液面レベルより“所定長さ(液吐出部14の液面上の突出高さ分以上)”下で開口する流入管」にて形成されているものを示しているが、
図5に示されるように、逆止弁によって液流入部12を構成するもの等であってもよい。
【0018】
空気流入部13は、空気供給源(ブロワ50)からの空気を気密容器11に流入させることができるものであればよい。
なお、本実施形態では、空気供給源として、ブロワ50を例としているが、空気供給源は空気を供給して気密容器11内を所定圧力にすることができるものであればよい(例えばコンプレッサー等。なお、必ずしも“空気”である必要はなく、何らかの気体を供給するものであってよい)。
【0019】
液吐出部14と、水封部15は、気密容器11内の移送対象液を吐出させることができ、且つ、気密容器11内の液面の変動に応じて、水封が保たれる状態(気密容器11の内圧が高い状態を維持)と、破れる状態(気密容器11を大気圧に連通)が繰り返されるものであればよい。
図1では、液吐出部14が「一端が気密容器11の下部に接続され、他端が液の移送先(図示では移送先を省略)にて開口する吐出管」にて形成されているものを示している。また、水封部15が「一端が液吐出部14(吐出管)と接続され、他端が気密容器11と接続されるU字管」にて構成されるものを示している。
【0020】
図2は、液移送装置10の動作サイクルを説明する図である。
工程1:液移送(
図2(a))
気密容器11内に空気が供給されることにより、その内圧が上昇し、気密容器11内の移送対象液が押し出され、液吐出部14から移送対象液が吐出されることで、液の移送が行われる。
工程2:U字管水封切れ(
図2(b))
気密容器11内の移送対象液が押し出されてその液面が下がり、これがU字管(水封部15)の下端付近までくると、U字管の水封が破れ、これにより気密容器11が大気圧に連通する。
工程3:液流入(
図2(c))
U字管(水封部15)の水封が破れ、気密容器11が大気圧に連通(気密容器11の内圧が低下)したことで、水頭圧によって移送対象液が液流入部12を介して気密容器11内に流入する。
工程4:U字管封水(
図2(d))
移送対象液の流入により、気密容器11内の液面が上がり、これがU字管(水封部15)に流れ込む高さまでくると、U字管(水封部15)が液で満たされ、封水される。
液移送装置10は、上記の動作サイクルを繰り返すことにより、液の移送を行うものである。
【0021】
サイクル検知部16は、上記の動作サイクルを検知するセンサであり、本実施形態では、空気流入部13に設けられた圧力センサによって構成される。
図4は、液移送装置10の気密容器11内の圧力変動の例を示すグラフである(大気圧を基準(0)とした圧力変動であり、ここでは簡単化のため、静圧だけを考え、動圧は無視した)。ここでの例は、動作サイクルが1分で、気密容器内の液面が水面下50cm程度の位置にある場合を想定したものである。
前述の工程1では、気密容器11内の圧力が次第に高くなる(吐出管液面と気密容器11内の液面の高低差分だけ気密容器11内の圧力が大気圧より高くなる)。
工程2では、U字管封水切れ直前で気密容器11内の液面は最も低い位置となり、圧力も最も高くなる。U字管から空気が抜け始めると空気は急激に抜けるため、圧力も急激に下がり始める。
工程3では、気密容器11内の内部圧力がほぼ大気圧となる。
工程4では、U字管が封水されるまではほぼ大気圧のままで、封水後は気密容器11内の圧力が上昇し始め、工程1に戻る。
圧力センサであるサイクル検知部16は、上記の圧力変動を検知するセンサである。
【0022】
制御部17はマイコンや専用のIC等によって構成され、圧力センサであるサイクル検知部16によって検知される圧力に基づいて動作サイクルを検知し、当該動作サイクルが所定期間に所定回数となるように、空気供給源(ブロワ50)を制御する制御信号(本実施例では、ブロワ50をオン/オフする信号)を出力する。例えば、1回の吐出量が5L(気密容器11とU字管の構成で決まる)である装置において、5L/分の移送能力を備えさせる場合、1分間に1サイクルの動作が行われるように、空気供給源(ブロワ50)を制御するものである。最も単純な例としては、1分間における動作サイクルが1回となるように、空気供給源をオン/オフするものが挙げられる。
図3は、このような処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0023】
電源オン等により、液移送装置10の動作が開始されると、制御部17のタイマ機能による計時を開始し、空気供給源(ブロワ50)をオンにする(ステップ301、302)。
ステップ303では、サイクル検知部16から得られる圧力が所定値1を超えるのを待ち、続くステップ304では、圧力が所定値2を下回るのを判別する。ステップ303と304の処理は、上述した動作サイクルにおける圧力上昇と下降を検知するものである。
図4の例に基づけば、例えば、所定値1が4(kPa)に設定され、所定値2が1(kPa)に設定されることで、1回の吐出が終わった状態を検知するものである。
【0024】
上記処理により1回の吐出が終わったと判断された場合には、空気供給源(ブロワ50)をオフとし(ステップ304:Yes→ステップ305)、タイマが所定期間を経過した後にステップ301へと戻って上記処理を繰り返す(ステップ306)。“所定期間”は、上記の例(1回の吐出量が5Lの装置を、5L/分の移送能力とする場合)でいえば、1分となるものであり、予め設定されている値である。
【0025】
以上のごとく、本実施形態の液移送装置10によれば、液体の流入と吐出のサイクルを検知し、当該サイクルが所定期間に所定回数となるように、空気供給源からの空気流入を制御するため、液体の移送量の精度をより高くすることが可能となる。
【0026】
図5には、生物学的窒素除去の浄化槽において、嫌気槽と好気槽の間の汚水の循環に好適な液移送装置20を示した。
図1の液移送装置10と同一の構成については同一の符号を使用している。
液移送装置20は、共通の空気流入部によって相互に連通した異なる容量の2つの気密容器11、11´を備え、一方の気密容器には液吐出部14と水封部15(U字管)が備えられ、他方の気密容器11´には液吐出部14´のみが設けられる。当該構成により、動作サイクルが同期されつつ、異なる移送量とすることができる。
生物学的窒素除去の浄化槽においては、嫌気槽と好気槽の間で循環させる移送量にある程度決まった好適な条件があり、例えば個人宅用の浄化槽においては、嫌気槽から好気槽へ5L/分送り、好気槽から嫌気槽へ4L/分送るようにすると、汚水処理を高効率にすることができる。従って、吐出容量が5Lの気密容器11を嫌気槽、吐出容量が4Lの気密容器11´を好気槽にそれぞれ配置し、上記説明した本実施形態の制御方法を適用することにより、比較的単純且つ安価な構成によって、精度の高い循環を行わせることが可能となる。
なお、本発明に係る液移送装置は、水処理関連だけでなく、各分野の液移送のために利用することができる(例えば、薬液の送液など)。
【0027】
<実施形態2>
図6は、本発明に係る実施形態2の液移送装置の構成の概略を示す図である。実施形態1と同様の構成要素については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0028】
本実施形態の液移送装置30は、入力部18を備えることにより、単位時間当たりの移送量の設定を受け付け、任意の移送量(ブロワ50の能力に基づく上限値以下の任意の移送量)にて動作することが可能なものである。
制御部17には、1サイクルにおける吐出量が予め記憶されおり、ユーザ等からの移送量の設定を受け付け、当該移送量に合う吐出サイクルを算出し、これに基づいて空気供給源を制御する制御信号を出力するものである。
図7は、このような処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、実施形態1(
図3)と同様の処理概念となるものについては同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0029】
電源オン等により、液移送装置10の動作が開始されると、移送量の設定値を取得する(ステップ701)。ここでの“移送量の設定値の取得”は、別処理(入力部18からの設定を受け付ける処理)等によって既に制御部17のメモリに設定されている移送量を取得するものであるが、ここでユーザ等からの移送量の設定を入力部18から取得するもの等であっても構わない。
【0030】
続くステップ702では、ステップ701で取得された移送量の設定値に合う吐出サイクル(所定期間内の必要サイクル数)を算出し、“所定時間”と“所定サイクル”を設定する。
例えば、吐出容量(1サイクルにおける吐出量)が5Lの装置であり、移送量の設定値が10L/分であった場合には、「所定時間=1分、所定サイクル=2」や「所定時間=30秒、所定サイクル=1」が算出されるものである。
なお、当該算出処理は、所定の計算によって都度算出するものであってもよいし、各移送量に対応する“所定時間”と“所定サイクル”が設定されたテーブルを備えておくことにより、当該テーブルから取得するもの等であってもよい。
【0031】
続いて、タイマをスタートしてブロワ空気供給源(ブロワ50)をオンにする(ステップ301、302)とともに、nを初期化する(ステップ703)。nはサイクル数を数えるための変数である。
ステップ303、304によって1サイクルが検知されたら、nをインクリメントし(ステップ704)、nが“所定サイクル”に至ったか否かを判別する(ステップ705)。
nが“所定サイクル”に至っていない場合には、ステップ303へと戻って上記処理を繰り返す(次のサイクルへ移行)。一方、nが“所定サイクル”に至った場合には、ブロワ空気供給源(ブロワ50)をオフにして(ステップ705:Yes→ステップ305)、タイマが所定期間を経過した後にステップ301へと戻って上記処理を繰り返す(ステップ306)。
【0032】
以上のごとく、本実施形態の液移送装置20によれば、液体の移送量を任意に変化させつつ、液体の移送量の精度をより高くすることができる。即ち、設定値に合わせた正確な移送量の制御が可能となるものであり好適である。
なお、ここでは設定値が1つであるものを例としたが、複数の設定値を設定可能とするものであってもよい。例えば、季節や時間帯に応じた複数の設定値があり、季節や時間帯に応じて移送量を異ならせる処理とするもの等であってもよい。
【0033】
<実施形態3>
図8は実施形態3の液移送装置の処理動作の概略を示したフローチャートである。実施形態1、2と同様の処理概念となるものについては同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。なお、液移送装置の構成については、実施形態2と同一の装置である。
本実施形態の液移送装置は、不要な空気供給を低減させることにより、省エネルギー化が図られた液移送装置である。
前述した動作サイクルの説明からも理解されるように、空気の供給が必要なのは基本的に封水されている期間のみであり、水封が破れている期間においては空気供給の必要はない。本実施形態の液移送装置は、水封が破れている状態を検知することで、水封が破れている状態が検知された際に、空気供給を停止又は抑止するように空気供給源を制御するものである。“水封が破れている状態”は、圧力が急激に低下することでその始期がわかる。従って、圧力センサであるサイクル検知部16が、水封が破れている状態を検知する状態検知部としても機能するものである。“水封が破れている状態”の終期については、ここでは時間によって定めるものを例としている。即ち、予め“水封が破れた後、液が気密容器内に流入し、再び封水されまでの時間”を測定しておき、これに基づく時間を下記説明における“所定時間2”として設定しておくものである。
【0034】
図8において、ステップ701〜ステップ304までは実施形態2(
図7)と同様の処理である。
ステップ304によって圧力低下(即ち水封の破れ)が検知されたら、空気供給源(ブロワ50)をオフにし(ステップ304:Yes→ステップ305)、タイマ2をスタートする(ステップ801)。これにより、水封が破れた状態での空気供給が停止され、“水封が破れた後、液が気密容器内に流入し、再び封水されまでの時間”の計測がスタートされる。
続くステップ704、705における所定サイクル数の判断において、nが“所定サイクル”に至っていない場合には、ステップ802へと移行して、タイマ2が所定時間2を経過するまで待つ処理を行う。前述のごとく、“水封が破れた後、液が気密容器内に流入し、再び封水されまでの時間”の経過を待つものであり、当該時間の経過後、ステップ302へ戻って空気供給源(ブロワ50)をオンにして、上記処理を繰り返す(次のサイクルへ移行)。
一方、nが“所定サイクル”に至った場合には、ステップ306へ移行してタイマが所定期間を経過するのを待ち、所定期間の経過後にステップ301へと戻って上記処理を繰り返す。
【0035】
以上のごとく、本実施形態の液移送装置によれば、不要な空気供給を低減させることにより、省エネルギー化を図ることができる。
なお、ここでは、空気供給源を停止(ブロワ50をオフ)させるものを例としたが、空気供給源の運転状態を抑止(低出力化)するもの等であってもよい(電源のオン/オフよりも、オン状態を維持しつつ、その能力を低下させる方式の方が効率がいい場合もあり、また、電源のオン/オフを繰り返すと装置の寿命が短くなる場合等もあるため)。
【0036】
各実施形態においては、空気供給源の制御として、ブロワ(空気を供給する装置自体)のオン/オフの制御を行うものを例として説明したが、これに限るものではなく、気密容器11内に流入する空気を制御できるものであればよい。例えば、空気流入部13等に電動弁や電磁弁を設けて、当該電動弁や電磁弁の開閉を制御するもの等であってもよい。
また、各実施形態では、単純なオン/オフ制御を例としたが、ブロワ等の空気供給装置の運転状態を制御(モータへの供給電圧の制御など)するものや、電動弁や電磁弁の開度を調節制御すること等により、空気の供給量を制御するものであってよい。実施形態で例示した処理においては、例えば“1分間に1サイクル”の制御を行う際に、ブロワの能力によっては、“最初の10秒で1サイクルが終わり、残りの50秒は停止状態”ということにもなる(液移送が間欠的になる)が、なるべく均一に液移送が行われるように(上記例でいえば、1サイクルがちょうど1分間となるように)、適宜ブロワの出力を下げる等するものである。
このような空気の供給量の強弱を制御する場合には、適宜PID等のフィードバック制御を用いて最適化する等してもよい。
【0037】
また、各実施形態においては、サイクル検知部(若しくは状態検知部)として、圧力センサを用いるものを例としたが、水位センサを用いるものであってもよい。
図2の動作サイクルの説明からも明らかなように、気密容器等の水位を計測することにより、サイクルを検知することが可能である(水位センサを用いる場合には、実施形態3における“水封が破れている状態の終期”についても、センサで検知することができる)。また、水封が破れる際には液吐出部から空気が吹き出るため、音や振動が発生する。これらの音や振動を検知するセンサ(マイクや加速度センサ)を使用して、サイクル検知部(若しくは状態検知部)とするものであっても構わない。
【0038】
各実施形態においては、液移送装置が移送対象液の中に沈められているものを例としているが、液移送装置が移送対象液の外にあるものであっても構わない(ただし、気密容器が移送対象液の液面レベルより低くなるように配置される必要がある)。また、液吐出部や水封部が気密容器の外部に設けられるものを例としたが、これらが気密容器内に備えられるものであっても構わない。
【0039】
なお、本発明は、液体の流入と吐出のサイクルを検知し、当該サイクルが所定期間に所定回数となるように空気供給源からの空気流入を制御することで、液体の移送量を任意に変化させることを可能とするものであるが、機械的な操作により1回の吐出量を調整することで、液体の移送量を変更することもできる。
“1回の吐出量”は、気密容器の容量と、U字管による水封の高さ(U字管の上端(液体流入位置)と下端の高低差)によって定まるものであるため、この何れかを調整可能とすることで、移送量を調整することができる。
図9には、U字管による水封の高さを機械的に調整できるようにした構造例を示した。
図9(a)は、U字管を傾けることで、高低差を変える方法である。回転可能な接続部151を備えることにより、U字管を傾けることができるように構成した例である。
図9(b)は、U字管を伸縮可能とすることで、高低差を変える方法である。内部に受入れる長さを可変にできる接続部152を備えることにより、U字管を伸縮可能とした例である。
図9(c)は、U字管の一部を可撓管として屈曲させることにより高低差を変える方法である。フレキ管153を備えることにより、U字管を屈曲可能とした例である。
これらのように、U字管に対する機械的な調整法を用いる場合には、U字管を気密容器の外部に設けた方が作業性がよく、また、U字管が、移送対象液が溜められている槽の外部に設けられている方が作業性がよい。