(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィンが、重量平均分子量が400万以上600万以下である高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万〜80万である低分子量ポリエチレンとを、質量比で50:50〜80:20の割合で混合させたポリエチレン組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の液体フィルター用基材。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明するが、これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。なお、本明細書全体において、数値範囲で「〜」を用いた場合、各数値範囲にはその上限値と下限値を含むものとする。また、ポリオレフィン微多孔膜に関し、「長手方向」とは、長尺状に製造されるポリオレフィン微多孔膜の長尺方向を意味し、「幅方向」とは、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向に直交する方向を意味する。以下、「幅方向」を「TD」とも称し、「長手方向」を「MD」とも称する。
【0023】
[液体フィルター用基材]
本発明の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材であって、気・液相置換によるハーフドライ法で測定した前記ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPが1nm以上20nm以下であり、液・液相置換によるハーフドライ法で測定した前記ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
LLPが1nm以上15nm以下であり、かつ、前記平均流量孔径d
PPと平均流量孔径d
LLPの差(d
PP−d
LLP)が12nm以下であり、前記ポリオレフィン微多孔膜の厚さが4〜25μmである。
【0024】
このような本発明によれば、薄膜ながらも高圧力下において高い液体透過性と高い微小粒子捕集性の両方を有する液体フィルター用ポリオレフィン基材を提供することができる。以下、各構成の詳細について説明する。
【0025】
(ポリオレフィン微多孔膜)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンを含んで構成された微多孔膜である。ここで、微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。なお、ポリオレフィン微多孔膜において、ポリオレフィンは90重量部以上含まれていることが好ましく、残部として本発明の効果に影響を与えない範囲で有機または無機のフィラーや界面活性剤等の添加剤を含ませてもよい。
【0026】
(平均流量孔径d
PP)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、薄膜ながらも高い圧力条件下において安定した多孔構造を有することで高い微小粒子捕集性をもつことを特徴とする。当該ポリオレフィン微多孔膜の気・液相置換によるハーフドライ法で測定した前記ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPは1nm以上であることが必要であり、上限値として20nmであることが必要である。本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPが1nm未満であると、十分な液体透過性を得ることが難しくなる。このような観点では、d
PPは5nm以上が好ましく、8nm以上がより好ましく、さらには10nm以上が好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPが20nmを超えると、例えば10nm未満の微小な粒子を非常に高度
に捕集することができなくなる。このような観点では、d
PPは18nm以下が好ましく、16nm以下がより好ましい。
【0027】
(平均流量孔径d
LLP)
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の液・液相置換によるハーフドライ法で測定した平均流量孔径d
LLPは1nm以上であることが必要であり、上限値として15nm以下であることが必要である。本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
LLPが1nm未満であると、十分な液体透過性を得ることが難しくなる。このような観点では、d
LLPは3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
LLPが15nmを超えると、例えば10nm未満の微小な粒子を非常に高度
に捕集することができなくなる。このような観点では、d
LLPは12nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
【0028】
(平均流量孔径d
LLPと平均流量孔径d
PPの差)
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPと平均流量孔径d
LLPの差(d
PP−d
LLP)は12nm以下である必要がある。本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPと平均流量孔径d
LLPの差(d
PP−d
LLP)が12nm以下である場合、高圧力下で安定した多孔構造を有することができるため、微小な粒子の詰りや濾過条件等による高圧力下でも安定した捕集性能を保つことができる。このような観点では、平均流量孔径d
LLPと平均流量孔径d
PPの差(d
PP−d
LLP)は、7nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。
【0029】
なお、本発明においては、上述したように、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
PPが1〜20nmであり、平均流量孔径d
LLPが1〜15nmであり、かつ、d
PP−d
LLPが12nm以下であることが重要である。気・液相置換によるハーフドライ法で測定した平均流量孔径d
PPは、微多孔膜の高圧で液体が流入されているときの孔径が反映される。液・液相置換によるハーフドライ法で測定した平均流量孔径d
LLPは、微多孔膜の低圧で液体が流入されているときの孔径が反映される。そして、平均流量孔径d
PPと平均流量孔径d
LLPの差(d
PP−d
LLP)は高圧状態と低圧状態の孔径の差、つまり孔の圧力に対する変形のしにくさを意味する。つまり、本発明におけるポリオレフィン微多孔膜は、非常に微細な多数の空孔が均一な大きさで揃った多孔質構造を有しているため、ポリオレフィン微多孔膜の厚さが薄いにも関わらず、液体フィルターの使用時において低圧力下ではもちろんのこと高圧力下においても孔の変形が起きにくい多孔質構造となっている。
【0030】
このような多孔質構造の制御方法は特に制限されるものではないが、例えば、ポリオレフィン樹脂の組成、原料中のポリオレフィン樹脂濃度、原料中に複数の溶剤を混合して使用する場合はその混合比率、押出シート状物内部の溶剤を絞り出すための加熱温度、押し圧力、加熱時間、延伸倍率や延伸後の熱処理(熱固定)温度、抽出溶媒への浸漬時間、アニール処理温度や処理時間等によって制御し得る。
【0031】
(厚み)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、その厚みは4〜25μmであることが重要である。ポリオレフィン微多孔膜の膜厚が4μm以上である場合、十分な力学強度が得られやすく、ポリオレフィン微多孔膜の加工時等におけるハンドリング性やフィルターカートリッジの長期使用における耐久性が得られやすくなるため好ましい。このような観点では、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は5μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。一方、厚みが25μm以下である場合、該微多孔膜単膜で十分な透水性能を得られやすくなるばかりでなく、所定の大きさのフィルターカートリッジにおいて、より多くのろ過面積を得られやすくなり、ポリオレフィン微多孔膜の加工時のフィルターの流量設計や構造設計がし易くなるため好ましい。このような観点では、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は20μm以下がより好ましく、16μm以下がさらに好ましく、13μm以下が特に好ましい。
【0032】
例えば、同じ大きさのハウジングにフィルターカートリッジを収めることを想定した場合、濾材(フィルター用基材を含む構成材全体)の厚みが薄いほど、濾材面積を大きくすることができるため、液体フィルターとして好ましい高流量・低ろ過圧力の設計が可能になる。すなわち、液体フィルターとして、同じ流量を維持したい場合にはろ過圧力が低くなり、同じろ過圧力を維持したい場合には流量が高くなるように設計することが可能になる。特に、ろ過圧力が低くなることによって、一旦捕集された異物が、濾材内部でろ過圧力に継続して曝されることにより、時間の経過とともに濾材内部からろ過液とともに押し出されて漏れ出す確率が著しく低下することや、ろ過する液体中に溶存するガスが、ろ過前後での圧力差(ろ過後の圧力低下)によって微小な気泡となって現れる確率が著しく低下すること等の好ましい効果が期待でき、薬液等のろ過対象物のろ過歩留が向上することや、それらの品質を長時間に渡って高度に維持する効果が期待できる。
【0033】
その一方で、濾材の厚みが薄いほど、濾材の強度や耐久性能が低下するが、例えば、フィルター設計において、粗目の高強度支持体と複合化する(例えば、重ね合せて折込む等の加工を行う)ことで補強しながら、耐久性と流量の設計を調整することも可能になる。
【0034】
(平均流量孔径d
LLPおよびd
PPの標準偏差)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、平均流量孔径d
LLPおよびd
PPのそれぞれの標準偏差が1nm以上5nm以下であることが好ましい。平均流量孔径d
LLPおよびd
PPの標準偏差が5nm以下である場合、粒径数nmの微小な粒子を捕集しやすく、また液体フィルターの使用時に高圧下に晒された場合にも多孔質構造が潰れ難くなるため好ましい。このような観点では、平均流量孔径d
LLPおよびd
PPのそれぞれの標準偏差は3nm以下であることが特に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径d
LLPおよびd
PPの標準偏差が1nm以上である場合、粒径数nm〜数十nm程度の微小な粒子を非常に高度に捕集しやすくなる為好ましい。
【0035】
(最大孔径)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、バブルポイント法で測定した最大孔径が15nm以上25nm以下であることがさらに好ましく、17nm以上20nm以下であることが特に好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の最大孔径が25nm以下である場合、粒径数nmの微小な粒子を高度に捕集しやすくなるため好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の最大孔径が15nm以上である場合、微小な粒子を非常に高度に捕集しやすくなるだけでなく、十分な透液性能を得られやすくなるため好ましい。
【0036】
(空孔率)
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜の空孔率は39〜70%であることが好ましく、より好ましくは45%〜65%である。該ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が39%以上である場合、透液性能が良好なものとなる点で好ましい。一方、空孔率が70%以下である場合、ポリオレフィン微多孔膜の力学強度が良好なものとなりハンドリング性も向上する点で好ましい。ここで、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出する。
ε(%)={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
2)
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
3)
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
【0037】
(透水性能(水流量))
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の透水性能は90kPaの減圧下で0.10〜0.40ml/min/cm
2であることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の透水性能が0.10ml/min/cm
2以上である場合、液体フィルターとしての透水性能を十分に得られやすくなるばかりでなく、フィルターを介した送液の安定性(例えば、一定の送液量を維持するための動力負荷の安定性や一定の送液圧力(一定の動力負荷)下での送液量の安定性)が長期に渡って得られやすくなるため好ましい。このような観点では、0.15ml/min/cm
2以上であることが更に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の透水性能が0.40ml/min/cm
2以下である場合、例えば、約10nmまたはそれ以下のパーティクルを高度に捕集しやすくなるため、好ましい。
【0038】
(ポリオレフィン)
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の単独重合体あるいは共重合体、またはこれらの1種以上の混合体を用いることができる。この中でも、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。また、ポリエチレンとそれ以外の成分を組み合わせて用いてもよい。ポリエチレン以外の成分としては、例えばポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリオレフィンとして性質の相互に異なるポリオレフィンを用いる、すなわち相互に相溶性の乏しい重合度や分岐性の異なる、換言すれば結晶性や延伸性・分子配向性を異にするポリオレフィンを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
特に本発明に用いるポリオレフィンとしては、重量平均分子量が400万以上600万以下である高分子量ポリエチレンと重量平均分子量が20万〜80万である低分子量ポリエチレンとを混合させたポリエチレン組成物を用いることが好ましい。これは2種以上のポリエチレンを適量配合することによって、延伸時のフィブリル化に伴うネットワーク網状構造を形成させ、空孔発生率を増加させる効用がある。特に高分子量ポリエチレンと低分子量ポリエチレンとの配合比は質量比で50:50〜80:20であることが好ましい。低分子量ポリエチレンとしては、密度が0.92〜0.96g/cm
3である高密度ポリエチレンが好ましい。
【0040】
なお、重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜の試料をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム;GMH6−HTおよびGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定することで得られる。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いることができる。
【0041】
[液体フィルター]
上述した本発明の液体フィルター用基材は、薬液との親和性付与加工が適宜行われた上で、カートリッジ形体に加工され、液体フィルターとして用いることができる。液体フィルターは、有機物および/または無機物からなる粒子を含む、もしくは、含んでいる可能性がある被処理液から、当該粒子を除去するための器具である。粒子は被処理液中において固体状あるいはゲル状で存在する。本発明は、粒径が数nm程度の非常に微細な粒子を除去する場合に好適である。また、液体フィルターは半導体の製造工程のみならず、例えばディスプレイ製造や研磨等の他の製造工程においても用いることができる。
【0042】
液体フィルター用基材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の多孔質基材が良く知られている。上述した本発明のポリオレフィン微多孔膜からなる基材を液体フィルター用基材として用いた場合、ポリテトラフルオロエチレン多孔質基材と比べると、薬液との親和性が良いために、例えば、フィルターの薬液との親和性付与加工が容易になることや、フィルターハウジング内にフィルターカートリッジを装填して薬液のろ過を開始する際のフィルター内への薬液充填の際に、フィルターカートリッジ内に空気溜りが出来にくく、薬液のろ過歩留りが良くなる等の効果が発現する他、ポリエチレン樹脂そのものがハロゲン元素を含まないため、使用済みのフィルターカートリッジの取扱いが容易であり、環境負荷を低減できる等の効果がある。
【0043】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法および孔構造の制御方法]
本発明の液体フィルター用基材であるポリオレフィン微多孔膜は、下記に示す方法で好ましく製造することができる。即ち、
(I)ポリエチレン組成物と溶剤とを含む溶液を調整する工程、
(II)これを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却固化してゲル状成形物を得る工程、
(III)ゲル状成形物から予め一部の溶剤を絞り出す工程、
(IV)ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程、
(V)延伸した中間成形物の内部から溶剤を抽出洗浄する工程、を順次実施することにより、好ましく製造することができる。
【0044】
工程(I)ではポリオレフィン組成物と溶剤とを含む溶液を調整するが、少なくとも大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤を含む溶液を調整する。ここで溶液は好ましくは熱可逆的ゾル・ゲル溶液であり、すなわち該ポリオレフィンを該溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾル・ゲル溶液を調整する。工程(I)における大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤としてはポリオレフィンを十分に膨潤できるもの、もしくは溶解できるものであれば特に限定されないが、テトラリン、エチレングリコール、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチレンジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等の液体溶剤が好ましく挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでもデカリン、キシレンが好ましい。また、本溶液の調整においては、上記の大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤以外に、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油などの沸点が210℃以上の不揮発性の溶剤を含ませることもできる。
【0045】
工程(I)の溶液においては、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾材としての除去性能を制御する観点から、ポリオレフィン組成物の濃度を15〜45重量%とすることが好ましく、20〜40重量%とすることがさらに好ましい。ポリオレフィン組成物の濃度を低くすると、力学強度が低くなる傾向にあるためハンドリング性が悪くなり、さらには、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において切断の発生頻度が増加する傾向にある。また、ポリオレフィン組成物の濃度を高くすると空孔が形成され難くなる傾向がある。
【0046】
工程(II)は、工程(I)で調整した溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却固化してゲル状成形物を得る。好ましくはポリオレフィン組成物の融点乃至融点+65℃の温度範囲においてダイより押出して押出物を得、ついで前記押出物を冷却してゲル状成形物を得る。成形物としてはシート状に賦形することが好ましい。冷却は水溶液または有機溶媒へのクエンチでもよいし、冷却された金属ロールへのキャスティングでもどちらでもよいが、一般的には水またはゾル・ゲル溶液時に使用した揮発性溶媒へのクエンチによる方法が使用される。冷却温度は10〜40℃が好ましい。なお、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながらゲル状シートを作製することが好ましい。
【0047】
工程(III)はゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する前にゲル状成形物内の溶媒の一部を予め絞り出す工程である。工程(III)の工程では、例えば、上下2つのベルトやローラーの間隙を通過させる等の方法により、ゲル状成形物の面に圧力をかけることにより、好適に実施することが可能である。絞り出す溶媒の量は、ポリオレフィン微多孔膜に要求される液体透過性能や濾過対象物の除去性能により、調整する必要があるが、その調整は上下のベルトやローラー間の押し圧力や絞り出し工程の温度、押し回数により適正な範囲に調整することができる。なお、ゲル状成形物が受ける圧力を、ローラー等を用いて、0.01〜0.5MPaの範囲で実施することが好ましい。0.05〜0.2MPaの範囲がさらに好ましい。絞り出し温度は40〜100℃であることが好ましい。また、押し回数は、設備の許容スペースによるため、特に制限なく実施することは可能である。なお、必要に応じて、溶媒の絞り出し前に一段または複数段の予備加熱を行い、一部の揮発性溶媒をシート内から除去してもよい。その場合、予備加熱温度は50〜100℃が好ましい。また、この予備加熱を行う際、時間は1段につき5〜9分間であることが好ましい。この場合、加熱する距離および搬送速度で調節する。
【0048】
工程(IV)は、ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程である。ここで工程(IV)の延伸は、二軸延伸が好ましく、縦延伸、横延伸を別々に実施する逐次二軸延伸、縦延伸、横延伸を同時に実施する同時二軸延伸、いずれの方法も好適に用いることが可能である。また縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する方法、縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する方法、逐次二軸延伸した後にさらに、縦方向および/または横方向に1回もしくは複数回延伸する方法も好ましい。
【0049】
延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾過対象物の除去性能を制御する観点から、好ましくは40〜120倍であり、より好ましくは50〜100倍である。延伸倍率を大きくすると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において切断の発生頻度が増加する傾向がある。また、延伸倍率を低くすると厚み斑が大きくなる傾向がある。延伸は、溶媒を好適な状態に残存させた状態で行うことが好ましい。延伸温度は80〜125℃が好ましい。特に100〜110℃が好ましい。
【0050】
また(IV)の延伸工程に次いで熱固定処理を行っても良い。熱固定温度は、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾過対象物の除去性能を制御する観点から、110〜143℃であることが好ましい。125〜138℃がさらに好ましい。熱固定温度を高くすると、ポリオレフィン微多孔膜の濾過対象物の除去性能が顕著に悪化する傾向があり、熱固定温度を低くすると液体透過性能が顕著に小さくなる傾向がある。
【0051】
工程(V)は延伸した中間成形物の内部から溶媒を抽出洗浄する工程である。ここで、工程(V)は、延伸した中間成形物(延伸フィルム)の内部から溶媒を抽出するために、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素やヘキサン等の炭化水素の溶媒で洗浄することが好ましい。溶媒を溜めた槽内に浸漬して洗浄する場合は、20〜150秒の時間を掛けることが、溶出分が少ないポリオレフィン微多孔膜を得るために好ましく、より好ましくは30〜150秒であり、特に好ましくは30〜120秒である。さらに、より洗浄の効果を高めるためには、槽を数段に分け、ポリオレフィン微多孔膜の搬送工程の下流側から、洗浄溶媒を注ぎ入れ、工程搬送の上流側に向けて洗浄溶媒を流し、下流槽における洗浄溶媒の純度を上流層のものよりも高くすることが好ましい。また、ポリオレフィン微多孔膜への要求性能によっては、アニール処理により熱セットを行っても良い。なお、アニール処理は、工程での搬送性等の観点から50〜150℃で実施することが好ましく、50〜140℃がさらに好ましい。
【0052】
この製法により、薄膜ながらも高圧力下において優れた液体透過性能と優れた濾過対象物の除去性能を併せ持ったポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を提供することが可能になる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例、比較例および各種測定方法について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[測定方法]
(平均流量孔径 d
PP)
気・液相置換による平均流量孔径d
PPおよび孔径分布σd
PPは、PMI社製のパームポロメータ多孔質材料自動細孔径分布測定システム〔Capillary Flow Porometer〕を用い、細孔径分布測定試験法〔ハーフドライ法(ASTM E1294−89)〕を適用することにより測定した。なお、使用した試液はパーフルオロポリエステル(商品名Galwick)であり(界面張力値:15.9dyne/cm)、測定温度は25℃であり、測定圧力は50〜500psiの範囲で変化させた。
(平均流量孔径 d
LLP)
液・液相置換による平均流量孔径d
LLPおよび孔径分布σd
LLPはPMI社製のリキッドリキッドポロメーターLLP−1500A(超低圧・細孔径分布・透過性能測定装置)を用い、細孔径分布測定試験法〔ハーフドライ法(ASTM E1294−89)〕を適用することにより測定した。なお、使用した試液はパーフルオロポリエステル(商品名Galwick)とイソプロピルアルコールである(界面張力値:4.6dyne/cm)。膜の空孔にイソプロピルアルコールを充填させ、膜の上部をGalwickで満たし、その上から圧縮した空気を押し出し、段階的に圧力を上げていった。測定温度は25℃であり、測定圧力は50〜500psiの範囲で変化させた。
(最大孔径)
バブルポイント法による最大孔径は、気−液置換によるPMI社製のパームポロメータ多孔質材料自動細孔径分布測定システム〔Capillary Flow Porometer〕を用い、細孔径分布測定試験法〔ハーフドライ法(ASTM E1294−89)〕を適用することにより測定した。測定中の流量が発生した最小圧力より求められた孔径を最大孔径とした。なお、使用した試液はパーフルオロポリエステル(商品名Galwick)であり(界面張力値:15.9dyne/cm)、測定温度は25℃であり、測定圧力は50〜500psiの範囲で変化させた。
(厚さ)
接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にてポリオレフィン微多孔膜の膜厚を20点測定し、これらを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。測定圧は0.1Nとした。
(空孔率)
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出した。
ε(%)={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
2)
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
3)
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
なお、ポリオレフィン微多孔膜の目付けは、サンプルを10cm×10cmに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で割ることで目付を求めた。
(ポリオレフィンの重量平均分子量)
重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜の試料をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム;GMH6−HTおよびGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定することで得た。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いた。
(透水性能(水流量))
予めポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。このポリオレフィン微多孔膜を、直径47mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm
2)にセットした。透液セル上の該ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で予め計量した純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測した。その純水の液量と純水の透過に要した時間から、90kPa差圧下における単位時間(min)・単位面積(cm
2)当たりの透水量Vsを以下の式より計算し、これを透水性能(ml /min・cm
2) とした。測定は室温24℃ の温度雰囲気下で行った。
Vs=V/(Tl×S)
(低圧条件下および高圧条件下における捕集率)
下記粒子(1)を含有する水溶液30mlを、高圧条件では1.0MPa、低圧条件は0.1MPaの差圧でポリオレフィン微多孔膜を介してろ過を行った。ろ過前の混合溶液の白金濃度(M1)とポリオレフィン微多孔膜を通過したろ液の白金濃度(M2)から、下記(式1)により粒子の捕集率を求めた。なお、捕集率が70%以上である場合を最良(◎)、50%以上70%未満の場合を良好(○)、20%以上50%未満の場合をやや不良(△)20%未満の場合を不良(×)と判定した。溶液の白金濃度は、ICP−AESを用い、ICP−AES用白金標準試薬を希釈し、0〜100ppb濃度範囲に5点以上をとった検量線をもって白金濃度を決定した。
粒子(1):白金コロイド(田中貴金属製)、平均粒子径2nm、粒子濃度40ppb
捕集率(%)=((M1−M2)/(M1))×100 …(式1)
【0055】
[実施例1]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)15質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)2.5質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0056】
このポリエチレン溶液を温度155℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに130℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0057】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、本発明のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0058】
上記の製造条件を表1に示し、得られた液体フィルター用基材の物性を表2に示す。なお、以下の実施例および比較例についても同様に、表1〜2にまとめて示す。
【0059】
[実施例2]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)18質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)1.1質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0060】
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率7.0倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに130℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0061】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、100℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、本発明のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0062】
[実施例3]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)18質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)1.1質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0063】
このポリエチレン溶液を温度156℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、110℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度105℃にて倍率6.5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに130℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0064】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、100℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、本発明のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0065】
[実施例4]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)15質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)2.5質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0066】
このポリエチレン溶液を温度164℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに120℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0067】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、本発明のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0068】
[比較例1]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)6質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)2.5質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0069】
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.25MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに118℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0070】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0071】
[比較例2]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)5質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)18質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)1.1質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0072】
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、80℃に加熱したローラー上を0.35MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率6.5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度125℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに130℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0073】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、100℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0074】
[比較例3]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)6質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)2.5質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0075】
このポリエチレン溶液を温度156℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.40MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率4.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度106℃にて倍率10倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに140℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0076】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0077】
[
参考例4]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)15質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)1.1質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0078】
このポリエチレン溶液を温度153℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で14℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.20MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに116℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0079】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0080】
[比較例5]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)5質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)23質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が28質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン69質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)3質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0081】
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、40℃に加熱したローラー上を0.40MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度90℃にて倍率14倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに124℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0082】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0083】
[比較例6]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)8質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が32質量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン53質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)15質量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0084】
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を0.20MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4.0倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率15倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに118℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0085】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0086】
[比較例7]
質量平均分子量が460万の高分子量ポリエチレン(PE1)32質量部と、質量平均分子量が56万の低分子量ポリエチレン(PE2)8質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が40質量%となるようにして、流動パラフィン60質量部と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
【0087】
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を0.20MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し(横延伸)、その後直ちに105℃で熱処理(熱固定)を行った。
【0088】
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】