特許第6858621号(P6858621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858621
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】熱源装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20210405BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20210405BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210405BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210405BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20210405BHJP
【FI】
   F24H1/00 A
   F24H1/18 302K
   H01M8/04 Z
   F24H1/00 631A
   !H01M8/10
   !H01M8/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-71427(P2017-71427)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173228(P2018-173228A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】内山 翼
(72)【発明者】
【氏名】山下 想子
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−303786(JP,A)
【文献】 特開2015−222142(JP,A)
【文献】 特開2006−214620(JP,A)
【文献】 特開2015−010805(JP,A)
【文献】 特開2005−114258(JP,A)
【文献】 特開2003−042542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18
H01M 8/04
H01M 8/00
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主熱源としての貯湯槽を有し、該貯湯槽から出湯される湯の通路の下流側には給湯熱交換器を備えた補助熱源装置の給湯回路の湯水導入側が接続されて、前記補助熱源装置内には前記給湯熱交換器を加熱する給湯バーナが設けられ、給湯中に前記貯湯槽側から前記補助熱源装置の前記給湯回路側に送る湯水の流量を検出する流量検出手段と、前記給湯バーナの燃焼停止での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽に貯湯されている湯の温度が低下して前記貯湯槽側から前記補助熱源装置側に給湯設定温度の湯を送水できなくなる湯切れの情報を検出する湯切れ検出手段とを有し、前記給湯バーナの燃焼停止中での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽側から前記給湯設定温度の湯を前記補助熱源装置側に送水している途中で前記湯切れが生じ前記補助熱源装置内の前記給湯回路における予め定めた湯切れ入水タイミングの判断位置に入水する湯水温が前記湯切れ前の前記給湯設定温度から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満の湯切れ温度に切り替わる湯切れ入水タイミングを前記湯切れ検出手段の湯切れ検出情報と前記流量検出手段の検出流量と前記貯湯槽から前記補助熱源装置の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量とに基づいて求める湯切れ入水タイミング算出手段を有し、前記給湯バーナが点火指令を受けてから燃焼開始するまでに要する燃焼遅れ時間の情報が予め与えられており、前記湯切れ検出手段により湯切れ情報が検出されたときにはその湯切れ検出時から前記湯切れ入水タイミング算出手段により算出される前記湯切れ入水タイミングより前記燃焼遅れ時間だけ手前の点火前倒しタイミングが経過した時点で前記給湯バーナの点火指令を発信する給湯バーナ点火指令発信手段が設けられていることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
前記補助熱源装置の前記給湯回路には該給湯回路に導入される湯水を前記給湯熱交換器に通さずに前記給湯回路から導出するためのバイパス通路が設けられ、前記給湯回路に導入される湯水が前記給湯熱交換器側の通路と前記バイパス通路側とに分かれて通過した後に該バイパス通路と前記給湯熱交換器側の通路との合流部で合流して前記給湯回路から導出される構成と成し、該合流部が前記湯切れ入水タイミングの判断位置として設定され、前記湯切れ入水タイミング算出手段は湯切れによって前記給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯水が前記補助熱源装置内の前記合流部に至るタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出することを特徴とする請求項1記載の熱源装置。
【請求項3】
前記給湯バーナ点火指令発信手段は、前記貯湯槽から前記補助熱源装置側に送水される湯水の送水時間を前記貯湯槽から送水される湯水の積算流量に換算した値で求め、前記点火前倒しタイミングを前記貯湯槽から前記補助熱源装置内の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量から前記湯切れ入水タイミングと前記点火前倒しタイミングとの間の時間に対応する積算流量を差し引いた積算流量差し引き値として求め、前記湯切れ検出時からの送水湯水の積算流量が前記積算流量差し引き値に達したときに給湯バーナの点火指令を発信する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽と補助熱源装置とを備えた熱源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主熱源としての貯湯槽を備えた熱源装置が用いられており(例えば、特許文献1、参照)、図2には、開発中の熱源装置が模式的なシステム構成図により示されている。同図において、貯湯槽2と湯の通路9とを備えたタンクユニット4が、熱回収用通路3を介して燃料電池(FC)1と熱的に接続されている。燃料電池1は、例えば固体高分子型燃料電池(PEFC)等により形成されており、水の電気分解の逆反応で、都市ガス等の燃料から取り出された水素と空気中の酸素とを反応させて発電する発電装置である。
【0003】
熱回収用通路3は、燃料電池1と貯湯槽2との間で液体(ここでは湯水)を図の矢印Aおよび矢印A’に示されるように循環させる通路であり、例えば燃料電池1内を通る熱回収用通路3には、熱回収用通路3内に液体を循環させる図示されていないポンプが設けられている。そして、該ポンプの駆動により、貯湯槽2内の水を図の矢印A’に示すように熱回収用通路3を通して燃料電池1に導入して冷却水とし、この水を燃料電池1の発電時に生じる排熱によって加熱した後、図の矢印Aに示すように熱回収用通路3を通し、例えば60℃といった温度の湯として貯湯槽2に蓄積する。なお、熱回収用通路3には、三方弁6を介してバイパス通路7が接続され、燃料電池1側から貯湯槽2側へ流れる液体を、必要に応じて貯湯槽2を通さずに燃料電池1に戻すことができるように形成されている。
【0004】
貯湯槽2には、貯湯槽2内または貯湯槽2の外側壁に、貯湯槽2内の湯の温度を検出する貯湯槽内湯水温検出手段5が、貯湯槽2の上下方向に互いに間隔を介して複数(図2では5個)設けられている。なお、最上位に設けられている貯湯槽内湯水温検出手段5aは、貯湯槽2の上端よりも予め定められた設定長さだけ下側の位置、つまり、例えば貯湯槽2の上端まで湯が満たされた場合よりも20リットル少ない湯量の湯が貯湯槽2内に導入された場合の湯面の位置に設けられている。
【0005】
貯湯槽2の上部側に接続されている湯の通路9は、貯湯槽2で形成された湯を出湯する(送水する)通路と成しており、湯の通路9には、該湯の通路9を通る湯の温度を検出する貯湯槽出湯水温検出手段11と、湯の通路9を通して送水される湯の量を可変するタンク湯水混合器12と、湯の通路9を通しての湯の送水の有無を弁の開閉により切り替える例えばパイロット方式のタンク側電磁弁13とが設けられている。湯の通路9には、貯湯槽2内の圧力が許容圧力を超えたときに該圧力を外部に逃がすための過圧逃がし弁81を備えた圧力逃がし用の通路80が接続されている。
【0006】
また、この熱源装置への給水通路8は給水通路8aと給水通路8bとに分岐され、一方側の給水通路8(8a)が貯湯槽2の下部側に接続されて、他方側の給水通路8(8b)は、湯水合流部10で湯の通路9に合流するように形成されている。給水通路8bには、給水通路8bから湯水合流部10側へ流れる水の量を可変するための水混合器14が設けられている。この熱源装置においては、湯水合流部10で合流される湯と水とを混合するミキシング手段が、水混合器14と前記タンク湯水混合器12とを有して形成されており、図2はシステム構成図であるために水混合器14とタンク湯水混合器12とが離れた位置に記されているが、これらは、湯水合流部10の付近に設けられていてもよい。また、給水通路8は上水道に接続される。
【0007】
湯水合流部10には通路18が連通し、通路18には混合サーミスタ28(28a,28b)が設けられており、タンクユニット4は、例えばリモコン装置等を用いて設定される給湯設定温度の湯を、湯の通路9と通路18を通して出湯する機能を有している。通路18には、補助熱源装置としての給湯器16の湯水導入側が、湯水導入通路15を介して接続されており、図2の矢印Bに示されるように貯湯槽2から湯の通路9と通路18を通して送水される(タンクユニット4から送水される)湯は、同図の矢印B”に示されるように、湯水導入通路15を介して給湯器16の給湯回路62に導入される。
【0008】
給湯器16の給湯回路62は、給湯バーナ61の燃焼熱により加熱される給湯熱交換器17を備えており、同図において、給湯熱交換器17は、給湯バーナ61の燃焼ガスの顕熱を吸収するメインの熱交換器17aと、該メインの熱交換器17aの上流側(湯の流れの上流側)に設けられて給湯バーナ61の燃焼ガスの潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器17bとを有する。このように潜熱回収用熱交換器17bを設ける構成とすると、熱効率の高い給湯器16を形成できるために好ましい。
【0009】
また、同図には図示されていないが、例えば給湯バーナ61をガスバーナにより形成する場合、給湯バーナ61に燃料ガスを供給するガス供給通路が設けられ、ガス供給通路にはガス供給通路を通しての給湯バーナ61への供給の有無を制御するガス開閉弁(ガス電磁弁)とその供給量を調節するためのガス比例弁とが設けられる。また、その他にも給湯バーナ61への空気の給排気を行う燃焼ファン等の適宜の構成要素(図示せず)が設けられ、その構成要素を制御することにより給湯熱交換器17の加熱制御が行われる。
【0010】
給湯回路62の入口側の通路には、流量検出センサ42と給水温度検出手段71が設けられており、給湯熱交換器17の出側の通路には、給湯熱交換器17の出側の温度(出側の通路を通る湯温)を検出する給湯熱交出側温度検出手段67が設けられ、さらに、その下流側には、給湯回路62を通して給湯される湯の温度(給湯温度)を検出する給湯温度検出手段76が設けられている。給湯回路62の出側には給湯通路19が設けられており、流量検出センサ42は、給湯通路19を通して給湯される給湯流量を検出する。給水温度検出手段71は給湯器62に導入される湯水温を検出するものであり、場合によっては省略することもできる。
【0011】
また、給湯回路62には、給湯回路62に導入される湯水を給湯熱交換器17に通さずに通路18側に導出するためのバイパス通路68が設けられている。バイパス通路68の容量は給湯熱交換器17の容量に比べると格段に小さく、一例としてあげると、給湯熱交換器17のメインの熱交換器17aの容量が0.6リットル、潜熱回収用熱交換器17bの容量が0.7リットルに対し、バイパス通路68の容量は0.06リットル程度である。なお、図2は、模式的なシステム図であり、メインの熱交換器17aと潜熱回収用熱交換器17bとバイパス通路68の大きさは、それぞれの容量と対応してはいない。
【0012】
バイパス通路68には例えばステッピングモータを備えたバイパスサーボ69が設けられており、バイパスサーボ69の制御によって、給湯回路62に導入される湯水の給湯熱交換器17側への流通割合とバイパス通路68側への流通割合とが予め定められる割合変化範囲内で制御される構成と成している。
【0013】
例えばバイパスサーボ69の制御により、例えばバイパス比(給湯熱交換器17側とバイパス通路68側との比)を1:0として、給湯回路62に導入された湯水を例えば100%給湯熱交換器17側に通すことができるし、バイパス比を1:3.5になるような割合で、バイパス通路68側に多く分岐させて通すこともできる。バイパスサーボ69の制御による給湯熱交換器17側とバイパス通路68側との比は、例えば1:0〜1:3.5といった予め定められるバイパス割合変化範囲内の適宜の値となるように適宜可変設定される。
【0014】
この熱源装置は、湯の通路9側から給湯器16の給湯回路62に導入される湯を給湯熱交換器17で加熱(追い加熱)して給湯する追い加熱給湯機能と、湯の通路9から給湯回路62に導入される湯を非加熱のまま給湯回路62を通して給湯先に給湯する非追い加熱給湯機能とを有している。給湯器16は、非追い加熱給湯機能の動作時には、給湯回路62に導入された湯を主にバイパス通路68に通して給湯する(このようにバイパスサーボ69を制御する)。
【0015】
給湯器16の給湯回路62を通った湯は、前記追い加熱給湯機能により加熱されながら給湯回路62を通った湯も前記非追い加熱給湯機能により非加熱のまま給湯回路62を通った湯も、給湯通路19を通って一つ以上の給湯先に給湯される。なお、同図には図示されていないが、給湯通路19の先端側には給湯栓(シャワーの操作レバー等も含む)が設けられており、この給湯栓を開くことにより、貯湯槽2に蓄えられていた湯が給水圧を受けて湯の通路9を通り、前記の如く、必要に応じて給水通路8bからの水と混合されたり、給湯器16により追い加熱されたり、あるいは水の混合や追い加熱なしにそのまま給湯される。
【0016】
また、図示されていないが、給湯器16には例えば風呂の追い焚き用の回路が設けられ、この回路を利用して浴槽への湯張りや浴槽湯水の追い焚きが可能と成している。
【0017】
なお、図2の図中、符号25は入水温度サーミスタ、符号26は燃料電池1から貯湯槽2へ導入される湯水温検出用のFC高温サーミスタ、符号27は貯湯槽2から燃料電池1側へ導出される湯水温検出用のFC低温サーミスタをそれぞれ示し、符号29は給水流量センサ、符号50,51は逆止弁、52〜57はバルブ、58は低温感知サーミスタ、59,60はフィルタ、82はオーバーフロー通路、83は排水電磁弁、84は排水通路をそれぞれ示している。
【0018】
図2に示す熱源装置には、図示されていない制御装置が設けられており、制御装置には、タンク湯水混合器12を制御して湯の通路9から湯水合流部10側に流れる湯の流量を制御すると共に、水混合器14を制御して給水通路8bから湯水合流部10側に流れる水の流量を制御し、湯水合流部10で適宜の温度の混合湯水が形成されるようにするミキシング流量制御手段が設けられている。
【0019】
このミキシング流量制御手段は、給湯停止時には例えばタンク側電磁弁13を閉じて湯の通路9から湯水合流部10側に流れる湯(貯湯槽2から出湯される湯)の流量がゼロとなる状態にする。そして、給湯通路19の先端側に設けられている給湯栓が開かれると水の流れが給水流量センサ29により検出されるので、ミキシング流量制御手段は、その検出信号を受けてタンク側電磁弁13を開け、タンク湯水混合器12の制御により、図2の矢印Bに示されるように湯の通路9から湯水合流部10側に流れる湯の流量を調節すると共に、水混合器14の制御により、図2の矢印B’に示されるように給水通路8bから湯水合流部10側に流れる水の流量を調節し、湯水合流部10で形成される混合湯水の温度が例えば給湯設定温度と同程度に設定される混合設定温度になるようにする。
【0020】
なお、貯湯槽2内に貯湯されている湯水には、例えば図3の模式図に示されるような温度の層Wa、Wb、Wcが形成されるものであり、貯湯槽2の上部側の層(高温層)Waには燃料電池1の発電時に生じる排熱によって加熱された高温Ta(例えば60℃)の湯が貯湯され、貯湯槽2の下部側の層(低温層)Wcには貯湯槽2内に給水される給水温度と同じ温度Tc(例えば15℃)の水が貯水されており、その間に、温度Taから温度Tcまでの急な温度勾配を持つ層(温度中間層)Wbがある。したがって、層Waの湯が無くなると湯の代わりに冷たい水が湯の通路9から送水されることがあるが、説明の都合上、特に断らない限り、湯の通路9からは湯が出湯されて前記湯水合流部10に合流されるという表現を用いる。
【0021】
例えば図3に示されるように、貯湯槽2内の湯水において、例えば層Waと層Wbとの境界が貯湯槽内湯水温検出手段5aの配設領域よりも下にあり、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が給湯設定温度より例えば5℃高く設定される閾値より高い温度のときには、貯湯槽2から出湯される湯の温度は例えば60℃といったほぼ一定の値である。
【0022】
そこで、前記ミキシング流量制御手段は、混合サーミスタ28(28a,28b)の検出温度と混合設定温度との差に基づいて(偏差に応じ)、混合サーミスタ28(28a,28b)の検出温度が混合設定温度になるようにタンク湯水混合器12と水混合器14を制御することによって、湯の通路9から湯水合流部10側に流れる湯の流量と給水通路8bから湯水合流部10側に流れる水の流量とを調節する制御を行う。なお、ミキシング流量制御手段は、ミキシング流量制御に際し、フィードフォワード制御を行わずにフィードバック制御のみを行うようにしてもよい。
【0023】
そして、このようなキシング流量制御手段による制御によって、湯水合流部10で形成される混合湯水の温度が混合設定温度(例えば給湯設定温度と同じ温度またはその近傍温度)とされると、その混合湯水は、図2の矢印B”に示されるように、湯水合流部10から湯水導入通路15を通して給湯器16に導入されるが、このとき、給湯器16において給湯熱交換器17による加熱は行われずに(前記非加熱給湯機能の動作によって)、通路18と給湯通路19を通して給湯先に給湯される。
【0024】
また、給湯途中で貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が前記閾値以下となり、ミキシング流量制御手段による流量制御のみでは、給湯設定温度と同等の温度に設定される混合設定温度の湯を給湯することができなくなる場合には、例えば混合設定温度を給湯設定温度より低い温度に設定し、給湯器16により追い加熱を行う。例えば、混合設定温度を給湯設定温度から給湯器16のMIN号数(最小燃焼号数)で給湯流量の水を加熱したときに上昇する温度分を差し引いた値まで徐々に下げ、その混合湯水を給湯器16の前記追い加熱給湯機能の動作によって給湯熱交換器17により加熱することにより給湯設定温度の湯を作り出し、この湯を給湯通路19を通して給湯先に給湯する。
【0025】
なお、従来の貯湯槽2を備えた熱源装置においては、タンクユニット4と給湯器16とが隣接配置されたタイプ(一体型)の熱源装置が用いられていたが、開発中の熱源装置は、タンクユニット4と給湯器16と燃料電池1とをそれぞれ個別に配置し、互いに配管により接続する個別配置型の熱源装置も可能とするものである。このようにすると、例えば複数種あるタンクユニット4のうち、利用者が必要な容量の貯湯槽2を備えたタンクユニット4を選択し、そのタンクユニット4と、複数種ある給湯器16のうち選択された給湯器16と、複数種ある燃料電池1のうち選択された燃料電池1とを組み合わせるといったことができ、バリエーションを増やすことができる。また、前記のような個別配置型の熱源装置は、既設の給湯器16にタンクユニット4等を接続して熱源装置を形成することもできるといったメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許4359339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、図2に示したような熱源装置において、貯湯槽2内に前記閾値より高い温度の湯が貯湯されている場合等、実質的に給湯設定温度以上(例えば湯が貯湯槽2から給湯器16を通って給湯先に給湯されるまでに冷える分以上、給湯設定温度よりも例えば0.5℃といった温度以上高い温度)の湯が貯湯されている場合には、貯湯槽2から給湯器16に送られる湯を非加熱で(給湯器16の給湯熱交換器17による追い加熱を行わずに)給湯することが可能であるが、給湯の途中で、高温層Waの湯を使い切ってしまうと、貯湯槽2から送水される湯の温度が給湯設定温度より低くなってしまって給湯設定温度の湯を給湯器16側に送ることができなくなることがある。
【0028】
そこで、例えば高温層Waの湯を使い切ってしまう前に給湯器16側に送る湯の温度を徐々に下げていき、それと共に給湯器16側では、温度が低下し始める湯(湯の温度の境界部)が給湯器16に到達するときに給湯バーナ61の点火指令を発信し、給湯器16側に送られてくる徐々に温度が低下する湯を給湯バーナ61により加熱(追い加熱)することにより給湯設定温度の湯を作り出して給湯することが考えられる。
【0029】
しかしながら、給湯バーナ61の点火指令を発信しても、その指令と同時には湯の温度を急激に上昇させることができず、特に、例えば点火時の確認のため等の点火シーケンスプログラムにしたがって行われる動作のための燃焼遅れ時間があるために、前記のような動作によっては給湯設定温度の湯が形成されずに給湯温度のアンダーシュートが発生してしまい、特に流量が大きい場合にはアンダーシュートが大きくなってしまうといった問題が生じた。
【0030】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貯湯槽内の湯水の出湯途中で貯湯槽内の高温の湯が無くなってしまったときでも、給湯温度のアンダーシュートが生じることを防げ給湯温度の安定化を図れる熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は上記目的を達成するために、次の構成をもって課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、主熱源としての貯湯槽を有し、該貯湯槽から出湯される湯の通路の下流側には給湯熱交換器を備えた補助熱源装置の給湯回路の湯水導入側が接続されて、前記補助熱源装置内には前記給湯熱交換器を加熱する給湯バーナが設けられ、給湯中に前記貯湯槽側から前記補助熱源装置の前記給湯回路側に送る湯水の流量を検出する流量検出手段と、前記給湯バーナの燃焼停止での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽に貯湯されている湯の温度が低下して前記貯湯槽側から前記補助熱源装置側に給湯設定温度の湯を送水できなくなる湯切れの情報を検出する湯切れ検出手段とを有し、前記給湯バーナの燃焼停止中での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽側から前記給湯設定温度の湯を前記補助熱源装置側に送水している途中で前記湯切れが生じ前記補助熱源装置内の前記給湯回路における予め定めた湯切れ入水タイミングの判断位置に入水する湯水温が前記湯切れ前の前記給湯設定温度から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満の湯切れ温度に切り替わる湯切れ入水タイミングを前記湯切れ検出手段の湯切れ検出情報と前記流量検出手段の検出流量と前記貯湯槽から前記補助熱源装置の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量とに基づいて求める湯切れ入水タイミング算出手段を有し、前記給湯バーナが点火指令を受けてから燃焼開始するまでに要する燃焼遅れ時間の情報が予め与えられており、前記湯切れ検出手段により湯切れ情報が検出されたときにはその湯切れ検出時から前記湯切れ入水タイミング算出手段により算出される前記湯切れ入水タイミングより前記燃焼遅れ時間だけ手前の点火前倒しタイミングが経過した時点で前記給湯バーナの点火指令を発信する給湯バーナ点火指令発信手段が設けられている構成をもって課題を解決するための手段としている。
【0032】
また、第2の発明は、前記第1の発明の構成に加え、前記補助熱源装置の前記給湯回路には該給湯回路に導入される湯水を前記給湯熱交換器に通さずに前記給湯回路から導出するためのバイパス通路が設けられ、前記給湯回路に導入される湯水が前記給湯熱交換器側の通路と前記バイパス通路側とに分かれて通過した後に該バイパス通路と前記給湯熱交換器側の通路との合流部で合流して前記給湯回路から導出される構成と成し、該合流部が前記湯切れ入水タイミングの判断位置として設定され、前記湯切れ入水タイミング算出手段は湯切れによって前記給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯水が前記補助熱源装置内の前記合流部に至るタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出することを特徴とする。
【0033】
さらに、第3の発明は、前記第1または第2の発明の構成に加え、前記給湯バーナ点火指令発信手段は、前記貯湯槽から前記補助熱源装置側に送水される湯水の送水時間を前記貯湯槽から送水される湯水の積算流量に換算した値で求め、前記点火前倒しタイミングを前記貯湯槽から前記補助熱源装置内の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量から前記湯切れ入水タイミングと前記点火前倒しタイミングとの間の時間に対応する積算流量を差し引いた積算流量差し引き値として求め、前記湯切れ検出時からの送水湯水の積算流量が前記積算流量差し引き値に達したときに給湯バーナの点火指令を発信する構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、貯湯槽から出湯される湯の通路の下流側には、給湯熱交換器を備えた補助熱源装置の給湯回路の湯水導入側が接続されているので、貯湯槽から出湯される湯を補助熱源装置内に通して給湯することができる。なお、補助熱源装置内には前記給湯熱交換器を加熱する給湯バーナが設けられているので、貯湯槽側から湯が補助熱源装置に導入されたときに、その湯の温度が低めの時には補助熱源装置の給湯熱交換器で加熱して給湯設定温度として給湯することができるし、加熱が必要ないときには補助熱源装置に導入される湯を加熱せずにそのまま補助熱源装置を通して給湯することもできる。
【0035】
また、本発明においては、給湯中に前記貯湯槽側から前記補助熱源装置の給湯回路側に送る湯水の流量を検出する流量検出手段と、前記給湯バーナの燃焼停止での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽に貯湯されている湯の温度が低下して前記貯湯槽側から前記補助熱源装置側に前記給湯設定温度の湯を送水できなくなる湯切れの情報を検出する湯切れ検出手段とを有しており、これらの検出手段の検出情報に基づき、前記給湯バーナの燃焼停止での非燃焼の給湯中に前記貯湯槽側から前記補助熱源装置側に前記給湯設定温度の湯を送水している途中で前記湯切れが生じ、補助熱源装置の前記給湯回路における予め定めた湯切れ入水タイミングの判断位置に入水する湯水温が前記湯切れ前の前記給湯設定温度から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満の湯切れ温度に切り替わる湯切れ入水タイミングを湯切れ入水タイミング算出手段によって検出することができる。
【0036】
つまり、本発明では、湯切れ入水タイミング算出手段が、前記湯切れ検出手段の湯切れ検出情報と、前記流量検出手段の検出流量と、前記貯湯槽から前記補助熱源装置の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量とに基づいて、前記湯切れ入水タイミングを検出するようにしており、例えば前記配管容量を前記流量検出手段の検出流量(単位時間あたりの流量)で割ることにより、湯切れ入水タイミングを的確に検出することができる。
【0037】
なお、前記の如く、貯湯槽から補助熱源装置側に湯が送られている途中で湯切れが生じても、補助熱源装置の給湯バーナが点火されれば、給湯設定温度よりも低い湯を補助熱源装置の給湯熱交換器で加熱できて給湯設定温度の湯を給湯できるが、補助熱源装置に設けられる給湯バーナの点火指令を受けてから給湯バーナが燃焼開始するまでにある程度の時間を要し(例えば点火指令を受けてから直ぐには点火せず、点火のための確認事項を確認する等の点火時シーケンスプログラムにしたがった動作を行ってから燃焼が開始され)、この時間が経過するまでは給湯バーナの燃焼が開始されないので、この間は加熱されない湯が補助熱源装置内を流れていくことになる。
【0038】
そこで、本発明では、補助熱源装置が例えば前記点火時シーケンスプログラムにしたがった動作をするために要する時間等、補助熱源装置がバーナ点火指令を受けてから給湯バーナの燃焼が開始されるまでの時間を燃焼遅れ時間の情報として予め与え、前記湯切れ検出手段により湯切れ情報が検出されたときに、給湯バーナ点火指令発信手段が、前記湯切れ検出時から前記湯切れ入水タイミング算出手段により算出される前記湯切れ入水タイミングより前記燃焼遅れ時間だけ手前の点火前倒しタイミングが経過した時点で前記給湯バーナの点火指令を発信することにより、前記燃焼遅れ時間が経過する間に給湯バーナにより加熱されない湯が補助熱源装置内を流れてしまうことを防ぐことができ、給湯設定温度よりも低いままの湯が給湯されることを防止できる。
【0039】
つまり、本発明では、前記燃焼遅れ時間だけ手前で給湯バーナの点火指令を発信することにより、低温の湯が加熱されずに給湯側に送られることはなく(燃焼遅れ時間が経過する間に非加熱の低温の湯が流れてしまうことはなく)、給湯設定温度以上と給湯設定温度未満との境界部の湯水が補助熱源装置内に入水されるときに給湯バーナ燃焼によって湯の加熱が的確に開始されて給湯設定温度の湯が形成され、給湯温度のアンダーシュートを発生させずに、給湯設定温度またはその温度に近い温度の湯を安定的に給湯できる。
【0040】
また、補助熱源装置の給湯回路に、該給湯回路に導入される湯水を給湯熱交換器に通さずに前記給湯回路から導出するためのバイパス通路を設け、前記給湯回路に導入される湯水が前記給湯熱交換器側と前記バイパス通路側とに分かれて通過した後に該バイパス通路と前記給湯熱交換器側の通路との合流部で合流して前記給湯回路から導出される構成とすると、以下の効果を奏することができる。
【0041】
つまり、湯切れによって温度が給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯水が補助熱源装置内の前記合流部に至ると、その後は、バイパス通路を通ってから合流部を通る湯水の温度が徐々に低下していくが、その時点で給湯バーナの燃焼が開始されれば、バイパス通路からの前記のように温度が徐々に低下していく湯水と、給湯熱交換器を通って加熱されて徐々に湯水温が上昇していく湯水とが、合流部で合流して給湯設定温度の湯が形成されることになる。
【0042】
そこで、前記合流部を前記湯切れ入水タイミングの判断位置として設定し、湯切れによって前記湯切れ前の前記給湯設定温度以上から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満となる境界部の湯水が補助熱源装置内の前記合流部に至るタイミングに給湯バーナの燃焼が開始されるように(前記境界部の湯水が前記合流部に到達するときには給湯バーナ点火指令発信後、燃焼遅れ時間が経過し、湯の加熱が開始されるように)、境界部の湯水が補助熱源装置内の前記合流部に至るタイミングより前記燃焼遅れ時間だけ早く(手前に)給湯バーナの点火指令を発信するようにすれば(湯切れ入水タイミング算出手段が前記合流部に至るタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出し、そのタイミングより前記燃焼遅れ時間だけ手前で給湯バーナ点火指令を発信することにより)、非常に確実に、給湯設定温度またはその温度に近い温度の湯を安定的に給湯できる。
【0043】
さらに、給湯バーナ点火指令発信手段が、貯湯槽から補助熱源装置側に送水される湯水の送水時間を前記貯湯槽から送水される湯水の積算流量に換算した値で求めると、流量検出手段の検出流量に基づき、湯水の送水時間を容易に、かつ、正確に求めることができる。
【0044】
つまり、給湯バーナ点火指令発信手段が、点火前倒しタイミングを、貯湯槽から補助熱源装置内の前記給湯回路における前記湯切れ入水タイミングの判断位置に至る配管容量から前記湯切れ入水タイミングと前記点火前倒しタイミングとの間の時間に対応する積算流量を差し引いた積算流量差し引き値として求め、湯切れ時点からの送水湯水の積算流量が前記積算流量差し引き値に達したときに給湯バーナの点火指令を発信することにより、流量検出手段の検出流量に基づき、容易に、かつ、的確に、前記点火前倒しタイミングに給湯バーナの点火指令を発信できる。そのため、貯湯槽から補助熱源装置に送られる湯が給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯が補助熱源装置内に導入されるタイミングと、その湯を給湯バーナで加熱開始するタイミングとが合うようにでき、非常に確実に、安定した給湯温度の湯を給湯できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係る熱源装置の一実施例の制御構成を示すブロック図である。
図2】実施例の熱源装置のシステム構成例を説明するための説明図である。
図3】貯湯槽内の温度層の分布例を模式的に示す説明図である。
図4】実施例の熱源装置における、給湯バーナ点火指令発信タイミングおよび給湯バーナ点火タイミングと、貯湯槽から給湯器に送られる湯の温度変化と、給湯バーナの加熱による湯の温度変化と、給湯温度との関係を説明するための模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施例の説明において、これまでの説明の例と同一構成要素には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【実施例】
【0047】
図1には、本発明に係る熱源装置の一実施例の要部制御構成がブロック図により示されている。本実施例の熱源装置は、図2に示した熱源装置と同様のシステム構成を有しているが、図1に示される特徴的な制御構成を有している。
【0048】
同図に示されるように、給湯器16の制御装置46は、燃焼制御手段47、バイパスサーボ制御手段74を有しており、燃焼制御手段47は、給湯設定温度設定操作手段45を備えたリモコン装置43に接続されている。リモコン装置43は、屋内において、リビングや、浴室、台所、洗面所等の適宜の場所に設置されている。
【0049】
また、本実施例において、タンクユニット4内の制御装置33には、ミキシング流量制御手段35、送湯温度調節手段36、メモリ部37、湯切れ検出手段34、湯切れ入水タイミング算出手段72、給湯バーナ点火指令発信手段75が設けられており、制御装置33はリモコン装置43と制御装置46とに信号接続されている。
【0050】
給湯設定温度設定操作手段45は、利用者等により給湯設定温度を設定するための操作手段であり、例えばリモコン装置43の表面側に設けられている操作ボタン等により形成されている。この給湯設定温度設定操作手段45により設定された給湯設定温度の値は、タンクユニット4の制御装置33の送湯温度調節手段36と給湯器16の制御装置46の燃焼制御手段47とに加えられる。
【0051】
燃焼制御手段47は、給湯バーナ61の燃焼開始時にガス開閉弁48を開いて給湯バーナ61の燃焼を開始させると共にその燃焼制御を行い、また、それに伴う燃焼ファン(図示せず)の制御等を行うものである。この燃焼制御方法は周知であるので、その詳細説明は省略するが、従来から知られている燃焼制御方法や、今後提案される燃焼制御方法等、適宜の燃焼制御方法が適用される。
【0052】
バイパスサーボ制御手段74は、バイパスサーボ69の制御により、給湯回路62に導入される湯水の給湯熱交換器17側への流通割合とバイパス通路68側への流通割合を制御するものであり、燃焼制御手段47の燃焼制御信号を取り込み、バイパスサーボ69を適宜制御する。
【0053】
流量検出センサ42は、給湯通路19を通って給湯される給湯流量を検出し、制御装置46の燃焼制御手段47に給湯流量の検出流量(検出値)を加える。なお、給湯熱交出側温度検出手段67の検出温度、給湯温度検出手段76の検出温度も燃焼制御手段47に加えられ、これらの検出値に基づき、燃焼制御手段47による前記給湯バーナ61(図1には図示せず)の燃焼制御が行われる。
【0054】
給水流量センサ29は、本実施例において、給湯中に貯湯槽2側から給湯器16の給湯回路62側に送る湯水の流量を検出する流量検出手段として機能するものであり、制御装置33のミキシング流量制御手段35と送湯温度調節手段36と湯切れ入水タイミング算出手段72、給湯バーナ点火指令発信手段75に検出流量(検出値)を加える。
【0055】
送湯温度調節手段36は、貯湯槽2から出湯される湯と給水通路8bからの湯の混合により形成される混合湯水の設定温度(混合設定温度)を設定し、その設定した混合湯水温度の湯が形成されるようにミキシング流量制御手段35に指令を加える。
【0056】
ミキシング流量制御手段35は、給水流量センサ29によって給湯通路19を通って給湯される給湯流量が検出されたときにタンク側電磁弁13を開き、タンク湯水混合器12および水混合器14の制御による湯の流量と水の流量との制御により、湯水合流部10で形成される混合湯水の温度が送湯温度調節手段36により設定される混合設定温度となるようにするものである。
【0057】
ミキシング流量制御手段35は、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が前記閾値より高い温度のときには混合湯水の温度が給湯設定温度(または給湯設定温度より0.5℃といった温度だけ高めの温度)となるように制御し、貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度が前記閾値以下となったら、例えば給湯設定温度から給湯器16の最小燃焼号数で給湯流量の水を加熱したときに上昇する温度分を差し引いた値まで徐々に下げるように制御する。
【0058】
なお、給湯器16に設けられている給湯熱交換器17は、例えば銅製の顕熱熱交換器のみ、または、銅製の顕熱熱交換器にステンレス製の潜熱回収用熱交換器が付加されており、いずれの構成においても熱容量を持つ。したがって、給湯バーナ燃焼は停止した状態であっても、前記のように貯湯槽2側から給湯器16側に送る湯の湯温を徐々に下げることにより給湯熱交換器17を通過する湯温が徐々に下がると、給湯熱交換器17に蓄えられていた熱が放出されて通過する湯に伝わるので、給湯熱交換器17に入る湯の温度に対して給湯熱交換器17から出る湯の温度は若干高めとなる。そして、給湯熱交換器17を通る湯の流速の大小にかかわらず、給湯熱交換器17に導入する湯の湯温の下げ速度を一定とすると、給湯熱交換器17に蓄えられていた保有熱は通過する湯の流速が早いほど早く減るので、後述の給湯器16での給湯バーナ61の点火時加熱熱量を多めにするか、給湯バーナ61の点火タイミングを早めるか、といったことが必要となる。
【0059】
そこで、本実施例では、貯湯槽2側から給湯器16側に送る湯の湯温の下げ速度を湯の流速の大小に応じて可変させるのではなく、湯温の下げ速度を湯の流量の大小に応じて可変し、流量が大きいほど湯温の下げ速度も大きくするようにしている。なお、実際には流速の大小により給湯熱交換器17から給湯熱交換器17を通る湯への伝熱係数による差異が生じるので、流量と流速を加味して湯温の下げ速度を可変させてもよいが、給湯熱交換器17を流れる湯の流量が大きいほど(湯の流量が大きいと伝熱係数が大きい分)、早く給湯熱交換器17に蓄えていた保有熱が奪われる。
【0060】
湯切れ検出手段34は、給湯バーナ61の燃焼停止での非燃焼の給湯中に貯湯槽2に貯湯されている湯の温度が低下して、貯湯槽2側(タンクユニット4側)から給湯器16側に給湯設定温度の湯を送水できなくなる湯切れの情報を検出するものであり、例えば貯湯槽内湯水温検出手段5aの検出温度を時々刻々と取り込み、この検出温度が前記閾値以下となったら湯切れとなったと判断する。
【0061】
湯切れ入水タイミング算出手段72は、貯湯槽2側から給湯設定温度の湯を給湯器16側に送水している途中で前記湯切れが生じ、給湯器16内に入水する湯水温が前記湯切れ前の前記給湯設定温度から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満の湯切れ温度に切り替わる湯切れ入水タイミングを、湯切れ検出手段34の湯切れ検出情報と、給水流量センサ29の検出流量と、貯湯槽2から給湯器16の給湯回路62内に至る配管容量とに基づいて求める。
【0062】
本実施例において、給湯器16は、給湯回路62に導入される湯水が給湯熱交換器17側の通路とバイパス通路68側とに分かれて通過した後に該バイパス通路68と給湯熱交換器17側の通路との合流部70で合流して給湯回路62から導出される構成と成しており、湯切れ入水タイミング算出手段72は、湯切れによって給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯水が給湯器16内の合流部70に至るタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出する。
【0063】
なお、貯湯槽2から給湯器16の給湯回路62における前記湯切れ入水タイミングの判断位置(詳しくは給湯回路62の合流部70)に至る配管容量の情報はメモリ部37に格納されており、湯切れ入水タイミング算出手段72は、この情報を取り込み、貯湯槽2から給湯器16の給湯回路62の合流部70に至る配管容量を給水流量センサ29の検出流量(単位時間あたりの流量)で割ることにより、前記湯切れ入水タイミングを算出する。
【0064】
また、メモリ部37には、給湯バーナ61が点火指令を受けてから燃焼開始するまでに要する燃焼遅れ時間の情報(燃焼遅れ時間=例えば3秒)が予め与えられている。給湯バーナ点火指令発信手段75は、湯切れ検出手段34により湯切れ情報が検出されたときには、湯切れ入水タイミング算出手段72により算出される前記湯切れ入水タイミングより前記燃焼遅れ時間だけ手前の点火前倒しタイミングで給湯バーナ61の点火指令を発信し、燃焼制御手段47に加える。
【0065】
本実施例において、給湯バーナ点火指令発信手段75は、給水流量センサ29の検出流量を取り込み、貯湯槽2から給湯器16側に送水される湯水の送水時間を貯湯槽2から送水される湯水の積算流量に換算した値で求め、前記点火前倒しタイミングを、前記湯切れ検出時に貯湯槽2から送水される湯水が貯湯槽2から給湯器16内の湯切れ入水タイミングの判断位置(ここでは合流部70)まで流れてくるまでの(合流部70に至るまでの)送水湯水の積算流量(つまり、貯湯槽2から合流部70に至る配管容量)から前記湯切れ入水タイミングと前記点火前倒しタイミングとの間の時間(燃焼遅れ時間に対応する時間であり、例えば3秒間)に対応する積算流量を差し引いた積算流量差し引き値として求める。そして、湯切れ時点からの貯湯槽2から給湯器16への送水湯水の積算流量が前記積算流量差し引き値に達したときに、給湯バーナ16の点火指令を発信する。この発信信号は燃焼制御手段47に加えられ、燃焼制御手段47による給湯バーナ16の点火制御が行われる。
【0066】
このように、本実施例では、前記湯切れ入水タイミングの算出も前記点火前倒しタイミングの算出も、前記送水湯水の積算流量の算出に基づいて行われるので、各タイミングの算出を、容易に、かつ、的確に行うことができ、点火前倒しタイミングで行われる給湯バーナ16の点火指令発信を的確なタイミングで行うことができる。
【0067】
本実施例は以上のように構成されており、給湯流量が小さくて前記燃焼遅れ時間に対応する送水湯水の積算流量が小さい場合と、その逆に給湯流量が大きくて前記燃焼遅れ時間に対応する積算流量が大きい場合とを比較すると、給湯流量が大きい場合には、前記燃焼遅れ時間が経過する間に流れる流量が大きい分だけ燃焼遅れ時間に対応する点火前倒しタイミングも早めとなり、給湯バーナ16の点火指令発信も早めとなる。
【0068】
したがって、例えば、給湯流量が大きい場合には貯湯槽2から給湯器16側に送水される湯水が給湯器16に到達するよりもかなり前に給湯バーナ16の点火指令が発信されることがあるし、給湯流量が小さい場合には貯湯槽2から給湯器16側に送水される湯水が給湯器16内に導入されてから給湯バーナ16の点火指令が発信されることもある。
【0069】
なお、給湯熱交換器17を流れる湯の流量が大きいほど、給湯バーナ16の点火前に給湯熱交換器17に蓄えられていた保有熱が多く奪われるので、点火前倒しタイミングも早めとすることで、保有熱補充の増分に早期に対応することができ、早めに湯温が安定する。そこで、前記燃焼遅れ時間に対応する分の点火前倒しに付加して、給湯熱交換器17の保有熱の増減に対応する前記点火前倒しタイミングの制御を行ってもよい(例えば貯湯槽2から給湯器16側に送る湯の流量が大きくて給湯熱交換器17に蓄えられていた保有熱が多く奪われる場合には、より早めに給湯バーナ15の点火指令を発信してもよい)。このような制御を行う構成においては、例えばメモリ部37に、貯湯槽2から給湯器16側に送る湯の流量に基づいて点火前倒しタイミングを求める情報(例えばテーブルデータや演算式等の適宜の情報)も格納しておき、その情報に基づいて給湯バーナ点火指令発信手段75が給湯バーナ61の点火指令を発信するとよい。
【0070】
図4には、本実施例において、給湯流量が大きい場合における以下の温度特性の一例が示されている。特性線aは貯湯槽2側から給湯器16側に送られる湯水温の時間的変化を示し、特性線bは給湯バーナ16の加熱によって高められる湯水温の時間的変化を示し、特性線cは給湯温度の時間的変化を示し、図のTbが給湯バーナの点火指令発信タイミングを示している。
【0071】
同図の特性線aに示されるように、湯切れによって給湯設定温度以上から給湯設定温度未満となる境界部の湯水が給湯器16内の合流部70に至るタイミングがTgとなるのに対し、本実施例では、このタイミングよりも前記燃焼遅れ時間(時間ta)だけ早い点火前倒しタイミング(Tb)で給湯バーナ61への点火指令が発信されることにより、特性線bに示されるように、給湯バーナ16の燃焼開始による温度上昇が生じるのが前記タイミングTgとなる。つまり、前記境界部の湯水が合流部70に到達するときに、その境界部の湯の加熱が開始される。
【0072】
そして、合流部70に到達する湯水温が、特性線aに示されるように徐々に低下するのを、給湯バーナ61の燃焼に伴い、特性線bに示されるように徐々に温度が上昇することで、貯湯槽2側から到達する湯の温度低下分を給湯バーナ61の燃焼による温度上昇分で補われ、特性線cに示されるように、給湯温度が給湯設定温度となって安定的に給湯が行われる。なお、給湯流量が小さい場合は、タイミングTbとTgとの間の時間taが短くなるが、同様の動作により同様の効果を奏すことができる。
【0073】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な態様を採り得る。例えば、前記実施例では、湯切れ入水タイミング算出手段72は、湯切れによって該湯切れ前の前記給湯設定温度以上から前記湯切れにより前記給湯設定温度未満となる境界部の湯水が給湯器16内の合流部70に至るタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出するようにしたが、湯切れ入水タイミング算出手段72は、前記境界部の湯水が例えば合流部70よりも少し手前側の位置に達するタイミングを湯切れ入水タイミングとして算出してもよい。つまり、湯切れ入水タイミングを検出するための判断位置(湯切れ入水タイミングの判断位置)は前記実施例のように合流部70とすることが好ましいが、合流部70以外での給湯回路62内の適宜の位置にすることができる。
【0074】
また、本発明の熱源装置のシステム構成の詳細は必ずしも図2に示される構成とは限らず、適宜設定されるものである。例えば、給湯器16の給湯熱交換器17は潜熱回収用熱交換器を有していないものでもよく、また、給湯熱交換器17を例えば石油燃焼式のバーナ装置により加熱するタイプの給湯器としてもよい。
【0075】
さらに、前記実施例では、貯湯槽2は燃料電池1に熱的に接続されていたが、燃料電池1の代わりに、太陽熱の集熱機やヒートポンプ等を接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の熱源装置は、給湯温度の安定化を図ることができ、使い勝手が良好であるので、例えば家庭用の熱源装置として利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 燃料電池
2 貯湯槽
3 熱回収用通路
4 タンクユニット
5 貯湯槽内湯水温検出手段
8,8a,8b 給水通路
9 出湯通路
10 湯水合流部
11 貯湯槽出湯水温検出手段
12 タンク湯水混合器
37,73 メモリ部
34 湯切れ検出手段
47 燃焼制御手段
72 湯切れ入水タイミング算出手段
75 給湯バーナ点火指令発信手段
図1
図2
図3
図4