(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧力室に対する圧油の給排に応じて車体に取り付けられた作業装置を動作させるアクチュエータを備えた作業機械に搭載され、走行時に制振制御オフ状態と制振制御オン状態との切換えが可能な制振制御回路であって、
蓄圧器と、
前記蓄圧器と給排ラインを介して接続された給排ポート、ポンプポート、タンクポート、前記蓄圧器の圧力が第1信号圧として導かれる第1信号室、および、前記圧力室の圧力が第2信号圧として導かれる第2信号室を有する調圧弁と、
前記第1信号室への前記第1信号圧の供給可否を制御する信号圧供給制御弁と、
前記給排ラインから分岐して前記圧力室と接続された分岐ライン上に設けられた開閉弁と、
開閉信号圧の供給有無に応じて前記開閉弁の開閉状態を制御する開閉制御弁と、
を備え、
前記制振制御オフ状態では、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を停止し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記ポンプポートに接続する第1位置に位置付けられて前記蓄圧器で蓄圧がなされ、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されず前記開閉弁が閉弁し、
前記制振制御オフ状態から前記制振制御オン状態に切り換わると、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を許可し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記タンクポートに接続する第2位置に位置付けられて前記蓄圧器の前記圧力が低下していき、
前記制振制御オン状態において前記蓄圧器の前記圧力が前記圧力室の前記圧力と同じになると、前記調圧弁が前記給排ポートを遮断する第3位置に位置付けられると共に、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されて前記開閉弁が開弁し、
更に、前記開閉制御弁と接続される供給弁給排ポート、前記蓄圧器の圧力が第1信号圧として導かれる供給弁第1信号室、および、前記圧力室の圧力が第2信号圧として導かれる供給弁第2信号室を有する開閉信号圧供給弁を備え、
前記制振制御オフ状態において、前記開閉信号圧供給弁が前記供給弁給排ポートをドレンに接続する弁位置に位置付けられ、
前記制振制御オン状態において前記第1信号圧が前記第2信号圧以下になると、前記開閉信号圧供給弁が前記開閉信号圧を前記供給弁給排ポートに供給する弁位置に位置付けられる、制振制御回路。
圧力室に対する圧油の給排に応じて車体に取り付けられた作業装置を動作させるアクチュエータを備えた作業機械に搭載され、走行時に制振制御オフ状態と制振制御オン状態との切換えが可能な制振制御回路であって、
蓄圧器と、
前記蓄圧器と給排ラインを介して接続された給排ポート、ポンプポート、タンクポート、前記蓄圧器の圧力が第1信号圧として導かれる第1信号室、および、前記圧力室の圧力が第2信号圧として導かれる第2信号室を有する調圧弁と、
前記第1信号室への前記第1信号圧の供給可否を制御する信号圧供給制御弁と、
前記給排ラインから分岐して前記圧力室と接続された分岐ライン上に設けられた開閉弁と、
開閉信号圧の供給有無に応じて前記開閉弁の開閉状態を制御する開閉制御弁と、
を備え、
前記制振制御オフ状態では、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を停止し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記ポンプポートに接続する第1位置に位置付けられて前記蓄圧器で蓄圧がなされ、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されず前記開閉弁が閉弁し、
前記制振制御オフ状態から前記制振制御オン状態に切り換わると、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を許可し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記タンクポートに接続する第2位置に位置付けられて前記蓄圧器の前記圧力が低下していき、
前記制振制御オン状態において前記蓄圧器の前記圧力が前記圧力室の前記圧力と同じになると、前記調圧弁が前記給排ポートを遮断する第3位置に位置付けられると共に、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されて前記開閉弁が開弁し、
前記調圧弁が、前記開閉制御弁と接続される開閉給排ポートを有し、
前記制振制御オフ状態では、前記調圧弁が前記第1位置に位置付けられて前記開閉給排ポートがドレンに接続され、前記制振制御オフ状態から前記制振制御オン状態に切り換わると、前記調圧弁が前記第2位置に位置付けられて前記開閉給排ポートがドレンに接続され、
前記制振制御オン状態において前記蓄圧器の前記圧力が前記圧力室の前記圧力と同じになると、前記調圧弁が前記第3位置に位置付けられて、前記開閉信号圧が前記開閉給排ポートに供給される、制振制御回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記走行振動抑制装置では、複数の圧力センサを必要とし、また、圧力センサで検出された圧力を参照して実行される制御ルーチンの構築および実装を必要とする。そのため、ハードウェアおよびソフトウェアの両面で、走行振動抑制装置の構成が複雑化する。
【0006】
本発明は、構成を簡単化可能な作業車両用の制振制御回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る制振制御回路は、圧力室に対する圧油の給排に応じて車体に取り付けられた作業装置を動作させるアクチュエータを備えた作業機械に搭載され、走行時に制振制御オフ状態と制振制御オン状態との切換えが可能な制振制御回路であって、蓄圧器と、前記蓄圧器と給排ラインを介して接続された給排ポート、ポンプポート、タンクポート、前記蓄圧器の圧力が第1信号圧として導かれる第1信号室、および、前記圧力室の圧力が第2信号圧として導かれる第2信号室を有する調圧弁と、前記第1信号室への前記第1信号圧の供給可否を制御する信号圧供給制御弁と、前記給排ラインから分岐して前記圧力室と接続された分岐ライン上に設けられた開閉弁と、開閉信号圧の供給有無に応じて前記開閉弁の開閉状態を制御する開閉制御弁と、を備え、前記制振制御オフ状態では、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を停止し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記ポンプポートに接続する第1位置に位置付けられて前記蓄圧器で蓄圧がなされ、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されず前記開閉弁が閉弁し、前記制振制御オフ状態から前記制振制御オン状態に切り換わると、前記信号圧供給制御弁が前記第1信号圧の供給を許可し、前記調圧弁が前記給排ポートを前記タンクポートに接続する第2位置に位置付けられて前記蓄圧器の前記圧力が低下していき、前記制振制御オン状態において前記蓄圧器の前記圧力が前記圧力室の前記圧力と同じになると、前記調圧弁が前記給排ポートを遮断する第3位置に位置付けられると共に、前記開閉制御弁に前記開閉信号圧が供給されて前記開閉弁が開弁する。
【0008】
前記構成によれば、制振制御オフ状態では、開閉弁が閉弁しているので、蓄圧器が圧力室と遮断される。蓄圧器はポンプポートと連通し、蓄圧器の圧力が高められていく。走行が開始して制振制御オフ状態から制振制御オン状態に切り換わると、先ず、蓄圧器の圧力が調圧弁の第1信号室に導かれる。第1信号圧の導通直後は、蓄圧器の圧力(第1信号圧)は圧力室の圧力(第2信号圧)よりも高い場合がある。蓄圧器はタンクポートと連通し、蓄圧器の圧力が低下していく。蓄圧器の圧力(第1信号圧)が圧力室の圧力(第2信号圧)と同じになるまで低下すると、蓄圧器および圧力室と接続されている給排ポートが遮断されたうえで、開閉弁が開弁して蓄圧器が圧力室と連通される。これにより、圧力室の脈動を蓄圧器で吸収でき、作業装置ひいては車体を制振できる。
【0009】
開閉弁は、制振制御オン状態に切り換わっても、蓄圧器の圧力が圧力室の圧力と同じになるまでは閉弁している。そのため、蓄圧器の圧力が圧力室の圧力よりも高い状況下で蓄圧器が圧力室と連通することを防止でき、制振制御オン状態への切換え直後に車体にショックが生じることを防止できる。蓄圧器の圧力が圧力室の圧力と同じになるまで低下すると、開閉信号圧が開閉制御弁に供給され、開閉制御弁が開閉弁を開弁させる。そのため、ショックを生じさせないで済む状態(蓄圧器の圧力と圧力室の圧力との間に差がない状態)になれば速やかに、作業装置および車体を制振可能になる。
【0010】
前記開閉制御弁と接続される給排ポート、前記蓄圧器の圧力が第1信号圧として導かれる第1信号室、および、前記圧力室の圧力が第2信号圧として導かれる第2信号室を有する開閉信号圧供給弁を備え、前記制振制御オフ状態において、前記開閉信号圧供給弁が前記給排ポートをドレンに接続する弁位置に位置付けられ、前記制振制御オン状態において前記第1信号圧が前記第2信号圧以下になると、前記開閉信号圧供給弁が前記開閉信号圧を前記給排ポートに供給する弁位置に位置付けられてもよい。
【0011】
前記構成によれば、制振制御オン状態への切換え後、蓄圧器の圧力が圧力室の圧力と同じになると蓄圧器を圧力室と連通させることを、油圧の作用で速やかに且つ自動的に実現できる。
【0012】
前記調圧弁が、前記開閉制御弁と接続される開閉給排ポートを有する統合弁として構成され、前記制振制御オフ状態では、前記統合弁が前記第1位置に位置付けられて前記開閉給排ポートがドレンに接続され、前記制振制御オフ状態から前記制振制御オン状態に切り換わると、前記統合弁が前記第2位置に位置付けられて前記開閉給排ポートがドレンに接続され、前記制振制御オン状態において前記蓄圧器の前記圧力が前記圧力室の前記圧力と同じになると、前記統合弁が前記第3位置に位置付けられて、前記開閉信号圧が前記開閉給排ポートに供給されてもよい。
【0013】
前記構成によれば、開閉信号圧を油圧の作用で自動的に供給する機能を調圧弁が併せ持つことができ、信号圧を供給するラインが単純化されるので、制振制御回路の構成がコンパクトになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構成を簡単化可能な作業車両用の制振制御回路を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。全図を通じて、同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下の説明における方向は、作業車両の運転者が見る方向を基準としている。
【0017】
図1に示す作業車両1は、車輪走行式の産業用車両の1つであるホイールローダである。ただし、本発明は、ショベルローダ、フォークリフト、トラッククレーンなどの他の作業車両にも適用可能である。作業車両1は、車体2、作業装置3、およびアクチュエータ4を備えている。
【0018】
車体2は、互いに水平方向に揺動可能に連結された前側車体5および後側車体6で構成されている。左右の前車輪7が前側車体5に取り付けられ、左右の後車輪8が後側車体6に取り付けられている。左右一対のステアリングシリンダ9が前側車体5と後側車体6との間に設けられており、ステアリングシリンダ9の伸縮に応じて作業車両1の進行方向が変更される。運転室10およびエンジンルーム11が後側車体6に設けられている。運転室10に搭乗したオペレータは、不図示の操作器を操作することで、作業装置3の操作および走行(前後進、加減速、方向転換など)の操作を行える。
【0019】
作業装置3は、車体2に動作可能に取り付けられている。一例として、作業装置3は、前側車体5に鉛直方向に揺動可能に連結されたブーム12、および、ブーム12の先端に鉛直方向に揺動可能に連結されたバケット13を含む。アクチュエータ4は、圧油の給排に応じて作業装置3を作動させる。一例として、アクチュエータ4は、ブーム12を作動させる左右一対のブームシリンダ14、および、バケット13を作動させる左右一対のバケットシリンダ15を含む。
【0020】
[第1実施形態]
図2は、
図1に示す作業車両1に搭載される液圧システム20の構成図である。液圧システム20は、ポンプ21および制御弁22を備えている。制御弁22は、前述した操作器(図示せず)での操作に応じて作動し、アクチュエータ4に対する作動液の供給および排出を制御する。ここでは、アクチュエータ4として、ブームシリンダ14を例示するが、アクチュエータ4は、その他の液圧シリンダでもよいし、液圧モータでもよい。一例として、ブームシリンダ14は、ヘッド側液室4aおよびロッド側液室4bの2つの圧力室を有した複動型片ロッドシリンダである。
【0021】
制御弁22は、ポンプポート22a、タンクポート22b、および一対の主給排ポート22c,22dを有している。ポンプポート22aは、供給ライン23を介してポンプ21と接続されている。タンクポート22bは、排出ライン24を介してタンクに繋がる。主給排ポート22cは、ヘッド給排ライン25を介して、ヘッド側液室4aと接続されている。主給排ポート22dは、ロッド給排ライン26を介して、ロッド側液室4bと接続されている。
【0022】
この液圧システム20には、第1実施形態に係る制振制御回路30(または制振制御システム)が設けられている。制振制御回路30は、蓄圧器31、調圧弁32、信号圧供給制御弁33、開閉弁34,35、開閉制御弁36,37、モード切換弁38、開閉信号圧供給弁39、およびチェック弁60を備えている。モード切換弁38は、電磁弁であり、コントローラ40によって制御される。
【0023】
コントローラ40は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。コントローラ40は、受信部、記憶部、及び出力部を有する。受信部および出力部は、I/Oインターフェースにより実現される。記憶部は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより実現される。モード切換弁38の励磁および消磁の切換えは、コントローラ40のプロセッサが不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいて揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0024】
調圧弁32は、ポンプポート32a、タンクポート32b、給排ポート32c、第1信号室32p1、および第2信号室32p2を有する。調圧弁32は、第1信号室32p1に導かれる第1信号圧PL1と、第2信号室32p2に導かれる第2信号圧PL2との差圧に応じて作動するスプール式の方向切換弁である。ポンプポート32aは、供給ライン23から分岐した分岐供給ライン41と接続され、チェック弁60が分岐供給ライン41上に介在している。タンクポート32bは、排出ライン42を介してタンクに繋がる。給排ポート32cは、給排ライン43を介して蓄圧器31と接続されている。
【0025】
分岐ライン44が、給排ライン43から分岐し、前述したヘッド給排ライン25と合流している。分岐ライン44は、ヘッド給排ライン25を介してヘッド側液室4aと接続されている。第1開閉弁34は、分岐ライン44上に設けられている。第2開閉弁35は、前述したロッド給排ライン26から分岐してタンク59に繋がる分岐排出ライン45上に設けられている。
【0026】
一例として、第1開閉弁34も第2開閉弁35も、ポペットであり、ポペット上側液室への圧油供給有無に応じて開弁または閉弁する。第1開閉弁34は、そのポペット上側液室に圧油が供給されることで閉弁する。第2開閉弁35も、そのポペット上側液室に圧油が供給されることで閉弁する。ただし、圧油が供給されていても、ポペット上流側の圧力がポペット上側液室の圧力よりも高くなる場合があり、その場合には第2開閉弁35は開弁する。それにより、シリンダロッド側のキャビテーションを防止できる。第1開閉弁34のポペット下側液室は、分岐ライン44上に介在している。第2開閉弁35のポペット下側液室は、分岐排出ライン45上に介在している。
【0027】
開閉制御弁36,37は、開閉信号圧PL3の供給有無に応じて開閉弁34,35の開閉状態を制御する。第1開閉制御弁36は第1開閉弁34と対応しており、第2開閉制御弁37は第2開閉弁35と対応している。
【0028】
一例として、第1開閉制御弁36も第2開閉制御弁37も、パイロット式・スプリングオフセット式の2位置・3ポート方向切換弁である。第1開閉制御弁36は、入口ポート36a、ドレンポート36b、給排ポート36c、および信号室36pを有する。入口ポート36aは、第1開閉弁34を閉弁させるために必要な圧油が流れる閉弁圧油ライン46と接続されている。回路図が示すとおり、入口ポート36aには、閉弁圧油ライン46を介して、蓄圧器31の圧力とヘッド側液室4aの圧力とのうち高い方の圧力の作動液が供給される。給排ポート36cは、圧油給排ライン47を介して、第1開閉弁34のポペット上側液室と接続されている。
【0029】
第2開閉制御弁37も、入口ポート37a、ドレンポート37b、給排ポート37c、および信号室37pを有する。入口ポート37aは、第2開閉弁35を閉弁させるために必要な圧油が流れる閉弁圧油ライン48と接続されている。閉弁圧油ライン48は、分岐排出ライン45のうち第2開閉弁35よりも上流側から分岐して、入口ポート37aに接続されている。給排ポート37cは、圧油給排ライン49を介して、第2開閉弁35のポペット上側液室と接続されている。
【0030】
ドレンポート36b,37bはドレンと繋がっている。信号室36p,37pは、開閉信号圧PL3を供給する信号圧供給ライン50と接続されている。信号圧供給ライン50は、共通ライン50a、共通ライン50aから分岐して信号室36pに接続される第1分岐ライン50b、共通ライン50aから分岐して信号室37pに接続される第2分岐ライン50cで構成されている。
【0031】
モード切換弁38は、入口ポート38a、ドレンポート38b、一対の給排ポート38c,38dを有する。一例として、モード切換弁38は、電磁式・オフセットスプリング式の2位置・4ポート方向切換弁である。信号圧供給制御弁33は、入口ポート33a、ドレンポート33b、給排ポート33c、および信号室33pを有する。一例として、信号圧供給制御弁33は、パイロット式・オフセットスプリング式の2位置・3ポート方向切換弁である。開閉信号圧供給弁39は、入口ポート39a、ドレンポート39b、給排ポート39c、第1信号室39p1、および第2信号室39p2を有する。開閉信号圧供給弁39も、調圧弁32と同様にして、第1信号室39p1に導かれる第1信号圧PL1と第2信号室39p2に導かれる第2信号圧PL2との差圧に応じて作動するスプール式の方向切換弁である。
【0032】
モード切換弁38の入口ポート38aは、分岐供給ライン41から分岐した信号圧ライン51と接続される。給排ポート38cは、信号圧給排ライン52を介して信号圧供給制御弁33の信号室33pと接続されている。給排ポート38dは、信号圧給排ライン53を介して開閉信号圧供給弁39の入口ポート39aに接続されている。開閉信号圧供給弁39の給排ポート39cは、信号圧供給ライン50の共通ライン50aと接続されている。
【0033】
調圧弁32の第1信号室32p1は、給排ライン54を介して信号圧供給制御弁33の給排ポート33cと接続されている。信号圧供給制御弁33の入口ポート33aは、給排ライン43から分岐した第1信号圧供給ライン55と接続されている。開閉信号圧供給弁39の第1信号室39p1も、給排ライン43から分岐した第1信号圧供給ライン56と接続されている。調圧弁32の第2信号室32p2は、分岐ライン44から分岐した第2信号圧供給ライン57と接続されている。開閉信号圧供給弁39の第2信号室39p2も、分岐ライン44から分岐した第2信号圧供給ライン58と接続されている。第2信号圧供給ライン57,58は、分岐ライン44のうち第1開閉弁34よりもアクチュエータ4側で分岐している。 調圧弁32においても開閉信号圧供給弁39においても、蓄圧器31の圧力が第1信号圧PL1として第1信号室32p1,39p1に導かれる。ただし、調圧弁32においては、信号圧供給制御弁33のファンクションに応じて、第1信号圧PL1の供給可否が制御される。調圧弁32においても開閉信号圧供給弁39においても、ヘッド側液室4aの圧力が第2信号圧PL2として第2信号室32p2,39p2に導かれる。
【0034】
以上のように構成される制振制御回路30の動作および作用について、
図2の回路図と
図3のタイムチャートを参照して説明する。
【0035】
コントローラ40は、車載のセンサによって検出される作業車両1の状態を示す情報に基づき、作業車両1が走行中であるか否かを判断する。一例として、コントローラ40は、不図示の車速センサにより検出された作業車両1の車速(車体移動速度)がモード切換閾値(例えば、5〜10km/h)以上であるか否かを判定する。車速がモード切換閾値以上であると、コントローラ40は、作業車両1が走行中であると判断する。走行中か否かの判断に、その他の条件が用いられていてもよい。なお、通常の走行中はオペレータが作業装置3を操作していない。その際、制御弁22は、ポート22a〜22dが遮断される弁位置に位置付けられる(
図2の右から2つ目ファンクションを参照)。
【0036】
コントローラ40は、作業車両1が非走行中であると判断すると、モード切換弁38を消磁する。これにより、制振制御回路30は制振制御オフ状態となる。コントローラ40は、作業車両1が走行中であると判断すると、モード切換弁38を励磁する。これにより、制振制御回路30は制振制御オン状態となる。このように、制振制御回路30は、作業車両の走行時に制振制御オン状態と制振制御オフ状態との切換えが可能に構成されている。
【0037】
制振制御オフ状態では、モード切換弁38が、入口ポート38aが給排ポート38cと接続され、給排ポート38dがドレンポート38bと接続される弁位置に位置付けられる(
図2の上ファンクションを参照)。そのため、信号圧PL3が信号圧供給制御弁33の信号室33pに供給される。これにより、信号圧供給制御弁33では、入口ポート33aが遮断され、給排ポート33cがドレンポート33bと接続される(
図2の下ファンクションを参照)。すると、調圧弁32において、第2信号室32p2の圧力(ヘッド側液室4aの圧力)が第1信号室32p1の圧力(ドレン圧)に打ち勝つ。調圧弁32は、ポンプポート32aが給排ポート32cと接続される第1位置に位置付けられる(
図2の右ファンクションを参照)。これにより、蓄圧器31の圧力が、給排ライン43を流れる圧油で高められる。なお、下記のとおり、第1開閉弁34は閉弁しており、蓄圧器31はヘッド側液室4aから遮断されている。
【0038】
開閉信号圧供給弁39では、第1信号室39p1の圧力(蓄圧器31の圧力)が第2信号室39p2の圧力(ヘッド側液室4aの圧力)に打ち勝つ。開閉信号圧供給弁39は、入口ポート39aが遮断され、給排ポート39cがドレンポート39bと接続される第1位置に位置付けられる(
図2の左ファンクションを参照)。そのため、第1開閉制御弁36でも第2開閉制御弁37でも、信号室36p,37pがドレンと繋がる。第1開閉制御弁36も第2開閉制御弁37も、入口ポート36a,37aが給排ポート36c,37cと接続される閉弁位置に位置付けられる(弁36は
図2の左ファンクション、弁37は
図2の右ファンクションを参照)。第1開閉弁34でも第2開閉弁35でも、閉弁のための圧油がポペット上側液室に導かれる。よって、第1開閉弁34も第2開閉弁35も閉弁状態となる。なお、仮に第2信号圧PL2が第1信号圧PL1以上となり、開閉信号圧供給弁39が第1位置以外に位置付けられたとしても、入口ポート39aひいては開閉制御弁36,37には信号圧PL3が供給されないので、開閉弁34,35は閉弁状態を維持する。
【0039】
制振制御回路30が制振制御オフ状態から制振制御オン状態へと切り換わると(
図3の時刻t1を参照)、モード切換弁38が励磁される。制振制御オン状態に切り換わった後においても、実際に制振効果が現れるのは、ヘッド側液室4aが蓄圧器31と連通してからである。以下の説明では、制振制御オン状態に切り換わった後であってヘッド側液室4aと蓄圧器31とが連通する前の状態を「スタンバイ状態」、ヘッド側液室4aが蓄圧器31と連通している状態を「連通状態」という。
【0040】
制振制御オフ状態から制振制御オン状態(スタンバイ状態)に切り換わると、モード切換弁38は、入口ポート38aが給排ポート38dと接続され、給排ポート38cがドレンポート38bと接続される弁位置に位置付けられる(
図2の下ファンクションを参照)。信号圧供給制御弁33の信号室33pはドレンに繋がり、信号圧供給制御弁33では、入口ポート33aが給排ポート33cと接続される(
図2の上ファンクションを参照)。これにより、調圧弁32の第1信号室32p1には、蓄圧器31の圧力が第1信号圧PL1として導かれる。制振制御オフ状態の間、蓄圧器31の圧力は高く保たれているので、第1信号圧PL1(蓄圧器31の圧力)が第2信号圧PL2(ヘッド側液室4aの圧力)に打ち勝つ。調圧弁32は、ポンプポート32aが遮断されて給排ポート32cがタンクポート32bと接続される第2位置に位置付けられる(
図2の左ファンクションを参照)。これにより、蓄圧器31がタンクと繋がり、蓄圧器31の圧力が低下していく。
【0041】
モード切換弁38の弁位置が切り換わったことで、開閉信号圧供給弁39の入口ポート39aには、開閉信号圧PL3が供給される。しかし、第1信号圧PL1が第2信号圧PL2よりも高いので、開閉信号圧供給弁39は、前述した第1位置に位置付けられたままである(
図2の左ファンクションを参照)。そのため、開閉信号圧PL3が信号圧供給ライン50に供給されることはなく、第1開閉弁34は、制振制御オフ状態から引き続いて閉弁状態に維持され、これによりスタンバイ状態が実現される。モード切換弁38の弁位置が切り換わっても、開閉信号圧PL3は信号室37pに供給されないので、第2開閉制御弁37は閉弁位置に維持される。
【0042】
蓄圧器31の圧力がヘッド側液室4aの圧力と同じになるまで低下すると、スタンバイ状態は終了する(
図3の時刻t2を参照)。
【0043】
調圧弁32でも開閉信号圧供給弁39でも、第1信号圧PL1(蓄圧器31の圧力)が第2信号圧PL2(ヘッド側液室4aの圧力)と釣り合う。調圧弁32は、ポンプポート32aおよび給排ポート32cが遮断される第3位置に位置付けられる(
図2の中央ファンクションを参照)。開閉信号圧供給弁39は、入口ポート39aが給排ポート39cと接続される第2位置に位置付けられる(
図2の中央ファンクションを参照)。これにより、開閉信号圧PL3が、第1開閉制御弁36および第2開閉制御弁37の各信号室36p,37pに導かれる。
【0044】
第1開閉制御弁36も第2開閉制御弁37も、入口ポート36a,37aが遮断され、給排ポート36c,37cがドレンポート36b,37bと接続される開弁位置に位置付けられる(弁36は
図2の右ファンクション、弁37は
図2の左ファンクションを参照)。第1開閉弁34および第2開閉弁35の各ポペット上側液室がドレンに繋がり、第1開閉弁34も第2開閉弁35も開弁状態となる。これにより、ヘッド側液室4aが蓄圧器31と連通し、スタンバイ状態から連通状態へと移行する。連通状態では、ロッド側液室4bがタンクと繋がる。
【0045】
連通状態になると、ヘッド側液室4aの圧力脈動が蓄圧器31で吸収される。それにより、走行中に路面等から作業車両1に外力が付与されても、アクチュエータ4が不所望に動作するのを抑制できる。作業装置3の振動が抑制されるので、ひいては、車体2およびこれに設けられた運転室10の振動も抑えることができる。よって、走行中の乗り心地が改善される。
【0046】
以上のとおり、本実施形態に係る制振制御回路では、制振制御オフ状態から制振制御オン状態に切り換わっても、即座に蓄圧器31をヘッド側液室4aと連通させない。蓄圧器31の圧力がヘッド側液室4aの圧力が同じになるまで、蓄圧器31をヘッド側液室4aと遮断した状態で待機する。仮に圧力差がある状態で連通させれば、車体2にショックが生じる可能性がある。本実施形態では、このようなショックの発生を防止できるので、乗り心地を向上できる。
【0047】
そして、蓄圧器31の圧力がヘッド側液室4aの圧力と同じになるまで低下すると(すなわち、連通させてもショックを生じさせずに済む状態になると)、開閉弁34,35が速やかに開弁し、スタンバイ状態から連通状態へ移行する。そのため、ショックを生じさせずに済む状態になると速やかに、制振制御回路30が実際に制振効果を発揮できるようになり、乗り心地を向上できる。
【0048】
スタンバイ状態から連通状態への移行に、電磁的な手段ではなく液圧を利用しており、制振制御回路30はそのために必要な構成を備えている。圧力センサのようなデバイスを用いずに、また、圧力センサの検出結果を参照した制御ルーチンの構築を要さずに、更には、そのような制御ルーチンのコントローラへの実装を要さずに、このような状態移行が実現される。よって、制振制御回路30の構成をハードウェアの側面からもソフトウェアの側面からも簡単化できる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態に係る制振制御回路130について、上記実施形態との相違を中心に説明する。第1実施形態では、調圧弁32および開閉信号圧供給弁39が、互いに独立したスプール式の方向切換弁で構成され、どちらの弁32,39も、弁位置の切換えのために、蓄圧器31の圧力である第1信号圧PL1とヘッド側液室4aの圧力である第2信号圧PL2と導いている。本実施形態に係る制振制御回路130は、第1実施形態と同様に作業車両に搭載される液圧システム120に設けられている一方、調圧弁32の機能と開閉信号圧供給弁39の機能とを併せ持つ統合弁160を備えている。
【0050】
図4に示すように、統合弁160は、単一のスプールを有するパイロット式の方向切換弁である。統合弁160は、第1信号室160p1および第2信号室160p2を有する。第1信号室160p1は、給排ライン156を介して信号圧供給制御弁33の給排ポート33cと接続されている。第2信号室160p2は、分岐ライン44から分岐する第2信号圧供給ライン157と接続されている。
【0051】
統合弁160は、ポンプポート132a、タンクポート132b、給排ポート132c、入口ポート139a、ドレンポート139b、および給排ポート139cを有する。ポート132a〜132cは、第1実施形態に係る調圧弁32のポート32a〜32cと対応し、ポート139a〜139cは、第1実施形態に係る開閉信号圧供給弁39のポート39a〜39cと対応する。
【0052】
制振制御オフ状態では、第2信号圧PL2(ヘッド側液室4aの圧力)が第1信号圧PL1(ドレン圧)に打ち勝ち、統合弁160は、ポンプポート132aが給排ポート132cと接続され、給排ポート139cが入口ポート139aと接続される第1位置に位置付けられる(
図4の右ファンクションを参照)。これにより、蓄圧器31で蓄圧がなされる。給排ポート139cは、統合弁160の入口ポート139aおよびモード切換弁38を介してドレンと繋がる。開閉信号圧PL3は開閉制御弁36,37に供給されず、開閉弁34,35は閉弁状態となる。
【0053】
制振制御オフ状態から制振制御オン状態(スタンバイ状態)に切り換わると、統合弁160の第1信号室160p1に、蓄圧器31の圧力が第1信号圧PL1として導かれる。第1信号圧PL1(蓄圧器の圧力)は第2信号圧PL2(ヘッド側液室4aの圧力)に打ち勝ち、統合弁160は、給排ポート132cがタンクポート132bと接続され、給排ポート139cがドレンポート139bと接続される第2位置に位置付けられる(
図4の左ファンクションを参照)。蓄圧器31の圧力が低下していく一方で、開閉弁34,35は閉弁状態で維持される。これにより、スタンバイ状態が実現される。
【0054】
蓄圧器31の圧力がヘッド側液室4aの圧力と同じになるまで低下すると、スタンバイ状態が終了して連通状態となる。すなわち、第1信号圧PL1(蓄圧器31の圧力)が第2信号圧PL2(ヘッド側液室4aの圧力)と釣り合い、統合弁160は、給排ポート132cおよびポンプポート132aが遮断され、入口ポート139aが給排ポート139cと接続される第3位置に位置付けられる(
図4の中央ファンクションを参照)。開閉信号圧PL3が開閉制御弁36,37に供給され、開閉弁34,35が開弁状態になる。これにより、蓄圧器31がヘッド側液室4aと連通するとともにロッド側液室4bがタンクと繋がる。
【0055】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の作用が得られる。そして、本実施形態では、調圧弁32の機能と開閉信号圧供給弁39の機能とが統合弁160に集約されている。これにより、第1信号圧PL1および第2信号圧PL2を供給するためのラインが単純化され、また、弁数が減り、制振制御回路130の構成がコンパクトになる。
【0056】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更、削除または追加可能である。
【0057】
例えば、信号圧供給制御弁33は電磁弁であってもよい。その際、信号圧供給制御弁33の信号室33pの省略と共にモード切換弁38のポートを信号圧供給制御弁33と接続するラインを省略し、モード切換弁38を開閉信号圧供給弁39に対する信号圧給排専用の弁としてもよい。