特許第6858630号(P6858630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858630
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20210405BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-87893(P2017-87893)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-186020(P2018-186020A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】愛清 仁
(72)【発明者】
【氏名】小島 晶
(72)【発明者】
【氏名】園田 峻
(72)【発明者】
【氏名】江口 遼
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−266467(JP,A)
【文献】 特開2009−158440(JP,A)
【文献】 特開2017−016826(JP,A)
【文献】 特開2008−135289(JP,A)
【文献】 米国特許第5232797(US,A)
【文献】 特開2006−173001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−39
H01M 50/10−198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、上記金属箔の少なくとも片面上に配置された活物質層とを備えた複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体と、
上記電極の周縁部に配置され、上記電極組立体の側周面を覆うシール部と、
上記電極組立体の積層方向における端部にそれぞれ当接し、上記電極組立体を積層方向に拘束する拘束部材と、
上記電極と、当該電極の隣の電極と、上記シール部とによって囲まれた層状空間内における上記活物質層の外周縁部よりも内側に位置するとともに上記シール部から離間した介在部とを有し、
上記電極組立体は、その積層方向に並んで配置された複数の上記層状空間を有し、
上記各セパレータは、当該セパレータに対面する上記活物質層のそれぞれと接触しており、
上記介在部は、上記層状空間に面する2つの上記電極を離隔させた状態で上記電極同士の間に介在し、上記電極組立体の積層方向において上記セパレータと上記活物質層との接触面よりも上記電極側に突出しているとともに、上記各電極に接合されている、二次電池。
【請求項2】
上記拘束部材は金属製である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
上記電極は、上記金属箔の一部が上記層状空間内に露出した露出部を有しており、上記介在部は、上記露出部に接合されている、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
上記介在部は、上記金属箔に接触しない状態で上記活物質層に接合されている、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項5】
複数の上記介在部は、上記電極組立体の積層方向において互いに重なるように配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
上記介在部は、上記活物質層の中央または上記活物質層を等分割した各領域の中央に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
上記電極組立体は、その積層方向の両端に配置された終端電極と、上記終端電極同士の間に配置されたバイポーラ電極とを有しており、上記バイポーラ電極は、金属箔と、上記金属箔の表側面上に配置された正極活物質層と、上記金属箔の裏側面上に配置された負極活物質層とを有している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
上記セパレータは、上記電極組立体の積層方向に貫通した貫通穴を有しており、上記介在部は上記貫通穴に配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池等の二次電池は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリーとして用いられている。この種の二次電池は、複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体と、電極組立体をその積層方向に圧縮する拘束部材とを有している。
【0003】
電極組立体における隣り合う電極の間には、電解質が保持されている。この電解質が電極組立体の外部に漏出したり、外気と接触したりすると、電池性能の低下を招くおそれがある。そのため、電極の周縁部には、電解質の漏出や外気の進入を抑制するためのシール部が設けられることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−122977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池は、充放電の際にガスを発生させることがある。電極の周縁部にシール部を設けた場合には、隣り合う電極と、電極の周縁部に設けられたシール部とにより囲まれた層状空間にガスが蓄積されやすくなる。ガスの蓄積によっていずれかの層状空間の内圧が上昇すると、当該層状空間の隣の層状空間との内圧の差が大きくなり、内圧の高い層状空間が膨張する。また、電極組立体の両端は拘束部材によって拘束されているため、いずれかの層状空間が膨張すると、その隣の層状空間が圧縮される。
【0006】
そして、ガスの蓄積によって層状空間が膨張し、または圧縮されると、内圧の高い層状空間と、その隣の層状空間とを隔てる電極が変形し、電極間の距離に偏りが生じるおそれがある。このような電極間の距離の偏りは、電極反応のムラの発生や、充放電特性の悪化を招くおそれがあるため、好ましくない。
【0007】
従来、電極の変形を抑制するために、電極組立体の両端に高い剛性を有する拘束部材が設けられている。しかし、電極組立体に含まれる個々の電極は、拘束部材によって直接拘束されてはいないため、拘束部材により上述した電極の変形を十分に抑制することが難しい。また、高い剛性を有する拘束部材は、比較的大きな質量及び体積を有するため、二次電池の質量や体積の増大を招いていた。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、内圧上昇による電極の変形を抑制でき、小型化や軽量化が容易な二次電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、金属箔と、上記金属箔の少なくとも片面上に配置された活物質層とを備えた複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体と、
上記電極の周縁部に配置され、上記電極組立体の側周面を覆うシール部と、
上記電極組立体の積層方向における端部にそれぞれ当接し、上記電極組立体を積層方向に拘束する拘束部材と、
上記電極と、当該電極の隣の電極と、上記シール部とによって囲まれた層状空間内における上記活物質層の外周縁部よりも内側に位置するとともに上記シール部から離間した介在部とを有し、
上記電極組立体は、その積層方向に並んで配置された複数の上記層状空間を有し、
上記各セパレータは、当該セパレータに対面する上記活物質層のそれぞれと接触しており、
上記介在部は、上記層状空間に面する2つの上記電極を離隔させた状態で上記電極同士の間に介在し、上記電極組立体の積層方向において上記セパレータと上記活物質層との接触面よりも上記電極側に突出しているとともに、上記各電極に接合されている、二次電池にある。
【発明の効果】
【0010】
上記二次電池は、電極と、当該電極の隣の電極と、シール部とによって囲まれた層状空間内に配置された介在部を有している。また、介在部は、層状空間に面する2つの電極を離隔させた状態で電極同士の間に介在し、これらの電極のそれぞれに接合されている。
【0011】
上記二次電池において、いずれかの層状空間の内圧がガスの蓄積によって上昇すると、上述したように、当該層状空間が膨張しようとする。しかし、当該層状空間に面する電極の両方が介在部に接合されているため、介在部によって電極間の距離の拡大を規制することができる。それ故、介在部は、内圧上昇による層状空間の膨張を抑制することができる。
【0012】
また、いずれかの層状空間が膨張しようとすると、その隣の層状空間が圧縮される。しかし、層状空間に面する2つの電極の間には、これらの電極を離隔させた状態で電極同士の間に介在する介在部が設けられているため、層状空間の圧縮による電極間の距離の縮小を規制することもできる。それ故、介在部は、内圧上昇に伴う層状空間の圧縮を抑制することができる。
【0013】
そして、介在部は、各層状空間に配置されているため、いずれの層状空間においても、内圧上昇に伴う層状空間の膨張や圧縮を抑制することができる。それ故、上記二次電池は、内圧上昇に伴う電極の変形を効果的に抑制し、ひいては電極間の距離の偏りの増大を抑制することができる。
【0014】
また、上記二次電池は、いずれの層状空間においても内圧上昇による層状空間の膨張を抑制することができるため、内圧上昇による電極の変形を抑制する効果を確保しつつ、拘束部材の剛性を従来よりも低くすることができる。その結果、上記二次電池の小型化や軽量化を容易に行うことができる。
【0015】
このように、上記二次電池によれば、内圧上昇による電極の変形を抑制でき、小型化や軽量化を容易に行うことができる。また、上記二次電池は、電極間の距離の偏りの増大を抑制し、電極反応のムラや充放電特性の悪化を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における、二次電池の要部を示す断面図である。
図2図1における介在部近傍の拡大図である。
図3図1のIII−III線矢視断面図である。
図4】実施例1の二次電池の製造方法における、電極とセパレータとを積層する作業の説明図である。
図5】実施例2における、セパレータを貫通した介在部を有する二次電池の要部を示す断面図である。
図6】実施例3における、2個所の介在部を有する二次電池の要部を示す断面図(図3に相当する矢視断面図)である。
図7】実施例3における、5個所の介在部を有する二次電池の要部を示す断面図(図3に相当する矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記二次電池において、電極組立体は、複数の電極がセパレータを介して積層された積層構造を有している。電極は、電極組立体において正極と負極とがセパレータを介して対面する単セルを構成することができれば、どのような態様であってもよい。例えば、正極としては、集電体としての金属箔の片面または両面上に正極活物質層が配置された箔電極を採用することができる。また、負極としては、集電体としての金属箔の片面または両面上に負極活物質層が配置された箔電極を採用することができる。
【0018】
金属箔と、金属箔の少なくとも片面上に配置された活物質層とを備えた箔電極は、上述した多孔質電極に比べて剛性が低いため、従来は、層状空間の内圧上昇に伴う電極の変形が起こりやすかった。これに対し、上記二次電池においては、介在部によって層状空間の膨張や圧縮を規制することができるため、電極の剛性が低い箔電極を使用する場合にも電極の変形を抑制することができる。
【0019】
また、電極として箔電極を使用する場合には、多孔質電極に比べて電極の厚みを容易に薄くすることができる。それ故、箔電極を備えた二次電池は、多孔質電極を備えた二次電池に比べて、体積当たりの電極の数を容易に増やすことができる。その結果、二次電池のパワー密度やエネルギー密度を向上させることができる。
【0020】
さらに、電極として、集電体としての金属箔と、金属箔の表側面上に配置された正極活物質層と、裏側面上に配置された負極活物質層とを有するバイポーラ電極を採用することもできる。この場合には、バイポーラ電極を積層するという単純な構成により、複数の単セルを直列に接続することができる。その結果、二次電池の起電力をより高くすることができる。
【0021】
また、バイポーラ電極を用いる場合には、単極性の電極を用いる場合に比べて、電極の総数に対する単セルの数を増やすことができる。それ故、電極の総数が同じ場合には、単極性の電極を用いる場合に比べて単セルの数を多くすることができる。また、単セルの数が同じ場合には、単極性の電極を用いる場合に比べて電極の総数を少なくし、積層方向における二次電池の寸法をより小さくすることができる。
【0022】
電極の周縁部にはシール部が配置されている。また、電極組立体の側周面は、シール部により覆われている。電極組立体の側周面をシール部で覆うことにより、電極組立体の外部から層状空間内への大気等の進入や、層状空間から外部への電解質等の漏出を抑制することができる。シール部としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド等の加熱によって接合可能な材料を使用することができる。
【0023】
単セルにおける正極と負極との間にはセパレータが介在している。セパレータとしては、例えば、多孔質樹脂フィルムや不織布等の、二次電池用として公知のセパレータを使用することができる。
【0024】
介在部は、電極と、当該電極の隣の電極と、電極の周縁部に配置されたシール部とによって囲まれた層状空間内に配置されている。介在部の数や位置、介在部と電極との接合の態様は、種々の態様を採り得る。例えば、各層状空間に配置される介在部の数は、1個所であってもよいし、2か所以上であってもよい。また、層状空間ごとに介在部の数や位置を変更することもできる。
【0025】
介在部と電極との接合の態様としては、例えば、介在部として接着剤を使用し、介在部と電極とを接着する態様を採用することができる。また、介在部を各電極に圧入し、介在部と電極とを機械的に接合する態様等を採用することもできる。また、これらの態様以外にも、電極からの介在部の剥離を抑制することができれば、公知の接合態様を採用することができる。
【0026】
介在部は、電極組立体の積層方向において、セパレータの表面よりも電極側に突出していこれにより、電極と介在部と接合部の面積をより広くすることができるため、両者の接合強度をより高くすることができる。その結果、電極からの介在部の剥離をより効果的に抑制することができ、ひいては内圧上昇による電極の変形をより長期間に亘って抑制することができる。
【0027】
また、介在部は、セパレータを含んだ状態で固形化していてもよい。このように、介在部とセパレータとを一体的に形成することにより、層状空間に面する2つの電極の電気的な絶縁を確保しつつ、介在部による作用効果を奏することができる。
【0028】
セパレータは、電極組立体の積層方向に貫通した貫通穴を有しており、介在部は貫通穴に配置されていてもよい。この場合には、電極組立体の組立作業において、介在部を容易に配置することができる。その結果、電極組立体の組立作業における作業性をより向上することができる。
【0029】
電極として箔電極、即ち、金属箔と、金属箔上に設けられた活物質層とを有する電極を使用する場合には、介在部は、活物質層に接合されていてもよい。この場合には、介在部を電極に接合する前に、金属箔を露出させておく必要がない。そのため、簡素な工程により電極を作製することができる。
【0030】
また、介在部は、金属箔に接合されていてもよい。例えば、電極が、金属箔の一部が層状空間内に露出した露出部を有している場合には、介在部を露出部に接合することができる。介在部と金属箔とを直接接合することにより、介在部が活物質層に接合されている場合に比べて、接合強度を高くすることができる。そのため、金属箔からの介在部の剥離をより効果的に抑制することができ、ひいては内圧上昇による電極の変形をより長期間に亘って抑制することができる。
【0031】
介在部としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;アクリル樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成ゴム等の、強アルカリに対する耐久性に優れ、加熱によって電極に接合可能な絶縁体を使用することができる。
【0032】
電極組立体の積層方向における端部には、拘束部材が当接している。電極組立体は、拘束部材によって積層方向に拘束されている。拘束部材の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属を採用することができる。
【0033】
上記二次電池を作製するに当たっては、まず、常法により電極を準備し、電極の周縁部にシール部を配置する。次に、電極とセパレータとを交互に積層しつつ、層状空間内に介在部を配置し、当該層状空間に面する電極の両方に介在部を当接させて積層体を作製する。
【0034】
電極とセパレータとを積層する作業と、層状空間内に介在部を配置する作業とは、最終的に上記の構成を有する積層体を得ることができれば、どのような順序で行ってもよい。例えば、セパレータに予め介在部を設け、このセパレータと電極とを交互に積層することにより、上記積層体を作製することができる。この場合には、電極とセパレータとを交互に積層するという単純な作業により、上記積層体を作製することができる。
【0035】
また、セパレータに予め厚み方向に貫通した貫通穴を設け、貫通穴内に介在部を配置しつつ電極とセパレータとを交互に積層することにより積層体を作製することもできる。
【0036】
次いで、積層体を加熱しつつ積層方向に圧縮することにより、シール部の形成作業と、各電極への介在部の接合作業とを一括して行い、電極組立体を作製することができる。その後、電極組立体の積層方向における両端に拘束部材を配置することにより、二次電池を得ることができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
上記二次電池の実施例を、図を用いて説明する。図1に示すように、二次電池1は、複数の電極2(21、22、23)がセパレータ3を介して積層された電極組立体11と、電極2の周縁部20に配置され、電極組立体11の側周面111を覆うシール部12と、電極組立体11の積層方向における端部にそれぞれ当接し、電極組立体11を積層方向に拘束する拘束部材13とを有している。また、電極2と、当該電極2の隣の電極2と、シール部12とによって囲まれた層状空間S内には、介在部4が配置されている。介在部4は、層状空間Sに面する2つの電極2を離隔させた状態で電極2同士の間に介在し、これらの電極2のそれぞれと接合されている。
【0038】
本例の電極組立体11は、電極2として、積層方向の両端に配置された終端電極21、23と、終端電極21と終端電極23との間に配置された複数のバイポーラ電極22とを有している。
【0039】
バイポーラ電極22は、長方形状を呈する金属箔24と、金属箔24の表側面に設けられた正極活物質層25pと、裏側面に設けられた負極活物質層25nとを有している。図1及び図3に示すように、バイポーラ電極22の周縁部20は、シール部12により覆われている。正極活物質層25pは、金属箔24の表側面における、シール部12よりも内側の領域に設けられている。負極活物質層25nは、金属箔24の裏側面における、シール部12よりも内側の領域に設けられている。図には示さないが、本例の活物質層25(25p、25n)は、多数の活物質粒子を含む多孔質体である。
【0040】
2つの終端電極21、23のうち、積層方向の一端に配置された第1の終端電極21は、正極活物質層25pを有しない以外は、バイポーラ電極22と同様の構成を有している。また、積層方向の他端に配置された第2の終端電極23は、負極活物質層25nを有しない以外は、バイポーラ電極22と同様の構成を有している。
【0041】
終端電極21、23及びバイポーラ電極22は、正極活物質層25pと負極活物質層25nとが積層方向において交互に並ぶように配置されている。また、正極活物質層25pと負極活物質層25nとの間には、セパレータ3が介在している。これにより、金属箔24同士の間に、正極としての正極活物質層25pと負極としての負極活物質層25nとがセパレータ3を介して対面した単セルが構成されている。また、本例の電極組立体11においては、複数の単セルが金属箔24を介して電気的に直列に接続されている。
【0042】
図1に示すように、電極組立体11の側周面111は、シール部12により覆われている。また、シール部12には、各電極2の周縁部20、即ち活物質層25(25p、25n)が設けられておらず、金属箔24が露出している部分が保持されている。
【0043】
電極組立体11は、電極2と、当該電極2の隣の電極2と、シール部12とによって囲まれた複数の層状空間Sを有している。この層状空間S内にはセパレータ3及び介在部4が配置されている。
【0044】
図3に示すように、セパレータ3は、電極組立体11の積層方向から視た平面視において長方形状を呈している。本例のセパレータ3は、ポリオレフィン系樹脂の繊維から構成された不織布である。
【0045】
介在部4は、電極組立体11の積層方向から視た平面視におけるセパレータ3の中央に配置されている。図1及び図2に示すように、本例の介在部4は、セパレータ3を含んだ状態で固形化しており、セパレータ3に対面する正極活物質層25p及び負極活物質層25nのそれぞれに接合されている。また、図2に示すように、介在部4は、電極組立体11の積層方向において、セパレータ3の表面31よりも電極2側に突出している。なお、本例の介在部4は、ポリプロピレンから構成されている。また、図1においては、便宜上、介在部4がセパレータ3と同一の厚みとなるように、介在部4を簡略化して記載した。
【0046】
電極組立体11の積層方向における両端には、金属製の拘束部材13が配置されている。拘束部材13は、図示しない保持板により、終端電極21、23の金属箔24に当接した状態で保持されている。本例の二次電池1は、拘束部材13を介して電極組立体11と図示しない外部回路とを電気的に接続することができる。
【0047】
本例の二次電池1は、例えば、以下の手順により作製することができる。まず、金属箔24に活物質層25(25p、25n)を塗布し、終端電極21、23及びバイポーラ電極22を作製する。次いで、これらの電極21〜23の周縁部20にシール部12を配置する。
【0048】
また、上述した電極21〜23の準備とは別に、セパレータ3を準備し、その中央に介在部4を配置する。図には示さないが、本例においては、セパレータ3を含んだ状態で固形化しており、セパレータ3の表面31よりも電極2側に突出した形状の介在部4を形成する。このような介在部4を形成する方法としては、例えば、以下の方法がある。まず、介在部4を溶媒に溶解させた後、この溶液をセパレータ3の中央に滴下し、セパレータ3の厚み方向に溶液を浸透させる。その後、セパレータ3を乾燥させて溶媒を除去することにより、セパレータ3を含んだ状態で固形化した介在部4を形成することができる。
【0049】
また、上述した方法に代えて、予め溶融させた介在部4をセパレータ3の中央に浸透させてもよい。この場合には、溶融状態の介在部4を厚み方向に浸透させた後に、介在部4を冷却して固化させることにより、セパレータ3を含んだ状態で固形化した介在部4を形成することができる。
【0050】
上述のようにして準備した電極21〜23とセパレータ3とを交互に積層し、図4に示す積層体110を作製する。そして、積層体110を加熱しつつ積層方向に圧縮することにより(図4、矢印112)、シール部12同士を溶着するとともに、介在部4を溶融させつつ正極活物質層25p及び負極活物質層25nのそれぞれに圧入する。
【0051】
溶融した介在部4は、積層体110の圧縮により、多孔質体である正極活物質層25p及び負極活物質層25nの細孔内に進入する。これにより、電極組立体11の積層方向において、セパレータ3の表面31よりも電極2側に突出した形状の介在部4を形成するとともに、介在部4を各電極2(21〜23)に接合することができる。そして、終端電極21、23に拘束部材13を当接させた後、図示しない注液口から各層状空間S内に電解質を注入することにより、二次電池1を得ることができる。
【0052】
次に、本例の二次電池1の作用効果を説明する。二次電池1は、電極2と、当該電極2の隣の電極2と、シール部12とによって囲まれた層状空間S内に配置された介在部4を有している。また、介在部4は、層状空間Sに面する2つの電極2を離隔させた状態で電極2同士の間に介在しており、これらの電極2のそれぞれに接合されている。
【0053】
そのため、介在部4は、いずれかの層状空間Sにおける内圧がガスの蓄積によって上昇した際に、当該層状空間Sにおける電極2間の距離の拡大や、当該層状空間Sの隣の層状空間Sにおける電極2間の距離の縮小を規制することができる。それ故、介在部4は、内圧上昇による層状空間Sの膨張や、内圧上昇に伴う層状空間Sの圧縮を抑制することができる。
【0054】
また、介在部4は、各層状空間Sに配置されているため、いずれの層状空間Sにおいても、層状空間Sの膨張や圧縮を抑制することができる。それ故、二次電池1は、内圧上昇に伴う電極2の変形を効果的に抑制し、ひいては電極2間の距離の偏りの増大を抑制することができる。
【0055】
また、二次電池1は、いずれの層状空間Sにおいても内圧上昇による層状空間Sの膨張を抑制することができるため、内圧上昇による電極2の変形を抑制する効果を確保しつつ、拘束部材13の剛性を従来よりも低くすることができる。その結果、二次電池1の小型化や軽量化を容易に行うことができる。
【0056】
また、本例の介在部4は、電極組立体11の積層方向において、セパレータ3の表面31よりも電極2側に突出している。そのため、電極2と介在部4との接合部の面積をより広くすることができる。それ故、電極2と介在部4との接合強度をより高くすることができる。その結果、電極2からの介在部4の剥離をより効果的に抑制することができ、ひいては内圧上昇による電極2の変形をより長期間に亘って抑制することができる。
【0057】
このように、二次電池1によれば、内圧上昇による電極2の変形を抑制でき、小型化や軽量化を容易に行うことができる。また、二次電池1は、電極2間の距離の偏りの増大を抑制し、電極反応のムラや充放電特性の悪化を抑制することもできる。
【0058】
また、本例の二次電池1の電極2は、金属箔24と、金属箔24の少なくとも片面上に配置された活物質層25とを有する箔電極である。そのため、多孔質電極を使用する場合に比べて二次電池1の体積当たりの電極2の数を容易に増やすことができる。その結果、二次電池1のパワー密度やエネルギー密度を向上させることができる。
【0059】
また、本例の二次電池1は、集電体としての金属箔24と、金属箔24の表側面上に配置された正極活物質層25pと、裏側面上に配置された負極活物質層25nとを有するバイポーラ電極22を有している。そのため、バイポーラ電極22を積層するという単純な構成により、複数の単セルを直列に接続することができる。その結果、二次電池1の起電力をより高くすることができる。
【0060】
また、バイポーラ電極22を用いることにより、単極性の電極を用いる場合に比べて、電極の総数に対する単セルの数を増やすことができる。それ故、電極の総数が同じ場合には、単極性の電極を用いる場合に比べて単セルの数を多くすることができる。また、単セルの数が同じ場合には、単極性の電極を用いる場合に比べて電極の総数を少なくし、積層方向における二次電池1の寸法をより小さくすることができる。
【0061】
(実施例2)
本例は、セパレータ302の貫通穴32内に配置された介在部402を有する二次電池102の例である。なお、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一の符号は、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を示す。
【0062】
図5に示すように、本例の二次電池102は、電極2として、電極組立体11の積層方向の両端に配置された終端電極26、28と、終端電極26と終端電極28との間に配置されたバイポーラ電極27とを有している。
【0063】
バイポーラ電極27は、長方形状を呈する金属箔24と、金属箔24の表側面に設けられた正極活物質層25pと、裏側面に設けられた負極活物質層25nとを有している。また、バイポーラ電極27は、電極組立体11の積層方向から視た平面視における正極活物質層25p及び負極活物質層25nの中央に、金属箔24が露出した露出部241を有している。
【0064】
2つの終端電極26、28のうち、積層方向の一端に配置された第1の終端電極26は、正極活物質層25pを有しない以外は、バイポーラ電極27と同様の構成を有している。また、積層方向の他端に配置された第2の終端電極28は、負極活物質層25nを有しない以外は、バイポーラ電極27と同様の構成を有している。
【0065】
セパレータ302は、電極組立体11の積層方向から視た平面視において長方形状を呈している。また、電極組立体11の積層方向から視た平面視におけるセパレータ302の中央には、セパレータ302を厚み方向に貫通する貫通穴32が設けられている。
【0066】
介在部402は円柱状を呈しており、セパレータ302の貫通穴32に挿通されている。介在部402の端面は、それぞれ、セパレータ302に対面する電極26〜28の露出部241に接合されている。なお、本例の介在部402は、ポリプロピレンより構成されている。
【0067】
本例の二次電池102を作製するに当たっては、露出部241を備えた電極26〜28と、貫通穴32を備えたセパレータ302と、円柱状の介在部402とを準備する。電極26〜28に露出部241を形成する方法としては、例えば、金属箔24上に活物質層25(25p、25n)を形成した後、露出部241に相当する部分の活物質層25を除去する、あるいは、金属箔24上に活物質層25を形成する際に、露出部241に相当する部分に活物質層25を形成せず、それ以外の部分に活物質層25を形成する等の方法がある。
【0068】
これらの部材を準備した後、貫通穴32内に介在部402を配置しつつ電極26〜28とセパレータ302とを交互に積層して積層体を作製する。その後、積層体を加熱しつつ積層方向に圧縮することにより、電極組立体11を得ることができる。その他は実施例1と同様である。
【0069】
本例のように、電極2に金属箔24が露出した露出部241を設け、露出部241において介在部402と金属箔24とを直接接合することにより、介在部402が活物質層25に接合されている場合に比べて接合強度を高くすることができる。そのため、金属箔24からの介在部402の剥離をより効果的に抑制することができ、内圧上昇による電極の変形をより長期間に亘って抑制することができる。その他、本例の二次電池102は、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
(実施例3)
本例は、複数の介在部403、404を有する二次電池の例である。内圧上昇による電極2の変形をより効果的に抑制する観点からは、電極組立体11の積層方向から視た平面視において、介在部403、404を均等に配置することが好ましい。
【0071】
例えば図6に示すように、各層状空間Sが2か所の介在部403を有する場合には、セパレータ303の短辺方向に延びる仮想線L1によって等分割された2つの領域R1、R2のそれぞれに介在部403を配置することが好ましい。また、この場合には、電極組立体の積層方向から視た平面視において、上述した各領域R1、R2の中央に介在部403を配置することがより好ましい。
【0072】
また、例えば図7に示すように、各層状空間Sが5か所の介在部404を有する場合には、介在部404を、セパレータ304の短辺方向に延びる仮想線L1及び長辺方向に延びる仮想線L2によって等分割された4つの領域R1〜R4に1か所ずつ配置するとともに、セパレータ304の中央、即ち仮想線L1と仮想線L2との交点に配置することが好ましい。また、この場合には、電極組立体11の積層方向から視た平面視において、上述した各領域R1〜R4の中央と、セパレータ304の中央とに介在部404を配置することがより好ましい。
【0073】
本発明に係る二次電池の態様は、上述した実施例の態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。例えば、実施例1及び実施例2には、バイポーラ電極22、27を備えた電極組立体11を有する二次電池1、102の例を示したが、金属箔24の両面に同極性の活物質層25を備えた単極性電極を電極組立体11に組み込むこともできる。この場合には、正極と負極とを交互に配置し、正極と負極との間にセパレータ3、302及び介在部4、402を配置すればよい。
【0074】
また、実施例1及び実施例2には、箔電極を備えた電極組立体11を有する二次電池1、102の例を示したが、多孔質電極を電極組立体11に組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1、102 二次電池
11 電極組立体
111 側周面
12 シール部
13 拘束部材
2、21〜23、26〜28 電極
20 周縁部
3、302、303、304 セパレータ
4、402、403、404 介在部
S 層状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7