【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、特に構造的完全性および機械的安定性に関して、改良されたレイアウトおよび構造の回転研磨部材、特に回転研磨ディスクを提供することである。
この目的は、請求項1に記載の研磨部材の製造方法および請求項14に記載の研磨部材により達成される。
【0009】
回転研磨部材、特に、環状切削ディスクまたは環状研削ディスクなどの概してディスク形状を有する研磨部材の製造方法は、
−補強インサートの少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、補強インサートが裏当て部材により少なくとも部分的に覆われ、かつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように、型内において硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層と裏当て部材との間に補強インサート(または補強部材)を配設するステップと、
−硬化性研磨樹脂化合物を硬化させることにより補強インサートと裏当て部材とを接合するステップであって、硬化した研磨樹脂化合物が研磨部材の研磨層を形成する、ステップとを含む。
【0010】
回転研磨部材のかかる1つの製造方法において、補強インサートは、補強インサートが裏当て部材に固定されるようにインサートが裏当て部材に機械的に連結される様式で裏当て部材に物理的に係合される。回転研磨部材のかかる別の製造方法において、補強インサートと裏当て部材との物理的係合は、熱硬化性樹脂のような硬化性接着材料の使用などによる、補強インサートと裏当て部材との接着接合で補うことができ、それにより補強インサートを裏当て部材に機械的にも接着によっても連結する。
【0011】
本発明は、特に研磨部材を回転機械の回転シャフトに装着するための手段を提供する一体化された補強部材(または補強インサート)を有する研磨部材の製造方法を提供する。補強部材は、略平面形状を有し、かつ物質間接合によって硬化後に研磨層に強固に連結される。特に、物質間接合は、研磨剤を含有する硬化樹脂によりもたらされる接合である。製造中に、補強部材は、特に型内に配置された硬化性研磨粒の層により提供され得る硬化性研磨樹脂化合物の層と、繊維織物のシートなどの、略平面状裏当て部材との間に配設される。補強部材の一方の側面は、硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触し、かつ補強部材の反対側の側面は、裏当て部材により少なくとも部分的に覆われる。裏当て部材の少なくとも一部分もまた、硬化性研磨樹脂化合物の層に物理的に直接接触する。硬化後に、硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように配設された部分において物質間接合がもたらされる。換言すれば、補強部材は、補強部材が研磨部材により完全に取り囲まれる様式で、硬化後に形成された研磨層に埋設されるのではなく、裏当て部材により覆われない領域において研磨層に接合される。一方側における補強部材および/または裏当て部材と他方側における研磨層との物質間接合は、機械的安定性および構造的完全性が向上した研磨部材を提供する。補強部材は、研磨層に強固に連結され、かつ特に機械的な力またはトルクを研磨部材に伝達するためのリンクを提供するようになされる。
【0012】
本明細書で前述したような技術水準の既知の研磨部材のレイアウトと比較して、補強部材(または補強インサート)は、研磨部材の外表面の1つに近接して配設されるのではなく研磨部材の中心部分に配設される。補強部材は、特に研磨部材の重心の周囲に配設されてもよい。この構成は、アンバランスを最小限に抑えるのを有益に補助する。特に、研磨部材が回転切削ディスクまたは回転研磨ディスクとして構成される場合に、研磨部材の向上したレイアウト性は、より速い回転速度での動作を補助し得る。
【0013】
硬化した研磨樹脂化合物の物質間接合により提供される、補強部材(または補強インサート)と研磨層との強固な連結は、十分な機械的安定性を提供するために研磨層内に入り込むようになされる突起または突出部のような機械的特徴部に主に依存するものではない。したがって、補強部材の表面は、特に、完全に平坦で滑らかであってもよい。結果として、研磨部材の全体の厚さが低減されてもよい。全体の厚さが低減された研磨部材は、より速い切削速度もしくは研削速度および/または高い精度の点で特に望ましい。
【0014】
補強部材(または補強インサート)および裏当て部材には、好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させる前に裏当て部材および補強部材が型内に配設されるときに位置合わせされる中心孔が設けられる。中心孔は、特に面一に嵌合するように位置合わせされてもよい。別の実施形態において、補強部材には、裏当て部材の直径よりも小さな直径を有する中心孔が設けられる。いずれの場合も、中心孔は、硬化性研磨樹脂化合物の硬化後に研磨部材の中心開口を画定するように同軸に位置合わせされる。
【0015】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、環状の外形を有し、その一方で、内側の形状は環状であるが、他の形態をとることもできる。補強部材は、中心開口の周囲の円周部分において研磨部材を補強するようになされる。特に、補強部材は、特に研磨部材の他の構成要素と比較して、高い機械的強度、安定性または剛性を有する材料から作製されたリングにより提供されてもよい。補強部材は、研磨部材を回転させることが可能な回転機械の装着手段により係合されるようになされてもよい。補強材には、特に研磨部材をセンタリングするための手段を提供するために、中心開口内に突出する1つまたは複数の突出部が設けられても設けられなくてもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、裏当て部材は、中心開口を取り囲む裏当て部材の径方向内側部分が補強部材(または補強インサート)に物理的に直接接触し、かつ裏当て部材の径方向外側部分が硬化性研磨樹脂化合物の層に物理的に直接接触するように、型内に位置決めされる。換言すれば、裏当て部材は、特に径方向において補強部材よりも大きな寸法を有する。裏当て部材および補強部材は、硬化性研磨樹脂化合物を硬化させた後に形成された研磨層を介して間接的に連結される。
【0017】
補強部材(または補強インサート)は、好ましくは、機械的な力、特にトルクを研磨部材に伝達するようになされる。補強部材は、特に、研磨部材を動作させる、特に回転させるための機械の装着手段により係合されるようになされてもよい。装着手段は、クランプ、ねじ、ボルトまたは同様のものを含み得る。
【0018】
補強部材(または補強インサート)は、好ましくは、特に補強部材に配置された打ち抜き孔の周囲の円周に、突出部を含む。突出部は、硬化後に研磨層の材料中に少なくとも部分的に入り込むように配設される。したがって、突出部は、硬化後に研磨層の材料に埋設され、ひいては、研磨部材の構造的完全性および機械的安定性を更に向上させるために研磨層との機械的接合を形成する。
【0019】
好ましくは、研磨部材の製造方法は、硬化前および/または硬化中に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップを更に含む。前記研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように裏当て部材を型に挿入するステップと、
−特に略平面状裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材および裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0020】
硬化性研磨樹脂化合物の層、補強インサート(または補強部材)および裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、軸方向圧力が、成形前または成形中に研磨部材の構成要素に加えられる。いくつかの場合では、硬化中に、型内に配設された構成要素に対して軸方向圧力を加えることが維持されてもよい。他の場合では、研磨部材を構成する構成要素の層状構造に軸方向圧力が加えられている間に、硬化がオーブン内の型の外側で起こる。
【0021】
硬化性研磨樹脂化合物は、特にオーブン内で熱硬化させることができる。任意選択的に、型内の構成要素の予備硬化または更には完全な硬化が可能である。熱硬化させるステップは、型内に配設された構成要素、特に硬化性研磨樹脂化合物を熱にさらすことを含む。研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように裏当て部材を型に挿入するステップと、
−任意選択的に、特に略平面状裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−特にオーブン内での焼成により、研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を熱硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材および裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0022】
硬化性研磨樹脂化合物の層、補強インサート(または補強部材)および裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、第1の裏当て部材は、硬化性研磨樹脂化合物を型内に導入する前に型に挿入される。研磨部材の製造方法は、好ましくは、
−第1の裏当て部材を型に挿入するステップと、
−第1の裏当て部材が硬化性研磨樹脂化合物の層により少なくとも部分的に覆われるように硬化性研磨樹脂化合物の層、特に硬化性研磨粒の層を型内に導入するステップと、
−補強部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように補強インサート(または補強部材)を型に挿入するステップと、
−補強部材が第2の裏当て部材により少なくとも部分的に覆われかつ第2の裏当て部材の少なくとも一部分が硬化性研磨樹脂化合物に物理的に直接接触するように第2の裏当て部材を型に挿入するステップと、
−任意選択的に、特に略平面状の第1および/または第2の裏当て部材に略直交する方向に、型内に配設された構成要素に軸方向圧力を加えるステップと、
−研磨部材の研磨層を形成するために硬化性研磨樹脂化合物を硬化させる、特に熱硬化させるステップであって、硬化性研磨樹脂化合物の硬化中に、補強部材、第1の裏当て部材および第2の裏当て部材が、硬化した研磨樹脂化合物により確立された物質間接合によって研磨層に接合される、ステップと、を特に順に含む。
【0023】
硬化性の第1の裏当て部材の層、研磨樹脂化合物、補強インサート(または補強部材)および第2の裏当て部材は型内に逆の順序で導入することもできることが理解される。
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、補強部材が、硬化後に、概してディスク形状の研磨部材の上側平表面と下側平表面との中間にある中心部に位置する様式で、型内に位置決めされる。補強部材は、特に、研磨部材を回転機械に装着するための装着手段を提供してもよい。研磨部材の中心部における補強部材の構成は、切削または研削動作を行うように研磨部材を回転させたときのアンバランスおよび横力を最小限に抑えることを有益に可能にする。
【0024】
裏当て部材、特に第1および/または第2の裏当て部材は、好ましくはフェノール樹脂を含浸させた、繊維織物、特にガラス繊維織物で作製されることが好ましい。
好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒は、少なくとも研磨剤および硬化性樹脂を含む多成分混合物である。
【0025】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、金属または合金から作製される。
好ましくは、硬化性研磨樹脂化合物、特に硬化性研磨粒は、熱硬化性合成ポリマー、好ましくはフェノール樹脂を含む。
【0026】
本発明はまた、本明細書で前述したような方法に従って製造される、研磨部材、特に切削または研削ディスクに関する。研磨部材は、研磨層と裏当て部材との間に位置する補強部材(または補強インサート)を含む。補強部材は、研磨層に埋設され、かつ研磨層に接合される。補強部材は、裏当て部材により少なくとも一方の側面が裏打ちされ、したがって、研磨層の材料により完全に取り囲まれない。補強部材は、研磨部材の中心部に、特に研磨部材の重心に近接して位置する。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態は、切削ディスクとして構成された研磨部材に関する。切削ディスクは、繊維織物、特に樹脂含浸ガラス繊維織物から作製された、2つの裏当て部材、第1の裏当て部材と第2の裏当て部材との間に配設される硬化した研磨樹脂化合物から作製された単一の研磨層を有する。裏当て部材は、切削ディスクの平面状端面を実質的に形成する。一方または両方の裏当て部材はまたラベルを支えてもよい。
【0028】
好ましくは、補強部材(または補強インサート)は、研磨部材に埋設され、かつ研磨部材の重心を取り囲むように位置決めされる。
以下、添付図面を参照して、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を詳細に説明する。概略断面図で示す。