【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの課題は、金属−セラミック基材の加工処理方法によって解決され、その方法においては、
a.レーザスクライブラインが、レーザビームを使用して金属−セラミック基材における所定の切断線として形成され;及び/又は
b.前記金属−セラミック基材がレーザビームを使用して少なくとも部分的に切断される。
【0018】
そして、本発明方法は、前記加工処理がレーザを用いて行われ、かつ所定の切断線として前記レーザスクライブラインを生成する際又は金属−セラミック基材が切断される際に、前記セラミック基材の溶融相が本質的に形成されないように選択される前記レーザのパルス持続時間が使用されることを特徴とする。
【0019】
上記特徴とは別に、本発明方法は、また一般的に、所定の切断線としてレーザスクライブラインを生成する際又は金属−セラミック基材が切断される際に、レーザの加工処理条件は前記セラミック基材の溶融相が本質的に形成されないように選択される。
【0020】
ガラス相は、レーザスクライブライン内の残留物であり、それはレーザによって加熱されかつ溶融されるが、レーザスクライブラインからは除去されずそしてレーザスクライブライン内で凝固する。
【0021】
本発明のコンテキストにおいては、「前記セラミック基材の溶融相が本質的にない」という表現は、レーザスクライブラインが、好ましくは30体積%未満、より好ましくは20体積%未満、さらに好ましくは15体積%未満、そして好ましくは0.1体積%超、より好ましくは0.5体積%超、さらに好ましくは1.0体積%超、の溶融相を含有する場合であると理解される。
【0022】
溶融相の所定量は表面上に生成する(表面被覆)。この溶融相はマイクロクラックを有するのが特徴であり、このマイクロクラックは好ましいノッチ効果を惹き起こし、そして前記セラミック基材の続いての破裂に対するストレスが増大する。
【0023】
本発明のコンテキストにおいては、レーザスクライブラインが少量の溶融相、即ち、特に上記した溶融相の最小量を含有するのが好適である。
【0024】
前記セラミック基材の溶融相の多すぎる量の生成は、レーザが一定の加工処理条件で操作されている場合には避けることが可能である。この条件は特に下記事項を含む。
(a)レーザのパルス持続時間;
(b)前記金属−セラミック基材へのレーザの侵入深さ;及び
(c)レーザのパワー。
【0025】
以後は、レーザの好ましい実施の形態は、前記セラミック基材の加工処理中の溶融相の形成は本質的に排除されている態様で記載される。
【0026】
本発明方法においては、所定の切断線としてレーザスクライブラインを生成する間に、レーザスクライブラインがレーザの1回のクロッシング又は数回のクロッシングにおいて生成されることが可能である(実施の形態a)。また、前記金属−セラミック基材の切断はレーザの数回のクロッシングにおいて達成される(実施の形態b)。
【0027】
本発明のコンテキストにおいては、レーザはn秒レーザ、p秒レーザ又はf秒レーザから選択可能であるが、本発明によればp秒レーザが好適である。
【0028】
さらに、p秒レーザがパルス持続時間を有することが好ましく、即ち、好ましくは、0.1〜100ps、より好ましくは、0.5〜50ps、さらに好ましくは、1〜30psのレーザパルスの持続時間が好適である。選択されたパルス持続時間を用いることにより、レーザ工程をガイドすることが可能となり、その結果、本質的に溶融相の生成はなくなり、そして本質的に基材表面に堆積されるレーザスプラッシュ及びレーザダストの生成はなくなる。同時に、このレーザ持続時間を用いることにより、レーザスクライブラインにおける十分なノッチ効果が達成される。本発明のコンテキストにおいて、本質的にコールドダストのみが形成されそして溶融相は形成されないので、そしてビーム源から基材表面への十分に大きな選択距離のために、プロセスガスの使用が可能となるが、絶対的に必要なことではない。
【0029】
パルスエネルギー、即ち、単一のレーザパルスのエネルギー含量は、好ましくは、10〜500μJ、より好ましくは、50〜400μJ、さらに好ましくは、100〜350μJである。
【0030】
p秒レーザは、好ましくは、20〜400W、より好ましくは、40〜200W、さらに好ましくは、50〜180W、さらにまた好ましくは、60〜160W、一層好ましくは、80〜130W、さらに一層好ましくは、90〜120Wのパワーを有する。
【0031】
レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.05m/秒、より好ましくは、少なくとも0.1m/秒、さらに好ましくは、少なくとも0.15m/秒、さらにまた好ましくは、少なくとも0.20m/秒、一層好ましくは、少なくとも0.25m/秒である。
【0032】
レーザの加工処理速度は、好ましくは、最大で20.0m/秒、より好ましくは、最大で19.0m/秒、さらに好ましくは、最大で18.0m/秒、さらにまた好ましくは、最大で17.0m/秒、一層好ましくは、最大で16.0m/秒である。
【0033】
レーザの加工処理速度は、好ましくは、0.05〜20.0m/秒、より好ましくは、0.1〜19.0m/秒、さらに好ましくは、0.15〜18.0m/秒、さらにまた好ましくは、0.20〜17.0m/秒、一層好ましくは、0.25〜16.0m/秒である。
【0034】
加工処理速度はレーザがセラミック基材の上方を移動するリアル速度に対応する。本発明による上記したリアル速度をレーザのクロッシングの数で割ったレーザの有効速度が選択される場合に対応する類似の結果が得られ、それによって、2〜50、好ましくは、2〜40、より好ましくは、2〜30、さらに好ましくは、2〜20のクロッシングが想定される。
【0035】
驚くべきことに、レーザによって使用される共振器パワー(xワット)とレーザの最大リアル加工処理速度(ym/秒)との間には関係式が存在することがまた見出された。
【0036】
上記関係式は、一般的に下記の式の通りである:
【数1】
ここで、最大加工処理速度はセラミック基材の厚さとは無関係である。
【0037】
前記リアル加工処理速度が、一般的に上記した値又は上記式によって算出した値を超えている場合には、前記レーザスクライブラインに沿って前記セラミック基材を効果的かつ安全に切断することは不可能である。
【0038】
より好ましい実施の形態において、レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.05m/秒から上記式によって定義される最大加工処理速度までである。
【数2】
上記式において、xはレーザの共振器パワーWに対応する。
【0039】
より好ましい実施の形態において、レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.1m/秒から上記式によって定義される最大加工処理速度までである。
【数3】
上記式において、xはレーザの共振器パワーWに対応する。
【0040】
より好ましい実施の形態において、レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.15m/秒から上記式によって定義される最大加工処理速度までである。
【数4】
上記式において、xはレーザの共振器パワーWに対応する。
【0041】
より好ましい実施の形態において、レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.20m/秒から上記式によって定義される最大加工処理速度までである。
【数5】
上記式において、xはレーザの共振器パワーWに対応する。
【0042】
より好ましい実施の形態において、レーザの加工処理速度は、好ましくは、少なくとも0.25m/秒から上記式によって定義される最大加工処理速度までである。
【数6】
上記式において、xはレーザの共振器パワーWに対応する。
【0043】
前記レーザのスポット径は、好ましくは、20〜80μm、より好ましくは、30〜70μm、さらに好ましくは、40〜60μmである。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態において、使用されるレーザはIRレーザである。
【0045】
本発明の根本的課題は、IRレーザ、より好ましくは、p秒IRレーザの使用によって特に解決され、そこでは理論に縛られることなく、p秒IRレーザ光は、前記セラミック基材の表面又は金属塗膜の表面に特に効果的に結び付けられ、即ち、当該セラミック基材又は金属塗膜によって特に効果的に吸収されるものと考えられる。さらに、IRレーザは高いエネルギー効率を有しており、このことはまた上記課題を解決するために有利である。
【0046】
セラミック基材又は金属−セラミック基材を製造するためにIRレーザを使用することのさらなる利点は、IRレーザ光はダイオード光から直接発生させられることであり、一方、緑色レーザ光は60%の効率でIRレーザ光から最初に発生させられ、順番にUVレーザ光がまた60%のさらなる効率で緑色レーザ光から発生させられる必要がある。
【0047】
p秒IRレーザは、例えば、CO
2レーザとは対称的に、製造される金属−セラミック基材から大幅に離れた位置に配設され、その結果として、高い焦点深度が実現される。
【0048】
さらに、IRレーザの使用によって、CO
2レーザと比較して十分に高い焦点深度が達成される。
【0049】
IRレーザが本発明において使用される場合、IRレーザの周波数は、好ましくは、350〜650kHz,より好ましくは、375〜625kHz,さらに好ましくは、400〜600kHzである。
【0050】
IRレーザが本発明において使用される場合、IRレーザのパルスエネルギーは、好ましくは、100〜300μJ,より好ましくは、125〜275μJ,さらに好ましくは、150〜250μJである。
【0051】
上記した選択肢a.及びb.による本発明方法は、プロセスガスの存在下で実施可能である。そのプロセスガスは、例えば、酸素である。
【0052】
上記した選択肢a.及びb.による本発明方法は、レーザ加工処理によって発生したダストを吸引する吸引装置を有する装置において好ましくは実施される。