【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0067】
(特性の評価方法)
(水分)
容量滴定カールフィッシャー水分計 890タイトランド(メトロームジャパン株式会社製)を用いて、JIS K0068の容量滴定法に準じて溶液中の水分を測定した。ただし、滴定溶剤中に樹脂が析出する場合は、アクアミクロンGEX(三菱化学株式会社製)とN−メチルピロリドンとの1:4の混合溶液を滴定溶剤として用いた。
【0068】
(粘度)
粘度計 RE−215/U(東機産業株式会社製)を用い、JIS K7117−2:1999に準じて粘度を測定した。付属の恒温槽を23.0℃に設定し、測定温度は常に一定にした。
【0069】
(線膨張係数)
線膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS120CUを用い、引張荷重法による熱機械分析によって評価した。実施例のポリイミドフィルムを無機基板であるガラス基板から引き剥がして、10mm×3mmの試料を作製した。該試料の長辺に3.0gの荷重を加え、500℃以上に加熱して残留応力を取り除いた後、再び10℃/分の昇温速度で加熱して測定した。この際の100℃〜300℃の範囲における単位温度あたりの試料の歪の変化量を線膨張係数とした。
【0070】
(参考例1)
(1−1)ポリアミド酸溶液の製造
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼、及び、窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコに、モレキュラーシーブを用いて脱水したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を850.0g入れ、パラフェニレンジアミン(PDA)40.31gを加え、得られた溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)109.41gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約80℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を3時間続けて粘度を下げ、さらにDMAcを153.8g加えて攪拌し、23℃で粘度25000mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.9975である。
【0071】
(1−2)アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物による変性
上記のポリアミド酸溶液を水浴で速やかに冷却し、ポリアミド酸溶液の温度を約50℃に調整した。次に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ―APS)の1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。23000mPa・sから粘度が変化しなくなったので5時間後に反応を終え、作業しやすい粘度になるまでDMAcでポリアミド酸溶液を希釈した。この様にして23℃で粘度13700mPa・sであり水分が1400ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるアルコキシシラン化合物(γ―APS)の配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。
【0072】
得られた溶液を密栓したガラス瓶で23℃55%RHの環境に一週間保管して再度粘度を測定すると12400mPa・s(−9%)になっていた。
【0073】
(1−3)ポリイミド前駆体の流延及び熱イミド化
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の、FPD用のガラス基板として一般的に用いられている無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上に、バーコーターを用いて乾燥厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて20分乾燥し、次いで150℃にて30分間乾燥した。さらに、220℃と300℃とで30分ずつ、430℃と500℃とで1時間ずつ加熱した。それぞれの温度間は2℃/分で徐々に昇温した。高温で熱イミド化することで、厚み19μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。得られたポリイミドフィルムの特性について、表1に示す。
【0074】
(参考例2)
γ−APSの1%DMAc溶液の添加量を1.50gに変更した以外は、参考例1と同様にして、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.010重量部である。得られた溶液は23℃で粘度13100mPa・sであり水分が2800ppmであった。また、参考例1の方法と同様にして自然剥離せずに厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0075】
(参考例3)
参考例1と同じ実験装置に脱水したDMAcを850.0g入れ、PDA40.39gを加え、得られた溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.34gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約80℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を5時間続けて粘度を下げ、23℃で粘度25300mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.9950である。
【0076】
さらに、このポリアミド酸溶液を水浴で速やかに冷却し、ポリアミド酸溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。19100mPa・sから粘度が変化しなくなったので5時間後に反応を終え、作業しやすい粘度になるまでDMAcでポリアミド酸溶液を希釈した。この様にして23℃で粘度13800mPa・sであり水分が1900ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。また、参考例1の方法と同様にして自然剥離せずに厚み22μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0077】
(参考例4)
水分量が異なるDMAcを使用した以外は、参考例1と同様にしてアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液は23℃で粘度14200mPa・sであり水分が2500ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0078】
(参考例5)
参考例1と同様にして得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、乾燥窒素で加圧し、日本ポール株式会社製カプセルフィルターDFA HDC2(定格ろ過精度1.2μm)でろ過した。ろ過作業後、未ろ過で残った溶液は、23℃で粘度12700mPa・sであり水分が2700ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0079】
(参考例6)
参考例1と同様にして得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、乾燥窒素で加圧し、日本ポール株式会社製カプセルフィルターDFA HDC2(定格ろ過精度1.2μm)でろ過した。ろ過した溶液は、23℃で粘度12000mPa・sであり水分が3300ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0080】
(参考例7)
参考例1と同様にして得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を大気下で開封したまま60分間静置した後、均一に攪拌した。得られた溶液は吸湿しており、23℃で粘度12100mPa・sであり水分が4400ppmであった。この溶液の保管時の粘度変化について表1に示す。
【0081】
(参考例8)
参考例4で得られた溶液に、溶液に対して0.3重量%相当の水を添加した。得られた溶液は23℃で粘度13800mPa・sであり水分が4900ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0082】
(参考例9)
参考例1と同じ実験装置に脱水したDMAcを850.0g入れ、PDA40.34gを加え、得られた溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.66gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度35500mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.9991である。
【0083】
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。粘度が変化しなくなったので3時間で反応を終え、作業しやすい粘度になるまでDMAcでポリアミド酸溶液を希釈した。この様にして、23℃で粘度13500mPa・sであり水分が1500ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。また、参考例1の方法と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0084】
(参考例10)
参考例1と同じ実験装置に脱水したDMAcを850.0g入れ、PDA40.61gを加え、得られた溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.39gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約80℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度31200mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.9901である。
【0085】
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。粘度が変化しなくなったので3時間で反応を終え、作業しやすい粘度になるまでDMAcでポリアミド酸溶液を希釈した。この様にして、23℃で粘度13400mPa・sであり水分が1800ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。また、参考例1の方法と同様の方法で厚み21μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0086】
(参考例11)
参考例1と同じ実験装置に脱水したDMAcを850.0g入れ、PDA40.91gを加え、得られた溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.09gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約80℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度6300mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.9801である。
【0087】
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。粘度が変化しなくなったので2時間で反応を終えた。この様にして、23℃で粘度6100mPa・sであり水分が2200ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。また、参考例1の方法と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0088】
(実施例1)
γ−APSの1%DMAc溶液の添加量を13.50gに変更した以外は、参考例1と同様にして、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.090重量部である。得られた溶液は23℃で粘度13500mPa・sであり水分が1700ppmであった。また、参考例1の方法と同様にして自然剥離せずに厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0089】
(実施例2)
γ−APSの1%DMAc溶液の添加量を8.25gに変更した以外は、参考例1と同様にして、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.055重量部である。得られた溶液は23℃で粘度13200mPa・sであり水分が1500ppmであった。また、参考例1の方法と同様にして自然剥離せずに厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0090】
(比較例1)
参考例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た後、γ―APSを添加せずに作業しやすい粘度になるまでDMAcで希釈し、粘度13600mPa・sであり水分が1100ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液を参考例1と同様にして無アルカリガラス板上に流延及びイミド化したが、熱イミド化の際にポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、一部が剥離したポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体しか得ることができなかった。得られたポリイミドフィルムの特性について表2に示す。
【0091】
(比較例2)
参考例1と同じ反応容器に脱水したDMAcを850.0g入れ、BPDA110.08gを加え、攪拌して分散させた。分散液を油浴で50.0℃に加熱しながら、PDA40.17gを30分程度かけて徐々に加えた。原料が完全に溶解し粘度が一定になるまで1時間攪拌を続けた。さらにDMAcを250g加えて攪拌し、粘度20100mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比は、1.0070である。
【0092】
さらに、反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%DMAc溶液7.50gをポリアミド酸溶液に加え、攪拌した。19100mPa・sから粘度が変化しなくなったので5時間後に反応を終え、作業しやすい粘度になるまでDMAcでポリアミド酸溶液を希釈した。この様にして23℃で粘度13600mPa・sであり水分が1400ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの添加量は、ポリアミド酸100重量部に対して0.050重量部である。また、参考例1の方法と同様にして自然剥離せずにポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。保管時の粘度変化及びポリイミドフィルムの特性について表1及び表2に示す。
【0093】
(比較例3)
比較例2で得られた溶液に、溶液に対して0.1重量%相当の水を添加した。得られた溶液は23℃で粘度13300mPa・sであり水分が2600ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0094】
(比較例4)
比較例2で得られた溶液に、溶液に対して0.3重量%相当の水を添加した。得られた溶液は23℃で粘度13300mPa・sであり水分が4800ppmであった。保管時の粘度変化について表1に示す。
【0095】
なお、下記表1では、参考例1〜11及び比較例2〜4については水分の量に順に並べて示した。また、粘度変化率は、小数点以下を四捨五入して示している。
【0096】
【表1】
【0097】
それぞれの溶液から得られたポリイミドフィルムの無アルカリガラス板への密着性と線膨張係数とを評価した結果を表2に示す。密着性については、目視でポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に空隙がなくポリイミドフィルムが均一な外観を有している場合に○、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に空隙があるかポリイミドフィルム内部に気泡等が発生した場合に×と記した。
【0098】
【表2】
【0099】
液中の水分が多いほど溶液の貯蔵安定性は悪化し粘度が減少するが、同じ水分の場合には本発明の方法で粘度変化を低減することができる。参考例1〜11では水分が増加すると、粘度がより減少する傾向が見られる。また、比較例2〜4でも、水分が増加すると粘度がより減少する。とくに、参考例9と比較して参考例1、3、10はより粘度変化が小さい。参考例1、3、9、10は比較例2と同程度の水分であるが、粘度変化率は小さい。同様に参考例2、4、5、6、11は比較例3と同程度の水分であるが、粘度変化率は小さい。さらに、参考例7、8も比較例4と同程度の水分であるが、粘度変化率は小さい。例えば参考例5、6と比較例2とでは、約3000ppmに対して1400ppmであり、2倍程度水分が異なるにも関わらず、粘度変化率は同程度である。
【0100】
また、これらの結果に対して、A〜Eで評価し、表1の総合評価の項に示す。評価基準は以下の様にした。
【0101】
A:粘度変化率を、同程度の水分の比較例の粘度変化率で除した値が0.4以下
B:粘度変化率を、同程度の水分の比較例の粘度変化率で除した値が0.4より大きく0.5以下
C:粘度変化率を、同程度の水分の比較例の粘度変化率で除した値が0.5より大きく0.6以下
D:粘度変化率を、同程度の水分の比較例の粘度変化率で除した値が0.6より大きく0.7以下
E:粘度変化率を、同程度の水分の比較例の粘度変化率で除した値が0.7より大きい
ここで、比較例の総合評価が「−」となっている場合は、当該比較例が、総合評価において参考例及び実施例と比較する基準となっていることを表す。
【0102】
なお、ある実施例または参考例(実施例αまたは参考例αとする)に対して「同程度の水分の比較例」とは、比較例2〜4のうち、実施例αまたは参考例αとの水分の差の絶対値が最も小さい比較例を指す。例えば、参考例6の場合は、比較例2との水分の差の絶対値が1900、比較例3との水分の差の絶対値が700、比較例4との水分の差の絶対値が1500である。よって、参考例6は比較例3との比較によって評価される。
【0103】
具体的には、総合評価において、参考例1、3、9及び10は、同程度の水分である比較例2と比較した。また、参考例2、4〜6及び11は、同程度の水分である比較例3と比較した。参考例7及び8は、同程度の水分である比較例4と比較した。
【0104】
総合評価の結果について、以下に検討する。芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比(以下、単にモル比とも言う)が0.9950以下の場合(参考例3、10及び11)、総合評価はAまたはBとなっている。特に、モル比が0.9901以下の場合(参考例10及び11)、総合評価はAとなっている。
【0105】
モル比が0.9975以下であり、且つ水分が2500以下の場合(参考例1、3、4、10及び11)、総合評価はA、BまたはCとなっている。また、モル比が0.9975以下であり、且つ水分が2200以下の場合(参考例1、3、10及び11)、総合評価はAまたはBとなっている。
【0106】
総合評価において、実施例1及び2は、同程度の水分である比較例2と比較した。その結果、実施例1及び2は、総合評価がAとなっている。このことから、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物の添加量が、0.050重量部を超えて0.100重量部未満である場合、粘度変化率を抑えることができることがわかる。
【0107】
また、参考例1〜3、9〜11のポリイミドフィルムは、20μm程度の乾燥厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生せず、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。これに対して比較例1のポリイミドフィルムは、20μm程度の乾燥厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができなかった。
【0108】
また、参考例1〜3、9〜11及び比較例2のポリイミドフィルムは無アルカリガラス板から剥離した後も、カールしたり反ったりすることはなかった。これらのポリイミドフィルムの線膨張係数が6〜8ppm/℃であり、無アルカリガラス板の線膨張係数と近いためである。
【0109】
実施例1及び2のポリイミドフィルムも同様に、20μm程度の乾燥厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生せず、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。
【0110】
また、実施例1及び2のポリイミドフィルムは無アルカリガラス板から剥離した後も、カールしたり反ったりすることはなかった。これらのポリイミドフィルムの線膨張係数が6〜8ppm/℃であり、無アルカリガラス板の線膨張係数と近いためである。