特許第6858909号(P6858909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858909
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/16 20060101AFI20210405BHJP
   B22F 3/22 20060101ALI20210405BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B28B1/16
   B22F3/22
   B22F3/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-145600(P2020-145600)
(22)【出願日】2020年8月31日
(65)【公開番号】特開2021-37762(P2021-37762A)
(43)【公開日】2021年3月11日
【審査請求日】2020年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2019-159721(P2019-159721)
(32)【優先日】2019年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水木 一博
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/011359(WO,A1)
【文献】 特開2011−046002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/16
B22F 3/02
B22F 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する自己硬化性の第1成形用原料を配置する第1工程と、
流動性を有する自己硬化性の第2成形用原料を前記第1成形用原料上に配置する第2工程と、
前記第1成形用原料及び前記第2成形用原料を完全収縮させることによって、第1成形体及び第2成形体を形成する第3工程と、
を備え、
前記第2工程及び前記第3工程それぞれは、非密封状態で行われ、
前記第2工程において、前記第1成形用原料の第1残収縮率は40%以上90%以下であり、かつ、前記第2成形用原料の第2残収縮率は70%以上であり、
前記第1残収縮率に対する前記第2残収縮率の比は、0.78以上2.5以下である、
複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記第1残収縮率は50%以上90%以下であり、かつ、前記第2残収縮率は80%以上であり、
前記第1残収縮率に対する前記第2残収縮率の比は、1.1以上1.6以下である、
請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動性を有する自己硬化性の成形用原料を用いて、下地層、被覆層及び成形体本体によって構成される複合成形体を作製する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
下地層は、流動性を有する自己硬化性の下地層成形用原料を成形型の内面上に印刷した後、下地層成形用原料を硬化させることによって形成される。被覆層は、流動性を有する自己硬化性の被覆層成形用原料を下地層上に塗布した後、被覆層成形用原料を硬化させることによって形成される。成形体本体は、流動性を有する自己硬化性の本体成形用原料を成形型に充填した後、本体成形用原料を硬化させることによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−171915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、下地層、被覆層及び成形体本体ごとに成形用原料の収縮率が異なるため、成形体間に剥離が生じる場合がある。具体的には、被覆層が硬化する際に、下地層と被覆層との間に剥離が生じたり、或いは、成形体本体が硬化する際に、被覆層と成形体本体との間に剥離が生じたりする。
【0006】
このような問題は、成形型を用いる場合に限らず、流動性を有する自己硬化性の成形用原料を用いて複数の成形体を積層する場合に共通して生じる。
【0007】
本発明の目的は、成形体間に剥離が生じることを抑制可能な複合成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る複合成形体の製造方法は、流動性を有する自己硬化性の第1成形用原料を配置する第1工程と、流動性を有する自己硬化性の第2成形用原料を第1成形用原料上に配置する第2工程と、第1成形用原料及び第2成形用原料を完全収縮させることによって、第1成形体及び第2成形体を形成する第3工程とを備える。第2工程において、第1成形用原料の第1残収縮率は40%以上90%以下であり、かつ、第2成形用原料の第2残収縮率は70%以上である。第1残収縮率に対する第2残収縮率の比は、0.78以上2.5以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形体間に剥離が生じることを抑制可能な複合成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る成形型の断面図である。
図2】実施形態に係る複合成形体の製造方法を説明するための断面図である。
図3】実施形態に係る複合成形体の製造方法を説明するための断面図である。
図4】実施形態に係る複合成形体の製造方法を説明するための断面図である。
図5】変形例1に係る複合成形体の構成を示す断面図である。
図6】変形例2に係る複合成形体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(成形型10の構成)
本実施形態に係る複合成形体20(図4参照)の製造に用いられる成形型10の構成について説明する。図1は、成形型10の断面図である。
【0012】
成形型10は、例えば、金属(アルミニウム、アルミニウム合金、SUS鋼、ニッケル合金など)によって構成される。本実施形態において、成形型10は、第1型11及び第2型12によって構成される。第1型11は、第2型12に締結される。ただし、成形型10は、複合成形体20を取り出せるように分解可能であればよく、成形型10を構成する型の数は適宜変更可能である。
【0013】
第1型11の内表面11a及び第2型12の内表面12aは、成形空間13の内表面である。成形空間13の内表面は、離型剤によって構成される離型層によって被覆されていてもよい。離型剤としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物、及びシリコン化合物などが挙げられる。離型層の形成方法としては、スプレーコートやディップコートなどが挙げられる。
【0014】
成形型10は、成形空間13、注入孔14、及び排出孔15を内部に有する。
【0015】
成形空間13は、複合成形体20を形成するための空間である。成形空間13は、いわゆるキャビティーである。成形空間13は、複合成形体20の外形に対応していればよく、その形状は特に限られない。本実施形態において、成形空間13は、略直方体状に形成されている。
【0016】
なお、複合成形体20に流路などの構造を設ける場合には、当該構造の形状に応じた物体(例えば、棒など)を成形空間13に予め配置してもよい。また、複合成形体20に何らかの物体(例えば、導体、電子機器など)を埋設する場合には、当該物体を成形空間13に予め配置してもよい。
【0017】
注入孔14は、外部から成形空間13に成形用原料を注入するための流路である。排出孔15は、成形空間13から外部に気体や成形用原料を排出するための流路である。注入孔14から成形空間13に注入される成形用原料は、成形空間13に充填された後、その過充填分が排出孔15から排出される。
【0018】
(成形用原料)
次に、複合成形体20の作製に用いられる成形用原料について説明する。
【0019】
成形用原料は、流動性を有する自己硬化性のスラリーである。成形用原料は、所定の粉末、反応剤、ゲル化剤、及び溶媒を含む。成形用原料は、必要に応じて、分散助剤、その他の添加剤(例えば、造孔剤など)を含んでいてもよい。
【0020】
所定の粉末は、成形体の基材である。所定の粉末としては、例えば、セラミック粉末、金属粉末、及びこれらの混合物が挙げられる。セラミック粉末としては、例えば、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、窒化アルミニウム粉末、炭化珪素粉末などが挙げられるが、これに限定されない。金属粉末としては、白金粉末、タングステン粉末、モリブデン粉末などが挙げられるが、これに限定されない。所定の粉末の含有量は特に限られないが、例えば、20体積%以上60体積%以下とすることができる。
【0021】
なお、後述するように、本実施形態に係る複合成形体20(図4参照)は、第1成形体23及び第2成形体24によって構成されるところ、各成形体にはそれぞれ異なる粉末が用いられるものとする。
【0022】
反応剤は、ゲル化剤と反応して硬化反応(ゲル化反応)を引き起こす反応性官能基を含む。反応剤としては、多価アルコール(エチレングリコールのようなジオール類、グリセリンのようなトリオール類等)、多塩基酸(ジカルボン酸等)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。反応剤の含有量は特に限られないが、例えば、0.05体積%以上5体積%以下とすることができる。
【0023】
ゲル化剤は、反応剤に含まれる反応性官能基と反応して硬化反応を引き起こす添加剤である。ゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)、TDI(トリレンジイソシアナート)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)などが挙げられる。ゲル化剤は、イソシアナート基(−N=C=O)及びイソチオシアナート基(−N=C=S)の少なくとも一方を有することが好ましい。これにより、ゲル化剤と反応剤との反応を促進することができる。ゲル化剤の含有量は特に限られないが、例えば、3体積重量%以上20体積%以下とすることができる。
【0024】
溶媒は、所定の粉末を分散させるための添加剤である。溶媒としては、多塩基酸エステル(グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(トリアセチン等)、脂肪族多価エステルなどの2以上のエステル基を有するエステル類などが挙げられる。溶媒の含有量は特に限られないが、例えば、30体積%以上70体積%以下とすることができる。
【0025】
分散助剤は、成形用原料の粘度を低減させるための添加剤である。分散助剤は、所望により添加される任意の添加剤である。分散助剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸系共重合体、重合体のリン酸エステル塩化合物、酸基を含む重合体のアルキルアンモニウム塩化合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。分散助剤の含有量は特に限られないが、例えば、0.5体積%以上10体積%以下とすることができる。
【0026】
触媒は、ゲル化剤と反応剤との反応を更に促進するための添加剤である。触媒は、所望により添加される任意の添加剤である。触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ヘキサンジアミン、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールなどが挙げられる。触媒の含有量は特に限られないが、例えば、0.01体積%以上3体積%以下とすることができる。
【0027】
このような成形用原料は、上記の各組成物を混合した時点から硬化し始めるため、例えば射出成形に用いられる熱可塑性樹脂とは異なり、急速に粘度が増大する。具体的には、成形用原料は、各組成物の混合から2分経過後の粘度をE1(せん断速度1sec−1)とし、各組成物の混合から12分経過後の粘度をE2(せん断速度1sec−1)としたとき、0.01Pa・sec≦E1≦3.0Pa・sec、2.0Pa・sec≦E2≦2000Pa・sec、E2/E1≧5.0の関係を満たすものである。
【0028】
(複合成形体20の製造方法)
次に、本実施形態に係る複合成形体20の製造方法について説明する。図2乃至図4は、複合成形体20の製造方法を説明するための断面図である。
【0029】
1.第1成形用原料M1の配置工程(第1工程)
まず、所定の粉末として、セラミック粉末、金属粉末、及びこれらの混合物から選択される第1粉末を含む第1成形用原料M1を準備する。
【0030】
次に、図2に示すように、流動性を有する自己硬化性の第1成形用原料M1を第1型11の内表面11a上に配置する。第1成形用原料M1の配置方法は特に限られず、例えばスクリーン印刷法、ディスペンサ塗布法、ディップコーティング法などを用いることができる。
【0031】
2.第2成形用原料M2の配置工程(第2工程)
次に、所定の粉末として、セラミック粉末、金属粉末、及びこれらの混合物から選択され、第1粉末とは異なる第2粉末を含む第2成形用原料M2を準備する。
【0032】
そして、図3に示すように、第1型11に第2型12を締結した後、第2成形用原料M2を成形空間13に充填する。これにより、第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置される。第2成形用原料M2は、第1成形用原料M1と直接的に接触する。
【0033】
この際、第1成形用原料M1の第1残収縮率η1は40%以上90%以下であり、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2は70%以上であり、かつ、第1残収縮率η1に対する第2残収縮率η2の比(以下、「残収縮率比η2/η1」と略称する。)は、0.78以上2.5以下である。
【0034】
第1成形用原料M1の第1残収縮率η1を40%以上とすることによって、第1成形用原料M1が過剰に硬化した状態で第2成形用原料M2と接触することを抑制できるため、第2成形用原料M2に対する第1成形用原料M1の密着性が低下することを抑制できる。この観点から、第1成形用原料M1の第1残収縮率η1は、45%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
【0035】
また、第1成形用原料M1の第1残収縮率η1を90%以下とすることによって、第1成形用原料M1に過大な収縮代が残されることを抑制できるため、第1成形用原料M1の収縮過程で反りが生じることを抑制できる。
【0036】
また、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2を70%以上とすることによって、第2成形用原料M2が過剰に硬化した状態で第1成形用原料M1と接触することを抑制できるため、第1成形用原料M1に対する第2成形用原料M2の密着性が低下することを抑制できる。この観点から、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。なお、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2の上限値は特に制限されず、100%以下であればよい。
【0037】
さらに、残収縮率比η2/η1を0.78以上2.5以下とすることによって、後述する第3工程における第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2それぞれの収縮度合いが乖離することを抑制できる。この観点から、残収縮率比η2/η1は、1.1以上1.6以下がより好ましい。
【0038】
ここで、第1成形用原料M1の第1残収縮率η1は、第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置された時点から第1成形用原料M1が完全収縮するまでの間における第1成形用原料M1の収縮率である。第1成形用原料M1が完全収縮するとは、第1成形用原料M1の1時間当たりの寸法変化率が0.01%以下になることを意味する。
【0039】
第1成形用原料M1の第1残収縮率η1は、下記式(1)によって算出される。
【0040】
η1=100×(1−ε1) ・・・(1)
【0041】
式(1)において、ε1は、第1成形用原料M1の第1既収縮率である。第1成形用原料M1の第1既収縮率ε1は、第1成形用原料M1の組成物が混合された時点から第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置されるまでの間における第1成形用原料M1の収縮率である。第1成形用原料M1の第1既収縮率ε1は、第1成形用原料M1の組成物を混合した時点からの経過時間に基づいて算出される。経過時間から第1既収縮率ε1を算出するための関係式は、第1成形用原料M1の組成物を混合した時点から第1成形用原料M1が完全収縮するまでの間における経過時間と収縮率との関係を予め測定することによって取得できる。
【0042】
第1成形用原料M1の第1残収縮率η1は、第1成形用原料M1の組成物を混合した時点からの経過時間に応じて第1既収縮率ε1を調整することによって制御できる。
【0043】
また、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2は、第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置された時点から第2成形用原料M2が完全収縮するまでの間における第2成形用原料M2の収縮率である。第2成形用原料M2が完全収縮するとは、第2成形用原料M2の1時間当たりの寸法変化率が0.01%以下になることを意味する。
【0044】
第2成形用原料M2の第2残収縮率η2は、下記式(2)によって算出される。
【0045】
η2=100×(1−ε2) ・・・(2)
【0046】
式(2)において、ε2は、第2成形用原料M2の第2既収縮率である。第2成形用原料M2の第2既収縮率ε2は、第2成形用原料M2の組成物が混合された時点から第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置されるまでの間における第2成形用原料M2の収縮率である。第2成形用原料M2の第2既収縮率ε2は、第2成形用原料M2の組成物を混合した時点からの経過時間に基づいて算出される。経過時間から第2既収縮率ε2を算出するための関係式は、第2成形用原料M2の組成物を混合した時点から第2成形用原料M2が完全収縮するまでの間における経過時間と収縮率との関係を予め測定することによって取得できる。
【0047】
第2成形用原料M2の第2残収縮率η2は、第2成形用原料M2の組成物を混合した時点からの経過時間に応じて第2既収縮率ε2を調整することによって制御できる。
【0048】
なお、第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置された時点から第1成形用原料M1が完全収縮するまでの間における第1成形用原料M1の収縮量の絶対値(以下、「残収縮量」という。)は特に制限されないが、例えば0.05〜9mmとすることができる。また、第2成形用原料M2が第1成形用原料M1上に配置された時点から第2成形用原料M2が完全収縮するまでの間における第2成形用原料M2の残収縮量は特に制限されないが、例えば0.1〜10mmとすることができる。
【0049】
3.第1成形体21及び第2成形体22の形成工程(第3工程)
次に、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を完全収縮させることによって、図4に示すように、第1成形体21及び第2成形体22を含む複合成形体20を形成する。
【0050】
具体的には、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を所定の時間(例えば、0.5時間〜72時間)放置して完全収縮させる。
【0051】
この際、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2それぞれは完全収縮するまで徐々に収縮し続けるところ、上述した第2工程において残収縮率比η2/η1が0.78以上2.5以下とされているため、この第3工程において第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2それぞれの収縮度合いが乖離することを抑制できる。その結果、第1成形体21及び第2成形体22の界面に剥離が生じることを抑制できる。
【0052】
なお、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2は、成形型10に入れたまま完全収縮させてもよいし、ある程度収縮が進んだ後に成形型10から取り出して完全収縮させてもよい。
【0053】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0054】
[変形例1]
上記実施形態では、図1に示した成形型10を用いて複合成形体20を形成することとしたが、これに限られない。
【0055】
例えば、図5に示すように、載置部30上に第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を順次配置することによって、第1成形体21及び第2成形体22を含む複合成形体20xを形成してもよい。この場合であっても、第2成形用原料M2を第1成形用原料M1上に配置する際に、第1残収縮率η1を40%以上90%以下とし、第2残収縮率η2を70%以上とし、かつ、残収縮率比η2/η1を0.78以上2.5以下とすることによって、第1成形体21及び第2成形体22の界面に剥離が生じることを抑制できる。
【0056】
[変形例2]
上記実施形態では、図4に示すように、複合成形体20は、第1成形体21及び第2成形体22によって構成されることとしたが、これに限られない。複合成形体20は、3層以上の多層構造を有していてもよい。
【0057】
例えば、図6に示すように、第1成形用原料M1上に第3成形用原料M3を配置した後に、第1成形用原料M1上に第2成形用原料M2を配置することによって、第1成形体21、第2成形体22及び第3成形体23を含む複合成形体20yを形成してもよい。この場合であっても、第2成形用原料M2を第1成形用原料M1上に配置する際に、第1残収縮率η1を40%以上90%以下とし、第2残収縮率η2を70%以上とし、かつ、残収縮率比η2/η1を0.78以上2.5以下とすることによって、第1成形体21及び第2成形体22の界面に剥離が生じることを抑制できる。
【実施例】
【0058】
以下において、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0059】
(複合成形体20の作製)
図1に示した成形型10を用いて、実施例1〜7及び比較例1〜4に係る複合成形体20を作製した。
【0060】
まず、セラミック粉末、反応剤、ゲル化剤及び溶媒を混合することによって、流動性を有する自己硬化性の第1成形用原料M1を調製し、第1成形用原料M1を第1型11の内表面11a上にディスペンサ塗布法で塗布した。第1成形用原料M1に含まれる各組成物の含有量は、上記実施形態にて記載した範囲内で広範に変更させた。
【0061】
次に、第1型11に第2型12を締結した後、セラミック粉末、反応剤、ゲル化剤及び溶媒を混合することによって、流動性を有する自己硬化性の第2成形用原料M2を調製し、第2成形用原料M2を成形空間13に第2成形用原料M2を充填した。第2成形用原料M2に含まれる各組成物の含有量は、上記実施形態にて記載した範囲内で広範に変更させた。
【0062】
この際、第1成形用原料M1の組成物が混合された時点から第2成形用原料M2が第1成形用原料M1と接触するまでの経過時間を調整することによって、表1に示すように、第1成形用原料M1の第1残収縮率η1を調整した。
【0063】
また、第2成形用原料M2の組成物が混合された時点から第2成形用原料M2が第1成形用原料M1と接触するまでの経過時間を調整することによって、表1に示すように、第2成形用原料M2の第2残収縮率η2を調整した。
【0064】
なお、第2残収縮率η2を第1残収縮率η1で除した残収縮率比η2/η1は、表1に示すとおりであった。
【0065】
次に、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を完全収縮させることによって、第1成形体21及び第2成形体22からなる複合成形体20を形成した。具体的には、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を成形型10内で24時間放置した後、第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2を成形型10から取り出して完全収縮するまで放置した。
【0066】
(反り評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4に係る複合成形体20の反りを評価した。具体的には、水平面に複合成形体20の凸部が上になるように載置し、水平面と凸部の最高点との最短距離から複合成形体20の厚みを引いた値を反り量として求めた。
【0067】
表1では、反り量が200μm以上の場合を「×」と評価し、反り量が200μm未満の場合を「○」と評価した。
【0068】
(剥離評価)
次に、実施例1〜7及び比較例1〜3に係る複合成形体20の断面を電子顕微鏡(倍率300倍)で観察することによって、第1成形体21及び第2成形体22の界面における剥離の有無を観察した。なお、比較例4は、過大な反りが生じており実用的ではないため剥離評価を実施しなかった。
【0069】
表1では、任意の1視野において、100μm以上の剥離が3個以上観察された場合を「×」と評価し、100μm以上の剥離が1個以上3個未満観察された場合を「○」と評価し、100μm以上の剥離が観察されなかった場合を「◎」と評価した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、第1残収縮率η1を40%以上90%以下とし、第2残収縮率η2を70%以上とし、かつ、残収縮率比η2/η1を0.78以上2.5以下とした実施例1〜7では、第1成形体21及び第2成形体22の界面に剥離が生じることを抑制できるとともに、複合成形体20に反りが生じることも抑制できた。このような結果が得られたのは、第1残収縮率η1を40%以上90%以下とし、かつ、第2残収縮率η2を70%以上とすることによって第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2の密着性を高めつつ第1成形用原料M1に反りが生じることを抑制するとともに、残収縮率比η2/η1を0.78以上2.5以下とすることによって第1成形用原料M1及び第2成形用原料M2の収縮度合いが乖離することを抑制できたためである。
【0072】
また、表1に示すように、第1残収縮率η1を50%以上90%以下とし、第2残収縮率η2を80%以上とし、かつ、残収縮率比η2/η1を1.1以上1.6以下とした実施例3〜5では、第1成形体21及び第2成形体22の界面に剥離が生じることを更に抑制できた。
【符号の説明】
【0073】
10 成形型
13 成形空間
20 複合成形体
21 第1成形体
22 第2成形体
23 第3成形体
M1 第1成形用原料
M2 第2成形用原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6