【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、挟持部の動作に合せて圧縮空気(流体)を中空体に送り込むためのポンプ、供給装置、排出装置などが必要であり、圧縮空気により膨張可能なシリコーンチューブ製などの可とう性中空体が必要であった。
【0006】
また、インパルスシーラの小型・中型のシール幅は200mm程度から600mm程度であるが、シールしたい包装材のサイズはさまざまである。包装材が例えば50〜100mmのような場合に、インパルスシーラのシール幅(押し板、受け板)が600mmであれば、通常、包装材をインパルスシーラの略中央でシールさせる。しかしながら、シール印字がシーラの中央よりずれて左右いずれかに配置されている場合には、シール印字を行わせるために包装材をその位置でシールさせる必要がある。また、シール印字とは無関係に、作業者が中央でなくシーラの左右側でシールさせることもある。このようにシール印字設定や作業実態に応じて、シーラ中央だけでなく、シーラ左右側でも問題なくシール作業できることが要望されている。
【0007】
本発明は、挟持部の動作に合せた圧縮流体の供給装置、排出装置、シリコーンチューブ製などの可とう性中空体を必要としなくても、挟持面の平行度の精度にかかわらず挟持部が撓んでも、両挟持部の長手方向の全範囲にわたって挟持力を維持でき、両挟持面全体を均圧化できる、シール装置を提供することを目的とする。
また、中央位置でのシールのみならず、左右側でのシールも好適に行えるシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシール装置は、
被シール物を挟持するための押圧部および箱状受部と、
前記押圧部に設けられる加熱部と、
前記箱状受部の収納部に収納され、前記加熱部と対向する位置に配置され、および気体または液体が密封されているチューブ状体と、
を備える。
【0009】
前記押圧部の前記加熱部と、前記箱状受部の収納部に収納された前記チューブ状体とが、前記被シール物を直接または間接に挟む構成であってもよい。
【0010】
前記箱状受部の収納部に前記チューブ状体が収納された状態で、前記チューブ状体に当接し、かつ前記収納部内側面に対し挿入配置される蓋部をさらに備えていてもよい。蓋部は、収納部内側面と摺動可能または摩擦なく上下方向に動ける構成であればよい。
前記蓋部は、少なくとも耐熱性および弾力性を有する弾性体を有していてもよい。前記弾性体は、例えば、シリコーンゴムであってもよい。前記蓋部が、シリコーンゴムであってもよい。
【0011】
前記加熱部は、例えばヒータを有し、さらにこのヒータの上に絶縁材が設けられていてもよい。
【0012】
前記チューブ状体は、シール加圧力において伸びない材料(または伸びにくい材料)で構成されていることが好ましい。伸びる材料を使用すると、箱状受部(および蓋部)に力がかかり、箱状受部の横から見ると左右の箱状受部の壁は加圧に対して撓まない構造にする必要があるが、伸びない材料を使用すると、伸びる材料に比べてその対策をしなくてもよく、左右の壁は薄くできるので、コンパクトにできる。シール加圧力は、例えば、1cm
2当たり0.15MPa〜0.5MPaの範囲である。
【0013】
前記伸びない材料として、低モジュラス性であることが好ましい。
引張試験機による引っ張り試験で低モジュラス性を評価してもよい。例えば、フィルム15mm幅、チャック間40mm、引張スピード200mm/min、n=3、MD方向に引っ張る場合に、50%モジュラス値(例、長さ100mmのフィルムを150mmまで伸ばす試験)が、15MPa以上であり、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上である。
また、「伸びない材料」は、破断強度−破断伸度の関係値で評価してもよい。破断伸度が低いほど、伸びない材料といえる。測定条件、例えば、チャック間40mm、引張スピード200mm/min、n=3において、例えば、破断強度‐伸度=(15〜30MPa)−(110%〜180%)であることが好ましい。
【0014】
前記チューブ状体は、さらに、柔軟性、耐熱性、耐圧性、密封性のいずれか1種または2種以上の性質を有することが好ましい。
【0015】
柔軟性を有するチューブ状体は、一対の挟持部が挟持された場合に加熱部側の押圧部が箱状受部内部のチューブ状体に圧力をかけ、パスカルの原理によりチューブ状体全体に均一に液体の圧力がかかることを許容することが好ましい。
【0016】
耐圧性を有するチューブ状体は、シールするための加圧力に耐えられる。耐圧性は例えば、耐圧強度(JIS−Z−0238)で測定できる。
シール加圧力は、例えば、1cm
2当たり0.15MPa〜0.5MPaの範囲である。
四辺15mmの正方形の包材に水を封入してシール(シール幅3mm、5mm)したものを圧縮試験機で試験した場合に、破断時の荷重は500N以上、好ましくは800N以上、より好ましくは1000N以上であることが好ましい。
【0017】
シール装置を連続運転した場合、加熱部(ヒータ)を取り付けている押圧部側が100℃付近まで蓄熱するため、耐熱性を有するチューブ状体は、少なくとも110℃で30分以上耐えること、好ましくは115℃で30分以上耐えること、より好ましくは120℃で30分以上耐えることができるチューブ状体であることが好ましい。
【0018】
密封性を有するチューブ状体は、透湿度が例えば0.1〜12[g/m
2/24h]の範囲、好ましくは1[g/m
2/24h]以下であり、酸素透過度が例えば、0.1〜35[g/m
2/24h]の範囲であり、好ましくは1[g/m
2/24h]以下である。
【0019】
前記チューブ状体を構成する材料として、例えば、レトルト包材が好ましい。
レトルト包材としては、例えは、PET/DL/AL/DL/ONY/DL/CPP、ONY25/DL/CPP60、ONY25/DL/PET12/DL/CPP60などが挙げられえる。
なお、シーラント材としてポリエチレン(PE)はヒートシールによる熱の影響があり、長時間の連続運転使用には不向きであるが、長時間運転をしない場合などには、問題なく使用できうる。
【0020】
前記シール装置は、前記押圧部の両端に設けられた一対のアームを有していてもよい。この構成では押圧部をその両端から加圧する構造であり、押圧部の中央部分が撓みその付近の加圧力が弱くなる傾向にある。しかし、本発明では、箱状受部に収納されたチューブ状体が押圧部からの圧力を受けてパスカルの原理で変形することで、押圧部(加熱部)側と箱状受部側とが均一圧で当接される。つまり、押圧部(加熱部)と箱状受部(チューブ状体)とで挟持された被シール物に対し均一に圧力を掛けることが可能になる。
【0021】
前記シール装置は、前記押圧部の中央に設けられたアームを有していてもよい。この構成では押圧部をその中央から加圧する構造であり、押圧部の両端が撓みその付近の加圧力が弱くなる傾向にある。しかし本発明では、箱状受部に収納されたチューブ状体が押圧部からの圧力を受けてパスカルの原理で変形することで、押圧部(加熱部)側と箱状受部側とが均一圧で当接される。つまり、押圧部(加熱部)と箱状受部(チューブ状体)とで挟持された被シール物に対し均一に圧力を掛けることが可能になる。
【0022】
前記シール装置は、前記押圧部の中央に設けられたアームと、前記箱状受部の中央に設けられたロードセルを有していてもよい。
前記箱状受部は、前記ロードセルにのみ載置されている構成であってもよい。この構成では、ロードセルによる圧力測定を行うために箱状受部をロードセルに載置しているが、箱状受部の下部両端に支えがないため、その両端において加圧力が弱くなる傾向にある。しかし本発明では、箱状受部に収納されたチューブ状体が押圧部からの圧力を受けてパスカルの原理で変形することで、押圧部(加熱部)側と箱状受部側とが均一圧で当接される。つまり、押圧部(加熱部)と箱状受部(チューブ状体)とで挟持された被シール物に対し均一に圧力を掛けることが可能になる。
【0023】
(効果)
本発明によれば、伸びない材料(伸びにくい材料)のチューブ状体を採用したことで、挟持部の動作に合せた圧縮流体の供給装置、排出装置、シリコーンチューブ製などの可とう性中空体を必要としなくても、挟持面の平行度の精度にかかわらず挟持部が撓んでも、両挟持部の長手方向の全範囲にわたって挟持力を維持でき、両挟持面全体を均圧にできる。