(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記監視画面上に表示される複数のチムニーのうち、前記海中採鉱基地の移動方向に基づいて、最も海中採鉱基地に近いチムニーを障害となるチムニーと判定する請求項10〜12のいずれか一項に記載の採鉱基地監視装置。
前記海底鉱物採掘装置は、前記移動フレームに固定されて上下方向に延びるガイドシェルと、前記ガイドシェル上部に取り付けられた給進機構と、前記給進機構に連結されて該給進機構の駆動によって前記ガイドシェルに沿って上下動する採掘装置本体と、前記採掘装置本体のロッドに連結されて該ロッドとともに前記採掘装置本体を回転させる回転機構と、を有する請求項15に記載の海中採鉱基地。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
まず、本実施形態の採掘システムの全体構成について説明する。
この採掘システムは、
図1に示すように、海上採鉱基地として海上SLに配置される採鉱母船1と、海底SBに配置される採鉱ステーション20および揚鉱ユニット4とを有する。この採掘システムでは、複数の採鉱ステーション20を海中採鉱基地とする。各採鉱ステーション20には複数の海底鉱物採掘装置30が装備されている(以下、「採掘装置30」とも呼ぶ)。
【0015】
各採掘装置30は、海底鉱床ODにさく孔により有底穴である竪穴を形成可能に構成されている。また、各採掘装置30は、海底鉱物を竪穴内でスラリー状にして採掘可能に構成されている。そして、この採掘システムは、各採掘装置30で採掘されたスラリー状の海底鉱物を、吸込管5を介して海中の揚鉱ユニット4に移送し、揚鉱ユニット4は、揚鉱管6を介して採鉱母船1に揚鉱するように構成されている。
【0016】
詳しくは、本実施形態の例では、採鉱母船1、架設配置用母船2および運搬船3が目的とする海域の海上SLに停泊される。架設配置用母船2は、揚鉱ユニット4および複数の採鉱ステーション20を運搬するとともに、これらを海底SBに架設配置するための架設配置用の母船である。架設配置用母船2には、揚鉱ユニット4および採鉱ステーション20を、海底SBに架設配置するためのクレーン等の作業機11が装備されている。架設配置用母船2は、海底鉱床ODの所定の位置まで採鉱ステーション20を搬送し、作業機11のワイヤ11wで採鉱ステーション20を垂下して海底SBに立設する。また、同様にして、架設配置用母船2は、海底SBの適切な位置に揚鉱ユニット4を配置する。
【0017】
採鉱母船1には、発電機12および貯蔵器13、並びに不図示の管理コンピュータが搭載されている。貯蔵器13は換装可能に船上に載置されている。管理コンピュータおよび発電機12は、アンビリカルケーブル8を介して海底SBに配置された採鉱ステーション20および揚鉱ユニット4に接続され、採鉱ステーション20および採掘装置30、並びに揚鉱ユニット4の作動に必要な電力や制御信号を供給可能になっている。
【0018】
揚鉱ユニット4は、揚鉱用ポンプ25と、サイクロン装置を有する分級器27とを備える。分級器27は、その吐出側が、揚鉱ユニット4の内部で揚鉱用ポンプ25の吸い込み側に接続される。分級器27の吸入側は、吸込管5を介して採鉱ステーション20と接続される。吸込管5内には海水が満たされる。分級器27には、排出管7の一端が接続され、排出管7の他端が、分級で不要とされた鉱物の戻し置き場まで配管される。なお、吸込管5、揚鉱管6および排出管7にはフレキシブル管を用いている。
【0019】
揚鉱用ポンプ25は、上記揚鉱管6を介して採鉱母船1と接続される。揚鉱管6は、採鉱ステーション20で採掘したスラリー状の鉱物を採鉱母船1まで揚鉱するためのフレキシブル性を有する円筒状管路である。揚鉱管6内には海水が満たされる。揚鉱管6の上部は、海上SLの採鉱母船1まで到達し、採鉱母船1の船底を介して貯蔵器13に接続される。貯蔵器13は、揚鉱管6から揚鉱用ポンプ25で揚鉱されたスラリー状の鉱物を貯蔵する。運搬船3は、貯蔵器13を採鉱母船1と換装して、採鉱母船1に揚鉱された海底鉱物を必要な場所に移送する。
【0020】
次に、上記採鉱ステーション20について詳しく説明する。
図2に示すように、採鉱ステーション20は、プラットフォームとなる矩形枠体状のベースフレーム21を有する。ベースフレーム21は、枠体の四隅が複数(この例では4脚)の支持脚26で支持されている。各支持脚26は、ジャッキ機構49を介してベースフレーム21に固定されている。
ジャッキ機構49は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有する。ラックは支持脚26の軸方向に沿って形成されている。ジャッキ機構49は、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、支持脚26を上下方向(Z方向)にスライド移動可能に且つその移動位置の保持が可能になっている。なお、ジャッキ機構49の駆動用のモータとしては、流体圧による駆動(例えば油圧駆動)であっても、電力による駆動(例えば電磁式モータ)であってもよい(以下、他の駆動用のモータにおいて同様)。
【0021】
この例では、ベースフレーム21には、
図3に示すように、X方向に沿って二つの移動フレーム43が張り渡されている。移動フレーム43は、例えばトラス構造を有する。各移動フレーム43の両端は、Y方向用移動機構44を介してベースフレーム21にそれぞれ支持される。Y方向用移動機構44は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、移動フレーム43をベースフレーム21沿ってY方向にスライド移動可能になっている。
【0022】
各移動フレーム43には、ガイドシェル48が縦に配置されている。ガイドシェル48は、採掘装置30のZ方向の送り機構を構成している。ガイドシェル48は、X方向用移動機構52を介して移動フレーム43に支持されている。X方向用移動機構52は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、ガイドシェル48を移動フレーム43沿ってX方向にスライド移動可能になっている。
【0023】
さらに、ベースフレーム21には、基地制御ユニット45および吸込チャンバ51が設けられている。基地制御ユニット45には、上記アンビリカルケーブル8が接続されている。基地制御ユニット45には、採鉱ステーション20および採掘装置30を駆動するために、以下不図示の、高圧水供給ポンプと、高圧水供給ポンプを駆動するモータと、採鉱ステーション20全体の作動を制御する制御部とが内蔵されている。
【0024】
これにより、各採鉱ステーション20は、採鉱母船1からアンビリカルケーブル8を介して必要な電力や制御信号の供給を基地制御ユニット45に受ける。基地制御ユニット45は、採鉱母船1側の管理コンピュータの指令に基づいて、各ジャッキ機構49の駆動により、採鉱ステーション20の姿勢を制御するコントローラとして機能する。
さらに、各採鉱ステーション20は、管理コンピュータの管理下、基地制御ユニット45によるX方向用移動機構52およびY方向用移動機構44の駆動により、ガイドシェル48をX方向およびY方向に移動するとともに、高圧水供給ポンプの駆動により、取水した海水を高圧水として採掘装置30に供給し、ガイドシェル48に設けられた採掘装置30を駆動可能になっている。
【0025】
次に、採鉱ステーション20に装備された採掘装置30について詳しく説明する。
図4に示すように、ガイドシェル48には、スライダ46を介して採掘装置30が装備されている。ガイドシェル48の上部には、ガイドシェル48に沿ってスライダ46をZ方向にスライド移動させるスライド移動機構47が設けられている。スライド移動機構47は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、ガイドシェル48に沿ってスライダ46をZ方向にスライド移動可能になっている。
【0026】
採掘装置30は、スライダ46に装着されるハウジング部71を有する。ハウジング部71には、不図示の回転駆動機構およびスイベルが内蔵されている。ハウジング部71は、ハウジング部71の上部が、高圧水供給管9を介して上記基地制御ユニット45の高圧水供給ポンプに接続される。また、ハウジング部71の側面には、この採掘装置30の駆動により採掘されたスラリー状の鉱物を吸入するための吸込管5の一端が接続される。吸込管5の他端は、上記吸込チャンバ51を介して分級器27に接続される。
【0027】
次に、上記採掘装置30の採掘装置本体の構成についてより詳しく説明する。
図5に採掘装置本体の部分を拡大して示すように、この採掘装置30は、二重管ロッド40よりも前方の部分に採掘装置本体10が装備される。採掘装置本体10は、円筒状のシリンダ31を備える。シリンダ31の内周面には、略円筒状のシリンダライナ33が嵌め込まれている。シリンダ31とシリンダライナ33との間には、シリンダ31の軸方向に沿って通水孔32が形成されている。
【0028】
シリンダライナ33内には、略円筒状のハンマ34が往復摺動可能に保持されている。シリンダ31の後端は、連結部材35を介して、採掘装置30の二重管ロッド40に連結されている。二重管ロッド40は、外筒40aと内筒40bとを同軸に有する二重管から構成されている。外筒40aと内筒40bとの相互の隙間には給水路40cが形成されている。給水路40cの上流側は、上記ハウジング部71のスイベルを介して高圧水供給管9に接続される。高圧水供給管9は、採鉱ステーション20の基地制御ユニット45に設けられた高圧水供給ポンプの吐出側に接続される。給水路40cの下流側は、連結部材35の内部の給水路35cに連通している。
【0029】
シリンダ31の後端側には、連結部材35の前端面との間にシリンダブシュ36が挿入されている。シリンダブシュ36の前側には、シリンダ後室42を形成するためのリング39が挿入されている。これにより、リング39とハンマ34の後方部分との間にシリンダ後室42が画成されている。シリンダブシュ36には、給水路35cに連通する連通孔36cが軸方向に沿って設けられている。
【0030】
シリンダ31の前端には、打撃用の破砕工具であるビット50が装着される。ビット50の後端とハンマ34の前方部分との間にシリンダ前室41が画成される。ビット50は、シリンダ前室41の前側面を塞ぐとともに、ハンマ34からの打撃力を自身後端が受けて、軸方向で所定ストロークの往復摺動が可能に装着されている。ハンマ34の外周面には、複数の制御溝34a、34cおよび連通流路34bが形成されている。
【0031】
シリンダ31内には、シリンダブシュ36の前側とリング39との間に第一入水孔31bが形成されている。第一入水孔31bは、シリンダブシュ36の連通孔36cとシリンダライナ33の後端部の連通孔33eとを連通させている。シリンダライナ33の連通孔33eは、上記通水孔32に連通している。通水孔32は、ハンマ34の軸方向での位置に応じて、シリンダライナ33の複数の連通孔33a〜33dに対し、ハンマ34の制御溝34a、34cを所期の位置で連通させることで、ハンマ34をシリンダ31内で前後進させるようにシリンダ前室41またはシリンダ後室42に高圧水を給排するハンマ往復動切換機構を構成している。
【0032】
更に、シリンダ31内には、円筒状のスリーブ38がシリンダ31と同軸に設けられている。スリーブ38は、内部に吸入孔38tが軸方向に沿って貫通形成されている。スリーブ38は、その後部に形成された段部が、シリンダブシュ36とリング39とに挿入されて軸方向の位置が保持されている。スリーブ38の吸入孔38tの後端は、連結部材35の吸入孔35tを介して、二重管ロッド40の内筒40bの吸入孔40t前端に連通している。
【0033】
スリーブ38の中間部分は、ハンマ34内部に貫通形成された連通孔34dに隙間を隔てて貫挿されるとともに、スリーブ38の前端部分が、ビット50内部に貫通形成された連通孔50dに隙間を隔てて挿入されている。スリーブ38は、ハンマ34およびビット50に挿入されている径方向での間隙部が、シリンダ前室41およびシリンダ後室42からの排水用通路38aになっている。
スリーブ38には、排水用通路38aの先端側の位置に吐出孔38gが穿孔されている。吐出孔38gは、スリーブ38の外周から中心の吸入孔38tに向けて且つ二重管ロッド40の方向に向けて後方側に傾斜している。スリーブ38の吸入孔38tには、吐出孔38gの出口に、シリンダ前室41への土砂等の侵入を防ぐ為の可撓性のチェックバルブ37が取り付けられている。
【0034】
ビット50の前端には、スリーブ38中心の吸入孔38tに連通する吸水孔50kが開口している。これにより、採掘装置30は、吐出孔38gから吸入孔38tに向けて後方側に吐出される高圧水の流速により、吸水孔50kに負圧を生じさせ、吸水孔50kから吸引した海底鉱物が、吸入孔38t内で海水と混合されるようになっている。
【0035】
したがって、この採掘装置30によれば、さく孔により破砕された海底鉱物を排水流によって採掘装置30の内部に吸引し、吸入孔38tの内部で海水と混合してスラリーを生成することができる。また、この採掘装置30によれば、二重管ロッド40の内筒40bの吸入孔40tから、生成されたスラリーを回収することができる。さらに、揚鉱用ポンプ25は、二重管ロッド40の内筒40bの上端に吸込管5を介して接続され、ビット50の吸水孔50kからさく孔により破砕された海底鉱物を吸引し、海上の採鉱母船1に揚鉱可能である。
【0036】
次に、上述の採掘システムによって、海底鉱床ODから鉱物を揚鉱する手順、並びにこの海底鉱物の採掘システム並びに採掘装置30による海底鉱物の採掘方法の作用・効果について説明する。
まず、
図1に示したように、採鉱母船1、および架設配置用母船2を目的とする海域の海上SLに停泊する。次いで、架設配置用母船2に設置されているクレーン等の作業機11を用い、採鉱ステーション20および揚鉱ユニット4を海中に降ろし、これらの機材が
図1に示す配置となるように海底SBの適切な位置に設置する。これらの機材の設置前または設置後に、吸込管5、揚鉱管6および排出管7、並びにアンビリカルケーブル8等の必要な配管および配線を行い、各配管内には海水を満たす。
【0037】
機材の設置後、採鉱母船1からアンビリカルケーブル8を介して基地制御ユニット45および揚鉱ユニット4に必要な電力や制御信号を供給し、採鉱ステーション20および採掘装置30並びに揚鉱ユニット4を駆動して海底鉱床ODに有底穴である竪穴VHをさく孔しつつ海底鉱物を粉砕する。なお、本実施形態において、採鉱ステーション20を海底鉱床ODに配置する際は、海底SBの凹凸形状に応じ、ベースフレーム21の姿勢が水平になるように、ベースフレーム21四隅の支持脚26をジャッキ機構49により上下にスライド移動させておく。
【0038】
ここで、採鉱ステーション20のベースフレーム21に設けられた高圧水供給ポンプから供給される高圧水は、
図5において、採掘装置30の二重管ロッド40の内筒40bと外筒40aの間の給水路40cを通って、連結部材35の給水路35cから第一入水孔31bから連通孔33eを経て通水孔32に入る。
通水孔32に入った高圧水は、ハンマ往復動切換機構に導入される。ハンマ往復動切換機構において、ハンマ前進状態での高圧水は、シリンダライナ33の連通孔33b〜制御溝34a〜連通孔33c〜32L〜33dの順に通り、ハンマ34前端のシリンダ前室41に入る。このとき、制御溝34cは連通孔33aとハンマ34の外周面で遮断されている。これにより、ハンマ34は後退(
図5において上方に移動)する。
【0039】
ハンマ34の後退により、ハンマ34後方のシリンダ後室42内の海水は、排水用通路38aを通り、吐出孔38gからチェックバルブ37を経て吸入孔38tに向けて吐出される。
次いで、ハンマ34が、
図6に示すように、後退限に達すると、シリンダライナ33に形成された通水孔33bがハンマ34の外周面で遮断される。一方、通水孔33aは、ハンマ34の外周面に形成されている制御溝34cと連通する。そのため、シリンダ31の通水孔32からの高圧水は、ハンマ34後側のシリンダ後室42に流入する。
この高圧水のシリンダ後室42への流入により、ハンマ34は後退から前進に転じ、所期の打撃位置でビット50の後端面を打撃する。打撃されたビット50は、先端のチップ50bがさく孔面に衝撃力を加えて海底鉱物を破砕する。
【0040】
高圧水供給ポンプから採掘装置30に高圧水が供給され続けることにより、ハンマ34は、上述の往復移動によりビット50の後端面への打撃を繰り返す。そして、ビット50でのさく孔面への打撃とともに、ガイドシェル48に設けられた送り機構47による採掘装置30の給進駆動がなされるとともに、ハウジング部71の回転機構による採掘装置30の回転駆動がなされる。
【0041】
そのため、この採掘装置30によれば、海底鉱床ODにさく孔により竪穴VHを形成しつつ海底鉱物の採掘を継続することができる。そして、この採掘装置30によれば、竪穴VH内に自身の採掘装置本体10が存在しているので、竪穴VHの開口側を塞いだ状態のままさく孔を進めることができる。したがって、海底鉱物の破砕粉が海中に流出することが防止または抑制される。そのため、海水の懸濁が防止または抑制される(採掘部、採掘工程)。
【0042】
そして、この採掘装置30によれば、ビット50の前端には、スリーブ38の吸入孔38tに連通する吸水孔50kが開口しており、吸入孔38tは、二重管ロッド40の方向に向けて傾斜した吐出孔38gに沿って開放されているので、吸入孔38tを通る高圧水の流速により、吸水孔50kに負圧が生じる。これにより、ビット50の吸水孔50kから、さく孔により破砕した海底鉱物が吸引されるとともに、吸引した海底鉱物を吸入孔38t内で海水と混合することができる。
【0043】
ここで、衝撃力によるさく孔であると、さく孔により生じる破砕された海底鉱物は、その粒子径が非常に細かくて粒度が均一になる。そのため、この採掘装置30によれば、さく孔により生じる破砕された海底鉱物を排水流の作用によって吸引し、採掘装置30の吸入孔38t内部で海水と混合したスラリーとすることができる(スラリー生成部、スラリー生成工程)。
さらに、この採掘装置30によれば、スリーブ38の吸入孔38tは、二重管ロッド40の内筒40bの吸入孔40tを経て吸込管5に直接導入され、揚鉱ユニット4は、採掘装置30で採掘されたスラリー状の鉱物を海水と共に吸込管5から吸入できる。よって、スラリー状の海底鉱物が海水中に舞い上がって飛散してしまうことを防止または抑制できる(回収部、回収工程)。
【0044】
次いで、吸込管5で吸入されたスラリー状の鉱物は分級器27に移送される。分級器27は、鉱物粒子の比重差によって遠心力により所望の鉱物とそうでない不要な鉱物とを分離する。分級で不要とされた鉱物は、
図1に示すように、分級器27に接続された排出管7を介して海底の戻し置き場に導かれる。
一方、分離されたスラリー状の鉱物のうち、所望の比重の鉱物は、揚鉱用ポンプ25に送られ、揚鉱管6を介して採鉱母船1の貯蔵器13に揚鉱される。採鉱母船1では、貯蔵器13に貯蔵するときに、スラリー状の鉱物を海水と分離し、海底鉱物が貯蔵器13内部に貯蔵され、分離された海水は海中に排出される。
【0045】
各採鉱ステーション20は、採掘装置30それぞれの最大さく孔深度まで採掘したら採掘装置30を後退した後に、採掘装置30をX−Y平面で移動して、
図7(b)に示すように、X−Y平面全体を走査するように順次にさく孔を行う。X−Y平面での移動および移動後のさく孔は、本実施形態のように、コンピュータ(上記管理コンピュータ、および基地制御ユニット45等)により自動的に行ってもよいし、各採鉱ステーション20の状況をオペレータが海上の採鉱母船1から監視しつつ、オペレータの手動操作によって行ってもよい。
【0046】
特に、この採掘装置30を備える採鉱ステーション20、および、海底鉱物の採掘システム並びにこれらの設備を用いた揚鉱方法によれば、各採鉱ステーション20は、複数の支持脚26を有し、各支持脚26は、垂直方向への移動機構であるジャッキ機構49を介してZ方向に個別に相対的スライド移動が可能なので、海底鉱床の傾斜や起伏に対応することができる。そして、オペレータがカメラ等によって監視しつつ手動操作を行う場合、海水中への海底鉱物の飛散が防止または抑制されているため、採掘作業の効率を向上させる上で好適である。
【0047】
ここで、採鉱ステーション20は、上記実施形態のように、複数台を用いて広範囲を同時に採掘することができるが、採鉱ステーション20が装備する採掘装置30についても、細径用のものから大径用のものまで、種々の採掘装置30を用いることができる。
例えば、
図7(a)に示すように、細径用採掘装置30を装備した採鉱ステーション20で採掘後に、同じ領域に対して、
図8に示すように、大径用採掘装置30を装備した他の採鉱ステーション20、または大径用採掘装置30に換装した同一の採鉱ステーション20で更に採掘することもできる。なお、
図7(a)および
図8での、符号50および50Bは、ビットのみを換装するのではなく、細径ビット50ないし大径ビット50Bに対応した採掘装置30全体を換装する意味である。
【0048】
このように、採掘装置30を備える採鉱ステーション20、および、海底鉱物の採掘システム並びにこれらの設備を用いた揚鉱方法によれば、海底鉱床の傾斜や起伏に対応可能であり、さらに、スラリー状の海底鉱物が竪穴VH内にあるので、海底鉱物が海水中に舞い上がって飛散してしまうことが防止または抑制される。また、本実施形態の採掘システムは、採掘装置30で採掘されたスラリー状の海底鉱物を竪穴VH内部から吸込管5に直接導入するので、揚鉱時の海水中への飛散も防止または抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、海上採鉱基地として採鉱母船1を例に説明したが、これに限定されず、海上揚鉱基地として機能すれば、例えば海上に建設されたプラットフォームなどであってもよい。
また、例えば上記実施形態では、スラリー状の鉱物を、採鉱母船1内に設けられた貯蔵器13まで運搬する例で説明したが、これに限定されず、海底で採掘した鉱物を有底穴である竪穴VH内部から直接運搬すれば、海上の近傍や海面下(例えば船底近くに貯蔵器を設ける)で揚鉱もしくは貯蔵、または分級を行ってもよい。
【0050】
また、例えば上記実施形態では、有底穴の一例として竪穴VHをさく孔する例で説明したが、本発明に係る有底穴は、その軸線の向きが垂直方向に限定されない。つまり、本発明は、さく孔により有底穴を形成し、その有底穴の内部で海底鉱物をスラリーとし、そのスラリーを有底穴の内部から回収可能であればよい。よって、本発明に係る有底穴は、その軸線を水平とする横穴であってもよいし、また、軸線が斜めであってもよい。
また、竪穴VHを形成する方法および装置は、打撃機構によるさく孔に限定されず、回転機構によるドリル穿孔であってもよい。但し、採掘した鉱物をスラリー状とし、粒子径を非常に細かくして粒度を均一にする上では、ドリル穿孔ではなく、打撃機構によるさく孔が好ましい。
【0051】
また、例えば上記実施形態では、揚鉱ユニット4が分級器27を有し、この分級器27により海中でスラリー状の鉱物を分級する例を示したが、これに限定されず、本発明に係る採掘装置によれば、採掘した鉱物がスラリー状であり、粒子径が非常に細かくて粒度が均一になるので、スラリー状の海底鉱物を分級することなしに揚鉱してもよい。
【0052】
また、例えば上記実施形態では、採掘装置30は、外筒40aと内筒40bとを有する二重管ロッド40を有する例で説明したが、これに限定されず、例えば
図9に示すように、単管ロッドを用いて採掘装置を構成してもよい。
すなわち、同図に示すように、この採掘装置130は、単管のロッド57を有し、ロッド57の前方に採掘装置本体100が装着されている。採掘装置本体100は、ロッド57の先端にテーパねじ部56aで連結されたシリンダ56を有する。シリンダ56には、上方から順に、チェックバルブ51、ハンマ54およびビット50が内装され、ハンマ54の前後には、シリンダ前室52とシリンダ後室53が画成されている。
【0053】
この採掘装置130を駆動する高圧水は、上記実施形態同様に、ロッド57上端のハウジング部71に、高圧水供給ポンプから高圧水供給管9を介して供給される。供給された高圧水は、上記実施形態同様に、シリンダ56とハンマ54の内外周面に形成されたハンマ往復動切換え機構により、ハンマ54をシリンダ56内で前後進させるようにシリンダ前室52またはシリンダ後室53に給排される。また、ロッド57は、上記実施形態同様に、ガイドシェル48に据え付けた送り機構47とハウジング部71の回転機構により回転および給進される。
ここで、この採掘装置130は、シリンダ56には、さく孔口の周囲を囲繞するように、フートパッド58がさく孔口側に向けて押圧可能且つ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。フートパッド58の上部側面には、スラリーを海底鉱物資源として採掘する吸込管5が接続される。
【0054】
この採掘装置130において、高圧水は、上部のチェックバルブ51を通り、ハンマ往復動切換え機構により、シリンダ前室52とシリンダ後室53とに給排されてハンマ54を前後に駆動し、ハンマ54がビット50を打撃した衝撃によって海底鉱床ODに有底穴である竪穴VHをさく孔する(採掘部、採掘工程)。
打撃後の高圧水は、ビット50の軸心に設けた吸入孔50aを経てビット先端に出るが、さく孔で採掘された海底鉱物は、竪穴VH内で海水と混合されてスラリーとなる(スラリー生成部、スラリー生成工程)。
【0055】
そして、竪穴VH内で生成されたスラリーは、シリンダ56の外側とさく孔内壁VHnとの隙間、ないし、さく孔内壁VHnに接して海水中まで延設されたロッド57外側とさく孔内壁VHnとの隙間を通り、フートパッド58の内側から吸込管5を介して竪穴VH内から直接回収される(回収部、回収工程)。よって、この採掘装置130のような構成であっても、海中での採掘鉱物の飛散を防止または抑制することができる。
また、例えば上記実施形態では、海中採鉱基地として、採鉱ステーション20が自らは水平方向には移動しない例で説明したが、これに限らず、例えば、
図10に示すように、採鉱ステーションが自ら水平方向に移動可能な機構を有する構成とすることもできる。
【0056】
ここで、海底鉱床の鉱物資源を採掘する掘削機について、これまでに提案されている主なコンセプトは、クローラ式の遠隔操作掘削機を用いて、クローラで走行しつつ掘削機に搭載したドラムカッターで水平方向に海底鉱床を採掘する方式である。これを、以下、水平式採掘システム(HMS)と呼ぶことにする。HMSは、可動性、可搬性に優れ、自由に海底を走行しながら採掘できる。一方、HMSは、以下の(課題1)〜(課題5)のような点で解決すべき課題がある。
【0057】
(課題1)ドラムカッターの採掘反力を採掘平面内で保障するために、大きな摩擦力を必要とする。そのため、掘削機本体の重量を大きくする必要がある。
(課題2)ドリリング時に粉砕された鉱石が水中に舞い上がり、視界が不良となる。HMSの操作は、海上のオペレータがカメラにより目視で操作する必要があるため、操業率に影響が出る可能性がある。また、環境への負荷も大きい可能性がある。
(課題3)海底の起伏に応じた操作が必要であり、カメラで目視しながらの掘削となるため、完全自動化が難しい。
(課題4)鉱山の傾斜角に対応した登坂能力が必要となる。また、傾斜地でなくても、海底の地盤が軟弱な場合には、クローラによる走行に支障が出る可能性がある。
(課題5)ドラムカッターの形状の工夫にもよるが、採掘した鉱石のサイズが均一でないため、SCU(Subsea Crushing Unit)が必要といわれている。
【0058】
このように、クローラ型の掘削機であるHMSは、海底の起伏に応じた操作が煩雑であり、自動化が困難である。また、海底鉱床は傾斜角が大きく、表面堆積する軟弱な地盤ではクローラでの走行に支障がある。特に、海底熱水鉱床では、熱水が噴出するチムニー(煙突状の熱水噴出突起)が海山に多く存在するところ、このようなチムニーを回避することが難しい。そこで、本発明者らは、HMSのこのような課題を解決すべく、HMSとは異なる方式として、垂直式採掘システム(VMS)である上記第一実施形態を発明した。
【0059】
VMSのメリットは、少なくとも以下の(効果1)〜(効果4)のように纏められる。
(効果1)鉱石が破砕され非常に細かい粉末状となるため、SCU(Subsea Crushing Unit)を省略できる可能性がある。
(効果2)海底鉱床を縦に採掘していくため、ライザー掘削と同様に、採掘で破砕された鉱石はフローラインを用いて吸い出すことになり、環境へのまき散らしが少ない。そのため、環境への負荷も小さく、海上からオペレータがカメラで監視する場合に、視界の不良も防ぐことができる。
(効果3)着底位置での区画(所定範囲)を採鉱可能なので、予め定めたプログラムに従い、視認性の問題無く自動的に採掘できる。
(効果4)海底に立設されるとともに、各支持脚は、垂直方向への移動機構を介してZ方向に個別に相対的スライド移動が可能なので、HMSでの適用が難しいであろう複雑な海底形状や軟弱地盤に適用できる。
【0060】
但し、第一実施形態の採鉱ステーション20は、最初の区画の採掘が終了した後は、次の隣接する区画に採鉱ステーション20を改めて設置する必要がある。つまり、第一実施形態の採鉱ステーション20は、ジャッキアップ式のプラットフォームの設置と移動に際し、その都度、設置移動用船舶(IRV)を必要とする。
そのため、IRVによるVMSの吊り上げ、移動、着底の作業に多くの時間とコストがかかる。また、採掘期間中に常時IRVを使用するため、用船費も大きい。これに対し、以下説明する第二および第三実施形態は、この問題を解決するものであり、X方向およびY方向の少なくとも一方に自ら移動可能なVMS、すなわち海底鉱物資源開発用自走式垂直採掘システムである。
【0061】
詳しくは、第二実施形態の採鉱ステーション120は、
図10(a)に示すように、第一のベースフレーム21Aと、第二のベースフレーム21Bと、第三のベースフレーム21Mとからなる3つのベースフレームで構成されている。
第一のベースフレーム21Aと第二のベースフレーム21Bとは、互いにコ字状の枠体からなる。第一および第二のフレーム21A、21Bは、コ字状をなす二つの角部に、上記実施形態同様に、ジャッキ機構49を介して支持脚26がそれぞれ設けられている。第一のベースフレーム21Aのコ字状の幅は、第二のベースフレーム21Bのコ字状の幅よりも狭い。
【0062】
第一のベースフレーム21Aと第二のベースフレーム21Bとは、相互のフレーム21A、21Bのコ字状の開口部分が組み合わせ可能に対向配置される。相互のフレーム21A、21Bの横枠は、不図示の第一のラック・ピニオン機構およびリニアガイド等の第一のスライド案内装置を介して対向面で係合しており、不図示の第一のモータで第一のラック・ピニオン機構を駆動することにより、X方向に相対的にスライド移動可能になっている。
【0063】
第三のベースフレーム21Mは、Y方向に延びる縦枠からI字状に構成されている。第三のベースフレーム21Mは、I字状の両端に、上記実施形態同様に、ジャッキ機構49を介して支持脚26がそれぞれ設けられている。また、第三のベースフレーム21Mは、Y方向用移動機構およびガイドシェル48を有し、ガイドシェル48を移動フレーム43沿ってY方向にスライド移動可能になっている。なお、ガイドシェル48には、上記実施形態同様の採掘装置が装備される。
【0064】
第三のベースフレーム21Mは、第一のベースフレーム21Aと第二のベースフレーム21Bに対して横枠と直交する方向に配置される。第三のベースフレーム21Mは、第一および第二のフレーム21A、21Bの横枠に対し、不図示の第二のラック・ピニオン機構およびリニアガイド等の第二のスライド案内装置を介して対向面で係合しており、不図示の第二のモータで第二のラック・ピニオン機構を駆動することにより、X方向に相対的にスライド移動可能になっている。
【0065】
この採鉱ステーション120において、移動する際は、同図(b)に示すように、まず、第一のベースフレーム21Aのジャッキ機構49を駆動して、第一のベースフレーム21Aの二本の支持脚26を上方に移動させて非支持状態とする。次いで、第一のモータで第一のラック・ピニオン機構を駆動し、これにより、第一のベースフレーム21Aを第二のベースフレーム21Bに対してX方向の正方向に相対的にスライド移動させる。スライド移動後に、第一のモータを停止し、ジャッキ機構49を駆動して、第一のベースフレーム21Aの二本の支持脚26を下方に移動させて支持状態とする。
【0066】
次いで、同図(c)に示すように、まず、第二のベースフレーム21Bのジャッキ機構49を駆動して、第二のベースフレーム21Bの二本の支持脚26を上方に移動させて非支持状態とする。次いで、第一のモータで第一のラック・ピニオン機構を駆動し、これにより、第二のベースフレーム21Bを第一のベースフレーム21Aに対してX方向の正方向に相対的にスライド移動させる。スライド移動後に、第一のモータを停止し、ジャッキ機構49を駆動して、第二のベースフレーム21Bの二本の支持脚26を下方に移動させて支持状態とする。
【0067】
次いで、第三のベースフレーム21Mのジャッキ機構49を駆動して、第三のベースフレーム21Mの二本の支持脚26を上方に移動させて非支持状態とする。次いで、第二のモータで第二のラック・ピニオン機構を駆動し、これにより、第三のベースフレーム21Mを、第一および第二のベースフレーム21A、21Bに対してX方向の正方向に相対的にスライド移動させる。スライド移動後に、第二のモータを停止し、ジャッキ機構49を駆動して、第三のベースフレーム21Mの二本の支持脚26を下方に移動させて支持状態とする。これにより、3つのベースフレーム21A、21B、21M全体は、スライド移動量の分だけ全体がX方向の正方向に移動しつつ、同図(a)に示す状態となる。
【0068】
よって、この採鉱ステーション120によれば、上記のようにして、3つのベースフレーム21A、21B、21Mを順次に移動させることにより、採鉱ステーション120全体をX方向に自ら移動させることができる。なお、スライド移動に際し、ベースフレーム21A、21Bが片持ち状態でオーバーハングするが、相互はスライド案内装置を介して対向面で係合しているので、水平姿勢が保持される。
【0069】
そして、第三のベースフレーム21Mには、上記第一実施形態同様に、Y方向用移動機構を有し、ガイドシェル48を移動フレーム43沿ってY方向にスライド移動可能であり、ガイドシェル48には、上記実施形態同様の採掘装置30が装備されるので、第三のベースフレーム21Mを移動させていないタイミングで、Y方向移動を適宜行いつつ、採掘装置30を駆動することができる。
したがって、このような構成であっても、採掘装置30をX方向およびY方向に移動可能であり、海底鉱床の傾斜や起伏に対応しつつ、さく孔により有底穴である竪穴を形成しつつ海底鉱物を採掘し、その海底鉱物を竪穴内でスラリーにするとともに、そのスラリーを竪穴の内部から直接回収することができる。
【0070】
次に、本発明の第三実施形態について、
図11〜30を適宜参照しつつ説明する。第三実施形態は、採鉱ステーションをX方向およびY方向に移動可能とした、海底鉱物資源開発用の自走式垂直採掘システムであり、特に、縦孔掘削ドリルを備えた自走式海底掘削機械である海中採鉱基地の例である。
【0071】
図11に、第三実施形態の採鉱ステーション全体の模式的斜視図を示す。同図に示すように、この採鉱ステーション220は、採掘装置30と、X方向およびY方向へ自走可能なプラットフォーム21とを備える。プラットフォーム21は、平面視が矩形枠状をなす上部プラットフォーム(Upper platform)21Xと、平面視が矩形枠状をなす下部プラットフォーム(Lower platform)21Yと、両プラットフォーム21X、21Yの中間に設けられ平面視が矩形枠状をなす中間フレーム(Middle frame)21Mとを有する。
【0072】
なお、第三実施形態の採鉱ステーション220は、プラットフォーム21および、これが備えるX方向およびY方向への移動機構以外の構成は、上記第一実施形態同様である。そのため、第三実施形態では、以下、プラットフォーム21とそのX方向およびY方向への移動機構について説明し、他の機構についての説明は適宜省略する。
【0073】
以下、
図12〜
図19に基づき、第三実施形態の採鉱ステーション220の移動機構を詳しく説明する。なお、
図12および
図13は、上記架設配置用母船2から海底鉱床ODに採鉱ステーション220が着底させられる時のプラットフォーム21の着底準備姿勢を示すもので、プラットフォーム21は、着底準備姿勢にあっては、上部プラットフォーム21X、中間フレーム21Mおよび下部プラットフォーム21Yの水平面内の中心(重心)Gが一致している。なお、
図13において符号CLは、各支持脚26の中心軸線を示している。
【0074】
上部プラットフォーム21Xは、
図12に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーXbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーXaとを有する。2つの横ガーダーXaの各外側面には、横ガーダーXaの延在方向に沿って、X移動用ラックRxが、中央から左右対称にそれぞれ取付けられている。
【0075】
また、下部プラットフォーム21Yは、同図に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーYbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーYaとを有する。2つの縦ガーダーYaの外側面には、縦ガーダーYaの延在方向に沿って、Y移動用ラックRyが、中央から左右対称にそれぞれ取付けられている。
【0076】
中間フレーム21Mは、
図14に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーMbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーMaとを有する。中間フレーム21Mの各横ガーダーMaの延在方向の中央の位置には、横ガーダーMaの矩形筒内に、X駆動モータMxがそれぞれ配置されている。また、中間フレーム21Mの各縦ガーダーMbの延在方向の中央の位置には、縦ガーダーMbの矩形筒内に、Y駆動モータMyがそれぞれ配置されている。
【0077】
図11および
図12に示すように、上下の各プラットフォーム21X、21Yは、上記第一実施形態のプラットフォーム同様に、それぞれ4本の支持脚26と各支持脚26を昇降可能なジャッキ機構49とを有するジャッキアッププラットフォームである。そして、中間フレーム21Mと上下のプラットフォーム21X、21Yとは、
図16および
図17に示す直動案内機構を介してスライド移動可能に支持されるとともに、
図17および
図18に示すラック&ピニオン機構を介して係合され、水平面で互いに直交するX方向およびY方向に相対的スライド移動可能に構成されている。
【0078】
詳しくは、第三実施形態のプラットフォーム21は、
図12に示すように、上部プラットフォーム21Xの矩形状の枠体の四隅それぞれと、下部プラットフォーム21Yの矩形状の枠体の四隅それぞれとに支持脚26を有する。各支持脚26には、Z方向のスライド移動機構であるジャッキ機構49が昇降用のジャッキングユニットとして設けられている。
第三実施形態のジャッキ機構49は、各支持脚26の両側に1基ずつ、合計2基が装備され、各支持脚26には、
図15に示すように、二条のZ移動用ラックRzが、各支持脚26の軸方向に沿って周方向で対向する位置にそれぞれ取付けられている。
【0079】
各Z移動用ラックRzに対応するジャッキ機構49は、不図示のZ駆動モータと、Z駆動モータの出力軸に装着されたピニオンと、ピニオンに噛合された上記Z移動用ラックRzを有してラック&ピニオン機構が構成される。これにより、各支持脚26は、自身が装着された各プラットフォーム21X、21Yに対しZ方向に相対的スライド移動して、複数の支持脚26の協働によって、上下のプラットフォーム21X、21Yの上昇および下降が可能になっている。
【0080】
上部プラットフォーム21Xの直動案内機構は、
図16に示すように、上部プラットフォーム21Xの横ガーダーXa底面に、横ガーダーXaの延在方向に沿って取付けられたスキッディングレールSxを有する。スキッディングレールSxは、上部プラットフォーム21Xの横ガーダーXaに沿って上部プラットフォーム21Xの端から端まで取り付けられている。
【0081】
スキッディングレールSxの上下は、例えば200mm×200mm程のベアリングプレートBxで案内される。ベアリングプレートBxは、中間フレーム21Mの横ガーダーMaの角部上面に取り付けられる。また、スキッディングレールSxを左右から覆うように、ベアリングプレートBxの配置位置と同じ位置に、ホールディングクローHxが取り付けられている。ホールディングクローHxは、上部プラットフォーム21XがX方向に移動する時に、その落下を防ぐようにスキッディングレールSxを両側から支持している。
【0082】
上記X駆動モータMxの駆動軸には、
図18に示すように、X移動用ピニオンPxが装着され、X移動用ラックRxのラック面に対向する位置に張り出している。二つのX移動用ピニオンPxは、それぞれX移動用ラックRxに噛合され、X駆動モータMxにより同期駆動されて、上部プラットフォーム21XをX方向にスライド移動可能に構成されている。
【0083】
一方、下部プラットフォーム21Yの直動案内機構は、
図17に示すように、下部プラットフォーム21Yの縦ガーダーYa上面に、縦ガーダーYaの延在方向に沿って取付けられたスキッディングレールSyを有する。スキッディングレールSyは、下部プラットフォーム21Yの縦ガーダーYaの端から端まで取り付けられている。
【0084】
下部プラットフォーム21Yは、上部プラットフォーム21Xと同様に、中間フレーム21Mの縦ガーダーMbの角部下面に、ベアリングプレートByが取付けられ、ベアリングプレートByによりスキッディングレールSyの上下を案内している。また、ベアリングプレートByの配置位置と同じ位置に、スキッディングレールSyを左右から覆うように、ホールディングクローHyが取り付けられ、下部プラットフォーム21YがY方向に移動する時に、その落下を防ぐようにスキッディングレールSyを両側から支持している。
【0085】
上記Y駆動モータMyの駆動軸には、
図19に示すように、Y移動用ピニオンPyが装着され、Y移動用ラックRyのラック面に対向する位置に張り出している。二つのY移動用ピニオンPyは、それぞれY移動用ラックRyに噛合され、Y駆動モータMyにより同期駆動されて、下部プラットフォーム21YをY方向にスライド移動可能に構成されている。
これにより、第三実施形態の採鉱ステーション220は、上下のプラットフォーム21X、21YをX方向およびY方向にスライド移動させるスライド移動機構、並びに各支持脚26をZ方向にスライド移動させるスライド移動機構により、後述する歩行制御処理の手順に従い、予定採掘区域をX方向およびY方向それぞれに歩行するとともに、採掘装置30をX方向およびY方向に移動させて、所定区画を順次に掘削可能になっている。
【0086】
なお、第三実施形態において、中間フレーム21Mと上下のプラットフォーム21X、21Yとは、ラック&ピニオン機構を介して水平方向への移動が可能な例を示すが、移動機構はこれに限定されず、水平方向への移動が可能な移動機構であれば、種々の移動機構を採用可能である。
例えば、油圧シリンダ方式でスライドさせる移動機構を用いることができる。同様に、各支持脚26は、ラック&ピニオン機構を介してZ方向に相対的スライド移動が可能な例を示すが、これに限定されず、例えば油圧シリンダ方式でスライドさせる移動機構とすることができる。また、油圧駆動に限定されず、電気駆動式としてもよい。
【0087】
ここで、第三実施形態では、採鉱ステーション220の仕様として、全生産能力(Dry SMS)を2,000,000t/年(6,600t/日)とし、密度を3〜5(t/m
3)としたとき、体積として6600/5〜6600/3=1320〜2200m
3を想定し、一台の採鉱ステーション220が掘削する所定領域(区画)の大きさを約10m×10mと決定した。また、採掘装置30は、深さが約20mまで掘削可能な構成を有するものとする。
【0088】
そこで、第三実施形態では、上記生産能力に鑑みて、一台の採鉱ステーション220が、1日に、深さ20mの所定領域を1区画掘削することにする。また、第三実施形態では、採鉱ステーション220を自走式とすることにより、隣接する区画へのプラットフォーム21の移動が短時間で済む。そのため、1日に深さ10mの所定領域を2区画掘削することも考慮する。
【0089】
具体的には、上記第一実施形態に示した、移動機構52および採掘装置30が占める幅を3mとすると、所定領域となる掘削区画の大きさを10m×10mにするには、プラットフォーム21の内側の掘削用領域の寸法を13m×10mに設定する必要がある。また、荷重条件としては、曳航時、吊下げ時および作業時を考慮し、上部プラットフォーム21X、下部プラットフォーム21Yおよび中間フレーム21Mの形状寸法を設定した。
【0090】
上記支持脚26の形状および寸法は、支持脚26の軸方向の全長を30mとしたとき、
図15に支持脚26の横断面を示すように、主に曳航条件を考慮して、ローリング時の荷重条件から、支持脚26の外径Dを1000mmとした。
また、
図12において、曳航時、吊り下げ時および作業時の荷重条件より、上部プラットフォーム21Xのガーダー内側のX方向の長さLxおよびY方向の幅Lyはそれぞれ23mおよび10mとした。また、上部プラットフォーム21Xのガーダー自体の幅Wgおよび厚さDgはそれぞれ1mおよび2mとした。
【0091】
また、同図において、下部プラットフォーム21Yのガーダー内側のX方向の長さLxおよびY方向の幅Lyは、それぞれ13mおよび20mとした。また、下部プラットフォーム21Yのガーダー自体の幅Wgおよび厚さDgは、それぞれ1mおよび2mとした。さらに、中間フレーム21Mは、
図14に示すように、中間フレーム21Mのガーダー内側のX方向の長さLxおよびY方向の幅Lyは、それぞれ13mおよび10mとした。
また、中間フレーム21Mのガーダー自体の幅Wgおよび厚さDgは、両方ともに1mとした。また、
図16に示したラック&ピニオン機構部において、ラックの長さは約10mとした。また、
図17に示したラック&ピニオン機構部において、ラックの長さは、約10mとした。
【0092】
図12に示す平面視において、上部プラットフォーム21X、下部プラットフォーム21Yおよび中間フレーム21Mが重なっている状態での中央部の枠体内側の矩形部寸法は、13m×10mである。上記移動機構52および採掘装置30の幅を3mとしたので、掘削可能な所定区画の大きさは10m×10mとなる。以上の設定寸法のとき、海中に配置されて且つ海底に立設されて、海底鉱床ODに竪穴VHを形成している状態の採鉱ステーション220の海底鉱床ODでの相対サイズのイメージを
図20に示す。なお、同図において符号Cは、海底鉱床ODに存するチムニーのイメージである。
【0093】
さらに、第三実施形態の採鉱ステーション220は、
図11に示すように、上部プラットフォーム21Xに、採鉱ステーション220自身を制御するための基地制御ユニット45を備える。第三実施形態の基地制御ユニット45は、プラットフォーム21の姿勢を検出する傾斜センサを有する。
さらに、第三実施形態では、各支持脚26を駆動するジャッキ機構49には、不図示のトルク検出器が装備されている。各トルク検出器は、対応する各ジャッキ機構49のラック&ピニオン機構のピニオンを駆動する各駆動モータのトルクを検出可能なトルク計である。各トルク検出器は、各駆動モータの随時のモータトルクを検出し、検出したトルク情報を基地制御ユニット45に出力可能になっている。
【0094】
基地制御ユニット45は、コンピュータと、姿勢安定制御処理を実行するためのプログラムとを含む採鉱ステーション自身のコントローラ(制御部)である。基地制御ユニット45は、採鉱ステーション220の歩行制御処理、採鉱ステーション220の採鉱制御処理、および、採鉱ステーション220の姿勢制御、並びにその他必要な処理を実行する。
基地制御ユニット45は、採鉱ステーション220の姿勢制御処理が実行されると、傾斜センサの出力に基づいて、採鉱ステーション220自体の姿勢の不均衡の程度を判定し、ラック&ピニオン機構のピニオンを駆動する各駆動モータの調整により、姿勢安定を維持する姿勢安定制御を行う。
【0095】
また、基地制御ユニット45は、傾斜センサの検出した傾斜情報、および、複数の支持脚26のモータのトルクを検出したモータトルク情報を、海上の曳航船である架設配置用母船2に装備された管理コンピュータに出力する。管理コンピュータは、オペレータに対して、ディスプレイ上に、随時の傾斜情報およびモータトルク情報を表示可能に構成される。
【0096】
次に、第三実施形態の採鉱ステーション220の安定化着座方法について
図21および
図22を適宜参照して説明する。
海上の曳航船である架設配置用母船2から採鉱ステーション220を吊り下げロープで吊り下げて海底に着底させる場合、まず、採鉱ステーション220は、平面視が、
図12に示す着底準備姿勢の状態とされる。オペレータは、
図21(a)に示すように、架設配置用母船2から採鉱ステーション220をロープで吊り降ろす。
【0097】
オペレータは、
図22(a)に示すように、垂下した深度に注意しつつ、海底鉱床ODの所期の位置に採鉱ステーション220を下していく。そして、オペレータは、同図(b)に示すように、複数の支持脚26のうち、少なくとも3脚のモータトルクの応答を検出した時点で吊り下げを停止する。但し、支持脚26の1脚が着座してから、他の3脚が着座する前に予め規定した傾斜角を超えた場合には着座位置を変更する。なお、この吊り下げ操作は、オペレータが管理コンピュータを介して基地制御ユニット45を手動操作してもよいし、管理コンピュータと基地制御ユニット45とにより自動制御してもよい。例えば、採鉱ステーション220の基地制御ユニット45は、吊り下げ操作の終了情報(着座情報)を取得したときに、上記姿勢安定制御を実行する。
【0098】
つまり、基地制御ユニット45は、傾斜センサの姿勢検出情報に基づいて、同図(c)に示すように、採鉱ステーション220の姿勢が水平になるように、着底した支持脚26を伸縮させる。基地制御ユニット45は、モータトルク情報に基づいて、着底してない支持脚26を伸長させ、各支持脚26のモータトルクがほぼ均衡するように制御して着底させる。基地制御ユニット45は、採鉱ステーション220の姿勢が水平であると判断したら、姿勢安定制御の終了情報を架設配置用母船2の管理コンピュータに送信する。
【0099】
架設配置用母船2のオペレータは、管理コンピュータのディスプレイから採鉱ステーション220の状態を監視し、姿勢安定制御の終了情報を確認したら、同図(d)に示すように、吊り下げロープの張力を緩める指令を管理コンピュータから入力する。このとき、吊り下げロープの張力変動により、採鉱ステーション220の姿勢が不安定になるおそれがある。そのため、基地制御ユニット45は、姿勢安定制御を継続して実行する。
【0100】
つまり、基地制御ユニット45は、傾斜センサの姿勢検出情報に基づいて、採鉱ステーション220の姿勢が水平になるように各支持脚26の脚長を調整する。これにより、採鉱ステーション220は、
図26(d)に示す初期着底状態で海底に安定した姿勢で着底できる。以降、オペレータは、吊り下げロープの係合解除装置(不図示)により吊り下げロープの係合を解除し、
図21(b)に示すように、自立した採鉱ステーション220により、海底鉱床ODに竪穴VHを形成して採鉱を開始する。なお、この安定化着座制御を含む管理コンピュータおよび基地制御ユニット45の構成および安定化着座方法は、上述した第一実施形態および第二実施形態においても同様に適用できる。
【0101】
次に、第三実施形態の採鉱ステーション220の自走方法について
図23〜
図33を適宜参照して説明する。ここでは、一例として、
図23に示すように、採鉱ステーション220の自走と掘削とによって、40×40mの海底鉱床ODを採鉱する手順を説明する。なお、以下説明する採鉱ステーション220の自走動作は、上記管理コンピュータの監視下、基地制御ユニット45が実行する所定のプログラムに基づき行われるが、これに限定されず、オペレータのマニュアル操作によって行ってもよい。
【0102】
(手順1)準備工程
採鉱ステーション220は、
図22(d)に示した初期着底状態では、上下のプラットフォーム21X、21Yの相対位置が、
図11および
図12に示した着底準備姿勢において、上部プラットフォーム21Xおよび下部プラットフォーム21Yの全ての支持脚26が着底している。
そのため、基地制御ユニット45は、管理コンピュータから採掘準備命令を受けると、まず、
図24に平面図を示すように、同図(a)の着底準備姿勢から、上部プラットフォーム21Xの全ての支持脚26を一旦離底させ、中間フレーム21Mと下部プラットフォーム21Yを結合した状態で上部プラットフォーム21XをXの正方向に一杯に移動させる。その後、基地制御ユニット45は、上部プラットフォーム21Xの全ての支持脚26を着底させて、同図(b)に示すように、採掘の開始状態とする。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図23に示す第一の区画Aとなる。
【0103】
(手順2)Xの正方向への歩行および掘削
(手順2−1)第一の区画Aにおいて、採鉱ステーション220の基地制御ユニット45は、管理コンピュータから採掘開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域(10m×10m)を採掘する。基地制御ユニット45は、一の区画の採鉱時には、採鉱ステーション220の歩行を停止した状態で、中間フレーム21Mの内側の10×10mの所定領域を、
図7に示した方法で採掘装置30のX方向およびY方向の移動により順次に掘削して採鉱を行っていく(以下同様)。
【0104】
(手順2−2)第一の区画Aでの所期の採鉱を終えたら、基地制御ユニット45は、中間フレーム21Mの内側の所定領域を、
図23に示す第二の区画Bに対応する位置となるように、
図25(a)〜(d)に示すように各部を駆動制御して、
図30に示すようにプラットフォーム21を移動させる。
つまり、第一の区画Aの採鉱を終えた状態では、
図26に示すように、上部プラットフォーム21Xおよび下部プラットフォーム21Yの全ての支持脚26が着底している。
そのため、基地制御ユニット45は、まず、
図27に示すように、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させる。
【0105】
次いで、基地制御ユニット45は、
図28および
図30(b)に示すように、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、基地制御ユニット45は、
図29に示すように、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を下方に伸長してそれぞれ着底させる。これにより、
図30(c)に示すように、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図23に示す第二の区画Bとなる。
【0106】
(手順2−3)第二の区画Bにおいて、採鉱ステーション220の基地制御ユニット45は、管理コンピュータから採掘開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域を採掘する。
(手順2−4)第二の区画Bでの所期の採鉱を終えたら(
図30(c))、基地制御ユニット45は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を離底させ、次いで、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図31(a)に示すように、上部プラットフォーム21XをXの正方向一杯に移動させる。その後、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を着底させる。
【0107】
次いで、基地制御ユニット45は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図31(b)に示すように、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を下方に伸長してそれぞれ着底させる。これにより、
図31(c)に示すように、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図23に示す第三の区画Cとなる。
【0108】
(手順2−5)以下、同様にして、第三の区画Cでの所期の採鉱を終えたら、基地制御ユニット45は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図31(d)に示すように、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。
【0109】
次いで、基地制御ユニット45は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を離底させ、次いで、下部プラットフォーム21YとMFを結合した状態で、
図31(e)に示すように、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させる。これにより、
図31(f)に示すように、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図23に示す第四の区画Dとなる。
(手順2−6)第四の区画Dにおいて、基地制御ユニット45は、管理コンピュータから採掘開始命令を受け、中間フレーム21Mの内側の所定領域を採掘する。
(手順2−7)以下、同様にして、Xの正方向への歩行および掘削では(2−4)〜(2−6)の手順を繰り返す。
【0110】
(手順3)Yの正方向への走行および掘削
次に、前述の(手順1)の(手順2−4)の状態からY方向に移動する手順を説明する。
(手順3−1)
図31(f)に示す状態から、Y方向に採鉱ステーション220を移動するときは、基地制御ユニット45は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図32(a)に示すように、下部プラットフォーム21YをYの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を着底させる。
【0111】
(手順3−2)その後、基地制御ユニット45は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを固定した状態で、
図32(b)に示すように、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21MをYの正方向一杯に移動させる。その後、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を着底させる。
【0112】
(手順3−3)次いで、基地制御ユニット45は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図32(c)に示すように、下部プラットフォーム21YをYの正方向に、下部プラットフォーム21Yの平面中心が上部プラットフォーム21Xおよび中間フレーム21Mの平面中心に一致する位置まで移動させる。
その後、基地制御ユニット45は、下部プラットフォーム21Y4つの支持脚26を着底させる。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図23に示す第五の区画Eとなる。
図33に示すように、第五の区画Eにおいて、基地制御ユニット45は、管理コンピュータから採掘開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域を採掘する。
【0113】
(4) 繰返し
以下、
図33(a)〜(c)に示すように、Xの負方向に移動する場合は、Xの正方向と同様の手順を逆方向に向けて行えばよく、予定採掘区域(40×40m)の掘削終了まで、上述した(手順2)と(手順3)の動作を繰り返し行う。また、X方向の走行に関しては、Xの正方向と負方向の手順を交互に実行すればよい。
【0114】
このように、第三実施形態の採鉱ステーション220によれば、海底鉱床の傾斜や起伏に対応できる上、採鉱ステーション220を自走可能な構成とすることにより、採鉱ステーションの位置替え(リロケーション)を行う支援船である架設配置用母船2を不要または使用を要する状態を大幅に少なくすることができる。そのため、プロジェクトの工期とコストを大幅に減少することができる。
【0115】
なお、上記第一実施形態では、架設配置用母船2は、
図1のように、揚鉱ユニット4および複数の採鉱ステーション20を運搬する大型船舶の例を示したが、これに限定されず、例えば
図34に示すように、小型の架設配置用母船2を用いることができる。
同図の架設配置用母船2は、平面視が矩形枠状の船体を有し、船体の左右が浮体2fとされている。平面視で、船体中央は、矩形状のムーンプール2pとされ、ムーンプール2pを跨ぐようにクレーン11が船体上に跨設されている。
船体の甲板には、居住室2hおよび貯蔵室2sが設けられるとともに、適所にウインチ11wが装備され、ムーンプール2pから採鉱ステーション220を海中に吊り下ろし、および引き揚げ可能になっている。なお、同図(c)の符号DおよびUは、採鉱ステーション220の吊り下ろし、および引き揚げ可能なイメージを示している。
【0116】
なお、この架設配置用母船2の寸法は、上記第三実施形態の採鉱ステーション220を架設配置する上で、全長72m×全幅48m程度とし、ムーンプール2pの寸法を30m×33m程度とすれば好適である。このような小型の架設配置用母船2を用いれば、支援船自体の費用や、海上に停泊させる際の用船費等をより少なくできるため、コストを減少する上でより好ましい。
【0117】
ここで、海底熱水鉱床には、海山の熱水が噴出するチムニー(煙突状の熱水噴出突起)が存在する。そのため、上記各実施形態の採鉱ステーション20、120、220を海底に立設する際、および、上記第二ないし第三実施形態の採鉱ステーション120、220の歩行動作を行う際に、採鉱ステーションとチムニー等の障害物との干渉を防止または抑制する必要がある。そこで、以下、チムニー監視手段を備える採鉱ステーション、および採鉱基地監視装置、並びにチムニー回避方法について説明する。
【0118】
第三実施形態の採鉱ステーション220は、
図35に示すように、上記基地制御ユニット45が、チムニー探知部91を含んで構成されている。チムニー探知部91は、海底鉱床のチムニーを検出するチムニー検出手段である。チムニー探知部91は、超音波送受信部92と、超音波による水中探知で得たエコーに基づいてチムニーを検出する検出部93とを有する。
【0119】
超音波送信部92は、基地側から海底鉱床に向けて超音波を発射し、直ちに受信状態に切り替わり、海底鉱床からの反射波を受信する。検出部94は、超音波の発射時から反射波の受信時までの往復時間を測定し、その往復時間を距離に換算して、採鉱ステーション220からチムニーまでの距離を測定するとともに、海底鉱床の界面状態およびチムニーの有無を探知する。
【0120】
図35に示すチムニー検出手段は、チムニー探知部91に駆動部90が付設されたサーチライト型ソナー(マルチビームソナー)である。チムニー探知部91は、例えばプラットフォーム21の中央の最も高い適所に設けられ、チムニー探知部91が所定角度の視野角で探査を行いつつ、駆動部90によってチムニー探知部91が水平面上で360°回転される。これにより、採鉱ステーション220の全周を探知可能になっている。
なお、チムニー探知部91の設置箇所は、「プラットフォーム21の中央の最も高い適所」に限定されず、所期の探査が可能であれば、採鉱ステーション220の他の位置に設置できる。例えば、プラットフォーム21の鉱床側を向く面にチムニー探知部91を設けてもよい。この場合、プラットフォーム21の鉱床側を向く面から、自身の支持脚26やガイドシェル48を含み、自身下部とその周囲の地形の高さを測定して鉱床の凹凸を検知することができる。
【0121】
なお、チムニー検出手段は、サーチライト型ソナーに限らず、例えばスキャニング型ソナーを用いてもよい。スキャニング型ソナーであれば、一度に採鉱ステーション220の360度全周を探知できる。また、第三実施形態の採鉱ステーション220は、チムニー検出手段として、超音波を用いたチムニー探知部91を備える例を説明したが、これに限らず、チムニー検出手段として、光を用いてチムニーを検出してもよい。例えば、基地制御ユニット45が、カメラまたは画像センサで海底鉱床のチムニーを検出する画像処理部を有する構成とすることができる。
【0122】
さらに、第三実施形態の採鉱ステーション220は、基地制御ユニット45が、検出したチムニーを避ける回避制御を実行するように構成されている。
具体的には、
図35に示すように、基地制御ユニット45は、上述した各移動機構を駆動するモータのトルクをそれぞれのトルク検出器52x、44y、47z、71r、9p、Mx、My、Mz(49)の検出値からを取得することによって監視可能に構成されている。また、基地制御ユニット45は、チムニー回避処理のプログラムを実行可能に構成されている。
【0123】
なお、同図において、符号52xは、X方向用移動機構52のモータに付設されるトルク検出器、符号44yは、Y方向用移動機構44のモータに付設されるトルク検出器、符号47zは、スライド移動機構47のモータに付設されるトルク検出器、符号71rは、ハウジング部71の回転駆動機構に付設されるトルク検出器、符号9pは、高圧水供給管9の高圧水供給ポンプの駆動部に付設されるトルク検出器、符号Mx、My、Mz(49)それぞれは、上記X駆動モータMx、Y駆動モータMyおよびジャッキ機構49のモータにそれぞれ付設されるトルク検出器である。
【0124】
詳しくは、基地制御ユニット45でチムニー回避処理が実行されると、
図36に示すように、ステップS21に移行し、ステップS21では、X駆動モータMxおよびY駆動モータMyに付設されたトルク検出器に基づきモータトルクを確認する。トルクが正常値の範囲であれば(Yes)続くステップS22に移行し、トルクが異常値、つまり、監視するトルクが所定を超えたときは(No)、対応する移動機構がチムニーに接触したと判定してステップS26に移行する。
ステップS22では、採鉱基地監視装置80からの回避命令(例えばオペレータによるマニュアル操作)の有無を確認し、回避命令が有れば(Yes)処理を戻して回避命令に応じた制御を行い、回避命令が無ければ(No)、続くステップS23に移行する。
【0125】
ステップS23では、チムニー探知部91が探知したエコー画像情報を取得し、続くステップS24では、チムニー探知部91が探知したチムニーの位置情報を取得してステップS25に移行する。ステップS25では、採鉱ステーション220自身の位置情報とチムニーの位置情報とを関連付けする処理を行う。この関連付け処理では、採鉱ステーション220自身の各部の位置情報とチムニーの位置情報相互の界面情報を比較して相対距離を算出し、所定の閾値よりも相対距離が近い場合には障害物と判定する。
例えばプラットフォーム21の鉱床側を向く面にチムニー探知部91が装備されている場合は、自身の支持脚26やガイドシェル48の位置情報から、プラットフォーム21の設定高さとの高低差を判断可能であり、さらに、採鉱ステーション220の移動方向から障害物を判定できる。
【0126】
続くステップS26では、回避制御が実行される。回避制御は、検出したチムニーのうち、障害物と判定したチムニーを避けるための処理である。例えば、ステップS21から移行した場合、障害物に接触時の回避対応として、監視するトルクが所定を超えたと判定されたいずれかの駆動モータMx、Myに対し、そのトルクが正常値の範囲に戻るまで、対応するモータを逆転駆動する制御を行う。
【0127】
また、例えば上記予定採掘区域(40×40m)の掘削を行っている場合であれば、予定採掘区域の区画内に障害物と判定したチムニーがあるときは、障害物に非接触時の回避対応として、該当する区画を全体的に迂回する迂回プログラムを実行し、障害物と判定したチムニーを避ける。また、障害物に非接触時の回避対応として、採鉱ステーション220自身の歩行処理を中断または低速駆動にて制御し、ステップS27に移行して、オペレータの指示を待つように構成してもよい。
【0128】
非接触時の回避対応として、オペレータの指示を待つ場合、ステップS27に移行し、障害物と判定したチムニーの位置情報を含む探知情報を採鉱基地監視装置80に出力する。これにより、採鉱基地監視装置80で監視中のオペレータは、採鉱基地監視装置80のディスプレイの画像表示および界面情報並びに相対距離の情報等を勘案して、採鉱ステーション220を適切にマニュアル操作できる。
ここで、非接触時の回避対応をオペレータが行う場合、例えばプラットフォーム21の底面のチムニー探知部91により、採鉱ステーション220の支持脚26やガイドシェル48の位置情報を含む脚底情報から地形の高さを測定して鉱床の凹凸を検知するとともに、超音波画像、およびカメラによる撮像画像を参照してチムニーをマニュアル回避することが好ましい。
【0129】
その理由は、一般に、水深2kmの海底基地を海上からのソナーで計測したときの誤差は20m程度(水深の1%)であり、採鉱ステーション220の想定サイズは20m程度である。一方、採鉱ステーション220に搭載したチムニー探知部91はチムニーを検出するに充分な分解能を有する。そのため、海上と海底で同時に計測した画像を単純に照合するのは補正処理が困難な場合があるからである。また、あらかじめ海底近くで得た詳細画像(地図)と海底計測画像との照合も、地形に特徴がないと単純には照合が困難な場合があるからである。
【0130】
なお、採鉱ステーション220の位置・方位の計測は、海上基地となる採鉱母船1または架設配置用母船2と採鉱ステーション220とをつなぐ超音波、採鉱ステーション220に装備したジャイロ、さらに深度計を搭載して精度を上げることが好ましい。または、海上基地から採鉱ステーション220を投入する際に、GPSで投入位置を計測し、海底に着座するまでの経路を採鉱ステーション220に搭載された慣性センサで計測することが好ましい。海底着座開始地点から海底を歩行する移動工程では、海底基地のメカニカルな移動量、移動方向から積算することが好ましい。
続くステップS28では、探知情報を再取得するか否かが判定される。つまり、海上のオペレータから、探知情報を再取得する命令が入力されていればステップS21に処理を戻し、そうでなければ処理を主制御処理に戻す。
【0131】
次に、採鉱基地監視装置について
図37および
図38を適宜参照しつつ説明する。
図37に示す採鉱基地監視装置80は、採鉱ステーション220を監視するために海上基地となる採鉱母船1または架設配置用母船2に装備される上記管理コンピュータが対応する。なお、本実施形態では、採鉱基地監視装置80を海上基地に装備した例を説明するが、これに限定されず、採鉱基地監視装置80を陸上基地に装備し、監視するオペレータは海上基地でなく、離れた陸上基地において監視することもできる。
【0132】
図37に示すように、第三実施形態の採鉱基地監視装置80は、制御部81、表示部86、入力部87および海中探知装置82を備える採鉱ステーション位置監視手段であって、また、チムニー監視手段でもある。制御部81は、チムニー監視処理に必要なソフトウェアと、そのソフトウェアによる情報処理を具体的に実行するハードウェア資源であるコンピュータとを含む。制御部81は、アンビリカルケーブル8を介して基地制御ユニット45と通信可能に接続されるとともに、ディスプレイ等の表示部86およびキーボード等の入力部87に対し必要なデータ通信が可能に信号線を介して接続されている。表示部86は、採鉱ステーション220の位置情報およびチムニーのエコー画像を監視画面上に表示可能に構成される。
【0133】
海中探知装置82は、採鉱ステーション220に装備される超音波送信器83と、採鉱母船1または架設配置用母船2の船底部の三箇所に装備される超音波受信器84、探知部85とから構成され、例えば、SSBL(スーパー・ショート・ベース・ライン)と同様の技術によって、採鉱ステーションの位置情報を得ることができる。
【0134】
チムニー監視を行う場合、オペレータが採鉱基地監視装置80の入力部87から所定の入力操作を行うとチムニー監視処理が実行され、採鉱基地監視装置80の制御部81は、
図38に示すように、まず、ステップS11に移行し、コンピュータの記憶装置等に予め格納されている海底地図データベースから、対応海域の海底地図情報を読み込んでステップS12に移行する。続くステップS12〜S13では、上記基地制御ユニット45のチムニー探知部91で検出されたチムニーのエコー画像情報、および、チムニーの位置情報を取得する(チムニー情報取得部に対応)。
【0135】
続くステップS14では、基地制御ユニット45から取得した採鉱ステーション220の姿勢等の情報を含む海中採鉱基地の位置情報を取得する。なお、基地制御ユニット45は、三次元ジャイロセンサを備え、架設配置用母船2から採鉱ステーション220が吊り降ろされたときの初期位置情報を基準として、その後の採鉱ステーション220の相対的な位置変化に基づき、海中での採鉱ステーション220の位置情報を随時に生成することができる。
【0136】
そして、ステップS15では、上記取得したチムニーの画像情報および位置情報、並びに採鉱ステーション220の位置情報に基づいて、対応海域の海底地図情報との関連付け処理を行う。これにより、採鉱ステーション220の位置情報、および、チムニーのエコー画像とそのチムニーの位置情報が対応海域の海底地図情報と関連付けられる。続くステップS16では、関連付けられたデータに基づく画像を、監視画面である表示部86に重畳表示させる。
【0137】
これにより、オペレータは、表示部86に重畳表示された画像によって、対応海域の海底地図に対する、海中での採鉱ステーション220の位置およびそのイメージ画像、並びに、チムニーの位置およびそのイメージ画像を目視確認により監視可能になっている(表示合成部に対応)。制御部81は、採鉱ステーション220の移動にあわせて、表示部86に重畳表示している海底地図およびチムニーのエコー画像を移動させる。
これにより、採鉱ステーション220が歩行中の随時のイメージ画像を常に表示部86に表示することができる。なお、チムニーの位置情報と採鉱ステーション220の位置情報は、緯度情報および経度情報を含むものであり、また、チムニーと採鉱ステーション220の深度情報を含むものである。これにより、より精度の高い探査が可能となる。また、界面状態を正確に判定する上で好適である。
【0138】
そして、続くステップS17では、障害判定処理を実行し、障害判定処理では、上記関連付けられたチムニーの位置情報と採鉱ステーション220の位置情報とから、採鉱ステーション220への障害となるチムニーを判定する(判定部に対応)。障害判定処理では、表示部86の監視画面上に表示される複数のチムニーのうち、例えば、採鉱ステーション220の移動方向に基づいて、最も採鉱ステーション220に近いチムニーを障害となるチムニーと判定する。
【0139】
障害となるチムニーと判定された場合、例えば、当該チムニーの表示画像を、通常色(例えば青)から警戒色(例えば赤)に替えたり、他のチムニーよりも明るく表示したり、あるいは点滅させたりするなどにより、オペレータに対する注意を喚起させる注意喚起表示を行う。
続くステップS18では、オペレータによる入力部87からの再探査要求の入力操作の有無を見て、再探査要求があれば(Yes)ステップS12に処理を戻し、そうでなければ(No)ステップS14に処理を戻し、採鉱ステーション220の位置情報以外の情報を引き続き用いる。
【0140】
次に、チムニー回避方法について
図39、
図40を参照しつつ説明する。
上述したように、第三実施形態では、作業装置である採鉱ステーション220は、基地制御ユニット45がチムニー探知部91を含んで構成され、また、採鉱母船1または架設配置用母船2は、採鉱基地監視装置80を備えるので、第三実施形態の構成であれば、障害物となるチムニーを回避できる。
つまり、採鉱ステーション220は、上述したように、基地制御ユニット45は、検出したチムニーを避ける回避制御を実行し、チムニー探知部91が、超音波の送受信による水中探知で得たエコーに基づいて海底鉱床のチムニーを検出し(チムニー検出工程)、検出されたチムニーの位置情報に基づいて、障害物と判定したチムニーを避ける回避制御が実行されるので、障害物となるチムニーとの干渉を回避できる(干渉回避工程)。
【0141】
なお、ステップS26の回避制御で説明したように、予定採掘区域の区画内に障害物と判定したチムニーがあるときに、該当する区画を全体的に迂回する迂回プログラムを実行して障害物と判定したチムニーを避けるのであれば、
図39に事前回避のイメージを示すように、障害物となるチムニーとの干渉を事前に回避できる。また、採鉱ステーション220自身の歩行処理を中断して、オペレータの指示を待つ場合であっても、障害物となるチムニーとの干渉を事前に回避できる。
【0142】
これに対し、ステップS26の回避制御で説明したように、基地制御ユニット45は、歩行に係る駆動モータMx、My等の駆動機構のモータトルクを監視しているので、なんらかの理由で事前回避ができなかったときであっても、障害物となるチムニーとの干渉を事後的に自動で回避できる。換言すれば、オペレータの指示によらない自動制御での採掘を行う場合や、万一、オペレータがマニュアル操作を誤って、採鉱ステーション220がチムニー(障害物)に接触した場合であっても、チムニーとの過剰な衝突を防止または抑制できる。
【0143】
つまり、
図40に事後的回避のイメージを示すように、いま、同図において、下部プラットフォーム21YがX方向に移動中に(符号Mを付した矢印は移動のイメージ)、チムニーCに支持脚26が接触した場合を想定する。
このときは、下部プラットフォーム21Yを駆動するY駆動モータMyに異常トルクが生じることになる。そのため、Y駆動モータMyのトルク検出器は、ただちに異常値を出力する。これにより、基地制御ユニット45は、Y駆動モータMyに対応する移動機構がチムニーに接触したと判定し(
図36のステップS21の「No」)、回避制御により、Y駆動モータMyのトルクが正常値の範囲に戻るまで、対応するY駆動モータMyを逆転駆動できる(
図36のステップS26)。よって、チムニーに接触した場合であっても、チムニーとの過剰な衝突を防止または抑制できる。
【0144】
さらに、採鉱母船1または架設配置用母船2のオペレータは、採鉱基地監視装置80にチムニー監視処理を実行させる。これにより、採鉱基地監視装置80は、チムニー探知部91の超音波の送受信による水中探知で得たエコーに基づいて海底鉱床のチムニーを検出し(チムニー検出工程)、監視画面である表示部86に海底地図を表示するとともに、障害判定の表示も含め、採鉱ステーション220およびチムニーのエコー画像を重畳表示させることができる。
よって、オペレータは、海中の採鉱ステーション220の状態を随時に監視し、検出されたチムニーの位置情報に基づいて、採鉱ステーション220にチムニーが干渉するおそれがあると判断したら、マニュアル操作によって、障害物となるチムニーとの干渉を事前に回避できる(干渉回避工程)。