(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空の長尺形状を有し、長手方向に対し垂直な断面の内周の形状において、前記断面の外周に内接する、角数が5以上の正多角形の各頂点に対応して、前記正多角形の中心側に突出する複数の突出部を有するチューブと、
前記チューブと射出成形で一体形成されたフランジと、
を有する、血圧測定用カフチューブ。
前記長尺形状の一方の端から前記長手方向に所定の距離までの範囲は、前記断面の内周の形状において前記突出部を有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の血圧測定用カフチューブ。
前記長尺形状の前記一方の端に、血圧測定装置の本体に接続された本体側チューブの端に設けられた中継用コネクターと連結されることにより前記本体側チューブと導通可能な中継部をさらに有する、請求項4または5のいずれか一項に記載の血圧測定用カフチューブ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る血圧測定用カフチューブおよび血圧測定用カフについて詳細に説明する。図面における寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る血圧測定用カフおよび血圧測定用カフチューブを用いた血圧測定装置のブロック図である。血圧測定装置100は、たとえばオシロメトリック法により血圧の測定を実行する血圧測定装置である。
【0014】
血圧測定装置100は、制御部110、カフ120、チューブ130、ポンプ140、制御弁150、圧力センサ160、および表示部170を有する。チューブ130は、血圧測定用カフチューブを構成する。カフ120およびチューブ130は、血圧測定用カフを構成する。
【0015】
制御部110、ポンプ140、制御弁150、圧力センサ160、および表示部170は、血圧測定装置100の装置本体に含まれ得る。装置本体のコネクターにチューブ130が接続されることにより、装置本体とカフ120とがチューブ130を介して接続される。
【0016】
図2は、カフの構造を示す斜視図である。
【0017】
カフ120は、本体121、空気袋122、チューブ130、ならびに面ファスナーを構成するフック面123およびループ面124を有する。
【0018】
カフ120は、血圧測定の際、たとえば患者の上腕部に本体121を巻回させてフック面123とループ面124とを結着させることにより、患者に装着できる。以下、説明を簡単にするため、カフ120の患者への装着は、患者の上腕部になされるものとして説明する。
【0019】
カフ120の本体121は、ポリエステル、またはナイロンなどの合成樹脂からなり得る。
【0020】
空気袋122は、たとえば本体121の一部を二重にして周囲を融着することにより密封された内部空間を形成することで構成され得る。
【0021】
チューブ130は、中空の長尺形状を有し、弾性体の材料からなる。チューブ130は、たとえばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、またはポリプロピレンからなり得る。チューブ130は、後述するように、長手方向に対し垂直な断面(以下、「垂直断面」と称する)の内周の形状において、垂直断面の外周に内接する、角数が5以上の正多角形の各頂点に対応して、正多角形の中心側に突出する複数の突出部を有する。なお、前記正多角形は、外周に内接することは必須ではない。
【0022】
チューブ130は、空気袋122とチューブ130の空気流路134とが導通するように、空気袋122と連結される。チューブ130の一方の先端には、チューブ130と一体形成されたフランジ132が周設され得る。フランジ132は、たとえば、チューブ130のまわりに庇のように突出している鍔状の形状を有し得る。空気袋122に設けた小開口部から、空気袋122の内部空間にチューブ130の先端のフランジ132を挿入させた状態で、フランジ132を小開口部の周辺に融着させる。これにより、チューブ130の空気流路134と空気袋122の内部空間とが導通可能に連結されることで、チューブ130と空気袋122とが連結される。
【0023】
なお、フランジ132はチューブ130と一体形成されなくてもよい。すなわち、チューブ130とは別に、たとえば、一端にフランジが周設された、ナイロン(登録商標)からなる比較的短い管状部品を製造し、当該フランジを、空気袋122に設けた小開口部に挿入させた状態で当該フランジを小開口部の周辺に融着させる。そして、当該管状部品の他端をチューブ130の内腔に挿入し、チューブ130に融着させることでチューブ130と空気袋122とを連結させてもよい。
【0024】
再び
図1を参照すると、ポンプ140は、チューブ130を介して患者の上腕部に装着されたカフ120の空気袋122に空気を送り込むことで、カフ120が装着された上腕部のカフを加圧する。
【0025】
制御弁150は、カフ120の空気袋122から空気を排出または封止するために開閉される。
【0026】
圧力センサ160は、カフ120の空気袋122内の空気の圧力(以下、「カフ内圧」と称する)を検知し、検知結果を制御部110へ送信する。圧力センサ160は、たとえば、ピエゾ抵抗型の圧力センサであり、検知したカフ内圧を電気信号として制御部110へ送信する。
【0027】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、プログラム、およびRAM(Randam Accecc Memory)により構成され得る。制御部110は、プログラムにしたがい、RAMを作業領域としてCPUにより各種演算処理を実行するとともに、血圧測定装置100を構成する各要素を制御する。
【0028】
制御部110は、ポンプ140によりカフを加圧する際、圧力センサ160により検知されたカフ内圧に基づいて患者の上腕部に印加されているカフ圧を算出する。制御部110は、算出されたカフ圧に基づいて、ポンプ140からカフ120に送り込む空気の流量を制御する。制御部110は、カフ圧が患者の収縮期血圧よりも高く設定された加圧目標値に達するまで、カフを加圧させる。
【0029】
制御部110は、制御弁150を制御することでカフ圧を減圧する際、圧力センサ160により検知されたカフ内圧に基づいて患者の上腕部に印加されているカフの減圧幅を算出する。制御部110は、算出されたカフの減圧幅に基づいて、制御弁150の制御によりカフ120から排気する空気の流量を制御する。また、制御部110は、圧力センサ160により検知されたカフ内圧に基づいて、患者の脈波の振幅を算出し、さらに、脈波の振幅の変化に基づいて収縮期血圧および拡張期血圧を算出する。
【0030】
表示部170は、たとえば液晶ディスプレーにより構成され、算出された収縮期血圧および拡張期血圧を表示する。
【0031】
図3は、本発明の一の実施形態に係るチューブの長手方向に対し平行な断面の断面図と、チューブの両端の側面図である。
図4は、
図3の垂直断面A−A’におけるチューブの断面図である。
【0032】
チューブ130は、垂直断面A−A’において、内周に複数の突出部135を有する範囲である異形断面部131を有する。また、チューブ130は、一方の端から長手方向に所定の距離までの範囲に、垂直断面の内周の形状に突出部を有しないストレート部133を有し得る。これにより、装置本体のコネクターとの接続のために、コネクターに当該突出部135に対応する窪みを設け、当該窪みに当該突出部をあわせてチューブをコネクターに差し込むといった工程の複雑化・煩雑化を防止し、通常のチューブと同様の接続性を維持できる。所定の距離は、装置本体のコネクターにチューブ130が接続されるために十分な距離とすることができる。
【0033】
異形断面部131は、チューブ130の垂直断面における内周の形状において、円状の外周に内接する角数が5以上の正多角形RHXの各頂点に対応して、正多角形の中心側に突出する複数の突出部135を有する。すなわち、異形断面部131は、空気流路134を囲む内壁に沿って、チューブ130の軸心に対し所定の角度(正多角形RHXが正6角形の場合は60度)ごとに壁厚が周期的に増大する構造を有する。
【0034】
チューブ130の垂直断面における内周の形状において設けられる複数の突出部135は、外周に内接する正6角形の各頂点に対応して設けられることが望ましい。
【0035】
チューブ130は、たとえばポリ塩化ビニルを射出成型することにより製造される。具体的には、円柱状の長尺形状にポリ塩化ビニルを成型するための金型のキャビティ内にポリ塩化ビニルを射出することで充填する。その際、キャビティ内に充填されたポリ塩化ビニルが貫通されるように、当該長尺形状を中空にするための長尺状のピンがキャビティの中央に配置される。そして、冷却工程を経た後、金型を離型し、ピンを金型による成型品から引き抜く。ピンの表面には、チューブ130の垂直断面において複数の突出部135を形成するための直線状の窪みが設けられている。なお、ストレート部133を設ける場合は、一方の端から長手方向に所定の距離までの範囲において、チューブ130の垂直断面において複数の突出部135を形成するための直線状の窪みがピンの表面に設けられていない。
【0036】
図5は、本発明の他の実施形態に係るチューブの異形断面部における断面図である。
【0037】
図5に示すチューブ130は、チューブ130の垂直断面における内周の形状において、外周に内接する角数が5以上の正多角形RHXの各頂点に対応して、正多角形の中心側に突出する複数の突出部135を有する点で
図4に示すチューブ130と共通する。しかし、
図5に示すチューブ130は、チューブ130の垂直断面における内周の形状が、正多角形RHXの角数と同じ角数の他の正多角形RHX’の各辺にそれぞれ突出部135を有する形状である点で
図4に示すチューブ130と異なる。
図5に示すチューブ130においては、突出部135の形状が、チューブ130の垂直断面における内周の形状において、正多角形RHXの角数と同じ角数の他の正多角形RHX’の各辺において半円状に突出する形状を有し得る。
【0038】
図6は、チューブを折り曲げた状態を示す説明図である。
【0039】
チューブ130は、異形断面部131の上記構造により、180度折り曲げられても、チューブ130が閉塞せず、矢印で示すように空気が流れる。これは、チューブ130の垂直断面において複数の突出部135が設けられていることで、チューブが折り曲げられたときのチューブ内の空気が導通可能な流路の面積が確保されるからである。
【0040】
さらに、異形断面部131の上記構造により、折り曲げられる方向によらず、チューブ130が閉塞せずに空気が流れる。これは、発明者による鋭意努力により、次のことが確認されたことで、突出部135の数を、角数が5以上の正多角形RHXの頂点に対応して5以上としたことによる。すなわち、チューブ130の折り曲げ方向による閉塞の片寄りが、チューブ130の垂直断面の外周に内接する正多角形RHXの頂点に対応して設けられた、垂直断面の内周おける突出部135の数に依存する。そして、突出部135の数を、角数が5以上の正多角形RHXの頂点に対応して5以上にすることで、当該閉塞の片寄りが生じない。一方、角数が5未満の正多角形RHXの頂点に対応して突出部135を設けた場合は閉塞の片寄りが生じる。
【0041】
この原因としては次のことが考えられる。すなわち、角数が5未満の正多角形RHXの頂点に対応して突出部135を設けた場合は、チューブが折り曲げられる際、変形しやすい部分へ力が逃げることでチューブのねじれが生じ、かつねじれの程度が折り曲げ方向に依存する。チューブのねじれによりチューブが閉塞しやすくなるため、ねじれの程度が比較的大きくなる方向に折り曲げられた場合、チューブが閉塞する。一方、角数が5以上の正多角形RHXの頂点に対応して突出部135を設けた場合は、変形しやすい部分へ力が逃げることで生じるチューブのねじれが抑制される。これにより、折り曲げ方向による閉塞の片寄りを低減し、折り曲げられる方向によらずにチューブの閉塞が防止される。
【0042】
さらに、角数が5未満の正多角形RHXの頂点に対応して突出部135を設けた場合は、折り曲げを繰り返すと、折り曲げた際のチューブ130のねじれにより、特定の方向に折り曲がりやすくなるという癖がチューブ130につく。そして、このような癖がつくことでチューブ130が閉塞しやすくなる。角数が5未満の正多角形RHXの頂点に対応して突出部135を設けることにより、折り曲げによるねじれが抑制されるため、チューブにこのような癖がつくことを防止できる。
【0043】
図7は、チューブのストレート部の端に中継部が設けられたチューブの構成を示す説明図である。
図7においては、血圧測定装置100の装置本体、装置本体に接続された本体側チューブ180、および本体側チューブ180の端に設けられた中継用コネクター181が併せて示されている。
【0044】
チューブ130は、ストレート部133の端に、中継部136を有する。中継部136は、本体側チューブ180の端に設けられた中継用コネクター181と連結されることにより本体側チューブ180とチューブ130とを導通させる。
【0045】
中継部136と中継用コネクター181とは、たとえば、中継部136および中継用コネクター181にそれぞれ凸構造および凹構造を設け、当該凸構造が当該凹構造に差し込まれることで連結され得る。また、中継部136および中継用コネクター181には、両者が連結された状態で、チューブ130の空気流路134と本体側チューブ180の空気流路182とを導通させるための貫通穴137および貫通穴183がそれぞれ設けられ得る。
【0046】
なお、中継部136および中継用コネクター181の構成は上記構成に限定されない。たとえば、中継部136に凹構造が設けられ、中継用コネクター181に凸構造が設けられてもよい。
【0047】
本体側チューブ180は、チューブ130のストレート部133と同様に、垂直断面の内周の形状を円形とすることが望ましい。
【0048】
中継部136には差し込み部138が設けられ、差し込み部138がチューブ130のストレート部133の端に差し込まれ得る。これにより、チューブ130のストレート部133の端に中継部が設けられ得る。
【0049】
中継部136は、チューブ130と一体形成され得る。すなわち、中継部136は、チューブ130と同じ素材により、チューブ130の成型と同時に成型され得る。 本実施形態は以下の効果を奏する。
【0050】
チューブの断面の内周形状において、当該断面の外周形状に内接する、角数が5以上の正多角形の頂点に対応して突出する複数の突出部を設ける。これにより、チューブが折り曲げられる際、変形しやすい部分へ力が逃げることで生じるチューブのねじれが抑制されるため、折り曲げ方向による閉塞の片寄りを低減し、折り曲げられる方向によらずにチューブの閉塞を防止できる。
【0051】
さらに、チューブの断面の内周形状を、当該外周形状に内接する正多角形の角数と同じ角数の他の正多角形の各辺にそれぞれ突出部を有する形状とする。これにより、折り曲げ方向による閉塞の片寄りを効果的に低減でき、折り曲げられる方向によらずにチューブの閉塞を効果的に防止できる。
【0052】
さらに、断面の内周の形状において、突出部の形状を、当該他の正多角形の各辺において半円状に突出する形状とする。これにより、折り曲げられる方向によらずに、空気の流通断面を十分確保できるため、折り曲げによるチューブの閉塞の防止効果を向上できる。
【0053】
さらに、チューブの一方の端から長手方向に所定の距離までの範囲は、断面の内周の形状において突出部を有しない。これにより、装置本体のコネクターとの接続のために、コネクターに当該突出部に対応する窪みを設け、さらに当該窪みに当該突出部をあわせてチューブをコネクターに差し込むといった工程の複雑化・煩雑化を防止し、通常のチューブと同様の接続性を維持できる。
【0054】
さらに、長尺形状の他方の端に、鍔状に周設されたフランジを有する。これにより、フランジを有する部品を別途製造して当該部品とチューブとを接続する必要がないため、コスト削減を実現できる。
【0055】
さらに、チューブの断面の内周形状において設けられる複数の突出部を、当該断面の外周形状に内接する正6角形の頂点に対応させて設ける。これにより、チューブが折り曲げられたときのチューブ内の空気が導通可能な流路の面積をより大きくすることができるため、より確実にチューブの折り曲げによる閉塞を防止できる。
【0056】
さらに、長尺形状の断面の内周の形状において突出部を有しない部分の端に、血圧測定装置の本体に接続された本体側チューブの端に設けられた中継用コネクターと連結されることにより本体側チューブと導通可能な中継部を有する。これにより、チューブを血圧測定装置の本体に接続された本体側チューブと容易かつ空気漏れを生じさせることなく接続できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態に係る血圧測定用カフチューブおよび血圧測定用カフについて詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0058】
たとえば、上述した実施形態においては、カフを患者の上腕部に装着するものとして説明したが、カフは上腕部以外に装着されてもよい。たとえば、カフは、大腿部や下腿部に装着されてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態においては、チューブの一方の先端にフランジが鍔状に周設され、鍔状のフランジを空気袋の小開口部の周辺に融着させている。しかし、フランジが周設されていないチューブを用い、チューブの一方の先端を熱により変形させて鍔状のフランジを形成するとともに、形成されたフランジを空気袋の小開口部の周辺に融着させてもよい。
【0060】
また、血圧測定装置の装置本体は、血圧の測定値を送信するための送信機能を有する送信機であってもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、チューブの断面の外周に内接する角数が5以上の正多角形としたが、発明の効果が得られるならば、略正多角形も権利範囲に含まれる。