(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリウレタン樹脂シートが、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、カーボンブラック及びシリカからなる群から選択されるフィラーを0.1〜30質量部の割合で含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
前記ポリウレタン樹脂シートに含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり70.0mg以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
前記ポリウレタン樹脂シートに含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり35.0mg以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
前記ポリウレタン樹脂含有溶液が、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、カーボンブラック及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つのフィラーを0.1〜30質量部の割合で含む、請求項7又は8に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、湿式成膜されたポリウレタン樹脂シートを含む研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂シートは研磨面を有し、且つ前記ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値である硬度成分量が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり100mg以下であることを特徴とする。
【0011】
<ポリウレタン樹脂シート>
本明細書及び特許請求の範囲において、湿式成膜されたポリウレタン樹脂シートとは、成膜基材上に塗布したポリウレタン樹脂及び溶媒を含む溶液を、湿式成膜法により湿式凝固して形成された樹脂シートをいう。湿式成膜されたポリウレタン樹脂シートは、複数の涙形状気泡を有する。涙形状気泡とは、湿式法で成形される成形体に含まれる気泡形状(異方性があり、研磨パッドの研磨表面から底部に向けて径が大きい構造を有する)を意味する概念であり、乾式成膜法で成形される成形体に存在する通常の気泡形状(等方性があり、球状、楕円状、あるいはこれらに近い形状である)と区別するために用いられる。従って、「湿式成膜されたポリウレタン樹脂シート」なる表現は、「複数の涙形状気泡を有するポリウレタン樹脂シート」などと表現することもできる。
本発明のポリウレタン樹脂シートは、被研磨物を研磨するための研磨面を有する。
【0012】
本明細書において、パッド屑とは、研磨時にポリウレタン樹脂シートと被研磨物との摩擦によりポリウレタン樹脂シートが千切れて発生したものをいう。
本明細書において、有機残渣とは、研磨後に被研磨物上に見られるパッド屑や砥粒以外の凸状の有機物をいう。有機残渣の例としては、研磨パッド中に含まれる界面活性剤などの成分由来の石鹸カスなどの異物や、スラリー中の成分由来の石鹸カスなどの異物などが挙げられる。
【0013】
<硬度成分量>
本明細書及び特許請求の範囲において、硬度成分とは、カルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムをいう。
本明細書及び特許請求の範囲おいて、カルシウム塩由来のカルシウムは、カルシウム単体からなる金属と区別するために用いられる概念であり、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩を構成しているカルシウム(カルシウムイオン)を意味する。
本明細書及び特許請求の範囲において、マグネシウム塩由来のマグネシウムは、マグネシウム単体からなる金属と区別するために用いられる概念であり、酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩を構成しているマグネシウム(マグネシウムイオン)を意味する。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの量(合計量)を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値(硬度成分量)が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり100mg以下である。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、硬度成分量とは、水の硬度の算出方法と同様に、カルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムの量を、当該カルシウム及びマグネシウムの合計と同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値をいい、下記(1)の式にて算出される。
硬度成分量(mg/kg)=Ca含有量(mg/kg)×2.496+Mg含有量(mg/kg)×4.119 ・・・(1)
なお、上記式中の数値「2.496」は、炭酸カルシウムの分子量/カルシウムの分子量により算出される値であり、数値「4.119」は、炭酸カルシウムの分子量/マグネシウムの分子量により算出される値である。
【0015】
ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値である硬度成分量は、80mg/kg以下であることが好ましく、70mg/kg以下であることがより好ましく、60mg/kg以下であることがさらにより好ましく、50mg/kg以下であることがさらにより好ましく、40mg/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、硬度成分量は、0mg/kg以上であってもよく、1.0mg/kg以上であってもよく、5.0mg/kg以上であってもよく、10mg/kg以上であってもよい。硬度成分量が上記範囲内であると、有機残渣の被研磨物への付着を十分に抑制することができる。
本発明において、硬度成分量が有機残渣の被研磨物への付着量に影響を及ぼす理由は必ずしも明らかではないが、ポリウレタン樹脂シート中に硬度成分が存在すると、硬度成分が湿式研磨パッド中の界面活性剤やスラリー中の界面活性剤などに結合し、水に不溶で粘性を有する石鹸カスのようなもの(有機残渣の1種)を形成してしまうためではないかと推測される。この石鹸カスが被研磨物に付着する量が増えるほど、被研磨物の凸状欠陥が増大することになる。
本発明の研磨パッドは、硬度成分量が少ないため、石鹸カスの生成が抑えられ、これにより被研磨物に付着する有機残渣の量を低減することができるのではないかと推測される。
【0016】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計量が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり1.0×10
-3mol以下であることが好ましく、8.0×10
-4mol/kg以下であることがより好ましく、7.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、6.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、5.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、4.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、カルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計量は、0mol/kg以上であってもよく、0.1×10
-4mol/kg以上であってもよく、0.5×10
-4mol/kg以上であってもよく、1.0×10
-4mol/kg以上であってもよい。カルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計量が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣の量を低減することができる。
【0017】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり70.0mg以下であることが好ましい。カルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値は、60.0mg/kg以下であることがより好ましく、50.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、40.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、30.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、20.0mg/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、例えば、カルシウムの量は、0mg/kg以上であってもよく、0.1mg/kg以上であってもよく、0.5mg/kg以上であってもよく、1.0mg/kg以上であってもよい。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり7.0×10
-4mol以下であることが好ましい。カルシウムの量は、6.0×10
-4mol/kg以下であることがより好ましく、5.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、4.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、3.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、2.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、例えば、カルシウムの量は、0mol/kg以上であってもよく、0.1×10
-5mol/kg以上であってもよく、0.5×10
-5mol/kg以上であってもよく、1.0×10
-5mol/kg以上であってもよい。
【0018】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり35.0mg以下であることが好ましい。マグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値は、30.0mg/kg以下であることがより好ましく、25.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、20.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、15.0mg/kg以下であることがさらにより好ましく、10.0mg/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、例えば、マグネシウムの量は、0mg/kg以上であってもよく、0.1mg/kg以上であってもよく、0.3mg/kg以上であってもよく、0.5mg/kg以上であってもよい。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量が、ポリウレタン樹脂シート1kgあたり3.5×10
-4mol以下であることが好ましい。マグネシウムの量は、3.0×10
-4mol以下であることがさらにより好ましく、2.5×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、2.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、1.5×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましく、1.0×10
-4mol/kg以下であることがさらにより好ましい。下限値に特に制限はなく、例えば、マグネシウムの量は、0mol/kg以上であってもよく、0.1×10
-5mol/kg以上であってもよく、0.3×10
-5mol/kg以上であってもよく、0.5×10
-5mol/kg以上であってもよい。
ポリウレタン樹脂シート中のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩由来のカルシウム及び/又はマグネシウムの含有量、又は、ポリウレタン樹脂シート中のカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩由来のカルシウム及び/又はマグネシウムを同モルの炭酸カルシウムに換算した値が上記範囲内であると、有機残渣の被研磨物への付着量を十分低減することができる。
【0019】
<(A)ポリウレタン樹脂>
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの材料となるポリウレタン樹脂の種類に特に制限はなく、種々のポリウレタン樹脂の中から使用目的に応じて選択すればよい。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、又はポリカーボネート系の樹脂を用いることできる。
ポリエステル系の樹脂としては、エチレングリコールやブチレングリコール等とアジピン酸等とのポリエステルポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のジイソシアネートとの重合物が挙げられる。ポリエーテル系の樹脂としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。ポリカーボネート系の樹脂としては、ポリカーボネートポリオールと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネートとの重合物が挙げられる。これらの樹脂は、DIC(株)製の商品名「クリスボン」や、三洋化成工業(株)製の商品名「サンプレン」、大日精化工業(株)製の商品名「レザミン」など、市場で入手可能な樹脂を用いてもよく、所望の特性を有する樹脂を自ら製造してもよい。
これらの中でも、成膜安定性及び機械的特性に優れている、ポリエステル系のポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0020】
(100%モジュラス)
100%モジュラス(又は樹脂モジュラス)とは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値である(以下、樹脂モジュラスと呼ぶことがある。)。この値が高い程、硬い樹脂である事を意味する。
ポリウレタン樹脂は、1〜20MPaの樹脂モジュラスを有することが好ましく、1〜15MPaであることがより好ましく、3〜10MPaであることがさらにより好ましい。樹脂モジュラスが上記範囲内であると、研磨パッドに求められる適度な弾性特性から、被研磨物を効率良く高品位で研磨できるといった効果が得られるとともに、スクラッチを低減する効果がある。
【0021】
<(B)フィラー>
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に、カーボンブラック及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つのフィラーを含んでいてもよい。
カーボンブラック及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つのフィラーは、ポリウレタン樹脂シート中に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部含まれることが好ましく、0.5〜20質量部含まれることがより好ましく、1〜15質量部含まれることがさらにより好ましく、2〜10質量部含まれることがさらにより好ましい。前記フィラーの割合が上記範囲内であると、研磨レートを向上させることができる。また、脆性を付与させることで表面のドレス性を改善させることもできる。
【0022】
カーボンブラック及びシリカ等のフィラーの粒子径(分散径)は、20〜800nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、100〜400nmであることがさらにより好ましい。粒子径が上記範囲内であると、ポリウレタン樹脂シートの剛性を改善させるとともに、研磨時のスクラッチを有効に抑制できるため好ましい。
フィラーの粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。より具体的には、フィラーの粒子径は、動的光散乱法を用いて測定される分散状態での粒子径である。以下、フィラーの粒子径を、分散径ということがある。
【0023】
本発明の研磨パッドは、本発明の効果を損なわない範囲内で、カーボンブラック及び/又はシリカ以外の他のフィラーを、カーボンブラック及び/又はシリカと組み合わせて用いてもよい。当該他のフィラーとしては、アゾ系顔料などの有機顔料、酸化チタンなどの無機顔料が挙げられる。
【0024】
<(C)その他の任意成分>
本発明の研磨パッドは、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリウレタン樹脂シート中に、上記成分に加えて、発泡助剤、架橋剤、分散剤、撥水剤、成膜安定剤などの添加剤が含まれていてもよい。発泡助剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの中で発泡を大きく形成するためにはアニオン性界面活性剤が好ましく、脂肪酸系のアニオン性界面活性剤がより好ましく、高級脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩が好ましく、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの、硫酸のモノ長鎖(好ましくはC8−C18、より好ましくはC10-C14)アルキルエステルのナトリウム塩が挙げられる。
【0025】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの研磨面及び/又は研磨面とは反対側の面が研削処理(バフ処理)されていてもよい。これらの中でも、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの研磨面が研削処理されていることが好ましい。これにより、研磨面に微小気泡由来の開口部が多数存在することとなり、当該開口部にスラリーを保持することで研磨レートが向上する。
また、本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シートの研磨面に、溝加工、エンボス加工及び/又は穴加工(パンチング加工)が施されていてもよい。本発明の研磨パッドは、光透過部を備えていてもよい。
【0026】
<その他の層>
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート(研磨層)が、被研磨物を研磨する面(研磨面)とは反対側の面に他の層(下層、支持層)と貼り合わされていてもよい。他の層としては、ポリウレタン樹脂シートよりもショアA硬度が大きいものを用いることが好ましい。他の層を設けることにより、基板のプロファイル(表面及び端部形状)を調整することができる。
他の層としては、不織布、プラスッチックシート、ゴム、スポンジ等が挙げられる。
他の層の厚みについては特に限定するものはないが、好ましくは、0.1〜3mmが好ましく、より好ましくは0.15〜2mm程度が研磨機構の機械的制約をうけず、且つ、研磨定盤の影響を十分に小さくできる。
【0027】
研磨パッドが多層構造を形成する場合には、複数の層同士を両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧・加熱しながら接着・固定すればよい。この際用いられる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。また、両面テープや接着剤などを使用せず、直接基材に研磨層を形成するダイレクトコート法を用いることもできる。
【0028】
<ポリウレタン樹脂シートの物性>
(厚み)
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの厚みに特に制限はないが、0.3〜2mm程度であることが好ましい。
【0029】
(密度D)
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの密度は、0.15〜0.50g/cm
3が好ましく、0.18〜0.35g/cm
3であることがより好ましい。密度が上記範囲内であると、研磨特性(研磨レート、形状)を制御しやすくすることができる。
【0030】
(圧縮率)
本明細書において、圧縮率とは、研磨パッドの軟らかさの指標である。
圧縮率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を30秒間かけた後の厚さt1を測定する。圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0−t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm
2、最終圧力は1120g/cm
2である)。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートは、圧縮率が1〜70%であることが好ましく、3〜60%であることがより好ましく、4〜40%であることがさらにより好ましく、5〜20%であることが特に好ましい。圧縮率が上記範囲内であると、スクラッチ性能と研磨レートのバランスが良い。
【0031】
(圧縮弾性率)
本明細書において、圧縮弾性率とは、研磨パッド又はポリウレタン樹脂シートの圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L 1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt
0を測定し、次に、厚さt
0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt
1を測定する。次に、厚さt
1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt
0’を測定する。圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t
0’−t
1)/(t
0−t
1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm
2、最終荷重は1120g/cm
2である)。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートは、圧縮弾性率(%)が、50〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることがさらにより好ましい。圧縮弾性率が上記範囲内であると、研磨負荷によるパッドの変形を低減させ、研磨特性の安定した状態を保つことができる。
【0032】
(ショアA硬度)
本明細書において、ショアA硬度とは、JIS K7311に準じて測定した値を意味する。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートのショアA硬度は、1〜40度であることが好ましく、5〜38度であることがより好ましく、10〜35度であることがさらにより好ましく、15〜30度であることが特により好ましい。ショアA硬度が上記範囲内であると、スクラッチ性能と研磨レートとのバランスが良い。
【0033】
(平均開孔径)
本明細書において、平均開孔径とは、研磨パッド又はポリウレタン樹脂シートの表面画像を二値化処理し、各々の開孔部分の面積と個数から算出した円相当径の平均値である。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの平均開孔径は、20〜80μmの範囲内であることが好ましく、25〜70μmがより好ましく、30〜60μmがさらにより好ましい。
平均開孔径が上記範囲内であると、スラリーの保持性が良く、安定した研磨レートを得られる。
【0034】
(開孔率)
本明細書において、開孔率とは、研磨パッド又はポリウレタン樹脂シートの表面(研磨面)に対する開孔面積の割合(%)を意味する。
本発明の研磨パッドにおけるポリウレタン樹脂シートの開孔率は、5〜50%の範囲内であることが好ましく、7〜35%がより好ましく、10〜30%がさらにより好ましい。
開孔率が上記範囲内であると、スラリーの保持性が良く、安定した研磨レートが得られる。
【0035】
<研磨パッドの物性>
(厚み)
本発明の研磨パッドの厚みに特に制限はないが、0.5〜3mm程度であることが好ましい。
【0036】
(密度)
本発明の研磨パッドの密度は、0.15〜0.4g/cm
3が好ましく、0.21〜0.31g/cm
3であることがより好ましい。密度が上記範囲内であると、研磨レートとスクラッチ性能とのバランスがよい。
【0037】
(圧縮率)
本発明の研磨パッドは、上記条件下で測定される圧縮率が10〜70%であることが好ましく、15〜55%であることがより好ましく、20〜50%であることがさらにより好ましく、25〜45%であることが特に好ましい。圧縮率が上記範囲内であると、研磨レートとスクラッチ性能とのバランスがよい。
【0038】
(圧縮弾性率)
本発明の研磨パッドは、圧縮弾性率(%)が、50〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、85〜100%であることがさらにより好ましい。圧縮弾性率が上記範囲内であると、研磨負荷によるパッドの変形を低減させ、研磨特性の安定した状態を保つことができる。
【0039】
(ショアA硬度)
本発明の研磨パッドのショアA硬度は、5〜40度であることが好ましく、10〜35度であることがより好ましく、15〜30度であることがさらにより好ましい。ショアA硬度が上記の範囲内であると、研磨レートとスクラッチ性能とのバランスがよい。
【0040】
(用途)
本発明の研磨パッドは、シリコン、ハードディスク、液晶ディスプレイ用マザーガラス、半導体デバイス、カバーガラスの研磨、特に半導体デバイスの化学機械研磨(CMP)に好適に用いることが出来る。
【0041】
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドを構成するポリウレタン樹脂シートの研磨面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ハードディスク用ガラス基板やアルミ基板、LCD用マザーガラス、半導体ウェハ、半導体デバイス、カバーガラスなどが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスを加工するのに好適に用いられる。
本発明の研磨パッドを用いて被研磨物を研磨するために使用するスラリーの種類に特に制限はなく、例えば、界面活性剤及び/又は砥粒を含むスラリーなどを使用することができる。スラリー中に含まれる界面活性剤の例としては、上記発泡助剤としての界面活性剤と同様のものが挙げられる。本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの量が低減されているため、スラリー中に界面活性剤(例えばアニオン性界面活性剤)が含まれていても、被研磨物の研磨中に有機残渣(石鹸カス)が形成されにくく、有機残渣の被研磨物への付着量を低減させることができる。従って、スラリー中の添加剤の種類に縛られることなく用途に応じて自由にスラリーを選択し用いることができる。
本発明の研磨パッドは、好ましくは下記の方法により製造することができる。
【0042】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の研磨パッドの製造方法は、ポリウレタン樹脂及び溶媒を含むポリウレタン樹脂含有溶液を調製する工程、及び前記ポリウレタン樹脂含有溶液を凝固液に浸漬してポリウレタン樹脂を凝固させる工程を含み、且つ前記凝固液に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値である硬度成分濃度が60.0mg/L以下であることを特徴とする。
【0043】
<硬度成分濃度>
本明細書及び特許請求の範囲において、硬度成分濃度とは、溶液中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウムとマグネシウムの濃度を、当該カルシウムとマグネシウムの合計と同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値をいい、下記(2)の式により算出される。
硬度成分濃度(mg/L)=Ca濃度(mg/L)×2.496+Mg濃度(mg/L)×4.119 ・・・(2)
なお、上記式中の数値「2.496」は、炭酸カルシウムの分子量/カルシウムの分子量により算出される値であり、数値「4.119」は、炭酸カルシウムの分子量/マグネシウムの分子量により算出される値である。
なお、上記では硬度成分濃度をmg/Lで規定しているが、溶液の質量が明らかである場合には硬度成分濃度を溶液1kgあたりの質量、すなわち、mg/kgで規定してもよい。
凝固液に含まれるカルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムは、それぞれカルシウムイオン及びマグネシウムイオンとして凝固液中に存在していてもよく、アニオンとの塩として凝固液中に存在していてもよい。
以下、本発明の製造方法の各工程について説明する。
【0044】
<樹脂溶液の調製工程>
本調製工程において、ポリウレタン樹脂を溶媒(以下、溶媒1と呼ぶことがある)に添加・混合して、ポリウレタン樹脂及び溶媒を含むポリウレタン樹脂含有溶液を調製する。
(ポリウレタン樹脂)
原料となるポリウレタン樹脂としては、例えば、上記<<研磨パッド>>の項で記載したポリウレタン樹脂を使用することができる。ポリウレタン樹脂は、1〜20MPaの樹脂モジュラスを有することが好ましく、3〜15MPaであることが好ましく、4〜12MPaであることが最も好ましい。
【0045】
(溶媒)
また、樹脂を溶解させる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)等及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、DMFが好ましい。凝固時にウレタン樹脂溶液中の極性を有する有機溶剤と凝固液中の水が置換することにより発泡が形成される。
【0046】
ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して溶媒100〜800質量部となる割合で、ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれることが好ましく、ポリウレタン樹脂100質量部に対して溶媒が150〜600質量部の割合であることがより好ましく、ポリウレタン樹脂100質量部に対して溶媒が200〜500質量部の割合であることがさらにより好ましい。ポリウレタン樹脂及び溶媒には、通常、カルシウム塩及びマグネシウム塩はほとんど含まれていないが、ポリウレタン樹脂及び溶媒中にカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及び/又はマグネシウムが大量に含まれる場合には、ポリウレタン樹脂含有溶液中の硬度成分濃度、カルシウム濃度、及びマグネシウム濃度が、下記の凝固液中に含まれるそれぞれの濃度以下になるよう調整することが好ましい。
【0047】
ポリウレタン樹脂含有溶液は、上記成分以外にフィラーや添加剤等を含んでいてもよい。フィラーや添加剤は、ポリウレタン樹脂を溶媒に溶解させる前に溶媒に添加してもよく、ポリウレタン樹脂を溶媒に溶解させて得られる溶液に添加してもよい。
【0048】
<フィラー>
フィラーとしては、例えば、上記<<研磨パッド>>の項で記載したフィラーを使用することができる。
フィラーを用いる場合、フィラーは、ポリウレタン樹脂含有溶液中に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部の割合で含まれることが好ましく、1〜20質量部含まれることがより好ましく、1〜15質量部含まれることがさらにより好ましく、2〜10質量部含まれることがさらにより好ましい。前記フィラーの割合が上記範囲内であると、得られた研磨パッドの研磨レートを向上させることができる。また、脆性を付与させることで表面のドレス性を改善させることもできる。
【0049】
フィラーは、溶媒(以下、溶媒2と呼ぶことがある)に分散させた分散液の形態でポリウレタン樹脂や溶媒1などの成分と混合してもよい。溶媒2は、溶媒1と同一の溶媒であっても異なる溶媒であってもよく、同一の溶媒であることが好ましい。フィラーを溶媒2に分散させた分散液の形態でポリウレタン樹脂及び溶媒1と混合する場合、ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれるフィラー由来の硬度成分の量は、ポリウレタン樹脂含有溶液の固形分1kgあたり20.0mg以下であることが好ましく、15.0mg以下であることがより好ましく、10.0mg以下であることがさらにより好ましい。硬度成分の量が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣量の低減に効果がある。
ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれるフィラー由来の硬度成分の量の下限値に特に制限はなく、例えば、ポリウレタン樹脂含有溶液の固形分1kgあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0050】
また、ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれるフィラーに由来するカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度は、ポリウレタン樹脂含有溶液の固形分1kgあたり2.0×10
-4mol以下であることが好ましく、1.5×10
-4mol以下であることがより好ましく、1.0×10
-4mol以下であることがさらにより好ましい。ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれるフィラーに由来するカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度の下限値に特に制限はなく、例えば、ポリウレタン樹脂含有溶液の固形分1kgあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
ポリウレタン樹脂含有溶液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムは、それぞれカルシウムイオン及びマグネシウムイオンとしてポリウレタン樹脂含有溶液中に存在していてもよく、アニオンとの塩としてポリウレタン樹脂含有溶液中に存在していてもよい。
【0051】
また、フィラーを分散液の形態でポリウレタン樹脂及び溶媒1と混合する場合、フィラー中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値は、フィラー1kgあたり150mg以下であることが好ましく、120mg以下であることがより好ましく、60mg以下であることがさらにより好ましい。カルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣量の低減に効果がある。
フィラー中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値の下限値に特に制限はなく、例えば、分散液1kgあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0052】
また、フィラー中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量は、フィラー1kgあたり1.5×10
-3mol以下であることが好ましく、1.2×10
-3mol以下であることがより好ましく、0.6×10
-3mol以下であることがさらにより好ましい。フィラー中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの量の下限値に特に制限はなく、例えば、フィラー1kgあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
【0053】
フィラーを分散液の形態でポリウレタン樹脂及び溶媒1と混合する場合、フィラー中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値は、フィラー1kgあたり80mg以下であることが好ましく、50mg以下であることがより好ましく、30mg以下であることがさらにより好ましい。マグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣量の低減に効果がある。
フィラー中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量を同モルの炭酸カルシウムの量に換算した値の下限値に特に制限はなく、例えば、フィラー1kgあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0054】
フィラー中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量は、フィラー1kgあたり0.8×10
-3mol以下であることが好ましく、0.5×10
-3mol以下であることがより好ましく、0.3×10
-3mol以下であることがさらにより好ましい。フィラー中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの量の下限値に特に制限はなく、例えば、フィラー1kgあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
【0055】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、発泡助剤や成膜安定剤が挙げられる。発泡助剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの中で発泡を大きく形成するためにはアニオン性界面活性剤が好ましく、脂肪酸系のアニオン性界面活性剤がより好ましく、高級脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩が好ましく、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの、硫酸のモノ長鎖(好ましくはC8−C18、より好ましくはC10-C14)アルキルエステルのナトリウム塩が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して0〜15質量部の割合でポリウレタン樹脂溶液中に含まれることが好ましく、0.1〜15質量部が好ましく、1〜12質量部がより好ましい。当該アニオン性界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、湿式凝固時に発泡を大きくすることができる。さらに、成膜性を向上させることができる。また、従来の研磨パッドは、製造工程中にアニオン性界面活性剤を用いると、後述する凝固液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムと結合して石鹸カスが生じ得るが、本発明の製造方法では、凝固液中のカルシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウム塩由来のマグネシウムを大幅に低減させているため、アニオン性界面活性剤を用いた場合でも石鹸カスの発生量を抑制でき、被研磨物への有機残渣の付着量を低減させることができる。
発泡助剤や成膜安定剤には、通常、カルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムを与える成分はほとんど含まれていないが、発泡助剤や成膜安定剤中にカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及び/又はマグネシウムが大量に含まれる場合には、発泡助剤及び/又は成膜安定剤を含むポリウレタン樹脂含有溶液中の硬度成分濃度、カルシウム濃度、及びカルシウム濃度が、下記の凝固液中に含まれるそれぞれの濃度以下になるよう調整することが好ましい。
【0056】
<塗布工程>
前記調製工程で得られたポリウレタン樹脂含有溶液を、成膜基材上に塗布する。塗布方法に特に制限はなく、例えば、ナイフコーター、リバースコーター等により、ポリウレタン樹脂含有溶液を、成膜基材上に略均一となるように連続的に塗布すればよい。成膜基材としては、本技術分野で通常用いられる基材であれば特に制限なく用いることができる。例としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等の可撓性のある高分子フィルム、弾性樹脂を含浸固着させた不織布等が挙げられ、中でもポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0057】
<凝固工程>
次に、湿式成膜法により、ポリウレタン樹脂含有溶液中のポリウレタン樹脂を凝固させる。
湿式成膜法とは、ポリウレタン樹脂含有溶液が塗布された基材を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に浸漬することで、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる方法である。凝固液中で、ポリウレタン樹脂含有溶液の溶媒(例えばDMF)と凝固液とが置換され、ポリウレタン樹脂が凝固再生される。湿式凝固では凝固液に浸漬すると界面にスキン層と呼ばれる表面皮膜が形成され、その皮膜を通して樹脂溶液中の溶剤と凝固液の置換により樹脂が凝固する。凝固がスキン層より内部に進行するため、スキン層側から内部に行くにつれて大きくなる湿式凝固特有の涙滴状の発泡が厚み方向で形成される。
凝固液としては、水、水とDMF等の極性溶媒との混合溶液などが用いられる。極性溶媒としては、水混和性の有機溶媒、例えばDMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、エタノール、メタノールなどが挙げられる。また、凝固液中の極性溶媒の濃度は0〜20質量%が好ましい。
凝固液の温度や浸漬時間に特に制限はなく、例えば15〜50℃で10〜100分間浸漬すればよい。
【0058】
凝固液中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの濃度を、同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値である硬度成分濃度は、凝固液1Lあたり60mg以下であり、45mg以下であることが好ましく、30mg以下であることがより好ましい。硬度成分濃度が上記範囲内であると、凝固再生させるポリウレタン樹脂シート中のカルシウム成分及びマグネシウム成分の含有量を低下させることができ、被研磨物に付着する有機残渣量を低減することができる。
硬度成分濃度の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0059】
また、凝固液中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度は、凝固浴1Lあたり6.0×10
-4mol以下であることが好ましく、4.5×10
-4mol以下であることがより好ましく、3.0×10
-4mol以下であることがさらにより好ましい。凝固液中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの合計濃度の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
【0060】
凝固液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの濃度を、同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値は、凝固液1Lあたり44.0mg以下であることが好ましく、40.0mg以下であることがより好ましく、20.0mg以下であることがさらにより好ましい。カルシウム塩由来のカルシウムの濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣量の低減に効果がある。
カルシウム塩由来のカルシウム濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0061】
また、凝固液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの濃度は、凝固浴1Lあたり4.4×10
-4mol以下であることが好ましく、4.0×10
-4mol以下であることがより好ましく、2.0×10
-4mol以下であることがさらにより好ましい。凝固液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウムの濃度の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
【0062】
凝固液中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値は、凝固液1Lあたり19.5mg未満であることが好ましく、19.0mg以下であることがより好ましく、10.0mg以下であることがさらにより好ましい。マグネシウム塩由来のマグネシウムの濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値が上記範囲内であると、被研磨物に付着する有機残渣量の低減に効果がある。
マグネシウム塩由来のマグネシウム濃度を同モルの炭酸カルシウムの濃度に換算した値の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mg以上であってもよく、0.1mg以上であってもよく、0.5mg以上であってもよく、1.0mg以上であってもよい。
【0063】
また、凝固液中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの濃度は、凝固液1Lあたり2.0×10
-4mol未満であることが好ましく、1.9×10
-4mol以下であることがより好ましく、1.0×10
-4mol以下であることがさらにより好ましい。凝固液中に含まれるマグネシウム塩由来のマグネシウムの濃度の下限値に特に制限はなく、例えば、凝固液1Lあたり0mol以上であってもよく、0.1×10
-5mol以上であってもよく、0.5×10
-5mol以上であってもよく、1.0×10
-5mol以上であってもよい。
凝固液の硬度成分濃度、カルシウム濃度及び/又はマグネシウム濃度を上記範囲内にする方法としては、例えば、凝固液を調製後、限外ろ過膜や逆浸透膜を用いて当該凝固液を処理する方法が挙げられる。限外ろ過膜及び逆浸透膜の孔径としては、0.0001〜0.1μmが好ましく、0.0005〜0.05μmがより好ましく、0.001〜0.02μmがさらにより好ましく、0.001〜0.005μmが特に好ましい。凝固液の硬度成分濃度が上記範囲内となる限りにおいて、イオン交換水(軟水)等を適用することも可能である。
【0064】
凝固液の硬度成分濃度が高いと、湿式凝固による置換により、カルシウム及びマグネシウムがポリウレタン樹脂シートに多く含まれることとなる。ポリウレタン樹脂含有溶液の調製工程において、発泡助剤として高級脂肪酸のナトリウム塩のようなアニオン性界面活性剤が発泡の形成及び調整のため添加されることがあるが、その大部分は凝固工程で凝固液に溶出するものの、一部はポリウレタン樹脂シートに残留する。この際、凝固液中にカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムが多く含まれていると、溶出する際にアニオン性界面活性剤のナトリウム塩由来のナトリウムが凝固液中のカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムと置換することにより水に不溶で粘性を有する石鹸カスが形成され、ポリウレタン樹脂シート中に残留しやすくなるものと考えられる。この石鹸カスは、水に不溶であり、研磨加工時に被研磨物に有機残渣として付着してしまう。その結果、凸状欠陥が増大することとなる。本発明は、凝固液の硬度成分濃度を低減することにより、石鹸カスの形成を低減し、有機残渣が被研磨物に付着して凸状欠陥を生ずるという問題を改善することができる。
【0065】
<洗浄乾燥工程>
凝固液で凝固させて得られたシート状のポリウレタン樹脂を、洗浄し、乾燥させる。
洗浄処理により、ポリウレタン樹脂含有溶液中に残留する溶媒が除去される。洗浄に用いられる洗浄液としては、水が挙げられる。ポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの量をより低減させる目的で、希酸による洗浄、キレート洗浄、中和洗浄、純水による洗浄工程等を追加してもよい。洗浄液中にカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムが多く含まれる場合には、洗浄液の硬度成分濃度、カルシウム濃度、及びマグネシウム濃度が、凝固液中に含まれるそれぞれの濃度以下になるよう調整することが好ましい。
洗浄後、ポリウレタン樹脂を乾燥処理する。乾燥処理は従来行われている方法で行えばよく、例えば100〜180℃で5〜30分程度乾燥機内で乾燥させればよい。上記の工程を経て、ポリウレタン樹脂シートを得ることができる。また、乾燥前に洗浄液等をできるだけ絞り、カルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムを含む凝固液の水や洗浄液の水をできるだけ少なくした後に乾燥することで、よりシート状のポリウレタン樹脂中に含まれる硬度成分量を低下させることができる。
【0066】
<バフ処理工程>
洗浄乾燥工程後に得られたポリウレタン樹脂シートをバフ処理してもよい。バフ処理を行う場合、ポリウレタン樹脂シートの研磨面をバフ処理してもよく、研磨面とは反対側の面をバフ処理してもよい。ポリウレタン樹脂シートの研磨面をバフ処理する場合、ポリウレタン樹脂シートのスキン層の一部又は全部を除去することが好ましく、スキン層の全部を除去することがより好ましい。
【0067】
<多層形成工程>
本発明の製造方法は、ポリウレタン樹脂シートを、ポリウレタン樹脂シートの研磨面とは反対側の面で、他の層(下層、支持層)と貼り合わせる工程を有していてもよい。他の層としては、上記<<研磨パッド>>の項で記載した他の層を挙げることができる。他の層と貼り合わせる方法としては、例えば、ポリウレタン樹脂シートと他の層を両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。
【0068】
さらに、本発明の研磨パッドは、必要に応じて、研磨層の表面及び/又は裏面を研削処理したり、溝加工やエンボス加工を表面に施したりしてもよく、基材及び/又は粘着層を研磨層と貼り合わせてもよく、光透過部を備えてもよい。
研削処理の方法に特に制限はなく、公知の方法により研削することができる。具体的には、サンドペーパーによる研削が挙げられる。これによりスエード調の研磨表面を得ることができる。
溝加工及びエンボス加工の形状に特に制限はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型などの形状が挙げられる。
【実施例】
【0069】
<<研磨パッドの製造>>
以下の材料及び製造方法を用いて、実施例1〜6及び比較例1〜2の研磨パッドを製造した。各実施例及び比較例の研磨パッドを製造する際に用いたポリウレタン樹脂含有溶液の組成を表1〜2に示す。また、凝固工程で用いた凝固液に含まれるカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム濃度及びマグネシウム濃度を表3〜4に示す。
【0070】
<実施例1>
(1)樹脂溶液の調製工程
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にポリエステル系ポリウレタン樹脂(100%モジュラス:6MPa)を溶解させた30質量%ポリウレタン樹脂含有溶液を準備した。
(2)塗布工程
ポリウレタン樹脂含有溶液を常温下でナイフコーター等の塗布装置により帯状の成膜基材(ポリエチレンテレフタレート)に略均一に塗布した。
(3)凝固工程
(2)で得られた、成膜基材上に塗布したポリウレタン樹脂含有溶液を、限外ろ過膜(孔径:0.01μm)で処理して得た凝固液(硬度成分濃度が58.6mg/Lの水)を用いて、18℃で75分間湿式凝固した。これにより、成膜基材上にポリウレタン樹脂シートを形成させた。
(4)洗浄乾燥工程
ポリウレタン樹脂シートを成膜基材から剥離し、硬度成分濃度が58.6mg/Lの水で洗浄してポリウレタン樹脂シート中に残留するDMFを除去した。その後、乾燥機を用いて、135℃で10分間ポリウレタン樹脂シートを乾燥させた。
(5)バフ処理工程
乾燥後、得られたポリウレタン樹脂シートの表面に形成されたスキン層側にバフ処理を施した。
(6)貼り合わせ工程
接着剤を用いて基材(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済みのポリウレタン樹脂シートのバフ処理した面とは反対側の面とを貼り合わせた。
(7)ラミネート加工工程
基材のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に両面テープを貼り合わせた。
(8)エンボス加工工程
格子状のエンボスパターンを有する金網と、基材及び両面テープが貼り合わされたポリウレタン樹脂シートとを上下の熱定盤で挟んだ後に熱プレスし、ポリウレタン樹脂シートのバフ処理した面に金網格子に対応した凹凸のエンボスを形成させて、実施例1の研磨パッドを得た。
【0071】
<実施例2>
(1)樹脂溶液の調製工程
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、30質量%ポリエステル系ポリウレタン樹脂(100%モジュラス:6MPa)溶液と、20質量%シリカ(御国色素社製、製品名GO#2167(一次粒子径(平均):169nm、分散径:256nm))DMF分散液を、30質量%ポリウレタン樹脂溶液:DMF:20質量%シリカDMF分散液=100:41:12となるように混合させたポリウレタン樹脂含有溶液を準備した。
(2)塗布工程
ポリウレタン樹脂含有溶液を常温下でナイフコーター等の塗布装置により帯状の成膜基材(ポリエチレンテレフタレート)に略均一に塗布した。
(3)凝固工程
(2)で得られた、成膜基材上に塗布したポリウレタン樹脂含有溶液を、限外ろ過膜(孔径:0.01μm)で処理して得た凝固液(硬度成分濃度が58.6mg/Lの水)を用いて、18℃で75分間湿式凝固した。これにより、成膜基材上にポリウレタン樹脂シートを形成させた。
(4)洗浄乾燥工程
ポリウレタン樹脂シートを成膜基材から剥離し、硬度成分濃度が58.6mg/Lの水で洗浄してポリウレタン樹脂シート中に残留するDMFを除去した。その後、乾燥機を用いて、135℃で10分間ポリウレタン樹脂シートを乾燥させた。
(5)バフ処理工程
乾燥後、得られたポリウレタン樹脂シートの表面に形成されたスキン層側にバフ処理を施した。
(6)貼り合わせ工程
接着剤を用いて基材(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済みのポリウレタン樹脂シートのバフ処理した面とは反対側の面とを貼り合わせた。
(7)ラミネート加工工程
基材のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に両面テープを貼り合わせた。
(8)エンボス加工工程
格子状のエンボスパターンを有する金網と、基材及び両面テープが貼り合わされたポリウレタン樹脂シートとを上下の熱定盤で挟んだ後に熱プレスし、ポリウレタン樹脂シートのバフ処理した面に金網格子に対応した凹凸のエンボスを形成させて、実施例2の研磨パッドを得た。
【0072】
<実施例3>
工程(1)において、30質量%ポリウレタン樹脂溶液:DMF:20質量%シリカDMF分散液=100:41:27となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、30質量%ポリエステル系ポリウレタン樹脂(100%モジュラス:6MPa)溶液と、20質量%シリカDMF分散液とを混合させたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例3の研磨パッドを得た。
【0073】
<実施例4>
工程(1)において、30質量%ポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液に100%モジュラスが12MPaのポリウレタン樹脂を用い、添加剤として30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して1質量部のラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL SLS)を混合(ポリウレタン樹脂100質量部に対して3.3質量部のラウリル硫酸ナトリウムを混合)させたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例4の研磨パッドを得た。
【0074】
<実施例5>
工程(1)において、30質量%ポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液に100%モジュラスが8MPaのポリウレタン樹脂を用い、20質量%シリカDMF分散液の代わりに15質量%カーボンブラック(DIC社製、製品名ダイラックブラック(一次粒子径(平均):30nm、分散径:428nm))DMF分散液を30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して16質量部使用し、添加剤として30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して1質量部のラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL SLS)を混合(ポリウレタン樹脂100質量部に対して3.3質量部のラウリル硫酸ナトリウムを混合)させたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例5の研磨パッドを得た。
【0075】
<実施例6>
工程(1)において、30質量%ポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液に樹脂モジュラスが10MPaのポリウレタン樹脂を用い、20質量%シリカDMF分散液の代わりに15質量%カーボンブラック(DIC社製、製品名ダイラックブラック(一次粒子径(平均):22nm、分散径:375nm))DMF分散液を30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して16質量部使用し、添加剤として30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して3質量部のラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL SLS)を混合(ポリウレタン樹脂100質量部に対して10.0質量部のラウリル硫酸ナトリウムを混合)させ、工程(3)において、限外ろ過膜で処理した凝固液の代わりに、逆浸透膜(孔径:0.002μm)で処理して得た凝固液(硬度成分濃度が15.1mg/Lの水)を用いたこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例6の研磨パッドを得た。
【0076】
<比較例1>
工程(3)において、限外ろ過膜で処理した凝固液の代わりに、精密ろ過膜(孔径:0.05μm)で処理して得た凝固液(硬度成分濃度が64.7mg/Lの水)を用いたこと以外は実施例6と同様の方法により、比較例1の研磨パッドを得た。
【0077】
<比較例2>
工程(1)において、20質量%シリカDMF分散液の代わりに、15質量%カーボンブラック(DIC社製、製品名ダイラックブラック(一次粒子径(平均):22nm、分散径:375nm))のDMF分散液を30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して35質量部使用し、添加剤として30質量%ポリウレタン樹脂溶液100質量部に対して5質量部のラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL SLS)を用いて混合(ポリウレタン樹脂100質量部に対して16.7質量部のラウリル硫酸ナトリウムを用いて混合)させたこと以外は実施例2と同様の方法により、比較例2の研磨パッドを得た。
【0078】
<<物性>>
実施例1〜6及び比較例1〜2の研磨パッドについて、以下の方法により、ポリウレタン樹脂シートの物性(厚さ、密度、圧縮率、圧縮弾性率、ショアA硬度、平均開孔径、開孔率、カルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム量及びマグネシウム量)、及び研磨パッドの物性(厚さ、密度、圧縮率、圧縮弾性率、ショアA硬度)を測定した。その結果を、表5〜8に示す。
【0079】
(密度g/cm
3)
密度は、研磨パッド又はポリウレタン樹脂シートから試料片(10cm×10cm)を切り出し、該試料片の質量を自動天秤で測定後、下記式:
密度(g/cm
3)=質量(g)/(10cm×10cm×試料片の厚さcm)
により測定した。
【0080】
(圧縮率%、圧縮弾性率%)
圧縮率及び圧縮弾性率は、JISL1021に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して測定した。具体的には、無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を30秒間かけた後の厚さt1を測定した。厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定した。
圧縮率(%)=100×(t0−t1)/t0
圧縮弾性率(%)=100×(t0’−t1)/(t0−t1)
初荷重は100g/cm
2、最終圧力は1120g/cm
2。
【0081】
(ショアA硬度)
ショアA硬度は、研磨パッド又はポリウレタン樹脂シートから試料片(10cm×10cm)を切り出し、複数枚の該試料片を厚さが4.5mm以上となるように重ね、A型硬度計(日本工業規格、JISK7311)にて測定した。
【0082】
(平均開孔径、開孔率)
平均開孔径及び開孔率は、ポリウレタン樹脂シートの研磨面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製、JMS−5500LV)によって、100倍に拡大して9か所観察した後、これらの画像を画像処理ソフト(ニコン社製、ImageAnalyzerV20LABVer.1.3)により二値化処理をして算出した。
【0083】
(カルシウム量及びマグネシウム量)
試料約0.1gをコニカルビーカーに精秤し、硝酸10ml+硫酸3mlを試料に加えた。時計皿で蓋をして加温し、有機成分を分解し、溶液が少量になるまで加熱した。放冷後、過酸化水素3mlを加え液が少量になるまで、再加熱した。濾紙にて濾過しながら1N硝酸で50mlにメスアップして試料とした。
そして、この試料を用いて分析装置によりカルシウム塩及びマグネシウム塩由来のカルシウム及びマグネシウムの含有量を測定した。
分析方法:ICP発光分光分析法
装置名:パーキンエルマー社製 Optima 2100DV
【0084】
<<評価1>>
(研磨試験)
研磨装置:Ebara社製:F REX300
スラリー:Planar社 Slurry
ワーク:直径300mm Metal(Cu)膜付きウエハ
パッド径:740mm
パッドブレイク:30N 30分、ダイヤモンドドレッサー
研磨:定盤回転数70rpm、ヘッド回転数71rpm、スラリー流量200ml/min、研磨時間:60秒
実施例1〜6及び比較例1〜2の研磨パッドについて、上記の研磨条件にて研磨加工を行い、有機残渣の個数、パッド屑(パッドデブリ)の個数を測定し、各評価基準に従って評価した。そして、C評価が1つもないものを実施例とし、C評価が1つでもあるものを比較例とした。その結果を表7〜8に示す。
【0085】
(有機残渣)
有機残渣については、Metal(Cu)研磨で、35枚の基板を研磨し、35枚目の基板をパターンなしウェハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面に付着した有機残渣の数を観察した。
有機残渣の個数が10個以下だったものをA評価、11個以上で20個以下だったものをB評価、21個以上をC評価とした。
【0086】
(パッド屑(パッドデブリ))
パッド屑については、Metal(Cu)研磨で、35枚の基板を研磨し、35枚目の基板をパターンなしウェハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面に付着したパッド屑の数を観察した。
パッド屑の個数が10個以下だったものをA評価、11個以上で20個以下だったものをB評価、21個以上だったものをC評価とした。
【0087】
<<評価2>>
また、実施例1〜6及び比較例1〜2の研磨パッドについて、上記の研磨条件で、有機残渣の個数、パッド屑(パッドデブリ)の個数以外にも、研磨レート、スクラッチ個数について測定した。その結果を表7〜8に示す。
【0088】
(研磨レート)
研磨レートは、1分間あたりの研磨量を厚さ(Å)で表したものである。研磨加工前後の基板の絶縁膜について求めた。なお、Cu膜厚測定は、シート抵抗マッピングシステム(KLAテンコール社製、RS−200)で測定した。
研磨レートが500Å以上のものA評価、450Å以上〜500Å未満だったものをB評価、450Å未満だったものをC評価とした。
【0089】
(スクラッチ)
スクラッチについては、35枚の基板を研磨し、35枚目の基板をパターンなしウェハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面におけるスクラッチの数を観察した。
スクラッチの数が4個以下だったものをA評価、5〜8個だったものをB評価、9個以上だったものをC評価とした。
【0090】
【表1】
※1 カッコ内の数値はポリウレタン樹脂100質量部に対する添加剤の含有量(質量部)を示す。
【0091】
【表2】
※2 カッコ内の数値はポリウレタン樹脂100質量部に対する添加剤の含有量(質量部)を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
上記表中、「含有量(mg/kg)」及び「含有量(mol/kg)」は、ポリウレタン樹脂含有溶液、フィラー又はポリウレタン樹脂シート中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウム量又はマグネシウム塩由来のマグネシウム量をそれぞれ「mg/kg」及び「mol/kg」の単位で表したものである。「換算値(mg/kg)」は、上記カルシウム量又はマグネシウム量を同モルの炭酸カルシウム量に換算した値である。
また、「含有量(mg/L)」及び「含有量(mol/L)」は、凝固液中に含まれるカルシウム塩由来のカルシウム量又はマグネシウム塩由来のマグネシウム量をそれぞれ「mg/L」及び「mol/L」の単位で表したものである。「換算値(mg/L)」は、上記カルシウム量又はマグネシウム量を同モルの炭酸カルシウム濃度に換算した値である。
【0099】
表5〜8に示す結果から明らかなように、比較例1〜2の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれる硬度成分量が209mg/kg、332mg/kgと非常に多く、20個以上の有機残渣が発生していた。
これに対し、実施例1〜6の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂シート中に含まれる硬度成分量が100mg/kg以下であり、比較例1〜2の研磨パッド比べて、被研磨物に付着する有機残渣の量が顕著に抑制されていた。また、パッド屑の付着量も少なく、スクラッチの点でも良好であった。以上から、実施例1〜6の研磨パッドは、凸状欠陥及び凹状欠陥のいずれも抑制されており、顕著なディフェクト低減効果を有することが判った。さらに、実施例1〜6の研磨パッドは、研磨レートの点でも良好であった。