(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の加工工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポットの数は、前記第2工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポット数よりも多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
後述する明細書及び図面の記載から、上記の主たる発明の他、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0018】
すなわち、加工データは、前記目的物の表面形状を示す点群データ、及び前記割断部位を示す割断データを含み、前記第1の加工工程は、前記点群データに対応する位置に前記レーザーを照射し、前記第2の加工工程は、前記割断データに対応する位置に前記レーザーを照射する加工方法が明らかとなる。このような加工データに基づいてレーザー加工を行うことにより、加工時間を短縮し、且つ高い加工精度で目的物を得ることを可能とする。
【0019】
また、前記第1の加工工程におけるレーザーが、前記点群データに含まれる各点の法線方向から照射される加工方法が明らかとなる。このような加工方法によれば、照射されるレーザーのエネルギー効率を高めることができる。
【0020】
また、前記第1の加工工程または前記第2の加工工程の少なくとも一方におけるレーザーが、前記素材の表面の法線方向から照射される加工方法が明らかとなる。このような加工方法によれば、素材の表面におけるレーザーの反射によるエネルギーの損失を低減できる。
【0021】
また、前記第1の加工工程において照射されるレーザーのスポット径が、前記第2の加工工程において照射されるレーザーのスポット径よりも小さい加工方法が明らかとなる。或いは、前記第1の加工工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポットの数が、前記第2工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポット数よりも多い加工方法が明らかとなる。これらの加工方法は、より高い加工精度で目的物を得ることを可能とする。
【0022】
また、前記第1の加工工程で使用されるレーザーが超短パルスレーザーである加工方法が明らかとなる。超短パルスレーザーを使用することにより、素材内部の所望の位置に対してアブレーション加工を行うことができる。
【0023】
また、前記素材が、ジルコニア系の光透過性材料の完全焼結体である加工方法が明らかとなる。素材としてジルコニア系の光透過性材料を用いることにより、素材内部の所望の位置に対してレーザーを照射できる。また、完全焼結体を用いることにより加工後の焼成が不要となるため、加工時間を短縮でき且つ加工精度の低下を抑制できる。
【0024】
更に、前記第1の加工工程及び前記第2の加工工程がなされた前記素材を前記割断部位で割断させることにより、前記素材内部から前記目的物を分離する第3の加工工程を有する加工方法が明らかとなる。このような加工方法によれば、加工時間を短縮することができる。
【0025】
また、分離した前記目的物を前記レーザーにより研磨する第4の加工工程を有する加工方法が明らかとなる。このような加工方法によれば、より高い加工精度で目的物を得ることができる。
【0026】
また、前記第4の加工工程において照射されるレーザーのスポット径が、前記第1の加工工程において照射されるレーザーのスポット径よりも小さい加工方法が明らかとなる。このような加工方法によれば、より高い加工精度で目的物を得ることができる。
【0027】
==実施形態の概要==
本実施形態に係る加工方法は、レーザーを用いて素材を加工する。素材に対してレーザーを照射することにより、非接触での加工が可能となる。
【0028】
素材はレーザーを透過する材料(光透過性材料)を用いることができる。具体的には、ジルコニア系の光透過性材料を用いる。ジルコニア系の光透過性材料は、ジルコニア配合型ガラスセラミックのような複合材料であってもよいし、一定の透過率を有するジルコニア単体であってもよい。素材の光透過率は100%である必要はなく、所定の位置(目的物を形成する位置)までレーザーが届く程度の値であればよい。
【0029】
また、本実施形態に係る加工方法で使用されるジルコニア系の光透過性材料は、完全焼結体である。完全焼結体は加工後の焼成が不要となるため、加工時間を短縮することができる。また、完全焼結体は、焼成に伴う収縮等の影響を受けないため、加工精度が低下することもない。
【0030】
レーザーは超短パルスレーザーを用いる。超短パルスレーザーは、一のパルス幅が数ピコ秒〜数フェムト秒のレーザーである。超短パルスレーザーを素材内部の所定の位置に短時間照射することにより、アブレーション加工(非熱加工)を行うことができる。アブレーション加工は、レーザーにより溶融した箇所が瞬時に蒸発、飛散し除去されるため、一般的なレーザー加工(熱加工)と比べ、熱による加工部分の損傷が少ない。アブレーション加工は、たとえば、歯科医療に用いる補綴物等、サイズが小さい目的物の加工に対して特に有効である。
【0031】
素材に対するレーザーの照射は、予め作成された加工データ(後述)に対応する位置に対して行われる。本実施形態に係る加工方法は、少なくともレーザーを照射することにより、素材内部に目的物を形成する工程(第1の加工工程)と、目的物が形成された位置よりも外側にレーザーを照射することにより、素材内部に割断部位を形成する工程(第2の加工工程)を有する。また、本実施形態に係る加工方法は、
図1に示すような加工システム100により実施される。加工システム100は、CAD/CAMシステム200で作成された加工プログラムを実行することにより素材の加工を行う。以下、「加工データ」、「加工システム」、「加工システムによる加工(加工方法)」について詳述する。
【0032】
==加工データ==
加工データは、目的物を加工する際に加工システム100で使用するデータである。加工データは、目的物の三次元データや素材の三次元データに基づいて、CAD/CAMシステム200で作成される。たとえば、歯科医療用の補綴物を加工する場合、CCDカメラやX線CTにより口腔内をスキャンして得られた三次元データを使用して加工データを作成する。目的物の三次元データは、STLデータや三次元CADで使用されるソリッドデータ、或いは3Dプリンタで使用される3MFやAMFなどのデータである。
【0033】
本実施形態に係る加工データは、少なくとも点群データ及び割断データを含む。
【0034】
点群データは、目的物の表面形状を示すデータである。点群データは、目的物の表面形状に沿った複数の点データからなる。各点データは、三次元(XYZ)の座標値及び法線方向のベクトル情報を有する。座標値は、レーザーの焦点位置を決定する際に用いられる(すなわち、座標値は素材内部においてレーザーが照射される位置に相当する)。法線方向のベクトル情報は、レーザーを照射する方向を決定する際に用いられる。
【0035】
点データは目的物の表面形状に沿って等間隔で設定される。或いは、レーザーの照射によるエネルギー分布が均等となるよう、目的物の形状に合わせて点データの間隔を調整することでもよい。
【0036】
割断データは、素材内部における割断部位を示すデータである。割断データは、所定の素材の形状を示す素材の三次元データに対して設定される。割断部位は、素材を割断(後述)する際の基準となる部位である。割断部位は、素材内部において、目的物の表面形状が形成された位置よりも外側に位置する。割断部位は、面状の領域であってもよいし、複数の線分であってもよい。また、割断部位は、予め設定されたパターンに基づいて指定されてもよいし、加工データを作成する際に素材の三次元データ上で任意の部位を指定することもできる。
【0037】
本実施形態において、割断データは、複数の点データにより構成されている。各点データは、少なくとも三次元の座標値を有する。座標値は、レーザーの焦点位置を決定する際に用いられる(すなわち、座標値は素材内部においてレーザーが照射される位置に相当する)。なお、割断データは、素材内部に割断部位を形成することができるデータであれば、複数の点データでなくともよい。たとえば、素材に対してレーザーを照射する範囲(位置及び幅)を設定するデータであってもよい。
【0038】
加工データは、割断後の仕上げ処理(研磨)等で使用するためのデータを含んでいてもよい。また、加工データは、レーザーの出力に関する情報(各点に照射するレーザーのスポット径、照射時間、強度等)を含んでいてもよい。
【0039】
CAD/CAMシステム200は、作成した加工データを加工システム100に出力する。加工システム100は、加工データに対応する位置にレーザーを照射することにより素材の加工を行う。なお、出力されるデータの形式は、加工システム100で使用できるものであれば特に限定されない。
【0040】
==加工システム==
図1は、加工システム100を模式的に示した図である。加工システム100は、加工装置1及びコンピューター2を有する。但し、コンピューター2の果たす機能を加工装置1で実現することによって、加工システム100が加工装置1単体で構成されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る加工装置1は、5軸(X軸、Y軸、Z軸、A回転軸(X軸回りの回転軸)、B回転軸(Y軸回りの回転軸))の駆動軸を有する。加工装置1は、加工データに対応する位置にレーザーを照射することにより素材を加工する。加工装置1は、照射部10、保持部20、及び駆動機構30を含む。
【0042】
照射部10は、素材に対してレーザーを照射する。照射部10は、レーザーの発振器、及び発振器からのレーザー光を素材まで導くためのレンズ群やガルバノミラー等の光学系を含む。
【0043】
保持部20は素材Mを保持する。素材を保持する方法は、保持された素材を5軸に沿って移動・回転させることができれば、特に限定されるものではない。たとえば、従来の5軸加工装置による切削加工を行う場合と同様、ディスク状の素材をクランプで挟み込んで保持する方法や、ブロック状の素材に金属製のピンを接着し、そのピンを保持部20に差し込んで保持する方法等が可能である。
【0044】
駆動機構30は、照射部10及び保持部20を相対的に移動させる。駆動機構30は駆動用のモータ等を含む。
【0045】
コンピューター2は、照射部10及び駆動機構30の動作を制御する。具体的に、コンピューター2は、素材内部において、加工データに対応する位置にレーザーを照射できるよう、駆動機構30を制御して照射部10と保持部20(素材M)との相対的な位置関係を調整する。また、コンピューター2は、照射部10を制御し、レーザーの焦点位置、照射されるレーザーのスポット径、強度等の調整を行ったり、素材Mに対して所定時間だけレーザーの照射を行う。スポット径、強度、照射時間等は、照射されるレーザーの出力(エネルギー)に影響を与えるものである。これらの値は、上述の通り加工データに予め組み込まれていてもよいし、加工装置1側で設定することでもよい。また、これらの値を決定する際には、加工対象となる素材の種類や特性を加味してもよい。コンピューター2は、「制御部」の一例である。
【0046】
なお、本実施形態に係る加工システム100は、照射部10から照射されるレーザーの出力を調整することにより、目的物や割断部位の形成だけでなく、割断処理や仕上げ処理を行うことも可能である。すなわち、素材Mから目的物を得るまでの処理を全て加工装置1で行うことができるため、素材Mの取り付け、取り外しによる加工精度低下の恐れがない。
【0047】
==加工システムによる加工==
次に
図2〜
図3Hを参照して、本実施形態に係る加工方法の具体例について説明する。ここでは、加工方法が加工システム100によって実施される例について述べる。この例では、素材Mを加工して目的物Xを得る。
図2は、加工システム100の動作を示すフローチャートである。
図3A〜
図3Hは、本実施形態に係る加工方法により加工される素材Mまたは目的物Xを模式的に示した図である。目的物Xの加工データはCAD/CAMシステム200により予め作成されているものとする。
【0048】
目的物Xの加工に使用する素材Mを選択し、加工装置1の保持部20にセットする(素材のセット。ステップ10)。選択する素材Mは、加工データ(割断データ)を作成する際に使用した素材の三次元データに対応する形状であることが好ましい。但し、選択された素材Mは、少なくとも目的物Xを包含する形状であればよい。
図3Aに示すように素材Mはブロック状の部材であり、保持部20に保持される金属製のピンPが接着固定されている。
図3B〜
図3GではピンPの記載を省略している。
【0049】
コンピューター2は、目的物Xの加工データに基づいて、加工装置1に素材Mの加工を実行させる。
【0050】
まず、コンピューター2は、加工データに含まれる点群データに対応する位置にレーザーを照射させる(点群データに対応する位置にレーザーを照射。ステップ11)。
【0051】
コンピューター2は、点群データに含まれるある点データの座標値とレーザーの焦点位置が合うよう調整を行う。具体的には、コンピューター2は、照射部10及び駆動機構30の相対的な位置を調整したり、照射部10に含まれるレンズ群やガルバノミラーの向きや角度を調整する。なお、焦点位置の調整は、素材Mの屈折率を考慮して行われる。点データの座標値とレーザーの焦点位置が一致した後、コンピューター2は、照射部10を制御し、当該点データに含まれる法線方向の情報に基づいて、法線方向からレーザーを所定時間だけ照射させる。法線方向からレーザーを照射することにより、加工部分に与えるレーザーのエネルギー効率を高めることができる。
【0052】
コンピューター2は、点群データに含まれる各点データに基づいて、順次、レーザーの照射を行う(
図3B参照)。
図3B等ではレーザーが照射された部分を丸で示す。またレーザーが照射されていない部分の形状(目的物Xや割断面T1、T2の形状)を破線で示している。レーザーが照射された部分(加工部分)は、レーザーのスポット径に応じた空洞となっている。なお、レーザーの照射は、上述のように、位置決めと照射を繰り返し行うことでもよいし、加工効率を考慮し、焦点位置が変化しない場合には、レーザーの照射を行ったまま、隣接する点データに対応する位置の加工を連続しておこなってもよい。
【0053】
点群データに含まれる全ての点データに対応する位置にレーザーの照射が完了した場合(ステップ12でYの場合)、素材Mの内部には目的物Xが形成される(
図3C参照)。このように素材M内部にレーザーを照射することにより目的物Xを形成する工程は「第1の加工工程」の一例である。
【0054】
次に、コンピューター2は、加工データに含まれる割断データに対応する位置にレーザーを照射させる(割断データに対応する位置にレーザーを照射。ステップ13)。
【0055】
具体的には、ステップ11と同様、コンピューター2は、割断データに含まれるある点データの座標値とレーザーの焦点位置が合うよう調整を行う。点データの座標値とレーザーの焦点位置が一致した後、コンピューター2は、照射部10を制御し、レーザーを所定時間だけ照射させる。コンピューター2は、割断データに含まれる各点データに基づいて、順次、レーザーの照射を行う(
図3D参照)。なお、レーザーが照射される位置は、素材Mの内部において、目的物Xが形成された位置よりも外側である。
【0056】
割断データに含まれる全ての点データに対応する位置にレーザーの照射が完了した場合(ステップ14でYの場合)、素材Mの内部には割断部位が形成される(
図3E参照)。この例では、割断部位として、素材Mの横方向の割断面T1と、割断面T1に直交する割断面T2が形成されている(
図3Eでは割断面を実線のみで示し、点の記載を省略する)。このように素材M内部にレーザーを照射することにより割断部位を形成する工程は「第2の加工工程」の一例である。
【0057】
このように割断部位を形成した場合(或いは割断部位を形成している最中に)、割断部位から自然に割断が発生し、素材Mから目的物Xが分離されることもありうる。一方、素材Mに対して外力を与えることにより、積極的に割断を促すことも可能である。
【0058】
この場合、コンピューター2は、ステップ11〜ステップ14の加工処理がなされた素材Mを割断部位で割断させることにより、素材Mの内部から目的物Xを分離する(目的物の分離。ステップ15、
図3F参照)。このように素材Mの内部から目的物Xを分離する工程は「第3の加工工程」の一例である。
【0059】
目的物を分離する方法(割断を促す方法)は、素材の種類や物性等により様々な方法を用いることができる。
【0060】
たとえば、通常の熱加工と同等の出力(ステップ11等の出力よりも高出力)でレーザーを照射することにより、素材Mに加熱による衝撃を与えて割断する方法を用いることができる。この場合、照射部10をそのまま利用することができる。
【0061】
或いは、加工システム100に割断専用の構成を設けることで目的物を分離することも可能である。
【0062】
たとえば、冷却用のガス冷媒やドライアイスを噴射する構成を設ける。ガス冷媒等を噴射し、素材Mを急速に冷却することで割断することができる。また、超音波を発生するホーンを設け、素材Mに対して局所的に超音波の振動を与えて割断することや、ハンマー等を設け、素材Mに対して直接的に力を加えて割断すること(物理的干渉を利用する方法)も可能である。
【0063】
なお、素材Mから目的物Xが完全に分離しているかどうかを、加工システム100に設けたCCDカメラや画像処理装置を用いて、計測・監視を行ってもよい。素材Mから目的物Xが完全に分離できていない場合、上記方法を複数回実施したり、組み合わせて行うことで割断を促すことでもよい。
【0064】
目的物Xの表面形状に沿って点群データを作成し、当該データに基づいてレーザーを照射してアブレーション加工を行った場合、割断後に得られる目的物Xの表面形状は、加工データの元となった三次元データとほぼ同等になっていると思われる。一方、点群の密度、レーザー照射の状態、割断の状況等によっては、目的物Xの表面に素材Mの一部が残ってしまい、目的物Xの表面に凹凸が生じる可能性もある。従って、目的物の加工精度を高める観点からは、仕上げ処理を行うことがより好ましい。
【0065】
コンピューター2は、ステップ15で分離した目的物Xをレーザーにより研磨して仕上げ処理を行う(仕上げ処理。ステップ16)。仕上げ処理の方法(研磨方法)は特に限定されるものではない。たとえば、加工データに含まれる点群データは目的物Xの表面形状に沿ったものあるため、この点群データに基づいて再度レーザーを照射する(
図3G参照)。仮にステップ15で得られた目的物Xの表面に素材Mの一部が残っている場合、ステップ16におけるレーザーの照射により残った素材Mが除去されるため目的物Xの形状に近づく。分離した目的物Xをレーザーにより研磨する工程は「第4の加工工程」の一例である。
【0066】
最後に、ピンPと目的物Xとの間に熱を加え、ピンPを取り外すことで目的物Xを得ることができる(目的物の完成。ステップ17。
図3H参照)。
【0067】
なお、仕上げ処理としてレーザーで研磨する例について述べたが、従来のような機械的な研磨を行うことでもよい。また、加工システム100に専用の構成を設けることにより、仕上げ処理として染色やグレージングを行うことも可能である。
【0068】
このように、本実施形態に係る加工方法によれば、レーザーを用いて完全焼結体の素材内部に目的物及び割断部位を形成することにより、素材から目的物を容易に分離することができる。従って、従来の加工方法のように加工そのものに時間を要したり、焼成等の後処理に時間を要することがない。すなわち、本実施形態に係る加工方法によれば、加工時間を短縮することができる。また、本実施形態に係る加工方法では、完全焼結体を加工するため、焼成による収縮等を考慮する必要がない。また、一の加工装置で目的物の加工を行うことができるため、一旦素材をセットした後の位置合わせ等が不要となる。更に、レーザーで加工するため、切削ツール等と素材の物理的な接触も生じない。すなわち、本実施形態に係る加工方法によれば、高い加工精度で目的物を得ることができる。
【0069】
=その他=
素材内部にレーザーを照射する場合には、素材表面での反射によりエネルギーの損失が生じるという問題がある。この問題に対し、コンピューター2は、レーザーが素材の表面の法線方向から照射されるよう、照射部10を制御することも可能である。
【0070】
また、たとえば、素材から目的物を確実に分離するためには、素材と目的物との境界(目的物の表面形状)に沿ってレーザー加工が細かく行われていることが好ましい。一方、割断部位については、割断できればよいため、レーザー加工は必ずしも細かく行われる必要はない。
【0071】
そこで、各処理において異なるスポット径でレーザーを照射してもよい。具体的には、コンピューター2は、目的物を形成する工程(第1の加工工程)において照射されるレーザーのスポット径が、割断部位を形成する工程(第2の加工工程)において照射されるレーザーのスポット径よりも小さくなるよう、照射部10を制御することが可能である。
【0072】
或いは、スポット径を変える代わりに、照射されるレーザーの単位面積当たりのスポットの数(スポット密度)を変えることでも同様の効果を得ることができる。
【0073】
すなわち、コンピューター2は、第1の加工工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポットの数が、第2工程において照射されるレーザーの単位面積当たりのスポット数よりも多くなるよう、照射部10を制御することも可能である。
【0074】
更に、仕上げ工程の研磨(第4の加工工程)は、目的物の三次元形状を再現するために、より緻密に行う必要がある。そこで、コントローラー2は、第4の加工工程において照射されるレーザーのスポット径が、第1の加工工程において照射されるレーザーのスポット径よりも小さくなるよう照射部10を制御することも可能である。
【0075】
上記実施形態では、加工システム100において全ての加工処理を実施する例について述べた。一方、本発明においては、たとえば目的物や割断部位を形成する処理と割断等の処理を異なる装置で実施すること自体を排除するものではない。このように複数の装置を用いて本発明に係る加工方法を実施する場合であっても、少なくとも従来の加工方法に比べ、加工時間を短縮でき、且つ加工精度を高めることもできる。
【0076】
また、上記実施形態では、ブロック状の素材Mを加工する例について述べたが、素材Mはこれに限られない。上記実施形態による加工方法によれば、一の部材から複数の歯を加工することが可能なブリッジ状の部材や入れ歯(デンチャー)等の非対称形状を加工することも可能である。
【0077】
上記実施形態の加工プログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium with an executable program thereon)を用いて、コンピュータにプログラムを供給することも可能である。なお、非一時的なコンピュータの可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、CD−ROM(Read Only Memory)等がある。
【0078】
上記実施形態は、発明の例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。