前記ラジカル重合性を有するビニル系モノマー(x)が、ヘテロ原子を含んでいてもよい(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシ基を有する重合性不飽和化合物、スチレン類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、および(メタ)アクリロニトリルからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項1に記載の漁網用防汚塗料組成物。
前記防汚剤(C)が、亜酸化銅、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、メデトミジン、ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジン、トリフェニルボラン・n−オクタデシルアミン、トリフェニルボラン・3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンおよびビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の漁網用防汚塗料組成物。
前記可塑性樹脂(D)が、ポリオレフィン、ポリスルフィド、流動パラフィン、ワックスおよびワセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の漁網用防汚塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の防汚塗料組成物、防汚塗膜およびこれらの用途をより詳細に説明する。
なお、「(メタ)アクリル((meth)acryl)」は、アクリル(acryl)およびメタクリル(methacryl)を、「(メタ)アクリロイル((meth)acryloyl)」は、アクリロイル(acryloyl)およびメタクリロイル(methacryloyl)を総称する語句である。
【0028】
[防汚塗料組成物]
本発明の防汚塗料組成物は、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)およびポリエーテル変性シリコーンオイル(B)を含有する。
【0029】
(A)硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体:
硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)は、ラジカル重合性を有するビニル系モノマーから誘導される構成単位からなるビニル重合体ブロック[X]と、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]とを有する共重合体である。
【0030】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は50,000〜300,000、好ましくは50,000〜200,000である。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値であり、測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載する。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、柔軟性ならびに防汚性に優れた防汚塗膜を形成することができる。
【0031】
(ビニル重合体ブロック[X])
ビニル重合体ブロック[X]は、ラジカル重合性を有するビニル系モノマー(x)から誘導される構成単位からなる。
【0032】
ラジカル重合性を有するビニル系モノマー(x)としては、ヘテロ原子を含んでいてもよい(メタ)アクリル酸エステル(以下のカルボキシ基を有する重合性不飽和化合物を除く。)カルボキシ基を有する重合性不飽和化合物、スチレン類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類および(メタ)アクリロニトリルからなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる。
【0033】
ヘテロ原子を含んでいてもよい(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜30の脂肪族または脂環族のアルコールとのエステル、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、およびオクタデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ならびにアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、ケイ素含有(メタ)アクリル酸エステル、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、およびメトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、および2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
ケイ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば(メタ)アクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン、およびトリアルキルシリル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンとして、より具体的には「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−7711」、「サイラプレーンFM−7721」(商品名、JNC(株)製)などが挙げられる。トリアルキルシリル(メタ)アクリレートとしては、たとえばトリイソプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0036】
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、および1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン(メタ)アクリレート、および2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、および3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
カルボキシ基を有する重合性不飽和化合物としては、たとえば(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びその誘導体、ならびにイタコン酸及びその誘導体が挙げられる。
【0040】
スチレン類としては、たとえばスチレン、およびα−メチルスチレンが挙げられる。
ビニルエステル類としては、たとえば酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニルが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリルアミド類としては、たとえばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、およびジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、たとえばエチルビニルエーテル、およびイソブチルビニルエーテルが挙げられる。
【0042】
これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ラジカル重合性を有するビニル系モノマー(x)としては、(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜30である脂肪族アルコールとのエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3(または2)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4(または2)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜30である脂肪族アルコールとのエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、およびトリデシル(メタ)アクリレートがより好ましい。特に防汚性の観点からは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
前記ビニル重合体ブロック[X]は、好ましくはポリエーテル構造を含まない。
(硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y])
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]は、下記式[I]で表される。
【0044】
【化3】
式[I]において、複数個あるRは、それぞれ独立にフッ素原子を有してもよい炭素数が1〜20の1価の炭化水素基を示す。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1〜20、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3のアルキル基、フェニル基、およびトリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0045】
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に前記Rまたは炭素数が1〜20の2価の硫黄含有有機基(例:硫黄含有炭化水素基)を示す。R
3が複数個存在する場合(すなわち、nが2以上の整数の場合)、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
2価の硫黄含有有機基は、式:「−SX−」(Xは置換基を有していてもよい2価有機基であり、右端の線は式[I]に示されたケイ素原子への結合を示す。)で示される。置換基を有していてもよい2価有機基Xとしては、
メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−(CH
2)
2−)、トリメチレン基(−(CH
2)
3−)、プロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−)、テトラメチレン基(−(CH
2)
4−)、ブチレン基(−CH
2CH(CH
3)CH
2−)、ジメチルメチレン基(−C(CH
3)
2−)、ジメチルエチレン基(−CH
2C(CH
3)
2−)、およびオクタメチレン基(−(CH
2)
8−)などの、分岐を有することのある、炭素数が1〜10で鎖状の2価炭化水素基;
フェニレン基(−C
6H
4−)、フェニレンエチレン基(−C
6H
4−(CH
2)
2−)などの芳香族2価炭化水素基;
−CH
2COOCH
2CH(OH)−CH
2O−(CH
2)
a−[PDMS]−または−CH
2CH
2COOCH
2CH(OH)−CH
2O−(CH
2)
a−[PDMS]−
(式中、左端の線は硫黄原子への結合を示し、aは0〜5の整数であり、−[PDMS]−は−(Si(CH
3)
2O)
b)−(bは1以上の整数である。)を示す。)
で表される2価有機基
等が挙げられる。
【0047】
これらの2価有機基Xの中では、トリメチレン基等の炭素数が1〜5の鎖状の2価炭化水素基が好ましい。
式[I]において、前記mは、繰り返し単位[Si(R)
2O]の総数(正の数)を示し、nは、繰り返し単位[Si(R)(R
3)O]の総数(0以上の数)を示す。
【0048】
各繰り返し単位[Si(R)
2O]と、[Si(R)(R
3)O]とは、任意の順序で結合して各繰り返し単位の総個数がそれぞれm、nとなっていてもよい。たとえば、各繰り返し単位が1個ずつ交互に配列して結合していてもよく、それぞれが任意個数のブロックを形成して配列し、各繰り返し単位の総個数がそれぞれm、nとなっていてもよい。
【0049】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]は、1ブロック中に少なくとも2つの前記硫黄含有有機基を有する。
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]には、式[I]中のR
1、R
2およびR
3の種類により、下記(1)〜(3)の3つのタイプがある。
【0050】
(1) 式[I]中、R
1およびR
2が前記硫黄含有有機基を示し、かつR
3が前記Rを示すもの(以下「両末端型」ともいう。)
このタイプは、たとえば下式[I−1]で表される。
【0051】
【化4】
前記式[I−1]で表される硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[I−1]は、たとえば下式[I−1a]で表されるメルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−1a]から誘導される。
【0052】
【化5】
(式[I−1]、[I−1a]中、Xは、それぞれ独立に、好ましくはR
4(R
4は炭素数が1〜10、好ましくは1〜5の2価炭化水素基、さらに好ましくはプロピレン基またはトリメチレン基を示す。)を示し、Rは、好ましくはそれぞれ独立にメチル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示し、m+n=2〜1,500である。)
メルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−1a]の具体例としては、「X−22−167B」(商品名、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0053】
(2)式[I]中、R
1およびR
2が、前記Rを示し、n≧2であり、複数(n個)のR
3のうちの少なくとも2個(n−p個)が前記硫黄含有有機基を示し、かつその残り(p個)が、前記Rを示すか、または複数のR
3の全て(p=0、n個)が、前記硫黄含有炭化水素基を示すもの(以下「側鎖型」ともいう。)
このタイプは、たとえば下式[I−2]で表される。
【0054】
【化6】
前記式[I−2]で表される硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[I−2]は、たとえば下式[I−2a]で表されるメルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−2a]から誘導される。
【0055】
【化7】
(式[I−2]、[I−2a]中、Xは、それぞれ独立に、好ましくはR
4(R
4は炭素数が1〜10、好ましくは1〜5の2価炭化水素基、さらに好ましくはプロピレン基またはトリメチレン基を示す。)を示し、Rは、好ましくはそれぞれ独立にメチル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示し、m=1〜1,500、n=2〜100、0≦p≦n(p:整数)である。)
メルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−2a]の具体例としては、「KF−2001」、「KF−2004」、「KP−358」(商品名、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0056】
(3) 式[I]中、R
1およびR
2が、前記硫黄含有有機基を示し、R
3のうちの少なくとも1個(n−p個)が、前記硫黄含有有機基を示し、かつその残り(p個)が、前記Rを示すか、またはR
3の全て(p=0、n個)が前記硫黄含有有機基を示すもの(以下「側鎖両末端型」ともいう。)
このタイプは、たとえば下式[I−3]で表される。:
【0057】
【化8】
前記式[I−3]で表される硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[I−3]は、たとえば下式[I−3a]で表されるメルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−3a]から誘導される。
【0058】
【化9】
(式[I−3]、[I−3a]中、Xは、それぞれ独立に、好ましくはR
4(R
4は炭素数が1〜10、好ましくは1〜5の2価炭化水素基、さらに好ましくはプロピレン基またはトリメチレン基を示す。)を示し、Rは、好ましくはそれぞれ独立にメチル基、フェニル基またはトリフルオロメチル基を示し、m=1〜1,500、n=1〜100、0≦p≦n(p:整数)である。)
【0059】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]中の硫黄原子およびこれを誘導するメルカプト変性オルガノポリシロキサン中のメルカプト基(−SH基)の個数は、それぞれ1ブロック(あるいは1分子)当たり、2個以上であり、平均して好ましくは2.0〜100個、より好ましくは2.0〜50個、さらに好ましくは2.0〜30個である。
【0060】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]およびこれを誘導するメルカプト変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ好ましくは900〜250,000、より好ましくは1,500〜150,000である。
【0061】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)に含まれる前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0062】
(硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A))
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)は、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]が前記両末端型である場合には、前記ビニル重合体ブロック[X]が、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]の両末端に付加したブロック共重合体([X]・[Y]・[X]型など)の構造を有し、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]が前記側鎖型である場合には、前記ビニル重合体ブロック[X]が、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]の側鎖に付加した、グラフト共重合体(櫛型共重合体)の構造を有し、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]が前記側鎖両末端型である場合には、前記ビニル重合体ブロック[X]が、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]の両末端および側鎖に付加したスター型共重合体の構造を有すると考えられる。ただし、前記ビニル系モノマー(x)とブロック[Y]が有する硫黄原子をメルカプト基(−SH基)で置き換えた構造を有するメルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)とを反応させる際の複雑な停止反応により、この他のブロック構造の存在も推定し得る。
【0063】
また、前記オルガノポリシロキサンチオブロックビニル共重合体(A)は、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]がメルカプト基(−SH基)を1分子中に2個以上有するメルカプト変性オルガノポリシロキサンから誘導されることで、共重合体(A)中に適度にブロック[Y]が配置される海島構造を有し、この構造が防汚性に大きく寄与する、と考えられる。
【0064】
前記ビニル重合体ブロック[X]のTgは、通常、−75℃以上、好ましくは−30℃以上であることが造膜性の点で望ましい。前記オルガノポリシロキサンチオブロックビニル共重合体(A)のTgは、本発明の組成物の造膜性の観点から通常−75℃以上、好ましくは−30℃以上であり、本発明の防汚塗膜の柔軟性の観点からは30℃以下である。
【0065】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)中に硫黄含有オルガノポリシロキサンブロック[Y]は、ビニル重合体ブロック[X]100質量部に対して通常0.01〜900質量部、好ましくは0.1〜250質量部、より好ましくは40〜100質量部の量で存在していることが望ましい。
【0066】
このような量で各ブロック[X]と[Y]とが硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)に含まれていると、前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)によって難接着面が形成され、良好な防汚性が発揮される。
【0067】
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)は、たとえば、防汚塗料のバインダーとして使用することができ、防汚塗料に配合すれば、環境への負荷や人体への影響が少なく、しかも防汚性およびその持続性に優れ、柔軟性に優れた防汚塗膜を形成可能である。
【0068】
本発明の防汚塗料組成物中の共重合体(A)の量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは15〜99質量%、より好ましくは25〜98質量%、さらに好ましくは50〜95質量%である。なお、本発明において「固形分量」とは、防汚塗料組成物または各成分から任意成分である溶剤を除いた場合の量である。たとえば、防汚塗料組成物または各成分を、105℃で3時間放置して溶剤を揮散させた時の残分の量を「固形分量」とすることができる。
【0069】
(硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)の製造方法)
前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)は、たとえば前記ラジカル重合性を有するビニル系モノマー(x)と、前記メルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)とを混合し、ラジカル重合開始剤等のラジカル発生源の存在下に、通常の反応条件に従って、加熱してまたは光照射して反応させることにより調製することができる。
【0070】
メルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)としては、たとえば前記メルカプト変性オルガノポリシロキサン[I−1a]、[I−2a]および[I−3a]が挙げられる。
前記ビニル系モノマー(x)と前記メルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)との割合((x)の質量:(y)の質量(両者の合計を100とする。))は、通常99〜10:1〜90、好ましくは90〜30:10〜70、さらに好ましくは70〜50:30〜50である。
【0071】
ラジカル重合開始剤を用いる場合には、ラジカル重合開始剤の量は、前記ビニル系モノマー(x)および前記メルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)の合計100質量部に対して、通常0.005〜20質量部である。前記ラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合反応開始剤として使用されているものを広く使用でき、たとえば2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(商品名「ABN−E」、(株)日本ファインケム製)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「カヤエステルO」、化薬アクゾ(株)製)が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
前記ビニル系モノマー(x)と前記メルカプト変性オルガノポリシロキサン(y)との反応は、溶媒中で行ってもよく、溶媒としては、常温で適度の揮発性を有し、これらの原料および製造される共重合体(A)を溶解させ得るものを特に制限なく使用することができ、たとえばキシレン、酢酸ブチルが挙げられる。
前記反応の条件は、たとえば以下のとおりである。
反応時間:5時間〜20時間
反応温度:50℃〜200℃、好ましくは60℃〜150℃
【0073】
(B)ポリエーテル変性シリコーンオイル:
前記ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)は、下記一般式[II]で表され、かつ1分子中に少なくとも1つのポリエーテル基を有する。
【0074】
【化10】
式[II]において、複数個あるR
5はそれぞれ独立に炭素数が1〜3のアルキル基を示す。炭素数が1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基およびプロピル基が挙げられる。
【0075】
X
1、X
2およびX
3はそれぞれ独立に炭素数が1〜5のアルキル基、フェニル基または前記ポリエーテル基を示す。X
1が複数個存在する場合(すなわち、rが2以上の整数の場合)、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0076】
前記炭素数が1〜5のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基が挙げられる。
qは1以上の整数を示し、rは0以上の整数を示す。また、式[II]において、
【0077】
【化11】
で示される2種類の繰返し単位が並ぶ順序は、特に限定されず、ランダム、交互または連続のいずれであってもよい。
【0078】
前記ポリエーテル基は式[IIa]:
−R
6−A−(R
7O)
s−(R
8O)
t−R
9 ・・・[IIa]
で表される。
式[IIa]において、Aは単結合または酸素原子を示す。また、左端の線は隣接するケイ素原子への結合を示す。
【0079】
前記R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立に炭素数が1〜5の2価の炭化水素基、好ましくは2価の飽和炭化水素基、より好ましくは炭素数が2〜5のアルキレン基を示す。このアルキレン基は、直鎖状または分岐状であってもよく、好ましくは直鎖状である。このアルキレン基としては、たとえばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基が挙げられ、エチレン基およびトリメチレン基が好ましい。
【0080】
R
6は好ましくはエチレン基またはトリメチレン基であり、R
7は好ましくはエチレン基であり、R
8は好ましくはトリメチレン基である。
R
9は炭素数が1〜5のアルキル基または水素原子を示し、好ましくはアルキル基である。このアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基が挙げられる。
【0081】
sは1〜30の整数(繰り返し単位数)を示し、tは0〜30の整数(繰り返し単位数)を示す。
前記ポリエーテル基としては、たとえば、-C
3H
6-O-(C
2H
4O)
s-C
2H
5、-C
2H
4-O-(C
3H
6O)
s-CH
3、-C
3H
6-O-(C
2H
4O)
s-CH
3、-C
2H
4-O-(C
3H
6O)
s-CH
3、-C
3H
6-(C
2H
4O)
s-CH
3、-C
2H
4-(C
3H
6O)
s-CH
3、-C
3H
6-(C
2H
4O)
s-H、-C
2H
4-(C
3H
6O)
s-H、-C
3H
6-O-(C
3H
6O)
s-CH
3、-CH
2-O-(C
2H
4O)
s-CH
3、-CH
2-O-(C
2H
4O)
s-H、-C
2H
4-O-(C
2H
4O)
s-CH
3、-C
2H
4-O-(C
2H
4O)
s-H、-CH
2-O-(C
3H
6O)
s-CH
3、-CH
2-O-(C
3H
6O)
s-H、-CH
2-O-(C
4H
8O)
s-CH
3、-CH
2-O-(C
4H
8O)
s-H、-C
3H
6-O-(C
3H
6O)
s-H、-C
4H
8-O-(C
4H
8O)
s-H、-C
3H
6-O-(C
2H
4O)
s-(C
3H
6O)
t-CH
3、-C
3H
6-O-(C
2H
4O)
s-(C
3H
6O)
t-H、-C
3H
6-O-(C
3H
6O)
s-(C
2H
4O)
t-CH
3、および-C
3H
6-O-(C
3H
6O)
s-(C
2H
4O)
t-H等が挙げられる。これらの化学式において、C
2H
4は(CH
2)
2(エチレン基)であり、C
3H
6は(CH
2)
3(トリメチレン基)またはCH(CH
3)CH
2(プロピレン基)であり、好ましくは(CH
2)
3である。
【0082】
前記ポリエーテル基としては、-(CH
2)
3-O-(C
2H
4O)
s-CH
3、-C
2H
4-O-((CH
2)
3O)
s-CH
3が長期防汚性の点で好ましい。
前記ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)としては、
(a):前記式[II]において、X
1が前記式[IIa]で表されるポリエーテル基であり、X
2およびX
3がメチル基等のアルキル基またはフェニル基であり、rが1以上の整数である側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、
(b):前記式[II]において、X
1がメチル基等のアルキル基またはフェニル基であり、X
2およびX
3が前記式[IIa]で表されるポリエーテル基である両末端型ポリエーテル変性シリコーン、
(c):前記式[II]において、X
1ならびにX
2およびX
3の一方が前記式[IIa]で表されるポリエーテル基であり、X
2およびX
3の一方がメチル基等のアルキル基またはフェニル基であり、rが1以上の整数であるポリエーテル変性シリコーン、
(d):前記式[II]において、X
1、X
2およびX
3が前記式[IIa]で表されるポリエーテル基であり、rが1以上の整数であるポリエーテル変性シリコーン、
(e):前記式[II]において、X
2およびX
3の一方が前記式[IIa]で表されるポリエーテル基であり、X
1ならびにX
2およびX
3の一方がメチル基等のアルキル基またはフェニル基であるポリエーテル変性シリコーン
等が挙げられる。これらの中では、防汚性等の観点から、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(a)および両末端型ポリエーテル変性シリコーンオイル(b)が好ましい。
【0083】
また、ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)の数平均分子量は、通常1,000〜50,000、好ましくは3,000〜10,000程度である。ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0084】
前記ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)の親水性親油性バランス(HLB)は、前記ポリエーテル基に含まれるエチレンオキシドの量(質量%)を5で割った値(エチレンオキシド量/5)で示され、好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜7である。このHLBが0.5〜10の範囲にあると防汚剤の溶出量が適度に保たれるため、防汚性が良好な傾向となる。
【0085】
このようなポリエーテル変性シリコーンオイル(B)は、従来公知の方法で製造することができ、市販品であれば「KF−6016」(HLB=4.5)、「KF−6020」(HLB=4.0)、「X−22−6515」(HLB=5.7)(いずれも信越化学工業(株)製)、「ST−114PA」(東レ・ダウコーニング(株)製、HLB=5.6)、「TSF4446」(東芝シリコーン(株)製、HLB=4.8)などを用いることができる。
【0086】
本発明の防汚塗料組成物におけるポリエーテル変性シリコーンオイル(B)の含有量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは1〜85質量%、より好ましくは2〜75質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
【0087】
ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)の含有量がこの範囲にあることで、本発明の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜、および本発明の組成物で網染めされた漁網は、造膜性に優れる。
【0088】
<任意成分>
本発明の防汚塗料組成物には、前述した成分の他に、防汚剤(C)、可塑性樹脂(D)、搖変剤、着色顔料、体質顔料、その他の塗膜形成成分、溶剤等、一般的な塗料組成物に用いられている各種成分を配合することができる。
【0089】
(C)防汚剤:
防汚剤(C)としては、たとえば亜酸化銅、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、メデトミジン、ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルビリジン、トリフェニルボラン・n−オクタデシルアミン、トリフェニルボラン・3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、およびビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0090】
本発明の防汚塗料組成物中の防汚剤(C)の量は、長期防汚性、塗膜耐水性維持(機械的特性維持)という観点からは、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.1〜90質量%、より好ましくは0.5〜80質量%、さらに好ましくは1〜50質量%である。
【0091】
(D)可塑性樹脂:
本発明の防汚塗料組成物は可塑性樹脂(D)(ただし、前記共重合体(A)および後述する他の塗膜形成樹脂を除く。)を含んでいてもよい。前記可塑性樹脂(D)としては、たとえばポリオレフィン、ポリスルフィド、流動パラフィン、ワックス、およびワセリンが挙げられる。可塑性樹脂(D)を添加することにより、防汚塗膜の防汚性を向上させるとともに、さらに防汚塗膜からの防汚剤(C)の溶出を調整し長期に亘る防汚効果を発揮することができる。
【0092】
前記ポリオレフィンとしては、たとえばポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、ポリブテン、およびエチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体が挙げられ、ポリブテンが好ましく、防汚性の面から数平均分子量が280〜1,500のポリブテンが特に好ましい。このようなポリブテンとしては、市販品であれば、たとえばLV−5、LV−10、LV−25、LV−50、LV−100、HV−35、HV−50、HV−100、およびHV−300(いずれも商品名、JXエネルギー(株))が挙げられる。
【0093】
前記ポリスルフィドは、下式[III]:
R−(S)
u−R ・・・[III]
で表わされるジアルキルポリスルフィドである。
【0094】
式[III]において、2つのRはそれぞれ独立に炭素数が1〜20のアルキル基を表す。
uは2以上の整数であり、防汚塗膜の防汚性の観点から好ましくは2〜10の整数である。
【0095】
前記ポリスルフィドとしては、たとえばジエチルペンタスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ジ-tert-ブチルテトラスルフィド、ジ-tert-ペンチルテトラスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジ-tert-オクチルペンタスルフィド、ジ-tert-ノニルペンタスルフィド、ジ-tert-ドデシルペンタスルフィド、およびジノナデシルテトラスルフィドが挙げられる。
【0096】
前記流動パラフィンは、原油を蒸留してガソリン分、灯油分軽油分等を除き、スピンドル油からエンジン油までの留分を採り、精製して得られ、主としてアルキルナフテン類からなる液状炭化水素油であり、好ましくは、JISK9003の規定に適合するものである。
【0097】
前記ワックスとしては、たとえば石油系ワックス、ポリエチレン系ワックス、およびポリプロピレン系ワックスが挙げられる。
前記石油系ワックスとしては、たとえば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびペトロラタムワックスが挙げられ、パラフィンワックスが特に好ましい。
【0098】
前記ワセリンとしては、たとえば白色ワセリン、および黄色ワセリンが挙げられる。
これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような可塑性樹脂(D)のうちでは、ポリブテンおよびポリスルフィドが防汚効果向上の面から好ましい。
【0099】
本発明の防汚塗料組成物における可塑性樹脂(D)の含有量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。可塑性樹脂(D)の含有量がこの範囲にあることで、本発明の組成物から形成される防汚塗膜および本発明の組成物で網染めされた漁網は柔軟性に優れる。
【0100】
タレ止め・沈降防止剤(搖変剤):
本発明の防汚塗料組成物には、塗装時の厚塗り性、タレ止め性の向上や必要により用いられる溶剤不溶分(顔料等)の沈降防止のため、各種タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)が配合されていても良い。
【0101】
タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)としては、たとえば有機ベントナイト、Al、CaまたはZnのステアレート、レシチン、アルキルスルホン酸塩、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水素添加ヒマシ油ワックス、アマイドワックス/酸化ポリエチレンワックス複合系が挙げられる。これらの搖変剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、市販品であれば、たとえば楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」、「ディスパロンA603-20X」(いずれも商品名)が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物におけるタレ止め・沈降防止剤の含有量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、たとえば10質量%以下である。
【0102】
顔料:
防汚剤以外の顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種着色または体質顔料を用いることができる。着色顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青、チタン白、ベンガラ等があげられる。体質顔料としては、例えば、バライト粉、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、亜鉛華(ZnO、酸化亜鉛)、鉛白、鉛丹、亜鉛末等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物における顔料の含有量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、たとえば45質量%以下である。
【0103】
他の塗膜形成成分:
本発明の防汚塗料組成物には、塗膜形成成分として前記オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)以外の樹脂(以下「他の塗膜形成成分」ともいう。)が含まれていてもよい。前記他の塗膜形成成分としては、たとえばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂(ゴム)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、クマロン樹脂、トリアルキルシリル(メタ)アクリレート(共)重合体(シリル系樹脂)、石油樹脂、ケトン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルキルエーテル樹脂、ロジン(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン)等の水溶性樹脂が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物における他の塗膜形成成分の含有量は、防汚塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、たとえば20質量%以下である。
【0104】
溶剤:
本発明の防汚塗料組成物においては、前記の各種成分は、溶剤に溶解若しくは分散していてもよい。前記溶剤としては、たとえば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など、通常防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。前記脂肪族炭化水素系溶剤としては、たとえばターペンが挙げられ、前記芳香族炭化水素系溶剤としては、たとえばキシレン、およびトルエンが挙げられ、前記ケトン系溶剤としては、たとえばメチルイソブチルケトン(MIBK)が挙げられ、前記エステル系溶剤としては、たとえば酢酸ブチルが挙げられ、前記エーテル系溶剤としては、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAC)が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
これらの溶剤の中では、溶解力、引火点、蒸発速度の点から、キシレン、エチルベンゼン、酢酸ブチル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、キシレン、および酢酸ブチルがさらに好ましい。
本発明では、これら溶剤の添加量は特に限定されないが、防汚塗料組成物の量を100質量%とすると、たとえば10〜90質量%である。
【0106】
[防汚塗料組成物の製造方法]
本発明の防汚塗料組成物は、たとえば所定の量の前記各成分を、塗料組成物の製造における一般的な装置(ハイスピードディスパー、サンドグラインドミル、バスケットミル、三本ロール、ボールミル、アトライターなど)および手法を用いて混合、撹拌することにより製造できる。
【0107】
たとえば溶液重合により得られる前記オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体(A)の溶液に、前記ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)、および必要により防汚剤(C)等の他の成分を所定の割合で一度あるいは任意の順序で加えて撹拌、混合して防汚塗料組成物を製造してもよい。
【0108】
[防汚塗料組成物の用途]
本発明の防汚塗料組成物は、たとえば、火力、原子力発電所の給排水口等の水中構造物、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河、水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶(例:船底部)、漁具(例:ロープ、漁網、浮き子、ブイ)などの海水または真水と接触する各種基材の表面の防汚にも使用できる。具体的には、本発明の防汚塗料組成物を基材の表面に常法に従って1回〜複数回塗布し、または含浸させ、次いで乾燥させるなどして硬化させることにより、防汚性に優れ、防汚剤成分が長期間に亘って徐放可能であり、厚塗りしても適度の可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜が形成される。このように形成できる本発明の防汚塗膜は、本発明の防汚塗料組成物の固形分からなる。なお、表面に防汚塗膜が設けられた基材を「防汚塗膜付き基材」ともいう。
【0109】
また、本発明の防汚塗料組成物は、漁具の塗装、特に漁網の網染めに好ましく使用される。漁網の材質としては、ポリエチレン、ナイロン、麻、金属、ポリエステルなどが挙げられ、このような材質の場合は、防汚塗料組成物が良好に含浸付着する。漁網の網染めは、一般的な手法を用いて行うことができ、例えば、防汚塗料組成物の中に漁網を浸漬して漁網の繊維内あるいは繊維間に防汚塗料組成物を浸透含浸させた後、漁網を引き上げ乾燥させるなどして防汚塗料組成物を硬化させることにより行うことができる。また、敷延あるいは広げて吊るした漁網の表裏面に防汚塗料組成物を静電塗装の方法で、あるいはエアガン、エアレス塗装等の方法で散布してもよい。このように網染めによる漁網の重量増加は、漁網1kg当たり、通常80〜300g程度である。本発明の組成物で網染めされた漁網は、その繊維内または繊維間に本発明の防汚塗料組成物の固形分を有しており、さらにその表面に本発明の防汚塗膜を有していてもよい。
【0110】
本発明の組成物から形成された防汚塗膜は柔軟性に優れているため、特に漁網に関しては、本発明の防汚塗料組成物を含浸付着させて乾燥させた漁網を自在に変形させても塗膜が剥落することなく、また本発明の防汚塗料組成物で網染めした漁網を変形させた後に静置すると即座に変形させる前の形状に回復するという特徴がある。
【0111】
本発明の組成物から形成された防汚塗膜ないし防汚塗膜付き基材、本発明のおよび本発明の組成物で網染めされた漁網は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ、ヒドラ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できるなど防汚性に優れている。
【0112】
さらに、本発明の基材の防汚方法は、本発明の防汚塗料組成物を基材に塗布するかまたは含浸させ、次いで硬化させるというものであり、この防汚方法により、基材へのアオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ、ヒドラ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明これらの実施例によりなんら限定されるものではない。実施例、比較例で用いた配合成分、試験方法等は以下のとおりである。
【0114】
[測定方法]
<硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液の粘度>
硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液の粘度は、25℃でE型粘度計(東機産業(株)製)により測定した。
【0115】
<硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液の固形分濃度(NV)>
固形分とは、樹脂および溶剤等が含まれた、反応混合物、塗料または未硬化塗膜等を105℃熱風乾燥機中で3時間乾燥して溶剤等を揮散させたときの加熱残分をいう。固形分は、通常は樹脂分さらには顔料等を含み、塗膜形成成分となる。
【0116】
<硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)>
硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した。
装置 :「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)
カラム:「TSKgel SuperH2000」及び「TSKgel SuperH4000」を連結(いずれも、東ソー(株)製、6mm(内径)×15cm(長さ))
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速 :0.500ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
サンプル調製法:各製造例で調製された重合体溶液に少量の塩化カルシウムを加えて脱水した後、メンブレムフィルターで濾過して得られた濾物をGPC測定サンプルとした。
【0117】
[製造例1](硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液(A−1)の製造)
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、滴下装置および還流冷却管を備えた反応容器に、酢酸ブチル35質量部およびキシレン35質量部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で90℃まで昇温した。次いで、MMA(略号の意味は表2に記載する。)を40質量部、BAを40質量部、SLMAを10質量部、および重合開始剤であるカヤエステルOを0.1質量部含有する混合液Aと、メルカプト変性オルガノポリシロキサン「KF−2001」を10質量部、酢酸ブチルを5質量部、およびキシレン5質量部含有する混合液Bとを、同時に、内温が90℃に保たれた前記反応容器に滴下開始した。
【0118】
混合液A、Bともに2時間かけて全量を滴下した。滴下終了2時間後からカヤエステルOを0.1質量部ずつ1時間毎に3回反応容器に加え、さらに保温しながら1.5時間攪拌を行い、その後希釈溶剤(酢酸ブチル7.5質量部およびキシレン7.5質量部)を加え、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液(A−1)を得た。溶液(A−1)およびこれに含まれる硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の特性値を表1に示す。
【0119】
[製造例2](硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液(A−2)の製造)
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、滴下装置および還流冷却管を備えた反応容器に、酢酸ブチル85質量部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で90℃まで昇温した。次いで、MMAを40質量部、BAを35質量部、SLMAを10質量部、および重合開始剤であるカヤエステルOを1.0質量部含有する混合液Aと、メルカプト変性オルガノポリシロキサン「KF−2001」を15質量部、および酢酸ブチルを10質量部含有する混合液Bとを、同時に、内温が90℃に保たれた前記反応容器に滴下開始した。
【0120】
混合液A、Bともに2時間かけて全量を滴下した。滴下終了2時間後からカヤエステルOを0.1質量部ずつ1時間毎に3回反応容器に加え、さらに保温しながら1.5時間攪拌を行い、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体溶液(A−2)を得た。溶液(A−2)およびこれに含まれる硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の特性値を表1に示す。
【0121】
[製造例3〜5、7、8]
配合組成を表1に示す割合に変えた以外は、製造例1と同様にして共重合体を調製した。得られた溶液(A−3)〜(A−5)、(A−7)、(A−8)およびこれらに含まれる硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の特性値を表1に示す。
【0122】
[製造例6、9]
配合組成を表1に示す割合に変えた以外は、製造例2と同様にして共重合体を調製した。得られた溶液(A−6)、(A−9)およびこれらに含まれる硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の特性値を表1に示す。
【0123】
[製造例10]
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、滴下装置および還流冷却管を備えた反応容器に、酢酸ブチル50質量部を仕込んで窒素ガス雰囲気中で100℃まで昇温した。次いで、MMAを40質量部、2−EHAを10質量部、M−230Gを5質量部、および重合開始剤であるABN−Eを2.2質量部含有する混合液Aと、メルカプト変性オルガノポリシロキサン「KF−2001」を25質量部、および酢酸ブチルを25質量部含有する混合液Bとを、同時に、内温が100℃に保たれた前記反応容器に滴下開始した。
【0124】
混合液Aは3時間かけて全量を滴下し、混合液Bは1.5時間かけて全量を滴下した。混合液Aの滴下終了1時間後からABN−Eを0.2質量部ずつ45分毎に3回反応容器加え、さらに保温しながら1.5時間攪拌を行い、共重合体溶液(N−1)を得た。得られた溶液(N−1)およびこれに含まれる硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体の特性値を表1に示す。
【0125】
【表1】
なお、表1の原材料の詳細は以下の通りである。
【0126】
【表2】
【0127】
[実施例1〜33、比較例1〜27]
前記製造例1〜10により得られた硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体を含む溶液(A−1〜A−9、N−1)、ポリエーテル変性シリコーンオイル(B)など、表3〜表5に示す成分を表に示す割合で防汚塗料組成物を製造する方法については、下記の方法を用いた。
【0128】
<液状成分のみより構成される組成物>
表3〜5に示す成分を容器に仕込み、ハイスピードディスパーを用いて十分に攪拌・混合した後、80メッシュのフィルターにてろ過して所望の防汚塗料組成物を得た。
【0129】
<顔料成分を含む組成物>
表3〜5に示す成分を容器に仕込み、ペイントシェーカーを用いて十分に分散・混合した後、80メッシュのフィルターにてろ過して所望の防汚塗料組成物を得た。
【0130】
<塗膜の柔軟性の評価>
実施例および比較例で調製した各防汚塗料組成物に漁網(ポリエチレン製無結節網(7節、400デニール、50本、縦15cm×横10cm))を1〜3分間程度浸漬し、取り出した後、7日間風乾し、塗膜付き漁網を得た。
【0131】
この塗膜付き漁網を直径1cmのガラス棒に巻きつけた際の塗膜の剥落程度、およびこの塗膜付き漁網をガラス棒に巻きつけた状態からガラス棒を抜き取り、漁網を静置させた際に、漁網の形状が巻きつける前の状態に戻るまでの回復程度により塗膜の柔軟性を評価した。
(評価基準)剥落度
A:塗膜の剥落無し
B:塗膜の剥落あり
C:塗膜の剥落顕著
(評価基準)回復度
a:元の状態まで即座(数秒程度)に回復する
b:元の状態に回復するまでやや時間を要す
c:元の状態まで回復しない
【0132】
<防汚性の評価>
防汚性の評価は、実施例および比較例で調製した各防汚塗料組成物に漁網(ポリエチレン製無結節網(7節、400デニール、50本、縦15cm×横10cm))を1〜3分間程度浸漬し、取り出した後、7日間風乾し、塗膜付き漁網を得た。この塗膜付き漁網を80cm×40cmのステンレス枠に固定し、広島湾内に設置された筏より水面下約2mの場所に浸漬し、浸漬開始から2ヶ月毎に漁網への生物の付着状況を目視観察した。結果を表3〜5に示す。
評価は、漁網の水棲生物が付着している部分の面積(付着面積)(%)(漁網の全面積を100%とする。)を測定することにより行なった。
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
なお、表3〜5の原材料の詳細は以下の通りである。
【0136】
【表6】