(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ループ状かつ矩形状のループ状素子と、前記ループ状素子とは独立して設置された無給電素子とを有し円偏波の電波を送信又は受信するループアンテナの予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータ毎に前記性能基準に応じて予め定められる設定固定値と、前記複数のパラメータで共通に前記性能基準に応じて定められる変数であって前記ループアンテナが設置される誘電体の誘電率に応じた前記変数とに基づいて、前記誘電率に応じた前記複数のパラメータを特定するパラメータ特定工程を有し、
前記誘電体は、シート状に形成され、厚みが予め特定されていることを特徴とするループアンテナ特定方法。
矩形状かつループ状のループ状素子と、前記ループ状素子とは独立して設置された無給電素子とを有し円偏波の電波を送信又は受信するループアンテナの予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータを演算する演算部を備え、
前記演算部は、
前記複数のパラメータ毎に前記性能基準に応じて予め定められた設定固定値と、前記複数のパラメータで共通に前記性能基準に応じて定められる変数であって前記ループアンテナが設置される誘電体の誘電率に応じた前記変数とに基づいて、前記誘電率に応じた前記複数のパラメータを特定し、
前記誘電体は、シート状に形成され、厚みが予め特定されていることを特徴とするループアンテナ特定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ループアンテナを設置する場所の誘電率に応じて、性能基準を満たすループアンテナのパターンを特定する必要があるが、当該ループアンテナのパターンの特定が複雑になる傾向がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、誘電率に応じて性能基準を満たすループアンテナのパターンを効率的に特定することができるループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るループアンテナ特定方法は、ループ状かつ矩形状のループ状素子と、前記ループ状素子とは独立して設置された無給電素子とを有し円偏波の電波を送信又は受信するループアンテナの予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータ毎に前記性能基準に応じて予め定められる設定固定値と、前記複数のパラメータで共通に前記性能基準に応じて定められる変数であって前記ループアンテナが設置される誘電体の誘電率に応じた前記変数とに基づいて、前記誘電率に応じた前記複数のパラメータを特定するパラメータ特定工程を有
し、前記誘電体は、シート状に形成され、厚みが予め特定されていることを特徴とする。
【0007】
また、上記ループアンテナ特定方法において、前記性能基準は、電圧定在波比に基づく基準であり、前記無給電素子は、棒状に形成されており、前記ループ状素子の一辺に沿って設置される第一無給電素子部と、前記第一無給電素子部に連結され当該第一無給電素子部とは異なる方向に延在する第二無給電素子部とを有し、前記各パラメータは、前記第二無給電素子部の延在方向の長さを特定する第一パラメータと、前記ループ状素子の長辺の長さを特定する第二パラメータと、前記ループ状素子の短辺の長さを特定する第三パラメータと、前記ループ状素子と前記第一無給電素子部との対向方向の間隔を特定する第四パラメータと、前記ループ状素子と前記第一無給電素子部とが重なる部分の長さである結合長を特定する第五パラメータとを含み、前記パラメータ特定工程では、前記変数、及び、前記設定固定値である第一設定固定値に基づいて前記第一パラメータを特定し、前記変数、及び、前記設定固定値である第二設定固定値に基づいて前記第二パラメータを特定し、前記変数、及び、前記設定固定値である第三設定固定値に基づいて前記第三パラメータを特定し、前記変数、及び、前記設定固定値である第四設定固定値に基づいて前記第四パラメータを特定し、前記変数、及び、前記設定固定値である第五設定固定値に基づいて前記第五パラメータを特定することが好ましい。
【0008】
また、上記ループアンテナ特定方法において、前記変数をXとし、
前記誘電体の厚みを5mmとし、前記誘電率をε
rとし、前記ループアンテナが前記電波を送信又は受信する周波数を1.575GHzとし、前記ループアンテナの導線の延在方向に直交する直交方向の幅長を0.5mmとし、前記ループアンテナの材料を銀ペースト(電気伝導率=2500000[Simens/m])とし、前記ループアンテナの前記性能基準を電圧定在波比が2.0以下とした場合、前記変数Xを要求される前記誘電率ε
rに基づいて以下の式(1)により算出し、前記第一パラメータY1を以下の式(2)により算出し、前記第二パラメータY2を以下の式(3)により算出し、前記第三パラメータY3を以下の式(4)により算出し、前記第四パラメータY4を以下の式(5)により算出し、前記第五パラメータY5を以下の式(6)により算出することが好ましい。
X=0.0916ε
r5−1.5309ε
r4+9.4866ε
r3−25.882ε
r2+25.088ε
r+8.637 ・・・(1)
Y1=(32.27+X)×1.25193−30 [mm] ・・・(2)
Y2=(32.27+X)×1.4 [mm] ・・・(3)
Y3=(32.27+X)×0.6 [mm] ・・・(4)
Y4=X×0.4+0.099 [mm] ・・・(5)
Y5=((32.27+X)×0.6353)×1.4+12.5−0.99637 [mm] ・・・(6)
【0009】
また、本発明に係るループアンテナ特定装置は、矩形状かつループ状のループ状素子と、前記ループ状素子とは独立して設置された無給電素子とを有し円偏波の電波を送信又は受信するループアンテナの予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータを演算する演算部を備え、前記演算部は、前記複数のパラメータ毎に前記性能基準に応じて予め定められた設定固定値と、前記複数のパラメータで共通に前記性能基準に応じて定められる変数であって前記ループアンテナが設置される誘電体の誘電率に応じた前記変数とに基づいて、前記誘電率に応じた前記複数のパラメータを特定
し、前記誘電体は、シート状に形成され、厚みが予め特定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置は、ループアンテナの性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータ毎に性能基準に応じて予め定められる設定固定値と、複数のパラメータで共通にループアンテナの性能基準に応じて定められる変数であってループアンテナが設置される誘電体の誘電率に応じた変数とに基づいて、誘電率に応じた複数のパラメータを特定する。これにより、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置は、誘電率に応じて性能基準を満たすループアンテナのパターンを効率的に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
実施形態に係るループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置について説明する。ループアンテナ100は、例えば、車両のフロントガラスやインストルメンタルパネル等の場所であって電波を送信又は受信することが可能な場所に設置される。ループアンテナ100は、当該ループアンテナ100が設置される場所によっては、誘電体の誘電率(比誘電率)ε
rが異なる場合がある。実施形態に係るループアンテナ特定装置1(ループアンテナ特定方法)は、ループアンテナ100が設置される場所(誘電体)の誘電率ε
rに応じてループアンテナ100の各部の寸法や位置関係を規定するパターンを自動的に特定するものである。なお、誘電率ε
rは、誘電体で誘電分極が生じる程度を表す値であり、誘電体の固有の定数である。
【0014】
ループアンテナ特定装置1は、
図1に示すように、入力部10と、記憶部20と、演算部30と、出力部40とを備える。入力部10は、例えば、キーボードやマウス等から構成され、オペレータにより操作されてデータを入力するものである。入力部10は、演算部30に接続され、入力されたデータを演算部30に出力する。記憶部20は、ループアンテナ100のパターンを設計するためのプログラム(例えば、後述する式(1)〜式(6)等)や各種データ等を記憶するものである。記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等から構成される。記憶部20は、演算部30に接続され、演算部30により各種データ等の読み取りや書き込みが行われる。演算部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、各種演算を行うものである。演算部30は、例えば、入力部10から出力されたデータと記憶部20に記憶された各種データとに基づいて演算を行う。演算部30は、出力部40に接続され、演算結果を出力部40に出力する。出力部40は、例えば、ディスプレイであり、情報を出力するものである。出力部40は、演算部30に接続され、演算部30から出力された演算結果を出力する。
【0015】
次に、ループアンテナ100の構成例について説明する。ループアンテナ100は、円偏波の電波を送信又は受信するものである。なお、実施形態では、ループアンテナ100は、説明の理解を容易にするためにGPS(Global Positioning System)信号等の電波を受信するものとして説明する。ループアンテナ100は、
図2に示すように、ループ状素子101と、第一給電端子102と、第二給電端子103と、無給電素子104とを備える。ループ状素子101、第一給電端子102、第二給電端子103、及び、無給電素子104は、例えば、銀ペーストや導電性インク、銅箔等の導体によってシート状の透明フィルム2の上に形成される。
【0016】
ループ状素子101は、電波を受信し電気信号に変換するものである。ループ状素子101は、ループ状(環状)かつ矩形状に形成されている。ループ状素子101は、円偏波に対する利得を高めるように形成される。ループ状素子101は、一端が第一給電端子102に接続され、他端が第二給電端子103に接続される。
【0017】
第一給電端子102及び第二給電端子103は、例えば、図示しないコネクタに接続され、当該コネクタを介して図示しない信号処理部に接続される。
【0018】
無給電素子104は、受信する円偏波に対して軸比を良好にするものである。無給電素子104は、V字形の棒状に形成されており、ループ状素子101とは独立して当該ループ状素子101の外側に設置されている。無給電素子104は、ループ状素子101の一辺に沿って設置される第一無給電素子部104aと、第一無給電素子部104aに連結され当該第一無給電素子部104aとは異なる方向に延在する第二無給電素子部104bとを有する。
【0019】
上述のように構成されたループアンテナ100は、ループ状素子101により受信した電波を電気信号に変換し、当該電気信号を第一及び第二給電端子102、103に接続されたコネクタを介して信号処理部に出力する。
【0020】
次に、ループアンテナ100が設置される誘電体の誘電率ε
rに応じて当該ループアンテナ100のパターンを特定する方法について説明する。ループアンテナ特定装置1は、ループアンテナ100において、予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータを特定するものである。ループアンテナ特定装置1によって特定される複数のパラメータは、ループアンテナ100のパターンの寸法や位置関係を規定するパラメータのうち、予め定められた性能基準に影響を与えるパラメータである。当該複数のパラメータは、複数のパラメータ毎に性能基準に応じて予め定められる設定固定値と、複数のパラメータで共通に性能基準に応じて定められる変数Xであってループアンテナ100が設置される誘電体の誘電率ε
rに応じた変数Xとに基づいて規定される。当該各設定固定値、及び、誘電率ε
rに応じた変数Xは、これらに基づいて特定される各パラメータを基にシミュレーション等によって算出される値が予め設定された性能基準を満たすように予め調整され設定される。そして、ループアンテナ特定装置1は、予め調整され設定された当該各設定固定値、及び、誘電率ε
rに応じた変数Xに基づいて、要求された誘電率ε
rに応じて予め定められた性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータを特定する。
【0021】
以下の説明では、一例として、満たすべき性能基準としては、例えば、シミュレーションにおいてVSWR(電圧定在波比)が2.0以下であることとする。VSWRとは、ループアンテナ100により高周波の電波を受信する場合に電波の一部が回路上で反射されてしまう度合である。VSWRの値が1の場合は反射がない状態であり、反射が大きくなるほどVSWR値が大きくなり損失が大きくなる。特定する複数のパラメータは、ループアンテナ100のパターンの寸法や位置関係を規定するパラメータのうち、当該VSWRに影響を与える下記の第一パラメータY1〜第五パラメータY5であるものとする。第一パラメータY1は、第二無給電素子部104bの延在方向の長さW1を特定するパラメータである。第二パラメータY2は、ループ状素子101の長辺の長さW2を特定するパラメータである。第三パラメータY3は、ループ状素子101の短辺の長さW3を特定するパラメータである。第四パラメータY4は、ループ状素子101と第一無給電素子部104aとの対向方向の間隔W4を特定するパラメータである。第五パラメータY5は、ループ状素子101と第一無給電素子部104aとが重なる部分の長さである結合長W5を特定するパラメータである。
【0022】
第一パラメータY1〜第五パラメータY5は、上述したように、第一パラメータY1〜第五パラメータY5毎に、ループアンテナ100の性能基準(VSWR)に基づいて予め定められる設定固定値と、各第一パラメータY1〜第五パラメータY5で共通にループアンテナ100の性能基準(VSWR)に基づいて定められる1つの変数Xとに基づいて規定される。すなわち言い換えれば、第一パラメータY1は、変数X、及び、設定固定値である第一設定固定値に基づいて特定されるものである。同様に、第二パラメータY2は、変数X、及び、設定固定値である第二設定固定値に基づいて特定されるものである。第三パラメータY3は、変数X、及び、設定固定値である第三設定固定値に基づいて特定されるものである。第四パラメータY4は、変数X、及び、設定固定値である第四設定固定値に基づいて特定されるものである。第五パラメータY5は、変数X、及び、設定固定値である第五設定固定値に基づいて特定されるものである。そして、当該各第一設定固定値〜第五設定固定値、及び、誘電率ε
rに応じた変数Xは、これらに基づいて特定される第一パラメータY1〜第五パラメータY5を基にシミュレーション等によって算出されるVSWRが2.0以下となるように予め調整され設定される。以下では、当該各設定固定値、及び、変数Xを予め調整し設定する方法の一例を説明する。
【0023】
まず、第一パラメータY1〜第五パラメータY5の各設定固定値を暫定的に任意の値として仮決定する。この場合、例えば、
図3に示す基本ループアンテナ200を基準として、当該基本ループアンテナ200に対して上述の長さW1、長さW2、長さW3、間隔W4、結合長W5に相当する部分に任意の変形を加えた値に基づいて暫定的な各設定固定値を仮決定するようにしてもよい。
【0024】
次に、任意の誘電率ε
rに対して、当該誘電率ε
rに応じた任意の変数Xを様々な値に変更しつつ、当該任意の変数Xと上記のように暫定的に仮決定した各設定固定値とに基づいて第一パラメータY1〜第五パラメータY5を特定する。そして、当該特定した第一パラメータY1〜第五パラメータY5を基にシミュレーション等によって算出されるVSWRを検証し、当該VSWRが2.0以下であることを満たす変数Xの候補値を特定する。ここで、VSWRは、例えば、変数Xの候補値と暫定的に仮決定した各設定固定値とに基づいて特定される長さW1、長さW2、長さW3、間隔W4、結合長W5、及び、任意の誘電率ε
r等に基づき予め定められたシミュレーション条件を用いて算出することができる。シミュレーション条件は、例えば、数式モデルや各種ソフトウェアによって定まる。ソフトウェアとしては、例えば、ANSYS社の電磁界シミュレータ(HFSS)を用いることが考えられる。電磁界シミュレータ(HFSS)は、有限要素法に基づく3D電磁界計算を行うことでVSWRを算出する。なお、ソフトウェアは、電磁界シミュレータ(HFSS)と同等であれば他のソフトフェアを用いてもよい。電磁界シミュレータ(HFSS)により算出したVSWRが2.0以下であることを満たす誘電率ε
rと変数Xの候補値との組み合わせを複数組特定する。そして、上記のようにして特定された任意の誘電率ε
rと変数Xの候補値との複数の組み合わせに基づいて誘電率ε
rに応じた変数Xの近似式を特定する。
【0025】
次に、上記のようにして特定された誘電率ε
rに応じた変数Xについての近似式によって規定される誘電率ε
rと変数Xとの各組み合わせにおいて、当該変数Xと、上記のように暫定的に仮決定した各設定固定値とに基づいて再度第一パラメータY1〜第五パラメータY5を特定する。そして、特定した第一パラメータY1〜第五パラメータY5を基にシミュレーション等によって算出されるVSWRを検証し、すべての誘電率ε
rと変数Xとの組み合わせにおいて当該VSWRが2.0以下となるか否かを判定する。すべての誘電率ε
rと変数Xとの組み合わせにおいて当該VSWRが2.0以下となる場合には、当該誘電率ε
rに応じた変数Xの近似式、及び、上記のように暫定的に仮決定した各設定固定値を、実際に性能基準(VSWR)を満たす第一パラメータY1〜第五パラメータY5を特定するために用いる真の設定固定値、変数Xとして設定する。すべての誘電率ε
rと変数Xとの組み合わせにおいて当該VSWRが2.0以下とならない場合には、冒頭で暫定的に仮決定した各設定固定値を再調整し、以降の手順を繰り返し行っていく。
【0026】
一例として、下記に示す式(1)〜(6)は、ループアンテナ100が送信又は受信する電波の周波数を1.575GHzとし、ループアンテナ100の導線の延在方向に直交する直交方向の幅長Pを0.5mmとし、ループアンテナ100の材料を銀ペースト(電気伝導率=2500000[Simens/m])とし、誘電体の厚みを5mmとし、ループアンテナ100の上方を空気層とした場合に、上記のようにして特定された変数X、及び、各設定固定値に基づく第一パラメータY1〜第五パラメータY5の関係式の一例である。
【0027】
これらの条件において、
図4には、上記のようにして特定された任意の誘電率ε
rと変数Xの候補値との組み合わせ、及び、シミュレーション等によって算出されたVSWRの一例を示している。
【0028】
また、
図5は、上記のようにして特定された任意の誘電率ε
rと変数Xの候補値との複数の組み合わせをプロットした図であり、
図5に示す曲線が上記で特定した誘電率ε
rに応じた変数Xについての近似式によって定義される曲線に相当する。
【0029】
変数Xは、上記のようにして特定された以下の式(1)により規定できる。式(1)のε
rは、誘電率である。
X=0.0916ε
r5−1.5309ε
r4+9.4866ε
r3−25.882ε
r2+25.088ε
r+8.637 ・・・(1)
【0030】
ここで、
図6は、当該近似式としての式(1)の正当性についてシミュレーションした結果である。
図6に示す例では、一例として誘電率ε
rが「2.0」の場合において、変数Xを「5.6」〜「13.6」の範囲で変化させて後述する式(2)〜式(6)に基づいてループアンテナ100のパターンを特定し、特定したそれぞれのループアンテナ100のパターンについてVSWRを検証した。検証の結果、式(1)により求めた変数Xが「9.62」の場合にVSWRが「2.0」以下であると共にVSWRが最も小さい値となり、変数Xが「9.6」付近以外の場合、VSWRが「2.0」を超過することが分かった。これにより、式(1)は、誘電率ε
rが「2.0」の場合に、VSWRが「2.0」以下になる変数Xを算出できていることが分かる。
【0031】
第一パラメータY1は、上記のようにして特定された設定固定値を用いた以下の式(2)により規定できる。ここで、式(2)のXは変数であり、式(2)の値「32.27」、「1.25193」及び「−30」は、第一設定固定値である。式(2)の値「32.27」は、例えば、
図3に示す基本ループアンテナ200のループ状素子201の一辺の長さである。式(2)の値「1.25193」、「−30」は、上記のような設定固定値調整において基本ループアンテナ200を基準として長さW1を調整するための調整値である。
Y1=(32.27+X)×1.25193−30 [mm] ・・・(2)
【0032】
第二パラメータY2は、上記のようにして特定された設定固定値を用いた以下の式(3)により規定できる。式(3)のXは変数であり、式(3)の値「32.27」及び「1.4」は、第二設定固定値である。式(3)の値「32.27」は、基本ループアンテナ200のループ状素子201の一辺の長さである。式(3)の値「1.4」は、設定固定値調整において基本ループアンテナ200を基準として長さW2を調整するための調整値である。
Y2=(32.27+X)×1.4 [mm] ・・・(3)
【0033】
第三パラメータY3は、上記のようにして特定された設定固定値を用いた以下の式(4)により規定できる。式(4)のXは変数であり、式(4)の値「32.27」及び「0.6」は、第三設定固定値である。式(4)の値「32.27」は、基本ループアンテナ200のループ状素子201の一辺の長さである。式(4)の値「0.6」は、設定固定値調整において基本ループアンテナ200を基準として長さW3を調整するための調整値である。
Y3=(32.27+X)×0.6 [mm] ・・・(4)
【0034】
第四パラメータY4は、上記のようにして特定された設定固定値を用いた以下の式(5)により規定できる。式(5)のXは変数であり、式(5)の値「0.4」及び「0.099」は、第四設定固定値である。式(5)の値「0.4」及び「0.099」は、設定固定値調整において基本ループアンテナ200を基準として間隔W4を調整するための調整値である。
Y4=X×0.4+0.099 [mm] ・・・(5)
【0035】
第五パラメータY5は、上記のようにして特定された設定固定値を用いた以下の式(6)により規定できる。式(6)のXは変数であり、式(6)の値「32.27」、「0.6353」、「1.4」、「12.5」及び「0.99637」は、第五設定固定値である。式(6)の値「32.27」は、基本ループアンテナ200のループ状素子201の一辺の長さである。また、式(6)の値「12.5」は、第一無給電素子部204aの延在方向の長さである。また、式(6)の値「0.99637」は、第一無給電素子部204aにおけるループ状素子201とは重ならない部分の長さである。また、式(6)の値「0.6353」、「1.4」、は、設定固定値調整において基本ループアンテナ200を基準として結合長W5を調整するための調整値である。
Y5=((32.27+X)×0.6353)×1.4+12.5−0.99637 [mm] ・・・(6)
【0036】
次に、
図7を参照してループアンテナ特定方法について説明する。ループアンテナ特定方法は、前提条件として、例えば、電波の周波数を1.575GHzとし、ループアンテナ100の幅長Pを0.5mmとし、ループアンテナ100の材料を銀ペースト(電気伝導率=2500000[Simens/m])とし、ループアンテナ100の性能基準としてVSWRが2.0以下とし、誘電体の厚みを5mmとし、ループアンテナ100の上方を空気層とする。ループアンテナ特定方法は、誘電率入力工程と、変数決定工程と、パラメータ特定工程とを有する。誘電率入力工程は、例えばキーボードやマウス等の入力部10から誘電率ε
rが入力される(ステップS1)。変数決定工程は、演算部30が変数Xを決定する(ステップS2)。例えば、演算部30は、要求された誘電率ε
rを式(1)に代入して変数Xを決定する。パラメータ特定工程は、演算部30が各パラメータY1〜Y5を特定する(ステップS3)。例えば、演算部30は、各パラメータY1〜Y5毎に、性能基準を満たす設定固定値と、性能基準を満たし且つ誘電率ε
rに応じた共通の変数Xとに基づいて、要求された誘電率ε
rに応じた各パラメータY1〜Y5を特定する。具体的には、演算部30は、式(2)〜式(6)の変数Xに上述のステップS2で決定した変数Xを代入し、第一パラメータY1〜第五パラメータY5を特定する。
【0037】
次に、一例として、誘電率ε
rが「5.5」である場合と、誘電率ε
rが「2.5」である場合とにおいて、それぞれループアンテナ100のパターンを特定する例について説明する。誘電率ε
rが「5.5」である場合、式(1)により変数Xが「1.9」として算出される。この場合、ループアンテナ100は、式(2)〜式(6)により第一パラメータY1(長さW1)が12.8mmと算出され、第二パラメータY2(長さW2)が47.8mmと算出され、第三パラメータY3(長さW3)が20.5mmと算出され、第四パラメータY4(間隔W4)が0.9mmと算出され、第五パラメータY5(結合長W5)が41.4mmと算出され、ループ周囲長が136.6と算出される。この例では、ループアンテナ100は、VSWRが「1.93」であり、VSWRが「2.0」以下を満たしている。
【0038】
また、誘電率ε
rが「2.5」である場合、式(1)により変数Xが「6.9」として算出される。この場合、ループアンテナ100は、式(2)〜式(6)により第一パラメータY1(長さW1)が19.0mmと算出され、第二パラメータY2(長さW2)が54.8mmと算出され、第三パラメータY3(長さW3)が23.5mmと算出され、第四パラメータY4(間隔W4)が2.9mmと算出され、第五パラメータY5(結合長W5)が46.3mmと算出され、ループ周囲長が156.6mmと算出される。この例では、ループアンテナ100は、VSWRが「1.97」であり、VSWRが「2.0」以下を満たしている。
【0039】
以上のように、実施形態に係るループアンテナ特定装置1は、ループアンテナ100の性能基準を満たすパターンを規定する複数のパラメータY1〜Y5を演算する演算部30を備え、演算部30は、複数のパラメータY1〜Y5毎にループアンテナ100の性能基準に応じて予め定められた設定固定値と、複数のパラメータY1〜Y5で共通にループアンテナ100の性能基準に応じて定められる変数Xであってループアンテナ100が設置される誘電体の誘電率ε
rに応じた変数Xとに基づいて、誘電率ε
rに応じた複数のパラメータY1〜Y5を特定する。また、ループアンテナ特定方法は、上述の各設定固定値と変数Xとを用いて誘電率ε
rに応じた複数のパラメータY1〜Y5を特定するパラメータ特定工程を有する。これにより、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1は、複数のパラメータY1〜Y5を誘電率ε
rに応じた共通の変数Xに基づいて特定することができる。従って、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1は、各パラメータY1〜Y5において、誘電率ε
rに応じた共通の変数Xを、ループアンテナ100が設置される誘電体の誘電率ε
rに基づいて変更することにより、性能基準を満たすループアンテナ100のパターンを効率的に特定することができる。これにより、ループアンテナ100のパターンに基づいて性能基準を満たすループアンテナ100を容易に形成することができる。
【0040】
ここでは、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1において、変数X及び第一設定固定値に基づいて第一パラメータY1を特定し、変数X及び第二設定固定値に基づいて第二パラメータY2を特定し、変数X及び第三設定固定値に基づいて第三パラメータY3を特定し、変数X及び第四設定固定値に基づいて第四パラメータY4を特定し、変数X及び第五設定固定値に基づいて第五パラメータY5を特定する。これにより、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1は、第一パラメータY1〜第五パラメータY5を共通の1つの変数Xで特定することができる。従って、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1は、VSWRに基づく性能を満たす第一パラメータY1〜第五パラメータY5を効率的に特定することができる。
【0041】
具体的には、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1において、周波数を1.575GHzとし、幅長Pを0.5mmとし、ループアンテナ100の材料を銀ペースト(電気伝導率=2500000[Simens/m])とし、ループアンテナ100の性能基準としてVSWRが2.0以下とした場合、変数Xを誘電率ε
rに基づいて式(1)により算出し、第一パラメータY1を式(2)により算出し、第二パラメータY2を式(3)により算出し、第三パラメータY3を式(4)により算出し、第四パラメータY4を式(5)により算出し、第五パラメータY5を式(6)により算出する。これにより、ループアンテナ特定方法及びループアンテナ特定装置1は、簡単な演算でVSWRが2.0以下のパターンを規定する第一パラメータY1〜第五パラメータY5を効率的に特定することができる。
【0042】
〔変形例〕
次に、実施形態の変形例について説明する。実施形態では、基本ループアンテナ200のパターンに基づいて設定固定値等を調整したが、これに限定されない。基本ループアンテナ200は、他の形状のループアンテナであってもよい。この場合、上述の式(1)〜式(6)を適宜調整する。
【0043】
また、ループアンテナ100の性能基準は、VSWRが2.0以下を満たすこととして説明したが、VSWR以外の評価基準を用いてもよい。