特許第6859093号(P6859093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859093
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】蒸発器
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/02 20060101AFI20210405BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20210405BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F25B39/02 H
   F28F1/32 F
   F28D1/047 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-249130(P2016-249130)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-105513(P2018-105513A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−148976(JP,U)
【文献】 特開昭59−173694(JP,A)
【文献】 実開昭59−139782(JP,U)
【文献】 特開2004−239485(JP,A)
【文献】 特開昭59−120317(JP,A)
【文献】 特開2003−121089(JP,A)
【文献】 特開平10−019486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/02
F28F 1/32
F28D 1/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列状に配置された複数のプレートフィンからなりかつ空気流れ方向に間隔をおいて設けられた複数のフィン群と、各前記フィン群の前記プレートフィンに貫通状に固定された複数の直管部および隣り合う前記直管部を接続する屈曲管部からなる熱交換管とを備えている蒸発器であって、
少なくとも1つの前記フィン群の前記プレートフィンが、空気流れ方向と平行な平面上に位置し、かつ長手方向が空気流れ方向および前記直管部の長手方向に対して垂直方向を向いた本体部と、前記本体部の長手方向の一方側の縁部および他方側の縁部に一体に設けられかつ前記本体部に対して隣のフィン側に屈曲した屈曲部とよりなり、
前記本体部の長手方向の長さは、屈曲させられていない前記プレートフィンの長手方向の長さと同一である蒸発器。
【請求項2】
1つの前記フィン群における前記プレートフィンの前記屈曲部は、前記本体部に対して全て同じ方向に屈曲させられている請求項1に記載の蒸発器。
【請求項3】
前記屈曲部の出っ張り長さが、前記プレートフィンの前記本体部の長手方向の長さの5%以上であり、かつ前記屈曲部を有する前記プレートフィンからなる前記フィン群の隣り合う前記プレートフィンの前記本体部間のピッチよりも短く形成されている請求項1または2に記載の蒸発器。
【請求項4】
前記屈曲部の屈曲角度が、前記プレートフィンの前記本体部に対して45度以上90度以下とされている請求項1に記載の蒸発器。
【請求項5】
屈曲されられた前記プレートフィンは、全ての前記フィン群のうち空気流れ方向上流側の前記フィン群に適用させられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蒸発器に関し、さらに詳しくは、たとえば冷蔵庫、冷蔵ショーケースなどの冷蔵装置に用いられる冷凍サイクルに好適に使用される蒸発器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば冷蔵庫の断熱箱体内には、圧縮機、凝縮器および蒸発器を備えた冷凍サイクルが設置されている。このような冷凍サイクルの蒸発器として、並列状に配置された複数のプレートフィンからなりかつ空気流れ方向に間隔をおいて設けられた複数のフィン群と、各フィン群のプレートフィンに貫通状に固定された複数の直管部および隣り合う直管部を接続しかつ直管部より1つ少ない数の屈曲管部よりなる熱交換管とを備えており、全てのプレートフィンの全体が、熱交換管の直管部と直角をなす方向と平行な平面上に位置しているものが広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
蒸発器において、空気に触れるプレートフィンの表面積が大きいほど冷媒と空気との熱交換量が大きくなる。そこで、プレートフィンの表面積を増やすためにフィンピッチを密にする考えがある。しかしながら、このような蒸発器においては除霜時に水が残留しやすく、フィンピッチを密にすると、プレートフィンの表面に霜が発生してプレートフィン間が詰まることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-260787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上記問題を解決し、プレートフィン間のピッチを詰めなくとも空気流れ上流側のプレートフィンの表面積を増加させて熱交換性を向上させる蒸発器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0007】
1)並列状に配置された複数のプレートフィンからなりかつ空気流れ方向に間隔をおいて設けられた複数のフィン群と、各フィン群のプレートフィンに貫通状に固定された複数の直管部および隣り合う直管部を接続する屈曲管部からなる熱交換管とを備えている蒸発器であって、少なくとも1つのフィン群のプレートフィンが、空気流れ方向と平行な平面上に位置し、かつ長手方向が空気流れ方向および直管部の長手方向に対して垂直方向を向いた本体部と、本体部の長手方向の一方側の縁部および他方側の縁部に一体に設けられかつ本体部に対して隣のフィン側に屈曲した屈曲部とよりなる蒸発器。
【0008】
2)1つのフィン群におけるプレートフィンの屈曲部は、その本体部に対して全て同じ方向に屈曲させられている上記1)記載の蒸発器。
【0009】
3)屈曲部の出っ張り長さが、プレートフィンの本体部の長手方向の長さの5%以上であり、かつ屈曲部を有するプレートフィンからなるフィン群の隣り合うプレートフィンの本体部間のピッチよりも短く形成されている上記1)または2)記載の蒸発器。
【0010】
4)屈曲部の屈曲角度が、プレートフィンの本体部に対して45度以上90度以下とされている上記1)〜3)記載の蒸発器。
【0011】
5)屈曲されられたプレートフィンは、全てのフィン群のうち空気流れ方向上流側のフィン群に適用させられている上記1)〜4)記載の蒸発器。
【発明の効果】
【0012】
上記1)の蒸発器によれば、少なくとも1つのフィン群のプレートフィンが、空気流れ方向と平行な平面上に位置し、かつ長手方向が空気流れ方向および直管部の長手方向に対して垂直方向を向いた本体部と、本体部の長手方向の一方側の縁部および他方側の縁部に一体に設けられかつ本体部に対して隣のフィン側に屈曲した屈曲部とよりなるので、当該フィン群において、プレートフィン間のピッチを詰めてプレートフィンの数を増やさなくても空気に触れる全プレートフィンの合計表面積が大きくなり、空気とプレートフィンとの熱の交換量を増加させることができる。また、屈曲部が形成されることにより空気に触れるプレートフィンの表面積が大きくなっているので、プレートフィンの本体部の長手方向の寸法が大きくならず蒸発器自体の寸法も大きくすることなく熱の交換量を増加させることができる。
【0013】
上記2)の蒸発器によれば、1つのフィン群におけるプレートフィンの屈曲部は、その本体部に対して全て同じ方向に屈曲させられているので、スペースの無駄を省いて1つのフィン群をより多くのプレートフィンで構成することができる。
【0014】
上記3)の蒸発器によれば、屈曲部の出っ張り長さが、プレートフィンの本体部の長手方向の長さの5%以上であり、かつ屈曲部を有するプレートフィンからなるフィン群の隣り合うプレートフィンの本体部間のピッチよりも短く形成されているので、プレートフィン間を通る空気の流れを妨げずに、適度に熱の交換量を増加させることができる。
【0015】
上記4)の蒸発器によれば、屈曲部の屈曲角度が、プレートフィンの本体部に対して45度以上90度以下とされているので、表面張力により本体部と屈曲部との間の屈曲部分に水が適度に保持され易くなり、保持された水が一定量を超えるとプレートフィンから落ちやすくなる。これにより、プレートフィンに付着した水が氷化することを防止することができる。また、屈曲部の屈曲角度が本体部に対して90度以下とされているので、蒸発器における本体部の長手方向の寸法を大きくすることなく熱の交換量を増加させることができる。
【0016】
上記5)の蒸発器によれば、屈曲されられたプレートフィンは、全てのフィン群のうち空気流れ方向上流側のフィン群に適用させられているので、湿気の多い最下段のフィン群で多くの水分を取ることができ、効率性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、この発明の蒸発器の全体構成の概略を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0020】
また、以下の説明において、図1の上下を上下といい、図2の上を右、同図の下を左というものとする。また、上下方向および左右方向に直交する方向を前後方向というものとする。
【0021】
図1はこの発明による蒸発器の全体構成を示し、図2図1の蒸発器の最下側のフィン群の断面図を示す。図3図1の最下側のフィン群に用いられるプレートフィンを示す。
【0022】
図1に示すように、蒸発器(1)は、左右方向に並列状に配置された複数のアルミニウム製プレートフィン(2)(22)からなりかつ上下方向(通風方向)に間隔をおいて複数設けられたフィン群(3)(33)と、各フィン群(3)(33)のプレートフィン(2)(22)に貫通状に固定された左右方向にのびる複数の直管部(5)および隣り合う2つの直管部(5)を接続しかつ直管部(5)より1つ少ない数の屈曲管部(6)(7)よりなるアルミニウム製熱交換管(4)とを備えており、図1に矢印Zで示すように、空気が下から上に流れるようになっている。
【0023】
熱交換管(4)は、前後方向に間隔をおいた2つの垂直面内において、それぞれ上下方向に間隔をおいて設けられかつ左右方向にのびる複数の直管部(5)と、上下に隣り合う直管部(5)どうしを左右交互に接続する第1の屈曲管部(6)と、下端の2つの直管部(5)の右端部どうしを連結する第2の屈曲管部(7)とによって構成されている。
【0024】
プレートフィン(2)は、前後方向に長い方形の平板状で、熱交換管(4)の直管部(5)と一定の角度、たとえば直角をなしており、プレートフィン(2)の高さ方向の中央部に、熱交換管(4)の直管部(5)を通す2つの貫通穴(8)が前後方向に間隔おいて形成されている。
【0025】
空気流れ方向下流側(上側)のフィン群(3)の隣り合うプレートフィン(2)間のフィンピッチは、空気流れ方向上流側(下側)のフィン群(33)の隣り合うプレートフィン(22)間のフィンピッチよりも小さくなっていることが好ましい。図示の例では、フィン群(3)の隣り合うプレートフィン(2)間のフィンピッチは、下端のフィン群(33)が最も大きく、上方のフィン群(3)に向かうにつれて小さくなっている。また、上端のフィン群(3)のフィンピッチが、下端のフィン群(33)のフィンピッチよりも小さくなっているのであれば、上下に隣り合う複数のフィン群(3)(33)のフィンピッチは、等しくてもよく、フィン群(3)(33)のフィンピッチの組み合わせは任意である。
【0026】
図2および図3に示すように、この実施形態において、空気流れ方向の上流側(最下側部分)のフィン群(33)のプレートフィン(22)の前後両側が、屈曲させられている。
【0027】
屈曲させられたプレートフィン(22)は、空気流れ方向と平行な平面上に位置しかつ長手方向が空気流れ方向および直管部(5)の長手方向に対して垂直方向を向いた本体部(22a)と、本体部(22a)の長手方向の一方側の縁部および他方側の縁部に一体に設けられかつ本体部(22a)に対して屈曲した屈曲部(22b)とより構成されている。
【0028】
プレートフィン(22)の2つの屈曲部(22b)の本体部(22a)に対する屈曲方向は、すべて右側のプレートフィンに向かっている。両屈曲部(22b)における本体部(22a)の縁部から先端部までの長さLはすべて同じ長さとされている。本体部(22a)の長手方向の長さLWは、屈曲させられていないプレートフィン(2)の長手方向の長さと同一となっている。プレートフィン(2)の本体部(22a)の高さ方向の中央部に、熱交換管(4)の直管部(5)を通す2つの貫通穴(88)が前後方向に間隔おいて形成されている。
【0029】
プレートフィン(2)(22)における各貫通穴(8)(88)の周縁部に、カラー(9)が全周にわたって一体に形成されている。熱交換管(4)の直管部(5)は、各フィン群(3)(33)のプレートフィン(2)(22)の各貫通穴(8)(88)に通され、直管部(5)の外周面がカラー(9)に密着するようにプレートフィン(2)(22)に固定されている。
【0030】
屈曲部(22b)の出っ張り長さは、プレートフィン(22)の本体部(22a)の長手方向の長さの5%以上長く、屈曲部(22b)を有するプレートフィン(22)からなるフィン群(33)の隣り合うプレートフィン(22)の本体部(22a)間のピッチよりも短く形成されている。また、本体部(22a)に対する屈曲部(22b)の屈曲角度θは、45〜90度であることが好ましい。この実施形態では、本体部(22a)に対する両屈曲部(22b)の屈曲角度θは、90度となっている。
【0031】
屈曲部(22b)は、全てのフィン群(3)(33)を構成するプレートフィン(2)(22)に設けられてもよく、最下端のフィン群(33)とこれに並んだ少なくとも1つのフィン群(3)とからなる複数のフィン群(3)(33)に設けられてもよい。最下端のフィン群(3)に屈曲部(22b)を有するプレートフィン(22)が設けられていると、湿気を最も多く含む状態の空気と表面積が増加したプレートフィン(22)とが接触するので、効率よく熱交換をすることができる。
【0032】
蒸発器(1)は、圧縮機および凝縮器とともに冷凍サイクルを構成する。このような冷凍サイクルは、冷蔵装置の断熱箱体内に配置される。
【0033】
上記蒸発器(1)において、冷媒は、上端の一方の直管部(5)に流入して熱交換管(4)内を流れ、図1に矢印Zで示すように、ファン(図示略)により下方から上方に送られる空気と熱交換をし、熱交換管の上端の他方の直管部(5)から流出する。
【0034】
空気に触れるプレートフィン(2)(22)の表面積が大きいほど冷媒と空気との熱交換量が大きくなる。
【0035】
従来の蒸発器に設けられるプレートフィンの表面積を増加させるためには、フィンピッチを密にしてプレートフィンの数を増加させることも考えられるが、フィンピッチを密にするとプレートフィンに霜が発生した場合にプレートフィン間が詰まることがある。
【0036】
そこで、本願発明の蒸発器(1)のように、プレートフィン(22)に屈曲部(22b)が設けられていると、フィンピッチを密にすることなく空気に触れるプレートフィン(22)の表面積が増加するので、従来の蒸発器よりも熱交換量を増加させることができ、冷却性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明による蒸発器は、冷蔵庫、冷蔵ショーケースなどの冷蔵装置に用いられる冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
(1):蒸発器
(2)(22):プレートフィン
(22a):本体部
(22b):屈曲部
(3)(33):フィン群
(4):熱交換管
(5):直管部
(6)(7):屈曲管部
図1
図2
図3