【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面にプリズム層を有し、該プリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力が1.0mN以下であるプリズムシートの前記プリズム層上に貼り付けてプリズムシートを保護するためのプリズムシート用表面保護フィルムであって、基材層と粘着剤層とを有し、前記粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率E’が3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度が115℃以上であるプリズムシート用表面保護フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、基材層と、粘着剤層とを有するプリズムシート用表面保護フィルムについて、粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’と貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度とを調整することにより、プリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力が1.0mN以下である低反発プリズムシートに対して高い粘着力(初期粘着力)を発揮することができ、かつ、経時又は高温下でも接着昂進しにくく、プリズムシートを破損したり、糊残りしたりすることなく剥離することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明のプリズムシート用表面保護フィルム(以下、単に「表面保護フィルム」ともいう。)は、プリズムシートのプリズム層上に貼付してこれを保護するものである。
上記プリズムシートは、表面にプリズム層を有するものであれば特に限定されないが、通常は、裏面にマット層(matte)やフラット層(flat)を有する。上記プリズム層は、凹凸形状(例えば、20〜100μm程度のピッチの凹凸形状)を有する層である。
【0010】
上記プリズムシートは、該プリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力が1.0mN以下である。反発力が1.0mN以下であるプリズム層を有する低反発プリズムシートは、極めて柔軟であって、近年の薄化、小型化した液晶ディスプレイの部材を破損することがないという優れた性能を発揮する。一方、このように極めて柔軟なプリズム層を有することから、従来の表面保護フィルムでは、高い粘着力(初期粘着力)と優れた剥離性(低接着昂進率)とを両立させることが困難であった。
本発明の表面保護フィルムは、このような低反発プリズムシートに独特の課題を解決して、低反発プリズムシートに対して高い粘着力(初期粘着力)と優れた剥離性(低接着昂進率)とを両立させたものである。本発明の表面保護フィルムは、例えば、プリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力が0.5mN以下、0.05mN以下である、更に低反発のプリズムシートに対しても充分な効果を発揮することができる。
【0011】
なお、上記プリズムシートのプリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力は、例えば、微小押込み硬さ試験機(例えば、エリオニクス社製、超微小押込み硬さ試験機、型式ENT−2100)を用い、JIS Z2255に準拠して、荷重と変位の曲線を測定する方法により、反発力を測定することができる。
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、基材層と、粘着剤層とを有する。
上記基材層は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、従来公知のポリオレフィン樹脂を用いることができ、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記ポリプロピレン樹脂として、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。上記ポリエチレン樹脂として、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。なかでも、透明性、剛性、耐熱性の観点からポリプロピレン樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン、又は、プロピレンと少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。
【0014】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤を含有してもよい。
【0015】
上記基材層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は200μmである。上記基材層の厚さがこの範囲内であると、取り扱い性に優れる。上記基材層の厚さのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は188μmである。
【0016】
上記粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率E’が3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度が115℃以上である。上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’と、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度をこのように調整することにより、上記特定の性質を有する低反発プリズムシートに対して高い粘着力(初期粘着力)と優れた剥離性(低接着昂進率)とを両立させることができる。
【0017】
上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下に調整することで、被着体に貼り付ける際の密着性を高くして粘着力(初期粘着力)を向上させることができる一方、経時又は高温下で接着昂進が進むのを抑制することができる。上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’は、2.9MPa以下であることが好ましく、2.8MPa以下であることがより好ましく、2.7MPa以下であることが更に好ましい。
【0018】
上記粘着剤層の貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を115℃以上に調整することで、被着体に貼り付ける際の密着性を高くして粘着力(初期粘着力)を向上させることができる一方、経時又は高温下で接着昂進が進むのを抑制することができる。
上記粘着剤層の貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度は120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることが更に好ましい。
【0019】
なお、上記粘着剤層の貯蔵弾性率E’は、例えばDVA−200(アイティー計測制御社製)等の粘弾性スペクトロメーターを用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で上記粘着剤層の動的粘弾性スペクトルを測定して求めることができる。
【0020】
上記粘着剤層は、主成分となる樹脂(ベース樹脂)を含有する。
上記ベース樹脂は特に限定されないが、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。なかでも、高い粘着力(初期粘着力)を発揮することができ、また、スチレン含有量により貯蔵弾性率E’を調整しやすいことから、スチレン系エラストマーが好適である。
【0021】
上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を115℃以上に調整する方法としては特に限定されず、上記ベース樹脂の種類を選択したり、上記ベース樹脂に他の樹脂を併用したり、上記ベース樹脂を架橋したりする方法等が挙げられる。
【0022】
上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を115℃以上に調整するためには、上記ベース樹脂として、硬度が35〜50ショア/10秒であるものを選択することが好ましい。硬度がこのような範囲であるベース樹脂を選択して用いれば、粘着付与剤との併用により、比較的容易に上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を上記範囲に調整することができる。上記ベース樹脂の硬度のより好ましい上限は47ショア/10秒である。
【0023】
上記ベース樹脂としてスチレン系エラストマーを用いる場合には、スチレン系エラストマーの一次構造におけるスチレン含有量もベース樹脂の選択の目安となる。二次構造、三次構造によって例外もあるが、スチレン含有量が大きいほど25℃における貯蔵弾性率E’が大きくなる傾向があり、一次構造におけるスチレン含有量が15重量%以下であるスチレン系エラストマーを用いた場合に上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下に調整しやすい。
【0024】
上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を115℃以上に調整するためのより具体的な方法としては、例えば、ベース樹脂として一般式(A−B)
nCで表されるラジアル型スチレン系エラストマーを用いる方法(調整方法1)、ベース樹脂としてスチレン系エラストマーを用い、該ベース樹脂に耐熱樹脂を併用する方法(調整方法2)、及び、ベース樹脂として架橋されたスチレン系エラストマーを用いる方法(調整方法3)が挙げられる。これらの調整方法1、調整方法2及び調整方法3は、それぞれ単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0025】
上記調整方法1においてベース樹脂として用いるラジアル型スチレン系エラストマーは、カップリング剤を中心にして、スチレンブロック共重合体が複数放射状に突出した構造を有する分岐状スチレンブロック共重合体であり、一般式(A−B)
nCで表される構造を有する。
一般式中、Aは芳香族アルケニル重合体ブロックを表し、Bは共役ジエン重合体ブロックを表し、Cはカップリング剤に由来する成分を表し、nは2以上の整数を表す。
なお、nが3である場合は3分岐型といい、nが4のである場合は4分岐型とも言われる。
【0026】
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位である。
上記芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。なかでも、工業的に入手しやすいことから、スチレンが好ましい。
【0027】
上記Bで表される共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位である。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、重合反応性が高く、工業的に入手しやすいことから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0028】
上記Cで表されるカップリング剤に由来する成分の原料となるカップリング剤は、リニアスチレンブロック共重合体を放射状に結合させる多官能性化合物である。
上記カップリング剤としては、ハロゲン化シラン、アルコキシシラン等のシラン化合物や、ハロゲン化スズ等のスズ化合物や、ポリカルボン酸エステル、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物や、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリルエステルや、エポキシシラン、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物等が挙げられる。より具体例には、例えば、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、ジエチルアジペート等が挙げられる。
【0029】
上記調整方法2では、ベース樹脂としてスチレン系エラストマーを用い、該ベース樹脂に耐熱樹脂を併用する。
上記調整方法2においてベース樹脂として用いるスチレン系エラストマーは、上記ラジアル型スチレン系エラストマーであってもよく、それ以外のスチレン系エラストマーであってもよい。
上記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)等が挙げられる。なかでも、ブチレン含有量により貯蔵弾性率E’を調整しやすいことから、ブチレンを含有するスチレン系エラストマーであるスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEB)が特に好適である。
【0030】
上記調整方法2における耐熱樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0031】
上記調整方法3では、より具体的には、スチレン系エラストマーを含む樹脂組成物を塗工して粘着剤層を形成した後、又は、共押出成形によりスチレン系エラストマーを含む粘着剤層を形成した後、後架橋処理を施すことにより架橋されたスチレン系エラストマーとする。
上記調整方法3においてベース樹脂として用いる架橋されたスチレン系エラストマーは、上記ラジアル型スチレン系エラストマーを架橋したものであってもよく、上記ラジアル型スチレン系エラストマー以外のスチレン系エラストマーを架橋したものであってもよい。
【0032】
上記後架橋処理の方法としては、紫外線等の光を照射する方法や、電子線を照射する方法等が挙げられる。なかでも、光重合開始剤を併用する必要がなく、反応速度が早く短時間で上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’を3.0MPa以下、かつ、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を115℃以上に調整できることから、電子線を照射する方法が好適である。
【0033】
上記粘着剤層は、更に粘着付与剤を含有することが好ましい。
上記粘着付与剤は、ベース樹脂に配合して、上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’と貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を上記範囲に調整する役割も果たす。
上記粘着付与剤として、例えば、脂肪族共重合体、芳香族共重合体、脂肪族芳香族共重合体、脂環式共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、及び、これらの水素添加物等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂との混合物として市販されている粘着付与剤を用いてもよい。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記粘着付与剤は、軟化点が80℃以上であることが好ましい。軟化点が80℃以上の粘着付与剤を用いることにより、本発明の表面保護フィルムを巻回体としたときに、表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇し過ぎないようにすることができる。上記粘着付与剤の軟化点は、90〜140℃であることがより好ましい。
なお、上記調整方法3によりベース樹脂を架橋する場合には、上記粘着付与剤も同時に架橋させることができる。この場合、粘着付与剤の水素添加率が大きいほど電子線で架橋しやすくなる傾向があり、貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を高くすることができる。従って、上記粘着付与剤の水素添加率は、95%以上であることが好ましい。
【0034】
上記粘着付与剤の含有量は、上記ベース樹脂との併用により上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率E’と貯蔵弾性率E’が1.0×10
5Paとなるときの温度を上記範囲に調整することができれば特に限定されないが、上記ベース樹脂100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部であり、より好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0035】
上記粘着剤層は、粘着力の制御等を目的に、必要に応じて、例えば、軟化剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤、離型剤等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は30μmである。上記粘着剤層の厚さがこの範囲内であると、被着体に対する充分な粘着力と取り扱い性とを両立することができる。上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は2.5μm、より好ましい上限は20μmである。
【0037】
本発明の表面保護フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、予めTダイ成形又はインフレーション成形にて得られた層上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により他の層を積層する方法、各々の層を独立してフィルムとした後、得られた各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法、各々の層を構成する樹脂をTダイ法により共押出成形する方法等が挙げられるが、生産性の点から、上記基材層、上記粘着剤層の各材料を多層の押出機に供給して成形する共押出成形が好ましく、厚み精度の点から、Tダイ成形がより好ましい。
【0038】
図1に、本発明の表面保護フィルムがプリズムシートに貼り付けられた状態の一例を示す模式図を示す。
図1においては、透明フィルム6の表面にプリズム層7を、裏面にマット層5を有する低反発プリズムシート4のプリズム層7に、表面保護フィルム1が貼り付けられている。表面保護フィルム1は、基材層2と、粘着剤層3とを有している。
【0039】
表面にプリズム層を有し、該プリズム層側の表面を25℃において1μm変位したときの反発力が1.0mN以下であるプリズムシートと、上記プリズムシートのプリズム層上に貼り付けられた本発明のプリズムシート用表面保護フィルムとからなるプリズムシート用表面保護フィルム付きプリズムシートもまた、本発明の1つである。