特許第6859103号(P6859103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859103
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】発泡体、積層体及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20210405BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20210405BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CES
   B29C51/10
   B32B5/18
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-515161(P2016-515161)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2015075663
(87)【国際公開番号】WO2016039400
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年4月24日
【審判番号】不服2020-5615(P2020-5615/J1)
【審判請求日】2020年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-184305(P2014-184305)
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
【合議体】
【審判長】 大島 祥吾
【審判官】 岩田 健一
【審判官】 加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−149665号公報(JP,A)
【文献】 特開2004−339362号公報(JP,A)
【文献】 特開2004−075976号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
B32B 5/18
B29C 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度0.036g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上、400%以下であり、
この破断点伸び(%)に、JISK6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が7以上、30以下であり、架橋度が33〜46%である真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
密度0.036g/cc以上0.044g/cc未満の発泡体において、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上、240%以下であり、
この破断点伸び(%)に、JISK6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が7以上、15以下である請求項1に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
密度0.044g/cc以上0.057g/cc未満の発泡体において、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が170%以上、300%以下であり、
この破断点伸び(%)に、JISK6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が8以上、20以下である請求項1に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
密度0.057g/cc以上0.077g/cc未満の発泡体において、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が200%以上、360%以下であり、
この破断点伸び(%)に、JISK6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が10以上、25以下である請求項1に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
密度0.077g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が250%以上、400%以下であり、
この破断点伸び(%)に、JISK6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が15以上、30以下である請求項1に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項6】
ホモポリプロピレン(A)と、ランダムポリプロピレン(B)と、線状低密度ポリエチレン(C)とを含む発泡性組成物を架橋し、かつ発泡してなる真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
前記ホモポリプロピレン(A)が、発泡性組成物中の樹脂成分全量に対して10〜60質量%であるとともに、メルトフローレートが2.5〜20g/10分である請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項7】
前記ホモポリプロピレン(A)のメルトフローレートが、6〜12g/10分である請求項6に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項8】
前記発泡性組成物が、前記ホモポリプロピレン(A)に対して、前記ランダムポリプロピレン(B)を0.16〜8の質量比で含有するとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)を0.16〜8の質量比で含有する請求項6又は7に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項9】
前記ホモポリプロピレン(A)が、組成物中の樹脂成分全量に対して、10質量%以上20質量%未満で含有される請求項6〜8のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項10】
前記発泡性組成物が、前記ホモポリプロピレン(A)に対して、前記ランダムポリプロピレン(B)を1.6〜5の質量比で含有するとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)を1.6〜5の質量比で含有する請求項9に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項11】
前記ランダムポリプロピレン(B)のメルトフローレートが0.4〜2.0g/10分であるとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)のメルトフローレートが1.5〜15g/10分である請求項6〜10のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項12】
前記ランダムポリプロピレン(B)が、エチレン−プロピレンランダム共重合体である請求項6〜11のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項13】
厚みが0.5〜5.0mmでシート状である請求項1〜12のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体と、この発泡体に積層されるシート状素材とを備える積層体。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の真空成形用架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、又は請求項14に記載の積層体を成形して得られた成形体。
【請求項16】
請求項14に記載の積層体を、成形して得られたものであって、前記シート状素材表面に凹凸が付された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体に関し、より詳しくは、発泡性組成物を架橋し、かつ発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、断熱材、クッション材等として汎用されている。特に、自動車分野では、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の車輌用内装材として使用される。これらの車両用内装材は、通常、シート状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を真空成形や圧縮成形等により二次加工して所定の形状に成形されている。また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等の樹脂若しくはエラストマーシート、天然又は人造の布状物等のシート状素材が貼り合わされて積層体として広く使用されている。
【0003】
車輌用内装材として使用される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、種々知られており、例えば、成形加工性や耐熱性を向上させるために、DSCピーク温度を160℃以上とした、ホモポリプロピレン又はエチレン−プロピレンランダム共重合体からなるポリプロピレン系樹脂(A)と、エチレン−プロピレンランダム共重合体等からなるポリプロピレン系樹脂(B)と、ポリエチレン系樹脂(C)の3種を混合した樹脂組成物からなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5217164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両用内装材には、高い意匠性が求められてきており、発泡体に貼り合わされるシート状素材に複雑な模様を付すことが検討されている。例えば、従来、真空成形において雄引きが主流であったが、意匠性を高めるために、雌引きによって成形されることが検討されている。雌引き成形においては、発泡体とシート状素材とからなる積層体を成形する場合、シート状素材が型側に配置されることになるため、型に形成された凹凸模様がシート状素材に、正確に転写されやすくなる。
【0006】
しかしながら、型上の凹凸模様をシート状素材に正確に転写させるためには、成形温度を高くする必要があり、例えば、160℃以上での成形が要求される。発泡体は、160℃以上に加熱されると、通常、発泡体の主成分となるポリプロピレンの融点を超えるため、真空成形時に発泡体が破れたりすることがある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、発泡体を成形体に成形する際の成形温度を高くしたような場合でも、発泡体の破れ等を防止して、成形性を良好にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、架橋度を所定範囲に調整しつつ、160℃破断点伸び(%)、及び160℃破断点伸び(%)に160℃における100%モジュラス(MPa)を乗じた値(SS係数)のいずれも大きくすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(16)を提供する。
(1)密度0.036g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上あり、
この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が7以上であり、架橋度が30〜50%である発泡体。
(2)密度0.036g/cc以上0.044g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上あり、
この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が7以上である上記(1)に記載の発泡体。
(3)密度0.044g/cc以上0.057g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が170%以上あり、
この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が8以上である上記(1)に記載の発泡体。
(4)密度0.057g/cc以上0.077g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が200%以上あり、
この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が10以上である上記(1)に記載の発泡体。
(5)密度0.077g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が250%以上あり、
この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値が15以上である上記(1)に記載の発泡体。
(6)ホモポリプロピレン(A)と、ランダムポリプロピレン(B)と、線状低密度ポリエチレン(C)とを含む発泡性組成物を架橋し、かつ発泡してなる発泡体であって、
前記ホモポリプロピレン(A)が、発泡性組成物中の樹脂成分全量に対して10〜60質量%であるとともに、メルトフローレートが2.5〜20g/10分である上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の発泡体。
(7)前記ホモポリプロピレン(A)のメルトフローレートが、6〜12g/10分である上記(6)に記載の発泡体。
(8)前記発泡性組成物が、前記ホモポリプロピレン(A)に対して、前記ランダムポリプロピレン(B)を0.16〜8の質量比で含有するとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)を0.16〜8の質量比で含有する上記(6)又は(7)に記載の発泡体。
(9)前記ホモポリプロピレン(A)が、組成物中の樹脂成分全量に対して、10質量%以上20質量%未満で含有される上記(6)〜(8)のいずれか1項に記載の発泡体。
(10)前記発泡性組成物が、前記ホモポリプロピレン(A)に対して、前記ランダムポリプロピレン(B)を1.6〜5の質量比で含有するとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)を1.6〜5の質量比で含有する上記(9)に記載の発泡体。
(11)前記ランダムポリプロピレン(B)のメルトフローレートが0.4〜2.0g/10分であるとともに、前記線状低密度ポリエチレン(C)のメルトフローレートが1.5〜15g/10分である上記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の発泡体。
(12)前記ランダムポリプロピレン(B)が、エチレン−プロピレンランダム共重合体である上記(6)〜(11)のいずれか1項に記載の発泡体。
(13)厚みが0.5〜5.0mmでシート状である上記(1)〜(12)のいずれか1項に記載の発泡体。
(14)上記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の発泡体と、この発泡体に積層されるシート状素材とを備える積層体。
(15)上記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の発泡体、又は上記(14)に記載の積層体を成形して得られた成形体。
(16)上記(14)に記載の積層体を、成形して得られたものであって、前記シート状素材表面に凹凸が付された成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡体を成形体に成形する際の成形温度を高くしたような場合でも、成形時の発泡体の破れ等を防止して成形性を良好にする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について以下実施形態を用いてより詳細に説明する。
<発泡体>
本発明における発泡体は、密度0.036g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、JIS K6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上であり、かつ、この破断点伸び(%)に、JIS K6251に準じて160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値(以下、「SS係数」ともいう)が7以上となるものである。
本発泡体は、密度を所定範囲としつつ、破断伸び及びSS係数を上記のように高くすることで、高温(例えば、160℃以上)で成形しても発泡体に破れ等が生じにくくなり、車輌用内装材等の各種成形体に成形するのに適したものとなる。
一方で、160℃破断点伸び(%)が150%未満となったり、SS係数が7未満となったりすると、発泡体を高温で成形体に成形する際、発泡体に破れ等が生じて、成形性を良好にすることが困難になる。また、密度が0.036g/cc未満となったり、0.133g/ccより高くなったりすると、柔軟性、機械強度等の車輌用内装材等の成形体に求められる物性が得られにくくなる。
また、特に限定されないが、160℃破断点伸び及びSS係数それぞれは、製造の容易性等の観点から、400%以下、30以下であることが好ましい。
【0011】
本発明において、発泡体の架橋度は、30〜50%となるものである。発泡体の架橋度が30%未満となると、発泡体の機械強度が下がり、SS係数が低くなるため、成形時に破れが生じたりして、発泡体の成形性が良好とならない。また、後述する発泡性組成物の発泡に必要な剪断粘度を付与することができないことがある。
一方、架橋度が50%を超えると、発泡体の伸縮性、引張強度が低下し、成形体を型通りに正確に成形できなかったり、破れが生じたりする不具合が生じやすくなる。また、発泡性組成物の剪断粘度が高くなりすぎて発泡性が低下し、発泡倍率の高い発泡体を得にくくなると共に、発泡体の外観性が低下することもある。
なお、架橋度は、実施例に記載の方法で、溶媒不溶解分を採取し、試験片の重量Aと不溶解分の重量Bを求め、下記式により算出される。
架橋度(重量%)=(B/A)×100
発泡体の成形性や機械特性をより良好にする観点から、発泡体の架橋度は、32〜48%が好ましく、35〜45%がより好ましい。
また、発泡体は、シート状であることが好ましい。発泡体の具体的な厚みは、0.5〜5.0mmであることが好ましく、1〜4mm程度であることがより好ましい。厚みがこれら範囲であると、発泡体を真空成形等により車輌用内装材に成形しやすくなる。
【0012】
発泡体は、成形される際、発泡体の密度に応じて、破断伸度、モジュラス等の機械物性の最適値が異なるものである。例えば、密度が0.036g/cc以上0.044g/cc未満の低密度の発泡体においては、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が150%以上であるとともに、SS係数が7以上であることが好ましい。
上記のような低密度の発泡体においては、比較的弱い力で成形可能であるので、破断点伸び、SS強度はそれほど高くする必要はなく、破断点伸び、SS係数が上記の値以上となると、十分な成形性が得られる。また、例えば後述する発泡体組成物を使用することで、低密度の発泡体でも、これら破断点伸び及びSS係数を有する発泡体を容易に製造することが可能となる。
製造の容易性と成形性を両立する観点から、上記低密度の発泡体においては破断点伸びが160〜240%であるとともに、SS係数が7.5〜15程度であることがより好ましい。
【0013】
密度0.044g/cc以上0.057g/cc未満の中低密度の発泡体においては、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が170%以上あるとともに、上記SS係数が8以上であることが好ましい。中低密度の発泡体においては、破断点伸び、SS係数がこれら下限値以上となることで、十分な成形性が得られる。また、例えば後述する発泡性組成物を使用することで、中低密度の発泡体において、破断点伸び及びSS係数をこれら下限値以上とすることが容易になる。また、成形性及び製造の容易性を両立する観点から、上記中低密度の発泡体においては、破断点伸びが180〜300%であるとともに、SS係数は8.5〜20程度であることがより好ましい。
【0014】
密度が0.057g/cc以上0.077g/cc未満の中高密度の発泡体においては、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が200%以上あるとともに、SS係数が10以上であることが好ましい。中高密度の発泡体においては、破断点伸び、SS係数がこれら下限値以上となることで、十分な成形性が得られるとともに、例えば後述する発泡性組成物を使用することで、破断点伸び及びSS係数をこれら下限値以上とすることが容易になる。また、成形性及び製造の容易性を両立する観点から、この中高密度の発泡体においては、破断点伸びが220〜360%であるとともに、SS係数は12〜25程度であることがより好ましい。
【0015】
また、密度0.077g/cc以上0.133g/cc未満の高密度の発泡体においては、JISK6251に準じて測定された160℃破断点伸び(%)が250%以上あるとともに、SS係数が15以上であることが好ましい。高密度の発泡体においては、成形性を良好にするためには、破断点伸び及びSS係数は比較的大きくする必要があるが、これら下限値以上とすることで十分な成形性が得られる。また、例えば後述する発泡性組成物を使用することで、高密度の発泡体において破断点伸び及びSS係数を容易にこれら下限値以上とすることが可能である。また、成形性及び製造の容易性を両立する観点から、上記高密度の発泡体においては、破断点伸びが300〜400%であるとともに、SS係数は15〜30程度であることがより好ましい。
【0016】
<発泡性組成物>
本発明の発泡体は、発泡性組成物を架橋し、かつ発泡してなるものである。発泡体は、例えば、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体である。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得るための発泡性組成物は、例えば、ホモポリプロピレン(A)と、ランダムポリプロピレン(B)と、線状低密度ポリエチレン(C)とを含む。発泡性組成物が、これら(A)〜(C)成分を含有し、かつ(A)成分の量を後述する所定量とすることで、発泡体の160℃破断点伸び(%)及びSS係数を上記した所定値以上としやすくなる。
【0017】
以下、発泡性組成物に使用される(A)〜(C)成分について説明する。
[(A)成分]
ホモポリプロピレン(A)は、プロプレン単独重合体であり、そのメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)が2.5〜20g/10分となることが好ましい。ホモポリプロピレン(A)のMFRが2.5g/10分以上20g/10分以下となることで、樹脂の流れ性が良好になる一方で、樹脂の流動性が高くなりすぎるのが防止され、発泡性組成物を発泡体に加工する際の加工性が良好になる。そのため、例えば、発泡体の表面に荒れが生じたり、発泡性組成物をシート状の発泡体に加工することが難しくなったりすることが防止される。
上記加工性を良好にする観点から、ホモポリプロピレン(A)のMFRは、4〜16g/10分が好ましく、6〜12g/10分がより好ましい。
【0018】
発泡性組成物におけるホモポリプロピレン(A)は、発泡性組成物に含有される樹脂成分全量に対して、10〜60質量%含有されることが好ましい。ホモポリプロピレン(A)は、10質量%以上となることで、発泡体の機械強度、及び上記SS係数が高くなり、成形時に成形体に破れ等が生じにくくなる。また、含有量が60質量%以下となることで、発泡体の引張強度、及び伸縮性等が高くなり、成形体が型通り正確に成形しやすくなり、かつ破れが生じたりする不具合が生じにくくなる。
ホモポリプロピレン(A)は、樹脂成分全量に対して、10〜40質量%が好ましく、10質量%以上20質量%未満となることがより好ましい。本発明においては、(A)成分の含有量を比較的少なくすることで、発泡性組成物から発泡体への加工性を良好にしつつ、発泡体の引張強度及びSS係数のいずれもがより良好となり、成形性が優れたものになりやすい。
【0019】
[(B)、(C)成分]
ランダムポリプロピレン(B)は、プロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとをランダム共重合させて得られる共重合体である。プロピレン以外のα−オレフィンとしては、炭素数2のエチレン、又は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどの炭素数4〜10程度のα−オレフィンが挙げられるが、これらの中では、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。すなわち、ランダムポリプロピレン(B)は、エチレン−プロピレンランダム共重合体であることが好ましい。
また、共重合体において、α−オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、(B)成分としては、2種以上のランダムポリプロピレンの混合物を用いてもよい。
【0020】
ランダムポリプロピレン(B)は、プロピレン50重量%以上100重量%未満と、プロピレン以外のα−オレフィン50重量%以下とを共重合させて得られることが好ましい。ここで、共重合体を構成する全モノマー成分に対して、プロピレンが80〜99.9重量%、プロピレン以外のα−オレフィンが0.1〜20質量%であることがより好ましく、プロピレンが90〜99.5重量%、プロピレン以外のα−オレフィンが0.5〜10質量%であることが更に好ましく、プロピレンが95〜99重量%、プロピレン以外のα−オレフィンが1〜5質量%であることがより更に好ましい。
【0021】
線状低密度ポリエチレン(C)は、密度が0.910g/cm3以上0.950g/cm3未満のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.910〜0.930g/cm3のものである。発泡体は、上記(A)(B)成分に加えて、密度が低い線状低密度ポリエチレン(C)を含有することで、発泡性組成物を発泡体に加工する際の加工性が良好になる。また、上記した破断点伸び及びSS係数が適切な値となり、発泡体を成形体に成形する際の成形性等が良好になりやすい。
線状低密度ポリエチレン(C)は、通常、エチレンを主成分(全モノマーの50質量%以上、好ましくは70質量%以上)とした、エチレンと少量のα−オレフィンの共重合体である。ここで、α−オレフィンとしては、炭素数3〜12、好ましくは炭素数4〜10のものが挙げられ、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0022】
発泡性組成物は、上記(A)成分に対して、ランダムポリプロピレン(B)を0.16〜8の質量比で、線状低密度ポリエチレン(C)を0.16〜8の質量比で含有することが好ましく、ランダムポリプロピレン(B)を1.6〜5の質量比で、線状低密度ポリエチレン(C)を1.6〜5の質量比で含有することがより好ましい。さらに、発泡性組成物は、上記(A)成分に対して、ランダムポリプロピレン(B)を2.5〜4.5の質量比で、線状低密度ポリエチレン(C)を1.5〜4.0の質量比で含有することがさらに好ましく、また、(B)成分の含有量(質量)が(C)成分より高いほうがよい。本発明においては、(B)(C)成分を以上の範囲とすることで、上記した発泡体への加工性が良好になる。また、破断点伸び及びSS係数が高くなりやすく、発泡体の成形性等を良好にしやすくなる。
また、ランダムポリプロピレン(B)は、樹脂成分全量に対して、5〜80質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。線状低密度ポリエチレン(C)は、樹脂成分全量に対して、5〜80質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
また、ランダムポリプロピレン(B)のMFRが0.4〜2.0g/10分であるとともに、線状低密度ポリエチレン(C)のMFRが1.5〜15g/10分であることが好ましい。また、(B)成分のMFRが0.5〜1.5g/10分であるとともに、(C)成分のMFRが2〜12g/10分であることがより好ましい。本発明においては、以上のように、(A)成分に加えて(B)、(C)成分のMFRも調整することで、上記した発泡性組成物の発泡体への加工性、及び発泡体の成形性等をより優れたものにしやすくなる。
【0024】
[その他の成分]
発泡性組成物は、樹脂成分として(A)、(B)、及び(C)成分のみ含有してもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、(A)、(B)、(C)成分以外の樹脂成分を含有してもよい。(A)、(B)、(C)成分以外の樹脂成分としては、高密度ポリエチレン等の上記(C)成分以外のポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、変性ポリプロピレン樹脂等の上記(A)、(B)成分以外のポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレンゴム−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキルアクリレ−ト共重合体、又はこれらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。(A)、(B)、(C)成分以外の樹脂成分としては、樹脂成分全量に対して、通常30質量%以下含有され、好ましくは10質量%以下含有される。
【0025】
<添加剤>
発泡性組成物は、添加剤として発泡剤を通常含有するものであり、また、架橋助剤及び酸化防止剤の一方又は両方を含有することが好ましい。
(発泡剤)
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば分解温度が160〜270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
熱分解型発泡剤の添加量は、発泡体の気泡が破裂せずに適切に発泡ができるように、樹脂成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。
【0026】
(架橋助剤)
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物;トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物;フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、3官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。
架橋助剤を発泡性組成物に添加することによって、少ない電離性放射線量で発泡性組成物を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を防止することができる。
架橋助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。この含有量が0.2質量部以上であると発泡性組成物を発泡する際、所望する架橋度に調整しやすくなる。また、20重量部以下であると発泡性組成物に付与する架橋度の制御が容易となる。
【0027】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらの中では、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを組み合わせて使用することがより好ましい。
例えば、フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
また、硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。これらの硫黄系酸化防止剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
酸化防止剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
また、発泡体組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等の分解温度調整剤、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0028】
<発泡体の製造方法>
発泡体は、例えば(A)、(B)、(C)成分、必要に応じて配合されるその他樹脂成分、及び熱分解型発泡剤等の添加剤を含有する発泡性組成物を、架橋度が30〜50%になるように架橋した後、加熱発泡させることにより製造することができる。具体的には、以下の工程(1)〜(3)を有する方法により製造することが工業的に有利である。
工程(1):熱分解型発泡剤を含む発泡性組成物の各成分を混練装置に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練した後、シート状等の所望形状の発泡性組成物とする工程
工程(2):工程(1)で得た発泡性組成物に電離性放射線を照射して、架橋度が30〜50%になるように架橋する工程
工程(3):工程(2)で架橋した発泡性組成物を、発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡体を得る工程
【0029】
上記工程(1)における混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、ロール等の汎用混練装置等が挙げられるが、押出機が好ましい。
また、工程(2)において使用される電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができるが、電子線が好ましい。電離性放射線の照射量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、0.1〜10Mradが好ましく、0.2〜5Mradがより好ましく、0.5〜3Mradが更に好ましい。電離性放射線の照射量は、(A)、(B)、(C)成分の比率や添加剤等の影響があるため、通常は架橋度を測定しながら照射量を調整する。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱発泡させる温度は、発泡剤として使用される熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140〜300℃、好ましくは150〜260℃である。また、工程(3)においては、発泡体は、発泡後、又は発泡されつつMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸されてもよい。
【0030】
[積層体]
本発明の積層体は、発泡体と、この発泡体に積層されるシート状素材とを備える積層体である。積層体において、発泡体はシート状であるとともに、シート状素材は、通常、発泡体に接着される。シート状素材としては、樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、布帛等が挙げられ、積層体が車輌用内装材に使用される場合には、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなる樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、織物、編物、不織布、皮革、人工皮革、合成皮革等の各種の布帛が好ましくは使用される。これらシート状素材は、積層体が成形体に成形された際、成形体において表面に配置されることが好ましい。
また、積層体において上記シート状素材は、発泡体の一方の面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。例えば、積層体が車輌用内装材に使用される場合には、発泡体の一方の面に上記樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、布帛が積層されるとともに、他方の面にポリエチレン、ポリプレン等からなる樹脂シートが配置されてもよい。
【0031】
[成形体]
本発明においては、上記発泡体又は積層体は、公知の方法で成形されて、成形体となるものである。成形方法としては、真空成形、圧縮成形、スタンピング成形等が挙げられるが、これらの中では真空成形が好ましい。また、真空成形には雄引き真空成形、雌引き真空成形があるが、雌引き真空成形であることが好ましい。
また、成形体がシート状素材を有する積層体を成形したものである場合には、シート状素材の表面には凹凸が付されることが好ましい。凹凸は、通常、成形時に型の表面の凹凸が転写されたものであるが、その際、成形体は雌引き真空成形により成形されることが好ましい。
成形体は、断熱材、クッション材等として使用されるが、好ましくは、自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の車輌用内装材として使用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0033】
各物性の測定方法、及び発泡体の評価方法は以下のとおりである。
(1)架橋度
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200
メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(重量%)を算出した。
架橋度(重量%)=100×(B/A)
(2)MFR
MFRは、JIS K7210に基づき、ポリプロピレンは温度230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレンは温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定された値である。
(3)密度
発泡体の密度はJISK 7222に準拠して測定したものである。また、各樹脂成分の密度はJISK7112に準拠して測定したものである。
(4)破断点伸び、100%モジュラス
破断点伸び及び100%モジュラスは、160℃において、JIS K6251に記載の方法に準拠して測定した値である。
(5)シート加工性
各実施例、比較例で得られた発泡シートについて、以下の評価基準で評価し、発泡性組成物を発泡シートに加工する際の加工性を確認した。
A:表面が荒れておらず、表面状態が良好である。
B:少し表面が荒れているが実用上問題ない。
C:表面が荒れており、実用上使用できない。
D:シート状に成形することができない。
(6)成形性
各実施例、比較例の発泡シートを、表面温度160℃でメス引きカップで真空成形して、成形性を評価した。カップの直径をD、深さをHとし、深さHと直径Dの比H/Dを大きくして各々真空成形していき、発泡シートに破れが生じ、或いは、発泡シートの一部に薄く透明となる部分が生じたときの比H/Dにより成形性を評価した。
なお、実用上、発泡体の密度に応じて、成形体の大きさも異なるため、評価基準は、以下のように密度毎に異なるものとした。
(評価基準)
・密度:0.036g/cc以上0.044g/cc未満
A:0.8<H/D B:0.75<H/D≦0.8
C:0.7<H/D≦0.75 D: H/D≦0.7
・密度:0.044g/cc以上0.057g/cc未満
A:0.82<H/D B:0.77<H/D≦0.82
C:0.72<H/D≦0.77 D: H/D≦0.72
・密度:0.057g/cc以上0.077g/cc未満
A:0.84<H/D B:0.79<H/D≦0.84
C:0.74<H/D≦0.79 D: H/D≦0.74
・密度:0.077g/cc以上0.133g/cc未満
A:0.86<H/D B:0.81<H/D≦0.86
C:0.76<H/D≦0.81 D: H/D≦0.76
【0034】
実施例1〜10、比較例1〜9
各実施例、比較例において、表1に示す各樹脂成分及び添加剤を、表1に示した部数で単軸押出機に投入して、樹脂温度190℃にて溶融混練して押し出し、厚さ1.3mmのシート状の発泡組成物を得た。このシート状の発泡組成物の両面に加速電圧800kVで電子線を所定の架橋度になるよう、表1の照射量で照射することにより発泡性組成物を架橋した。その後、架橋した発泡性組成物を250℃の気相オーブンで発泡させて発泡シート(発泡体)とした。各実施例、比較例の発泡体の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
各実施例、比較例に使用される樹脂成分及び添加剤のそれぞれは以下のとおりである。
ホモPP1:ホモポリプロピレン、製品名:J105G、プライムポリマー社製、MFR=9g/10分
ホモPP2:ホモポリプロピレン、製品名:J106G、プライムポリマー社製、MFR=15g/10分
ホモPP3:ホモポリプロピレン、製品名:EA7AD、日本ポリプロ社製、MFR=1.3g/10分
ホモPP4:ホモポリプロピレン、製品名:J3000GP、プライムポリマー社製、MFR=30g/10分
ホモPP5:ホモポリプロピレン、製品名:Y400-GP、プライムポリマー社製、MFR=4g/10分
ランダムPP:エチレン−プロピレンランダム共重合体、製品名:EG8、日本ポリプロ社製、MFR=0.8g/10分、エチレン量:3質量%
LLDPE:線状低密度ポリエチレン、製品名:2047G、ダウケミカル日本社製、MFR=2.3g/10分
架橋助剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート
発泡剤:アゾジカルボンアミド
酸化防止剤1:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
酸化防止剤2:ジラウリルチオジプロピオネート
【0037】
以上のように、実施例1〜10では、発泡体の架橋度を30〜50%としつつ、160℃破断伸びを150%以上、SS係数を7以上と高くすることで、高温下での伸縮性、機械強度等が良好となり、発泡体の高温下における成形性が良好となった。
一方で、比較例2〜8から明らかなように、160℃破断伸び、SS係数、及び架橋度のいずれか1つでも上記範囲外となると、高温下での発泡体の伸縮性、機械強度等が低下して、発泡体の成形性は十分なものにならなかった。なお、比較例1、9では、ホモポリプロピレン(A)のMFRが低すぎ、又は高すぎたため、シート加工性が悪くなり、発泡性組成物を発泡体に加工することができなかった。