(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るフィルタプレス装置1の構成を示す図であり、フィルタプレス装置1を示す側面図である。
図1では、フィルタプレス装置1の一部の構成(スラリー供給部51および補助流体供給部68)をブロックにて示している。また、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している(他の図において同様)。典型的には、X方向およびY方向は水平な方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0019】
フィルタプレス装置1は、液体中に汚泥や鉱物が混ざった混合物(以下、「スラリー」という。)に対して加圧を伴う濾過を行う。フィルタプレス装置1は、制御部100と、複数の濾板2と、濾板締付機構4と、スラリー供給部51と、脱水ケーキ剥離装置6とを備える。制御部100は、フィルタプレス装置1の全体制御を担う。各濾板2は、ZX平面に平行な板状部材であり、複数の濾板2はY方向(以下、「濾板配列方向」という。)に配列される。後述するように、フィルタプレス装置1は、2種類の濾板2a,2b、すなわち、圧搾濾板2aおよび普通濾板2b(
図3参照)を含む。濾板2の総数は、例えば、3以上である。以下の説明では、圧搾濾板2aおよび普通濾板2bを区別する必要がない場合に、両者を単に「濾板2」という。
【0020】
図2は、濾板配列方向に沿って見た場合における濾板の近傍を示す図であり、
図2では、普通濾板2bを示している。各濾板2(圧搾濾板2aおよび普通濾板2b)は、矩形の板状である濾板本体21と、2つの上側突出部211と、2つの下側突出部212とを備える。上側突出部211は、濾板本体21の上部((+Z)側の部位)に設けられ、下側突出部212は、濾板本体21の下部((−Z)側の部位)に設けられる。2つの上側突出部211は、濾板本体21から(+X)方向および(−X)方向にそれぞれ突出する。2つの下側突出部212は、濾板本体21から(+X)方向および(−X)方向にそれぞれ突出する。各上側突出部211には、濾板配列方向に延びる貫通孔213が設けられ、各下側突出部212にも、濾板配列方向に延びる貫通孔214が設けられる。
【0021】
図1および
図2に示すように、X方向(以下、「幅方向」という。)における複数の濾板2の両側には、濾板配列方向に長い一対のサイドバー11が設けられる。
図2では、濾板配列方向に垂直な面におけるサイドバー11の断面を示している。上側突出部211の下面には、例えば、図示省略のローラが設けられ、当該ローラがサイドバー11の上面に接触する。上記構造により、複数の濾板2が、一対のサイドバー11により濾板配列方向に移動可能に支持される。各濾板2における他の構成の詳細については後述する。一対のサイドバー11は、フィルタプレス装置1の全体を支持する支持フレーム10の一部である。各サイドバー11の下部には、濾板本体21とは反対側に突出する支持バー111が設けられる。支持バー111は、サイドバー11のほぼ全長に亘って濾板配列方向に延びる。
【0022】
図1に示すように、濾板締付機構4は、移動ヘッド41と、固定ヘッド42と、進退機構43とを備える。固定ヘッド42は、複数の濾板2の(+Y)側に配置され、支持フレーム10に固定される。移動ヘッド41は、複数の濾板2の(−Y)側に配置され、一対のサイドバー11により濾板配列方向に移動可能に支持される。進退機構43は、例えば油圧シリンダであり、移動ヘッド41を濾板配列方向に移動させる。移動ヘッド41を(+Y)方向に移動させることにより、複数の濾板2が固定ヘッド42に向かって押し込まれ、濾板配列方向に互いに密着する(正確には、後述の濾布31を挟んで密着する。)。移動ヘッド41の(+Y)方向への移動により、複数の濾板2を濾板配列方向に互いに密着させた状態を、以下、「密着状態」という。
【0023】
図3は、
図2中の矢印III−IIIの位置における複数の濾板2a,2bの断面図である。フィルタプレス装置1では、2種類の濾板2a,2bが濾板配列方向に交互に設けられる。一方の種類の濾板2a(以下、「圧搾濾板2a」という。)は、濾板本体21に加えて、2つのダイヤフラム22をさらに備える。2つのダイヤフラム22は、濾板本体21の(+Y)側の面、および、(−Y)側の面にそれぞれ設けられる。濾板本体21の当該面とダイヤフラム22との間の空間には所定のガスが圧入可能であり、当該ガスの圧入によりダイヤフラム22が当該面から離れる方向に向かって凸状となる。
図3では、凸状となった状態のダイヤフラム22を二点鎖線にて示している。
【0024】
各圧搾濾板2aには、濾布31が設けられる。濾布31は、帯状であり、2つのダイヤフラム22の外側の面(濾板本体21とは反対側の面)と、濾板本体21の上面とを覆うように圧搾濾板2aに掛けられる。長手方向における濾布31の両端は、圧搾濾板2aの下面から下方に離れた位置にて互いに接続される。濾板本体21において幅方向を向く面には、濾布31は重ならない(後述の普通濾板2bにおいて同様。)。濾布31において、濾板本体21の上面に重なる部位は、当該上面に固定され、他の部位は、濾板本体21に対して固定されない。
【0025】
他方の種類の濾板2b(以下、「普通濾板2b」という。)は、濾板本体21に加えて、ガス噴射部24と、2つの送液リング23とをさらに備える。ガス噴射部24は、濾板本体21の上面に設けられる。
図2および
図3に示すように、ガス噴射部24は、2つのガス導入口241と、4つのガス噴射口242とを有する。2つのガス導入口241は、幅方向に並んで設けられ、上方に向かって開口する。4個のガス噴射口242のうち2つのガス噴射口242は、濾板本体21の(+Y)側の面の上方にて、幅方向に並んで設けられる。残りの2つのガス噴射口242は、濾板本体21の(−Y)側の面の上方にて、幅方向に並んで設けられる。(+X)側に配置される2つのガス噴射口242は、(+X)側のガス導入口241に接続(連通)し、(−X)側に配置される2つのガス噴射口242は、(−X)側のガス導入口241に接続する。ガス噴射部24におけるガス導入口241およびガス噴射口242の個数および配置は適宜変更されてよい。
【0026】
普通濾板2bの濾板本体21には、スラリー供給孔219と、連絡孔218とが形成される。スラリー供給孔219は、濾板配列方向に延びる貫通孔である。
図2に示すように、連絡孔218は、一方の上側突出部211の貫通孔213とスラリー供給孔219とを接続する。2つの送液リング23は、スラリー供給孔219の両端に嵌め込まれる。
【0027】
圧搾濾板2aと同様に、各普通濾板2bには、濾布31が設けられる。濾布31は、帯状であり、濾板本体21における(+Y)側および(−Y)側の面と、上面とを覆うように普通濾板2bに掛けられる。長手方向における濾布31の両端は、普通濾板2bの下面から下方に離れた位置にて互いに接続される。普通濾板2bに掛けられる濾布31では、ガス噴射部24のガス導入口241およびスラリー供給孔219に対向する位置に孔部が設けられる。したがって、ガス導入口241は濾布31に覆われず、外部からガス導入口241へのガスの供給が可能となる。また、既述の送液リング23は、濾板本体21との間に濾布31を挟んだ状態で、スラリー供給孔219に嵌め込まれる。濾布31において、ガス噴射部24の上面(ガス噴射口242を除く。)に重なる部位、および、送液リング23に重なる部位は、普通濾板2bに対して固定され、他の部位は、普通濾板2bに対して固定されない。
図2では、二点鎖線にて濾布31を示している。複数の普通濾板2bは、原則として同様の構造を有する。
【0028】
図3に示すように、普通濾板2bでは、濾板本体21における(+Y)側および(−Y)側の面25(以下、「対向面25」という。)が、隣接する圧搾濾板2aにおけるダイヤフラム22の外側の面に対向する。各圧搾濾板2aのダイヤフラム22、および、各普通濾板2bの対向面25には上下方向に延びる複数の溝が幅方向に配列して形成される。後述するように、フィルタプレス装置1におけるスラリーの処理では、互いに隣接する圧搾濾板2aおよび普通濾板2bの各組合せにおいて、互いに対向するダイヤフラム22と対向面25との間にてスラリーの濾過および圧搾が行われる。すなわち、互いに隣接する圧搾濾板2aと普通濾板2bとの間に、濾過および圧搾が行われる濾過室20が形成される。また、ダイヤフラム22の外側の面、および、上記対向面25が、濾布31を介してスラリーと接触する濾過面となる。
【0029】
密着状態における複数の濾板2では、(+X)側の上側突出部211の貫通孔213(
図2参照)が、濾板配列方向に連続した1つの流路を形成する。
図1のスラリー供給部51は、固定ヘッド42に隣接する濾板2の上記貫通孔213に接続される。スラリーの処理の際には、スラリー供給部51が、上記流路と、各普通濾板2bの連絡孔218およびスラリー供給孔219とを介して濾過室20内にスラリーを供給する。同様に、(−X)側の上側突出部211の貫通孔213も、濾板配列方向に連続した1つの流路を形成する。フィルタプレス装置1では、例えば、ダイヤフラム22の作動に利用するガスが、当該流路を利用して各圧搾濾板2aに供給される。さらに、(−X)側の下側突出部212の貫通孔214、および、(+X)側の下側突出部212の貫通孔214も、濾板配列方向に連続した流路を形成する。これらの流路は、例えば、濾過室20からの濾過液の回収に利用される。
【0030】
図1に示すように、脱水ケーキ剥離装置6は、剥離装置本体61と、補助流体供給部68と、本体移動機構69とを備える。剥離装置本体61は、本体ベース部611と、ガス供給本体62と、2つのスクレーパ63と、スクレーパ変位機構64と、スクレーパ昇降機構65と、濾板保持機構66とを備える。
図2に示すように濾板配列方向に沿って見た場合に、本体ベース部611は、濾板2を跨ぐ門型形状を有する。詳細には、本体ベース部611は、4個の脚部612と、保持ベース613とを備える。4個の脚部612のうち2つの脚部612は、濾板2の(+X)側において濾板配列方向に並んで設けられる。残りの2つの脚部612は、濾板2の(−X)側において濾板配列方向に並んで設けられる。本体ベース部611は、4個の脚部612の上部に固定される。各脚部612の下端部には、ローラ614が設けられ、当該ローラ614は、支持バー111の上面に接触する。上記構造により、本体ベース部611が、一対の支持バー111により濾板配列方向に移動可能に支持される。
【0031】
図1に示す本体移動機構69は、例えば、モータ、スプロケット、ローラチェーン等を有する。当該モータを駆動することにより、ローラチェーンが循環移動し、当該ローラチェーンの一部に接続された本体ベース部611が濾板配列方向に移動する。剥離装置本体61では、ガス供給本体62、2つのスクレーパ63、スクレーパ変位機構64、スクレーパ昇降機構65および濾板保持機構66が、本体ベース部611に直接的または間接的に固定され、これらの構成も、本体ベース部611と共に濾板配列方向に移動する。
【0032】
図2に示すように、ガス供給本体62は、ガスタンク621と、ガス供給弁(図示省略)と、2つのガス供給口623とを備える。ガスタンク621は、圧縮ガスを貯留する。圧縮ガスは、例えば高圧のエアである。圧縮ガスは、他の種類のガスであってもよい。ガスタンク621は、ガス供給弁を介して2つのガス供給口623に接続される。各ガス供給口623は、下方に向かって開口する。ガス供給口623は、ベンチュリ効果を利用するものであり、上下方向に垂直な断面積が、下方に向かうに従って漸次減少する。幅方向に関して、2つのガス供給口623は、各普通濾板2bの2つのガス導入口241と同じ位置に配置される。また、各ガス供給口623の下端は、ガス導入口241の上端よりも僅かに上方に位置する。
【0033】
ガス供給本体62では、ガス供給弁を短時間だけ開放することにより、2つのガス供給口623から圧縮ガスがパルス的に噴射される。以下の説明では、ガス供給本体62のガス供給口623から噴射されるガスを「パルスガス」という。後述するように、パルスガスは、濾布31を揺動させるために短時間に噴射される高圧のガスであり、例えば、0.2MPa以上の圧力で、3秒以下の時間だけ噴射される。好ましくは、パルスガスは、0.5MPa以上の圧力で、0.3秒以下の時間だけ噴射される。ガスタンク621およびガス供給弁の通常の設計を考慮すると、例えば、パルスガスの圧力は、1.0MPa以下であり、噴射時間は、0.1秒以上である。
【0034】
図4は、スクレーパ63を示す図であり、
図5は、
図4中の矢印V−Vの位置におけるスクレーパ63の断面図である。スクレーパ63は、薄い板状であり、
図5では、実際よりもスクレーパ63を厚く描いている(他の図において同様)。スクレーパ63は、スクレーパ本体631と、カバープレート639とを備える。スクレーパ本体631は、
図4中の横方向に延びる刃先632を含む部材である。フィルタプレス装置1では、刃先632が幅方向に平行となるようにスクレーパ63が取り付けられるため、以下の説明では、
図4の横方向を同様に幅方向(X方向)と呼ぶ。
【0035】
スクレーパ本体631の表面633には、幅方向に延びる第1溝部634と、第1溝部634から刃先632側へと延びる複数の第2溝部635とが形成される。複数の第2溝部635は、幅方向に配列される。カバープレート639は、スクレーパ本体631の表面633に重ねて固定される。複数の第2溝部635における先端部(第1溝部634とは反対側の端部)を除き、第1溝部634および複数の第2溝部635がカバープレート639により覆われる。上記構造により、スクレーパ63の内部において幅方向に延びるスクレーパ内部流路が第1溝部634およびカバープレート639により形成される。また、複数の第2溝部635の先端部が、スクレーパ内部流路から連続する複数の噴出口636となる。複数の噴出口636は、幅方向に配列される。
【0036】
カバープレート639には、2つの流入口638が設けられる。補助流体供給部68(
図1参照)は、チューブ等を介して、各スクレーパ63の2つの流入口638に接続される。補助流体供給部68が流入口638を介して所定の補助流体をスクレーパ内部流路に供給することにより、複数の噴出口636から補助流体が噴出される。補助流体は、例えば圧縮エアである。補助流体は、高圧の他の種類のガスまたは液体であってもよい。スクレーパ本体631は、例えば樹脂にて形成され、カバープレート639は、例えばステンレス鋼にて形成される。
【0037】
図1に示すスクレーパ変位機構64は、刃先632が幅方向に平行となる状態で2つのスクレーパ63を保持する。2つのスクレーパ63は、濾板配列方向に間隔を空けて並べられる。スクレーパ変位機構64は、例えば、エアシリンダを有し、濾板配列方向における2つのスクレーパ63の間隔を変更する。スクレーパ変位機構64は、ZX平面に対するスクレーパ63の角度を変更することにより、2つのスクレーパ63の刃先632間の距離を変更するものであってもよい。後述するように、スクレーパ変位機構64により、スクレーパ63の刃先632が濾布31に接触可能となる。スクレーパ昇降機構65は、例えば、モータ、ラック、ピニオン等を有する。当該モータを駆動することにより、ラックおよびピニオンを含む機構を介してスクレーパ変位機構64が上下方向(Z方向)に昇降する。
【0038】
図1および
図2に示すように、濾板保持機構66は、2つの支持機構661を有する。2つの支持機構661は、(+Y)側に位置する2つの脚部612にそれぞれ取り付けられる。各支持機構661は、例えば、エアシリンダを有する。支持機構661は、支持部材662(
図2参照)を濾板2の側面に対して進退させる。濾板2の上側突出部211には、支持部材662と係合可能な係合部215が設けられる。濾板保持機構66が、2つの支持部材662を濾板2側に移動して2つの係合部215に係合させることにより、当該濾板2が濾板保持機構66により保持される。
【0039】
次に、フィルタプレス装置1がスラリーを処理する動作について
図6を参照して説明する。スラリーを処理する際には、まず、
図1の進退機構43が、移動ヘッド41を(+Y)方向に移動させることにより、複数の濾板2が密着状態とされる(ステップS11)。密着状態では、
図3に示すように、各濾過室20を形成する2つの濾板2(圧搾濾板2aおよび普通濾板2b)が2つの濾布31を挟んで密着する。そして、スラリー供給部51により普通濾板2bのスラリー供給孔219を介して、当該2つの濾布31の間にスラリーが注入され、当該スラリーが濾布31により濾過される(ステップS12)。濾布31を通過した液体は、ダイヤフラム22および対向面25に形成された複数の溝を介して濾過室20の下部に移動し、当該下部に設けられた回収口にて回収される(後述の圧搾時において同様)。
【0040】
続いて、圧搾濾板2aにおいて、ダイヤフラム22と濾板本体21との間の空間にガスを圧入することにより、ダイヤフラム22が対向面25に向かって凸状となる。これにより、濾過室20内のスラリーに対する圧搾が行われる(ステップS13)。スラリーの圧搾が完了すると、ダイヤフラム22と濾板本体21との間におけるガスが除去され、ダイヤフラム22が当該濾板本体21側へと戻る。スラリーの圧搾により、各濾過室20には固形物、すなわち脱水ケーキ9(
図7参照)が残留する。その後、進退機構43により移動ヘッド41が(−Y)方向に移動する。これにより、
図7に示すように、移動ヘッド41が、最も(−Y)側の圧搾濾板2aから設定距離Lだけ離れた離間位置に配置される(ステップS14)。
図7では、幅方向におけるガス導入口241の位置での複数の濾板2(圧搾濾板2aおよび普通濾板2b)の断面を示している(後述の
図8ないし
図11において同様)。
【0041】
後述するように、移動ヘッド41を離間位置に配置した後、密着状態の複数の濾板2において濾板2が1枚ずつ順に(−Y)方向へと移動される。以下の説明では、(−Y)方向への移動が行われていない濾板2のうち最も(−Y)側の濾板2を、「移動対象の濾板2」という。
【0042】
移動ヘッド41が離間位置に配置されると、
図1の本体移動機構69が剥離装置本体61を濾板配列方向に移動することにより、支持機構661の支持部材662(
図2参照)が、移動対象の濾板2の係合部215に係合可能な位置に配置される。
図7では、濾板保持機構66の支持機構661を破線にて示している。ここでは、移動対象の濾板2は、最も(−Y)側の圧搾濾板2aである。支持機構661が支持部材662を係合部215に係合させることにより、当該圧搾濾板2aが濾板保持機構66により保持される。
【0043】
続いて、本体移動機構69が剥離装置本体61を(−Y)方向に設定距離Lだけ移動する。これにより、当該圧搾濾板2aが移動ヘッド41に接触する位置まで移動する(
図8参照)(ステップS15,S16a)。その結果、当該圧搾濾板2aと、当該圧搾濾板2aに隣接する普通濾板2b(すなわち、最も(−Y)側の普通濾板2b)との間に、濾板配列方向に設定距離Lだけ離れた空間(以下、「剥離処理空間」という。)が形成される。
【0044】
その後、支持機構661が支持部材662を当該圧搾濾板2aから離れさせ、当該圧搾濾板2aの保持が解除される。本体移動機構69が剥離装置本体61を濾板配列方向に移動し、
図8に示すように、支持機構661が、次の移動対象の濾板2の位置に配置される。当該次の移動対象の濾板2は、最も(−Y)側の普通濾板2bである。支持機構661が支持部材662を当該普通濾板2bの係合部215に係合させることにより、当該普通濾板2bが濾板保持機構66により保持される。
【0045】
ここで、剥離装置本体61では、濾板保持機構66が一の濾板2を保持した状態において、当該濾板2の(−Y)側の面から設定距離Lの半分だけ(−Y)方向に離れた位置に、スクレーパ変位機構64の中央位置(Y方向の中央位置)が配置される。したがって、濾板保持機構66が次の移動対象の濾板2(ここでは、普通濾板2b)を保持した状態では、濾板配列方向に関して、スクレーパ変位機構64の中央位置が、剥離処理空間の中央に位置する。また、濾板保持機構66が普通濾板2bを保持した状態では、ガス供給本体62の2つのガス供給口623が、当該普通濾板2bの2つのガス導入口241の真上に配置される。
【0046】
続いて、剥離処理空間において、スクレーパ63の昇降が行われる(ステップS17)。具体的には、まず、スクレーパ昇降機構65(
図1参照)が、スクレーパ63およびスクレーパ変位機構64の連続的な下降を開始する。また、
図8中に二点鎖線にて示すように、スクレーパ変位機構64が2つのスクレーパ63の間隔を広げる。これにより、剥離処理空間を挟んで互いに対向する圧搾濾板2aおよび普通濾板2bにおいて、両者の濾過面(ダイヤフラム22および対向面25)をそれぞれ覆う2つの濾布31の表面に、2つのスクレーパ63の刃先632が接触する。実際には、2つのスクレーパ63は、スクレーパ変位機構64により圧搾濾板2aおよび普通濾板2bに向けて付勢される。圧搾濾板2aは移動ヘッド41に接触しており、スクレーパ63に押されて当該圧搾濾板2aが動くことはない。
【0047】
図9は、スクレーパ63および濾板2の一部を拡大して示す断面図である。
図9では、図示の便宜上、濾布31と脱水ケーキ9との間に隙間を設けているが、実際には両者は密着している。
図9に示すように、板状のスクレーパ63では、その刃先632が接触する濾布31とは反対側の面に噴出口636が設けられる。また、スクレーパ63の刃先632が、当該濾布31と脱水ケーキ9との間に進入する直前に、補助流体供給部68が補助流体をスクレーパ内部流路に供給する。これにより、スクレーパ63の刃先632が進入する、濾布31と脱水ケーキ9との間の位置に向けて、当該位置に近接した噴出口636から補助流体が噴出される。その結果、脱水ケーキ9の上端部が部分的に剥離または脱落し、スクレーパ63の刃先632が、当該濾布31と脱水ケーキ9との間に進入する際における抵抗が小さくなる。換言すると、スクレーパ63の刃先632が、当該濾布31と脱水ケーキ9との間に入り込みやすくなる。
図9では、噴出口636からの補助流体の噴出方向を矢印A1にて示している。
【0048】
濾布31と脱水ケーキ9との間に進入したスクレーパ63の下降により、濾布31に付着する脱水ケーキ9の大部分を剥離させることが可能となる。スクレーパ63では、上下方向において刃先632が脱水ケーキ9の位置に到達した後も、必要に応じて複数の噴出口636から補助流体が噴出されてもよい。これにより、スクレーパ63による脱水ケーキ9の剥離が、補助流体により補助される。
【0049】
図8に示す2つのスクレーパ63が、圧搾濾板2aおよび普通濾板2bの下端部まで移動すると、スクレーパ変位機構64の下降が停止される。また、スクレーパ変位機構64が2つのスクレーパ63の間隔を狭め、2つのスクレーパ63の刃先632が濾布31から離れる。その後、スクレーパ昇降機構65が、スクレーパ変位機構64を圧搾濾板2aおよび普通濾板2bよりも上方の位置まで上昇させる。以上のように、剥離処理空間においてスクレーパ63を濾布31に対して移動することにより、濾布31に付着する脱水ケーキ9の剥離が行われる。フィルタプレス装置1では、スクレーパ63を濾布31の表面に沿って濾布31に対して移動するスクレーパ移動機構が、スクレーパ昇降機構65により実現される。
【0050】
剥離処理空間におけるスクレーパ63の昇降が完了すると、濾板保持機構66により保持されている普通濾板2b(移動対象の濾板2)の(−Y)方向への連続的な移動が、本体移動機構69により開始される(ステップS18,S15,S16b)。既述のように、普通濾板2bには、ガス導入口241およびガス噴射口242(
図10参照)が設けられており、普通濾板2bは、ガス供給本体62によるパルスガスの供給対象となる対象濾板である。当該普通濾板2bが所定距離(
図10の例では、設定距離Lの半分)だけ移動すると、ガス供給本体62の2つのガス供給口623からパルスガスが噴射される。当該2つのガス供給口623は、当該普通濾板2bの2つのガス導入口241と上下方向に対向しており、パルスガスがガス導入口241に供給される。
【0051】
ここで、ガス供給口623においてパルスガスが流れる方向(ここでは、(−Z)方向)を「ガス流れ方向」と呼ぶと、ガス供給口623では、ガス流れ方向に垂直な断面積が、ガス流れ方向に沿って漸次減少している。また、ガス流れ方向においてガス供給口623とガス導入口241との間に隙間が形成されている。したがって、ベンチュリ効果により、当該隙間の周囲の空気もガス導入口241内に導入され、大量のガスが、ガス導入口241に供給されることとなる。パルスガス(当該隙間の周囲の空気も含む。)は、(+Y)方向に向かって開口するガス噴射口242と、(−Y)方向に向かって開口するガス噴射口242とから瞬時に噴射される。パルスガスは、当該普通濾板2bを覆う濾布31の内側の面(普通濾板2b側の面)の一部に衝突し、濾布31が激しく揺動される。濾布31の揺動により、濾布31の外側の面に付着する脱水ケーキ9が剥離する。なお、パルスガスは、普通濾板2bの側面側から外部へと排出される。
【0052】
ガス供給本体62がガス導入口241にパルスガスを供給する回数、すなわち、各ガス噴射口242からパルスガスを噴射する回数は、1または2以上である。また、ガス供給本体62がパルスガスを供給するタイミングは、任意に変更されてよい。好ましくは、普通濾板2bが、(+Y)側の圧搾濾板2aおよび(−Y)側の圧搾濾板2aの双方と離間した位置において、ガス供給本体62がガス導入口241にパルスガスを供給する。これにより、普通濾板2bの2つの対向面25に接触していた濾布31の部位を大きく揺動させることが可能となる。なお、必要な場合には、普通濾板2bが、(+Y)側の圧搾濾板2aまたは(−Y)側の圧搾濾板2aの一方と接触した位置において、ガス供給本体62がガス導入口241にパルスガスを供給してもよい。また、パルスガスの噴射は、スクレーパ63の昇降の直前または直後に行われてもよい。
【0053】
普通濾板2bが(−Y)側の圧搾濾板2aに接触する位置まで移動すると、当該普通濾板2bの移動が停止される(
図11参照)。これにより、当該普通濾板2bと、当該普通濾板2bの(+Y)側に隣接する圧搾濾板2aとの間に、剥離処理空間が形成される。その後、支持機構661が支持部材662を当該普通濾板2bから離れさせ、当該普通濾板2bの保持が解除される。
【0054】
普通濾板2bの保持が解除されると、本体移動機構69が剥離装置本体61を濾板配列方向に移動し、
図11に示すように、支持機構661が、次の移動対象の濾板2の位置に配置される。当該次の移動対象の濾板2は、圧搾濾板2aである。支持機構661が支持部材662を当該圧搾濾板2aの係合部215に係合させることにより、当該圧搾濾板2aが濾板保持機構66により保持される。
【0055】
続いて、剥離処理空間においてスクレーパ変位機構64の連続的な下降が開始される(ステップS17)。また、2つのスクレーパ63の間隔を広げることにより、当該2つのスクレーパ63の刃先632が剥離処理空間の2つの濾布31に接触する。そして、スクレーパ63の刃先632が進入する、濾布31と脱水ケーキ9との間の位置に向けて、補助流体が噴出される(
図9参照)。これにより、スクレーパ63の刃先632が、当該濾布31と脱水ケーキ9との間に適切に入り込み、スクレーパ63の下降に伴って、濾布31に付着する脱水ケーキ9が掻き取られる。なお、剥離処理空間の(−Y)側の普通濾板2bでは、ガス噴射口242からのパルスガスの噴射により脱水ケーキ9がある程度除去されている。
【0056】
2つのスクレーパ63が、圧搾濾板2aおよび普通濾板2bの下端部まで移動すると、スクレーパ変位機構64の下降が停止される。また、スクレーパ変位機構64により、2つのスクレーパ63の刃先632が濾布31から離れる。そして、スクレーパ昇降機構65が、スクレーパ変位機構64を圧搾濾板2aおよび普通濾板2bよりも上方の位置まで上昇させる。
【0057】
以上のようにして、フィルタプレス装置1では、密着状態の複数の濾板2において濾板2が1枚ずつ順に(−Y)方向へと移動されるとともに、各濾板2の移動後に、当該濾板2と当該濾板2の(+Y)側に隣接する濾板2との間においてスクレーパ63の移動が行われる(ステップS15〜S18)。ここで、移動対象の濾板2が普通濾板2bである場合には、当該普通濾板2bの(−Y)方向への移動に並行して、当該普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスが噴射される(ステップS15,S16b)。
【0058】
繰り返されるステップS16bでは、一の普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスを噴射させる際に、本体移動機構69が、ガス供給本体62を移動することにより、ガス供給本体62のガス供給口623を当該一の普通濾板2bのガス導入口241に対向させる。そして、ガス供給本体62によりパルスガスが当該ガス導入口241に供給される。また、他の普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスを噴射させる際に、本体移動機構69が、ガス供給本体62を移動することにより、ガス供給本体62のガス供給口623を当該他の普通濾板2bのガス導入口241に対向させる。そして、ガス供給本体62によりパルスガスが当該ガス導入口241に供給される。このように、フィルタプレス装置1では、ガス供給本体62を移動する供給本体移動機構である本体移動機構69と、ガス供給口623が設けられたガス供給本体62とにより、各普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスを噴射させるパルスガス供給部が実現される。
【0059】
既述のように、密着状態において、ダイヤフラム22が対向面25に向かって膨らむことにより、スラリーの圧搾が行われる(
図3参照)。このようにして、ダイヤフラム22と対向面25との間で圧搾が行われる場合、典型的には、対向面25に接触していた濾布31の部位に付着する脱水ケーキ9の量が、ダイヤフラム22に接触していた濾布31の部位に付着する脱水ケーキ9の量よりも多くなる。各普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスを噴射するフィルタプレス装置1では、対向面25に接触していた濾布31の部位に対して、スクレーパ63による脱水ケーキ9の剥離、および、パルスガスの噴射による脱水ケーキ9の剥離の双方が行われる。これにより、当該部位に付着する濾布31をより確実に剥離させることが可能となる。
【0060】
一方、移動対象の濾板2が圧搾濾板2aである場合には、(−Y)方向への移動の際に、パルスガスの噴射は行われない(ステップS15,S16a)。すなわち、圧搾濾板2aのダイヤフラム22に接触していた濾布31には、パルスガスの噴射による脱水ケーキ9の剥離は行われない。もちろん、必要に応じて、圧搾濾板2aにガス噴射部24が設けられ、ダイヤフラム22に接触していた濾布31の部位に対して、スクレーパ63による脱水ケーキ9の剥離、および、パルスガスの噴射による脱水ケーキ9の剥離の双方が行われてもよい。全ての濾板2に対して、脱水ケーキ9の剥離に係る上記処理が行われると(ステップS18)、フィルタプレス装置1がスラリーを処理する動作が完了する。
【0061】
ここで、スクレーパ内部流路および噴出口636が設けられていないスクレーパのみを用いて脱水ケーキ9の剥離を行う比較例のフィルタプレス装置を想定する。比較例のフィルタプレス装置では、濾布31と脱水ケーキ9との間にスクレーパの刃先が進入する際における抵抗が大きいため、当該刃先が両者の間から逃げる進入不良が生じる場合がある。この場合、濾布31に多くの脱水ケーキ9が残る剥離不良が発生する。
【0062】
これに対し、脱水ケーキ剥離装置6では、補助流体を噴出する噴出口636がスクレーパ63に設けられ、スクレーパ63の刃先632が進入する、濾布31と脱水ケーキ9との間の位置に向けて補助流体が噴出される。これにより、スクレーパ63の刃先632の進入不良を防止または抑制して、濾布31に付着する脱水ケーキ9を適切に剥離させることができる。
【0063】
また、スクレーパ63の移動方向に交差する幅方向において、スクレーパ63の刃先632が延びており、スクレーパ63の表面において、補助流体の複数の噴出口636が幅方向に配列される。これにより、幅方向の広範囲において補助流体を噴出することができ、幅方向における濾布31の広範囲において脱水ケーキ9を適切に剥離させることができる。
【0064】
フィルタプレス装置1では、普通濾板2bに設けられたガス噴射口242からパルスガスを噴射させるパルスガス供給部が設けられる。仮に、脱水ケーキ9が付着する濾布31の面に向けてパルスエアを噴射する場合には、濾布31が普通濾板2bの表面に押し付けられるため、濾布31を大きく揺動させることができない。これに対し、上記パルスガス供給部では、普通濾板2bに設けられるガス噴射口242から当該普通濾板2bの濾過面を覆う濾布31の一部に向けてパルスガスを噴射させるため、濾布31を大きく揺動させることが可能となり、濾布31に付着する脱水ケーキ9を適切に剥離させることができる。
【0065】
また、上記パルスガス供給部が、本体移動機構69およびガス供給本体62を含み、各普通濾板2bのガス噴射口242からパルスガスを噴射させる際に、ガス供給本体62のガス供給口623を当該普通濾板2bのガス導入口241に対向させる。これにより、パルスガスの供給源をチューブ等により各普通濾板2bに接続する場合に比べて、パルスガスの圧力損失を低減することができ、また、複数の普通濾板2bの周囲の構成を簡素化することができる。さらに、ベンチュリ効果を利用してパルスガスをガス導入口241に供給することにより、ガス供給本体62における圧縮ガスの消費量を削減することができる。
【0066】
フィルタプレス装置1では、濾板2を着脱可能に保持する濾板保持機構66が設けられ、本体移動機構69が、濾板保持機構66を、ガス供給本体62と共に濾板配列方向に移動する。そして、本体移動機構69が、濾板保持機構66に保持された普通濾板2bを移動している間に、ガス供給本体62が、当該普通濾板2bのガス導入口241にパルスガスを供給する。このように、普通濾板2bの移動時にパルスガスを噴射することにより、パルスガスによる脱水ケーキの剥離を効率よく行うことができる。また、普通濾板2bの両面のそれぞれにガス噴射口242が設けられ、当該両面が他の濾板2に密着しておらず、濾布31が揺れやすい状態において、当該両面のガス噴射口242からパルスガスが噴射される。これにより、普通濾板2bの両面にそれぞれ対向する濾布31の部位において、脱水ケーキ9を同時に剥離させることができる。
【0067】
上記脱水ケーキ剥離装置6およびフィルタプレス装置1では、様々な変形が可能である。
【0068】
脱水ケーキ剥離装置6において、補助流体を噴出する補助流体噴出ノズルが、補助流体噴出部としてスクレーパ63とは個別に設けられてもよい。この場合、スクレーパ63においてスクレーパ内部流路および噴出口636が省略される。補助流体噴出ノズルは、スクレーパ63の刃先632が進入する、濾布31と脱水ケーキ9との間の位置に向けて、当該刃先632の進入前に補助流体を噴出する。これにより、濾布31に付着する脱水ケーキ9を適切に剥離させることができる。好ましくは、補助流体噴出ノズルがスクレーパ変位機構64に取り付けられる、すなわち、補助流体噴出ノズルの位置がスクレーパ63に対して固定される。これにより、補助流体噴出ノズルが、スクレーパ63と共に濾布31に対して相対的に移動し、刃先632が脱水ケーキ9内に進入した後も、補助流体噴出ノズルから補助流体を噴出して、スクレーパ63による脱水ケーキ9の剥離を補助することが可能となる。
【0069】
一方、
図4および
図5に示すスクレーパ63のように、スクレーパ63の内部に補助流体の流路(スクレーパ内部流路)が形成され、かつ、スクレーパ63の表面に補助流体の噴出口636が形成される場合、すなわち、スクレーパ63が、補助流体噴出部を兼ねる場合には、脱水ケーキ剥離装置6の構造を簡素化することができる。
【0070】
フィルタプレス装置1では、ZX平面上において刃先632がX方向に対して傾斜するように、スクレーパ63が設けられてもよい。すなわち、濾布31の表面に接触するスクレーパ63の刃先632は、スクレーパ昇降機構65によるスクレーパ63の相対移動方向に交差する方向に延びていればよい。同様に、補助流体の複数の噴出口636は、スクレーパ63の表面において当該交差する方向に配列されていればよい。
【0071】
スクレーパ63は、
図1のフィルタプレス装置1以外の他の種類のフィルタプレス装置において用いられてもよい。例えば、配列された複数の濾板の上方および下方に複数のローラが設けられ、無端の濾布が当該複数のローラに掛けられることにより、複数の濾過室を濾布が順に経由するフィルタプレス装置(以下、「濾布走行式のフィルタプレス装置」という。)では、複数の濾板を互いに離間させて濾過室を開いた状態で、濾布が一定の方向に移動(循環移動)する。濾布走行式のフィルタプレス装置では、例えば、上記ローラの近傍において刃先632が濾布に常時接触した状態でスクレーパ63が設けられる。この場合、濾布を移動させることにより、スクレーパ63が濾布の表面に沿って濾布に対して相対的に移動する。すなわち、スクレーパ63を濾布に対して相対的に移動するスクレーパ移動機構が、濾布を移動させる機構により実現される。
【0072】
また、互いに隣接する2つの濾板の間(濾過室)において、2枚の濾布がサポートバーを介して連結されるフィルタプレス装置(以下、「濾布吊り下げ式のフィルタプレス装置」という。)では、濾過室を開く際に、当該サポートバーを濾板よりも上側の位置から下降するとともに、当該2つの濾板の下方に設けられた2つの巻取ロールにより、2枚の濾布がそれぞれ巻き取られる。濾布吊り下げ式のフィルタプレス装置では、例えば、上記巻取ロールの近傍においてスクレーパ63が設けられる。この場合、巻取ロールにより濾布を巻き取ることにより、スクレーパ63が濾布の表面に沿って濾布に対して相対的に移動する。すなわち、スクレーパ移動機構が、巻取ロールを回転させる機構により実現される。
【0073】
普通濾板2bに設けられたガス噴射口242からパルスガスを噴射させるパルスガス供給部が、スクレーパ63と同様に、他の種類のフィルタプレス装置において用いられてもよい。濾布吊り下げ式のフィルタプレス装置では、サポートバーを加振バーに当てて濾布を振動させる手法が知られているが、パルスガスの噴射により脱水ケーキ9を剥離する本手法では、上記のような部材間の機械的な接触がない。したがって、加振バーを利用する手法に比べて、装置全体の振動や騒音を低減することができ、メンテナンス性も向上することができる。
【0074】
各種フィルタプレス装置において、複数の濾板の上方にてガス供給本体62を移動させることが困難な構造であるときには、ガス噴射口が設けられた対象濾板において幅方向を向く側面にガス導入口を設けることも可能である。この場合、複数の濾板の当該側面に対向しつつ濾板配列方向に移動するガス供給本体62により、対象濾板にパルスガスが供給される。もちろん、
図1のフィルタプレス装置1において、普通濾板2bの側面にガス導入口が設けられてもよい。この場合、例えば、脚部612にガス供給本体62のガス供給口623が設けられる。
【0075】
既述のように、フィルタプレス装置1において、普通濾板2bに加えて、圧搾濾板2aにもガス噴射口242が設けられてもよい。また、濾布31の一部に向けてパルスガスを噴射することが可能であるならば、濾板2におけるガス噴射口242の位置は適宜変更されてよい。
【0076】
複数の濾板2に対する濾板配列方向へのガス供給本体62の移動は、相対的なものであってよく、例えば、ガス供給本体62の位置が固定され、複数の濾板2のみを移動する機構が供給本体移動機構として設けられてもよい。この場合も、普通濾板2bの移動、すなわち、ガス供給本体62の相対移動により、ガス供給本体62のガス供給口623を普通濾板2bのガス導入口241に対向させることが可能である。フィルタプレス装置の設計によっては、各対象濾板(普通濾板2b)が、チューブ等によりパルスガスの供給源に接続されてもよい。
【0077】
濾過室20に形成される脱水ケーキ9の性状等によっては、スクレーパ63による脱水ケーキ9の剥離、または、パルスガスの噴射による脱水ケーキ9の剥離の一方のみが行われてもよい。
【0078】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。