特許第6859134号(P6859134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859134
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】流体監視システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   C12M1/34 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-39175(P2017-39175)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-143122(P2018-143122A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 太輔
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−228064(JP,A)
【文献】 実開平05−051097(JP,U)
【文献】 実開昭60−177799(JP,U)
【文献】 特開2010−029109(JP,A)
【文献】 特開2015−224941(JP,A)
【文献】 特開2016−133354(JP,A)
【文献】 水中細菌のリアルタイム検出技術の開発,2015年 4月,https://www.azbil.com/jp/corporate/pr/library/review/pdf/2015_04_9.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検流体に含まれる微生物を検出する微生物検出装置と、
前記微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、前記被検流体を捕集する捕集部と、
前記微生物検出装置に接続された第1流路と、
前記第1流路に接続された第2流路と、
前記第1流路に接続された廃流路と、
前記第1流路に接続された微生物殺滅用流路と、
を備え、
前記第2流路の上流から前記被検流体が流された場合、前記被検流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれ、
前記第2流路の上流から加熱流体が流された場合、前記加熱流体が前記廃流路に導かれ、
前記微生物殺滅用流路の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、前記微生物殺滅用流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれる、
流体監視システム。
【請求項2】
被検流体に含まれる微生物を検出する微生物検出装置と、
前記微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、前記被検流体を捕集する捕集部と、
前記微生物検出装置に接続された第1流路と、
前記第1流路に接続された第2流路と、
前記第1流路に接続された廃流路と、
前記第1流路に接続された微生物殺滅用流路と、
を備え、
前記第2流路の上流から前記被検流体が流された場合、前記被検流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれ、
前記第2流路の上流から加熱流体が流された場合、前記加熱流体が前記廃流路に導かれ、
前記微生物殺滅用流路の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、前記微生物殺滅用流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれ、
前記第2流路が前記第1流路に接続される部分が、前記微生物殺滅用流路が前記第1流路に接続される部分よりも、前記微生物検出装置に近く、
前記廃流路が前記第1流路に接続される部分が、前記第2流路が前記第1流路に接続される部分よりも、前記微生物検出装置から遠い、
流体監視システム。
【請求項3】
被検流体に含まれる微生物を検出する微生物検出装置と、
前記微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、前記被検流体を捕集する捕集部と、
前記微生物検出装置に接続された第1流路と、
前記第1流路に接続された第2流路と、
前記第1流路に接続された廃流路と、
前記第1流路に接続された微生物殺滅用流路と、
を備え、
前記第2流路の上流から前記被検流体が流された場合、前記被検流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれ、
前記第2流路の上流から加熱流体が流された場合、前記加熱流体が前記廃流路に導かれ、
前記微生物殺滅用流路の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、前記微生物殺滅用流体が前記第1流路を介して前記微生物検出装置に導かれ、
少なくとも、前記第2流路が接続される部分と、前記微生物殺滅用流路が接続される部分と、の間の前記第1流路を微生物殺滅処理する流路用殺滅装置をさらに備える、
流体監視システム。
【請求項4】
前記第2流路が前記第1流路に接続される部分が、前記微生物殺滅用流路が前記第1流路に接続される部分よりも、前記微生物検出装置から遠く、
前記廃流路が前記第1流路に接続される部分が、前記微生物殺滅用流路が前記第1流路に接続される部分よりも、前記微生物検出装置から遠い、
請求項1又は3に記載の流体監視システム。
【請求項5】
前記捕集部を微生物殺滅処理する捕集部用殺滅装置をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の流体監視システム。
【請求項6】
前記微生物検出装置を経由した流体が流れる検査済流体流路をさらに備え、
前記捕集部が前記検査済流体流路に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の流体監視システム。
【請求項7】
前記捕集部及び前記検査済流体流路を微生物殺滅処理する捕集部用殺滅装置をさらに備える、請求項6に記載の流体監視システム。
【請求項8】
前記捕集部が、前記検査済流体流路に設けられた捕集用分岐バルブを備える、請求項6又は7に記載の流体監視システム。
【請求項9】
前記捕集部が、前記捕集用分岐バルブに接続される捕集容器をさらに備える、請求項8に記載の流体監視システム。
【請求項10】
前記微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、前記捕集用分岐バルブが、前記検査済流体流路を流れる流体を前記捕集容器に導く、請求項9に記載の流体監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は品質評価技術に関し、特に流体監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
精製水、製薬用水、及び注射用水等の液体は、微生物に対する処置基準値が薬局方で定められている。これらの液体は、例えば、蒸留法、限外ろ過法、及び逆浸透膜法等を用いて製造される(例えば、特許文献1から5参照。)。製造中、これらの液体は、導電率や全有機炭素(TOC: Total Organic Carbon)量が監視され、品質が管理される。製薬用水、特に注射用水については、微生物の発生許容量が10CFU/100mL以下という、厳しい管理基準値が定められている。なお、CFU(Colony Forming Unit)とは、培地上で微生物が形成するコロニーの数の単位である。製薬用途の精製水においても、微生物の発生許容量が100CFU/100mL以下という、飲料水よりも厳しい管理基準値が定められている。液体に微生物汚染が発生したことが疑われる場合は、継時的に捕集されてきた液体サンプルを濃縮し、液体に含まれる微生物を分析及び同定して、微生物汚染が発生した原因を究明している(例えば、特許文献6から9参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2997099号公報
【特許文献2】国際公開第2008/038575号
【特許文献3】特開2012−192315号公報
【特許文献4】特開2003−260463号公報
【特許文献5】特開2014−135935号公報
【特許文献6】特開2008−224271号公報
【特許文献7】特開2001−228064号公報
【特許文献8】特許第3137396号公報
【特許文献9】特開2009−180594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
継時的に捕集されてきた液体サンプルは、微生物汚染が発生していないときの液体も多量に含まれている可能性がある。そのため、継時的に捕集された液体サンプルにおいては、微生物濃度が低い可能性があり、微生物の分析及び同定のためには、高い倍率で濃縮することが必要となる。しかし、液体等の流体の濃縮は手間がかかり、時間もかかる。そこで、本発明は、微生物汚染が発生したときの流体を効率的に捕集可能な流体監視システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、被検流体に含まれる微生物を検出する微生物検出装置と、微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、被検流体を捕集する捕集部と、微生物検出装置に接続された第1流路と、第1流路に接続された第2流路と、第1流路に接続された廃流路と、第1流路に接続された微生物殺滅用流路と、を備え、第2流路の上流から被検流体が流された場合、被検流体が第1流路を介して微生物検出装置に導かれ、第2流路の上流から加熱流体が流された場合、加熱流体が廃流路に導かれ、微生物殺滅用流路の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、微生物殺滅用流体が第1流路を介して微生物検出装置に導かれる、流体監視システムが提供される。
【0006】
上記の流体監視システムにおいて、第2流路が第1流路に接続される部分が、微生物殺滅用流路が第1流路に接続される部分よりも、微生物検出装置に近く、廃流路が第1流路に接続される部分が、第2流路が第1流路に接続される部分よりも、微生物検出装置から遠くともよい。
【0007】
上記の流体監視システムにおいて、第2流路が第1流路に接続される部分が、微生物殺滅用流路が第1流路に接続される部分よりも、微生物検出装置から遠く、廃流路が第1流路に接続される部分が、微生物殺滅用流路が第1流路に接続される部分よりも、微生物検出装置から遠くともよい。
【0008】
上記の流体監視システムにおいて、少なくとも、第2流路が接続される部分と、微生物殺滅用流路が接続される部分と、の間の第1流路を微生物殺滅処理する流路用殺滅装置をさらに備えていてもよい。
【0009】
上記の流体監視システムが、捕集部を微生物殺滅処理する捕集部用殺滅装置をさらに備えていてもよい。
【0010】
上記の流体監視システムにおいて、微生物検出装置を経由した流体が流れる検査済流体流路をさらに備え、捕集部が検査済流体流路に設けられていてもよい。
【0011】
上記の流体監視システムが、捕集部及び検査済流体流路を微生物殺滅処理する捕集部用殺滅装置をさらに備えていてもよい。
【0012】
上記の流体監視システムにおいて、捕集部が、検査済流体流路に設けられた捕集用分岐バルブを備えていてもよい。
【0013】
上記の流体監視システムにおいて、捕集部が、捕集用分岐バルブに接続される捕集容器をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記の流体監視システムにおいて、微生物検出装置が基準以上の微生物を検出した場合に、捕集用分岐バルブが、検査済流体流路を流れる流体を捕集容器に導いてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微生物汚染が発生したときの流体を効率的に捕集可能な流体監視システムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る流体監視システムの模式図である。
図2】第1実施形態に係る微生物の種類毎の蛍光強度を示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る流体中の微生物の粒径と、蛍光強度と、の関係を模式的に示すグラフである。
図4】第2実施形態に係る流体監視システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る流体監視システムは、図1に示すように、気体又は液体である被検流体に含まれる微生物を検出する微生物検出装置20と、微生物検出装置20が基準以上の微生物を検出した場合に、被検流体を捕集する1又は複数の捕集部30と、微生物検出装置20に接続された第1流路101と、第1流路101に接続された第2流路102と、第1流路101に接続された廃流路103と、第1流路101に接続された微生物殺滅用流路104と、を備える。
【0019】
第1実施形態に係る流体監視システムにおいて、第2流路102の上流から被検流体が流された場合、被検流体は、第1流路101を介して微生物検出装置20に導かれる。第2流路102の上流から加熱流体が流された場合、加熱流体は、廃流路103に導かれる。微生物殺滅用流路104の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、微生物殺滅用流体は、第1流路101を介して微生物検出装置20に導かれる。
【0020】
例えば、第2流路102が第1流路101に接続される部分が、微生物殺滅用流路104が第1流路101に接続される部分よりも、微生物検出装置20に近い。また、廃流路103が第1流路101に接続される部分が、第2流路102が第1流路101に接続される部分よりも、微生物検出装置20から遠い。
【0021】
第1実施形態に係る流体監視システムは、第2流路102が第1流路101に接続される部分に設けられた第1分岐バルブ41と、微生物殺滅用流路104が第1流路101に接続される部分に設けられた第2分岐バルブ42と、をさらに備える。
【0022】
第2流路102の上流には、例えば、プラント50が接続されている。プラント50から、第2流路102、第1分岐バルブ41、及び第1流路101を介して、微生物検出装置20が検査する被検流体が流れてくる。微生物検出装置20が検査する被検流体は、例えば、製造中又は製造された精製水、製薬用水、及び注射用水等の液体であるが、これらに限定されない。微生物検出装置20の下流側には、微生物検出装置20を経由した流体が流れる検査済流体流路105が接続されている。捕集部30は、検査済流体流路105に設けられている。検査済流体流路105には、捕集用分岐バルブ3を介して、捕集用流路2が接続されている。捕集用分岐バルブ3は、制御に応じて、検査済流体流路105を流れる流体を、捕集用流路2に導く。
【0023】
捕集用流路2の末端には、捕集用流路2に導かれた流体を捕集する捕集容器5が無菌的に接続される。捕集容器5としては、例えば、無菌バッグ、シングルユースバッグ、及び加熱可能な密閉容器が使用可能であるが、これらに限定されない。捕集用分岐バルブ3、捕集用流路2、及び捕集容器5は、捕集部30の少なくとも一部を構成する。
【0024】
微生物をリアルタイムに検出可能な微生物検出装置20としては、米国特許第7430046号公報に開示された装置が使用可能であるが、これに限定されない。例えば、微生物検出装置20は、被検流体に光を照射して、被検流体に含まれる微生物が発する蛍光を検出して、被検流体に含まれる微生物を検出する。
【0025】
例えば、微生物検出装置20は、レーザ等の光源を備える。光源は、流体に向けてレーザ光等の光を照射する。光は、可視光であっても、紫外光であってもよい。光が可視光である場合、光の波長は、例えば400から550nmの範囲内であり、例えば405nmである。光が紫外光である場合、光の波長は、例えば310から380nmの範囲内であり、例えば340nmである。また、微生物検出装置20は、照射光を焦点に結ぶ光学系、及び焦点に流体を通過させる配管やノズル等を備えていてもよい。
【0026】
ここで、流体に、細菌を含む微生物が含まれていると、光を照射された微生物に含まれるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及びリボフラビン等が、蛍光を発する。また、流体に、微生物及び非生物を含む粒子が含まれていると、粒子に当たった光がミー散乱により散乱し、散乱光が生じる。
【0027】
細菌の例としては、グラム陰性菌、グラム陽性菌、及びカビ胞子を含む真菌が挙げられる。グラム陰性菌の例としては、大腸菌が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、表皮ブドウ球菌、枯草菌芽胞、マイクロコッカス、及びコリネバクテリウムが挙げられる。カビ胞子を含む真菌の例としては、アスペルギルスが挙げられる。ただし、微生物検出装置20が検出する微生物は、これらに限定されない。
【0028】
微生物検出装置20は、蛍光検出器及び散乱光検出器をさらに備える。蛍光検出器は、微生物が発した蛍光を検出し、蛍光強度を計測する。蛍光検出器が蛍光を検出した回数から、流体に含まれる微生物の数を計測することが可能である。また、図2に示すように、微生物が発する蛍光の強度は、微生物の種類によって異なる。そのため、図1に示す微生物検出装置20の蛍光検出器が検出した蛍光の強度から、流体に含まれる微生物の種類を特定することが可能である。
【0029】
散乱光検出器は、流体に含まれる粒子によって散乱した光を検出する。散乱光検出器が散乱光を検出した回数から、粒子の数を計測することが可能である。また、粒子による散乱光の強度は、粒子の粒径と相関する。したがって、散乱光検出器で散乱光の強度を検出することにより、流体に含まれる粒子の粒径を求めることが可能である。また、微生物の粒径は、微生物の種類によって異なる。そのため、散乱光検出器が検出した散乱光の強度から、流体に含まれる微生物の種類を特定することが可能である。
【0030】
散乱光検出器が散乱光を検出し、かつ蛍光検出器が蛍光を検出しなかった場合、流体に含まれる粒子が非生物粒子であることが分かる。散乱光検出器が散乱光を検出し、かつ蛍光検出器が蛍光を検出した場合、流体に微生物が含まれていることが分かる。ここで、非生物粒子とは、無害あるいは有害な化学物質、ごみ、ちり、及び埃等のダスト等を含む。
【0031】
微生物検出装置20は、検出した蛍光強度、及び散乱光強度に基づく粒径の少なくとも一方を用いて、流体に含まれる微生物の種類を特定する。蛍光強度及び散乱光強度の両方に基づいて微生物の種類を特定する方法は、これらに限定されないが、米国特許6885440号公報及び米国特許7106442号公報に開示されている。例えば図3に示すように、微生物の種類によって、粒径と、蛍光強度と、は相関がみられる。したがって、図3に示すようなグラフを予め取得することによって、蛍光強度及び粒径から微生物の種類を特定することが可能である。
【0032】
また、図1に示す微生物検出装置20は、蛍光の検出回数及び散乱光の検出回数の少なくとも一方を用いて、所定の体積の流体に含まれる微生物の数を特定する。第1流路101を流れる流体の流量は、流量計によって計測可能である。なお、微生物検出装置20は、所定の体積の流体に含まれる微生物の数として、流体中の微生物の濃度を特定してもよい。
【0033】
微生物検出装置20には、中央演算処理装置(CPU)300が接続されている。微生物検出装置20は、特定した微生物の種類、及び所定の体積の流体に含まれる微生物の数を、CPU300にリアルタイムに送信する。なお、微生物の数を特定できたが、微生物の種類を特定できなかった場合、微生物検出装置20は、微生物の種類を特定できなかったことを示す信号、及び所定の体積の流体に含まれる微生物の数を、CPU300に送信する。
【0034】
CPU300には基準記憶装置351が接続されている。基準記憶装置351は、流体に微生物汚染が発生したと判断するための基準値となる、微生物の数を保存している。基準値は、例えば、薬局方に記載されている微生物汚染の基準値を参考にして、適宜設定される。基準値は、微生物の瞬時濃度であってもよいし、一定時間における微生物の積算濃度であってもよい。CPU300は、比較部301を備えている。比較部301は、微生物検出装置が検出した微生物の検出数と、基準記憶装置351に保存されている基準値と、を比較する。
【0035】
微生物検出装置20が検出した微生物の検出数が基準値以上である場合、比較部301は、第1流路101を流れる流体に微生物汚染が発生したと判定してもよい。また、微生物検出装置20が検出した微生物の検出数が基準値未満である場合、比較部301は、第1流路101を流れる流体に微生物汚染が発生していないと判定する。
【0036】
CPU300は、制御部302をさらに備える。微生物検出装置20が検出した微生物の検出数が基準値以上であった場合、制御部302は、捕集用分岐バルブ3を制御して、検査済流体流路105を流れる流体を捕集用流路2に導き、流体を捕集容器5に捕集する。
【0037】
捕集用分岐バルブ3としては、二方弁、三方弁、及びそれらの組み合わせ等が使用可能である。弁の駆動方法としては、電気駆動及びエア駆動が挙げられる。弁の種類としては、ゲートバルブ、グローブバルブ、チャッキバルブ、ホールバルブ、バタフライバルブ、及びラムダバルブ等がある。
【0038】
捕集用流路2には、捕集容器5に捕集される流体の量を計測する流量計が設けられていてもよい。捕集容器5に捕集される流体の量は、流体の種類によって適宜設定される。例えば、流体が精製水である場合は1mL単位、流体が注射用水である場合は100mL単位で捕集されるが、これらに限定されない。捕集された流体の量が規定の量に達した場合、CPU300に接続されている出力装置322から警告を発してもよい。
【0039】
微生物検出装置20が複数回微生物を検出した場合、制御部302は、空の捕集容器5に接続されている捕集用分岐バルブ3を順次制御して、検査済流体流路105を流れる流体を空の捕集容器5に導く。これにより、微生物検出装置20が複数回微生物を検出した場合、それぞれの回における被検流体を捕集することが可能である。なお、制御部302は、微生物検出装置20と、個々の捕集用分岐バルブ3と、の間の流路の容積、及びそこを流れる流体の流速に応じて、捕集用分岐バルブ3を切り替えるタイミングを調整してもよい。
【0040】
第1実施形態に係る流体監視システムは、捕集部30で捕集された流体中の微生物を培養する培養器をさらに備えていてもよい。例えば、捕集容器5に捕集された液体の少なくとも一部を培地に接種、もしくはメンブレンフィルター等のろ過フィルターを用いた菌捕集を実施し、微生物を培養することにより、微生物の属、種などの種類を、目視、光学顕微鏡、あるいは蛍光顕微鏡等により検証することが可能となる。また、培養で増殖させた微生物の遺伝子配列を解析することにより、微生物の属、種などの種類を同定してもよい。
【0041】
CPU300には入力装置321が接続されている。入力装置321には、キーボード及びマウス等が使用可能である。入力装置321は、例えば基準記憶装置351に基準値を保存する際に使用される。また、出力装置322には、ディスプレイ及びスピーカ等が使用可能である。出力装置322は、例えば、比較部301の比較結果を出力する。
【0042】
さらに、比較部301及び制御部302は、捕集部30が流体の捕集を開始した時間、及び流体の捕集を終了した時間、流体の温度、流体の圧力、微生物検出装置20における生物粒子及び非生物粒子の検出履歴、検出した生物粒子及び非生物粒子の積算総数、検出した蛍光及び散乱光の強度の散布図等を、捕集容器5の識別子と関連付けて記録し、出力装置322に出力してもよい。
【0043】
第1実施形態に係る流体監視システムによれば、流体中に微生物を検出したときのみ、流体を捕集容器5に捕集することが可能となる。そのため、微生物汚染が生じた流体を、効率的に解析することが可能となる。例えば、捕集された流体中の微生物は、蛍光顕微鏡分析及び遺伝子解析等に付されてもよい。これにより、より高い精度で、流体中の微生物の種類を同定することが可能になり、また微生物の発生源を特定することが可能になりうる。
【0044】
従来においては、流体の微生物汚染が発覚した際に、いつから微生物汚染が生じていたのかが分からないため、大量の流体を濃縮して、微生物を分析している。これに対し、第1実施形態に係る流体監視システムによれば、流体の微生物汚染が発覚した際に、微生物汚染が発生した流体を直ちに捕集することが可能である。捕集された、微生物汚染が発生した流体における微生物の濃度は高いため、濃縮する工程を省略して、微生物を分析することが可能となる。
【0045】
ここで、第1実施形態に係る流体監視システムにおいて、第1流路101、第2流路102、及び微生物検出装置20の内部等の少なくともいずれかが微生物等で汚染されていると、プラント50から流れてくる被検流体が微生物で汚染されていなくとも、被検流体が微生物で汚染されているとの誤った判断をする可能性がある。また、第1流路101、第2流路102、微生物検出装置20の内部、及び検査済流体流路105等の少なくともいずれかが微生物等で汚染されていると、プラント50から流れてくる被検流体が含んでいなかった微生物等を、捕集部30で捕集する可能性がある。
【0046】
したがって、第1流路101、第2流路102、微生物検出装置20の内部、及び検査済流体流路105等に存在し得る微生物を殺滅する必要がある。
【0047】
ここで、第2流路102の上流のプラント50から、微生物を殺滅するための加熱流体が流された場合、制御部302は、第1分岐バルブ41及び第2分岐バルブ42を制御して、加熱流体を、廃流路103に導く。例えば、大流量の加熱流体を、第1分岐バルブ41及び第2分岐バルブ42を介して、第2流路102から廃流路103に流すことにより、第2流路102及び第1分岐バルブ41に存在し得る微生物が殺滅される。また、例えば、微生物検出装置20の耐熱性が低い場合、加熱流体が微生物検出装置20内を流れることが抑制される。ここで、加熱流体は、液体であっても、蒸気等の気体であってもよい。例えば、廃流路103の径は、第2流路102の径と同じであるが、これに限定されない。
【0048】
微生物殺滅用流路104の上流には、例えば、微生物殺滅用流体を保存する微生物殺滅用流体保存部51が接続されている。微生物殺滅用流体は、例えば、過酢酸系除菌剤、過酸化水素水、及び次亜塩素酸等の薬品、あるいはオゾン等を含む。微生物殺滅用流体は、液体であっても、気体であってもよい。微生物殺滅用流体保存部51から微生物殺滅用流路104に微生物殺滅用流体が流された場合、制御部302は、第1分岐バルブ41及び第2分岐バルブ42を制御して、微生物殺滅用流体を、第1流路101、微生物検出装置20、及び検査済流体流路105に導く。これにより、第1分岐バルブ41、第1分岐バルブ41より下流の第1流路101、微生物検出装置20、検査済流体流路105、及び捕集用分岐バルブ3に存在し得る微生物が殺滅される。なお、制御部302は、捕集用分岐バルブ3を制御して、微生物殺滅用流体が捕集用流路2及び捕集容器5に流れないようにすることが好ましい。
【0049】
流体監視システムは、捕集部30を加熱する捕集部用殺滅装置60をさらに備えていてもよい。捕集部用殺滅装置60は、少なくとも捕集用流路2と、捕集容器5と、を外側から加熱する。これにより、捕集用流路2及び捕集容器5に存在し得る微生物が殺滅される。捕集部用殺滅装置60は、検査済流体流路105及び捕集用分岐バルブ3も外側から加熱してもよい。捕集部用殺滅装置60は、熱水又は蒸気を用いて、対象を加熱してもよい。あるいは、捕集部用殺滅装置60は、電気的に対象を加熱してもよい。また、検査済流体流路105及び捕集部30等が透明部材からなる場合、捕集部用殺滅装置60は、検査済流体流路105及び捕集部30等に紫外線(UV)を照射して、微生物を殺滅してもよい。
【0050】
加熱流体による微生物の殺滅と、微生物殺滅用流体による微生物の殺滅と、捕集部用殺滅装置60による微生物の殺滅と、を行った後に、被検流体に微生物が含まれるか否かを微生物検出装置20で検査することにより、上流のプラント50では元々被検流体に含まれていなかった微生物を検出したり、捕集したりすることが抑制される。
【0051】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態に係る流体監視システムにおいては、第2流路102が第1流路101に接続される部分が、微生物殺滅用流路104が第1流路101に接続される部分よりも、微生物検出装置20から遠い。また、廃流路103が第1流路101に接続される部分が、微生物殺滅用流路104が第1流路101に接続される部分よりも、微生物検出装置20から遠い。
【0052】
第2実施形態に係る流体監視システムにおいも、第2流路102の上流から被検流体が流された場合、被検流体は、第1流路101を介して微生物検出装置20に導かれる。第2流路102の上流から加熱流体が流された場合、加熱流体は、廃流路103に導かれる。微生物殺滅用流路104の上流から微生物殺滅用流体が流された場合、微生物殺滅用流体は、第1流路101を介して微生物検出装置20に導かれる。
【0053】
具体的には、第2流路102の上流のプラント50から、微生物を殺滅するための加熱流体が流された場合、制御部302は、第1分岐バルブ41を制御して、加熱流体を、廃流路103に導く。例えば、大流量の加熱流体を、第1分岐バルブ41を介して、第2流路102から廃流路103に流すことにより、第2流路102及び第1分岐バルブ41に存在し得る微生物が殺滅される。
【0054】
微生物殺滅用流体保存部51から微生物殺滅用流路104に微生物殺滅用流体が流された場合、制御部302は、第2分岐バルブ42を制御して、微生物殺滅用流体を、第1流路101、微生物検出装置20、及び検査済流体流路105に導く。これにより、第2分岐バルブ42、第2分岐バルブ42より下流の第1流路101、微生物検出装置20、検査済流体流路105、及び捕集用分岐バルブ3に存在し得る微生物が殺滅される。
【0055】
第2実施形態に係る流体監視システムは、少なくとも、第2流路102が接続される部分と、微生物殺滅用流路104が接続される部分と、の間の第1流路101を微生物殺滅処理する流路用殺滅装置40をさらに備えていてもよい。
【0056】
流路用殺滅装置40は、加熱流体と微生物殺滅用流体が流れない、第1分岐バルブ41と第2分岐バルブ42との間の第1流路101を外側から少なくとも加熱する。これにより、第1分岐バルブ41と第2分岐バルブ42との間の第1流路101に存在し得る微生物が殺滅される。流路用殺滅装置40は、第1分岐バルブ41及び第2分岐バルブ42も外側から加熱してもよい。流路用殺滅装置40は、熱水又は蒸気を用いて、対象を加熱してもよい。あるいは、流路用殺滅装置40は、電気的に対象を加熱してもよい。
【0057】
またあるいは、第1流路101が透明である場合、流路用殺滅装置40は、第1流路101等に紫外線(UV)を照射して、微生物を殺滅してもよい。
【0058】
加熱流体による微生物の殺滅と、微生物殺滅用流体による微生物の殺滅と、流路用殺滅装置40による微生物の殺滅と、捕集部用殺滅装置60による微生物の殺滅と、は、同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。加熱流体による微生物の殺滅と、微生物殺滅用流体による微生物の殺滅と、流路用殺滅装置40による微生物の殺滅と、捕集部用殺滅装置60による微生物の殺滅と、を行った後に、被検流体に微生物が含まれるか否かを微生物検出装置20で検査することにより、上流のプラント50では元々被検流体に含まれていなかった微生物を検出したり、捕集したりすることが抑制される。
【0059】
(他の実施形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1に示す微生物検出装置20は、流体の導電率や吸光度に基づいて、流体中の微生物を検出してもよい。このように、本発明は様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0060】
3・・・捕集用分岐バルブ、5・・・捕集容器、20・・・微生物検出装置、30・・・捕集部、40・・・流路用殺滅装置、41、42・・・分岐バルブ、50・・・プラント、51・・・殺滅用流体保存部、51・・・微生物殺滅用流体保存部、60・・・捕集部用殺滅装置、101・・・第1流路、102・・・第2流路、103・・・廃流路、104・・・微生物殺滅用流路、105・・・検査済流体流路、300・・・中央演算処理装置、301・・・比較部、302・・・制御部、321・・・入力装置、322・・・出力装置、351・・・基準記憶装置
図1
図2
図3
図4