特許第6859152号(P6859152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859152
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20210405BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/36
   A61K8/34
   A61K8/92
   A61K8/73
   A61Q1/10
   A61K8/96
   A61K8/37
   A61K8/891
   A61K8/19
   A61K8/29
   A61K8/81
   A61Q1/00
   A61K8/25
   A61Q1/08
   A61Q1/02
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-60567(P2017-60567)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162227(P2018-162227A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】井出 美紀
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−190838(JP,A)
【文献】 特開2003−300807(JP,A)
【文献】 特開2005−213145(JP,A)
【文献】 特開2011−225560(JP,A)
【文献】 特開平08−277302(JP,A)
【文献】 特開平09−278627(JP,A)
【文献】 特開2004−115395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(B);
(A)成分(A1)と成分(A2)を含む油性成分
(A1)炭化水素類、ロウ類、油脂類、高級脂肪酸類、高級アルコール類よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の固形油
(A2)デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であるデキストリン脂肪酸エステル
(B)成分(B1)を含む粉体成分
(B1)中空粉体を含む球状粉体
を含有し、前記成分(A)と(B)の含有質量比が4:6〜6:4である固形化粧料。
【請求項2】
前記成分(A2)デキストリン脂肪酸エステルを構成する分岐飽和脂肪酸が、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の固形化粧料。
【請求項3】
前記成分(A2)デキストリン脂肪酸エステルが、ASTMD445測定方法による40℃における動粘度が8mm/sである流動パラフィンをゲル化しない請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項4】
前記成分(A1)の含有量が、0.1〜10質量%、(A2)の含有量が0.1〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の固形化粧料。
【請求項5】
前記成分(B1)の含有量は5〜40質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形化粧料。
【請求項6】
前記成分(B1)に含まれる中空粉体の含有量が、球状粉体中10〜40質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固形化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形油及び特定のデキストリン脂肪酸エステルを含む油性成分、並びに、球状粉体を含む粉体成分を特定の質量比で含有する固形化粧料に関し、更に詳細には、使用時に弾力性があり、指で使用した際にとろけるようなメルト感といった独特の使用感を有し、エモリエント感が高く、滑らかでソフトな使用感でありながら、べたつかずさらっとした仕上がり感等の品質を有し、化粧効果の持続性に優れ、ケーキングを起こすことなく最後まで良好に使用できる固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションやアイシャドウ等の固形化粧料は、使用方法が簡便な上に携帯性にも優れるため、消費者に好まれている。従来、この固形剤型の化粧料としては、粉体量が多く油剤量の少なく、粉体を含む組成物を圧縮成型等で得られる化粧料であり、使用時に粉体特有の伸び広がりの良さがあり、べたつかない仕上がり等の品質が好まれている固形粉末化粧料、粉体量が少なく油剤量が多く、溶融充填等で得ることができ、連続層が油剤である為肌への密着性や、エモリエント感に優れている油性固形化粧料の主に2種類の剤型が用いられてきた。
【0003】
固形粉末化粧料は、さらっとした仕上がり感が得られ、滑らかでソフトな使用感が特徴であるが、粉体量が多い為、エモリエント感、化粧効果の持続性等の点で満足できるものではなかった。このためこれら欠点を解消する為に、種々検討がなされてきた。例えば、油剤の含有量を増やすと、エモリエント感は高くなるが、使用途中で表面が固くなるいわゆるケーキングを生じる場合があった。また、粉体の表面に油剤を処理して含有する技術もあるが、さらっとした仕上がり感や滑らかでソフトな使用感が劣り、満足できる品質ではなかった。
【0004】
一方、油性固形化粧料は、エモリエント感が高く、化粧効果の持続性は優れているが、油剤の含有量が多い為、滑らかでソフトな使用感、さらっとした仕上がり感が満足できるものではなかった。特に、この剤型では固形状への成型性や、安定性の向上を目的として、油剤中に固形油を多量に含有する為、塗布時の伸び広がりの重さ、仕上がりのべたつき感、肌への負担感を生じていた。このため、これら欠点を解消する為に、種々の検討がなされてきた。例えば、多孔質無水ケイ酸等の吸油量の高い粉体を含有することにより、さらっとした仕上がり感は得られるが、肌への負担感が高く、滑らかでソフトな使用感とエモリエント感が劣り、満足できる品質ではなかった。
【0005】
固形粉末化粧料の伸び広がりが軽く、さらっとした仕上がり感と、油性固形化粧料のエモリエント感や化粧効果の持続性の両方を併せ持った固形化粧料として、油と粉の中間領域が検討されている。例えば、オルガノポリシロキサンを架橋反応させた架橋型オルガノポリシロキサン5〜21質量%と液状シリコーン油27〜80質量%とパール材及び/又はマイカ系顔料を含む粉体14〜67質量%とを含有することで弾力性のある独特の使用感触を有する固形油性化粧料を得る技術(特許文献1)、多孔質粉体を含む粉体30〜60重量%と油分40〜70重量%を多量に含有し、肌のかさつきやベタつきがなく、しっとりとした感触の固形化粧料を得る技術(特許文献2)等が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−314369号公報
【特許文献2】特開平9−221404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの化粧料はエモリエント感はあるものの、さらっとした仕上がり感に欠ける傾向があり、また、油性成分を多く含有することで、化粧料が振動や衝撃により容器内でずれを生じ、容器壁との間にすき間ができてしまう場合があった。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明は、使用時に弾力性があり、指で使用した際にとろけるようなメルト感といった、独特の使用感を有し、エモリエント感が高く、べたつかずさらっとした仕上がり感等の品質を有し、化粧効果の持続性に優れ、ケーキングを起こすことなく最後まで良好に使用できる固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、エモリエント感を高めるべく油性成分の多い固形化粧料に、固形油と特定のデキストリン脂肪酸エステルを含有すると、肌への密着性が上がる一方で、べたつきやケーキングを起してしまう場合があるため、特定の比率で油性成分と粉体成分を含有し、さらに球状粉体を組み合わせて含有することにより、肌への密着性やエモリエント感を保ちつつ、べたつかずさらっとした仕上がり感等の品質を有し、化粧効果の持続性に優れ、ケーキングを起こすことなく最後まで良好に使用でき、指で使用した際にとろけるようなメルト感といった独特の使用感が得られることを見出した。また、球状粉体中に中空粉体をさらに含有することでケーキングや、べたつきの無さにより優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]次の成分(A)〜(B);
(A)成分(A1)と成分(A2)を含む油性成分
(A1)炭化水素類、ロウ類、油脂類、高級脂肪酸類、高級アルコール類よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の固形油
(A2)デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であるデキストリン脂肪酸エステル
(B)成分(B1)を含む粉体成分
(B1)中空粉体を含む球状粉体
を含有し、前記成分(A)と(B)の含有質量比が4:6〜6:4である固形化粧料、
[2]更に、前記成分(A2)デキストリン脂肪酸エステルを構成する分岐飽和脂肪酸が、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上である[1]に記載の固形化粧料、
[3]更に、前記成分(A2)デキストリン脂肪酸エステルが、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm/sである流動パラフィンをゲル化しない[1]または[2]に記載の固形化粧料、
[4]更に、前記成分(A1)の含有量が0.1〜10質量%、(A2)の含有量が0.1〜10質量%である[1]〜[3]のいずれかに記載の固形化粧料、
[5]更に、前記成分(B1)の含有量が5〜40質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の固形化粧料、
]更に、前記成分(B1)に含まれる中空粉体の含有量が球状粉体中10〜40質量%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の固形化粧料
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、使用時に弾力性があり、指で使用する際にとろけるようなメルト感といった、独特の使用感触を有し、エモリエント感がありながら、べたつかずさらっとした仕上がり感等の品質を有し、化粧効果の持続性に優れ、ケーキングを起こすことなく最後まで良好に使用できる優れた固形化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0013】
本発明の固形化粧料が持つ弾力性のある独特の使用感触とは、着手時に指等で押すと、弾力性を感じ、また、指に擦り取る動作を行うと、ねっとりとし、指先に絡みつくように取れ、あたかもバターなどの低融点固形油が人肌で溶融するような感触と、球状粉体が転がるような感触が重なって、独特のとろけるようなメルト感があり、使用時にはその油性成分由来の感触とは違い、固形粉末化粧料を塗布しているかのような伸び広がりの良さがあり、べたつかない使用感触である。
【0014】
本発明に用いられる成分(A1)の固形油は、化粧膜の持続性や、耐衝撃性を上げる等の目的で使用され、通常化粧料に用いられる、常温で固形状の油性成分であればいずれでもよい。例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モクロウ、モンタンワックスなどの炭化水素類、キャンデリラワックス、ミツロウ、ラノリンワックス、カルナウバワックスなどのロウ類、トリベヘン酸グリセリルなどの油脂類、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、ロジン酸などの高級脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール類、シリコーンワックス類などが挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明に用いられる成分(A1)固形油の含有量は、特に限定されないが、化粧料中に0.1〜10%が好ましく、2〜8%であるとより好ましい。この範囲であれば、化粧料の肌への付着性、エモリエント感、化粧膜の持続性により優れるため好ましい。
【0016】
本発明の固形粉末化粧料に使用される成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルは、肌への付着性を上げ、化粧効果の持続性を高める効果を奏する。成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であり、好ましくは1.2〜2.8であるデキストリン脂肪酸エステルである。この置換度が1.0未満であると液状油等への溶解温度が100℃以上と高くなり、着色や特異な臭いが生じ、好ましくない。
【0017】
また、成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルは、次の特性を有する。
(1)液状油に混合したときに液状油がゲル化しない。
「液状油がゲル化しない」とは、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm2/sである流動パラフィンを液状油とする場合、デキストリン脂肪酸エステルを5質量%含有する該流動パラフィンを100℃で溶解し、24時間後25℃で粘度を測定したとき、粘度が、YAmCo DIGITAL VISCOMATE粘度計VM−100A(振動式)(山一電機社製)の検出限界以下であることを意味する。なお、ゲル化する場合には、粘度が検出されることで確認できる。
【0018】
(2)成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルが形成する皮膜が特定範囲のタック性を有する。
「タック性」を、支持体に該デキストリン脂肪酸エステルを塗布し、もうひとつの支持体を相互に離れた状態から面接触させた後に、後退させて別離させ、後退を開始してから完全に別離するまでの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)で表す場合、該デキストリン脂肪酸エステルを40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザー、たとえば、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(StABlE MiCro SystEms社製)を用いて、プローブとして直径12.5mm円柱状のポリアセタール樹脂(DElrin(登録商標)デュポン社製)製プローブを使用し、100gの荷重をかけ10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの荷重変化、すなわちタック性が30〜1,000gである。
【0019】
成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられるデキストリンは、グルコース平均重合度3〜150、特に10〜100のデキストリンが好ましい。グルコース平均重合度が2以下では、得られたデキストリン脂肪酸エステルがワックス様となって油剤への溶解性が低下する。また、グルコース平均重合度が150を超えると、デキストリン脂肪酸エステルの油剤への溶解温度が高くなる、又は溶解性が悪くなる等の問題を生ずることがある。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0020】
成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸は、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を必須とし、さらに炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸、及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これら炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸以外の脂肪酸をまとめて表すときは「その他の脂肪酸」という)を含有してもよいものである。
【0021】
脂肪酸の組成割合は、全脂肪酸に対して、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上が50mol%より多く100mol%以下、好ましくは55mol%以上100mol%以下であり、その他の脂肪酸は、0mol%以上50mol%未満、好ましくは、0mol%以上45mol%以下である。
【0022】
炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、炭素数12〜22のものが好ましく、特にイソステアリン酸が好ましく、構造の違い等の限定は特にない。
【0023】
本発明において、イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種又は2種以上の混合物を意味する。例えば5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができ(以下、「アルドール縮合型」と略す)、これは例えば日産化学工業社より市販されている。2−ヘプチルウンデカン酸はノニルアルコールをガーベット反応(GuErBEt反応、ゲルベ反応ともいう)により二量化し、酸化することにより製造することができ、これは例えば三菱化学社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似混合物として、日産化学工業社より市販され、さらに出発アルコールが直鎖飽和ではない2箇所メチル分岐したタイプも同様に日産化学社より市販されている(以下総じて「ガーベット反応型」と略す)。また、メチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるもので〔例えばJ.AmEr.Oil ChEm.SoC.,51,522(1974)に記載〕、例えば米国エメリー社などから市販されていたものがあげられる(以下「エメリー型」と略す)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸のさらに出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。本発明においては特にこのエメリー型がより好ましい。
【0024】
また、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数8〜22のものが好ましく、特に炭素数12〜22のものが好ましい。
【0025】
炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸としては、例えば、モノエン不飽和脂肪酸としては、シス−4−デセン(オブツシル)酸、9−デセン(カプロレイン)酸、シス−4−ドデセン(リンデル)酸、シス−4−テトラデセン(ツズ)酸、シス−5−テトラデセン(フィセテリン)酸、シス−9−テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス−6−ヘキサデセン酸、シス−9−ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス−9−オクタデセン(オレイン)酸、トランス−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、シス−11−オクタデセン(アスクレピン)酸、シス−11−エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス−17−ヘキサコセン(キシメン)酸、シス−21−トリアコンテン(ルメクエン)酸等が挙げられ、ポリエン不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、EPA、イワシ酸、DHA、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等が挙げられる。
【0026】
炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸は、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪酸を意味し、例えば9,10−メチレン−9−オクタデセン酸;アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸、α−シクロヘキシルメチル酸、ω−シクロヘキシル酸、5(6)−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明において、成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸単独の場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリンイソ酪酸エステル
デキストリンエチルメチル酢酸エステル
デキストリンイソヘプタン酸エステル
デキストリン2−エチルヘキサン酸エステル
デキストリンイソノナン酸エステル
デキストリンイソデカン酸エステル
デキストリンイソパルミチン酸エステル
デキストリンイソステアリン酸エステル
デキストリンイソアラキン酸エステル
デキストリンイソヘキサコサン酸エステル
デキストリン(イソ吉草酸/イソステアリン酸)エステル
【0028】
本発明において、成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸とその他の脂肪酸との混合脂肪酸を用いた場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリン(イソ酪酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(エチルメチル酢酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(イソヘプタン酸/ラウリン酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(イソヘキサコサン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/イソ吉草酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/パルミチン酸/カプロン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソデカン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチル酪酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/アラキドン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ステアリン酸/オレイン酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/パルミチン酸/ショールムーグリン酸)エステル
【0029】
次に、成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルの製造方法について説明する。
製造方法としては、特に限定されず、公知の製法を採用することができるが、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0030】
(1)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を全脂肪酸誘導体に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これらの脂肪酸誘導体をまとめて表すときは「その他の脂肪酸誘導体」という)を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満を含有する脂肪酸誘導体とを反応させる。
【0031】
(2)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上とを反応させ、次いで、その生成物とその他の脂肪酸誘導体とを反応させる。その場合、全脂肪酸誘導体に対して炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、その他の脂肪酸誘導体を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満使用する。
【0032】
上記デキストリンとのエステル化反応に使用される脂肪酸誘導体としては、例えば、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等が用いられる。(1)及び(2)のいずれの場合も、まず、デキストリンを反応溶媒に分散し、必要に応じて触媒を添加する。これに、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等を添加して反応させる。(1)の製造法の場合は、これらの酸を混合して同時に添加反応させ、(2)の製造法の場合は、まず反応性の低い分岐飽和脂肪酸誘導体を反応させた後、次いでその他の脂肪酸誘導体を添加反応させる。
【0033】
製造にあたり、これらのうちの好ましい方法を採用することができる。反応溶媒にはジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のホルムアミド系;アセトアミド系;ケトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系;ジオキサン等の溶剤を適宜使用することができる。反応触媒としてはピリジン、ピコリン等の3級アミノ化合物などを用いることができる。反応温度は原料脂肪酸等により適宜選択されるが、0℃〜100℃の温度が好ましい。
【0034】
このような成分(A2)の市販品としては、「ユニフィルマHVY」(千葉製粉社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明における成分(A2)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10%が好ましく、さらに好ましくは2〜8%である。この範囲であれば、肌への付着性、化粧効果の持続性により優れるため好ましい。
【0036】
本発明における油性成分は、上記以外に、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、半固形油、液体油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、油溶性樹脂、揮発性油剤等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、特定のアクリル酸アルキルメチルポリシロキサンエステル等の油溶性樹脂、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、低重合度ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類等の揮発性油剤等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる成分(B1)の球状粉体とは、その形状が真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸がある球状粉体であっても良い。球状粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば、無機球状粉体、有機球状粉体のいずれでもよく、またこれらの球状粉体に通常の方法により着色顔料、色素、染料、金属イオン、油性成分や、その他の有効成分などを被覆、内包処理し、着色したものであっても良い。かかる球状粉体としては、例えば、球状シリカ、球状アルミナ、球状チタニアなどの無機球状粉体、球状ナイロン、球状ポリアミド樹脂、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂、球状ポリウレタン樹脂、球状シリコーン樹脂、球状ポリエチレン樹脂、球状ポリスチレン樹脂、球状セルロース系樹脂などの有機球状粉体、さらに、体質顔料や着色顔料を通常の方法により球状に造粒したものなどが挙げられる。これらの球状粉体のうち、特に、球状シリカ、球状アルミナ、球状ナイロン、球状ポリアミド樹脂、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂、球状シリコーン樹脂が、使用感などの点から好ましい。また、成分(B1)の球状粉体の平均粒径は、特に限定されないが、ケーキングを防止する点で5〜60μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。尚、本発明において粉体の平均粒径は、例えばレーザー散乱式粒度分布計(HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定可能である。
【0038】
本発明における成分(B1)の含有量は、特に限定されないが、5〜40%が好ましく、15〜35%がより好ましい。この範囲であれば、べたつかずさらっとした仕上がり感が得られ、ケーキングのなさにより優れるため好ましい。
【0039】
本発明において成分(B1)は、さらに中空粉体を含有することでべたつきのなさやケーキングのなさにより優れる効果を奏する。中空粉体とは、内部に空隙を有する見かけ比重が0.5以下の粉体である。中空粉体の基体となる樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、メチルビニルエーテルなどのビニル系モノマー、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル系モノマー、スチレン、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等から選択される1種以上のモノマーを重合して得られるホモポリマーまたは、コポリマーが挙げられ、これらより1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそのエステル類、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メタクリロニトリル等から選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合してなるホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。さらに、このような重合体は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリアクリルフォルマール等の架橋剤で架橋されていても良い。本発明における中空粉体の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。この範囲であれば、べたつかずさらっとした仕上がり感が得られケーキングのなさにより優れるためより好ましい。
【0040】
前記基体中に中空を設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、特公昭59−53290号に開示されている如く、揮発性発泡剤を内包した熱可塑性樹脂粉体を加熱、発泡させる方法が挙げられる。揮発性溶剤としては、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、イソブテン、イソペンタン、ネオペンタン、ネオヘキサン、アセチレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、テトラアルキルシラン等の低沸点化合物等の揮発性を有する液体が用いられる。
【0041】
前記により得られた中空粉体は、必要に応じて無機粉体を被覆して、感触を調整したり、着色したりすることができる。被覆する無機粉体は特に限定されないが、通常化粧料に使用されるものであり、目的とする効果からその都度選択される。例えば、タルク、セリサイト、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、窒化ホウ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミナ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカなどが挙げられる。無機粉体を被覆する方法としては、例えば、特公平6−99273号広報に開示されている如く、発泡前または発泡途中の揮発性発泡剤内包熱可塑性樹脂粉体と無機粉体を混合し、加熱して被覆する方法がある。また、その他の被覆方法としては、無機粉体の水またはエタノール等の溶媒中に分散させた分散液を中空粉体と混合し乾燥する方法や、この無機粉体を分散させた分散液を中空粉体に噴霧し乾燥する方法などに例示される湿式処理法、高い衝撃力等の物理的な力により被覆する乾式処理法等が挙げられる。この様な被覆において、中空粉体と、無機酸化物の好ましい質量比は5:95〜50:50が好ましい。無機粉体により被覆された中空粉体は、化粧料中での分散性の点で好ましい。
【0042】
上記の中空粉体は、市販品を用いることも出来る。例えば、SILICA MICROBEAD BA−1(日揮触媒化成社製)、マツモトマイクロスフェアFシリーズ、マツモトマイクロスフェアMFLシリーズ(いずれも松本油脂製薬社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明でいう見掛け比重は、化粧品原料基準の一般試験法に収載されている比重測定法の第2法、すなわち、JIS K2203の1号(比重びんと灯油)を用いて、20℃において測定した値であり、上記中空粉体はこの方法により測定された値が、0.5以下のものである。見掛け比重が0.5以下の粉体は、充填成型した固形化粧料がソフトな使用感に仕上がり、べたつきを抑えることができより好ましい。
【0044】
本発明における中空粉体の含有量は、成分(B1)中に10〜40%が好ましく、15〜30%がより好ましい。この範囲であれば、べたつきがなくさらっとした仕上がり感が得られ、耐衝撃性により優れるため好ましい。
【0045】
本発明における粉体成分は、上記(B1)以外に、化粧料に一般に使用される粉体であれば、紡錘状、針状、繊維状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、シリカ、炭化珪素、雲母、合成金雲母、セリサイト、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス等の無機粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、オルガノポリシロキサンエラストマー、ウール、シルク、結晶セルロース等の有機粉体類、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ等の有色無機顔料、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタンなどの複合粉体類や、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末等の積層フィルム末類、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、界面活性剤、油脂、炭化水素、エステル、高級脂肪酸、高級アルコール等を用いて公知の方法により表面処理してあっても良い。
【0046】
本発明における成分(A)と成分(B)の含有質量比は、4:6〜6:4であることが好ましい。この範囲を超えて成分(A)の油性成分が増えると、油性固型化粧料の領域となり、エモリエント感が高く、化粧効果の持続性は優れているが、滑らかでソフトな使用感、さらっとした仕上がり感に欠けるものとなる。また、この範囲を超えて成分(B)の粉体成分が増えると、固形粉末化粧料の領域となり、さらっとした仕上がり感や、滑らかでソフトな使用感はあるものの、エモリエント感、化粧効果の持続性に欠けるものとなる。
【0047】
本発明の固形化粧料は、上記必須成分(A)、(B)の他に通常化粧料に用いられる成分を本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて適宜含有することができる。例えば、界面活性剤、皮膜形成剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0048】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0049】
皮膜形成剤としては、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
【0050】
水性成分は、モイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類等が挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0052】
本発明の固形化粧料は、特に限定されず、常法を用いて製造することができる。例えば、上記の油性成分を必要に応じて加熱溶解し、粉体成分を均一に混合、必要に応じて粉砕して組成物を調整する。これを皿状容器などの容器に充填してそのまま圧縮成型しても良く、紙状のものを挿み過剰油性成分を吸取り圧縮成型しても良く、または組成物を溶媒と混合してスラリー状としたものを皿状容器などの容器に充填した後、溶媒吸取り用の紙状のものを挿み、溶媒を除去し圧縮成型する等して得ることができる。
【0053】
本発明の固形化粧料の剤型は固形に成形されていれば特に限定されず、油を連続相とする油性固形化粧料とすることもできるが、好ましくは固形粉末化粧料とすると、粉体特有の伸び広がりの良さが得られ、べたつかずさらっとした仕上がり感により優れるためより好ましい。
【0054】
本発明の固形化粧料は、特に限定されないが、携帯されることの多いアイカラー、チークカラー、アイブロウ、ファンデーション等に用いられ、使用感や発色の良さの点からアイカラー、チークカラーにより好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
製造例1:デキストリン脂肪酸エステル
平均グルコース重合度30のデキストリン21.41g(0.132mol)をジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62g(0.666mol)とからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)120g(0.396mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質107gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%) 尚、エメリー型の出発原料はコグニス社製のEMARSOL873を用いた。本原料の脂肪酸組成は分岐脂肪酸が60mol%、その他の脂肪酸が40mol%(パルミチン酸10mol%を含む)のものを用いた。置換度は2.2、イソステアリン酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は161gであった。
【0057】
実施例1〜6、参考例7および比較例1〜5 アイシャドウ
表1に示す組成のアイシャドウを下記の製造方法に従って調製した。得られたアイシャドウについて、下記評価方法により評価を行った。その結果も併せて表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
※1:MR−7GC(綜研化学社製)
※2:ミペロン PM−200(三井化学社製)
※3:MFL−50STI(松本油脂製薬社製)
※4:KF−96A−6CS(信越化学工業社製)
※5:KSG−16(信越化学工業社製)
【0060】
(製造方法):実施例1〜6、参考例7、比較例1〜5
A.成分(12)〜(16)を70℃に加熱し、均一混合する。
B.成分(1)〜(11)を均一に攪拌混合する。
C.BにAを加え均一に攪拌混合する。
D.Cを皿状容器に充填し、化粧料と圧縮用ヘッドとの間に、必要であれば、過剰油性成分の吸取り用の紙状のものを挿み、圧縮成型して、アイシャドウを得た。
【0061】
(評価項目)
(イ) 指使用時のメルト感
(ロ) べたつきの無さ
(ハ) エモリエント感
(ニ) 化粧膜の持続性
(ホ) ケーキング
(評価方法)
下記評価項目について各々下記評価方法により評価を行った。
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例のアイシャドウを使用してもらい、(イ)は各試料を指先でこすった際にとろけるような「メルト感」を感じるか、(ロ)、(ハ)は塗布時の「べたつきの無さ」、「エモリエント感」、(ニ)は各試料を塗布し、パネルに通常の生活をしてもらった後、8時間後に涙や汗などで化粧膜がくずれていないか、(ホ)は指先にて各試料の表面を連続して30往復擦った後の「ケーキング」のなさについて、各自が下記の基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
<評価基準>
(評価結果):(評点)
非常に良好:5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
4.5以上 : ◎
3.5以上4.5未満: ○
1.5以上3.5未満: △
1.5未満 : ×
【0062】
(結果)
表1の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜6、参考例7のアイシャドウは、「指使用時のメルト感」、「べたつきの無さ」、「エモリエント感」、「化粧膜の持続性」、「ケーキング」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。一方、油剤と粉体の含有質量比が好適でない比較例1は、化粧膜の持続性、指使用時のメルト感に欠け、比較例2は、さらに、べたつき、ケーキングが見られ、成分(A2)のデキストリン脂肪酸エステルを含有していない比較例3は、化粧膜の持続性で満足のいくものではなく、成分(A1)の固形油を含有していない比較例4は、エモリエント感、化粧膜の持続性に欠け、成分(B1)の球状粉体を含有していない比較例5は全ての項目を満足させるものは得られなかった。
【0063】
実施例8 チークカラー
下記の処方および製法によりチークカラーを製造した。
(処方) (%)
(1)マイカ 残量
(2)タルク(平均粒径5μm) 5
(3)合成金雲母 5
(4)赤色202 0.5
(5)酸化亜鉛(平均粒径0.3μm) 2
(6)ベンガラ被覆雲母チタン ※6 8
(7)酸化鉄被覆ガラス末 ※7 2
(8)球状ナイロン 5
(9)中空シリカ ※8 5
(10)架橋型シリコーン・網状シリコーン
ブロック共重合体 ※9 10
(11)パラフィンワックス ※10 5
(12)製造例1のデキストリン脂肪酸エステル 5
(13)ワセリン 2
(14)流動パラフィン 3
(15)リンゴ酸ジイソステアリル 3
(16)イソノナン酸イソトリデシル ※11 30
※6:CLOISONNE ROUGE FLAMBE(BASF社製)
※7:マイクログラス メタシャイン MT1080RR(日本板硝子社製)
※8:SILICA MICRO BEAD BA−1(日揮触媒化成社製)
※9:KSP−100(信越化学工業社製)
※10:PARACERA 256(PARAMELT社製)
※11:サラコス 913(日清オイリオグループ社製)
【0064】
(製造方法)
A.成分(11)〜(16)を70℃に加熱し、均一混合する。
B.成分(1)〜(10)を均一に攪拌混合する。
C.BにAを加え均一に攪拌混合する。
D.Cに溶媒としてエチルヘキサン酸セチルを30質量部を加えスラリー状にする。
E.Dを皿状容器に充填し、化粧料と圧縮用ヘッドとの間に溶媒吸取り用の紙状のものを挿み、溶媒除去、圧縮成型して、チークカラーを得た。
【0065】
実施例8は、使用中に指使用時のメルト感、べたつきの無さ、エモリエント感、化粧膜の持続性、ケーキングの全ての項目において優れるチークカラーであった。
【0066】
参考例9 ファンデーション
下記の処方および製法によりファンデーションを製造した。
(処方) (%)
(1)タルク(平均粒径12μm) 5
(2)セリサイト 残量
(3)マイカ 3.5
(4)酸化チタン(平均粒径0.25μm) 8
(5)ベンガラ 0.2
(6)黄酸化鉄 1.5
(7)黒酸化鉄 0.3
(8)異形複合粉体 ※12 25
(9)中空樹脂粉体 ※3 10
(10)香料 0.1
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(12)ラズベリーエキス 0.1
(13)キャンデリラワックス 2
(14)セレシンワックス 1
(15)製造例1のデキストリン脂肪酸エステル 1
(16)エチルヘキサン酸セチル 20.5
(17)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(18)メチルフェニルポリシロキサン 15
※12:ガンツパールGMI−0804(ガンツ化成社製)
【0067】
(製造方法)
A.成分(13)〜(18)を110℃に加熱し、均一混合する。
B.成分(1)〜(12)を均一に攪拌混合する。
C.BにAを加え均一に攪拌混合する。
D.Cを皿状容器に充填し、圧縮成型して、ファンデーションを得た。
【0068】
参考例9は、使用中に指使用時のメルト感、べたつきの無さ、エモリエント感、化粧膜の持続性、ケーキングの全ての項目において優れるファンデーションであった。