(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば省人化された船舶などのような、省人化が図られている流体配管系統において漏洩の被害が発生する場合には、諸管の被害発生箇所の認識、分離箇所の立案、バルブの遮断操作等の対応に当たることができる例えば乗員などの作業者が少ない。そのため、作業者が被害発生箇所の認識等の対応に当たらなければならない場合には、他の作業を継続することができる作業者が不足してしまう。その結果、仮に火災などが発生している場合には、消火活動への対応が遅れ、被害の拡大を招く恐れがある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる漏洩箇所特定装置、流体供給システム、船舶、および、漏洩箇所特定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、漏洩箇所特定装置は、複数のバルブを備える流体配管系統の漏洩箇所を特定する漏洩箇所特定装置であって、前記複数のバルブのうち、バルブの位置における流体の圧力が第1閾値以上低下したバルブである圧力低下バルブを特定する圧力低下バルブ特定部と、前記圧力低下バルブを通過する前記流体の流れ方向を検出する流れ方向検出部と、前記流れ方向が第1の向きである第1圧力低下バルブと、前記流れ方向が前記第1の向きとは逆向きの第2の向きであり、かつ、前記第1圧力低下バルブに隣接する第2圧力低下バルブとの間の箇所であって、前記第1の向きの流れと前記第2の向きの流れとが合流する箇所が、前記漏洩箇所であると特定する漏洩箇所特定部と、を備え
、漏洩箇所特定部は、前記流体が前記第1の向きに流れる第1流路と、前記流体が前記第2の向きに流れる第2流路とを特定する流路特定部と、前記第1流路上の前記圧力低下バルブに付けられる点数と、前記第2流路上の前記圧力低下バルブに付けられる前記点数とを計算する点数計算部とを備え、前記点数は、前記第1の向きの下流側ほど大きくなり、かつ、前記第2の向きの上流側ほど大きくなり、前記漏洩箇所特定部は、前記第1流路上における最大点数を有する前記第1圧力低下バルブと、前記第2流路上における最小点数を有する前記第2圧力低下バルブとの間の箇所が、前記漏洩箇所であると特定する。
このように構成することで、バルブの位置における流体の圧力が第1閾値以上低下したバルブである圧力低下バルブが特定されるため、流体配管系統に漏洩が発生したことを把握できる。また、圧力低下バルブを通過する流体の流れ方向が検出されるため、漏洩箇所の候補を絞り込むことができる。また、流れ方向が第1の向きである第1圧力低下バルブと、流れ方向が第1の向きとは逆向きの第2の向きであり、かつ、第1圧力低下バルブに隣接する第2圧力低下バルブとの間の箇所であって、第1の向きの流れと第2の向きの流れとが合流する箇所が、漏洩箇所であると特定される。そのため、漏洩箇所を最終的に特定することができる。
したがって、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる。
また、流体が第1の向きに流れる第1流路と、流体が第2の向きに流れる第2流路とが特定される。また、第1流路上の圧力低下バルブに付けられる点数と、第2流路上の圧力低下バルブに付けられる点数とが計算される。また、点数は、第1の向きの下流側ほど大きくなり、かつ、第2の向きの上流側ほど大きくなる。そのため、流体の流れの向きを数値化(可視化)できる。また、第1流路上における最大点数を有する第1圧力低下バルブと、第2流路上における最小点数を有する第2圧力低下バルブとの間の箇所が、漏洩箇所であると特定される。そのため、流体の流れの向きを数値化(可視化)しつつ、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる。
【0008】
この発明の第
二態様によれば、第
一態様に係る漏洩箇所特定装置において、前記複数のバルブのそれぞれは、弁体の一方の側の前記流体の圧力を検出する第1圧力検出部と、前記弁体の他方の側の前記流体の圧力を検出する第2圧力検出部とを備え、前記圧力低下バルブ特定部は、前記第1圧力検出部または前記第2圧力検出部によって検出された前記流体の圧力に基づいて、前記圧力低下バルブを特定し、前記流れ方向検出部は、前記第1圧力検出部によって検出された前記流体の圧力と、前記第2圧力検出部によって検出された前記流体の圧力とに基づいて、前記流れ方向を検出してもよい。
このように構成することで、弁体の一方の側の流体の圧力と、弁体の他方の側の流体の圧力とが検出される。また、流体の圧力に基づいて、圧力低下バルブが特定される。また、流体の圧力に基づいて、流れ方向が検出される。そのため、流体の圧力を、圧力低下バルブの特定および流れ方向の検出の両方に利用できる。
【0009】
この発明の第
三態様によれば、第
二態様に係る漏洩箇所特定装置において、通信部を有する中央制御装置と、電源装置とを更に備え、前記複数のバルブのそれぞれは、演算装置と、通信装置と、バッテリとを備え、前記電源装置の動作時には、前記電源装置が、前記中央制御装置を駆動し、前記中央制御装置が、第1通信回線を介して前記中央制御装置に入力された前記複数のバルブのそれぞれの前記第1圧力検出部および前記第2圧力検出部
の検出結果に基づいて前記漏洩箇所を特定し、前記電源装置の非動作時には、前記バッテリが、前記演算装置および前記通信装置を駆動し、前記演算装置が、前記第1通信回線とは異なる第2通信回線を介して前記演算装置に入力された前記複数のバルブのそれぞれの前記第1圧力検出部および前記第2圧力検出部の検出結果に基づいて前記漏洩箇所を特定してもよい。
このように構成することで、電源装置の非動作時であっても、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる。
【0010】
この発明の第
四態様によれば、流体供給システムは、複数のバルブを備える流体配管系統と、第一
又は第
二態様
に係る漏洩箇所特定装置と、を備える。
【0011】
この発明の第
五態様によれば、船舶は、第
四態様に係る流体供給システムを備える。
【0012】
この発明の第
六態様によれば、漏洩箇所特定方法は、複数のバルブを備える流体配管系統の漏洩箇所を特定する漏洩箇所特定方法であって、前記複数のバルブのうち、バルブの位置における流体の圧力が第1閾値以上低下したバルブである圧力低下バルブを特定する圧力低下バルブ特定工程と、前記圧力低下バルブを通過する前記流体の流れ方向を検出する流れ方向検出工程と、前記流れ方向が第1の向きである第1圧力低下バルブと、前記流れ方向が前記第1の向きとは逆向きの第2の向きであり、かつ、前記第1圧力低下バルブに隣接する第2圧力低下バルブとの間の箇所であって、前記第1の向きの流れと前記第2の向きの流れとが合流する箇所が、前記漏洩箇所であると特定する漏洩箇所特定工程と、を備え
、前記漏洩箇所特定工程では、前記流体が前記第1の向きに流れる第1流路と、前記流体が前記第2の向きに流れる第2流路とを特定すするとともに、前記第1流路上の前記圧力低下バルブに付けられる点数と、前記第2流路上の前記圧力低下バルブに付けられる前記点数とを計算し、 前記点数は、前記第1の向きの下流側ほど大きくなり、かつ、前記第2の向きの上流側ほど大きくなり、前記漏洩箇所特定工程では、前記第1流路上における最大点数を有する前記第1圧力低下バルブと、前記第2流路上における最小点数を有する前記第2圧力低下バルブとの間の箇所が、前記漏洩箇所であると特定する。
このように構成することで、バルブの位置における流体の圧力が第1閾値以上低下したバルブである圧力低下バルブが特定されるため、流体配管系統に漏洩が発生したことを把握できる。また、圧力低下バルブを通過する流体の流れ方向が検出されるため、漏洩箇所の候補を絞り込むことができる。また、流れ方向が第1の向きである第1圧力低下バルブと、流れ方向が第1の向きとは逆向きの第2の向きであり、かつ、第1圧力低下バルブに隣接する第2圧力低下バルブとの間の箇所であって、第1の向きの流れと第2の向きの流れとが合流する箇所が、漏洩箇所であると特定される。そのため、漏洩箇所を最終的に特定することができる。
したがって、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる。
【発明の効果】
【0013】
上記漏洩箇所特定装置、流体供給システム、船舶、および、漏洩箇所特定方法によれば、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統の漏洩箇所を特定できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の実施形態における漏洩箇所特定装置1を図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態の漏洩箇所特定装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2は、
図1に示すバルブAAの詳細の一例を示す図である。
この実施形態における漏洩箇所特定装置1は、流体配管系統Aの漏洩箇所を特定する装置である。
図1に示す例では、バルブAA〜AJと、ポンプP1、P2と、例えば熱交換器のような機器HE1、HE2と、分岐継手AN1〜AN4とが、配管AL1〜AL18によって接続されることで、流体配管系統Aが構成されている。ポンプP1と、分岐継手AN1の第1端とは、配管AL01によって接続されている。分岐継手AN1の第2端と、バルブAAの一端とは、配管AL02によって接続されている。バルブAAの他端と、分岐継手AN2の第1端とは、配管AL03によって接続されている。分岐継手AN2の第2端と、バルブABの一端とは、配管AL04によって接続されている。バルブABの他端と、バルブACの一端とは、配管AL05によって接続されている。
バルブACの他端と、バルブADの一端とは、配管AL06によって接続されている。バルブADの他端と、分岐継手AN4の第1端とは、配管AL07によって接続されている。分岐継手AN4の第2端と、分岐継手AN3の第1端とは、配管AL08によって接続されている。分岐継手AN3の第2端と、バルブAEの一端とは、配管AL09によって接続されている。バルブAEの他端と、バルブAFの一端とは、配管AL10によって接続されている。バルブAFの他端と、バルブAGの一端とは、配管AL11によって接続されている。バルブAGの他端と、バルブAHの一端とは、配管AL12によって接続されている。バルブAHの他端と、分岐継手AN1の第3端とは、配管AL13によって接続されている。
分岐継手AN2の第3端と、バルブAIの一端とは、配管AL14によって接続されている。バルブAIの他端と、機器HE1とは、配管AL15によって接続されている。分岐継手AN3の第3端と、バルブAJの一端とは、配管AL16によって接続されている。バルブAJの他端と、機器HE2とは、配管AL17によって接続されている。分岐継手AN4の第3端と、ポンプP2とは、配管AL18によって接続されている。
【0016】
図1に示す例では、漏洩箇所特定装置1が、中央制御装置11と、電源装置12とを備えている。中央制御装置11は、通信部11aと、処理部11bと、記憶部11cとを備えている。処理部11bは、圧力低下バルブ特定部11b1と、流れ方向検出部11b2と、漏洩箇所特定部11b3とを備えている。漏洩箇所特定部11b3は、流路特定部11b31と、点数計算部11b32とを備えている。
【0017】
図2に示す例では、バルブAAが、弁体(図示せず)と、圧力センサAA1と、圧力センサAA2と、演算装置AA3と、開閉装置AA4と、通信装置AA5と、バッテリAA6とを備えている。
図1に示すバルブAB〜AJは、バルブAAと同様に構成されている。
圧力センサAA1は、弁体の第1側(
図2の右側)の位置における流体の圧力を検出する。圧力センサAA2は、弁体の第2側(
図2の左側)の位置における流体の圧力を検出する。つまり、圧力センサAA1、AA2は、バルブAAの位置における流体の圧力を検出する。開閉装置AA4は、弁体の開閉を行う。電源装置12の動作時には、開閉装置AA4が、電源装置12によって、または、流体配管系統Aを備えている船舶、設備、プラント(図示せず)などが発生する力によって駆動される。電源装置12の非動作時には、開閉装置AA4がバッテリAA6によって駆動される。
また、電源装置12の非動作時には、バッテリAA6が、演算装置AA3および通信装置AA5を駆動する。演算装置AA3は、圧力センサAA1、AA2の検出結果に基づいて各種の演算を行う。通信装置AA5は、例えば無線通信回線などのような非常用通信回線を介して、圧力センサAA1、AA2の検出結果および演算装置AA3の演算結果を他のバルブAB〜AJの通信装置に送信する。また、通信装置AA5は、非常用通信回線を介して、他のバルブAB〜AJの圧力センサの検出結果および演算装置の演算結果を受信する。
【0018】
図1に示す例では、電源装置12の動作時に、中央制御装置11が電源装置12によって駆動される。通信部11aは、バルブAA〜AJ、ポンプP1、P2および機器HE1、HE2との間で、例えば有線通信回線などのような主通信回線を介して、情報、制御信号などの送受信を行う。通信部11aによって受信されたバルブAA〜AJの圧力センサの検出結果などの情報は、処理部11bに入力される。処理部11bは、バルブAA〜AJ、ポンプP1、P2および機器HE1、HE2から受信した情報の処理(例えば漏洩箇所特定などの処理)、バルブAA〜AJ、ポンプP1、P2および機器HE1、HE2を制御する制御信号(例えばバルブを閉鎖する制御信号など)の生成などを行う。記憶部11cは、通信部11aが受信した情報、処理部11bにおける情報の処理結果、
図1に示す流体配管系統Aに関する情報などを記憶する。
【0019】
図3は、記憶部11cに記憶されている、
図1に示す流体配管系統Aに関する情報を示す図である。
図3に示す例では、対象バルブの識別情報と、その対象バルブの第1側に隣接するバルブ、ポンプ、または機器の識別情報と、その対象バルブの第2側に隣接するバルブ、ポンプ、または機器の識別情報とが関連付けて記憶部11cに記憶されている。詳細には、記憶部11cには、以下に示す情報が記憶されている。
記憶部11cには、対象バルブAAの第1側(
図1の右側)にバルブAFおよびポンプP1が位置し、対象バルブAAの第2側(
図1の左側)にバルブAB、AIが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブABの第1側(
図1の右側)にバルブAA、AIが位置し、対象バルブABの第2側(
図1の左側)にバルブACが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブACの第1側(
図1の右側)にバルブABが位置し、対象バルブACの第2側(
図1の左側)にバルブADが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブADの第1側(
図1の右側)にバルブACが位置し、対象バルブADの第2側(
図1の左側)にバルブAE、AJおよびポンプP2が位置する旨が記憶されている。
記憶部11cには、対象バルブAEの第1側(
図1の左側)にバルブAD、AJおよびポンプP2が位置し、対象バルブAEの第2側(
図1の右側)にバルブAFが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブAFの第1側(
図1の左側)にバルブAEが位置し、対象バルブAFの第2側(
図1の右側)にバルブAGが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブAGの第1側(
図1の左側)にバルブAFが位置し、対象バルブAGの第2側(
図1の右側)にバルブAHが位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブAHの第1側(
図1の左側)にバルブAGが位置し、対象バルブAHの第2側(
図1の右側)にバルブAAおよびポンプP1が位置する旨が記憶されている。
記憶部11cには、対象バルブAIの第1側(
図1の上側)にバルブAA、ABが位置し、対象バルブAIの第2側(
図1の下側)に機器HE1が位置する旨が記憶されている。記憶部11cには、対象バルブAJの第1側(
図1の上側)にバルブAD、AEおよびポンプP2が位置し、対象バルブAJの第2側(
図1の下側)に機器HE2が位置する旨が記憶されている。
【0020】
図1に示す例では、圧力低下バルブ特定部11b1が、バルブAA〜AJの圧力センサAA1または圧力センサAA2の検出結果に基づいて、圧力低下バルブを特定する。圧力低下バルブとは、バルブAA〜AJのうち、流体の圧力が所定時間の間に第1閾値以上低下したバルブである。第1閾値は、流体配管系統Aの配管AL01〜AL18に破損が生じた場合に、所定時間の間に低下する流体の圧力よりも小さい値に設定されている。詳細には、例えばバルブAI、AJが閉鎖しており、バルブAA〜AHが開放している状態で配管AL01〜AL13のいずれかに破損が生じた場合に、バルブAA〜AHの位置における流体の圧力が第1閾値以上低下するように、第1閾値は設定されている。
流れ方向検出部11b2は、バルブAA〜AJの圧力センサAA1の検出結果と圧力センサAA2の検出結果とに基づいて、流体配管系統Aにおける圧力低下バルブAA〜AHを通過する流体の流れ方向を検出する。例えば、圧力センサAA1によって検出された圧力が、圧力センサAA2によって検出された圧力よりも高い場合、流れ方向検出部11b2は、圧力センサAA1の位置(第1側)から圧力センサAA2の位置(第2側)に流体が流れていると判断する。そして、流れ方向検出部11b2は、記憶部cが記憶する流体配管系統Aに関する情報を参照し、流体配管系統Aにおける流体の流れ方向として「
図1の反時計回り方向」を検出する。
図1に示す例では、圧力低下バルブAAを通過する流体の流れ方向を検出するために圧力センサAA1、AA2を用いているが、他の例では、代わりに、圧力低下バルブAAを通過する流体の流れ方向を検出するために、例えばパドル式センサなどのような圧力センサ以外のセンサを用いてもよい。
【0021】
図1に示す例では、漏洩箇所特定部11b3が、流体配管系統Aの漏洩箇所を特定する。具体的には、漏洩箇所特定部11b3は、圧力低下バルブ特定部11b1によって特定された複数の圧力低下バルブの中から、流れ方向が第1の向きである第1圧力低下バルブと、流れ方向が第1の向きとは逆向きの第2の向きであり、かつ、第1圧力低下バルブに隣接する第2圧力低下バルブとを特定する。また、漏洩箇所特定部11b3は、第1圧力低下バルブと第2圧力低下バルブとの間の箇所であって、第1の向きの流れと第2の向きの流れとが合流する箇所が、漏洩箇所であると特定する。
詳細には、流路特定部11b31は、流体配管系統Aに含まれる複数の流路の中から、流体が第1の向き(例えば、
図1の時計回り方向)に流れる第1流路と、流体が第2の向き(例えば、
図1の反時計回り方向)に流れる第2流路とを特定する。また、点数計算部11b32は、第1流路上の圧力低下バルブに付けられる点数と、第2流路上の圧力低下バルブに付けられる点数とを計算する。第1流路に係る点数は正数として計算され、第2流路に係る点数は負数として計算される。点数の絶対値は、流路の下流側ほど大きくなる。また、漏洩箇所特定部11b3は、第1流路上における最大点数(絶対値が最大の点数)を有する第1圧力低下バルブと、第2流路上における最小点数(絶対値が最大の点数)を有する第2圧力低下バルブとの間の箇所が、漏洩箇所であると特定する。
【0022】
図4は、
図1に示す漏洩箇所特定装置1によって実行される処理を示すフローチャートである。
漏洩箇所特定装置1は、一定の制御周期に係るタイミングで、以下の処理を実行する。
まず、漏洩箇所特定装置1の処理部11bは、バルブAAの圧力センサAA1、AA2の今回の検出結果および他のバルブAB〜AJの圧力センサの今回の検出結果と、記憶部11cに記憶されているバルブAAの圧力センサAA1、AA2の前回の検出結果および他のバルブAB〜AJの圧力センサの前回の検出結果とを取得する(ステップS1)。
次いで、圧力低下バルブ特定部11b1は、バルブAAの圧力センサAA1、AA2の今回および前回の検出結果ならびに他のバルブAB〜AJの圧力センサの今回および前回の検出結果に基づいて、バルブAA〜AJのうちから、流体の圧力が第1閾値以上低下した圧力低下バルブを特定する(ステップS2)。
次いで、処理部11bは、圧力低下バルブがあるか否かを判定する(ステップS3)。圧力低下バルブがない場合には、ステップS1に戻り、圧力低下バルブがある場合には、ステップS4に進む。
【0023】
処理部11bは、機器HE1または機器HE2が運転中であるか否かを判定する(ステップS4)。機器HE1または機器HE2が運転中である場合には、機器HE1または機器HE2の運転に伴う流体の流れが流体配管系統Aに存在し、漏洩箇所を正確に特定できないため、ステップS1に戻る。一方、機器HE1または機器HE2が運転中でない場合には、ステップS5に進む。
【0024】
流れ方向検出部11b2は、流体配管系統Aにおける圧力低下バルブを通過する流体の流れ方向を検出する(ステップS5)。
次いで、処理部11bは、ポンプP1、P2の稼働状態を確認する(ステップS6)。
次いで、流路特定部11b31は、流体配管系統Aに含まれる複数の流路の中から、稼働中のポンプを基点として、流体が第1の向きに流れる第1流路と、流体が第2の向きに流れる第2流路とを特定する(ステップS7)。
次いで、点数計算部11b32は、第1流路上の圧力低下バルブに付けられる点数と、第2流路上の圧力低下バルブに付けられる点数とを計算する(ステップS8)。
次いで、処理部11bは、点数計算部11b32による点数計算が終了したか否かを判定する(ステップS9)。点数計算部11b32による点数計算が終了していない場合には、ステップS8に戻り、点数計算部11b32による点数計算が終了した場合には、ステップS10に進む。
【0025】
漏洩箇所特定部11b3は、第1流路上における最大点数を有する圧力低下バルブである第1圧力低下バルブと、第2流路上における最小点数を有する圧力低下バルブである第2圧力低下バルブとの間の箇所が、漏洩箇所であると特定する(ステップS10)。
次いで、処理部11bは、第1圧力低下バルブを閉鎖する制御信号を第1圧力低下バルブに出力すると共に、第2圧力低下バルブを閉鎖する制御信号を第2圧力低下バルブに出力する(ステップS11)。その結果、第1圧力低下バルブの開閉装置が第1圧力低下バルブの弁体を閉鎖し、第2圧力低下バルブの開閉装置が第2圧力低下バルブの弁体を閉鎖する。
次いで、処理部11bは、第1圧力低下バルブの閉鎖後における第1圧力低下バルブの圧力センサの検出結果と、第2圧力低下バルブの閉鎖後における第2圧力低下バルブの圧力センサの検出結果とを取得する(ステップS12)。
次いで、処理部11bは、第1圧力低下バルブの位置(詳細には、第2圧力低下バルブ側の位置)の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下し、第2圧力低下バルブの位置(詳細には、第1圧力低下バルブ側の位置)の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下したか否かを判定する(ステップS13)。第1圧力低下バルブの位置の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下し、かつ、第2圧力低下バルブの位置の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下した場合には、漏洩箇所が正確に特定され、その漏洩箇所の分離処理が完了したため、
図4の処理を終了する。一方、第1圧力低下バルブの位置の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下していない場合、あるいは、第2圧力低下バルブの位置の流体の圧力が所定時間の間に第2閾値以上低下していない場合には、漏洩箇所が正確に特定されていないため、ステップS6に戻る。
【0026】
図5は、漏洩箇所AKが生じた場合に漏洩箇所特定装置1によって実行される処理の具体例を説明するための図である。
図5に示す例では、ポンプP1が稼働中であって、ポンプP2が非稼働中であって、機器HE1、HE2が停止中に、漏洩箇所AKが配管AL10に生じる。
そのため、ポンプP1からの流体の一部が、配管AL01、分岐継手AN1、配管AL02、バルブAA、配管AL03、分岐継手AN2、配管AL04、バルブAB、配管AL05、バルブAC、配管AL06、バルブAD、配管AL07、分岐継手AN4、配管AL08、分岐継手AN3、配管AL09およびバルブAEを介して、配管AL10の漏洩箇所AKに流れる。
また、ポンプP1からの流体の他の一部が、配管AL01、分岐継手AN1、配管AL13、バルブAH、配管AL12、バルブAG、配管AL11およびバルブAFを介して、配管AL10の漏洩箇所AKに流れる。
その結果、
図4のステップS2において、圧力低下バルブ特定部11b1は、バルブAA〜AHが圧力低下バルブであると特定する。
【0027】
図5に示す例では、
図4のステップS5において、流れ方向検出部11b2は、バルブAAの右側(第1側)の圧力が「0.40」であり、バルブAAの左側(第2側)の圧力が「0.39」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブABの右側(第1側)の圧力が「0.39」であり、バルブABの左側(第2側)の圧力が「0.38」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブACの右側(第1側)の圧力が「0.38」であり、バルブACの左側(第2側)の圧力が「0.37」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブADの右側(第1側)の圧力が「0.37」であり、バルブADの左側(第2側)の圧力が「0.36」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブAEの左側(第1側)の圧力が「0.36」であり、バルブAEの右側(第2側)の圧力が「0.0」である旨を検出する。その結果、流れ方向検出部11b2は、圧力低下バルブAA〜AEを通過する流体の流れ方向が、第1の向き(
図5の反時計回り)であると検出する。
また、
図4のステップS5において、流れ方向検出部11b2は、バルブAHの右側(第2側)の圧力が「0.40」であり、バルブAHの左側(第1側)の圧力が「0.39」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブAGの右側(第2側)の圧力が「0.39」であり、バルブAGの左側(第1側)の圧力が「0.38」である旨を検出する。また、流れ方向検出部11b2は、バルブAFの右側(第2側)の圧力が「0.38」であり、バルブAFの左側(第1側)の圧力が「0.0」である旨を検出する。その結果、流れ方向検出部11b2は、圧力低下バルブAH、AG、AFを通過する流体の流れ方向が、第1の向きとは逆向きの第2の向き(
図5の時計回り)であると検出する。
【0028】
図5に示す例では、
図4のステップS6において、処理部11bは、ポンプP1が稼働しており、ポンプP2が稼働していない旨を確認する。
図4のステップS7において、流路特定部11b31は、分岐継手AN1からバルブAA〜AEを経由する漏洩箇所AKまでの流路が、流体が第1の向きに流れる第1流路である、と特定する。また、流路特定部11b31は、分岐継手AN1からバルブAH、AG、AFを経由する漏洩箇所AKまでの流路が、流体が第2の向きに流れる第2流路である、と特定する。
【0029】
図5に示す例では、
図4のステップS8において、点数計算部11b32は、第1流路上の圧力低下バルブAA〜AEに付けられる点数を計算する。本例においては、第1流路におけるバルブの点数は、そのバルブの上流側に隣接する他のバルブの点数に「1」を加算することで算出するものとする。また、第2流路におけるバルブの点数は、そのバルブの上流側に隣接する他のバルブの点数に「1」を減算することで算出するものとする。
第1流路の最も上流側に位置するバルブAAの点数が「+1」になる。第1流路のバルブAAの下流側に位置するバルブABの点数は、バルブAAの点数よりも大きい「+2」になる。第1流路のバルブABの下流側に位置するバルブACの点数は、バルブABの点数よりも大きい「+3」になる。第1流路のバルブACの下流側に位置するバルブADの点数は、バルブACの点数よりも大きい「+4」になる。第1流路のバルブADの下流側に位置するバルブAEの点数は、バルブADの点数よりも大きい「+5」になる。
また、
図4のステップS8において、点数計算部11b32は、第2流路上の圧力低下バルブAH、AG、AFに付けられる点数を計算する。
第2流路の最も上流側に位置するバルブAHの点数が「−1」になる。第2流路のバルブAHの下流側に位置するバルブAGの点数は、バルブAHの点数よりも小さい「−2」になる。第2流路のバルブAGの下流側に位置するバルブAFの点数は、バルブAGの点数よりも小さい「−3」になる。
【0030】
図5に示す例では、
図4のステップS10において、漏洩箇所特定部11b3は、第1流路(分岐継手AN1からバルブAA〜AEを経由する流路)上における最大点数「+5」を有する第1圧力低下バルブAEと、第2流路(分岐継手AN1からバルブAH、AG、AFを経由する流路)上における最小点数「−3」を有する第2圧力低下バルブAFとの間の箇所が、漏洩箇所AKであると特定する。また、
図4のステップS11において、第1圧力低下バルブAEの開閉装置が第1圧力低下バルブAEの弁体を閉鎖し、第2圧力低下バルブAFの開閉装置が第2圧力低下バルブAFの弁体を閉鎖する。
図4および
図5に示す例では、漏洩箇所特定部11b3が、圧力低下バルブAA〜AHの点数に基づいて漏洩箇所AKを特定するが、他の例では、漏洩箇所特定部11b3が、圧力低下バルブAA〜AHを通過する流体の流れ方向に基づいて、漏洩箇所AKを特定してもよい。
この例では、漏洩箇所特定部11b3が、流体の流れ方向が第1の向き(
図5の反時計回り)である圧力低下バルブAA〜AEを特定する。また、漏洩箇所特定部11b3は、流体の流れ方向が第1の向きとは逆向きの第2の向き(
図5の時計回り)である圧力低下バルブAH、AG、AFを特定する。また、漏洩箇所特定部11b3は、第1の向きに流体が通過する圧力低下バルブAA〜AEのうち、第2の向きに流体が通過する圧力低下バルブAH、AG、AFと隣接する圧力低下バルブAA、AEを特定する。第1の向きに流体が通過する圧力低下バルブAAは、第2の向きに流体が通過する圧力低下バルブAHと隣接する。第1の向きに流体が通過する圧力低下バルブAEは、第2の向きに流体が通過する圧力低下バルブAFと隣接する。漏洩箇所特定部11b3は、圧力低下バルブAAと圧力低下バルブAHとの間の箇所、および、圧力低下バルブAEと圧力低下バルブAFとの間の箇所のうち、第1の向きの流れと第2の向きの流れとが合流する箇所である、圧力低下バルブAEと圧力低下バルブAFとの間の箇所を、漏洩箇所AKとして特定する。
【0031】
電源装置12の動作時には、電源装置12が中央制御装置11を駆動し、中央制御装置11が、
図4に示す処理を実行する。詳細には、中央制御装置11が、主通信回線を介して中央制御装置11に入力されたバルブAA〜AJのそれぞれの圧力センサの検出結果に基づいて漏洩箇所AKを特定する。
一方、電源装置12の非動作時には、バルブAAのバッテリAA6が、バルブAAの演算装置AA3および通信装置AA5を駆動する。同様に、バルブAB〜AJのそれぞれのバッテリは、バルブAB〜AJのそれぞれの演算装置および通信装置を駆動する。例えばバルブAAの演算装置AA3は、圧力センサAA1、AA2の検出結果と、非常用通信回線を介して演算装置AA3に入力されたバルブAB〜AJのそれぞれの圧力検出結果とに基づいて漏洩箇所AKを特定する。バルブAAの演算装置AA3の代わりに、バルブAB〜AJのいずれかの演算装置が、漏洩箇所AKを特定してもよい。
【0032】
この実施形態では、漏洩箇所特定装置1が上述した処理を実行するため、作業者が対応に当たる必要なく、流体配管系統Aの漏洩箇所AKを特定することができ、漏洩箇所AKにおける流体の漏洩を止めることができる。
【0033】
この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態においては、漏洩箇所特定装置1が、
図1および
図5に示す構成の流体配管系統Aに適用されているが、他の例では、漏洩箇所特定装置1を任意の形状の流体配管系統Aに適用することができる。