特許第6859171号(P6859171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6859171-種蒔き具および種蒔き方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859171
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】種蒔き具および種蒔き方法
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/02 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   A01C7/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-82245(P2017-82245)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-174853(P2018-174853A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028130
【氏名又は名称】タキイ種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 晃士
(72)【発明者】
【氏名】大久保 琢磨
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−289616(JP,A)
【文献】 実公昭38−006612(JP,Y1)
【文献】 特開2003−250308(JP,A)
【文献】 米国特許第05664506(US,A)
【文献】 特開2004−122293(JP,A)
【文献】 特開2014−204689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00− 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者によって把持される把持部と、
前記把持部に連結されるとともに、複数の種が載置される種載置部と、
前記種載置部を振動するための振動発生部と、を備えた種蒔き具であって、
前記種載置部は、断面が略V字形状であって、
前記振動発生部は、前記把持部に設けられた複数の凸部または凹部であって、前記使用者が爪で前記凸部または凹部を擦ることで、前記把持部を介して前記種載置部を振動する
ことを特徴とする種蒔き具。
【請求項2】
前記把持部は、長手方向に延設された板状部材で構成され、
前記振動発生部は、前記長手方向に直角方向かつ前記把持部の周方向に延設される複数の凸部であって、
前記各凸部は、平行に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の種蒔き具。
【請求項3】
前記振動発生部は、前記長手方向に複数の領域で分割され、
前記各領域における前記各凸部の間隔の距離が異なる
ことを特徴とする請求項2に記載の種蒔き具。
【請求項4】
前記種載置部は、先端に向けて先細りで、かつ、透明な部材で構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の種蒔き具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの種蒔き具を使用する種蒔き方法であって、
前記種載置部の前記略V字形状の筋部が地面に向くように、前記種載置部を配置して、
前記振動発生部の前記凸部または凹部を前記爪で擦り、それによって、前記種載置部に載置された前記複数の種を、前記種載置部の前記略V字形状の筋部に沿って整列しながら前記地面に落下する
ことを特徴とする種蒔き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種蒔き具および種蒔き方法に関する。より詳しくは、本発明は、非常に小さな種であっても、種を1粒ずつ狙った位置に容易に蒔くことができるとともに、小さくて軽いハンディタイプの種蒔き具、およびこの種蒔き具を用いた種蒔き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルトレーに種蒔きをする作業では、種が1mm以下の場合、1粒ずつ指で摘まんで種を蒔くことは非常に困難であった。そこで、例えば、ピンセットで種を摘まんで蒔いたり、爪楊枝の先を水に濡らして種を蒔いたりなど、工夫が必要であった。
【0003】
しかしながら、このような工夫をしても、1粒ずつ狙った位置に素早く種を蒔くことは困難であった。そこで、種を蒔くための種蒔き具が発明および考案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1の播種器は、把持部に電池が内装されているとともに、振動発振部を備えている。そして、播種器先端のヘラ部に電動で振動を付与して、小粒の種をヘラ部の上で踊らせながら順次落下させる。また、特許文献1の播種器は、ヘラ部の先端辺に複数の種制御用突起を並設して、種を1粒ずつ順序良くヘラ部の先端から落下させるように構成されている。
【0005】
しかしながら、この播種器は、電池式であるために、電池交換が必要であるので、使用中に電池切れすることや、電化製品であるために故障することもあった。また、電池を必要とするために軽量化およびコンパクト化が困難であった。さらに、部品点数が多いので、製造コストがかかっていた。
【0006】
したがって、電池を必要としない種蒔き具であるとともに、小さくて軽いハンディタイプの種蒔き具が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−250308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、軽量かつコンパクトであるとともに、非常に小さな種であっても、特別な技術や技能を必要とせずに、1粒ずつ狙った位置に素早く種を蒔くことができる種蒔き具、およびこの種蒔き具を用いた種蒔き方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明にかかる種蒔き具は、
使用者によって把持される把持部と、
把持部に連結されるとともに、複数の種が載置される種載置部と、
種載置部を振動するための振動発生部と、を備えた種蒔き具であって、
種載置部は、断面が略V字形状であって、
振動発生部は、把持部に設けられた複数の凸部または凹部であって、使用者が爪で凸部または凹部を擦ることで、把持部を介して種載置部を振動する。
【0010】
好ましくは、
把持部は、長手方向に延設された板状部材で構成され、
振動発生部は、長手方向に直角な方向かつ把持部の周方向に延設される複数の凸部であって、
各凸部は、平行に配置される。
【0011】
好ましくは、
振動発生部は、長手方向に複数の領域で分割され、
各領域における各凸部の間隔の距離が異なる。
【0012】
好ましくは、
種載置部は、先端に向けて先細りで、かつ、透明な部材で構成される。
【0013】
本発明にかかる種蒔き方法は、
上記の種蒔き具を使用する種蒔き方法であって、
種載置部の略V字形状の筋部が地面に向くように、種載置部を配置して、
振動発生部の凸部または凹部を爪で擦り、それによって、種載置部に載置された複数の種を、種載置部の略V字形状の筋部に沿って整列しながら地面に落下する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる種蒔き具は、軽量かつコンパクトであるとともに、電池を必要としない。また、本発明にかかる種蒔き具および種蒔き方法は、非常に小さな種であっても、特別な技術や技能を必要とせずに、1粒ずつ狙った位置に素早く種を蒔くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる種蒔き具の一実施形態を示す斜視図である。
図2】種蒔き作業時の本発明にかかる種蒔き具の一実施形態を示す側面図である。
図3】本発明にかかる振動発振部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明にかかる種蒔き具および種蒔き方法の実施形態を説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、種蒔き具は、使用者によって把持される把持部2を備える。さらに、種蒔き具は、複数の種4が載置される種載置部1を備える。種載置部1は、把持部2に連結される。さらに種蒔き具は、種載置部1を振動させる振動発生部3を備える。
【0018】
種載置部1は、断面が略V字形状である。V字形状の折り角度は、限定しない。使用者は、振動発生部3の凸部を爪で擦ることにより把持部2を介して種載置部1を振動させる。種載置部の断面が略V字形状であることにより、種載置部1が振動されると略V字形状の筋部1aに沿って整列しながら種4が移動する。筋部1aは、種載置部1の折り目線に沿ったくぼみ部である。
【0019】
把持部2は、長手方向(X方向)に延設された板状部材で構成されてもよい。板状であることによって、しっかりと把持することができるので、種蒔き具の意図しない回転を制御し、種蒔き具が安定した状態で種蒔きをすることができるからである。なお、把持部2は、円筒状部材でも良い。
【0020】
振動発生部3は、把持部2の長手方向(X方向)に直角方向(Y方向)かつ把持部2の周方向に延設される複数の凸部30を備える。各凸部30は、平行に配置されてもよい。親指を除く指と手掌Hで把持部2を把持して、親指の爪Nで振動発生部3を擦るのに適しているからである。そうすることで、種まき具が安定した状態で振動を発生させることができる。なお、振動発生部3は、凹部30を備えても良い。
【0021】
振動発生部3は、図3に示すように、長手方向(X方向)に複数の領域3a、3bに分割されるとともに、各領域における各凸部30の間隔の距離L1、L2が異なってもよい。そうすることで、領域3a、3bごとに異なった大きさの振動を発生させることができ、種載置部1上の種4の動作を制御しやすくなる。また、異なる種の大きさにも対応しやすくなる。
【0022】
種載置部1は、先端10に向けて先細りで、かつ、透明な部材で構成されてもよい。先端10が先細りであることにより、種蒔き箇所が視認しやすくなるからである。また、透明な部材で構成することにより、さらに、種蒔き箇所の視認性が高められる。視認性が高められることで、種蒔き箇所を確実に目視でき、意図する箇所に種を蒔くことができる。
【0023】
振動発生部3の凸部(または凹部)30の形状は特に限定されないが、丸みを帯びていることが望ましい。振動発生部3を擦る爪が痛められることを防止できるからである。
【0024】
本発明の種蒔き具の材質は、特に限定されないが、樹脂であることが望ましい。種蒔き具の色を透明に設計できるからである。また、金属に比べて、樹脂は硬度が低いことから、振動発生部3を擦る爪Nが傷つくことを防止できるからである。さらに、本体の軽量化によって、種蒔き作業による疲労を軽減できるからである。加えて、材料費の削減や製造工程の簡略化によるコストの削減に資するからである。
【0025】
次に、図1および図2を用いて本発明の種蒔き具を用いた種蒔き方法を説明する。先ず、本発明の種蒔き具を使用者の手Hで把持して、種載置部1に種4を任意の数だけ載置する。種4の大きさおよび数は、特に限定されない。
【0026】
次に、種蒔き箇所に向かって、種載置部1の略V次形状の筋部1aが地面に向くように種載置部1を配置する。地面に向ける種載置部1の角度は、特に限定されない。
【0027】
次に、振動発生部3の凸部30を爪Nで擦る。すると、種載置部1に載置された複数の種4が、種載置部1の略V字形状の筋部1aに沿って整列するとともに、種載置部1の先端10から種蒔き箇所に1粒ずつ落下する。
【0028】
振動を発生させる際に指の爪で擦る面は、図2に示すような振動発生部3の上面でなくてもよく、例えば、振動発生部3の下面を裏から擦ってもよいし、振動発生部3の側面を擦ってもよい。振動を発生させる際に凸部30を擦る指の爪は、図2に示すように、親指の爪である必要はなく、例えば、人差し指の爪でもよい。また、片方の手のみで種蒔き具を用いないで、例えば、片方の手で把持部2を持つとともに、他方の手の指の爪で凸部30を擦ってもよい。これらのように、本発明の種蒔き具は、使用者の好みや状況により使い分けることができる。
【0029】
使用者は誰であっても、凸部30を擦る速度を調整することにより、簡単に振動の度合いを調整することができる。したがって、非常に小さく軽い種であっても、重い種を蒔く時よりも遅い速度で凸部30を爪Nで擦ることにより、種載置部1に載置された種4の重さに適した振動を種載置部1に与えることができる。そうすることで、種4は、種載置部1の略V字形状の筋部1aに沿って整列するとともに、種載置部1の先端10から地面に1粒ずつ落下する。
【0030】
また、例えば、種4が種載置部1の先端10に到達するまでは振動発生部3を速く擦ることによって、種4が種載置部の先端に到達する速度を速めることも可能である。
【0031】
したがって、本発明によれば、誰でも簡単に振動発生部3を擦る速度を調整することで、非常に小さな種であっても1粒ずつ狙った位置に素早く種を蒔くことができる。そして、特別な技術や技能を必要とせずに、種の重さに左右されない安定した種蒔きが可能となる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。例えば、以下のように変更することもできる。
【0033】
本発明の変形例として、図3に示すように、振動発生部を領域3aおよび3bに分割して、領域ごとに凹凸部30の高さを変更してもよい。凹凸の高さが異なる領域が複数あることにより、同じ速度で各領域を擦った場合でも、領域ごとに異なった大きさの振動が発生する。したがって、発生させる振動の大きさをコントロールしやすくなるので、種載置部1上の種4の動作をコントロールしやすくなる。そうすることで、異なる重さおよび大きさの種に応じた種蒔きが可能となる。
【0034】
また、種載置部1と、振動発生部3を備える把持部2と、が取り外し可能であってもよい。凹凸部30の間隔の距離や凹凸部30の高さが異なる振動発生部3を備える複数の把持部2を備え、または/および、大きさの異なる複数の種載置部1を備えることにより、種の種類や量に応じて、振動発生部3を備える把持部2と種載置部1との組み合わせを変更することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 種載置部
1a 筋部
10 種載置部の先端
2 把持部
3 振動発生部
4 種
30 振動発生部の凸部
3a 振動発生部の第1領域
3b 振動発生部の第2領域
L1 振動発生部の第1領域の凸部の幅
L2 振動発生部の第2領域の凸部の幅
X 長手方向
図1
図2
図3