(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859173
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】定量吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20210405BHJP
B65D 47/26 20060101ALI20210405BHJP
B65D 47/42 20060101ALI20210405BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
B65D47/20 210
B65D47/26 110
B65D47/42
B65D83/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-83334(P2017-83334)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-177347(P2018-177347A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−107655(JP,A)
【文献】
特開2006−036303(JP,A)
【文献】
特開2006−123305(JP,A)
【文献】
米国特許第3661468(US,A)
【文献】
実開昭57−154663(JP,U)
【文献】
特開2006−036314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/26
B65D 47/42
B65D 83/00
B65D 47/28
B65D 35/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する液体容器と、その先端側に設けられた吐出ユニットと、前記吐出ユニットを覆うとともに前記液体容器に対し着脱自在に装着可能なキャップと、前記液体容器内の塗布液から計量した塗布液を収容する計量室と、前記計量室内の塗布液を充填可能な塗布部とを備える定量吐出容器であって、
前記吐出ユニットは、
前記計量室に連通するとともに塗布部先端からの軸方向の距離が異なるように配置された少なくとも二つの貫通孔を有する筒状のシリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に沿って移動可能なピストンと、を有し、
前記ピストンにより前記貫通孔の少なくとも一つが閉じられ、前記塗布部の被供給部への押さえ付けに伴う前記ピストンの軸方向に沿った後方への移動により、前記貫通孔の開閉が切り替えられ、前記計量室における塗布液の計量と、前記計量室から前記塗布部内への塗布液の充填がなされることを特徴とする定量吐出容器。
【請求項2】
前記塗布部は、軟質部材により形成されるとともに、吐出孔を有し、先端部が押圧されることにより変形し、充填された塗布液を前記吐出孔から吐出することを特徴とする請求項1に記載された定量吐出容器。
【請求項3】
前記軟質部材は、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載された定量吐出容器。
【請求項4】
前記ピストンの後方に、該ピストンの後方への移動を制限するピストン押さえ部を備え、
前記キャップが閉じられることにより、
前記シリンダ及び前記計量室は後方に移動する一方、前記ピストンは前記ピストン押さえ部によって前記シリンダに対し相対的に前方へ移動し、前記シリンダに対する計量前の位置にリセットされ、
前記貫通孔のうちの一つの貫通孔を介して前記液体容器側から前記計量室内への塗布液の充填が可能となることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された定量吐出容器。
【請求項5】
前記シリンダ及び前記計量室を前方へ付勢する弾性部材を備え、
前記キャップが外されることにより、
前記ピストンは、前記弾性部材により前記シリンダ及び前記計量室とともに前方へ移動して前記ピストン押さえ部から所定距離離れることを特徴とする請求項4に記載された定量吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定量吐出容器に関し、特に容器に貯留された塗布液から所定量を計量し、計量した塗布液を吐出する定量吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、毛髪剤や化粧液、もしくは洗浄液などの塗布液を容器本体に収容し、容器本体の開口部に装着された中栓の構造を工夫することにより、塗布液の吐出量を制御できるようにした吐出容器が提供されている。
例えば特許文献1には、容器本体の開口部にバネ弁が装着され、前記開口部を覆う塗布部に加わる圧力に応じて、前記バネ弁の開弁量が制御されるようにした吐出容器が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された吐出容器によると、被供給箇所(被塗布部)に対する前記塗布部の押し当て力を使い分けることで、塗布液の吐出量を調整することができる。
しかしながら、前記したバネ弁による液量の吐出制御は必ずしも安定せず、時には想定以上の過剰な塗布液の吐出を招くなど、使い勝手が悪いという課題がある。
【0004】
このような課題を解決するものとして特許文献2には、容器中で予め計量した塗布液を被供給箇所(被塗布部)に注出することのできる計量注出容器が開示されている。
図15に、特許文献2に開示された計量注出容器の側面図(キャップを締めた状態)を一部断面にして示し、
図16にキャップを外した状態の断面図を示す。
図15に示す計量注出容器60は、塗布液を収容する容器部61と、前記容器部61に収容された塗布液を注出する注出ユニット62と、注出ユニット62を覆うように前記容器部61に装着可能なキャップ63とを備える。
【0005】
前記注出ユニット62は、
図16に示すように、容器部61の上部開口の内側に嵌入されるとともに先端側が弾性体により形成された弾性弁部材64と、弾性弁部材64の先端側周囲を覆うとともに、弾性弁部材64の後部側に設けられた凹部流入孔64aを後端部の進退により開閉可能な筒型の可動栓65と、可動栓65の後部側周囲を覆うように設けられ、所定量の塗布液を収容可能なシェル部66とを有する。シェル部66の下端部は、容器部61の上部開口に対し、その外側を覆うように嵌合している。
【0006】
前記弾性弁部材64は、前記凹部流入孔64aより先端側に設けられた固定ピストン部64bと、前記固定ピストン部64b先端に設けられ、容器軸方向に伸縮自在な樹脂バネ部64cと、樹脂バネ部64c先端に設けられた弁部64dとを有する。これらは図示するように前記筒状の可動栓65によって周囲を覆われている。
【0007】
また、前記筒状の可動栓65は、その内周面が前記固定ピストン部64bの外周面に摺接しながら容器軸方向に沿って移動可能とされている。また、前記可動栓65の側面には、前記シェル部66内の塗布液を可動栓65内に移動させるための流入孔65aが形成されている。この流入孔65aは、可動栓65の移動位置によって開閉され、
図11の状態にあっては、閉状態を示している。
【0008】
また、可動栓65の先端は外界に露出するとともに、塗布液の注出口65bが形成され、この注出口65bに対し前記弁部64dが進退移動することにより開閉可能となされている。前記弁部64dの側部には、塗布液を注出するための溝部64d1が形成されており、注出口65bの開時には前記溝部64d1を介して塗布液が注出されるようになっている。
また、
図15に示すように、キャップ63の内側には、可動栓65のリップ65dに係合するリブ63aが設けられている。
【0009】
このように構成された計量注出容器60において、
図15に示すようにキャップ63を装着した状態からキャップ63を取り外すと、
図16に示すように可動栓65が引き上げられ、塗布液を収容する容器部61と、シェル部66内とを繋ぐ流入孔64aが形成される。この状態で計量注出容器60の先端側を下方に向けると、シェル部66内に塗布液が所定量供給される。
【0010】
次いで、計量注出容器60の先端側を下方に向け、可動栓65を被供給部(被塗布面)に当てて押し込むと、
図17(a)に示すように可動栓65の後端部により流入孔64aが閉じられ、シェル部66内に所定量供給されていた内容液が容器部61と隔離される。即ち、塗布液がシェル部材66内で計量される。さらに可動栓65を押し込むと、可動栓65の流入孔65aが開いて、シェル部66内の塗布液が可動栓65内に移動する。また、このとき弁部64dは、可動栓65の先端の注出口65bを閉じた状態となっている。
さらに突出した弁部64dを被供給部(被塗布面)に当てて押し込むと、
図17(b)に示すように可動栓65に対し弁部64dが押し込まれ、弁部64dの溝部64d1を介して可動栓65内の塗布液が注出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−123305号公報
【特許文献2】特開2013−67436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示された計量注出容器60にあっては、可動栓65を被供給部(被塗布面)に当てて押し込むことで内容液を計量する必要があるが、その際に流入孔64aを閉じて気密を確保するために、可動栓65を押し込む強い荷重が必要であり、被供給部が頭皮などの場合に使用者が痛みを感じるという課題があった。
また、塗布液を注出する際にも、弁部64dを被供給部(被塗布面)に当てて押し込む際、弁部64dを付勢するバネを圧縮して押し込むために比較的強い荷重が必要であり、被供給部が頭皮などの場合に、使用者が痛みを感じるという課題があった。
さらに、塗布時の吐出量の制御を、荷重の安定しない樹脂バネ部64cに支持された弁部64dで行っているため、吐出量がばらつき、液だれする場合があった。
【0013】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、貯留された塗布液から所定量を計量し、計量した塗布液を吐出する定量吐出容器において、使用者が感じる塗布面への痛みを軽減し、液だれすることなく安定した吐出を行うことのできる定量吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するために、本発明に係る定量吐出容器は、塗布液を収容する液体容器と、その先端側に設けられた吐出ユニットと、前記吐出ユニットを覆うとともに前記液体容器に対し着脱自在に装着可能なキャップと、前記液体容器内の塗布液から計量した塗布液を収容する計量室と、前記計量室内の塗布液を充填可能な塗布部とを備える定量吐出容器であって、前記吐出ユニットは、前記計量室に連通するとともに塗布部先端からの軸方向の距離が異なるように配置された少なくとも二つの貫通孔を有する筒状のシリンダと、前記シリンダ内を軸方向に沿って移動可能なピストンと、を有し、前記ピストンにより前記一対の貫通孔の少なくとも一つが閉じられ、前記塗布部の被供給部への押さえ付けに伴う前記ピストンの軸方向に沿った後方への移動により、前記一対の貫通孔の開閉が切り替えられ、前記計量室における塗布液の計量と、前記計量室から前記塗布部内への塗布液の充填がなされることに特徴を有する。
また、前記塗布部は、軟質部材により形成されるとともに、吐出孔を有し、先端部が押圧されることにより変形し、充填された塗布液を前記吐出孔から吐出することが望ましい。尚、前記軟質部材は、シリコーン樹脂であることが望ましい。
【0015】
また、前記ピストンの後方に、該ピストンの後方への移動を制限するピストン押さえ部を備え、前記キャップが閉じられることにより、前記シリンダ及び前記計量室は後方に移動する一方、前記ピストンは前記ピストン押さえ部によって前記シリンダに対し相対的に前方へ移動し、前記シリンダに対する計量前の位置にリセットされ、前記一対の貫通孔のうちの一つの貫通孔を介して前記液体容器側から前記計量室内への塗布液の充填が可能となることが望ましい。
また、前記シリンダ及び前記計量室を前方へ付勢する弾性部材を備え、前記キャップが外されることにより、前記ピストンは、前記弾性部材により前記シリンダ及び前記計量室とともに前方へ移動して前記ピストン押さえ部から所定距離離れることが望ましい。
【0016】
このような構成によれば、初回ノックの際、ピストンを移動させるために、塗布液の被供給部に塗布部の先端を押し付けるが、被供給部には、シリコーン樹脂等の軟質部材からなる塗布部の変形とピストンの摺動に必要な荷重のみ加わる。そのため、使用者に痛みを与えることなく、塗布部への充填を行うことができる。また、その後の使用の際にも、使用者は塗布部を押さえ付けることにより、痛みを感じることなく、塗布部内の定量の塗布液を吐出して使用することができる。
また、塗布部は容易に変形するため、塗布部内面の圧縮変形した分が吐出され、吐出量がばらつくことがなく、液だれを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、貯留された塗布液から所定量を計量し、計量した塗布液を吐出する定量吐出容器において、使用者が感じる塗布面への痛みを軽減し、液だれすることなく安定した吐出を行うことのできる定量吐出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係る定量吐出容器の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の定量吐出容器の斜視図であって、キャップを外した状態を示す。
【
図3】
図3(a)は栓部材を先端側からみた斜視図であり、
図3(b)は栓部材を後端側からみた斜視図である。
【
図6】
図6(a)はシリンダの斜視図であり、
図6(b)はシリンダの断面図である。
【
図7】
図7(a)は、リング部材の斜視図であり、
図7(b)は、リング部材の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、ノズル部材の斜視図、
図9(b)は、ノズル部材の断面図である。
【
図11】
図11は、定量吐出容器の動作を説明するための断面図であって、キャップを外した状態を示す。
【
図12】
図12は、定量吐出容器の動作を説明するための断面図であって、初回ノック開始途中の状態を示す。
【
図13】
図13は、定量吐出容器の動作を説明するための断面図であって、初回ノック完了時の状態を示す。
【
図14】
図14は、定量吐出容器の動作を説明するための断面図であって、通常塗布可能な状態を示す。
【
図15】
図15は、従来の計量注出容器の側面図(キャップを締めた状態)を一部断面にして示す図である。
【
図17】
図17(a)、(b)は、
図15の計量注出容器の動作状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る定量吐出容器の断面図である。
図2は、
図1の定量吐出容器の斜視図であって、キャップを外した状態を示している。
図示する定量吐出容器1は、塗布液を収容する液体容器2と、その先端側に設けられた吐出ユニット3と、吐出ユニット3を覆うとともに前記液体容器2に対し着脱自在に装着可能なキャップ4とを備える。本発明において、キャップ4の係合方式は特に限定されるものではないが、本実施の形態においては螺合式としている。即ち、図示するように液体容器2の先端側周面には、ねじ溝2aが形成され、対するキャップ4の内周面には、前記ねじ溝2aに係合する突条部4aが形成されている。
【0020】
前記液体容器2は、塗布液を多量に収容可能な液体室R1を有し、その先端には開口部2bが形成されている。この開口部2bには、栓部材5が嵌入されている。
図3(a)は栓部材5を先端側からみた斜視図であり、
図3(b)は栓部材5を後端側からみた斜視図である。栓部材5は、
図1、
図3(a)、
図3(b)に示すように、外周面が液体容器2の開口部2b内周面に密着し嵌合する外筒部5aと、外筒部5aの内側に設けられ、コイルスプリング20のガイド軸となる内筒部5bと、前記外筒部5a及び内筒部5bの基端とされる底壁部5cとを有する。また、栓部材5は、前記底壁部5cの中心に容器先端側に延びて立設された押し棒5d(ピストン押さえ部材)を有する。
尚、底壁部5cには、液体容器2の液体室R1からの液体を前記内筒部側に流入させるための複数の貫通孔5c1が形成されている。
【0021】
また、
図1に示すように前記内筒部5bの内側には、筒状の内軸部6が前記内筒部5bの内側面に対し上下に摺動可能に配置されている。
図4は、内軸部6の斜視図である。この内軸部6の上部には内筒部5bよりも径が大きくなされた拡径部6aが設けられ、それによって形成された段差部6a1下面に前記コイルスプリング20の上端部が係止している。なお、前記コイルスプリング20の下端部は、前記栓部材5の底壁部5cに係止している。即ち、内軸部6は内筒部5bの内側面に沿って軸方向に移動可能とされ、コイルスプリング20の伸張方向の付勢力を受けるようになっている。
【0022】
また、前記内軸部6の拡径部6aには、筒状の外軸部7の拡径部7aが連結され、軸方向に繋がる内軸部6と外軸部7の内側に筒状のシリンダ8が配置されている。
図5は、外軸部7の斜視図であり、
図6(a)はシリンダ8の斜視図、
図6(b)はシリンダ8の断面図である。
図5に示すように外軸部7の外周面には、キャップ4を被せた際にキャップ4との当接部となるリブ7aが形成されている。
【0023】
また、
図6(a)、
図6(b)に示すように、円筒状のシリンダ8の周面には上下に一対の貫通孔8a、8bが形成され、外周面には、周方向に沿って環状のフランジ8cが形成されている。前記貫通孔8a、8bは、塗布液の流路として利用され、前記フランジ8cは、後述する軟質塗布部材13の下端の当接部となる。
また、
図1に示すようにシリンダ8の外周面と、内軸部6及び外軸部7の内周面との間に計量室R3が形成されている。
【0024】
また、
図1の状態において、前記外軸部7の周りには筒状のリング部材9が配置され、このリング部材9の下端は容器部2の上端部に嵌合している。
図7(a)は、リング部材9の斜視図であり、
図7(b)は、リング部材9の断面図である。
図7(a)、
図7(b)に示すように、リング部材9の下部周面には、液体容器2の上端部と嵌合する嵌合孔9aが形成されている。このリング部材9を液体容器2に対し固定することにより、キャップ4を外した際に、リング部材9によって外軸部7の外周面が支持されるようになっている。
【0025】
また、
図1の状態において、シリンダ8の後端側開口からは前記押し棒5dが挿入され、その先端がシリンダ8内を上下動可能に配置されたピストン11の下面に当接している。
図8は、ピストン11の斜視図である。前記ピストン11は、シリンダ8の内周面に上下端部が摺接する円筒部11aと、前記円筒部11aの軸方向中央位置を仕切る円板部11bと、前記円板部11bの中心部から容器先端側に棒状に立設された芯棒11cとにより形成されている。芯棒11cには軸方向に沿って延びる複数(本実施形態では3つ)のリブ11c1が形成されており、それが塗布液の流れるガイドとして機能する。
【0026】
また、
図1に示すように、栓部材5の底壁部5c、内筒部5b、シリンダ8、及びピストン11に囲まれた液体室R2が形成され、この液体室R2には、液体容器2の液体室R1から塗布液が充填されるようになっている。
また、前記したように、シリンダ8の側壁には上下に対となった貫通孔8a、8bが形成されており、ピストン11の円筒部11aがその開閉弁として機能するように構成されている。
図1の状態のように後方の貫通孔8aが開いている場合には、前記拡径部6aによって形成された計量室R3に前記液体室R2から塗布液が供給可能な状態となされている。
【0027】
また、前記ピストン11の芯棒11cは、全体が筒状のノズル部材12によって覆われている。
図9(a)は、ノズル部材12の斜視図、
図9(b)は、ノズル部材12の断面図である。
図9(a)、
図9(b)に示すように、このノズル部材12の先端には塗布液を流すための貫通孔12aが形成され、側壁部には塗布液を取り込むためのスリット状の連通孔12bが形成され、後端には前記芯棒11cが挿入される開口12cが形成されている。
【0028】
さらに、ノズル部材12は軟質塗布部材13(塗布部)によって覆われる。
図10(a)は軟質塗布部材13の斜視図、
図10(b)は軟質塗布部材13の断面図である。この軟質塗布部材13は、図示するように断面山形状に形成され、下部は外軸部材7の内面側に嵌合している。この軟質塗布部材13及びノズル部材12の内側には、液体室R4が形成される。軟質塗布部材13は、先端部に複数の微細な吐出孔13aが形成され、軟質塗布部材13内の液体室R4に保持する塗布液を外部に吐出できるようになっている。軟質塗布部材13は、例えばシリコーン樹脂(軟質部材)により形成され、軽い荷重で容易に潰れ、直ぐさま元の形状に戻ることが可能な弾性を有している。
【0029】
このように構成された定量吐出容器1を使用する場合、
図11に示すようにキャップを外すと、吐出ユニット3は、コイルスプリング20の付勢力によって、栓部材5及びリング部材9を残して前方へ移動する。
ここで、容器先端を下方に向けると、液体容器2の液体室R1から吐出ユニット3の液体室R2へ塗布液が供給され、さらに貫通孔8aを介して計量室R3へ塗布液が供給される。これにより所定容量の計量室R3は塗布液で充填される。
【0030】
初回ノック開始の際、計量吐出容器1の先端(軟質塗布部材13の先端)を被供給部に当てて押し込むと、軟質塗布部材13の変形とともにピストン11がシリンダ8内を後方側へ押し戻される。
そしてピストン11の円筒部11aによって、シリンダ11の貫通孔8a、8bが一時的に塞がれ(
図12の状態:計量完了)、続けて押し込んで初回ノックが完了すると、
図13に示すようにピストン11の後退によってシリンダ11の貫通孔8bが開く(即ち、一対の貫通孔8a、8bの開閉が切り替えられる)。
これにより、計量室R3内の塗布液は、液体室R4へと流れる。即ち、液体室R4には、計量された塗付液が供給される。
【0031】
初回ノックが完了すると、
図14に示すように軟質塗布部材13は弾性変形により元の形状に戻り、ノズル部材12は容器先端側に突出した状態となる。
図14の状態から、塗布液が充填された軟質塗布部材13(ノズル部材12)を被供給部に押し付けると、軟質塗布部材13が容易に変形することにより液体室R4の容積が縮小し、それにより塗布液が吐出孔13aから外に吐出される。
軟質塗布部材13内(液体室R4内)の塗布液は計量されたものであり、液だれすることもなく安定して吐出される。
【0032】
尚、軟質塗布部材13内の塗布液の吐出が完了し、再びキャップ4を被せて閉じると、前記シリンダ8及び前記計量室R3は後方に移動する一方、前記ピストン11は押さえ棒5dによってシリンダ8に対し相対的に前方へ移動し、シリンダ8に対する計量前の位置にリセットされる。これにより、貫通孔8aを介して液体容器2側(液体室R1、R2)から計量室R3内への塗布液の充填が再び可能となる。
【0033】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、シリンダ8において容器軸方向に沿って一対の貫通孔8a、8bを設け、初回ノックの際、ピストン11の軸に沿った一方向の移動に伴い、前記貫通孔8a、8bの開閉を切り替え、塗布液の計量及び軟質塗布部材13内への塗布液の充填を完了するようにした。なお、貫通孔8a、8bは塗布部先端からの距離が異なる位置であれば直線上に配置する必要が無く、また、貫通孔の大きさ、数は限定されない。
ここで、ピストン11を移動させるために、塗布液の被供給部に軟質塗布部材13の先端を押し付けるが、被供給部には、シリコーン樹脂等からなる軟質塗布部材13の変形に必要な荷重のみ加わる。そのため、使用者に痛みを与えることなく、軟質塗布部材13への充填を行うことができる。また、その後の使用の際にも、使用者は軟質塗布部材13を押さえ付けることにより、痛みを感じることなく、軟質塗布部材13内の定量の塗布液を吐出して使用することができる。
また、軟質塗布部材13は容易に変形するため、ピストン11の移動が不安定になることがなく、安定した計量を行うことができるため、吐出量がばらつくことがなく、液だれを防止することができる。
【0034】
尚、前記実施の形態においては、軟質塗布部材13の材質をシリコーン樹脂としたが、本発明にあっては、それに限らず、その他の軟質部材であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 定量吐出容器
2 液体容器
3 吐出ユニット
4 キャップ
5 栓部材
5d 押し棒(ピストン押さえ部材)
8 シリンダ
8a 貫通孔
8b 貫通孔
11 ピストン
13 塗布部
R3 計量室