特許第6859218号(P6859218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859218
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】荷下用フック
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/38 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   B66C1/38
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-135837(P2017-135837)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-18929(P2019-18929A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203938381(CN,U)
【文献】 実公昭63−046460(JP,Y2)
【文献】 中国特許出願公開第106115470(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00−3/20
B64D 1/00−1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ装置によって巻き上げ/引き出し駆動される牽引部材によって吊り下げられ、当接部を備えたベース部材と、
前記ベース部材に対し開位置と閉位置との間で移動可能に支持されるとともに、前記牽引部材の巻き上げ/引き出し駆動力が前記ベース部材に設けられた案内部を介して伝達される可動部材と、
前記可動部材を閉位置側から開位置側に移動するように付勢力を発生させる付勢部材と、
を有し、
前記可動部材は、前記牽引部材に張力が作用した際に、前記付勢部材の付勢力に抗して閉位置側に移動可能に支持されており、
前記当接部は、前記案内部を介して牽引部材が巻き上げられた状態で前記巻き上げ装置に当接し前記可動部材の開位置への移動を阻止することを特徴とする荷下用フック。
【請求項2】
前記付勢部材の付勢力は、前記可動部材が閉位置にある状態において、牽引部材に、前記荷下用フックの自重の300%〜10%の範囲内の特定の張力が作用したときに、前記可動部材を開位置側に移動させるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の荷下用フック。
【請求項3】
前記付勢部材の付勢力は、前記可動部材が閉位置にある状態において、牽引部材に、前記荷下用フックの自重と同程度の張力が作用したときに、前記可動部材を開位置側に移動させるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の荷下用フック。
【請求項4】
前記牽引部材の移動を減速して前記可動部材に伝達する減速機構を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の荷下用フック。
【請求項5】
前記減速機構は、前記ベース部材に支持される歯車による動力伝達機構で構成されることを特徴とする請求項4に記載の荷下用フック。
【請求項6】
前記減速機構は、前記ベース部材に支持される動滑車による動力伝達機構で構成されることを特徴とする請求項4に記載の荷下用フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ、チェーン、ロープ、釣糸などの牽引部材によって吊り下げられ、各種の荷物を引っ掛ける荷下用フックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に上記した荷下用フックは、牽引部材に締結されており、フック部分に搬送物等の荷重体を引っ掛けて上下方向に搬送したり、或いは、荷重体を引っ掛けた状態で異なる位置に搬送(上下方向及び水平方向の搬送)する際に用いられる。このような荷下用フックは、フック部分に引っ掛けた荷重体が搬送時に外れないようにし、所定の位置に搬送した状態で外れるようにロック機構が設けられている。
【0003】
上記したロック機構としては、例えば、特許文献1に開示されているように、フック部分に荷重体を引っ掛けた後、開口部分を閉塞するようにバネ付勢された可動部材を回動させて開口部分を閉塞するとともに、可動部材に対して係合する係合部を配設した構造が知られている。フック部分には、荷重体からの荷重が無くなったとき(接地したとき)に、前記係合部を作動させる作動機構が配設されており、荷重がなくなった段階で係合部を移動させて可動部材のロックを解除し、荷重体をフック部分から取り外せるようになっている。
【0004】
また、荷下用フックとしては、例えば、特許文献2に開示されているように、荷重体を引っ掛けるフック部分そのものを回動させる構造も知られている。この荷下用フックは、フック部分に引っ掛けられた荷重体が接地した際、荷物の上面に当接して突き上げられる操動杆が設けられており、操動杆が付き上げられる(荷物から重力とは逆方向の力が作用する)と、フック部分を回動させて荷重体を開放するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128455号
【特許文献2】特開昭61−229792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、荷下用フックは、単に上下方向に荷重体を搬送するだけではなく、例えば、ドローンのような飛行体に装着し、様々な個所に搬送して荷下げするような使用態様も考えられる。このような使用態様では、搬送中に荷重体及び牽引部材全体に振動・衝撃を受けることがあり、また、荷重体の昇降中に急激なスピード変化が生じることがあり、フック部にかかる重力が一時的に無くなる可能性がある。このため、上記した公知の荷下用フックを、様々な個所に移動する牽引部材に装着することは、ロック機構が解除されたりフック部が回動して荷重体が落下する危険性があるため、使用することはできない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、様々な個所に荷重体を搬送して荷下げするような使用態様であっても、荷重体がフック部分から外れることがない荷下用フックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る荷下用フックは、牽引部材によって吊り下げられるベース部材と、前記ベース部材に対し開位置と閉位置との間で移動可能に支持されるとともに、前記牽引部材の巻き上げ/引き出し駆動と連動する可動部材と、前記可動部材を閉位置側から開位置側に移動するように付勢力を発生させる付勢部材と、を有し、前記可動部材は、前記牽引部材に張力が作用した際に、前記付勢部材の付勢力に抗して閉位置側に移動可能に支持されていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の荷下用フックでは、可動部材と牽引部材が連動して動く構成となっているため、荷重体の搬送時において、牽引部材を、ベース部材が巻き上げ機(ウインチ本体)に当接するまで巻き上げてしまえば、牽引部材が巻き上げ機から放出されない限り、可動部材は開位置側に開くことはできない。このため、荷重体を様々な個所に搬送して荷下げするような使用態様であっても、搬送中に荷重体が不用意に落下するようなことはない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な個所に荷重体を搬送して荷下げするような使用態様であっても、荷重体がフック部分から外れることのない荷下用フックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る荷下用フックの第1の実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は図(a)のA−A線に沿った断面図。
図2図1に示す荷下用フックを一方側から見た分解斜視図。
図3図1に示す荷下用フックを他方側から見た分解斜視図。
図4】可動部材が開いた状態を示す断面図。
図5】可動部材が閉じた状態を示す断面図。
図6図1に示す荷下用フックを巻き上げ装置に連結した状態の一例を示す概略図。
図7】本発明に係る荷下用フックの第2の実施形態を示す図。
図8図7に示す荷下用フックを巻き上げ装置に連結した状態の一例を示す概略図。
図9】本発明に係る荷下用フックの第3の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る荷下用フックの実施形態について具体的に説明する。
図1から図6は、荷下用フックの第1の実施形態を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿った断面図、図2図1に示す荷下用フックを一方側から見た分解斜視図、図3図1に示す荷下用フックを他方側から見た分解斜視図、図4は可動部材が開いた状態を示す断面図、図5は可動部材が閉じた状態を示す断面図、そして、図6図1に示す荷下用フックを巻き上げ装置に連結した状態の一例を示す概略図である。
【0013】
荷下用フック1は、巻き上げ装置100(図6に概略図で示す)によって巻回/引き出し駆動される牽引部材150によって吊り下げられる。牽引部材150は、例えば、ワイヤ、チェーン、ロープ、釣糸などによって構成されており、巻き上げ装置100のスプール102に巻回され、図示されていない駆動源(モータ等)によってスプール102が回転駆動されることで、荷重体(荷物)を巻き上げ(巻回)、或いは、降ろす(引き出し)動作が成される。
なお、巻き上げ装置100については、その大きさ、巻き上げ力、スプールの巻回容量等、その構成については特に限定されることはない。例えば、ドローンの下面に装着されるものであってもよいし、各種の建造物に装着されるものであってもよく、スプール102に対して均等に牽引部材150が巻回されるように、レベルワインド機構105を組み込んでいてもよい。
【0014】
荷下用フック1は、牽引部材150によって吊り下げられるベース部材10と、ベース部材3に対し開位置と閉位置との間で移動可能に支持されるとともに、牽引部材150の巻き上げ/引き出し駆動と連動する可動部材20とを備えている。本実施形態のベース部材10は、可動部材20が所定の角度で回動(移動)可能となるように支持する地板11と蓋部材12を備えており、可動部材20は、これらの部材間に挟持されて回動可能に支持されている。
【0015】
前記地板11は、略L字形状の板状の部材で構成されており、前記可動部材20と略同じ厚さで下方向に延出する厚肉部11aと、厚肉部11aの下端に一体形成され、回動する可動部材20の回動を停止させる閉鎖端(凹部)11bとを備えている。また、地板11の基端側には、可動部材20を回転可能に軸支するための支持穴11cが形成されるとともに、可動部材20の開放端位置を規制する規制部11dが突出形成されている。
【0016】
前記蓋部材12は、地板11と略同形状の板状の部材で構成されており、地板11に対して重ねて固定されることで、可動部材20を地板11との間に挟持して回動可能に支持する。このため、地板11及び蓋部材12には、可動部材20の基部の中心孔20aに設けられる支軸21の一端を回転可能に保持する前記支持穴11c及び支軸21の他端を回転可能に支持する支持穴12cが形成されるとともに、地板11及び蓋部材12を面接して接合固定するためのビス孔が適所に形成されており、図示しないビスを螺入することによって、両者の間に可動部材20を挟持して回動可能に支持する。
【0017】
前記可動部材20は、例えば、断面矩形状の棒状部材によって構成されており、その先端側が略90°に屈曲されて、その屈曲部20bに荷重体(図示せず)が引っ掛けられるようになっている。また、可動部材20の基部には、可動部材20の回動方向と直交する方向に前記支軸21が設けられており、支軸21の両側は、上記したように、地板11及び蓋部材12の各支持穴11c及び12cに保持される。この場合、可動部材20は、基端側の突当面20cが地板11に突出形成された規制部11dに当て付くことで開位置が規制され(図4参照)、屈曲部20bの端面20dが凹部11bに当て付くことで閉位置が規制される(図5参照)。すなわち、可動部材20は、ベース部材10に対して支軸21を中心として、図4に示す開位置と図5に示す閉位置との間で回動可能に支持される。
【0018】
なお、本実施形態の可動部材20は、閉位置に規制されている状態では、図5に示すように、ベース部材10と共に閉じた閉曲線を構成しており、この閉曲線内に荷重体を吊るすことで荷重体が外れないようにしている。このため、可動部材20が開位置に移動すると、荷重体は可動部材20の屈曲部20bから外れて開放されるようになっている。
【0019】
前記可動部材20は、ベース部材に対して、可動部材20を開位置側に移動するように付勢された状態となっている。可動部材20に作用する付勢力は、ベース部材との間にバネ、磁石などの付勢部材を配設することで発生する。
【0020】
上記のように回動可能で開位置側に付勢された状態に支持される可動部材20は、牽引部材150の駆動と連動するように接続される。この場合、牽引部材150は、その一端を可動部材20に固定してもよいが、牽引部材150の駆動を減速して可動部材20に接続することが好ましく、本実施形態では、可動部材とベース部材との間に、牽引部材150の移動を減速して可動部材20に伝達する減速機構40を配設し、牽引部材150の一端を減速機構40の一部、具体的には、減速機構40の一部を構成するプーリ41の外周部に固定している。これにより、可動部材20は牽引部材150の駆動と連動することから、ベース部材10は減速機構40を介して牽引部材150に吊り下げられることになる(減速機構40を配設しない場合、ベース部材10は、可動部材20を介して牽引部材150に吊り下げられる)。そして、前記牽引部材150は、地板11と蓋部材12の上端側に形成された案内部15を介して内部に案内されており、減速機構40によって減速されて、その駆動力が可動部材20に伝達される。また、地板11と蓋部材12の上端は、牽引部材150が巻き上げられた際、巻き上げ装置に対して当接する当接部17を備えている。
以下、減速機構の構成について説明する。
【0021】
本実施形態の減速機構40は、ベース部材10に支持される歯車による動力伝達機構によって、前記案内部15を介して内部に案内される牽引部材150の移動を減速して可動部材20に伝達するように構成されている。
減速機構40は、案内部15を介して内部に案内される牽引部材150を巻回する巻回溝41aを外周縁に有するプーリ41と、プーリ41の支軸部分に一体形成された小ギヤ41bと、小ギヤ41bに噛合する大ギヤ42a及び大ギヤ42aの支軸に一体形成された連結ギヤ42bを具備した中間ギヤ(二段ギヤ)42と、可動部材20の円弧状の基部の外周面に支軸21を中心軸として形成され、前記連結ギヤ42bと噛合する可動部材ギヤ(セクターギヤ)43と、を備えている。
【0022】
上記した歯車による動力伝達機構では、そのギヤ比を適宜設定することで、牽引部材150が巻回されるプーリ41の回転を減速して可動部材20に伝達することが可能であり、本実施形態では、その減速比は9:1となるように設定されている。
【0023】
前記ベース部材10(地板11,蓋部材12)には、上記した減速機構40の構成要素を保持する保持部が形成されている。具体的には、蓋部材12には、中間ギヤ42の支軸42cを支持するギヤ支持穴12fと、前記プーリ41の支軸41cを支持するプーリ支持穴12gが形成されている。また、地板11には、中間ギヤ42の支軸42cを支持するギヤ支持穴11fと、プーリ41を回転可能に支持するプーリ軸11gが形成されており、プーリ軸11gには、可動部材20を開位置側に移動するように付勢する付勢部材の一端が固定されるバネ掛け部11hが形成されている。
【0024】
前記プーリ41は、略カップ状に形成されており、その外周面に牽引部材150を巻回する前記巻回溝41aが形成され、その環状凹所に付勢部材としてのぜんまいバネ(以下、バネと称する)45を保持している。バネ45は、その一端が地板11のプーリ軸11gに形成されたバネ掛け部11hに固定され、他端は、環状凹所内に突出形成されたバネ掛け41dに係合されて、プーリ41に付勢力(可動部材20を開位置側に復元させる復元力)を与えるようになっている。すなわち、この付勢力が前記ギヤの噛合による減速機構40を通して可動部材20に伝わり、可動部材20が開状態となるような付勢力を発生する。
【0025】
前記プーリ41に巻回される牽引部材150は、鉛直下方に垂下することから、鉛直方向に延出する隙間によって前記案内部15を構成することで、牽引部材150を所定の位置から外れ難くすることができる。この案内部15は、例えば、地板11に、垂直方向に延出した案内面15aを具備する厚肉部11kによって形成することが可能である。また、牽引部材150については、ステンレスワイヤ等、ある程度剛性が強く、無負荷時でも曲率半径が小さくならない素材のものを用いるのがよく、これにより、無負荷時に牽引部材150が絡まることを抑制することができる。
【0026】
前記バネ45は、プーリ41の回転方向に対する付勢力、すなわち、減速機構による動力伝達機構を介して、可動部材20を閉位置から開位置に移動させる付勢力を与えるものであり、この付勢力が強いと可動部材20は開き易くなり、この付勢力が弱いと可動部材20は開き難くなる(可動部材は閉じた状態を維持するため、安全性は高まる)。この場合、可動部材20は、減速機構40を通じて、牽引部材150の移動に伴って開閉することから、その開閉状態は、プーリ41に保持されるバネ45の付勢力と牽引部材150に作用する引張力との関係によって変化する。牽引部材150には、荷下用フック1そのものの重量と、ここに吊るされる荷重体の重量の合計が作用しており、単に、荷下用フック1が上下動すると仮定すると、バネ45の付勢力は、牽引部材150に荷下用フック1の自重以上の張力が作用した際に、可動部材20が付勢力に抗して閉位置に移動できるように設定しておけば(荷下用フック1の自重程度の張力が作用したときに可動部材20は復元力によって開位置に移動する)、荷下用フック1を引き出して荷重体が接地し始め、最終的に荷重体による負荷がなくなったときに、可動部材20を閉位置から開くことができるようになる。
【0027】
以下において、牽引部材150に、荷下用フック1の自重の張力が作用した際、可動部材20がバネ45の付勢力に抗して閉じることができる張力(換言すれば、荷下用フック1の自重による牽引部材に作用する張力とバネ45の復元力が釣り合う張力でもある)を閾値張力と称する。
【0028】
前記バネ45は、閾値張力以下の付勢力のもの(バネの付勢力が弱い)を用いてもよいが、このようなバネ45では、荷下げ時において、荷下用フック1の自重程度の張力が作用しても可動部材20は開かないことから、そのような付勢力が弱いバネでは、荷下用フック1を降下して荷重体を接地させ、更に牽引部材150の張力が弱くなるように、荷下用フック1も接地させて牽引部材150の張力を弱くしないと可動部材20は開かなくなる。一方、あまり付勢力が大き過ぎると、可動部材20が開き易くなってしまい、特に、軽い荷物を搬送するケースでは好ましくはない。
【0029】
バネ45の付勢力については、荷下用フック1の重量、及び、運搬する荷重体(荷物)の重量に基づいて定められる。たとえば、バネ45の付勢力は、上記した閾値張力と釣り合うものを用いると、荷物を降下し、その荷物が接地して、牽引部材150に荷物の重力が無くなった段階で可動部材20を開かせることができる。すなわち、このような構成では、荷物を降ろすポイントに作業者等がいなくても、荷物が接地して重力がなくなったときに荷物を荷下用フック1から開放することが可能となる。
この場合、バネ45の付勢力が、上記した閾値張力よりも小さいと、荷物が接地し、引き続き荷下用フック1も接地して荷下用フックの重力が減少し始めて、所定の状態になったときに可動部材が開くようになる。実際には、バネ45の付勢力(復元力)は、荷下げ時において、荷下用フック1の重量の10%以上の特定の張力が作用したときに、可動部材20が閉位置から開位置に移動するように設定されていることが好ましい。すなわち、付勢力を、10%未満の張力に設定しておくと、荷下用フック1が接地しても、可動部材20はすぐに開くことはなく、荷下用フック1が横向きになるなど、かなり重力が減少しないと開かなくなるため、10%以上に設定しておくことが好ましい。
【0030】
また、バネ45の付勢力の上限については、軽い荷物を運ぶことを考慮すると、あまり強いものを用いると、可動部材20が開き易くなってしまうため、荷下用フック1の重量の300%以下の特定の張力が作用したときに、バネ45の付勢力(復元力)によって可動部材20が閉位置から開位置に移動するように設定しておくことが好ましい。これは、重量が異なる各種の荷物を搬送することを考慮すると、バネ45の付勢力は、荷下用フック1の重量と荷物の重量を合算した張力以下に設定されているのがよく、上記したように、荷下用フック1の重量の300%以下の特定の張力に設定してあれば、ある程度の軽い荷物を搬送しても、可動部材20を開き難くすることが可能となる。
【0031】
次に、上記した荷下用フック1及び巻き上げ装置100をドローン等の移動体に装着し、荷下用フック1に荷物(荷重体)を引っ掛けて、これを目的地で荷下げする一連の使用態様について説明する。なお、本実施形態では、荷下用フック1のバネ45の付勢力は、上記した閾値張力に設定されているものとして説明する。
【0032】
(1)荷下用フック1を地面に置いたときや、手に持ったときなど、牽引部材150には、張力が働いていないことから、可動部材20は、バネ45の付勢力によって開位置に移動している(図4参照)。この状態でユーザは、吊り下げたい荷物を可動部材20とベース部材10との間の開口部分を通じてセットする。
【0033】
(2)次に、牽引部材150を引っ張る、荷下用フック1をぶら下げる、などの操作を行ない、牽引部材150に上記した閾値張力以上の力を掛けると、バネ45の付勢力に抗して(バネ45に復元力がチャージされる)可動部材20は、閉位置に回動して可動部材20は閉じた状態となる(図1図5参照)。この状態になると、牽引部材150の張力が閾値張力未満にならない限り、可動部材20が開くことはなく、したがって吊り下げた荷物が荷下用フック1から外れることはない。
【0034】
(3)次に、牽引部材150を吊り下げる巻き上げ装置100のスプール102を巻き上げ駆動し、荷下用フック1を更に巻き上げると、荷下用フックのベース部材10の上端の当接部17が巻き上げ装置100のいずれかの部分に対して当接するようになる(図6参照)。この状態では、牽引部材150の昇降が急加速、急減速する、牽引部材を吊り下げている巻き上げ装置100ごと大きな振動や衝撃を受けたり自由落下するなど、一時的に牽引部材150に働く張力が閾値張力以下になったとしても、牽引部材150が巻き上げ装置100から引き出されない限り可動部材20が開くことはない。このため、巻き上げ装置100を移動させる場合などは、この状態にすることで荷物が落下することはない。
【0035】
(4)その後、巻き上げ装置(ドローン)が荷物を降ろしたい位置に移動したら、巻き上げ装置100のスプール102を放出駆動して牽引部材150を引き出す(降下させる)。この場合、牽引部材150を所定長さ以上引き出した状態で、上記したような衝撃等を受けるなどの異常事態が発生して牽引部材150に働く張力が閾値張力以下になると、荷物が接地する前で可動部材20が開位置に移動する可能性がある。しかし、本実施形態のように、減速機構40を配設して、減速比を適切な値に設定しておくことにより、可動部材20が開くリスクを小さくすることができる。
【0036】
そして、荷物及び荷下用フック1が接地(荷物が先に接地する)し、牽引部材150に働いている重力に伴う張力が次第に弱まって、それが閾値張力よりも小さくなる(荷物の重力に伴う張力が無くなる)と、チャージされていたバネ45の付勢力(復元力)によって可動部材20は開位置に移動し、荷物は荷下用フック1から外れる。この場合、荷物がスムーズに外れるように、図4に示すように、可動部材20とベース部材10は、両者の開口が重力方向(下向き)となるような配設関係となっていることが好ましい。すなわち、落下位置に作業者等がいなくても、荷物が自動的に外れるような配設関係となっていることが好ましい。また、このときに開口が重力方向を向くようにするために、可動部材20が開位置にあるときの重心G(図4参照)が、ベース部材10側にくるように、形状や材料の比重を選択することが望ましい。このようにすることで、荷下用フック1を吊るした際は、牽引部材150と重心Gが一直線上になった状態が釣り合い位置となることから、ベース部材10側に重心があると、可動部材20の開口が下向きになり易く、スムーズに荷物を落とすことができる。なお、上記した形状や材質の比重を選択する以外にも、別途、ベース部材側に重量物を装着する等してもよいし、牽引部材150の本体内への導入位置をベース部材側(地板11の肉厚部11a側)となるように設定してもよい。
【0037】
上記した構成において、バネ45の付勢力を、上記した閾値張力よりも若干大きく設定しておくと、荷物が接地した後、荷下用フック1が接地する前に可動部材20は開くため、スムーズな荷下げ動作が行える。この場合、荷物を開放した後、そのまま荷下用フック1を引き上げる際には、可動部材20は開いた状態となる。なお、バネ45の付勢力を閾値張力に対して大きくし過ぎると、上述したように、荷物の重量が軽い場合に可動部材20が閉状態にならなかったり、昇降中の振動などによって可動部材20が開き易い等の問題が生じるため、バネ45の付勢力については、搬送する荷物の重量によって適宜設定すればよい(上記のように、荷下用フック1の重量の300%以下の特定の張力が作用したときに開くように設定しておくことが好ましい)。
【0038】
また、バネ45の付勢力を、上記した閾値張力よりも若干小さく設定しておくと、荷物と荷下用フック1の両方が接地した後に可動部材20が開くようになる。この場合、荷物を開放した後、そのまま荷下用フック1を引き上げる際には、可動部材20は閉じた状態となる。なお、バネ45の付勢力を、上記した閾値張力よりも更に小さく設定しておくと、バネ45の復元力が可動部材20の摺動抵抗等に負けてしまい、可動部材20は開位置に移動し難くなる(従って荷物が不用意に落下することがより確実に防止される)ことから、荷物を外す際には、接地ポイントに作業者を待機させておくことが好ましい。
【0039】
以上のように、可動部材20を開位置側に付勢する付勢部材(バネ)の付勢力は、閾値張力に対して大きくし過ぎると荷物を外したくないときに外れ易くなり、小さくし過ぎると荷物をはずしたいときに外れ難くなることから、付勢部材については、荷下用フックの自重、想定する荷物の重量、使用態様などに応じて適切な値に設定するのがよい。
【0040】
上記した荷下用フック1によれば、以下のような効果が得られる。
ベース部材10に対して回動可能に支持された可動部材20は、牽引部材150の巻き上げ/引き出し駆動と連動する構造となっているため、上記(3)のように、荷下用フックそのものを巻き上げ装置100に当接させる等、牽引部材150の動きを止めてしまえば、可動部材20は開位置に移動することはできなくなり、荷物の移送中に落下することが確実に防止される。すなわち、上記したように、巻き上げ装置100をドローンに取り付けた場合などにおいて、巻き上げ装置ごと激しく移動、振動が作用するような環境下であっても荷物の落下を確実に防止することができる。
【0041】
なお、荷物を吊り下げた後の牽引部材150の引張状態において、巻き上げ装置100と荷下用フック1との間に多少の隙間が生じていたとしても、牽引部材150を緩ませないか、或いはプーリ41の巻き取りを規制するようなライン固定具などを配設することで、荷物の落下を確実に防止することも可能である。
【0042】
上記した実施形態では、減速機構40を配設して、牽引部材150の移動を減速して可動部材20に伝達するようにしている。これにより、上記(3)の状態において、牽引部材150が若干移動したり伸びたり、或いは、巻き上げ装置100と荷下用フック1との間に多少の隙間が生じていたとしても、牽引部材150の移動は減速して可動部材20に伝わることから、可動部材20は殆ど動くことはなく、荷物の落下を効果的に防止することができる。
【0043】
また、可動部材20には、摺動抵抗などの機械的な抵抗が作用している。この抵抗は、荷物を吊り下げる等の外力を受けたり、異物が挟まったりすると、更に大ききなる傾向がある。一方、荷下用フック1そのものの重量は、巻き上げ装置100の省電力化のために軽いほどよく、バネ45が開閉する際の閾値となる上記の閾値張力は、上述したように、荷下用フック1の重量相当分から大きく外すことは好ましくない(付勢力が弱すぎると可動部材が開き難くなり、付勢力が強すぎると可動部材が開き易くなる)。すなわち、バネの付勢力を大きくするには限界がある。
【0044】
本実施形態では、バネ45の付勢力や牽引部材150に作用する張力を減速機構40によって減速倍力させて可動部材150に伝えているため、可動部材150に作用する機械抵抗が大きくなった際でも、安定して可動部材20の開閉動作が行えるようになる。換言すれば、荷下用フック1の重量を増やしたり、バネ45の付勢力を強くしなくても、減速機構の作用によって安定した操作が実現される。
【0045】
また、本実施形態の減速機構40は、ギヤ同士の噛合(ギヤトレイン)によるギヤ比によって減速させており、かつ、そのギヤ減速機構の一部にプーリを配設し、牽引部材150を巻き取る構造としているため、荷下用フック1の内部を通る牽引部材150の経路を短くすることができる。これにより、牽引部材150の張力が無くなるなど、荷下用フック内で牽引部材150が移動した際も、牽引部材が絡まるトラブルを発生し難くすることができる。
【0046】
さらに、減速機構としてギヤトレインを用いることで、比較的小型軽量、単純な構成で減速比を大きく取ることが可能となる。減速比を大きくすることで、上記したように、可動部材20の開閉動作を安定して行なうことが可能となる。
【0047】
図7は荷下用フックの第2の実施形態を示す図であり、図8は第2の実施形態の荷下用フックを巻き上げ装置に装着した概略図である。
この実施形態の荷下用フック200のベース部材210は、板状の基部211と、基部211の両端から下方向に延びる一対の板状の垂下部212,213を備えている。一方の垂下部212の下端には、円柱状の可動部材220が水平方向に移動可能となるように挿通させる筒状の挿通部212aが形成されており、他方の垂下部213の下端には、可動部材220が水平方向(矢印D1方向)に移動した際、その端部220aを受け入れて可動部材220の閉位置を特定する有底で円筒状の凹所213aが形成されている。
【0048】
前記可動部材220には、荷重体が掛けられるようになっており、前記端部220aと反対側の端部には、フランジ220bが形成されている。また、記ベース部材210の挿通部212aとフランジ220bとの間には、付勢部材であるコイルバネ230が配設されており、可動部材220を所定の付勢力で開く方向(矢印D2方向)に付勢している。なお、このコイルバネ230は、上記した実施形態におけるバネ45と同様な機能を果たしており、その付勢力については、バネ45と同様に設定される。
【0049】
前記基部211、垂下部212、挿通部212aには、牽引部材150を案内して可動部材220と連動させる円柱状の案内部(回転ローラでもよい)214,215,216が設けられており、前記フランジ220bには、牽引部材150の端部を締結固定する固定部217が設けられている。すなわち、牽引部材150に引張力が作用すると、その引張力は、コイルバネ230の付勢力に抗して可動部材220を閉じる方向(D1方向)に移動させるようになっている。
【0050】
このような構成の荷下用フック200によれば、図8に示すように、巻き上げ装置100で巻き上げてベース部材210の上端部218を巻き上げ装置100に当接させることで、上記した(3)と同様、牽引部材150が巻き上げ装置100から引き出されない限り可動部材220が開くことはなく、荷物が落下することのない構造となる。また、ベース部材に、上記したような減速機構を配設しないことから、簡易な構造となり、コストを低減することが可能となる。
【0051】
なお、このような構造では、ベース部材210に対して、同様な形状の蓋部材を装着してもよく、第1の実施形態と同様、牽引部材150を外部に露出しないようにしてもよい。
【0052】
図9は荷下用フックの第3の実施形態を示す図であり、図2に示した実施形態の構造に減速機構400を配設した構成例を示している。
この実施形態の荷下用フック300のベース部材210の板状の垂下部212には、牽引部材150を可動体220の端部に設けた回転部材227aに折り返すように巻回して、その端部を固定する固定部212bが設けられている。
【0053】
このような巻回構造によれば、動滑車として機能する減速機構となり、牽引部材150自体で減速することから、上記した第1の実施形態のギヤトレインによる減速機構と比較すると、省部品化が図れると共に、構造も簡略化することが可能となる。この場合、減速比については、巻回量を変えたり、動滑車の数を増やすことで適宜、調整することが可能である。
【0054】
以上、本発明の荷下用フックの実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、可動部材については、荷重体を引っ掛けた状態で移動するように構成したが、荷重体を引っ掛けることなく、フック部分を開閉する構造であってもよい。また、可動部材を開方向に付勢する付勢部材については、上記した構造以外のバネ(板バネなど)を用いてもよいし、付勢部材として磁石の吸引を利用するものであってもよい。
【0055】
また、可動部材と牽引部材を連動させる動力伝達機構については、上記したギヤトレインを利用したり、牽引部材を案内する案内部材を配設する等、適宜変形することが可能である。さらに、そのような動力伝達機構内に減速機構を配設するのであれば、第1、第2の実施形態のように、ギヤトレインや滑車による動力伝達以外にも、例えば、チェーンによる動力伝達、摩擦車による動力伝達、磁気歯車による動力伝達(非接触型の動力伝達機構)、トグル機構やてこ機構などのリンク機構による動力伝達、ねじ歯車等を組み込んだねじ機構による動力伝達、カムとそれに係合するカムフォロワによる動力伝達、くさび機構を利用した動力伝達などを用いて減速効果を発揮するような構成でもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,200,300 荷下用フック
10,210 ベース部材
20,220 可動部材
40,400 減速機構
45,230 付勢部材
100 巻き上げ装置
150 牽引部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9