(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成負レンズ群に含まれるいずれかのレンズ群、又は、前記合成負レンズ群に含まれるいずれかのレンズ群の一部を光軸方向に移動することで、近接被写体への合焦を行う請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する当該ズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0014】
1.ズームレンズ
1−1.ズームレンズの光学系の構成
まず、本件発明に係るズームレンズの実施の形態を説明する。本実施の形態のズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、全体として正の屈折力を有する合成正レンズ群と、全体として負の屈折力を有する合成負レンズ群とから構成され、合成正レンズ群は、最も物体側に正の屈折力を有する第3レンズ群を備え、且つ、正の屈折力を有するレンズ群のみから構成され、合成負レンズ群は、最も物体側に配置される負の屈折力を有する負Aレンズ群と、負の屈折力を有する負Bレンズ群とを備え、各レンズ群間の間隔を変えることにより変倍する。
【0015】
当該ズームレンズによれば、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群とを備え、変倍時にこれらのレンズ群の間隔を変化させることで、変倍作用を得ることができる。また、当該構成を採用することで、入射光束を第1レンズ群により収束させ、それを第2レンズ群により発散させるいわゆるテレフォト構成の光学系とすることができる。そのため、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離を長くしつつ、その光学全長を短くすることができる。
【0016】
当該ズームレンズでは、第2レンズ群の像面側に、物体側より順に、全体として正の屈折力を有する合成正レンズ群と、全体として負の屈折力を有する合成負レンズ群とを備え、第2レンズ群側から合成正レンズ群に入射する光束を合成正レンズ群により収束させ、それを合成負レンズ群により発散させる。すなわち、第2レンズ群の像面側に、テレフォト構成を成す合成正レンズ群と合成負レンズ群とを配置することで、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離をより長くしつつ、光学全長の更なる短縮化を図ることができる。
以下、当該ズームレンズの構成に関する事項を説明する。
【0017】
1−1−1.第1レンズ群
第1レンズ群は、全体として正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、収差補正を良好に行い、高性能なズームレンズを得る上で、第1レンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含むことが好ましい。更に好ましくは、物体側から順に、負レンズ、正レンズを備える構成をとり、より好ましくは、物体側から順に、負レンズ、正レンズ、正レンズからなる構成をとることで、第1レンズ群に強い正の屈折力を配置しつつ、球面収差の発生量を抑制し、高変倍比を実現できる。しかしながら、要求される光学性能に応じて、適宜適切なレンズ構成を採用することができる。
【0018】
1−1−2.第2レンズ群
第2レンズ群についても、全体として負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、収差補正を良好に行い、高性能なズームレンズを得る上で、第2レンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含むことが好ましい。しかしながら、要求される光学性能に応じて、適宜、適切なレンズ構成を採用することができる。
【0019】
1−1−3.合成正レンズ群
合成正レンズ群は、1つ又は複数の正の屈折力を有するレンズ群のみから構成され、負の屈折力を有するレンズ群は含まないものとする。合成正レンズ群は全体として正の屈折力を有し、その最も物体側に正の屈折力を有する第3レンズ群を備える。正の屈折力を有するレンズ群のみから、合成正レンズ群を構成することにより、当該合成正レンズ群に強い正の屈折力を配置することができ、テレフォト比のより小さい望遠ズームレンズを実現することができる。
【0020】
なお、合成正レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズ群の数は特に限定されるものではない。第3レンズ群の像側に2つ以上の正レンズ群を備えていてもよい。合成正レンズ群に含まれるレンズ群の数を増やすことで、変倍時における収差補正の自由度が増し、より高性能な望遠ズームレンズが実現できる。しかしながら、レンズ群の数が増加すると、当該合成正レンズ群が大型化し、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる場合がある。そのため、合成正レンズ群に含まれるレンズ群の数は、3つ以下であることが好ましく、2つ以下であることがより好ましい。
【0021】
第3レンズ群は、上述のとおり、当該合正レンズ群において最も物体側に配置される。第3レンズ群のレンズ構成は特に限定されるものではないが、第3レンズ群において最も物体側には両凸形状のレンズユニットが配置されることが好ましい。ここで、本件においてレンズユニットとは、単レンズ又は接合レンズなどをいい、空気間隔を含まずに一体化された1又は複数の光学素子等からなるユニットを意味する。単レンズは、球面レンズ及び非球面レンズのいずれであってもよい。このとき、非球面レンズは、ガラスモールド非球面レンズ、プラスチックモールド非球面レンズのいずれであってもよく、光学面に非球面形状のフィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズであってもよい。両凸形状のレンズユニットとは、例えば、当該レンズユニットが単レンズである場合、両凸形状の単レンズ、すなわち両凸形状の正レンズを意味する。また、当該レンズユニットが接合レンズである場合、当該接合レンズの最も物体側の面が物体側に凸であり、当該接合レンズの最も像面側の面が像面側に凸であることを意味する。なお、接合レンズを構成するレンズ枚数は特に限定されるものではないが、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズとが接合されていることが好ましい。
【0022】
一般に、第2レンズ群に強い負の屈折力を配置することでテレフォト比の小さい望遠ズームレンズを実現することが容易になる。第2レンズ群に強い負の屈折力を配置した場合、第3レンズ群に軸上光束の最外光線が入射するときの光線高さ(光軸からの高さ)は高くなる。一般に、光学系の球面収差の発生量は、その光学系の入射瞳径の3乗で大きくなる。当該事象を第3レンズ群に置き換えて考えると、第3レンズ群に入射した軸上光束の最外光線の光線高さを低くすることが、球面収差発生量を抑制する上で有効である。従って、第3レンズ群において最も物体側に配置されるレンズユニットの物体側面は、物体側に凸形状であると、上記光線高さを低くすることができるため好ましい。また、同様の観点から第3レンズ群において最も物体側に配置されるレンズユニットの像面側面が像面側に凸形状であると、さらに上記光線高さを低くすることができるため好ましい。
【0023】
ここで、当該両凸形状のレンズユニットとしては、接合レンズであることが好ましい。少なくとも1枚の正レンズと負レンズとを接合した接合レンズを第3レンズ群の最も物体側に配置すれば、上記光線高さを低くして球面収差の発生量を抑制する上で好ましい他、色収差補正の発生量を抑制する上でも好ましい。
【0024】
また、当該両凸形状のレンズユニットとして、両凸形状の正レンズを採用する場合、当該正レンズのd線に対するアッベ数は50以上であることが色収差補正上好ましい。d線に対するアッベ数が50以上である硝材はいわゆる低分散硝材と称される。アッベ数の値が大きくなるほど、その硝材はより低分散な硝材であるため、色収差補正上好ましい。そのため、アッベ数の上限は特に限定を要するものではないが、アッベ数の値が大きい硝材は一般に高価である。そのため、コスト上の観点から、アッベ数の上限は100以下であることが好ましい。
【0025】
1−1−4.合成負レンズ群
合成負レンズ群は、それぞれ負の屈折力を有する負Aレンズ群及び負Bレンズ群を備え、全体として負の屈折力を有する。合成負レンズ群において、負Aレンズ群はその最も物体側に配置される。
【0026】
(1) 負Aレンズ群
負Aレンズ群は、全体として負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。後述するように、負Aレンズ群を合焦群とし、負Aレンズ群を光軸方向に移動させることで、近接被写体への合焦を行う場合、負Aレンズ群はレンズユニット1つのみから構成することが、合焦群の軽量化及び小型化を図る上で好ましい。また、合焦群の軽量化及び小型化を図ることで、合焦群を駆動するためのメカ部材の小型化にもつながり、当該ズームレンズユニット全体の軽量化及び小型化を図ることができる。なお、ズームレンズユニットとは、ズームレンズ(ズームレンズ光学系)と、これを収容する鏡筒、鏡筒内に配置される各種メカ部材、制御基板等を含む構成をいうものとする。
【0027】
また、負Aレンズ群をレンズユニット1つのみから構成することにより、組み付け時の偏芯を防ぐことができるなど製造誤差を小さくすることができる。そのため、製造誤差に起因する性能劣化を抑制することができ、高性能なズームレンズを実現することが製造上の観点からも容易になる。
【0028】
ここで、レンズユニットとは、上述したとおりであり、ここでは説明を省略する。
【0029】
当該負Aレンズ群を正レンズ及び負レンズを接合し、全体として負の屈折力を有する接合レンズから構成すれば、上記の如く合焦群の軽量化及び小型化を図ることができると共に、合焦時における色収差補正の変動を抑制することができ、合焦域全域において良好な色収差補正を行うことができて好ましい。
【0030】
また、当該負Aレンズ群を負の屈折力を有する単レンズ(負レンズ)1枚で構成すれば、接合レンズを用いる場合と比較すると一層の軽量化及び小型化が可能になる。この場合、色収差補正上の観点から、上記と同様に、当該単レンズのd線に対するアッベ数は70以上であることが好ましい。また、コスト上の観点から、上記と同様に、アッベ数の上限は100以下であることが好ましい。
【0031】
(2) 負Bレンズ群
負Bレンズ群は、全体として負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。
【0032】
(3) 合成負レンズ群を構成するレンズ群の数
合成負レンズ群は、全体として負の屈折力を有する限り、負Aレンズ群及び負Bレンズ群以外に、正又は負のレンズ群を1つ又は複数含むことができる。負Bレンズ群は、負Aレンズ群よりも像面側に配置されればよい。負Aレンズ群と負Bレンズ群との間には、例えば、正の屈折力を有するレンズ群が配置されていてもよいし、負Bレンズ群の像面側には、正又は負の屈折力を有するレンズ群が1つ以上配置されていてもよい。
【0033】
合成負レンズ群に含まれるレンズ群の数を増やすことで、変倍時における収差補正の自由度が増し、より高性能なズームレンズが実現できる。例えば、後述する実施例1の第6レンズ群G6を、第6レンズ群G6中の最大空気間隔を介して、物体側を負の屈折力を有する前側群とし、像面側を負の屈折力を有する後側群としてもよい。このように構成し、変倍時に前側群を物体側や像側に移動させることによって、収差補正の自由度を増加させることができる。さらに、変倍時に後側群を固定群とすることで、当該後側群により光線を跳ね上げる効果、すなわち撮像素子の高像高に入射する光線高さを高くする効果が生じ、ズームレンズの最も像側に配置されたレンズの径よりも大きな撮像素子に光線を入射させることができる。そのため、大型の撮像素子を用いる場合でも、ズームレンズ全体を小型に構成することが可能になる。一方、ズームレンズの最も像側に配置されたレンズの径と撮像素子の大きさとに制約がない場合は、合成負レンズ群の最も像側に正の屈折力を有するレンズ群を配置してもよい。この場合、当該正の屈折力を有するレンズ群により、撮像面に対する光線の像面入射角度を小さくする(テレセントリック性を高める)ことができ、撮像素子の受光効率を上げることができる。従って、合成負レンズ群に含まれるレンズ群の数、屈折力及び配置などは、ズームレンズのスペックや制約によって、適宜選択することができる。
【0034】
しかしながら、当該ズームレンズの小型化を図るという観点から、合成負レンズ群は負Aレンズ群及び負Bレンズ群から構成されると好ましい。ズームレンズの小型化を図る上で、テレフォト構成の強い屈折力配置とすることが求められる。すなわち、物体側に正の屈折力を配置し、像面側に負の屈折力を配置することが好ましい。合成負レンズ群を負Aレンズ群及び負Bレンズ群の2つのレンズ群から構成することにより、像面側に強い負の屈折力を配置することが可能になる。また、当該合成負レンズ群内において各レンズ群間の主点間隔を極力短くすることが、当該ズームレンズ全系の光学全長の短縮化につながる。よって、合成負レンズ群を負Aレンズ群及び負Bレンズ群の2つのレンズ群で構成することで、負Aレンズ群及び負Bレンズ群以外の他のレンズ群を含む構成と比較すると、上記主点間隔を短くすることができる。さらに、当該ズームレンズの最も像面側に負Bレンズ群を配置することで、負レンズ群Bを通過する軸外最大像高光束の光線高さを低くすることができ、負Bレンズ群の径が大きくなるのを抑制することができ、小型でありながら大型の撮像素子に対応させることが可能になる。
【0035】
(4)合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズ
交換レンズ等に要求される適切なバックフォーカスを確保しながら最終レンズの径方向の大型化を避けつつ大型の撮像素子に対応させる上で、合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズは負の屈折力を有するレンズ(負レンズ)であることが好ましい。当該ズームレンズにおいて最も像面側に負レンズを配置することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0036】
(5)開口絞り
当該ズームレンズにおいて、開口絞りの配置は特に限定されるものではないが、開口絞りの径の小型化を図る上で、合成正レンズ群の像面側、或いは、合成負レンズ群の物体側、合成負レンズ群内に開口絞りが配置されることが好ましい。
【0037】
特に、変倍域全域においてFナンバーの値に変化のないズームレンズを実現する場合(例えば、実施例1参照)は、合成負レンズ群に開口絞りを配置することが好ましい。特に、合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズ群に開口絞りを配置することが好ましい。このとき、合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズ群を変倍時に像面に対して固定の固定群とした上で、当該最も像面側に配置されるレンズ群に開口絞りを配置することが好ましい。例えば、当該合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズ群が負Bレンズ群であるとした場合、開口絞りは、負Bレンズ群の物体側、負Bレンズ群内、或いは負Bレンズ群の像面側に配置し、変倍時に当該負Bレンズ群と共に像面に対して固定することが好ましい。開口絞りの配置をこのようにすることで、広角端から望遠端に変倍する際に、開口絞りの径を一定にすることができ、機械的に絞りの径を制御する撮像装置の光学系として好適に用いることができる。
【0038】
1−2.動作
1−2−1.変倍時の動作
当該ズームレンズでは、各レンズ群間の間隔を変えることにより変倍する。変倍時において、それぞれのレンズ群は各レンズ群間の間隔が変化する限り、変倍時に光軸方向に沿って移動する移動群であっても、変倍時に像面に対して固定される固定群であってもよい。
【0039】
例えば、変倍比の高いズームレンズを実現する上で、広角端から望遠端への変倍時、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が広がり、第2レンズ群と合成正レンズ群(第3レンズ群)との間隔は狭まることが好ましい。
【0040】
このとき、第1レンズ群は移動群であってもよいし、固定群であってもよい。第1レンズ群が移動群である場合(例えば、実施例2参照)、広角端における当該ズームレンズの光学全長を短くすることができる。すなわち、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群を像面側から物体側に移動させる場合、当該ズームレンズの鏡筒を入れ子構造にして、広角端における鏡筒長を短くすることが可能になる。そのため、製品としてのズームレンズユニット全体の小型化を図る上で有利である。
【0041】
一方、第1レンズ群を固定群とすれば(例えば、実施例1、実施例3及び実施例4参照)、他のレンズ群と比較すると外径の大きなレンズで構成される第1レンズ群が変倍時に移動しないため、変倍時におけるズームレンズ全体の重心変動を小さく抑えることができる。そのため、撮影時の操作性が良好になり好ましい。また、第1レンズ群を固定群とすれば、変倍時における鏡筒長が変化しないため、鏡筒構造をシンプルにすることができる。すなわち、鏡筒を入れ子構造とする必要がないため、カム構造等を設ける必要がなく、鏡筒内を密閉し、防塵・防水構造とすることも容易になる。また、鏡筒構造がシンプルになると、ズームレンズユニット全体の製造性も向上するため好ましい。
【0042】
また、当該ズームレンズにおいて、最も像面側に配置されるレンズ群、すなわち合成負レンズ群において最も像面側に配置されるレンズ群は固定群であることが好ましい。当該ズームレンズにいて、最も像面側に配置されるレンズ群(例えば、負Bレンズ群)を固定群とすることにより、鏡筒の像面側を密閉構造等することが容易になり、防塵・防水構造とすることが容易になる。また、鏡筒構造がシンプルになると、ズームレンズユニット全体の製造性も向上するため好ましい。
【0043】
なお、本件発明において、各レンズ群間の間隔が変化するとは、当該ズームレンズを構成する全レンズ群の間隔がそれぞれ変化することをいう。例えば、合成正レンズ群が複数の正のレンズ群から構成される場合、当該合成正レンズ群を構成する各レンズ群間の間隔が変倍時にそれぞれ変化するものとする。合成負レンズ群においても同様である。合成負レンズ群が負Aレンズ群及び負Bレンズ群から構成される場合、負Aレンズ群と負Bレンズ群との間隔が変倍時に変化する。合成負レンズ群が他のレンズ群を備える場合、この他のレンズ群と、当該レンズ群に隣接するレンズ群との間の間隔が変化する。
【0044】
1−2−2.合焦時の動作
当該ズームレンズにおいて、近接被写体への合焦を行う際に、当該ズームレンズを構成するレンズ群のうち、いずれかのレンズ群或いはその一部を光軸方向に移動させて合焦させることができる。
【0045】
当該ズームレンズでは、合成負レンズ群に含まれるレンズ群或いはその一部を光軸方向に移動させて合焦させることが特に好ましい。合成負レンズ群よりも物体側に配置されるレンズ群、すなわち、第1レンズ群、第2レンズ群、合成正レンズ群(第3レンズ群他)は、各レンズ群に入射する光束が十分に収束されていないため、負合成レンズ群を構成するレンズと比較すると、外径の大きなレンズで構成されている。そのため、合成負レンズ群よりも物体側に配置されるレンズ群を合焦群とすると、合焦群の軽量化及び小型化を図ることが困難である。
【0046】
これに対して、合成負レンズ群に含まれるレンズ群のいずれか或いはその一部を合焦群とすることにより、合焦群の軽量化及び小型化を図ることができ、高速オートフォーカスを実現する上でも有利である。また、合焦群の軽量化及び小型化を図ることにより、メカ部材の軽量化及び小型化を図ることができることなどから、当該ズームレンズユニット全体の軽量化及び小型化を図ることが可能になる。特に、合成負レンズ群に含まれる負Aレンズ群又は負Bレンズ群等の負の屈折力を有するレンズ群を合焦群とすることにより、正の屈折力を有するレンズ群を合焦群とする場合よりも合焦群の軽量化及び小型化を図ることが容易になる。
【0047】
特に、上述したとおり、当該合成負レンズ群において最も物体側に配置される負Aレンズ群を合焦群とすることが好ましい。合成負レンズ群において像面側に配置されるレンズ群には、負Aレンズ群により発散した像高の高い光束が入射するため、負Aレンズ群と比較すると光学有効径の大きいレンズにより構成される。そのため、負Aレンズ群は、合成負レンズ群に含まれる他の負の屈折力を有するレンズ群と比較すると、合焦群の軽量化及び小型化を一層図ることができる。そして、上述したとおり、負Aレンズ群をレンズユニット1つのみから構成することにより、合焦群のさらなる軽量化及び小型化を図ることができ、偏芯誤差等を抑制することができるため、製造上の観点からも好ましい。
【0048】
なお、レンズ群の一部とは、例えば、そのレンズ群が複数のレンズ(接合レンズを含む)で構成されている場合、レンズ群を構成する複数のレンズのうち、一部のレンズにより構成される部分レンズ群を意味する。例えば、上述したレンズユニットを部分レンズ群とすることができる。
【0049】
1−2−3.防振時の動作
当該ズームレンズでは、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを光軸と垂直方向に移動させることで、像を移動可能な防振群としてもよい。すなわち、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを光軸と垂直方向に移動可能な防振群とすることで、いわゆる手振れなどの像ブレが発生したときに、防振群を光軸と垂直方向に移動させることにより、像を移動させて、いわゆる手振れ補正(像ブレ補正)を行うことが可能になる。なお、防振群は複数枚のレンズにより構成してもよいが、上述したレンズユニット1つのみ、すなわち1枚の単レンズ又は1つの接合レンズで構成することが防振群の軽量化及び小型化を図る上で好ましい。
【0050】
1−3. 条件式
当該ズームレンズでは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することで、望遠端においてより長い焦点距離を達成すると共に、光学全長をより短くすることができ、且つ、光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0051】
1−3−1.条件式(1)
当該ズームレンズは、特に以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
【0052】
(1) 3.44 < βrt < 4.50
但し、
βrt: 前記合成負レンズ群の望遠端における合成横倍率
【0053】
条件式(1)は、合成負レンズ群の望遠端における合成横倍率を規定する式である。条件式(1)を満足することにより、望遠端においてテレフォト構成の強い屈折力配置となり、焦点距離に比して光学全長の短縮化を図ることができ、且つ、良好な収差補正が可能になる。テレフォト構成の強い屈折力配置とする上で、合成負レンズ群に含まれるレンズ群の数や、合成負レンズ群における各レンズ群のパワー配置によらず、合成負レンズ群の合成横倍率を条件式(1)を満足させることにより、テレフォト構成の強いズームレンズを実現することができる。
【0054】
条件式(1)の数値が下限値以下になると、合成負レンズ群の望遠端における合成横倍率が小さく、像の拡大効果が小さくなる。そのため、望遠比を小さくすることが困難になり、望遠端における光学全長の短縮化を図ることが困難になる。一方、条件式(1)の数値が上限値以上になると、合成負レンズ群の望遠端における合成横倍率が大きく、像の拡大効果が大きくなる。望遠比の小さいズームレンズを実現する上では好ましいが、収差補正を行うことが困難になる。そのため、光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になるため、好ましくない。
【0055】
上記効果を得る上で、条件式(1)の下限値は3.45であることが好ましい。また、条件式(1)の上限値は、4.40であることが好ましく、4.30であることがより好ましい。
【0056】
1−3−2.条件式(2)
当該ズームレンズは、特に以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0057】
(2) 0.10 < f3/√(fw×ft) < 0.46
但し、
f3 : 前記第3レンズ群の焦点距離
fw : 広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft : 望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
【0058】
条件式(2)は、広角端及び望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離の相乗平均に対する第3レンズ群の焦点距離の比を規定する式である。すなわち、実効焦点距離に対する当該第3レンズ群の焦点距離の比を規定している。条件式(2)を満足させることにより、当該ズームレンズの変倍域全域において、全系の焦点距離に対する第3レンズ群の屈折力が適切な範囲内となる。そのため、変倍時における第3レンズ群の移動量を適切な範囲内とすることができ、当該ズームレンズの小型化を図ることができる。これと同時に、球面収差や軸上色収差を良好に補正することができ、変倍域全域において良好な光学性能を得ることができる。
【0059】
これに対して、条件式(2)の数値が下限値以下になると、当該ズームレンズの実効焦点距離に対して、第3レンズ群の屈折力が強くなり過ぎるため、球面収差や軸上色収差を十分に補正することが困難になる。そのため、変倍域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になる。一方、条件式(2)の数値が上限値以上になると、当該ズームレンズの実効焦点距離に対して、第3レンズ群の屈折力が弱くなり過ぎるため、変倍比の大きいズームレンズを得るには、変倍時における第3レンズ群の移動量を大きくする必要がある。そのため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になるとともに、強いテレフォト構成をとることができず、望遠比が小さく、焦点距離に比して光学全長の短いズームレンズを実現することが困難になる。
【0060】
1−3−3.条件式(3)
当該ズームレンズにおいて、第3レンズ群は、g線とF線に対して以下の条件を満足する異常分散硝材からなる正レンズを少なくとも1枚有することが好ましい。
【0061】
(3) 0.012 < ΔPgF3 < 0.100
但し、
ΔPgF3: 硝材のC7(部分分散比:0.5393、νd:60.49)及びF2(部分分散比:0.5829、νd:36.30)の部分分散比とアッベ数(νd)の座標を通る直線を基準線としたときの、当該異常分散硝材(第3レンズ群の有する正レンズの少なくとも1枚に用いられる異常分散硝材(第3異常分散硝材))の部分分散比の基準線からの偏差
【0062】
第3レンズ群は正の屈折力を有するレンズ群である。一般に、正の屈折力を有するレンズ群では、高分散硝材(例えば、d線に対するアッベ数が50未満)からなる負レンズと、低分散硝材(例えば、d線に対するアッベ数が50以上)からなる正レンズとを組み合わせて用いることで色収差を行う。しかしながら、横軸に波長、縦軸に屈折率をとったときの高分散硝材の分散特性は2次曲線的であり、低分散硝材の分散特性は直線的である。そのため、これらの2つのレンズを組み合わせても色収差を完全に補正することは困難である。上記条件式(3)を満足する異常分散硝材は、上記分散特性が2次曲線的である。そのため、第3レンズ群が上記条件式(3)を満足する異常分散硝材からなる正レンズを少なくとも1枚有すれば、全波長域において色収差をより良好に補正することが可能になり、変倍域全域において軸上色収差がより良好に補正されたズームレンズを実現することができる。
【0063】
上記効果を得る上で、条件式(3)の下限値は、0.018であることがより好ましい。また、条件式(3)の上限値は、0.080であることがより好ましく、0.060であることがさらに好ましい。
【0064】
なお、g線(435.8nm)、F線(486.1nm)、d線(587.6nm)、C線(656.3nm)に対するガラスの屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとすると、アッベ数(νd)、部分分散比(PgF)は次のように表すことができる。
【0065】
νd = (Nd−1) /(NF−NC)
PgF = (Ng−NF)/(NF−NC)
【0066】
また、上記硝材のC7の座標及び硝材Fの座標は、部分分散比を縦軸、d線に対するアッベ数νdを横軸とした座標系における座標をいう。
【0067】
1−3−4.条件式(4)
当該ズームレンズにおいて、第1レンズ群は、g線とF線に対して以下の条件を満足する異常分散硝材からなる正レンズを少なくとも1枚有することが好ましい。
【0068】
(4) 0.012 < ΔPgF1 < 0.100
但し、
ΔPgF1 : 硝材のC7(部分分散比:0.5393、νd:60.49)及びF2(部分分散比:0.5829、νd:36.30)の部分分散比とアッベ数(νd)の座標を通る直線を基準線としたときの、当該異常分散硝材(第1レンズ群の有する正レンズの少なくとも1枚に用いられる異常分散硝材(第1異常分散硝材))の部分分散比の基準線からの偏差
【0069】
第1レンズ群も正の屈折力を有するレンズ群である。そのため、条件式(3)の場合と同様の理由から、第1レンズ群が上記条件式(4)を満足する異常分散硝材からなる正レンズを少なくとも1枚有すれば、全波長域において色収差をより良好に補正することが可能になり、特に望遠端において軸上色収差がより良好に補正されたズームレンズを実現することができる。
【0070】
上記効果を得る上で、条件式(4)の下限値は、0.018であることがより好ましい。また、条件式(4)の上限値は、0.080であることがより好ましく、0.060であることがさらに好ましい。
【0071】
1−3−5.条件式(5)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0072】
(5) 0.25 < f1/ft < 0.61
但し、
f1 : 第1レンズ群の焦点距離
【0073】
条件式(5)は、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対する第1レンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(5)を満足させることにより、望遠端において当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、第1レンズ群の屈折力が適正な範囲内となり、望遠端においてテレフォト構成の強い光学系とすることができる。そのため、望遠端における光学全長の一層の短縮化を図ることができ、望遠比の小さい小型のズームレンズを実現することができる。これと同時に、第1レンズ群の屈折力が適正な範囲内であるため、球面収差や軸上色収差を良好に行うことができ、変倍域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することがより容易になる。
【0074】
これに対して、条件式(5)の数値が下限値以下になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎるため、球面収差や軸上収差の補正が困難になる。そのため、変倍域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になる。一方、条件式(5)の数値が上限値以上になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、第1レンズ群の屈折力が弱くなる。この場合、望遠端においてテレフォト構成の強い光学系とすることが困難になり、望遠端における光学全長が長くなり、小型のズームレンズを実現することが困難になる。
【0075】
上記効果を得る上で、条件式(5)の下限値は、0.28であることがより好ましく、0.31であることがさらに好ましい。また、条件式(5)の上限値は、0.59であることがより好ましく、0.56であることがさらに好ましく、0.54であることが一層好ましく、0.50であることがより一層好ましい。
【0076】
1−3−6.条件式(6)
当該ズームレンズにおいて、第1レンズ群は、以下の条件を満足する異常分散硝材からなる負レンズを少なくとも1枚有することが好ましい。
【0077】
(6) −0.010 < ΔPgFn < 0.012
但し、
ΔPgFn : 硝材のC7(部分分散比:0.5393、νd:60.49)及びF2(部分分散比:0.5829、νd:36.30)の部分分散比とアッベ数(νd)の座標を通る直線を基準線としたときの、当該異常分散硝材(第1レンズ群の有する負レンズの少なくとも1枚に用いられる異常分散硝材(第2異常分散硝材))の部分分散比の基準線からの偏差
【0078】
条件式(3)、条件式(4)において述べたとおり、色収差の補正を行うには、通常、正の屈折力を有するレンズ群では、高分散硝材からなる負レンズと、低分散硝材からなる正レンズとを組み合わせて用いることで色収差を行うが、これらの2つのレンズを組み合わせても色収差を完全に補正することは困難である。そのため、分散特性が2次曲線的で表される上記条件式(6)を満足する異常分散硝材からなる負レンズを少なくとも1枚有すれば、全波長域において色収差をより良好に補正することが可能になる。この場合、第1レンズ群は、上記条件式(4)を満足する正レンズと共に、この条件式(6)を満足する負レンズを含むことにより、特に望遠端において軸上収差が極めて良好に補正されたズームレンズを得ることができる。なお、第1〜第3異常分散硝材は、同一の硝材であってもよいし、異なる硝材であってもよい。
【0079】
上記効果を得る上で、条件式(6)の下限値は、−0.009であることがより好ましく、−0.008であることがさらに好ましい。また、条件式(6)の上限値は、0.010であることがより好ましく、0.008であることがさらに好ましく、0.006であることが一層好ましい。
【0080】
1−3−7.条件式(7)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0081】
(7) 0.50 < Lt/ft < 0.73
但し、
Lt : 当該ズームレンズ全系の望遠端における最も物体側の面から像面までの距離
【0082】
条件式(7)は、当該ズームレンズ全系の望遠端における焦点距離に対する、当該ズームレンズ全系の光学全長(Lt)の比を規定する式である。すなわち、いわゆる当該ズームレンズの望遠比を示す式である。但し、当該条件式(7)において、「Lt」は、当該ズームレンズ全系の望遠端における最も物体側の面から像面までの距離であり、ダミーガラス等を含まない空気換算長である。条件式(7)を満足する場合、望遠端における当該ズームレンズの光学全長を焦点距離に比して十分に短縮化することができ、小型のズームレンズを実現することができる。これと同時に、望遠端においても球面収差や軸上色収差を良好に補正することができ、変倍域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0083】
これに対して、条件式(7)の数値が下限値以下になると、望遠比が小さくなり過ぎる。そのため、当該ズームレンズの小型化を図る上ではよいが、物体側及び像面側にそれぞれ強い正又は負の屈折力が配置されることになるため、球面収差や軸上色収差の補正が困難になる。また、組み立て敏感度が高くなるため、組み立て誤差に起因する収差が発生しやすくなる。そのため、高精度の組み立てや、高い部品精度が要求されるため、製造上の観点からも好ましくない。一方、条件式(7)の数値が上限値以上になると、望遠比が大きくなるため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。また、望遠端における焦点距離に対する光学全長も長くなる。
【0084】
上記効果を得る上で、条件式(7)の下限値は0.51であることがより好ましく、0.52であることがさらに好ましい。また、条件式(7)の上限値は0.71であることがより好ましく、0.69であることがさらに好ましく、0.67であることが一層好ましい。
【0085】
1−3−8.条件式(8)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0086】
(8) −1.83 < β3rt < −0.95
但し、
β3rt : 第3レンズ群以降に配置される全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0087】
条件式(8)は、当該ズームレンズにおいて第3レンズ群以降に配置される全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率を規定する式である。ここで、第3レンズ群以降に配置される全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率は、換言すれば、合成正レンズ群及び合成負レンズ群の望遠端における合成横倍率である。条件式(8)を満足することにより、望遠端における第3レンズ群が適正な位置に配置され、テレフォト構成の強いズームレンズを実現することがより容易になる。
【0088】
これに対して、条件式(8)の数値が下限値以下であると、望遠端において第3レンズ群の位置が物体側に配置されすぎるため、望遠端における当該ズームレンズの光学全長を短くすることが困難になるため好ましくない。上限式(8)の数値が上限値以上になると、望遠端において、第3レンズ群以降に配置されるレンズ群により大きな変倍率を稼ぐことができなくなる。そのため、望遠端において当該ズームレンズの長焦点距離化を図ることが困難になる。また、この場合、第1レンズ群及び第2レンズ群による合成焦点距離が長くなるため、テレフォト構成が弱くなる。そのため、焦点距離に比して光学全長の短いズームレンズを実現することが困難になる。
【0089】
上記効果を得る上で、条件式(8)の下限値は、−1.81であることがより好ましく、−1.78であることがさらに好ましく、−1.73であることが一層好ましく、−1.68であることがより一層好ましい。また、条件式(8)の上限値は、−0.98であることがより好ましく、−1.02であることがさらに好ましく、−1.06であることが一層好ましく、−1.10であることがより一層好ましい。
【0090】
1−3−9.条件式(9)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0091】
(9) −4.50 < β2t < −0.90
但し、
β2t : 第2レンズ群の望遠端における横倍率
【0092】
条件式(9)は、望遠端における第2レンズ群の横倍率を規定する式である。条件式(9)を満足させることにより、第2レンズ群により得られる像の拡大効果が適切な範囲内となり、テレフォト構成の強いズームレンズを実現することができる。これと同時に、良好な収差補正を行うことが可能になる。そのため、当該ズームレンズの高性能化及び小型化を両立させることがより容易になる。
【0093】
これに対して、条件式(9)の数値が下限値以下であると、望遠端における第2レンズ群の像の拡大効果が大きくなり過ぎるため、第1レンズ群で発生した収差が第2レンズ群で大きく拡大される。光学性能の高いズームレンズを実現するには、第1レンズ群及び第2レンズ群を構成するレンズ枚数をそれぞれ増加させ、第1レンズ群における収差の発生を抑制すると共に、第2レンズ群において第1レンズ群で発生した収差を補正する必要が生じる。そのため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる他、軽量化及び低コスト化の観点からも好ましくない。一方、条件式(9)の数値が上限値以上であると、望遠端における第2レンズ群の像の拡大効果が小さくなる。そのため、第1レンズ群及び第2レンズ群の合成焦点距離が長くなり、テレフォト構成が弱くなるため、光学全長の短縮化を図ることが困難になる。
【0094】
上記効果を得る上で、条件式(9)の下限値は、−4.00であることがより好ましく、−3.60であることがさらに好ましく、−3.40であることが一層好ましく、−2.90であることがより一層好ましく、−2.40であることがさらに一層好ましい。また、条件式(9)の上限値は、−0.95であることがより好ましく、−0.99であることがさらに好ましく、−1.12であることが一層好ましく、−1.25であることがより一層好ましく、−1.35であることがさらに一層好ましい。
【0095】
1−3−10.条件式(10)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0096】
(10) 0.95 < βLAt/βLBt < 4.00
但し、
βLAt : 負Aレンズ群の望遠端における横倍率
βLBt : 負Bレンズ群の望遠端における横倍率
【0097】
条件式(10)は、合成負レンズ群に含まれる負Aレンズ群と負Bレンズ群の望遠端における横倍率の比を規定する式である。条件式(10)を満足させることにより、大型の撮像素子を用いる場合でも、当該合成負レンズ群の径方向の小型化を図ることが容易になり、且つ、少ないレンズ枚数で光学性能の良好なズームレンズを実現することができる。
【0098】
これに対して、条件式(10)の数値が下限値以下になると、望遠端における負Aレンズ群による像の拡大効果が、負Bレンズ群による像の拡大効果よりも小さくなりすぎる。そのため、大型の撮像素子に対応させるには、当該合成負レンズ群を外径の大きなレンズを用いて構成する必要があるため、合成負レンズ群の径方向の小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(10)の数値が上限値以上になると、望遠端における負Aレンズ群による像の拡大効果が、負Bレンズ群による像の拡大効果よりも大きく成りすぎる。負Aレンズ群において発散した光束が負Bレンズ群に入射するため、負Bレンズ群の径方向の小型化を図ることが困難になる。これと同時に、負Aレンズ群における像面湾曲等の収差発生量が多くなる。そのため、良好な光学性能を実現するには、これらを補正するためのレンズ枚数が増加するため、負Aレンズ群が大型化し、当該ズームレンズの光学全長が長くなり、且つ、コスト高となる。
【0099】
上記効果を得る上で、条件式(10)の下限値は、0.97であることがより好ましい。また、条件式(10)の上限値は、3.00であることがより好ましく、2.70であることがさらに好ましく、2.50であることが一層好ましい。
【0100】
1−3−11.条件式(11)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
【0101】
(11) 0.05 < CrLAr/ft < 0.18
但し、
CrLAr : 負Aレンズ群の最も像面側の面の曲率半径
【0102】
条件式(11)は、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、合成負レンズ群において最も物体側に配置される負Aレンズ群の最も像面側に配置される面の曲率半径の比を規定する式である。条件式(11)を満足させることにより、負Aレンズ群の最も像面側の面の曲率半径が適正な範囲内となり、像面湾曲を良好に補正することが可能になり、光学性能の良好なズームレンズを実現することがより容易になる。
【0103】
これに対して、条件式(11)の数値が下限値以下になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して負Aレンズ群の最も像面側の面の曲率半径が小さくなりすぎるため、像面湾曲の発生量が大きくなり、その補正が困難になる。一方、条件式(11)の数値が上限値以上になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して負Aレンズ群の最も像面側の面の曲率半径が大きくなり過ぎるため、像面湾曲の補正不足となり好ましくない。
【0104】
上記効果を得る上で、条件式(11)の下限値は0.06であることがより好ましく、0.07であることがさらに好ましい。また、条件式(11)の上限値は0.17であることがより好ましく、0.16であることがさらに好ましい。
【0105】
1−3−12.条件式(12)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
【0106】
(12) −0.85 < f2/fw < −0.10
但し、
f2 : 第2レンズ群の焦点距離
【0107】
条件式(12)は、広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対する第2レンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(12)を満足させることにより、広角端における第2レンズ群の屈折力を適正な範囲内とすることができ、広角端において発生しやすい像面湾曲や歪曲収差を良好に補正することが可能になる。そのため、変倍域全域において高い光学性能のズームレンズを実現することがより容易になる。また、第2レンズ群において十分な像の拡大効果が得られるため、第1レンズ群を構成するレンズの外径を小さくすることが可能になり、当該ズームレンズの径方向の小型化を図ることが容易になる。
【0108】
これに対して、条件式(12)の数値が下限値以下になると、広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、第2レンズ群の屈折力が小さくなる。そのため、第2レンズ群において十分な像の拡大効果を得ることができず、変倍比の高いズームレンズを実現するには、第1レンズ群を外径の大きなレンズで構成する必要があり、当該ズームレンズの径方向の小型化を図ることが困難になる他、テレフォト構成も弱くなるため、光学全長の短縮化が困難になり、好ましくない。一方、条件式(12)の数値が上限値以上になると、広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、第2レンズ群の屈折力が大きくなる。そのため、広角端において像面湾曲や歪曲収差が発生しやすく、これらを良好に補正することが困難になり、好ましくない。
【0109】
上記効果を得る上で、条件式(12)の下限値は、−0.80であることがより好ましく、−0.75であることがさらに好ましく、−0.72であることが一層好ましく、−0.68であることがより一層好ましく、−0.60であることがさらに一層好ましく、−0.55であることがなお一層好ましく、−0.49であることが最も好ましい。また、条件式(12)の上限値は、−0.12であることがより好ましく、−0.14であることがさらに好ましく、−0.16であることが一層好ましく、−0.18であることがより一層好ましい。
【0110】
1−3−13.条件式(13)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0111】
(13) 2.50 < |f1/f2| < 5.10
但し、
f1 : 第1レンズ群の焦点距離
f2 : 第2レンズ群の焦点距離
【0112】
条件式(13)は第2レンズ群の焦点距離に対する第1レンズ群の焦点距離の比を絶対値で規定する式である。条件式(13)を満足させることにより、第2レンズ群の焦点距離に対する第1レンズ群の屈折力が適正な範囲内となり、広角端において歪曲収差の良好な補正が可能になると共に、望遠端において球面収差、軸上色収差の良好な補正が可能になる。そのため、変倍域全域で光学性能の高いズームレンズを実現することがより容易になる。また、望遠端においてテレフォト構成の強いズームレンズとすることが可能になるため、光学全長の短縮化を図ることが容易になる。
【0113】
これに対して、条件式(13)の数値が下限値以下になると、第2レンズ群の焦点距離に対する第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎる。そのため、広角端における歪曲収差や、望遠端における球面収差、軸上色収差の補正が困難になり、変倍域全域で光学性能の高いズームレンズを実現することが困難になる。一方、条件式(13)の数値が上限値以上になると、第2レンズ群の焦点距離に対する第1レンズ群の屈折力が弱くなりすぎる。そのため、望遠端においてテレフォト構成の強いズームレンズとすることが困難になり、光学全長の短縮化を図ることが困難になる。
【0114】
上記効果を得る上で、条件式(13)の下限値は、2.80であることがより好ましく、2.95であることがさらに好ましく、3.10であることが一層好ましく、3.35であることがより一層好ましい。また、条件式(13)の上限値は、4.95であることがより好ましく、4.90であることがさらに好ましく、4.85であることが一層好ましく、4.80であることがより一層好ましく、4.70であることがさらに一層好ましく、4.60であることが最も好ましい。
【0115】
1−3−14.条件式(14)
当該ズームレンズは、上述した防振群を備えることが好ましい。当該ズームレンズが防振群を備える場合、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0116】
(14) −6.00 < (1−βvct)×βvcrt < −0.50
但し、
βvct : 防振群の望遠端における横倍率
βvcrt: 防振群より像側に配置されたすべてのレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0117】
条件式(14)は、当該ズームレンズが上記防振群を備えるとき、防振時における当該防振群の光軸と垂直方向の移動量と、像面における像の移動量との比を規定する式である。
ここで、条件式(14)により規定される数値範囲は負である。従って、当該ズームレンズにおいて、防振群は負の屈折力を有するレンズ又は、全体で負の屈折力を有するレンズ群からなることが好ましい。正の屈折力を有するレンズ等と比較して、負の屈折力を有するレンズ等を防振群とすることにより、防振群の軽量化を図ることができ、防振群を駆動するためのメカ部材の軽量化、小型化を図ることができる。そして、条件式(14)を満足させることにより、防振時における防振群の移動量を適正な範囲内とすることができ、いわゆる手振れ補正(像ブレ補正)を良好に行うことが可能になる。
【0118】
これに対して、条件式(14)の数値が下限値以下になると、防振時における防振群の移動量に対して、像面における像の移動量が大きくなりすぎる。そのため、いわゆる手振れ補正時に、像面における像の移動量を適切にするには、防振群の移動を高精度に制御する必要があり、制御が困難になるため好ましくない。一方、条件式(14)の数値が上限値以上になると、防振時における防振群の移動量に対して、像面における像の移動量が小さくなりすぎる。そのため、手振れ補正時に、像面における像の移動量を適切にするには、防振群を光軸に垂直方向に大きく移動させる必要がある。この場合、鏡筒径を大きくする必要がある他、防振群を移動させるためのメカ部材も大型化し、当該ズームレンズユニット全体が大型化し、重量化する。
【0119】
当該ズームレンズユニット全体の小型化を図る上で、防振群は合成負レンズ群中に配置されることが好ましい。
【0120】
また、上記効果を得る上で、条件式(14)の下限値は、−5.00であることがより好ましく、−4.00であることがさらに好ましく、−3.00であることが一層好ましく、−2.00であることがより一層好ましい。また、条件式(14)の上限値は、−0.80であることがより好ましく、−0.90であることがさらに好ましく、−1.10であることが一層好ましく、−1.30であることがより一層好ましく、−1.50であることがさらに一層好ましい。
【0121】
2. 撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0122】
本件発明において、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。
【0123】
特に、上記ズームレンズは、広角端においても一眼レフレックスカメラやミラーレス一眼カメラ等の交換レンズシステムに好適なフランジバックを確保することができる。従って、当該撮像装置は、これらの交換レンズシステムを適用した撮像装置に好適である。
【0124】
このような撮像装置の具体的構成例を
図21に示す。
図21は、レンズ交換式の撮像装置1の断面を模式的に表した図である。
図21に示すように、当該レンズ交換式の撮像装置1は、ズームレンズを収容した鏡筒部2が、当該撮像装置1のマウント部3に着脱自在に孤影されている。当該撮像装置1は、ズームレンズの像面側に撮像素子4を備え、この撮像素子4の撮像面にはズームレンズによって光学像が結像される。撮像面に結像された光学像は、当該撮像素子4において電気信号に変換される。当該電気信号に基づいて生成された画像データは、撮像装置1の背面に設けられたバックモニタ等の画像出力装置に出力される。
【0125】
このような撮像装置は、上記撮像素子により電気的信号に変換された光学像(画像データ)に対して、電気的に加工する画像処理部を有し、当該画像処理部により画像データに対して画像処理を施すことができるように構成されていることが好ましい。例えば、当該画像処理部は、上記ズームレンズを用いて被写体を撮像したときに得られる光学像は、理想的な被写体像に対して、上記ズームレンズの種々の収差に起因する歪み(理想的な被写体像からのズレ)を有する場合がある。そこで、上記ズームレンズの収差特性に基づき、予めこれらの収差を補正するための補画像補正用のデータを用意しておき、その画像補正用のデータを用いて、画像処理部により、上記画像データを電気的に加工することにより、光学像の歪みが補正された画像データを生成するようにすることができる。なお、当該撮像装置は、上記画像補正用のデータが予め格納された歪み補正データ格納部を有していてもよいし、当該画像補正データを格納可能に構成されたデータ格納部を有していてもよい。
【0126】
また、当該撮像装置は、無線通信手段等の通信手段と、当該通信手段等を介して、外部機器に格納された画像補正用のデータを取得するデータ取得部を備え、上記通信手段等を介して取得した画像補正用のデータを用いて、上記画像処理部により、上記画像データを電気的に加工してもよい。画像処理に関するこれらの具体的な態様は特に限定されるものではない。なお、理想的な被写体像とは、収差のないレンズ(ズームレンズ)を用いて、被写体を撮像したときに得られる光学像を指すものとする。
【0127】
当該撮像装置が、上記画像処理部を備え、例えば、歪曲収差に起因する光学像の歪みを、予め用意された歪曲収差補正用のデータを用いて、上記画像処理部により歪曲収差を補正可能に構成されている場合、上記ズームレンズにおいて、合成負レンズ群の負の屈折力を少ないレンズ枚数で強くすることができ、合成負レンズ群の小型化及び軽量化を図ることができ、当該ズームレンズの光学全長及び径方向の小型化も図ることができて好ましい。
【0128】
また、当該撮像装置が、上記画像処理部を備え、例えば、倍率色収差に起因する光学像の歪みを、予め用意された倍率色収差補正用のデータを用いて、上記画像処理部により倍率色収差を補正可能に構成してもよい。この場合、色収差補正に要するレンズ枚数を削減することができるため、当該ズームレンズの小型化及び軽量化を図ることができ、且つ、低コスト化を図ることも可能になる。
【0129】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例のズームレンズは、上記撮像装置(光学装置)に用いられるズームレンズ(変倍光学系)であり、特に、レンズ交換撮像システムを適用した撮像装置に好ましく適用することができる。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側であり、右方が像側である。
【実施例1】
【0130】
(1)光学系の構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成され、各レンズ群の間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズである。
【0131】
実施例1のズームレンズにおいて、第3レンズ群G3が本件発明にいう合成正レンズ群である。実施例1では、合成正レンズ群は第3レンズ群G3のみから構成されている。また、実施例1のズームレンズにおいて、第4レンズ群G4及び第5レンズ群G5がそれぞれ本件発明にいう負Aレンズ群及び負Bレンズ群であり、この2つのレンズ群により合成負レンズ群が構成されている。開口絞りSは、第5レンズ群G5の物体側に配置されている。
【0132】
当該ズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2との間隔が広く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が狭く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が広く、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が広くなるように、第2レンズ群G2が像面側に移動し、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4がそれぞれ像面側に凸の軌跡を描きながら物体側に移動する。このとき、第1レンズ群G1及び第5レンズ群G5は光軸方向に固定される。
【0133】
当該ズームレンズでは、第3レンズ群の最も物体側に第11面及び第12面を有する両凸レンズが配置されている。第4レンズ群G4は第18面、第19面及び第20面(表1参照)を有する接合レンズ(レンズユニット)から構成され、当該第4レンズ群G4を光軸方向に移動させることで、近接被写体に合焦する合焦群として用いる。さらに、第5レンズ群G5に含まれる第25面、第26面及び第27面を有する接合レンズは、光軸と垂直方向に移動可能に構成されており、当該ズームレンズはこの接合レンズを防振群として用い、当該防振群を光軸と垂直方向に移動させることで、像を移動させて、いわゆる手振れ補正を行うことができる。
【0134】
なお、図中、当該ズームレンズの像面側に示す「I」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、各レンズ群の具体的なレンズ構成は
図1に示すとおりである。これらの符号は他の実施例で示す各図においても同様のものを示すため、以下では説明を省略する。
【0135】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例1について説明する。表1に、当該ズームレンズのレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「vd」はd線(波長λ=587.60nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、開口絞り(絞りS)は、面番号の次に「STOP」を付して示している。さらに、表1において、「ΔPgF」は、硝材のC7(部分分散比:0.5393、νd:60.49)及びF2(部分分散比:0.5829、νd:36.30)の部分分散比とアッベ数(νd)の座標を通る直線を基準線としたときの、当該硝材の部分分散比の基準線からの偏差を示し、「H」は光学有効径を示す。
【0136】
表2に、当該ズームレンズの各焦点距離(f)(望遠端、中間焦点距離、広角端)におけるFナンバー(Fno)、半画角(ω)、像高(Y)、光学全長(TL)を示す。表3に、変倍時における可変間隔を示し、表4に、合焦時における可変間隔を示す。なお、変倍時における撮影距離は無限遠とし、合焦時における撮影距離は表中記載の値とした。表5に各レンズ群に含まれる面番号及び各レンズ群の焦点距離を示す。各表において長さに関する数値の単位は全て「mm」であり、角度に関する数値の単位は全て「°」である。
【0137】
なお、これらの表に関する事項は、他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0138】
図2〜
図4に、当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。それぞれの縦収差図は、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を示す図において、縦軸は開放F値(FNO)との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線はd線、短破線はg線、長破線はC線(λ=656.28nm)を表している。非点収差を示す図において、縦軸は像高(Y)、横軸にデフォーカスをとり、実線はd線のサジタル方向(X)、破線はd線のメリディオナル方向(Y)を表している。歪曲収差を表す図において、縦軸は像高(Y)、横軸に%をとる。
【0139】
図5に、当該ズームレンズの望遠端の無限遠物体合焦状態における横収差図を示す。
図5に向かって左側(Dec=0.0)には防振補正を行っていない基本状態における横収差を示し、上段は最大像高の70%の像点における横収差、中段は軸上像点における横収差、下段は最大像高の−70%の像点における横収差を示している。また、
図5に向かって右側(Dec=0.750)は、防振群を光軸と垂直な方向に0.750mm移動した防振補正時(防振角度0.154°)における横収差を示し、上段は最大像高の70%の像点における横収差、中段は軸上像点における横収差、下段は最大像高の−70%の像点における横収差を示している。なお、各図において、横軸は瞳面上での主光線からの距離を表し、実線はd線、短破線はg線、長破線はC線に相当する波長の特性を示している
【0140】
なお、これらの収差を表示する順序、並び、各図において実線、波線等が示すものは他の実施例で示す各図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0141】
また、条件式(1)、条件式(2)、条件式(5)、条件式(7)から条件式(14)の数値を表24に示す。条件式(3)、条件式(4)、条件式(6)に関する値は、表1を参照することができる。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
【表5】
【実施例2】
【0147】
(1)光学系の構成
図6は、本件発明に係る実施例2のズームレンズの構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成され、各レンズ群の間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズである。
【0148】
実施例2のズームレンズにおいて、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4により本件発明にいう合成正レンズ群が構成されている。また、実施例2のズームレンズにおいて、第5レンズ群G5及び第6レンズ群G6がそれぞれ本件発明にいう負Aレンズ群及び負Bレンズ群であり、この2つのレンズ群により合成負レンズ群が構成されている。開口絞りSは、第4レンズ群G4の像面側に配置されている。
【0149】
当該ズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2との間隔が広く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が狭く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が狭く、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が広く、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6との間が狭くなるように、第1レンズ群が物体側に移動し、第2レンズ群G2が像面側に移動し、第3レンズ群G3及び第5レンズ群G5がそれぞれ像面側に凸の軌跡を描きながら像面側に移動する。このとき、第4レンズ群G4及び第6レンズ群G6は光軸方向に固定される。
【0150】
当該ズームレンズでは、第3レンズ群の最も物体側に第11面及び第12面を有する両凸レンズが配置されている。第5レンズ群G5は第22面、第23面及び第24面(表6参照)を有する接合レンズ(レンズユニット)から構成され、当該第5レンズ群G5を光軸方向に移動させることで、近接被写体に合焦する合焦群として用いる。さらに、第6レンズ群G6に含まれる第28面、第29面及び第30面を有する接合レンズは、光軸と垂直方向に移動可能に構成されており、当該ズームレンズはこの接合レンズを防振群として用い、当該防振群を光軸と垂直方向に移動させることで、像を移動させて、いわゆる手振れ補正を行うことができる。
【0151】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例2について説明する。表6に、当該ズームレンズのレンズデータを示す。表7に、当該ズームレンズの各焦点距離(f)におけるFナンバー(Fno)、半画角(ω)、像高(Y)、光学全長(TL)を示す。表8に、変倍時における可変間隔を示し、表9に、合焦時における可変間隔を示す。さらに、表10に各焦点距離における開口絞り径を示す。そして、表11に各レンズ群に含まれる面番号及び各レンズ群の焦点距離を示す。また、条件式(1)、条件式(2)、条件式(5)、条件式(7)から条件式(14)の数値を表24に示す。条件式(3)、条件式(4)、条件式(6)に関する値は、表6を参照することができる。
【0152】
図7〜
図9に、当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。また、
図10に、当該ズームレンズの横収差図を示す。
【0153】
【表6】
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
【表9】
【0157】
【表10】
【0158】
【表11】
【実施例3】
【0159】
(1)光学系の構成
図11は、本件発明に係る実施例3のズームレンズの構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成され、各レンズ群の間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズである。
【0160】
実施例3のズームレンズにおいて、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4により本件発明にいう合成正レンズ群が構成されている。また、実施例3のズームレンズにおいて、第5レンズ群G5及び第6レンズ群G6がそれぞれ本件発明にいう負Aレンズ群及び負Bレンズ群であり、この2つのレンズ群により合成負レンズ群が構成されている。開口絞りSは、第4レンズ群G4の像面側に配置されている。
【0161】
当該ズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2との間隔が広く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が狭く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が広く、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が狭く、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6との間が広くなるように、第2レンズ群G2が像面側に移動し、第3レンズ群G3及び第5レンズ群G5がそれぞれ像面側に凸の軌跡を描きながら物体側に移動する。このとき、第1レンズ群G1、第4レンズ群G4及び第6レンズ群G6は光軸方向に固定される。
【0162】
当該ズームレンズでは、第3レンズ群の最も物体側に第11面及び第12面を有する両凸レンズが配置されている。第5レンズ群G5は第22面、第23面及び第24面(表12参照)を有する接合レンズ(レンズユニット)から構成され、当該第5レンズ群G5を光軸方向に移動させることで、近接被写体に合焦する合焦群として用いる。さらに、第6レンズ群G6に含まれる第28面、第29面及び第30面を有する接合レンズは、光軸と垂直方向に移動可能に構成されており、当該ズームレンズはこの接合レンズを防振群として用い、当該防振群を光軸と垂直方向に移動させることで、像を移動させて、いわゆる手振れ補正を行うことができる。
【0163】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例3について説明する。表12に、当該ズームレンズのレンズデータを示す。表13に、当該ズームレンズの各焦点距離(f)におけるFナンバー(Fno)、半画角(ω)、像高(Y)、光学全長(TL)を示す。表14に、変倍時における可変間隔を示し、表15に、合焦時における可変間隔を示す。さらに、表16に各焦点距離における開口絞り径を示す。そして、表17に各レンズ群に含まれる面番号及び各レンズ群の焦点距離を示す。また、条件式(1)、条件式(2)、条件式(5)、条件式(7)から条件式(14)の数値を表24に示す。条件式(3)、条件式(4)、条件式(6)に関する値は、表12を参照することができる。
【0164】
図12〜
図14に、当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。また、
図15に、当該ズームレンズの横収差図を示す。
【0165】
【表12】
【0166】
【表13】
【0167】
【表14】
【0168】
【表15】
【0169】
【表16】
【0170】
【表17】
【実施例4】
【0171】
(1)光学系の構成
図16は、本件発明に係る実施例4のズームレンズの構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成され、各レンズ群の間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズである。
【0172】
実施例4のズームレンズにおいて、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4により本件発明にいう合成正レンズ群が構成されている。また、実施例4のズームレンズにおいて、第5レンズ群G5及び第6レンズ群G6がそれぞれ本件発明にいう負Aレンズ群及び負Bレンズ群であり、この2つのレンズ群により合成負レンズ群が構成されている。開口絞りSは、第4レンズ群G4の像面側に配置されている。
【0173】
当該ズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2との間隔が広く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が狭く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が広く、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が狭く、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6との間が広くなるように、第2レンズ群G2が像面側に移動し、第3レンズ群G3及び第5レンズ群G5がそれぞれ像面側に凸の軌跡を描きながら物体側に移動する。このとき、第1レンズ群G1、第4レンズ群G4及び第6レンズ群G6は光軸方向に固定される。
【0174】
当該ズームレンズでは、第3レンズ群の最も物体側に第11面及び第12面を有する両凸レンズが配置されている。第5レンズ群G5は第22面、第23面及び第24面(表18参照)を有する接合レンズ(レンズユニット)から構成され、当該第5レンズ群G5を光軸方向に移動させることで、近接被写体に合焦する合焦群として用いる。さらに、第6レンズ群G6に含まれる第28面、第29面及び第30面を有する接合レンズは、光軸と垂直方向に移動可能に構成されており、当該ズームレンズはこの接合レンズを防振群として用い、当該防振群を光軸と垂直方向に移動させることで、像を移動させて、いわゆる手振れ補正を行うことができる。
【0175】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例4について説明する。表18に、当該ズームレンズのレンズデータを示す。表19に、当該ズームレンズの各焦点距離(f)におけるFナンバー(Fno)、半画角(ω)、像高(Y)、光学全長(TL)を示す。表20に、変倍時における可変間隔を示し、表21に、合焦時における可変間隔を示す。さらに、表22に各焦点距離における開口絞り径を示す。そして、表23に各レンズ群に含まれる面番号及び各レンズ群の焦点距離を示す。また、条件式(1)、条件式(2)、条件式(5)、条件式(7)から条件式(14)の数値を表24に示す。条件式(3)、条件式(4)、条件式(6)に関する値は、表18を参照することができる。
【0176】
図17〜
図19に、当該ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。また、
図20に、当該ズームレンズの横収差図を示す。
【0177】
【表18】
【0178】
【表19】
【0179】
【表20】
【0180】
【表21】
【0181】
【表22】
【0182】
【表23】
【0183】
【表24】
【0184】
本発明の効果を先行技術と比較すると,望遠端での望遠比については本発明の実施例が0.54〜0.64であるのに対し、先行技術文献1の実施例1が1.38、先行技術文献2の実施例4が0.68であり、望遠端での光学全長の小型化に効果があることがわかる。