特許第6859246号(P6859246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6859246サイフォン式散気装置、膜分離活性汚泥装置及び水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859246
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】サイフォン式散気装置、膜分離活性汚泥装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20210405BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20210405BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B01D65/02
   C02F3/12
   C02F1/44
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-207065(P2017-207065)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-76857(P2019-76857A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】李 胤制
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0114292(US,A1)
【文献】 特開2003−340250(JP,A)
【文献】 特開昭64−164495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0076806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C02F 3/12
C02F 3/14−3/26;7/00
B01F 1/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に曝気を行うサイフォン式散気装置であって、
サイフォン式散気管と、回転機構と、を備え、
前記サイフォン式散気管の内部にはサイフォン室が形成され、前記サイフォン式散気管の下部に前記サイフォン室の上流に位置する処理水流入口が形成され、前記サイフォン式散気管の上部に前記サイフォン室の下流に位置する散気穴が形成され、
前記回転機構は、前記サイフォン式散気管の上下が逆転するように前記サイフォン式散気管を回転させる機構である、サイフォン式散気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイフォン式散気装置と、
活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、
前記サイフォン式散気管及び前記膜モジュールが設置されている膜分離槽とを備える、膜分離活性汚泥装置。
【請求項3】
活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理し、
活性汚泥処理した汚泥含有処理水を請求項2に記載の膜分離活性汚泥装置により膜分離処理する、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイフォン式散気装置、膜分離活性汚泥装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業廃水や生活廃水は、廃水中に含まれる有機物等を取り除く処理が施されてから、工業用水として再利用されるか、もしくは河川等に放流される。工業廃水等の処理方法としては、例えば活性汚泥法が挙げられる。活性汚泥法は、曝気して好気的な微生物に有機物等を分解させる方法である。
【0003】
また近年では、活性汚泥法による処理と、膜モジュールによる膜ろ過とを組み合わせた膜分離活性汚泥(MBR)法による処理が行われるようになってきている。MBR法による処理では、膜ろ過を継続するに従って分離膜表面に有機物等が堆積することにより、ろ過流量の低下や、膜間差圧の上昇が生じることがある。そこで、膜表面に堆積した汚泥を効率的に除去する目的で、膜モジュールの下方に散気管が設けられる。散気管から吹き出された気泡は被処理液との密度差により上昇し、気泡が膜表面に接触するときの衝撃、もしくは気泡の発生に伴う水流によって膜自体が振動して膜表面への有機物等の堆積が抑制される。
【0004】
気泡によって膜に加わるせん断応力は気泡の浮上速度に比例するため、膜表面の洗浄効果を高めるには気泡の浮上速度を高くする必要がある。一方、気泡の浮上速度を高めるにはエネルギー消費量が増える。そこで、近年では、サイフォン原理を利用して大きな気泡を間欠的に吐出できるサイフォン式散気管が注目されている。しかし、サイフォン式散気管では、管内で水位が常に変動し、汚泥の流入と排出が繰り返される。そのため、管内で汚泥が乾燥した状態で堆積して固まりやすく、汚泥の除去が困難になり、汚泥の堆積が進行して散気管が詰まりやすい。
【0005】
汚泥による詰まりを抑制するサイフォン式散気管としては、動作中に管内の液面より下方となる位置に配置したガス注入点からガスを注入し、該ガスにより管内の液体を上方に噴射させ、噴射した液体により汚泥を粉砕するサイフォン式散気管が提案されている(特許文献1)。また、散気管において動作中に空気が溜まる部分から定期的にエア抜きできるようにしたサイフォン式散気管も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−528833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、管内で液体を上方に噴射させる方法では、その噴射に伴って汚泥も飛び散るため、飛び散った汚泥が管内の空気が溜まっている部分の上部に付着して乾燥しやすく、汚泥の堆積を逆に促進するおそれがある。また、定期的にエア抜きする方法では、管内で汚泥が乾燥することを抑制する効果があるが、既に乾燥して固まった汚泥を除去することは難しく、汚泥の堆積が進行することを充分に抑制できない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、散気管内が詰まることを安定して抑制できるサイフォン式散気装置、膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を有する。
[1]間欠的に曝気を行うサイフォン式散気装置であって、
サイフォン式散気管と、回転機構と、を備え、
前記サイフォン式散気管の内部にはサイフォン室が形成され、前記サイフォン式散気管の下部に前記サイフォン室の上流に位置する処理水流入口が形成され、前記サイフォン式散気管の上部に前記サイフォン室の下流に位置する散気穴が形成され、
前記回転機構は、前記サイフォン式散気管の上下が逆転するように前記サイフォン式散気管を回転させる機構である、サイフォン式散気装置。
[2][1]に記載のサイフォン式散気装置と、
活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、
前記サイフォン式散気管及び前記膜モジュールが設置されている膜分離槽とを備える、膜分離活性汚泥装置。
[3]活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理し、
活性汚泥処理した汚泥含有処理水を[2]に記載の膜分離活性汚泥装置により膜分離処理する、水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサイフォン式散気管及び膜分離活性汚泥装置を用いれば、散気管内が詰まることを安定して抑制できる。
本発明の水処理方法によれば、サイフォン式散気管内が詰まることを安定して抑制でき、水処理を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の水処理方法に用いる水処理装置の一例を示した模式図である。
図2】本発明におけるサイフォン式散気管の一例を示した斜視図である。
図3図2のサイフォン式散気管のI−I断面図である。
図4】サイフォン式散気装置の通常状態の作動機構を説明する断面図である。
図5】サイフォン式散気管を上下反転させた様子を示した断面図である。
図6】サイフォン式散気管を上下反転した状態の作動機構を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本明細書における「上下方向」及び「横方向」とは、サイフォン式散気管の筐体の上壁を上側、底壁を下側とした状態における上下方向及び横方向を意味する。
【0013】
[水処理装置]
図1は、本発明の水処理方法に用いる水処理装置の一例である水処理装置1000を示した模式図である。水処理装置1000は、図1に示すように、活性汚泥処理槽11と、活性汚泥処理槽11の後段に設けられた膜分離活性汚泥装置100(以下、「MBR装置100」と称することがある。)と、MBR装置100の後段に設けられた処理水槽41とを備えている。さらに、水処理装置1000は、図示を省略するが、活性汚泥処理槽11に流入する原水の流量を調整する流量調整槽、MBR装置100から余剰汚泥を引く抜く引抜ポンプ、MBR装置100に薬液や希釈水を送液する送液手段、及び処理水槽41から工場や河川等に処理水を放流する放流手段等を備えている。
【0014】
活性汚泥処理槽11は、活性汚泥処理を行うために活性汚泥を充填するものである。
活性汚泥処理槽11には、第一の流路12と第二の流路13とが接続されている。第一の流路12は、工場や家庭等から排出された原水を活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。第二の流路13は、活性汚泥処理槽11から排出された汚泥含有処理水(被処理水)をMBR装置100に流入させる流路である。
【0015】
活性汚泥処理槽11内には槽内を好気条件に維持するために散気装置14が設置されている。
散気装置14は、空気を活性汚泥処理槽11内に散気する散気管14aと、散気管14aに空気を供給する導入管14bと、空気を送気するブロア14cとを備えている。
散気管14aとしては、ブロア14cから供給される空気を上方へ吐出できるものであれば特に限定されず、例えば、穴あきの単管やメンブレンタイプのものが挙げられる。
【0016】
処理水槽41は、汚泥含有処理水を膜分離した後の処理水を貯留するものである。
【0017】
(膜分離活性汚泥装置)
MBR装置100は、膜分離槽21と、膜モジュール22と、膜モジュール22の下方に設けられたサイフォン式散気装置10とを備えている。第二の流路13は、膜分離槽21に接続されている。膜モジュール22とサイフォン式散気装置10は、膜分離槽21内に配置されている。
【0018】
膜分離槽21は、活性汚泥処理槽11から送られてきた、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水を溜めるものである。
【0019】
膜分離槽21と活性汚泥処理槽11には汚泥返送手段30が接続されている。汚泥返送手段30は、膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に、汚泥含有処理水の一部を返送するものである。
汚泥返送手段30は、第四の流路31を備えている。第四の流路31は、汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から排出し、活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。
第四の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、膜分離槽21内の汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送することができる。
【0020】
膜モジュール22は、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離するものである。膜モジュール22は分離膜を備え、この分離膜により汚泥含有処理水が生物処理水と活性汚泥とに固液分離(膜分離)される。
【0021】
分離膜としては、分離能を有するものであれば特に限定されず、例えば、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、モノリス型膜などが挙げられる。これらの中でも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましい。
【0022】
分離膜として中空糸膜を用いる場合、その材質としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの中でも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、PVDF、PTFEが好ましい。
分離膜としてモノリス型膜を用いる場合は、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
【0023】
分離膜に形成される微細孔の平均孔径としては、一般に限外分離膜と呼ばれる膜で0.001〜0.1μm程度であり、一般に精密分離膜と呼ばれる膜で0.1〜1μm程度である。本実施形態においては平均孔径が前記範囲内である分離膜を用いることが好ましい。
【0024】
膜モジュール22には、第三の流路33が接続されている。第三の流路33は、分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出し、処理水槽41に流入させる流路である。
第三の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、膜モジュール22の分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出できるようになっている。
【0025】
(サイフォン式散気装置)
サイフォン式散気装置10は、サイフォン式散気管1と、回転機構60と、空気供給手段70とを備えている。
【0026】
サイフォン式散気管1は、図2及び図3に示すように、筐体50と、筐体50内の空間を仕切る第一仕切壁4a及び第二仕切壁4bとを備えている。
筐体50は、いずれも正面視形状が矩形状の板状部材である上壁1Aと、4枚の側壁1Bと、底壁1Cとが、内部に空間が形成されるように設けられた立方体状の箱状の筐体である。
【0027】
4枚の側壁1Bは、四角筒を形成するように設けられている。4枚の側壁1Bで形成された四角筒の上端側に上壁1Aが設けられている。筐体50の上壁1A側の1つの側壁1B寄りの部分には、その側壁1Bに沿うように延びる散気穴6が形成されている。
底壁1Cは、散気穴6が形成されている側の側壁1Bの下端側から内側に延びるように設けられている。筐体50の下側の開口部分における底壁1Cで塞がれていない部分が処理水流入口7となっている。
【0028】
第一仕切壁4aは、散気穴6を挟んで側壁1Bと互いの面が向かい合うようにして、筐体50における上壁1Aの散気穴6側の下面から下方に延び、第一仕切壁4aの下端4aが筐体50の底壁1Cから離間するように設けられている。
第二仕切壁4bは、筐体50の底壁1Cにおける第一仕切壁4aの散気穴6とは反対側に位置する先端部の上面から上方に延びるように設けられている。第二仕切壁4bの上端4bは筐体50の上壁1Aから離間している。第一仕切壁4aと第二仕切壁4bとは、互いの面が対向するように間隔を開けて設けられている。
【0029】
サイフォン式散気管1においては、筐体50の下部における第二仕切壁4bの第一仕切壁4aと反対側に処理水流入口7が配置され、筐体50の上部における第一仕切壁4aの第二仕切壁4bと反対側に散気穴6が配置されている。
筐体50内においては、処理水流入口7から散気穴6へ向かう被処理水の流れを想定したとき処理水流入口7側を「上流」とし、散気穴6側を「下流」とする。
【0030】
サイフォン式散気管1では、筐体50内の第一仕切壁4aよりも処理水流入口7側における、第二仕切壁4bの上端4bから第一仕切壁4aの下端4aまでの空間がサイフォン室2となる。サイフォン室2は、空気を貯留するものである。サイフォン室2は、第二仕切壁4bにより第一サイフォン室2Aと第二サイフォン室2Bとに区切られている。
【0031】
第一サイフォン室2Aと第二サイフォン室2Bは、それらの上方の連通部5で連通されている。筐体50内の第二サイフォン室2Bから散気穴6までの部分が経路4となっている。第一仕切壁4aの一部は、サイフォン室2と経路4に面している。換言すると、第一仕切壁4aの一部は、サイフォン室2と経路4とを仕切っている。また、第二仕切壁4bの一部はサイフォン室2に面している。第二仕切壁4bの上端4bは、少なくとも第一仕切壁4aの下端4aよりも上方に位置している。処理水流入口7は、筐体50の底部に形成され、第一仕切壁4aの下端4aよりも下方に位置している。
【0032】
このように筐体50の内部には、上流から下流に向かって、第一サイフォン室2A、連通部5、第二サイフォン室2B、経路4がこの順に形成されている。そして、筐体50におけるサイフォン室2の下流には散気穴6が形成され、サイフォン室2の上流には処理水流入口7が形成されている。処理水流入口7により、サイフォン式散気管1の外部とサイフォン室2とが通じている。
【0033】
散気穴6の平面視形状は、長尺の矩形状である。散気穴6の平面視形状の面積は、好ましくは25cm以下であり、より好ましくは20cm以下である。また、平面視形状の長手方向の長さは、好ましくは25cm以下であり、より好ましくは20cm以下である。
【0034】
サイフォン式散気管1は、膜分離槽21を平面視したときに、膜モジュール22における隣り合う分離膜の間と散気穴6とが重なり合う位置に設けられている。
サイフォン式散気管1の数は、特に限定されず、膜モジュール22の大きさ、枚数に応じて適宜設定できる。
【0035】
回転機構60は、図5に示すように、サイフォン式散気管1の上下が逆転するようにサイフォン式散気管1を回転させる機構である。回転機構60の態様は、サイフォン式散気管1を上下反転させるように回転できる機構であればよく、特に限定されない。
【0036】
回転機構60は、横方向を回転軸としてサイフォン式散気管1を少なくとも180°回転できる機構であればよく、180°超360°以下の範囲でサイフォン式散気管1を回転できる機構であってもよい。
回転機構60によるサイフォン式散気管1の回転軸は、図2に示すように、第一仕切壁4aや第二仕切壁4bの面に沿う横方向の回転軸pであってもよく、第一仕切壁4aや第二仕切壁4bの面と交差する横方向の回転軸qであってもよい。
【0037】
空気供給手段70は、図1に示すように、ブロア72と、空気供給管74とを備えている。
空気供給管74は、一端がブロア72と接続され、他端が4枚の側壁1Bで形成された筒状部分の下端の開口部の下方まで延びるように配置されている。空気供給管74における4枚の側壁1Bで形成された筒状部分の下端の開口部の下方に位置する部分には開口が形成されている。
【0038】
空気供給手段70は、上下が逆転していない通常状態のサイフォン式散気管1に対しては、空気供給管74の開口から吹き出た空気を処理水流入口7から筐体50内のサイフォン室2に供給するようになっている。また、空気供給手段70は、上下反転した状態のサイフォン式散気管1に対しては、空気供給管74の開口から吹き出た空気を散気穴6から筐体50内に供給するようになっている。
【0039】
以下、サイフォン式散気管1の作動機構について説明する。
膜モジュール22の膜表面を洗浄する際には、サイフォン式散気管1は、図2及び図3に示すように、筐体50の上壁1Aを上側、底壁1Cを下側、すなわち散気穴6を上側、処理水流入口7を下側に向けて使用する。
作動開始前においては、図4(a)に示すように、サイフォン式散気管1の筐体50内におけるサイフォン室2、連通部5及び経路4は汚泥含有処理水B(被処理水)で満たされている。ブロア72により空気供給管74を介して処理水流入口7から空気Aを筐体50内のサイフォン室2に連続的に供給する。空気Aを供給し続けると、図4(b)に示すように、サイフォン室2内の汚泥含有処理水Bが散気穴6や処理水流入口7から押し出されて、サイフォン室2の液面Sが次第に降下する。
【0040】
さらに空気Aを供給し続け、液面Sの高さが第一仕切壁4aの下端4aよりも低くなると、図4(c)に示すように、経路4内と第一サイフォン室2Aとの2つの気液界面高さの差によって空気Aが経路4に移動し、散気穴6から一挙に放出されて気泡20を形成する。散気穴6から散気されると、図4(a)に示すように、サイフォン式散気管1の筐体50内におけるサイフォン室2、連通部5及び経路4は汚泥含有処理水Bで満たされた状態に戻る。そして、図4(a)〜(c)の状態が繰り返し行われることで、サイズの大きい気泡が間欠的に曝気される。このように、間欠的に曝気されたサイズの大きい気泡により、膜モジュール22の膜表面を効率良く洗浄することができる。
【0041】
筐体50内に堆積した汚泥を除去する際には、回転機構60により、図5に示すようにサイフォン式散気管1を上下反転させる。このような反転状態のサイフォン式散気管1では、上方に向いた処理水流入口7が散気穴として機能し、下方に向いた散気穴6が処理水流入口として機能する。また、筐体50内の第二仕切壁4bよりも散気穴6側における、第二仕切壁4bの上端4bから第一仕切壁4aの下端4aまでの空間がサイフォン室8となる。
【0042】
反転状態のサイフォン式散気管1では、作動前は図6(a)に示すように筐体50内が汚泥含有処理水Bで満たされている。ブロア72により空気供給管74を介して散気穴6から空気Aを筐体50内のサイフォン室8に連続的に供給すると、図6(b)に示すように、サイフォン室8内の汚泥含有処理水Bが散気穴6や処理水流入口7から押し出されて、サイフォン室8の液面Sが次第に降下する。さらに空気Aを供給し続け、液面Sの高さが反転した第二仕切壁4bの上端4bよりも低くなると、図6(c)に示すように、散気穴として機能する処理水流入口7から一挙に放出されて気泡20を形成する。散気後は図6(a)に示すように、サイフォン式散気管1の筐体50内が汚泥含有処理水Bで満たされた状態に戻る。そして、図6(a)〜(c)の状態が繰り返し行われることで、間欠的に曝気される。
【0043】
上下反転していない通常状態のサイフォン式散気管1では、経路4は汚泥含有処理水Bと接している時間が長く、空気と接するのは短時間の曝気時だけであり、通過する空気の流速も速いため、閉塞の可能性は低い。一方、筐体50内におけるサイフォン室2の上側の連通部5に面する部分は、作動時に空気と接している時間が長く、汚泥が付着すると乾燥して堆積し、固まりやすい。また、連通部5から第二サイフォン室2B、経路4にかけては流路が狭くなっており、通常状態では空気Aや汚泥含有処理水Bが堆積した汚泥を狭い流路へと押し込む方向に流れるため、詰まりやすい傾向がある。
【0044】
これに対して反転状態のサイフォン式散気管1では、筐体50内の連通部5に面する部分は汚泥含有処理水Bで満たされている時間が長くなるため、通常状態においてその部分に堆積した汚泥は汚泥含有処理水Bと接する時間が長くなる。そのため、堆積した汚泥が乾燥していても充分な湿潤状態となりやすい。また、サイフォン室8から散気穴として機能する処理水流入口7にかけては流路が広がっており、反転状態では空気Aや汚泥含有処理水Bが堆積した汚泥を広がった流路へと押し込む方向に流れるため、堆積していた汚泥が排出されやすい。また、筐体50内の連通部5に面する部分から剥離した汚泥が反転状態において充分に押し出されない場合でも、サイフォン式散気管1を回転して再び通常状態に戻した際には、剥離した汚泥はその自重によって落下して処理水流入口7から管外に排出される。
このように、サイフォン式散気装置10では、回転機構60によりサイフォン式散気管1を上下反転させることで、筐体50内に堆積した汚泥を効率良く除去してサイフォン式散気管1が詰まることを抑制できる。
【0045】
また、反転状態のサイフォン式散気管1のサイフォン室8の容積は、通常状態のサイフォン式散気管1のサイフォン室2の容積に比べて小さい。これにより、反転状態においては、通常状態に比べて曝気される気泡のサイズが小さく、間欠時間が短くなる。そのため、曝気された気泡の酸素溶解効率が高くなり、膜分離槽21内を容易に適切な好気条件にすることができる。
【0046】
[水処理方法]
以下、水処理装置1000を用いた水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、活性汚泥処理工程で得られた汚泥含有処理水を膜分離する膜分離工程と、を有している。
【0047】
水処理装置1000による水処理方法では、活性汚泥処理工程において、工場や家庭等から排出された工業廃水や生活廃水等の廃水(原水)を第一の流路12を通じて活性汚泥処理槽11に流入させ、活性汚泥処理槽11で活性汚泥処理し、生物処理水とする。活性汚泥処理後の汚泥含有処理水(被処理水)は、第二の流路13を通じてMBR装置100の膜分離槽21に流入させる。
【0048】
膜分離工程では、MBR装置100の膜分離槽21において、膜モジュール22により、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離処理する。膜分離処理中においては、サイフォン式散気装置10により曝気を行う。
例えば膜モジュール22の分離膜表面に有機物等が堆積して膜モジュール22の膜間差圧が大きくなった場合には、サイフォン式散気管1を上下反転させない通常状態とし、サイズの大きい気泡を間欠的に曝気する。これにより、膜モジュール22の膜表面の洗浄効果が高くなる。
【0049】
サイフォン式散気管1の筐体50内に汚泥が堆積してきた場合には、回転機構60によりサイフォン式散気管1を上下反転させて曝気を行い、再びサイフォン式散気管1を通常状態に戻す。これにより、筐体50内に堆積した汚泥を効率良く除去することができる。また、サイフォン式散気管1を反転状態とした場合には、曝気される気泡のサイズが小さくなって酸素溶解効率が高くなるため、汚泥含有処理水の溶存酸素濃度が低い場合も、サイフォン式散気管1を上下反転させて曝気を行うことで、膜分離槽21内を容易に適切な好気条件にすることができる。
【0050】
汚泥含有処理水Bの一部は、汚泥返送手段30によって膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送する。膜モジュール22により汚泥含有処理水Bを膜分離した後の処理水は、第三の流路33を通じて処理水槽41に送って貯留する。処理水槽41で貯留する処理水は、工業用水として再利用したり、河川等に放流したりすることができる。
【0051】
以上説明したように、本発明では、サイフォン式散気管を上下反転させることで、筐体内に堆積した汚泥を効率良く除去できるため、散気管内が詰まることを安定して抑制できる。また、サイフォン式散気管を上下反転させることで、例えば膜モジュールの分離膜表面への有機物等の堆積を抑制することを優先するか、槽内を適切な好気条件にすることを優先するかといった事情に応じて、気泡のサイズや間欠時間を調整して、水処理を行うこともできる。
【0052】
なお、本発明のサイフォン式散気管は、前記したサイフォン式散気管1には限定されない。
本発明の膜分離活性汚泥装置は、本発明のサイフォン式散気管と、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、サイフォン式散気管及び膜モジュールが設置されている膜分離槽とを備える以外は、公知の態様を採用できる。
本発明の水処理方法は、活性汚泥処理槽11の中にMBR装置100が設けられた水処理装置を用いて、活性汚泥処理工程と膜分離工程とを同時に行う方法であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…サイフォン式散気管、1A…上壁、1B…側壁、1C…底壁、2,8…サイフォン室、2A…第一サイフォン室、2B…第二サイフォン室、4…経路、4a…第一仕切壁、4a…下端、4b…第二仕切壁、4b…上端、5…連通部、6…散気穴、7…処理水流入口、11…活性汚泥処理槽、21…膜分離槽、22…膜モジュール、41…処理水槽、50…筐体、60…回転機構、70…空気供給手段、72…ブロア、74…空気供給管、100…膜分離活性汚泥装置、1000…水処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6