(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気流発生領域における前記空調風の流速は1m/sよりも大きく、前記空気層領域における前記空調風の流速は1m/s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の熟成庫。
前記吹出口及び前記吸込口は、一方向において互いに対向する位置にあると共に、前記一方向と直交する方向において前記熟成室の内面に沿って延びるようにそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熟成庫。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熟成庫では、温度及び湿度が調整された空調風の気流を食材に対して直接当てた状態で熟成が行われる。この場合、食材全体に対して空調風を均一に当てるのは困難であるため、食材に対する空調風の当たり方にムラが出来てしまう。したがって、従来の熟成庫は、食材全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うのが難しいという課題を有する。
【0006】
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、食材全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことが可能な熟成庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る熟成庫は
、熟成対象の食材を収容する熟成室と、前記熟成室に対して仕切られ、前記熟成室内に送られる空調風を生成する空調室と、前記空調風の温度及び湿度を調整する空調部と、を備えている。前記空調室には、前記空調風を前記熟成室内に吹き出すための吹出口と、前記空調風を前記熟成室から前記空調室内に吸い込むための吸込口と、が設けられている。前記吹出口及び前記吸込口は、前記吹出口から吹き出された前記空調風が前記熟成室内に収容された前記食材を避けつつ前記熟成室の内面に沿って前記吸込口まで流れる気流を生成するように、
熟成庫内において互いに間隔を空けて設けられている。
【0008】
この熟成庫では、空調部により温度及び湿度が調整されて吹出口から吹き出された空調風が、熟成室内に収容された食材を避けつつ当該熟成室の内面に沿って吸込口まで流れる。これにより、吹出口から吸込口まで熟成室の内面に沿った空調風の気流が形成されると共に、当該気流よりも内側において、温度及び湿度が均一であると共に空調風の流れが僅か又は空調風の流れがない空気層が形成される。本発明の熟成庫によれば、この空気層において食材を貯蔵することにより、吹出口から吸込口に向かって流れる空調風の気流を食材に対して直接当てることなく、空気層において食材全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことができる。
【0009】
上記熟成庫は、前記熟成室における前記気流の発生領域よりも内側において前記食材を保持する食材保持部をさらに備えていてもよい。
【0010】
この構成によれば、熟成中の食材に対して空調風の気流が直接当たるのをより確実に防ぐことができる。
【0011】
上記熟成庫において、前記吹出口及び前記吸込口は、一方向において互いに対向する
位置にあると共に、前記一方向と直交する方向において前記熟成室の内面に沿って延びるようにそれぞれ設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、吹出口が形成された熟成室の内面において当該内面の幅方向全体に亘って空調風を吹き出すことができる。このため、熟成室の内面全体に亘って一方向に流れる空調風の気流を発生させることができる。これにより、均一な温湿度環境を有する空気層領域を熟成室内において広く形成することができるため、食材の熟成における歩留りを向上させることができる。
【0013】
上記熟成庫は、前記空調風の温度を検知する温度検知部をさらに備えていてもよい。前記空調部は、前記空調風を加熱する加熱器と、冷媒との熱交換を介して前記空調風を冷却する冷凍機と、前記温度検知部による検知結果に基づいて前記加熱器及び前記冷凍機の動作を制御する制御部と、を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、温度検知部による検知結果を用いたフィードバック制御により、空調風の温度を容易に調整することができる。すなわち、検知された温度を設定温度と比較し、その差が小さくなるように加熱器や冷凍機の動作を適切に制御することができる。
【0015】
上記熟成庫において、前記制御部は、前記冷凍機の冷却能力を一定に保持しつつ前記加熱器の加熱能力を変動させる制御を実行するように構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、冷凍機の制御によって空調風の温度を調整する場合に比べて、熱応答性が良くなり、空調風の温度をより精密に調整することが可能になる。
【0017】
上記熟成庫において、前記制御部は、前記空調風の温度が前記熟成室内を殺菌可能な温度になるように前記加熱器の動作を制御する殺菌モードを実行するよう構成されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、食材の種類を切り替える前に高温の空調風を熟成室内に送ることにより、前の食材の熟成に用いられた微生物等を確実に死滅させた後に次の熟成に切り替えることができる。
【0019】
上記熟成庫において、前記空調部は、前記空調風を昇圧して前記吹出口に送り出す遠心ファンからなる送風機を含んでいてもよい。
【0020】
この構成によれば、軸流ファンに比べて静圧が大きい遠心ファンを用いることにより、空調風を熟成室内に向けて送り出す圧力を高めることができる。これにより、熟成室の内面全体に沿った空調風の気流をより確実に形成することが可能となり、熟成室内において均一な温湿度環境を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、食材全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことが可能な熟成庫を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る熟成庫1について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、熟成庫1の外観構造を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中の線分II−IIに沿った熟成庫1の断面を模式的に示している。
図3は、熟成庫1の空調室の平面図である。なお、
図1〜
図3は、熟成庫1における主要な構成要素のみを示しており、熟成庫1は、
図1〜
図3に現れていない他の任意の構成要素を備え得る。
【0025】
熟成庫1は、温度及び湿度がそれぞれ所定の設定範囲内に調整された庫内において食材100を一定期間貯蔵する熟成に用いられるものである。この熟成によって、食材100に含まれる酵素の働きにより食材100の旨味を増加させると共に食材100を柔らかくし、食材100の品質を向上させることができる。本実施形態における食材100は、例えば生ハム、サラミ又はソーセージなどであるが、食材の種類はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、熟成庫1は、例えば直方体の箱形状を有し、上壁11と、上壁11に対して上下方向に対向し且つ上壁11と同じ大きさの底壁14と、前壁12と、前壁12に対して前後方向に対向し且つ前壁12と同じ大きさの後壁15と、右側壁13と、右側壁13に対して左右方向に対向し且つ右側壁13と同じ大きさの左側壁16と、をそれぞれ有する。各壁は平面視矩形状を有し、且つ断熱壁となっている。前壁12には扉が設けられており、前側から熟成庫1内への食材100の出し入れを行うことができる。以下、熟成庫1における「上下方向」、「前後方向」及び「左右方向」は、
図1に示す方向に準じるものとする。なお、本発明の熟成庫は、直方体の箱形状を有するものに限定されず、例えば立方体の箱形状など、任意の箱形状を有するものであってもよい。
【0027】
図1及び
図2に示すように、熟成庫1は、熟成対象の食材100を収容する熟成室10と、熟成室10よりも下側に位置すると共に熟成室10内に送られる空調風110を生成する空調室40と、食材100を保持する食材保持部20と、空調風110の温度及び湿度を調整する空調部50と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0028】
熟成室10は、上壁11、前壁12の上部、後壁15の上部、右側壁13の上部、左側壁16の上部及び後述の仕切板30からなり、これらの壁により取り囲まれる熟成空間S1が内部に設けられている。食材100は、この熟成空間S1に貯蔵される。空調室40は、底壁14、前壁12の下部、後壁15の下部、右側壁13の下部、左側壁16の下部及び後述の仕切板30からなり、これらの壁により取り囲まれる空調空間S2が内部に設けられている。
図1に示すように、熟成室10及び空調室40は一つの直方体の箱体を構成している。また空調室40は熟成室10よりも狭くなっているが、両室の大きさは特に限定されない。
【0029】
図2に示すように、熟成庫1は、熟成空間S1と空調空間S2とに、仕切板30によって上下に仕切られている。仕切板30は、平面視矩形状を有すると共に孔がない板体であって、熟成庫1における上下方向の中央よりも下側において水平に配置されている。仕切板30は、上壁11及び底壁14よりも左右方向の幅が小さくなっている。このため、
図2に示すように、仕切板30の右端と右側壁13の内面との間には隙間が形成されており、且つ、仕切板30の左端と左側壁16の内面との間にも隙間が形成されている。
【0030】
この左側の隙間が空調風110を空調室40から熟成室10内に吹き出すための吹出口61であり、右側の隙間が空調風110を熟成室10から空調室40内に吸い込むための吸込口62である。熟成空間S1と空調空間S2とは、吹出口61及び吸込口62を介して互いに連通している。なお、仕切板30は、水平状態で配置される場合に限定されず、水平方向に対して若干傾いた状態で配置されていてもよい。
【0031】
図3に示すように、吹出口61及び吸込口62は、熟成空間S1の矩形底面において一方向(左右方向)に離間した状態で対向
する位置にある。より具体的には、吹出口61及び吸込口62は、
矩形底面の左右方向の両端に設けられている。また
図2に示すように、吹出口61及び吸込口62は、熟成庫1の箱形状における一つの平面内(
図2中の符号120)において互いに間隔を空けて設けられている。
【0032】
吹出口61は、空調風110の吹出方向(
図3の紙面手前方向)に直交する方向で且つ上記一方向に直交する方向(前後方向)において、左側壁16の内面全体に亘って延びるように形成されている。また吸込口62は、空調風110の吸込方向(
図3の紙面奥行方向)と直交する方向で且つ上記一方向に直交する方向(前後方向)において、右側壁13の内面全体に亘って延びるように形成されている。なお、吹出口61及び吸込口62の形状はこれに限定されるものではなく、左側壁16及び右側壁13の内面の一部においてのみ設けられていてもよい。
【0033】
吹出口61及び吸込口62は、吹出口61から吹き出された空調風110が熟成室10内に収容された食材100を避けつつ熟成室10の内面に沿って吸込口62まで流れる気流を生成する。具体的には、
図1及び
図2に示すように、空調室40内で温度及び湿度が調整されて吹出口61から吹き出された空調風110は、左側壁16の内面に沿って上昇した後、左側壁16と上壁11とが繋がる角部に衝突し、その後、上壁11の内面に沿って左から右に向かって流れる。そして、空調風110は、上壁11と右側壁13とが繋がる角部に衝突し、右側壁13の内面に沿って下降する。その後、空調風110は、吸込口62から空調室40内に吸い込まれる。このようにして、熟成室10と空調室40との間で循環すると共に熟成室10の内面全体に沿って流れる空調風110の気流が発生する。この空調風110の気流は層流となっている。
【0034】
図4は、熟成庫1内における空調風110の流れを模式的に示している。
図4に示すように、熟成室10内には、当該熟成室10の内面全体に沿って吹出口61から吸込口62まで空調風110が連続して流れる気流発生領域A1と、当該気流発生領域A1により取り囲まれる領域であって空調風110の流量が僅か又は空調風110が流れない空気層領域A2と、がそれぞれ形成される。空気層領域A2における空調風110の流速は例えば1m/s以下であるのに対し、気流発生領域A1における空調風110の流速は1m/sよりも大きい。本実施形態に係る熟成庫1では、熟成中の食材100をこの空気層領域A2において貯蔵することができるため、食材100に対して空調風110の気流が直接当たらず、食材100を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことができる。
【0035】
なお、吹出口61及び吸込口62の位置は、
図2に示す位置に限定されるものではなく、例えば
図2における吹出口61及び吸込口62の位置関係が逆であってもよい。また吹出口61及び吸込口62が左右方向の両側にそれぞれ設けられる場合に限定されず、前後方向の両側に設けられていてもよい。具体的には、吹出口61が仕切板30の前端と前壁12の内面との隙間であり、且つ、吸込口62が仕切板30の後端と後壁15の内面との隙間であってもよい。逆に、吸込口62が仕切板30の前端と前壁12の内面との隙間であり、且つ、吹出口61が仕切板30の後端と後壁15の内面との隙間であってもよい。
【0036】
食材保持部20は、熟成室10における気流発生領域A1よりも内側(つまり空気層領域A2)において食材100を保持するためのものである。
図2に示すように、食材保持部20は、支持フレーム70と、複数の支持金具73と、複数の吊るし棒21と、を有する。
【0037】
図2に示すように、支持フレーム70は、上下方向に延びると共に右側壁13の内面から内側に張り出した右側フレーム72と、上下方向に延びると共に左側壁16の内面から内側に張り出した左側フレーム71と、左右方向のほぼ中央において上下方向に延びる中央フレーム74と、を有する。右側フレーム72は吸込口62の上方に位置しており、左側フレーム71は吹出口61の上方に位置している。また中央フレーム74は、下端部が仕切板30の上面(床面)に固定されると共に、上端部が上壁11の内面に固定されている。また
図3に示すように、各フレームは、前後方向において複数設けられている。
【0038】
支持金具73は、吊るし棒21を支持フレーム70に対して支持するためのものである。
図2に示すように、支持金具73は、前面視においてL字型の形状を有し、右側フレーム72及び左側フレーム71の内面において上下に間隔を空けて複数取り付けられている。また支持金具73は、中央フレーム74の左側面(左側フレーム71側を向く面)において上下に間隔を空けて複数取り付けられると共に、中央フレーム74の右側面(右側フレーム72側を向く面)においても上下に間隔を空けて複数取り付けられている。なお、支持金具73の個数や取付位置は特に限定されない。
【0039】
吊るし棒21は、熟成空間S1において食材100を吊るすためのものである。
図2に示すように、吊るし棒21は、右側フレーム72と中央フレーム74との間及び左側フレーム71と中央フレーム74との間において配置されている。各吊るし棒21は、同じ高さ位置に取り付けられた支持金具73の上面に両端部が掛かった状態で配置されており、これにより水平方向に沿った姿勢となっている。食材100は、例えばフック22などを介して吊るし棒21に吊るされている。また
図3に示すように、吊るし棒21は、平面視において吹出口61及び吸込口62と重ならない位置に配置されている。これにより、吹出口61から吸込口62に向かって熟成室10の内面に沿って流れる空調風110の気流が、吊るし棒21に吊るされた食材100に対して直接当たるのを防ぐことができる。
【0040】
空調部50は、空調風110の温度及び湿度を、食材100の熟成に適した温度及び湿度に調整するためのものである。空調部50は、空調風110を加熱する加熱器51と、空調風110を冷却する冷凍機の冷却器52と、空調風110を加湿する加湿器53と、温度及び湿度が調整された空調風110を昇圧して吹出口61に送り出す送風機54と、加熱器51、冷凍機及び送風機54の各動作を制御する制御部80と、を有する。
【0041】
図2に示すように、空調空間S2において、空調風110の流れの上流から下流に向かって、加熱器51、冷却器52、加湿器53、送風機54の順に配置されている。また送風機54よりも下流側には、空調風110の温度を検知する温度検知部81と、空調風110の湿度を検知する湿度検知部82と、がそれぞれ配置されている。なお、温度検知部81及び湿度検知部82は、空調空間S2に配置される場合に限定されず、熟成空間S1(気流発生領域A1又は空気層領域A2)に配置されてもよい。
【0042】
加熱器51は、例えばシーズヒーターであって、吸込口62の近傍に配置されている。
図2に示すように、加熱器51は、上下複数段(例えば2段)に分けて配置されている。これにより、一方の加熱器51において着霜などが生じてメンテナンスが必要となった場合でも、他方の加熱器51を使用することにより空調部50を連続運転することができる。なお、加熱器51は、空調風110を加熱可能なものであればよく、他の種類のヒーターを用いることもできる。
【0043】
冷凍機は、蒸発器52A、凝縮器、圧縮機及び膨張機構を含む冷凍サイクルを構成しており、蒸発器52Aにおいて空調風110を冷媒と熱交換させることにより空調風110を冷却する。
図2では、空調空間S2に配置された蒸発器52Aのみが示されており、他の機器(凝縮器、圧縮機及び膨張機構)は空調空間S2の外に配置されていてもよい。蒸発器52Aは、例えばフィン&チューブ式熱交換器などであるが、特に限定されない。また蒸発器52Aも、加熱器51の場合と同様の理由で上下複数段(例えば2段)に分けて配置されている。なお、蒸発器52Aが加熱器51よりも下流側に配置される場合に限定されず、蒸発器52Aが加熱器51よりも上流側に配置されていてもよい。
【0044】
加湿器53は、例えば蒸気式加湿器であって、図略のヒータによって水を蒸発させて発生させた水蒸気を温調後の空調風110に向けて供給する。この蒸気式加湿器を用いることにより、高い加湿能力を確保することができる。しかし、加湿器53は蒸気式加湿器に限定されるものではなく、例えば超音波加湿器であってもよい。
【0045】
送風機54は、例えばシロッコファンなどの遠心ファンからなるものであり、空調室40の外に配置されたモータ55により回転駆動する。
図2に示すように、送風機54は回転軸が上下方向に沿うように配置されており、仕切壁31により加湿器53、蒸発器52A及び加熱器51に対して仕切られている。この仕切壁31には、送風機54の吸込口に臨む位置に通風孔(図示しない)が形成されている。これにより、加熱器51、蒸発器52A及び加湿器53を順に通過した空調風110を、仕切壁31の通風孔を通じて送風機54の吸込口に導くことができる。送風機54により昇圧された空調風110は、
図2中の左向きに吹き出され、吹出口61に向かって流れる。
【0046】
なお、送風機54は、シロッコファンに限定されるものではなく、ターボファンであってもよい。また送風機54は、遠心ファンに限定されるものでもなく、他のタイプのファンを採用することも可能である。
【0047】
制御部80は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、食材100の熟成に適した設定温度及び設定湿度を入力するための入力部83と、温度検知部81及び湿度検知部82による検知結果を受け付ける受付部84と、加熱器51、冷凍機及び加湿器53の各動作を制御する動作制御部85と、を有する。これらの入力部83、受付部84及び動作制御部85はそれぞれCPU(Central Processing Unit)の一機能である。制御部80は、受付部84に送信された空調風110の検知温度に基づいて、動作制御部85により加熱器51及び冷凍機の動作を制御する。また制御部80は、受付部84に送信された空調風110の検知湿度に基づいて、動作制御部85により加湿器53の動作を制御する。
【0048】
制御部80は、冷凍機の冷却能力を一定に保持しつつ加熱器51の加熱能力を変動させる制御を実行するように構成されている。具体的には、受付部84に送信された検知温度が設定温度よりも低い場合、動作制御部85は冷凍機における冷媒循環量を一定に保持しつつヒータ出力を上げるように加熱器51の動作を制御する。一方、受付部84に送信された検知温度が設定温度よりも高い場合、動作制御部85は冷凍機における冷媒循環量を一定に保持しつつヒータ出力を下げるように加熱器51の動作を制御する。これにより、冷凍機の冷却能力を一定に保持しながら、空調風110の温度を設定温度に近づけることができる。
【0049】
なお、冷凍機の冷却能力を一定に保持したままでは温調ができなくなった場合、例えば加熱器51のヒータ出力が最小でもなお空調風110の温度が設定温度よりも高い場合には、制御部80により冷凍機の冷却能力を一段階上げた後、同様に加熱器51のみによる温調を行うことができる。また加熱器51のヒータ出力が最大でもなお空調風110の温度が設定温度よりも低い場合には、冷凍機の冷却能力を一段階下げた後、同様に加熱器51のみによる温調を行うことができる。
【0050】
また制御部80は、冷凍機の冷却能力を一定に保持しつつ加熱器51の加熱能力を変動させる制御を行うものに限定されない。制御部80は、加熱器51の加熱能力を一定に保持しつつ冷凍機の冷却能力を変動させる制御を行ってもよいし、加熱器51の加熱能力及び冷凍機の冷却能力の両方を変動させる制御を行ってもよい。
【0051】
受付部84に送信された検知湿度が設定湿度よりも低い場合、動作制御部85は、空調風110に供給する蒸気量を増加させるように加湿器53の動作を制御する。一方、受付部84に送信された検知湿度が設定湿度よりも高い場合、動作制御部85は、空調風110に供給する蒸気量を減少させるように加湿器53の動作を制御する。これにより、空調風110の湿度を設定湿度に近づけることができる。
【0052】
また制御部80は、空調風110の温度及び湿度を熟成に適した設定温度及び設定湿度に調整する熟成モードの他に、空調風110の温度が熟成室10内を殺菌可能な温度になるように加熱器51の動作を制御する殺菌モードを実行可能に構成されている。この「殺菌可能な温度」は、熟成モード時の設定温度と異なる温度(当該設定温度よりも高い温度)であって、例えば85℃程度である。すなわち、空調風110の温度が85℃程度になるように加熱器51のヒータ出力を制御することにより、十分な殺菌温度の空調風110を熟成室10内に送り出すことができる。なお、この殺菌モードは本発明の熟成庫において必須の機能ではなく、省略されてもよい。
【0053】
次に、上記熟成庫1を用いた食材100の熟成手順について説明する。
【0054】
まず、生ハム、サラミ又はソーセージなどの食材100を準備し、前壁12の扉を開いて食材100を熟成空間S1内に入れる。そして、
図2に示すように、食材100をフック22などを介して吊り棒21に吊り下げ、扉を閉める。
【0055】
次に、食材100の熟成に適した設定温度及び設定湿度を、制御部80の入力部83にそれぞれ入力する。本実施形態では、例えば0〜30℃の設定温度及び60〜95%(相対湿度)の設定湿度がそれぞれ入力される。
【0056】
そして、動作制御部85により加熱器51、冷凍機、加湿器53及び送風機54をそれぞれ動作させる。空調風110は、加熱器51及び冷凍機の冷却器52により温調されると共に、加湿器53により湿度が調整される。そして、温湿度が調整された空調風110は、送風機54により昇圧された後、吹出口61から熟成室10内に向けて吹き出される。吹き出された空調風110は、上述の通り熟成室10の内面全体に沿って吸込口62まで流れる。これにより、
図4に示した気流発生領域A1及び空気層領域A2が熟成室10内にそれぞれ形成され、食材100は空気層領域A2において貯蔵された状態で熟成される。
【0057】
熟成中、空調風110の温度及び湿度は、温度検知部81及び湿度検知部82により常時又は所定のインターバルで監視される。そして、上述のように加熱器51、冷凍機及び加湿器53の各動作を制御部80によって適切に制御することにより、検知温度及び検知湿度が設定温度及び設定湿度にそれぞれ近づくように調整される。所定の熟成時間が経過した後、前壁12の扉を開いて食材100を庫内から取り出し、熟成が完了する。
【0058】
ここで、上記の通り説明した実施形態1に係る熟成庫1の特徴及び作用効果について説明する。
【0059】
上記熟成庫1は
、熟成対象の食材100を収容する熟成室10と、熟成室10に対して仕切られ、熟成室10内に送られる空調風110を生成する空調室40と、空調風110の温度及び湿度を調整する空調部50と、を備えている。空調室40には、空調風110を熟成室10内に吹き出すための吹出口61と、空調風110を熟成室10から空調室40内に吸い込むための吸込口62と、が設けられている。吹出口61及び吸込口62は、吹出口61から吹き出された空調風110が熟成室10内に収容された食材100を避けつつ熟成室10の内面に沿って吸込口62まで流れる気流を生成するように、
熟成庫1内において互いに間隔を空けて設けられている。
【0060】
この熟成庫1では、空調部50により温度及び湿度が調整されて吹出口61から吹き出された空調風110が、熟成室10内に収容された食材100を避けつつ熟成室10の内面に沿って吸込口62まで流れる。これにより、吹出口61から吸込口62まで熟成室10の内面に沿った空調風110の気流が形成されると共に、当該気流よりも内側において、温度及び湿度が均一であると共に空調風110の流れが僅か又は空調風110の流れがない空気層領域A2が形成される。上記熟成庫1によれば、この空気層領域A2において食材100を貯蔵することにより、吹出口61から吸込口62に向かって流れる空調風110の気流を食材100に対して直接当てることなく、空気層領域A2において食材100全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことができる。
【0061】
上記熟成庫1は、熟成室10内における気流の発生領域よりも内側(空気層領域A2)において食材100を保持する食材保持部20を備えている。これにより、熟成中に食材100に対して空調風110の気流が直接当たるのをより確実に防ぐことができる。
【0062】
上記熟成庫1において、吹出口61及び吸込口62は、一方向(左右方向)において互いに対向する
位置にあると共に、当該一方向と直交する方向(前後方向)において熟成室10の内面に沿って延びるようにそれぞれ設けられている。これにより、吹出口61が形成された熟成室10の内面(左側壁16の内面)において当該内面の幅方向全体に亘って空調風110を吹き出すことができる。このため、熟成室10内の内面全体に亘って一方向に流れる空調風110の気流を発生させることができる。これにより、均一な温湿度環境を有する空気層領域A2を熟成室10内において広く形成することができるため、食材100の熟成における歩留りを向上させることができる。
【0063】
上記熟成庫1は、空調風110の温度を検知する温度検知部81を備えている。空調部50は、空調風110を加熱する加熱器51と、冷媒との熱交換を介して空調風110を冷却する冷凍機の冷却器52と、温度検知部81による検知結果に基づいて加熱器51及び冷凍機の動作を制御する制御部80と、を含む。これにより、温度検知部81による検知結果を用いたフィードバック制御によって、熟成室10内の温度を容易に調整することができる。すなわち、温度検知部81による検知結果を設定温度と比較し、その差が小さくなるように加熱器51の動作を適切に制御することができる。
【0064】
上記熟成庫1において、制御部80は、冷凍機の冷却能力を一定に保持しつつ加熱器51の加熱能力を変動させる制御を実行する。これにより、冷凍機の制御により空調風110の温度を調整する場合に比べて、熱応答性が良くなり、空調風110の温度をより精密に調整することが可能になる。
【0065】
上記熟成庫1において、制御部80は、空調風110の温度が熟成室10内を殺菌可能な温度になるように加熱器51の動作を制御する殺菌モードを実行可能に構成されている。これにより、食材100の種類を切り替える前に、殺菌温度(例えば85℃)に調整された空調風110を熟成室10内に流すことによって、前の食材100の熟成に用いられた微生物等を確実に死滅させた後に次の熟成に切り替えることができる。
【0066】
上記熟成庫1において、空調部50は、空調風110を昇圧して吹出口61に送り出す遠心ファンからなる送風機54を含む。このように、軸流ファンに比べて静圧が大きい遠心ファンを用いることにより、空調風110を熟成室10内に向けて送る圧力を高めることができる。これにより、熟成室10の内面全体に沿う空調風110の流れをより確実に形成することが可能となり、熟成室10内の温度及び湿度を均一に制御することができる。
【0067】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る熟成庫2について、
図5を参照して説明する。実施形態2に係る熟成庫2は、基本的に実施形態1に係る熟成庫1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するが、食材保持部20の構成において実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0068】
図5に示すように、実施形態2に係る熟成庫2は、吊るし棒21(
図2)に代えて、食材100が載置される上面を有する載置板21Aを備えている。載置板21Aは、例えば平面視矩形状の網板であって、吊るし棒21と同様に、同じ高さ位置の支持金具73に対して両端部が掛けられている。また載置板21Aは、吊るし棒21と同様に、平面視において吹出口61及び吸込口62と重ならない位置に配置されている。
【0069】
熟成庫2は、載置板21Aを備えることにより、例えばブロック肉などの食材100を熟成するのに好適に用いることができる。この場合、空調風110の設定温度は例えば0〜4℃となり、設定湿度は実施形態1と同様に例えば60〜95%(相対湿度)となる。この熟成庫2においても、実施形態1に係る熟成庫1と同様に、空気層領域A2において食材100全体を均一な温湿度環境にさらした状態で熟成を行うことができる。なお、本発明の熟成庫は、吊るし棒21及び載置板21Aの両方を備えるものにおいても適用することができる。
【0070】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0071】
実施形態1では、空調室40が熟成室10の下側に設けられる場合についてのみ説明したが、これに限定されない。
図6に示すように、空調室40が熟成室10の上側に設けられていてもよい。この場合、仕切板30は、熟成庫3における上下方向の中央よりも上側に位置する。
図6において、吹出口61と吸込口62との位置関係が逆であってもよい。また空調室40を熟成室10の上側に設けた場合において、吹出口61及び吸込口62が前後方向において間隔を空けて設けられてもよい。
【0072】
また
図7に示すように、空調室40が熟成室10の右側に設けられていてもよい。この場合、仕切板30は、上下方向に沿って配置されると共に、熟成庫4における左右方向の中央よりも右側に位置する。また空調室40が熟成室10の左側に設けられてもよい。さらに、空調室40と熟成室10とが前後方向に隣接するように設けられてもよい。
【0073】
(参考例)
図8は、参考例の熟成庫5の構成を模式的に示している。なお、
図8中において、
図1〜
図7と同じ符号を付した要素は同じ構成を有するものであるため、その説明は省略する。
図8に示すように、熟成庫5では、上壁11の内面に空調部50が設けられており、この空調部50から食材100に向けて空調風110の気流が直接当たる構成となっている。すなわち、熟成庫5は、空調風110が熟成室10内に収容された食材100を避けつつ熟成室10の内面に沿って流れる気流を生成するものではない。
【0074】
この熟成庫5において、空調部50の制御部は、空調風110の温度が熟成室10内を殺菌可能な温度になるように加熱器の動作を制御する殺菌モードを実行可能なように構成されている。すなわち、参考例に係る熟成庫5は、下記の構成要件を備えるものである。
【0075】
熟成対象の食材を収容する熟成室と、
前記熟成室内に送られる空調風の温度及び湿度を調整する空調部と、を備え、
前記空調部は、前記空調風を加熱する加熱器と、前記空調風の温度が前記熟成室内を殺菌可能な温度になるように前記加熱器の動作を制御する殺菌モードを実行する制御部と、を含む、熟成庫。
【0076】
上記の構成によれば、食材の種類を切り替える前に高温の空調風を熟成室内に送ることにより、前の食材の熟成に用いられた微生物等を確実に死滅させた後に次の熟成に切り替えることができる。これにより、熟成庫における食材の切り替え時の殺菌作業を簡易化するという課題が解決される。
【0077】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。