特許第6859280号(P6859280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859280
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】下枠用ブラケットおよび建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20210405BHJP
   E06B 3/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   E06B1/56 B
   E06B3/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-23185(P2018-23185)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-138075(P2019-138075A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
(72)【発明者】
【氏名】樹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】川口 和弘
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−83329(JP,U)
【文献】 特開平11−280341(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第3029255(EP,A1)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0355670(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、
前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1ブラケットと、前記第1ブラケットの下側に配置される第2ブラケットとで構成されており、
前記第1ブラケットは、前記躯体に固定される第1固定片と、前記第1固定片から室外方向に延出されて前記下枠の下面に接する第1延出片とを備え、
前記第2ブラケットは、前記第1固定片よりも下方まで延長されて前記躯体に固定される第2固定片と、前記第2固定片から室外方向に延出されて前記第1延出片の下側に配置された第2延出片とを備え、
前記第2延出片にはネジ穴が形成され、前記ネジ穴には調整ネジが螺合され、
前記調整ネジの先端は、前記第1延出片に当接されている
ことを特徴とする下枠用ブラケット。
【請求項2】
建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、
前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1部材と、前記第1部材の下側に配置される第2部材とを備え、
前記第2部材は、前記躯体に固定される固定片と、前記固定片から室外方向に延出される延出片とを備え、
前記第1部材は、前記延出片と前記下枠との間に配置される当接片を備え、
前記当接片には、調整ネジが螺合され、
前記延出片には、前記調整ネジの頭部に形成された工具係合部を露出させる貫通穴が形成され、
前記調整ネジの頭部は、前記延出片の前記貫通穴の周囲に当接されている
ことを特徴とする下枠用ブラケット。
【請求項3】
建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、
前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1部材と、前記第1部材の下側に配置される第2部材とを備え、
前記第2部材は、前記躯体に固定される固定片と、前記固定片から室外方向に延出される延出片とを備え、
前記第1部材は、前記延出片と前記下枠との間に配置される当接片を備え、
前記延出片には、調整ネジが螺合され、
前記調整ネジの先端は、前記当接片に当接されている
ことを特徴とする下枠用ブラケット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の下枠用ブラケットにおいて、
前記調整ネジは、見込み方向の位置が、前記下枠用ブラケットの下方に配置される外壁材よりも室外側である
ことを特徴とする下枠用ブラケット。
【請求項5】
下枠を有する建具枠と、
前記建具枠内に設けられた障子と、
前記下枠を支持する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の下枠用ブラケットと、を備えることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠用ブラケットおよび建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具枠に障子を開閉可能に設けた引違い窓等の建具において、建具枠の一部が躯体よりも室外側に配置された半外付けタイプの建具が知られている。
このような建具において、下枠が障子の重量によって垂れ下がることがある。このため、下枠を支持するブラケット部材を設けて下枠の垂れ下がりを防止したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1のブラケット部材は、下方に向けて延在する下延支持片と、下延支持片の上部より室外方向に向けて延在する外延支持片とを有している。そして、下延支持片に、躯体との間に間隙が形成された第1固定支持部と、第1固定支持部の下方において躯体に接触する第2固定支持部とを設け、前記第1固定支持部から躯体にねじ込まれたネジを締め付ける。これにより、第2固定支持部が躯体外壁面に近接して傾くため、外延支持片は室外側に向けて漸次上方に傾斜した姿勢となり、下枠を上方に持ち上げた形態にできて、下枠の垂れ下がりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−014879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、第1固定支持部と躯体との間隙部分において、第1固定支持部を躯体外壁面に近接させることで、外延支持片を傾斜させており、外延支持片を直接上方に移動させていないため、下枠の持ち上げ量も直接調整できず、下枠の位置調整が難しかった。
【0005】
本発明の目的は、下枠の位置調整を容易に行うことができる下枠用ブラケットおよび建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1ブラケットと、前記第1ブラケットの下側に配置される第2ブラケットとで構成されており、前記第1ブラケットは、前記躯体に固定される第1固定片と、前記第1固定片から室外方向に延出されて前記下枠の下面に接する第1延出片とを備え、前記第2ブラケットは、前記第1固定片よりも下方まで延長されて前記躯体に固定される第2固定片と、前記第2固定片から室外方向に延出されて前記第1延出片の下側に配置された第2延出片とを備え、前記第2延出片にはネジ穴が形成され、前記ネジ穴には調整ネジが螺合され、前記調整ネジの先端は、前記第1延出片に当接されていることを特徴とする。
本発明によれば、下枠用ブラケットを、第1ブラケットおよび第2ブラケットの2つのブラケットで構成し、第2ブラケットの第2延出片に設けたネジ穴に螺合した調整ネジの先端を、第1ブラケットの第1延長片に当接しているので、調整ネジをねじ込むことで、第1ブラケットの第1延出片の上下位置を調整でき、これにより第1延出片が接している下枠の上下位置も調整でき、下枠の垂れ下がりも防止できる。したがって、調整ネジのねじ込み量によって、第1ブラケットの第1延出片および下枠の上下方向の位置を直接調整できるので、下枠の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【0007】
本発明は、建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1部材と、前記第1部材の下側に配置される第2部材とを備え、前記第2部材は、前記躯体に固定される固定片と、前記固定片から室外方向に延出される延出片とを備え、前記第1部材は、前記延出片と前記下枠との間に配置される当接片を備え、前記当接片には、調整ネジが螺合され、前記延出片には、前記調整ネジの頭部に形成された工具係合部を露出させる貫通穴が形成され、前記調整ネジの頭部は、前記延出片の前記貫通穴の周囲に当接されていることを特徴とする。
本発明によれば、下枠用ブラケットを、第1部材および第2部材の2つの部材で構成し、第1部材の当接片に設けたネジ穴に螺合されている調整ネジを回転することで、第2部材に対して第1部材の当接片の上下位置を調整でき、これにより当接片が接している下枠の上下位置も調整でき、下枠の垂れ下がりも防止できる。したがって、調整ネジの回転量によって、第1部材の当接片および下枠の上下方向の位置を直接調整できるので、下枠の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【0008】
本発明は、建物の躯体に取り付けられる下枠を支持する下枠用ブラケットであって、前記下枠用ブラケットは、前記下枠の下面に接する第1部材と、前記第1部材の下側に配置される第2部材とを備え、前記第2部材は、前記躯体に固定される固定片と、前記固定片から室外方向に延出される延出片とを備え、前記第1部材は、前記延出片と前記下枠との間に配置される当接片を備え、前記延出片には、調整ネジが螺合され、前記調整ネジの先端は、前記当接片に当接されていることを特徴とする。
本発明によれば、下枠用ブラケットを、第1部材および第2部材の2つの部材で構成し、第2部材の延出片に設けたネジ穴に螺合した調整ネジの先端を、第1部材の当接片に当接しているので、調整ネジをねじ込むことで、第1部材の当接片の上下位置を調整でき、これにより当接片が接している下枠の上下位置も調整でき、下枠の垂れ下がりも防止できる。したがって、調整ネジのねじ込み量によって、第1部材の当接片および下枠の上下方向の位置を直接調整できるので、下枠の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【0009】
本発明の下枠用ブラケットにおいて、前記調整ネジは、見込み方向の位置が、前記下枠用ブラケットの下方に配置される外壁材よりも室外側であることが好ましい。
本発明によれば、外壁仕上げ後であっても、調整ネジを操作することができ、外壁材を剥がすことなく、下枠の位置を容易に調整できる。
【0010】
本発明の建具は、下枠を有する建具枠と、前記建具枠内に設けられた障子と、前記下枠を支持する前記下枠用ブラケットとを備えることを特徴とする。
本発明の建具によれば、前記下枠用ブラケットを備えているので、下枠の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の下枠用ブラケットおよび建具によれば、下枠の位置調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る引違い窓の外観姿図。
図2】第1実施形態の引違い窓の下枠の縦断面図。
図3】第1実施形態の引違い窓の下枠の垂れ下がり調整後の状態を示す縦断面図。
図4】第2実施形態の引違い窓の下枠の縦断面図。
図5】第2実施形態の引違い窓の下枠の垂れ下がり調整後の状態を示す縦断面図。
図6】本発明の変形例の引違い窓の下枠の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、図1に示すように、引違い窓1を建具として構成したものである。引違い窓1は、建具枠である窓枠2と、外障子3および内障子4とを備えて構成されている。
窓枠2は、上枠11、下枠12および左右の縦枠13,14を備えて構成される。上枠11、下枠12、縦枠13、14は、合成樹脂製の押出形材で構成された樹脂枠である。
外障子3、内障子4は、合成樹脂製の框材を枠組みして複層ガラスを保持した公知の障子であるため、説明を省略する。
なお、以下の説明において、引違い窓1の屋内外方向を見込み方向とし、図1における引違い窓1の左右方向(外障子3、内障子4の移動方向)を、上枠11、下枠12の長手方向とする。また、図2〜6において、下枠12のハッチングは省略する。
【0014】
窓枠2は、図2に示すように、建物の開口部に配置されて建物の躯体6に固定されている。下枠12が固定される躯体6は、土台61と、ふかし材62とを備える。ふかし材62は、土台61に固定ねじ63で固定されている。ふかし材62の上面には、床下地材65を介して床仕上げ材66が取り付けられている。
【0015】
下枠12には、屋外側の外障子3を案内する外レール121と、屋内側の内障子4を案内する内レール122とが形成されている。なお、図示を省略するが、上枠11にも、外障子3を案内する外レールと、内障子4を案内する内レールとが形成されている。
下枠12は、見込み方向において、内レール122から室内側の部分が、躯体6(ふかし材62)の上面に載置され、内レール122から室外側の部分が躯体6よりも室外側に配置されている。
下枠12は、下方に突出したヒレ部123を備え、ヒレ部123は躯体6の外面に当接して配置されている。また、下枠12の下面部124には、断面L字状に形成されて室内側に開口された係止部125が設けられている。
【0016】
下枠12は、図1,2に示すように、下枠用ブラケット30で支持されている。下枠用ブラケット30は、第1ブラケット31と、第2ブラケット41とで構成されている。
第1ブラケット31は、アルミニウム等を押出成形した金属製部材であり、第1固定片32と、第1延出片33とを備え、断面略L字状に形成されている。
第1ブラケット31は、図1に示すように、下枠12の長手方向に延長された長尺な部材であり、下枠12の左右両端部以外の領域に亘って配置されている。なお、第1ブラケット31は、下枠12の垂れ下がりを防止できる位置に配置されていればよく、図1に示す長さ寸法や配置位置に限定されない。ただし、下枠12の左右方向の中央領域つまり外障子3、内障子4の召合せ框の下方部分が最も垂れ下がりやすいため、少なくとも中央領域置を含むように配置されていることが好ましい。
【0017】
第1固定片32は、第1固定支持部321と、第2固定支持部322とを有する。第1固定支持部321は、第1延出片33の室内側端部から下方に向かって延出されており、ヒレ部123の室外側に沿って配置されている。第2固定支持部322は、第1固定支持部321の下端部から室内側に向かって斜め下方に延出され、さらに下方に向かって延出されて躯体6の室外面に沿って配置されている。
第1固定支持部321および第2固定支持部322には、長手方向に沿って所定間隔毎に挿通孔が形成されており、この挿通孔に挿通されたネジ35、36によって、躯体6、具体的にはふかし材62に固定されている。
なお、ネジ35、36は、タッピングネジで構成されている。ネジ35は、第1固定支持部321の挿通孔からねじ込まれ、ヒレ部123を介してふかし材62にねじ込まれている。このため、ヒレ部123は、第1固定支持部321と共に、ネジ35によって躯体6に固定されている。一方、第2固定支持部322は、ヒレ部123よりも下方に位置し、直接、躯体6(ふかし材62)に接しており、ネジ36によって躯体6に固定されている。なお、下枠12の室内側端部には、躯体6の上面に載置されるヒレ部が設けられ、このヒレ部はネジ15で躯体6に固定されている。
【0018】
第1延出片33は、第1固定片32の上端部から室外方向に延出されており、下面部124に沿って配置されている。第1延出片33の室外側端部は、係止部125内に挿入されている。なお、第1延出片33には、水密材34が取り付ける取付溝331が形成されており、水密材34は下面部124に当接して、下枠12および第1ブラケット31間をシールしている。
【0019】
第2ブラケット41は、ステンレスやアルミニウム等を折り曲げ加工した金属製部材であり、第2固定片42と、第2延出片43とを備え、断面略L字状に形成されている。
第2ブラケット41は、図1に示すように、第1ブラケット31に比べて短尺のピース材であり、下枠12の左右方向の中央位置に配置されている。
【0020】
第2固定片42は、鉛直方向に沿って設けられ、第1固定片32の室外側に配置されている。また、第2固定片42の上下方向の寸法は、第1固定片32よりも大きくされ、第2固定片42の下半分は、第1固定片32の下端よりも下方に配置されている。
躯体6(土台61)の室外面には、胴縁67がネジ50で取り付けられ、第2固定片42は、胴縁67を介して土台61までねじ込まれるネジ45によって躯体6に固定されている。
ここで、ネジ45は、タッピングネジで構成され、第2固定片42に形成された挿通孔から、胴縁67を介して土台61にねじ込まれている。したがって、第1ブラケット31の第1固定片32は、ふかし材62に固定されているのに対し、第2ブラケット41の第2固定片42は、土台61に固定されている。
なお、本実施形態では、図1に示すように、ネジ45は、第2固定片42において、上下2箇所、左右2箇所の計4箇所でねじ込まれているが、ネジ45の本数や配置位置はこの例に限定されない。第2ブラケット41のサイズや、第2ブラケット41で支持する荷重などに応じて設定すればよい。
【0021】
第2延出片43は、第2固定片42の上端部から室外方向に延出されており、第1延出片33の下面に沿って配置されている。
第2延出片43の室外側端部近傍には、第2延出片43を上下方向に貫通するネジ穴431が形成され、このネジ穴431には調整ネジ47が螺合されている。本実施形態では、第2延出片43の左右2箇所にネジ穴431が形成され、各ネジ穴431にそれぞれ調整ネジ47が螺合されている。また、ネジ穴431の見込み方向の位置は、第1ブラケット31における水密材34の配置位置とほぼ同じとされている。
調整ネジ47の頭部を回すことで、調整ネジ47のネジ部の先端は、ネジ穴431から上方に突出可能であり、さらにその突出量も調整可能である。このため、調整ネジ47の先端は、第1延出片33の下面に当接可能に構成されている。
【0022】
第2ブラケット41の第2固定片42の室外側には、外壁材68が配置され、外壁材68の上面と第2固定片42との間にはシーリング材69が充填されている。この際、前記調整ネジ47は、見込み方向の位置が、外壁材68の室外側に配置されるようにネジ穴431の位置が設定されている。
また、第2ブラケット41が配置されていない部分では、外壁材68と第1延出片33との間にシーリング材69が充填されて止水処理が施されている。
【0023】
次に、調整ネジ47を用いた下枠12の位置調整について、図3を参照して説明する。
外壁材68の仕上げ作業を行った後、下枠12の垂れ下がりが発生した場合には、調整ネジ47を第1ブラケット31に向かってねじ込む。これにより、調整ネジ47の先端(上端)は第2ブラケット41の第2延出片43から上方に突出し、第1ブラケット31の第1延出片33の室外側端部を上方に持ち上げ、第1延出片33が当接する下枠12も上方に持ち上がる。このため、下枠12は、室外側に向かって斜め上方に向かうように傾斜した姿勢となり、下枠12の中央領域をやや上方に持ち上げた状態にでき、下枠12の垂れ下がりを防止できる。
なお、図3に示すように、下枠12の位置調整を行った際に、第1ブラケット31の第1延出片33と、第2ブラケット41の第2延出片43との間に隙間が生じた場合は、下枠12の調整後にシーリング材等を充填して止水処理を行えば良い。また、第2ブラケット41が配置されていない部分では、外壁材68と、第1延出片33との間は、シーリング材69が充填されているため、下枠12の位置調整後であっても止水機能を維持できるが、シーリング材69と第1延出片33や外壁材68との間に隙間が生じた場合には、その隙間部分にもシーリング材等を充填して止水処理を行えば良い。
【0024】
このような本実施形態によれば、下枠12を支持する下枠用ブラケット30を、第1ブラケット31および第2ブラケット41の2つのブラケットで構成し、第2ブラケット41の第2延出片43に設けたネジ穴431に調整ネジ47をねじ込んで、第1ブラケット31を持ち上げることで、下枠12の垂れ下がりを防止できる。
調整ネジ47のねじ込み量によって、第1ブラケット31や下枠12の上下方向の位置を直接調整できるので、下枠12の下がり量に対して容易にかつ精度よく調整することができる。特に、調整ネジ47は、第1ブラケット31の第1延出片33の室外側端部を直接持ち上げることができ、下枠12の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【0025】
ネジ穴431を第2延出片43に形成しているので、調整ネジ47の頭部を下面部124の下方であり、かつ、外壁材68の室外側に露出させることができる。このため、外壁仕上げ後であっても、調整ネジ47を操作することができ、外壁材68を剥がすことなく、下枠12の位置を容易に調整できる。
【0026】
第1ブラケット31の第1固定片32よりも、第2ブラケット41の第2固定片42を下方まで延長しているため、第1ブラケット31がふかし材62に固定されている場合に、第2ブラケット41を土台61に固定できる。このため、ふかし材62を固定ねじ63で土台61に固定した際のふかし材62の固定強度が弱い場合や、ふかし材62への第1ブラケット31の取付け固定強度が弱い場合であっても、第2ブラケット41は土台61に固定されるため、取付強度が安定する。さらに、下枠用ブラケット30が、第1ブラケット31および第2ブラケット41の二重構造であるため、下枠12の支持強度も向上でき、下枠12を安定して保持できる。
【0027】
第1ブラケット31は、従来から用いられているものをそのまま用いることができ、第2ブラケット41および調整ネジ47を追加するだけで、実現できるため、コスト増を抑制できる。特に、第2ブラケット41は、第1ブラケット31に比べて短尺のピース材でよく、通常は、下枠12の左右方向の中央部分に1つ設けるだけでよいため、コスト増も最小減に押さえることができる。さらに、第2ブラケット41は、断面略L字状に形成されており、プレス加工等で容易に成形できるため、ステンレスなどのアルミニウムに比べて剛性の高い材料で構成することもできる。したがって、下枠12の支持強度を容易に高めることができる。
【0028】
調整ネジ47を、第1延出片33の水密材34の配置位置のほぼ下方位置に設けたので、調整ネジ47で第1延出片33を下面部124側に押し付けることで、水密材34を確実に下面部124に密着させることができ、止水性能を向上できる。
【0029】
第1ブラケット31は、長尺に形成されており、下枠12の下面部124に広い面積で当接するため、外障子3の荷重も第1ブラケット31全体の面で受けることができる。このため、下枠12において一部分に荷重が集中して下面部124の一部が凹むなどの変形が生じることを防止できる。
なお、調整ネジ47は、第1ブラケット31の一部分のみに接触するが、金属材同士の接触であるため、第1ブラケット31の変形なども防止できる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の下枠用ブラケット70について、図4,5を参照して説明する。なお、第2実施形態は、下枠用ブラケットの構成が第1実施形態と相違し、下枠12、土台61、外壁材68等の構成は第1実施形態と同様であるため、対応する構成には同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の下枠用ブラケット70は、下枠12の下面部124に接する第1部材71と、第1部材71の下側に配置される第2部材81とを備える。
第1部材71および第2部材81は、共に下枠12の長手方向に延長された長尺部材であり、同じ長さ寸法で設けられている。
【0031】
第1部材71は、下枠12に接する当接片72と、当接片72の室内側端縁に形成されて第2部材81に係合する係合フック部73とを備える。当接片72は、係合フック部73に連続して設けられた薄肉部721と、薄肉部721の室外側に連続して設けられて薄肉部721よりも厚さ寸法が大きい厚肉部722とを備える。
厚肉部722には、調整ネジ77が取り付けられるネジ穴723と、水密材74が取り付けられる取付溝724とが形成されている。ネジ穴723は、第1部材71の長手方向において、少なくとも外障子3、内障子4の召合せ部の位置に合わせて形成されている。
なお、本実施形態では、ネジ穴723は、厚肉部722を上下に貫通しているが、調整ネジ77を上方に突出させる必要は無いため、下面側のみに開口させてもよい。
【0032】
第2部材81は、下枠12が取り付けられ躯体6に固定される固定片82と、固定片82から室外方向に延出された延出片83とを備える。
固定片82は、第1実施形態の第1ブラケット31の第1固定片32と同様に、第1固定支持部821、第2固定支持部822を備えており、ネジ85、86で土台61に固定されている。
延出片83は、薄肉部721に沿って配置される第1延出部831と、厚肉部722に沿って配置される第2延出部832とを備える。第1延出部831の室内側端部には、前記係合フック部73が係合される係合溝833が形成されている。
第2延出部832は、第1延出部831の室外側端部から下方に傾斜され、さらに室外側に向かって延出されている。第2延出部832には、前記ネジ穴723と同じ位置に、貫通穴834が形成されている。
貫通穴834の直径は、調整ネジ77の頭部の直径よりも小さくされ、調整ネジ77の頭部が延出片83において貫通穴834の周囲に当接可能に構成されている。また、貫通穴834の直径は、調整ネジ77の頭部に形成された工具係合部に係合される工具を挿通可能なサイズとされている。調整ネジ77の頭部に形成された工具係合部とは、マイナスドライバーが係合可能なマイナス溝や、プラスドライバーが係合可能な十字溝や、六角レンチが係合可能な六角溝など、調整ネジ77を回転させる工具が係合可能な溝や穴である。
【0033】
土台61の室外面には胴縁67がネジ50で取り付けられ、この胴縁67の室外側に外壁材68が配置されている。外壁材68の上面と第2部材81の第1延出部831との間にはシーリング材69が充填されている。この際、前記貫通穴834は、第2延出部832に形成されているため、外壁材68の室外側に配置されている。
【0034】
次に、調整ネジ77を用いた下枠12の位置調整について、図5を参照して説明する。
外壁材68の仕上げ作業を行った後、下枠12の垂れ下がりが発生した場合には、貫通穴834にドライバー等の工具を差し込み、調整ネジ77を緩める方向(通常は反時計回り)に回転する。これにより、調整ネジ77は、ネジ頭部が厚肉部722に対して下方に移動する。この際、調整ネジ77の頭部は、第2部材81の第2延出部832の貫通穴834の周囲に当接しており、第2部材81はネジ85、86で土台61に固定されているため、第2部材81は下方に殆ど移動しない。したがって、調整ネジ77を下方に移動しようとすると、第2延出部832に対して、第1部材71の厚肉部722が上方に移動する。このため、第1部材71の室外側端部が上方に移動し、第1部材71が当接する下枠12も上方に持ち上がる。よって、下枠12は、室外側に向かって斜め上方に向かうように傾斜した姿勢となり、下枠12の垂れ下がりを防止できる。
【0035】
図5に示すように、下枠12の位置調整を行った際に、第1部材71と第2部材81との間に隙間が生じた場合は、下枠12の調整後にシーリング材等を充填して止水処理を行えば良い。なお、第2部材81は長尺部材とされて下枠12の全長に亘ってほぼ配置されているので、外壁材68、シーリング材69との位置関係は変化せず、外壁材68との間のシーリング作業を追加して行う必要はない。
【0036】
このような第2実施形態では、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、下枠12を支持する下枠用ブラケット70を、第1部材71および第2部材81の2つの部材で構成し、第1部材71の当接片72に設けたネジ穴723に螺合されている調整ネジ77を回転して、第2部材81に対して第1部材71を持ち上げることで、下枠12の垂れ下がりを防止できる。
調整ネジ77の回転量によって、第1部材71や下枠12の上下方向の位置を直接調整できるので、下枠12の下がり量に対して容易にかつ精度よく調整することができる。特に、調整ネジ77は、第1部材71の当接片72の室外側端部を直接持ち上げることができ、下枠12の位置を容易にかつ精度よく調整できる。
【0037】
ネジ穴723を当接片72の厚肉部722に形成しているので、調整ネジ77のねじ込み量を確保でき、その分、第1部材71や下枠12の移動量も大きくできる。
また、ネジ穴723や貫通穴834を、外壁材68の室外側に形成しているので、外壁仕上げ後であっても、調整ネジ77を操作することができ、外壁材68を剥がすことなく、下枠12の位置を容易に調整できる。
【0038】
第1部材71の室内側端部に形成した係合フック部73を、第2部材81の係合溝833に係合させており、かつ、係合フック部73は、ヒレ部123と第2部材81との間に配置されているので、調整ネジ77を回転させた際に、第1部材71が見込み方向にずれることがなく、第1部材71を上下方向に確実に移動させることができる。
【0039】
厚肉部722にネジ穴723および取付溝724を形成したので、調整ネジ77と水密材74との見込み方向の位置を近接させることができる。このため、調整ネジ77で厚肉部722を下枠12の下面部124側に押し付けることができ、水密材74を確実に下面部124に密着させることができ、止水性能を向上できる。
【0040】
第1部材71および第2部材81は、長尺に形成されており、下枠12の下面部124に広い面積で当接するため、外障子3の荷重も第1部材71全体の面で受けることができ、その荷重を第2部材81全体で支持して躯体6に伝えることができる。このため、下枠12において一部分に荷重が集中して下面部124の一部が凹むなどの変形が生じることを防止できる。
なお、調整ネジ77は、第2部材81の一部分のみに接触するが、金属材同士の接触であるため、第2部材81の変形なども防止できる。
【0041】
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、第2実施形態では、第1部材71にネジ穴723を形成していたが、図6に示すように、第1部材71にはネジ穴を設けずに第2部材81の第2延出部832にネジ穴835を形成し、ネジ穴835に調整ネジ77Aをねじ込んでもよい。調整ネジ77Aとしては、図6に示すようなイモネジ(六角穴付き止めネジ)を用いてもよいし、第1、2実施形態の調整ネジ47、77でもよい。
この変形例においても、調整ネジ77Aを第1部材71に向かってねじ込むことで、第1部材71および下枠12を押し上げて傾斜させることができ、下枠12の垂れ下がりを防止できる。
【0042】
また、第1実施形態の第2ブラケット41や、第2、3実施形態の調整ネジ77、77Aが設けられる位置は、下枠12の中央領域(外障子3および内障子4の召合せ框の下部部分)に限定されず、下枠12の垂れ下がりを調整できる位置であればよい。
例えば、下枠12の左右両端から下枠12の長手方向寸法の1/3の位置に、第2ブラケット41や調整ネジ77、77Aをそれぞれ設けて、2箇所で下枠12を持ち上げてもよい。さらに、3箇所以上に設けてもよい。
さらに、調整ネジ47、77、77Aによる下枠12の位置調整は、外壁材68の仕上げ作業の後のみに限らず、外壁材68の仕上げ作業前に行ってもよい。従って、引違い窓1の施工時に下枠12の位置を調整することもでき、施工後、数年経過後に下枠12の位置を調整することもできる。
【0043】
前記実施形態では、建具枠である窓枠2を樹脂製で構成していたが、建具枠としては、アルミニウム等の金属製の枠材で構成したものでもよいし、金属材と樹脂材との複合枠材で構成したものでもよい。
【0044】
本発明の下枠を用いる建具としては、引違い窓に限定されず、片引き窓、FIX窓、引違いテラス戸等の各種建具に利用でき、特に、半外付けの建具等であって、下枠の室外側が障子の荷重などで下がる可能性がある建具に適している。そして、第2ブラケット41や調整ネジ77、77Aは、各種建具において下枠の垂れ下がりを効果的に防止できる位置に設ければよい。
【符号の説明】
【0045】
1…建具である引違い窓、2…建具枠である窓枠、3…外障子、4…内障子、6…躯体、12…下枠、30…下枠用ブラケット、31…第1ブラケット、32…第1固定片、33…第1延出片、41…第2ブラケット、42…第2固定片、43…第2延出片、47…調整ネジ、61…土台、62…ふかし材、67…胴縁、68…外壁材、69…シーリング材、70…下枠用ブラケット、71…第1部材、72…当接片、73…係合フック部、77、77A…調整ネジ、81…第2部材、82…固定片、83…延出片、431、723、835…ネジ穴、834…貫通穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6