特許第6859285号(P6859285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859285
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】摩擦部材およびブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/02 20060101AFI20210405BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20210405BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F16D69/02 D
   F16D69/02 Z
   F16D65/092 D
   F16D65/092 C
   C09K3/14 520G
   C09K3/14 520Z
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-57057(P2018-57057)
(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公開番号】特開2019-168058(P2019-168058A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】岩井 亨
(72)【発明者】
【氏名】谷口 誠典
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−063663(JP,A)
【文献】 特開平09−256080(JP,A)
【文献】 特開平10−226842(JP,A)
【文献】 実開昭58−079148(JP,U)
【文献】 特開平10−299798(JP,A)
【文献】 特許第3479026(JP,B2)
【文献】 特開2014−098407(JP,A)
【文献】 特開2008−261051(JP,A)
【文献】 特開2001−107107(JP,A)
【文献】 特開2003−160831(JP,A)
【文献】 特開平08−158001(JP,A)
【文献】 特開平08−291834(JP,A)
【文献】 特開平08−284990(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第4108532(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102015013157(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0260881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
C09K 3/14
C22C 1/04−1/05
C22C 33/02
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の車輪と同期して回転する回転体に接するように構成される摩擦面を有し、
コバルトおよびチタンから生成される金属間化合物を含み、
前記金属間化合物は、CoTiを含む、摩擦部材。
【請求項2】
前記摩擦面に対して平行な、前記回転体の回転方向に概ね沿う第1方向における前記摩擦面の第1寸法は、15mm以上30mm以下である、請求項に記載の摩擦部材。
【請求項3】
前記摩擦面に対して平行かつ前記第1方向に対して垂直な第2方向における前記摩擦面の第2寸法は、10mm以上20mm以下である請求項に記載の摩擦部材。
【請求項4】
前記第2寸法は、前記第1寸法よりも小さい請求項に記載の摩擦部材。
【請求項5】
前記第1方向に凹凸を形成するように湾曲する請求項2〜4のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項6】
前記摩擦面に対して垂直な第3方向における前記摩擦部材の第3寸法は、1.5mm以上5mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項7】
前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、5%以上40%以下に設定される請求項1〜6のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項8】
前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比は、5%以上40%以下に設定される請求項1〜7のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項9】
前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比とは異なる、請求項に記載の摩擦部材。
【請求項10】
前記第1容積比は、前記第2容積比よりも大きい請求項に記載の摩擦部材。
【請求項11】
前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、30%以上70%以下に設定される請求項1〜10のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項12】
前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比は、5%以上20%以下に設定される請求項1〜11のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項13】
前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比とは異なる、請求項12に記載の摩擦部材。
【請求項14】
前記第1質量比は、前記第2質量比よりも大きい請求項13に記載の摩擦部材。
【請求項15】
摩擦調整剤をさらに含む請求項1〜14のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項16】
研削剤をさらに含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項17】
体積調整剤をさらに含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の摩擦部材。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の摩擦部材と、
前記摩擦部材を支持するバックプレートと、を含むブレーキパッド。
【請求項19】
前記摩擦部材は、前記バックプレートに拡散接合される請求項18に記載のブレーキパッド。
【請求項20】
前記摩擦部材は、前記バックプレートに機械的に接合される請求項18に記載のブレーキパッド。
【請求項21】
前記バックプレートは、鉄合金、チタン、チタン合金、および、アルミニウム合金のいずれかによって形成される請求項18〜20のいずれか一項に記載のブレーキパッド。
【請求項22】
前記バックプレートは、前記摩擦部材を支持する支持部と、放熱構造を有する放熱部とを含む請求項18〜21のいずれか一項に記載のブレーキパッド。
【請求項23】
前記放熱構造は、フィンを含む請求項22に記載のブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦部材およびブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレーキパッドの摩擦部材が開示される。このような摩擦部材は、高温域においても高い耐摩耗性を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−86359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高温域においても高い耐摩耗性を有する摩擦部材およびブレーキパッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う摩擦部材は、回転体に接するように構成される摩擦面を有し、コバルトおよびチタンから生成される金属間化合物を含む。
前記第1側面の摩擦部材によれば、このような金属間化合物を含むことによって、温度上昇に伴って強度が高くなり、高温域においても高い耐摩耗性を実現できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の摩擦部材において、前記金属間化合物は、CoTiを含む。
前記第2側面の摩擦部材によれば、CoTiを含むことによって、温度上昇に伴って強度が高くなり、高温域においても高い耐摩耗性を実現できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の摩擦部材において、前記摩擦面に対して平行な第1方向における前記摩擦面の第1寸法は、15mm以上30mm以下である。
前記第3側面の摩擦部材によれば、第1寸法が15mm以上に設定されることによって制動性を維持しつつ、第1寸法が30mm以下に設定されることによってコンパクトに構成できる。
【0008】
前記第3側面に従う第4側面の摩擦部材において、前記摩擦面に対して平行かつ前記第1方向に対して垂直な第2方向における前記摩擦面の第2寸法は、10mm以上20mm以下である。
前記第4側面の摩擦部材によれば、第2寸法が10mm以上に設定されることによって制動性を維持しつつ、第2寸法が20mm以下に設定されることによってコンパクトに構成できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の摩擦部材において、前記第2寸法は、前記第1寸法よりも小さい。
前記第5側面の摩擦部材によれば、回転体の回転方向に沿って第1寸法を大きくすることによって、回転体に好適に接触できる。
【0010】
前記第3〜第5側面のいずれか1つに従う第6側面の摩擦部材において、前記第1方向に凹凸を形成するように湾曲する。
前記第6側面の摩擦部材によれば、回転体の回転方向に沿って摩擦面を配置でき、制動性を向上できる。
【0011】
前記第1〜第6側面のいずれか1つに従う第7側面の摩擦部材において、前記摩擦面に対して垂直な第3方向における前記摩擦部材の第3寸法は、1.5mm以上5mm以下である。
前記第7側面の摩擦部材によれば、第3寸法が1.5mm以上に設定されることによって強度を確保しつつ、第3寸法が5mm以下に設定されることによってコンパクトに構成できる。
【0012】
前記第1〜第7側面のいずれか1つに従う第8側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、5%以上40%以下に設定される。
前記第8側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0013】
前記第1〜第8側面のいずれか1つに従う第9側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比は、5%以上40%以下に設定される。
前記第9側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比とは異なる。
前記第10側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の摩擦部材において、前記第1容積比は、前記第2容積比よりも大きい。
前記第11側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0016】
前記第1〜第11側面のいずれか1つに従う第12側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、30%以上70%以下に設定される。
前記第12側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0017】
前記第1〜第12側面のいずれか1つに従う第13側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比は、5%以上20%以下に設定される。
前記第13側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0018】
前記第13側面に従う第14側面の摩擦部材において、前記金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、前記金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比とは異なる。
前記第14側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0019】
前記第14側面に従う第15側面の摩擦部材において、前記第1質量比は、前記第2質量比よりも大きい。
前記第15側面の摩擦部材によれば、回転体と摩擦部材との間に好適な摩擦力を発生できる。
【0020】
前記第1〜第15側面のいずれか1つに従う第16側面の摩擦部材において、摩擦調整剤をさらに含む。
前記第16側面の摩擦部材によれば、回転体に対する摩擦力を好適に調整できる。
【0021】
前記第1〜第16側面のいずれか1つに従う第17側面の摩擦部材において、研削剤をさらに含む。
前記第17側面の摩擦部材によれば、制動性を向上できる。
【0022】
前記第1〜第17側面のいずれか1つに従う第18側面の摩擦部材において、体積調整剤をさらに含む。
前記第18側面の摩擦部材によれば、好適な体積が得られる。
【0023】
第19側面のブレーキパッドは、前記第1〜第18側面のいずれか一つに従う摩擦部材と、前記摩擦部材を支持するバックプレートと、を含む。
前記第19側面のブレーキパッドによれば、自転車のブレーキキャリパに容易に取り付けできる。
【0024】
前記第19側面に従う第20側面のブレーキパッドにおいて、前記摩擦部材は、前記バックプレートに拡散接合される。
前記第20側面のブレーキパッドによれば、摩擦部材をバックプレートに好適に結合できる。
【0025】
前記第19側面に従う第21側面のブレーキパッドにおいて、前記摩擦部材は、前記バックプレートに機械的に接合される。
前記第21側面のブレーキパッドによれば、摩擦部材をバックプレートに好適に結合できる。
【0026】
前記第19〜第21側面に従う第22側面のブレーキパッドにおいて、前記バックプレートは、鉄合金、チタン、チタン合金、及びアルミニウム合金のいずれかによって形成される。
前記第22側面のブレーキパッドによれば、高い剛性が得られる。
【0027】
前記第19〜第22側面に従う第23側面のブレーキパッドにおいて、前記バックプレートは、前記摩擦部材を支持する支持部と、放熱構造を有する放熱部とを含む。
前記第23側面のブレーキパッドによれば、制動時の発熱を抑制できる。
【0028】
前記第23に従う第24側面のブレーキパッドにおいて、前記放熱構造は、フィンを含む。
前記第24側面のブレーキパッドによれば、放熱構造が簡潔であるため、容易に製造できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の摩擦部材およびブレーキパッドは、高温域において高い耐摩耗性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態のブレーキパッドの斜視図。
図2】第1実施形態のブレーキパッドの平面図。
図3】第1実施形態のブレーキパッドの側面図。
図4】ブレーキパッドの製造方法の第1の例を説明するための模式図。
図5】ブレーキパッドの製造方法の第2の例を説明するための模式図。
図6】ブレーキパッドの製造方法の第2の例を説明するための模式図。
図7】ブレーキパッドの製造方法の第3の例を説明するための模式図。
図8】ブレーキパッドの製造方法の第3の例を説明するための模式図。
図9】比較例、実施例1および実施例2の摩耗量を示すグラフ。
図10】比較例、実施例1および実施例2の動摩擦係数を示すチャート。
図11】比較例および実施例1、3〜6の摩擦量を示すグラフ。
図12】比較例および実施例1、3〜6の動摩擦係数を示すチャート。
図13】ブレーキパッドの変形例の斜視図。
図14図13とは別の視点からみたブレーキパッドの変形例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
図1図3を参照して、本発明の一実施形態のブレーキパッド10について説明する。
ブレーキパッド10は、例えば、人力駆動車に取り付けられる。ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。人力駆動車は、人力のみで推進する自転車、電気エネルギーを用いて人力を補助する自転車(e−bike)、電気エネルギーのみを用いて推進する一輪車、二輪車、三輪車を含む。ブレーキパッド10は、車輪の回転軸に取り付けられて、車輪と同期して回転する回転体を制動する。回転体は、一例として、ディスクブレーキロータを含む。ブレーキパッド10は、回転体の回転中心軸線に交差する少なくとも一方の面である制動面に接触する摩擦面12A(後述参照)を有する。ブレーキパッド10は、ブレーキパッド10の摩擦面12Aと、回転体の制動面との接触によって、回転体の回転速度を低下させる。なお、実施形態における「回転体」は、ディスクブレーキロータ(図示略)を意味する。
【0032】
図1および図2に示されるように、ブレーキパッド10は、摩擦部材12と、摩擦部材12を支持するバックプレート14と、を含む。
【0033】
バックプレート14は、摩擦部材12を支持する支持部16と、支持部16から延びてブレーキキャリパに連結され連結部18とを含む。
支持部16は、バックプレート14が人力駆動車のブレーキキャリパに取り付けられた状態で、回転体に対向する第1面16Aと、第1面16Aとは反対側の第2面16Bとを有する(図3参照)。摩擦部材12は、第1面16Aに接合される。好ましくは、第1面16Aは、後述の摩擦面12Aに平行である。連結部18は、貫通孔18Aを有する。貫通孔18Aにブレーキキャリパ(図示略)のピンを通すことによって、ブレーキパッド10がブレーキキャリパに取り付けられる。バックプレート14は、ステンレス合金を含む鉄合金、チタン、チタン合金、及びアルミニウム合金のいずれかによって形成される。
【0034】
次に摩擦部材12について説明する。摩擦部材12は、回転体に接するように構成される摩擦面12Aを有し、コバルトおよびチタンから生成される金属間化合物を含む。好ましくは、摩擦面12Aの面積は、150mm以上600mm以下である。より好ましくは、摩擦面12Aの面積は、250mm以上500mm以下である。好ましくは、摩擦面12Aに対して平行な第1方向D1における摩擦面12Aの第1寸法L1(図2参照)は、15mm以上30mm以下である。好ましくは、摩擦面12Aに対して平行かつ第1方向D1に対して垂直な第2方向D2における摩擦面12Aの第2寸法L2は、10mm以上20mm以下である。好ましくは、摩擦部材12において、好ましくは、第2寸法L2は、第1寸法L1よりも小さい。好ましくは、摩擦面12Aに対して垂直な第3方向D3における摩擦部材12の第3寸法L3(図3参照)は、1.5mm以上5mm以下である。
【0035】
摩擦部材12は、バックプレート14が人力駆動車のブレーキキャリパに取り付けられた状態で摩擦部材12の第2方向D2が回転体の回転中心軸線に垂直な径方向に沿うように、配置される。これによって、摩擦部材12の長手方向である第1方向D1を回転体の回転方向に概ね沿うようにできる。図2に破線で示されるように、摩擦部材12は、第1方向D1に凹凸を形成するように湾曲してもよい。これによって、摩擦部材12が、さらに、回転体の回転方向に沿うようになる。
【0036】
摩擦部材12は、さらに、テーパ面12B,12Cを含む。テーパ面12B,12Cは、摩擦面12Aに連続して設けられる。第1のテーパ面12Bは、摩擦面12Aからバックプレート14の支持部16に向かうように傾斜する。第1のテーパ面12Bは、摩擦面12Aにおいて、第2方向D2で連結部18とは反対の端縁から延びる。第2のテーパ面12Cは、摩擦面12Aにおいて、第2方向D2で連結部18側の端縁から延びる。
【0037】
摩擦部材12は、上述のように、コバルトおよびチタンから生成される金属間化合物を含む。摩擦部材12は、コバルトおよびチタンから生成される金属間化合物として、CoTi、CoTi−(C36)、CoTi−(C15)、CoTi(c)、CoTi(h)、CoTi、およびCoTiの少なくとも1つを含み得る。金属間化合物は、CoTiを含むことが好ましい。
【0038】
好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、5%以上40%以下に設定される。
好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比は、5%以上40%以下に設定される。
好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1容積比は、金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2容積比とは異なる。好ましくは、第1容積比は、第2容積比よりも大きい。コバルトの第1容積比をチタンの第2容積比よりも大きくすることによって、CoTiを効率的に生成できる。
【0039】
好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、30%以上70%以下に設定される。好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比は、5%以上20%以下に設定される。好ましくは、摩擦部材12の形成の材料において、金属間化合物の生成に用いられるコバルトの全材料に対する第1質量比は、金属間化合物の生成に用いられるチタンの全材料に対する第2質量比とは異なる。好ましくは、第1質量比は、第2質量比よりも大きい。コバルトの第1質量比をチタンの第2質量比よりも大きくすることによって、CoTiを効率的に生成できる。
【0040】
摩擦部材12は、チタンおよびコバルトに加えて、次の材料を少なくとも一種を含むことが好ましい。例えば、摩擦部材12は、摩擦調整剤をさらに含む。摩擦調整剤は、摩擦部材12と回転体との間の動摩擦係数を調整する。摩擦調整剤は、回転体に対する摩擦部材12の摩擦力を調整する。摩擦調整剤として、グラファイト、コークス、二硫化モリブデン、および、三流化アンチモンが挙げられる。これら物質の1または複数が選択されて、摩擦調整剤として用いられる。回転体に対する摩擦部材12の摺動性を適度なものとするために、摩擦部材12の生成における摩擦調整剤の容積比は、10%以上60%以下であることが好ましい。また、摩擦部材12の生成における摩擦調整剤の質量比は、5%以上20%以下であることが好ましい。
【0041】
好ましくは、摩擦部材12は、研削剤をさらに含む。研削剤は、摩擦部材12と回転体との接触による制動性を向上させる。研削剤として、ムライト、ジルコン、および、セリサイト、が挙げられる。これら物質の1または複数が選択されて、研削剤として用いられる。摩擦部材12の制動性を適度なものとするために、摩擦部材12の生成における研削剤の容積比は、5%以上30%以下であることが好ましい。また、摩擦部材12の生成における研削剤の質量比は、5%以上20%以下であることが好ましい。
【0042】
好ましくは、摩擦部材12は、体積調整剤をさらに含む。体積調整剤は、摩擦部材12の体積を調整する。体積調整剤の添加によって、摩擦部材12の体積および摩擦面12Aの大きさを調整できる。体積調整剤として、フッ化カルシウム(CaF)が挙げられる。摩擦部材12の小型化と制動性とを両立させるために、摩擦部材12の生成における体積調整剤の容積比は、5%以上30%以下であることが好ましい。また、摩擦部材12の生成における体積調整剤の質量比は、5%以上15%以下であることが好ましい。
【0043】
次に、摩擦部材12の微視的構造を説明する。第1の例の摩擦部材12は、チタン、コバルト、チタンとコバルトとの金属間化合物、酸化チタン、および酸化コバルトを含む。金属間化合物は、チタンおよびコバルトの表面に形成されていると考えられる。金属間化合物は、例えば、CoTi、CoTi−(C36)、CoTi−(C15)、CoTi(c)、CoTi(h)、CoTi、CoTiの少なくともいずれか一つを含むTi−Co系金属間化合物である。第2の例の摩擦部材12は、第1の例の摩擦部材12において、添加材料が含まれる。添加材料として、たとえば、ムライト、ジルコン、セリサイト、フッ化カルシウムである。添加材料として、非金属粒子も含まれ得る。たとえば、人造のグラファイト、天然のグラファイトである。
【0044】
摩擦部材12は、材料の焼結によって形成される。材料は、金属材料を含む。金属材料は、コバルト粉末およびチタン粉末を含む。好ましくは、材料は、添加材料を含む。添加材料は、例えば、上述した、ムライト、ジルコン、セリサイト、およびフッ化カルシウムの少なくとも1つである。コバルト粉末およびチタン粉末を含むワークの燃焼によって、CoTi、CoTi−(C36)、CoTi−(C15)、CoTi(c)、CoTi(h)、CoTi、CoTiの少なくともいずれか1つが形成される。
【0045】
次に、バックプレート14における摩擦部材12の接続構造について、以下に3つの例を挙げる。図4図8は、図2のA−A線に沿う断面の位置に相当する位置における摩擦部材の断面構造を示す。
【0046】
図4を参照して、第1の例を説明する。摩擦部材は、バックプレート14に拡散接合される。「拡散接合」という用語は、「2つの金属部材の一方に由来する金属元素が他方の金属部材の内部に拡散することによって境界組織が形成されるか、または、2つの金属部材に由来する金属元素が相互に拡散することによって境界組織が形成され、当該境界組織によって、2つの金属部材が直接に(すなわち、2つの金属部材とは異なる、接着剤およびはんだなどの連結部材を介さずに)、無機的かつ化学的に連結されること」と定義する。
【0047】
図5および図6を参照して、第2の例を説明する。摩擦部材は、バックプレート14に機械的に接合される。具体的には、摩擦部材12は、摩擦面12Aとは反対側の裏面12Dに、バックプレートに係合する複数の係合部12Eを有する。係合部12Eは、裏面12Dから突出する。バックプレート14は、係合部12Eに係合する貫通孔14Aを有する。摩擦部材12の係合部12Eがバックプレート14の貫通孔14Aに圧入されること、または、摩擦部材12の係合部12Eがバックプレート14の貫通孔14Aに挿通した状態で潰されることによって、摩擦部材12とバックプレート14とが結合される。
【0048】
図7および図8を参照して、第3の例を説明する。摩擦部材12は、バックプレート14に機械的に接合され、かつ、摩擦部材12は、バックプレート14に機械的に接合される。この例では、摩擦部材12とバックプレート14の間に接合プレート20が介在する。摩擦部材は、接合プレート20に拡散接合する。バックプレート14は、貫通孔14Bを有する。接合プレート20の一部が軟化または溶融によってバックプレート14の貫通孔14Bに流入することによって形成される係合部20Aによって、接合プレート20とバックプレート14とが結合する。
【0049】
図4を参照して、上述の第1の例のブレーキパッド10aの製造方法を説明する。
まず、第1工程において、少なくともコバルト粉末およびチタン粉末を含む材料からワークを形成する。ワークは、材料を加圧成型することによって得られる。材料は、粉末状であり、次の工程において金属間化合物を含む摩擦部材12となる。材料は、コバルト粉末、チタン粉末に加えて、上述した、添加材料が含まれ得る。
【0050】
次に、第2工程において、ワークとバックプレート14とを接触させずにワークを加熱することによって、金属間化合物を摩擦部材12に生成する燃焼合成を誘起させる。こうして摩擦部材12が得られる。
【0051】
次に、第3工程において、摩擦部材12の摩擦面12Aが外方を向き、摩擦面12Aとは反対側の裏面12Dがバックプレートに接するように摩擦部材12とバックプレート14とを配置する。この積層体を加熱および加圧することによって、ブレーキパッド10aが製造される。加熱および加圧の条件は、摩擦部材12とバックプレート14との材料に依存し、摩擦部材12とバックプレート14とを少なくとも部分的に、化学的に、連結するに足る圧力および温度であればよく、摩擦部材12の金属間化合物の組成およびバックプレート14の材料に応じて適宜調整することができる。
【0052】
摩擦部材12とバックプレート14との境界には境界組織が存在する。摩擦部材12に由来する元素(コバルト、チタンなど)とバックプレート14に由来する元素(例えば、チタン、アルミニウムなど)とが、摩擦部材12とバックプレート14との境界面付近において共存している。摩擦部材12およびバックプレート14の一方(たとえば摩擦部材12)に由来する元素が摩擦部材12およびバックプレートの他方(たとえばバックプレート)の内部に拡散することによって、境界組織が形成される。0μm〜100μm程度の深度範囲にわたって境界組織が形成される。境界組織の存在は、摩擦部材12とバックプレート14とが拡散接合によって、少なくとも部分的に、無機的かつ化学的に連結されていることを示す。
【0053】
図5および図6を参照して、上述の第2の例のブレーキパッド10bの製造方法を説明する。
まず、第1工程において、第1の例と同様に、少なくともコバルト粉末およびチタン粉末を含む材料からワークWKを形成する。ワークWKは、材料を加圧成型することによって得られる。加圧成型のとき、ワークWKに係合部が設けられる。
【0054】
第2工程において、ワークWKとバックプレート14とを接触させずにワークWKを加熱することによって、金属間化合物を摩擦部材12に生成する燃焼合成を誘起させる。こうして摩擦部材12が得られる。
【0055】
第3工程において、摩擦部材12の摩擦面12Aが外方を向き、係合部12Eがバックプレート14の貫通孔14Aに挿通するように、摩擦部材12とバックプレート14とを配置し、積層体を形成する。そして、摩擦部材12の係合部12Eのうち貫通孔14Aから出ている部分を潰し、係合部12Eとバックプレート14とを係合させる。さらに、好ましくは、摩擦部材12とバックプレート14とが係合したワークWKを熱処理することによって、摩擦部材12とバックプレート14との境界部分に拡散接合を形成してもよい。
【0056】
図7および図8を参照して、上述の第3の例のブレーキパッド10cの製造方法を説明する。
第1工程では、第1の例と同様に、少なくともコバルト粉末およびチタン粉末を含む材料からワークWKを形成する。ワークWKは、材料を加圧成型することによって得られる。
第2工程では、ワークWKと、接合プレート20と、バックプレート14とを、3層の積層体状に配置する。ここでは、接合プレート20がワークWKとバックプレート14とに接するように、ワークWKと、接合プレート20と、バックプレート14とを配置する。接合プレート20は、アルミニウムを含む平坦板である。
【0057】
第3工程では、ワークWKを加熱することによって摩擦部材12が得られる。ワークWKは、その複数の金属材料の少なくともいずれか2つから燃焼合成によって金属間化合物を摩擦部材12に生成するように加熱される。燃焼合成は、ワークWKの局所に発熱反応である燃焼反応が誘起されるように、ワークWKに外部から熱的刺激を付与することによって開始される。具体的には、燃焼反応は、レーザをワークWKの局所に照射し、ワークWKを局所的に加熱することによって開始される。たとえば、ワークWKの一端(接合プレートの反対側の上面)に付与された外的熱刺激によって、その一端に燃焼反応が誘起される。燃焼反応はワークWKの一端から他端(例えば接合プレートと接触する下面)に向けて連鎖的に進行する。燃焼合成は極めて短時間で完了し、外部からの継続的な加熱を要さず、外部からの加熱エネルギー供給量は極めて少なくてすむ。したがって、摩擦部材12の製造コストを顕著に低減できる。
【0058】
第3工程における加熱すなわち外的熱刺激の局所的な付与は、摩擦部材12の生成を引き起こすだけでなく、摩擦部材12と接合プレートとの化学的な連結の生成、及び、接合プレート20とバックプレート14との機械的な連結の生成を引き起こす。たとえば、摩擦部材12の金属間化合物の燃焼合成に伴う熱は、ワークWKと接合プレート20との境界において、ワークWKの材料の少なくとも一つ(たとえば、コバルト)と接合プレート20の金属(本例では、アルミニウム)との第2の燃焼反応を誘起する。その第2の燃焼反応によって生成される化合物で摩擦部材12とバックプレート14とが無機的かつ化学的に連結する。また、化合物の燃料合成に伴う熱によって、接合プレート20の一部は軟化または溶融する。その軟化または溶融した接合プレート20の一部は、バックプレート14の貫通孔14Bに流入し、係合部20Aを形成する。係合部20Aと貫通孔14Bとは、接合プレート20とバックプレート14とを機械的に連結する機械的接合部として機能する。
【0059】
このように、ワークWKの一端(接合プレートの反対側の上面)に外的熱刺激を付与することによって、摩擦部材12の生成、摩擦部材12と接合プレートとの化学的な連結、及び接合プレート20とバックプレート14との機械的な連結を含むシーケンスが連鎖的にまたは自動的に進行する。このシーケンスは、燃焼反応の完了によって自動的に終了する。このようにして、ブレーキパッド10cが製造される。上述したように、燃焼合成は極めて短時間で完了し、外部からの継続的な加熱を要さず、外部からの加熱エネルギー供給量は極めて少なくてすむ。したがって、ブレーキパッド10cの製造コストは顕著に低減される。
【0060】
<実施例>
以下、摩擦部材12の実施例について、比較例と比較して説明する。
表1および表2は、材料において、実施例1〜6の組成および比較例の組成を示す。表1の組成に示される値は、実施例1〜6および比較例に係る摩擦部材12を形成するときの各材料の容積比である。表2の組成に示される値は、表1と同じ実施例および比較例について、各材料の質量比である。実施例1〜6の摩擦部材12および比較例の摩擦部材は、いずれも、材料を混合したワークを870℃の温度で焼成したものである。
【0061】
実施例1〜6とは別に、材料の容積比でコバルト76%チタン24%の粉末焼結体を形成した。粉末焼結体を形成するときの焼成温度を870℃とした。この粉末焼結体のX線回析(X‐ray diffraction、XRD)によれば、チタンのピークおよびコバルトのピークの他に、CoTiのピークが得られた。後述の結果から分かるように、チタンおよびコバルトの金属間化合物(例えば、CoTi)の存在によって摩擦部材の摩耗性および動摩擦係数が向上している。
【0062】
比較例は、チタンおよびコバルトを含まない従来の摩擦部材である。
実施例1の組成は、表1および表2のとおりである。
実施例2におけるチタンとコバルトの容積比は、実施例1と異なる。実施例2における添加材料の組成は、容積比で、実施例1の添加材料の組成と同じである。
実施例3〜実施例6は、実施例1と比較して次の構成を有する。実施例3から実施例6の順に、全容積に対して、グラファイト(天然、結晶性)とグラファイト(人造)とを合わせた量の容積比が大きくなっており、これとは反対に、コバルトとチタンとを合わせた量の容積比は順に小さくなっている。コバルトとチタンとの容積比は、実施例1のコバルトとチタンとの容積比と等しい。実施例1〜6および比較例において、ムライト、ジルコン、セリサイトの容積比は、等しい。
【0063】
図9図12を参照して、実施例1〜6の効果を示す。実施例1〜6と比較例とを、摩耗量、および動摩擦係数で比較した。
図9は、比較例(放熱部なし)と実施例1、2について、摩耗量を示すグラフである。
図10は、比較例(放熱部なし)と実施例1、2について、動摩擦係数の時間変化を示すグラフである。
図11は、比較例(放熱部あり)と実施例1、3〜6について、摩耗量を示すグラフである。
図12は、比較例(放熱部あり)と実施例1、3〜6について、動摩擦係数の時間変化を示すグラフである。
なお、図11および図12の比較例は、放熱部を有する。図11および図12の比較例以外は、いずれも放熱部を有しない。
【0064】
摩耗量および動摩擦係数について次の条件で測定した。実施例および参考例の摩擦部材12の摩擦面積は、822.4mmである。回転体としてシマノ製(SMRT81S)を用いた。回転速度は240rpm(30km/h相当)、ブレーキキャリパ(シマノ製BRM820)の力が735Nとなるように設定し、30分にわたって引きずりテストを行った。この条件によれば、通常の制動に比べて、高温負荷となっている。具体的には、上記条件によれば、摩擦部材12の温度が、580℃〜650℃になっている。
【0065】
上記試験の結果、実施例1〜6の摩擦部材12の摩耗量は、比較例の摩擦部材の摩耗量よりも少なかった。
上記実施例1と実施例2を比較すると、実施例1は、実施例2よりも摩耗量が小さい。これから、材料において、コバルトの容積比が、チタンの容積比よりも大きいことが好ましいことが分かる。
【0066】
実施例1〜6の摩擦部材12の動摩擦係数は、比較例に比べて、時間経過による低下が小さい。実施例1〜6を比較すると分かるように、グラファイトの含有量が増大すると、時間経過に対する動摩擦係数の低下が大きくなる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従う摩擦部材およびブレーキパッドが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う摩擦部材およびブレーキパッドは、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図13および図14を参照して、放熱構造を有するブレーキパッド30の一例を説明する。ブレーキパッド30は、摩擦部材32と、バックプレート34とを含む。摩擦部材32は、実施形態の摩擦部材12に準じた構造および組成を有する。バックプレート34は、摩擦部材32を支持する支持部36と、放熱構造を有する放熱部38とを含む。
【0071】
支持部36および放熱部38は、本体40に設けられる。本体40は、バックプレート34が人力駆動車のブレーキキャリパに取り付けられた状態で、回転体に対向する第1面40Aと、第1面40Aとは反対側の第2面40Bを有する。摩擦部材32は、本体40の支持部36において、第1面40Aに接合される。放熱部38は、摩擦部材32の反対側に位置しないように、本体40において第2面40Bに設けられる。言い換えれば、放熱部38は、本体40を介して摩擦部材32と対向しないように本体40に設けられる。放熱部38は、本体40に対して一体に形成されてもよく、別体に形成されてもよい。本実施形態では、放熱部38は、本体40に一体形成される。
【0072】
放熱部38は、上述のように、放熱構造を有する。放熱構造は、フィン42を含む。フィン42は本体40の第2面40Bに複数設けられる。複数のフィン42はそれぞれ、第2面40Bから摩擦部材32とは反対側に延びるように設けられる。フィン42は、本体40に対して一体に形成されてもよく、別体に形成されてもよい。本実施形態では、フィン42は、本体40に一体形成される。フィン42を別体に形成する場合、例えば、フィン42を挿入するための孔を本体40に設け、その孔に圧入または接着などの方法でフィン42を固定すればよい。また、本体40には、ブレーキキャリパのピンを通すための貫通孔40Cが支持部36と放熱部38との間に設けられる。
【0073】
・上記実施形態において、摩擦面12Aは、複数に分割されていてもよい。例えば、摩擦面12Aは2つに分割される。摩擦面12Aを構成する2つの摩擦面との間には隙間が形成される。この場合、摩擦面積は、2つの摩擦面の面積の合計によって算出される。また、この場合、摩擦部材12の第1寸法L1および第2寸法L2は、複数の摩擦面を連続した面と看做したときの外形に対して設定される。
【0074】
・実施形態に係るブレーキパッド10,10a,10b,10c,30が取り付けられる人力駆動車は、限定されない。人力駆動車は、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル、カーゴバイク、リカンベント、キックスケータを含む。
【符号の説明】
【0075】
L1…第1寸法、L2…第2寸法、L3…第3寸法、10…ブレーキパッド、10a…ブレーキパッド、10b…ブレーキパッド、10c…ブレーキパッド、12…摩擦部材、12A…摩擦面、14…バックプレート、16…支持部、30…ブレーキパッド、22…摩擦部材、24…金属間化合物、34…バックプレート、36…支持部、38…放熱部、42…フィン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14