【文献】
Mol. Nutr. Food Res.,2013年,57,pp.2079-2085
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること、(ii)個体のサルコペニアを予防すること、(iii)個体の筋機能の低下を軽減すること、(iv)個体の筋機能を向上させること、又は(v)個体の筋萎縮又は筋損傷後の筋機能の回復を改善することのうちの少なくとも1つに関して治療的に有効な量のポリフェノールを含む組成物であって、
前記ポリフェノールが、オレウロペインを含み、
前記組成物が、n−3脂肪酸を含み、
前記組成物が、ホエイタンパク質、カゼイン、エンドウ豆タンパク質、大豆タンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質源を含む組成物。
前記組成物が、食品組成物、栄養補助食品、栄養組成物、ニュートラシューティカルズ、摂取前に水又は乳で再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬品、ドリンク、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明の概要】
【0005】
[0005]理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、筋サテライト細胞及び筋芽細胞は骨格筋量の増加/減少において中心的な役割を果たしている可能性があり、ひいては筋消耗する疾患及び加齢に治療介入的に関与する可能性が高いと考えている。本開示は、肥大の向上又は萎縮の軽減についての栄養学的な解決法を提供し、ひいては、加齢中のサルコペニアの進行を制限して、筋機能の低下を軽減すること、筋機能を向上させること、及び/又は筋萎縮後の筋機能の回復を改善することを目的とする。
【0006】
[0006]ポリフェノールは強力な抗酸化特性及び/又は抗炎症特性を有しており、ココア、茶、及びベリー類などの果物といった多くの植物素材中に存在している。しかしながら、本発明者の知る限りでは、オレウロペイン又はルチンなどのポリフェノールは筋肥大のトリガーとなり、又は萎縮症を抑制し、結果として全部の筋量(の維持、又は低下抑制)に影響を及ぼすことは知られておらず、あるいは公開されていない。
【0007】
[0007]したがって、一般的な実施形態では、本開示は、個体の筋機能の低下を軽減する、個体の筋機能を向上させる、及び/又は個体の筋萎縮後の筋機能の回復を改善する方法を提供する。同化抵抗性を制限又は回避する助けにもなる。本方法は、ポリフェノールを含む組成物を個体に投与することを含む。
【0008】
[0008]一実施形態では、ポリフェノールは、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
[0009]一実施形態では、本組成物は更に脂肪酸を含む。脂肪酸はn−3脂肪酸であってもよい。
【0010】
[0010]一実施形態では、組成物はタンパク質源を更に含む。タンパク質源は、ホエイタンパク質、カゼイン、エンドウ豆タンパク質、大豆タンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質を含み得る。
【0011】
[0011]一実施形態では、組成物は、タンパク質源、ルチン、及びn−3脂肪酸を含む。
【0012】
[0012]別の実施形態では、組成物は、タンパク質源、クルクミン、及びn−3脂肪酸を含む。
【0013】
[0013]一実施形態では、筋機能としては、筋力、歩行速度、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される特性が含まれる。
【0014】
[0014]一実施形態では、個体はサルコペニアを有する。
【0015】
[0015]別の実施形態では、個体は、移動能力障害又は筋力低下を有する高齢者である。
【0016】
[0016]別の実施形態では、本開示は、(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること、(ii)個体のサルコペニアを予防すること、(iii)個体の筋機能の低下を軽減すること、(iv)個体の筋機能を向上させること、又は(v)個体の筋萎縮後の筋機能の回復を改善することのうちの少なくとも1つに関して治療的に有効である栄養学的な量でポリフェノールを含む組成物を提供する。
【0017】
[0017]一実施形態では、ポリフェノールは、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
[0018]一実施形態において、本組成物は、食品組成物、栄養補助食品、栄養組成物、ニュートラシューティカルズ、摂取前に水又は乳で再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬品、ドリンク、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
[0019]別の実施形態では、本開示は、個体においてサルコペニアを予防する方法を提供する。本方法は、ポリフェノールを含む組成物をサルコペニアのリスクのある個体に投与することを含む。
【0020】
[0020]一実施形態では、ポリフェノールは、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
[0021]別の実施形態では、本開示は、食品組成物の製造方法を提供する。本方法は、ポリフェノールを別の成分に加えて食品組成物を形成することを含み、ポリフェノールは、個体における筋機能の低下を軽減し、個体の筋機能を向上させ、及び/又は個体における筋萎縮後の筋機能の回復を改善する、治療的に有効な量で添加される。
【0022】
[0022]本開示の利点は、個体におけるサルコペニアを治療する食品製品又は補助食品などといった組成物を提供することである。
【0023】
[0023]本開示の別の利点は、サルコペニアを予防する組成物、例えば食品製品又は補助食品を提供することである。
【0024】
[0024]本開示の更に別の利点は、個体の筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の低下を、その組成物を含まない食事を摂取している場合に起こるであろう低下と比較して軽減する組成物、例えば食品製品又は補助食品を提供することである。
【0025】
[0025]本開示の更なる利点は、個体の筋機能(例えば筋力、歩行速度等)を、その組成物を含まない食事の摂取によって呈するであろう筋機能(例えば筋力、歩行速度等)と比較して向上させる組成物、例えば食品製品又は補助食品を提供することである。
【0026】
[0026]本開示の別の利点は、個体の筋萎縮後の筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の回復を、その組成物を含まない食事の摂取によって呈するであろう回復と比較して改善する組成物、例えば食品製品又は補助食品を提供することである。
【0027】
[0027]本開示の更に別の利点は、有利には、個体のサルコペニアの軽減、予防、又は治療を促進することである。
【0028】
[0028]本開示の別の利点は、個体におけるサルコペニアの発症を軽減する、特に高齢者の筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の低下を軽減する栄養戦略を提供することである。
【0029】
[0029]追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
[0030][
図1]〜[
図13]本明細書に開示する実験例のデータである。
[0031]
【
図1】1.0μMでのオレウロペイン(OLP)のクレアチンキナーゼ活性(CK)に対する効果。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。タンパク質含量についてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図2】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のMyoD発現に対する効果。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図3】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のミオゲニン(MyoG)発現に対する効果。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図4】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(CXCL−1)発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図5】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、RANTES(活性化制御で、発現、分泌される正常T細胞:regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)としても知られるケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5(CCL−15)の発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図6】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、トロンボスポンジンモチーフ4を有するディスインテグリン(A disintegrin)及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS−4)の発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図7】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のNF−κB(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー:nuclear factor kappa−light−chain−enhancer of activated B cells)の発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図8】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)としても知られるプロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2の発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図9】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、インターロイキン−6(IL−6)発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図10】1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)発現に対する効果。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【
図11】ルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の、老齢ラットにおける除脂肪部分増加に対する効果。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。
【
図12】老齢ラットにおいてベースラインから3ヶ月の補給までの歩行速度の変化に対するルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の効果。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。
【
図13】老齢ラットにおける、ルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の、軽度の炎症(α2マクログロブリン)に対する効果。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0044]パーセンテージは全て、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比は全て、特に明記しない限り重量によるものとする。pHについての参照がなされるとき、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値範囲内、例えば、参照数字の−10%から+10%の範囲、好ましくは−5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の−1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の−0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0032】
[0045]更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers,whole)又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数字又は数字の部分集合を対象とする請求(claim)を支持するために与えられていると解釈すべきである。例えば、1〜10という開示は、1〜8、3〜7、1〜9、3.6〜4.6、3.5〜9.9等の範囲を支持するものと解釈すべきである。
【0033】
[0046]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「a」、「an」及び「the」の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「成分(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、かかる「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」の文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」として解釈すべきである。
【0034】
[0047]同様に、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、排他的にではなく、包括的に解釈される。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは包括的なものであると解釈される。しかし、本開示により提供される実施形態は、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素を欠く場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的になる」、及び「からなる」実施形態の開示でもある。本明細書において使用されるとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合に、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきものではない。本明細書で開示される全ての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0035】
[0048]「動物」としては、齧歯類、水生哺乳類、イヌ及びネコ等の飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマ等の家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳類」、又はこれらの複数形が用いられる場合、これらの用語には、本節の文脈により効果が示され得る、又は示されるように意図され得るあらゆる動物が当てはまる。本明細書で使用するとき、用語「患者」は、本明細書において定義されるとおりの治療を受ける又は治療を受けることが意図される動物、特に哺乳類、及び更にはヒトを含むものと理解される。用語「個体」及び「患者」は、本明細書で使用するとき、多くの場合、ヒトを指して使用されるが、本開示はヒトに限定されはしない。したがって、用語「個体」及び「患者」は、治療により効果を得ることのできる任意の動物、哺乳類又はヒトを指す。
【0036】
[0049]用語「高齢者」は、60歳を超える人、好ましくは63歳を超える人、及びより好ましくは65歳を超える人を意味する。用語「フレイル」は、身体的に虚弱で、即ち丈夫でなく、脆弱な人を指す。
【0037】
[0050]用語「治療」及び「治療すること」には、状態又は疾患(障害)の改善をもたらす任意の効果、例えば状態又は疾患を和らげること、軽減すること、制御すること、又は解消させることが含まれる。この用語は、対象が完治するまで治療されることを必ずしも意味するものではない。状態又は疾患を「治療すること」又は「その治療」の非限定的な例としては、(1)状態又は疾患を阻害すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の発症を止めること、及び(2)状態又は疾患を緩和すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の一時的又は永続的な消退を生じさせることが挙げられる。治療は患者に関連するものであってもよく、又は医師に関連するものであってもよい。
【0038】
[0051]用語「予防」又は「予防すること」は、状態又は障害にさらされ得る又はそれに罹り易い傾向があり得るが、まだ状態又は障害の症状を呈していない又はそれが現れていない個体において、言及される状態又は障害の臨床症状を発症させないことを意味する。用語「状態」及び「疾患/障害」は、任意の疾患、状態、症状、又は徴候を意味する。
【0039】
[0052]相対語「改善された(improved)」、「向上された(increased)」、及び「増強された(enhanced)」などは、1種以上のポリフェノール(本明細書において開示される)を含む組成物の効果を、ポリフェノールを含まないことを除き同一である組成物と比較して示すものである。
【0040】
[0053]用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取、並びにかかる個体に対する少なくとも1種の栄養分の提供が意図された、製品又は組成物を意味する。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に記載の必須成分(essential elements)及び制限に加え、本明細書に記載の、又は食事療法に有用な、任意の追加の若しくは任意選択的な成分、構成成分、又は制限を含んでよく、これらから構成されてよく、又は本質的にこれらから構成されてよい。
【0041】
[0054]本明細書で使用するとき、「完全栄養」は、その組成物が投与される動物にとって、唯一の栄養源とするのに十分な、十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂質及び炭水化物)及び微量栄養素を含有する。個体は、このような完全栄養組成物から、個体が必要とする栄養分の100%を受容可能である。
【0042】
[0055]「ポリフェノール」は、官能性誘導体を含む1種以上のヒドロキシ置換基を有する芳香環を含む、化合物である。ポリフェノールを含む抗酸化剤としては、植物、藻類、若しくは真菌抽出物、又はフラボノイド類(イソフラボン類、アントシアニン類、プロアントシアニジン類及びアントシアニジン類、フラバン類、フラボノール類、フラボン類及びフラバノン類)を含むポリフェノールに富む画分が挙げられる。バイオフラボノイドの具体例には、カテキン類(カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガラート、エピガロカテキンガラート)、オレウロペイン、ケルセチン、ルチン、ヘスペリジン、クルクミン、及びゲニステインがある。
【0043】
[0056]本開示の一態様は、哺乳類、例えばヒトなどの個体において、サルコペニアを治療又は予防する、筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の低下を軽減する、筋機能(例えば筋力、歩行速度等)を向上させる、及び/又は筋萎縮後の筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の回復を改善するための、1種以上のポリフェノールを含む組成物である。本開示の別の態様は、1種以上のポリフェノールを含む治療的に有効な量の組成物を個体に投与して、かかる個体のサルコペニアを治療すること、個体におけるサルコペニアを予防すること、個体における筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の低下を軽減すること、個体における筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)を向上させること、及び/又は個体における筋萎縮後の筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の回復を改善することを含む方法である。一実施形態では、組成物は、合計濃度約1μMで1種以上のポリフェノールを含む。
【0044】
[0057]本開示により治療又は予防されるとおりの筋萎縮は、多くの理由で生じ得る。例えば、筋萎縮は、寝たきりになるなどして身体活動が不足するか、又は加齢(老化に伴うサルコペニア)、股関節部骨折回復、若しくは、例えば癌、AIDS、うっ血性心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、腎不全、外傷、敗血症、及び重度の熱傷など、いくつかの共存疾患に伴い身体活動が低くなっているために起こり得る。筋萎縮はまた、栄養不足若しくは適当でない栄養又は飢餓によっても起こり得る。極めてよく見られるところでは、筋萎縮はそれぞれの筋肉の廃用又は使用不足によって起こる。
【0045】
[0058]本開示において言及される筋肉は、好ましくは骨格筋である。例えば、本明細書において開示される組成物を使用して、個体の腕及び/又は脚における筋機能の低下を軽減することができる。筋肉は、以下、即ち、腓腹筋、脛骨筋、ヒラメ筋、長趾伸筋(EDL)、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、又は大殿筋のうち1つ以上であり得る。
【0046】
[0059]筋萎縮は、サルコペニア障害、即ち加齢に起因する筋肉の量、サイズ、及び機能の低下を引き起こし得る。筋萎縮の程度は、高齢者の極度のフレイルに見られるような重度の筋萎縮など、様々であり得る。極度のフレイルの高齢者は日常活動及び自己管理が困難となり得る。重症度が低い筋萎縮では、いくらかの動作及びいくらかの筋活動が可能であるものの、そうした筋活動は完全な筋組織の維持には不十分である。加齢に伴うサルコペニアの治療又は予防に関わる機序は、若年者の筋機能低下の治療又は予防とは異なる。
【0047】
[0060]本明細書において開示される組成物は1種以上のポリフェノールを含み、かかる組成物を含まない食事と比較して、組成物を投与された個体の筋機能の低下を軽減し及び/又は筋機能を改善することができる。好ましい実施形態では、1種以上のポリフェノールは、食品等級のポリフェノールである。化合物は、それが一般に認められており、かつ食品用途に安全であるとみなされる場合に、「食品等級」とみなされる。
【0048】
[0061]2種以上のポリフェノールなど、ポリフェノールの混合物が用いられてもよい。ポリフェノールはまた、ポリフェノールが豊富に含まれる食品組成物又はその抽出物として提供されてもよい。ポリフェノールが豊富である又はポリフェノールが濃縮されている植物抽出物は特に本発明に好適である。
【0049】
[0062]ココア、コーヒー及び茶には、ポリフェノールが多く含まれる。果実エキス又はドライフルーツ、例えば、セイヨウナシ、リンゴ、ブドウ、クランベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、クロスグリ、サクランボ、プラム、及び/又はザクロが、ポリフェノール源として用いられてもよい。また、クリ、ヘーゼルナッツ及びアマニなど、一部の堅果類及び種子類にもポリフェノールが豊富に含まれる。ポリフェノールを豊富に含む野菜の非限定的な例は、キャベツ、ブロッコリー、ビートルート、アーティチョークのつぼみ、黒オリーブ、黒豆、セロリ、玉ねぎ、パセリ、及びほうれん草である。
【0050】
[0063]1種以上のポリフェノールは、精製化合物又は一部精製された化合物であってよい。好適なポリフェノールの非限定的な例は、フェノール酸;フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、フラバノン類、アントシアニン類、及びフラバノール類などのフラボノイド類;スチルベン類;及びリグナン類である。一実施形態では、1種以上のポリフェノールは、フラボノール及び/又はフラボノールグリコシドを含む。非限定的な例として、1種以上のポリフェノールは、オレウロペイン、ルチン、クルクミン、又はケルセチンのうちの1種以上を含み得る。
【0051】
[0064]1種以上のポリフェノールは、1回の提供当たりそれぞれ0.01mg〜約1g、好ましくは0.1mg〜1g、更により好ましくは1mg〜約1gの量で存在させることができる。
【0052】
[0065]治療効果を達成するのに必要とされる本発明の組成物の有効量は、当然のことながら、具体的な組成物、投与経路、対象者の年齢及び状態、並びに処置する具体的な障害又は疾患によって異なり得る。
【0053】
[0066]実例として、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)は、各活性成分を1回の提供当たり0.01mg〜500mg、より好ましくは1回の提供当たり約250mg含有することになる。
【0054】
[0067]1種以上のポリフェノールに加え、組成物は、動物又は植物由来のタンパク質源、例えば、乳タンパク質、大豆タンパク質、及び/又はエンドウ豆タンパク質を更に含み得る。好ましい実施形態において、タンパク質源は、ホエイタンパク質;カゼインタンパク質;エンドウ豆タンパク質;大豆タンパク質;小麦タンパク質;トウモロコシタンパク質;米タンパク質;マメ科植物、禾穀類及び穀粒類由来のタンパク質;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。それに加えて又は代えて、タンパク質源は、堅果類及び/又は種子類由来のタンパク質を含み得る。
【0055】
[0068]タンパク質源はホエイタンパク質を含み得る。ホエイタンパク質は非加水分解又は加水分解ホエイタンパク質であってもよい。ホエイタンパク質は任意のホエイタンパク質であってよく、例えばホエイタンパク質は、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、ホエイタンパク質ミセル、ホエイタンパク質加水分解物、酸ホエイ、スイートホエイ、変性スイートホエイ(カゼイノ−グリコマクロペプチドが除去されたスイートホエイ)、ホエイタンパク質の画分、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましい実施形態において、ホエイタンパク質はホエイタンパク質分離物及び/又は変性スイートホエイを含む。
【0056】
[0069]上述のとおり、タンパク質源は動物又は植物由来であってもよく、例えば、乳タンパク質、大豆タンパク質、及び/又はエンドウ豆タンパク質であり得る。一実施形態において、タンパク質源はカゼインを含む。カゼインは任意の哺乳類から得ることができるが、好ましくは牛乳から、及び好ましくはミセルカゼインとして得られる。
【0057】
[0070]本発明の一実施形態では、組成物は、タンパク質、好ましくはホエイを、5〜50g/日、例えば12〜40g/日、好ましくは15〜30g/日、例えば16〜25g/日、更により好ましくは20g/日で摂取する量でタンパク質を含む。
【0058】
[0071]本組成物は1つ以上の分枝鎖アミノ酸を含み得る。例えば、本組成物は、ロイシン、イソロイシン及び/又はバリンを含み得る。本組成物のタンパク質源は、遊離形態のロイシン、及び/又はペプチド及び/又は乳タンパク質、動物性タンパク質若しくは植物性タンパク質などのタンパク質として結合したロイシンを含み得る。一実施形態において、本組成物は、組成物の乾燥物質の最大10重量%の量のロイシンを含む。ロイシンは、D−又はL−ロイシン、好ましくはL型として存在し得る。本組成物がロイシンを含む場合、本組成物は、体重1kg当たり0.01〜0.04gのロイシン、好ましくは体重1kg当たり0.02〜0.035gのロイシンを提供する1日用量で投与することができる。かかる用量は、特に完全栄養組成物に妥当であるが、当業者は、これらの用量をどのように経口栄養補助食品(ONS)に適合させればよいかを容易に認識するであろう。
【0059】
[0072]一実施形態では、1種以上のポリフェノールを含む組成物は、脂肪酸を更に含む。脂肪酸は任意の脂肪酸であってよく、脂肪酸の組み合わせなど、1つ以上の脂肪酸であり得る。脂肪酸は好ましくは、必須多価不飽和脂肪酸、即ちリノール酸(C18:2n−3)及びα−リノレン酸(C18:3n−3)など、必須脂肪酸を含む。脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、又はこれらの任意の組み合わせなど、長鎖多価不飽和脂肪酸を含み得る。好ましい実施形態において、脂肪酸はn−3(ω3)脂肪酸及び/又はn−6(ω6)脂肪酸を含む。脂肪酸は好ましくは、エイコサペンタエン酸を含む。
【0060】
[0073]脂肪酸は、ヤシ油、ナタネ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ベニバナ油、パーム油、ヒマワリ油又は卵黄など、脂肪酸を含有する任意の好適な供給源に由来し得る。脂肪酸の供給源は、好ましくは魚油である。
【0061】
[0074]本発明によるn−3脂肪酸は、通常、総脂肪含量に基づき少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%である。好ましい実施形態では、一日量は、500mg〜2.5g、好ましくは1g〜1.5g/日のn−3脂肪酸である。
【0062】
[0075]1種以上のポリフェノールに加え、別の抗炎症化合物又は抗酸化物質を組成物に使用することもできる。例えば、追加の抗酸化物質が、抗酸化物質が豊富に含まれる食品組成物として、又はその抽出物として提供され得る。「抗酸化物質が豊富に含まれる」食品組成物は、ORAC(酸素ラジカル吸収能)の評点が組成物100g当たり少なくとも100である。
【0063】
[0076]最も好ましい一実施形態では、組成物は、少なくともタンパク質源、ルチン、及びn−3脂肪酸を含む。タンパク質源は、好ましくはホエイを含む。
【0064】
[0077]別の好ましい実施形態では、組成物は、少なくともタンパク質源、クルクミン、及びn−3脂肪酸を含む。タンパク質源は、好ましくはホエイを含む。より好ましい実施形態では、本組成物は、一日量で約20gのホエイ、500mgのポリフェノール(例えば、クルクミン又はルチン)、1500mgのn−3脂肪酸を提供するべく投与される。
【0065】
[0078]一実施形態では、組成物は、ビタミンDを更に含む。本発明による組成物は、例えば、1回の提供当たり800〜1200IUの量でビタミンDを含む。
【0066】
[0079]1種以上のポリフェノールを含む組成物は、ヒト、例えば、高齢者などの個体に、治療的に有効な用量で投与され得る。治療的に有効な用量は当業者により決定され得るものであり、状態の重症度並びに個体の体重及び全身状態など、当業者に公知のいくつもの要因によって異なり得る。
【0067】
[0080]本組成物は、個体においてサルコペニア状態がまだ発症していない場合に、サルコペニアを予防するのに、又はその発症リスクを少なくとも部分的に軽減するのに十分な量で個体に投与され得る。かかる量は「予防的に有効な用量」と定義される。この場合もまた、正確な量は、体重、健康状態及び筋機能(例えば筋力、歩行速度等)がどの程度低下しているかなど、個体に関連するいくつもの要因によって異なる。
【0068】
[0081]本組成物は、好ましくは個体の食事に対する補給剤として毎日又は少なくとも週2回投与される。一実施形態において、本組成物は、個体に数日間にわたり連続的に、好ましくは投与前と比較して筋機能(例えば筋力、歩行速度等)の向上が達成されるまで投与される。例えば、本組成物を、少なくとも30日間、60日間又は90日間連続で毎日個体に投与することができる。別の例として、本組成物を、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10年の期間など、より長期間にわたって個体に投与することができる。
【0069】
[0082]好ましい実施形態において、本組成物を、少なくとも3ヶ月間、例えば3ヶ月〜1年の期間、好ましくは少なくとも6ヶ月間にわたって個体に投与する。
【0070】
[0083]上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2〜4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
【0071】
[0084]好ましい実施形態では、本組成物は、個体に経口投与又は経腸投与(例えば経管栄養法)される。例えば、本組成物は、飲料、カプセル、錠剤、散剤又は懸濁液剤として個体に投与することができる。
【0072】
[0085]本組成物は、ヒト及び/又は動物が摂取するのに好適ないかなる種類の組成物であってもよい。例えば、本組成物は、食品組成物、栄養補助食品、栄養組成物、ニュートラシューティカルズ、摂取前に水又は乳で再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬品、飲料及びドリンクからなる群から選択され得る。一実施形態では、本組成物は、経口栄養補助食品(ONS)、完全栄養配合物、医薬品、薬剤又は食品製品である。好ましい実施形態では、本組成物は個体に飲料として投与される。本組成物は粉末としてサシェに保存され、次に使用の際に水などの液体中に懸濁されてもよい。
【0073】
[0086]経口又は経腸投与が不可能であるか、又は推奨されない一部の場合には、本組成物はまた、非経口投与されてもよい。
【0074】
[0087]一部の実施形態では、本組成物は単回投与剤形で個体に投与され、即ち、食事と一緒に個体に与えられる1つの製剤中に全ての化合物が存在している。他の実施形態では、組成物は、別個の剤形で併用投与され、例えば、1種以上のポリフェノールは、組成物のその他の成分のうち1種以上と別個に投与され、及び/又は1種以上のポリフェノールのうち一部分は、1種以上のポリフェノールのうち別の部分とは別個に投与される。
[0088]
【実施例】
【0075】
[0089]以下の非限定的な例は、1種以上のポリフェノールを含む組成物を投与して、組成物を投与された個体におけるサルコペニアを治療する、サルコペニアを予防する、筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の低下を軽減する、筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)を向上させる、及び/又は筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の回復を改善するという概念を展開しかつ支持する科学的データを示す。
【0076】
[0090]マウスC2C12筋芽細胞株(大腿筋由来のサテライト細胞)は、筋萎縮及び肥大の良好な説明となる。C2C12細胞は、多核化筋管に分化する。筋芽細胞の分化、ひいては筋管形成は、C2C12細胞におけるクレアチンキナーゼ(CK)活性を測定することにより生化学的に観察される。
【0077】
[0091]実施例1:本発明者らが使用するモデルにおいて、C2C12細胞を2種類のポリフェノール、すなわちオレウロペイン(オリーブ葉由来)及びケルセチン(アグリコン形態のルチン)で処理した。腫瘍壊死因子−α(TNF−α)は、多くの状態及び加齢における筋消耗のメディエーターとして関係付られている多面発現性のサイトカインであり、これを筋萎縮の対照として使用した。TNF−αの存在下又は非存在下でポリフェノール治療を行った。更に、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)を肥大の対照として使用した(
図1)。
【0078】
[0092]結果として、1μMでのオレウロペインは筋管の分化(肥大)を向上可能であったことが示された。
【0079】
[0093]実施例2:本発明者らにより使用されるモデルにおいて、TNF−α(10ng/mL)の存在下又は非存在下で4日間、C2C12筋芽細胞をオレウロペイン(1.5μM)で処理した。TNF−α(腫瘍壊死因子−α)は、多くの状態及び加齢における筋消耗のメディエーターとして関係付られている多面発現性のサイトカインであり、これを筋萎縮の対照として使用した。TNF−αも使用して、C2C12に炎症状態を誘導した。第3日目及び第4日目では、オレウロペインにより、非炎症状態において、筋管分化についてのマーカーであるミオゲニンD(MyoD)(
図2)及びMyoG(
図3)が増加したことから、筋肥大の刺激が示唆される。炎症状態(TNF−αによる)において、特定の筋炎症性サイトカイン、C−X−Cモチーフリガンド1(CXCL−1)(
図4)及びC−Cモチーフリガンド5(CCL−5)(
図5)の発現は、第4日目にオレウロペインにより減少したことから、筋肉細胞の炎症応答の低下が示唆される。その他の筋特異性ではない炎症性サイトカイン(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー、すなわちNFK−B(
図7)、シクロオキシゲナーゼ−2、すなわちCox−2(
図8)及びインターロイキン−6、すなわちIL−6(
図9)が減少していたことから、オレウロペインの抗炎症特性が示される。最終的に、トロンボスポンジンモチーフ4を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS−4)(
図6)もオレウロペインにより減少した。我々のモデルにおいて、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)を測定することにより筋タンパク質の分解を評価したところ(
図10)、3日目と4日目でオレウロペインにより減少していた。
【0080】
[0094]
図1は、1.0μMでのオレウロペイン(OLP)のクレアチンキナーゼ活性(CK)に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。タンパク質含量についてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。ベースライン:増殖培地中で分化させた非分化細胞についての基礎対照。対照:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照(DM)。TNFa 10ng/mL:DM(萎縮症の対照)中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。IGF−1 10nM:DM(肥大の対照)中10nMの濃度のインスリン様増殖因子1。OLP 1μM:DM中1.0μM濃度のオレウロペイン。
【0081】
[0095]
図2は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のMyoD発現に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0082】
[0096]
図3は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のミオゲニン(MyoG)の発現に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0083】
[0097]
図4は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(CXCL−1)発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0084】
[0098]
図5は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、RANTES(活性化制御で、発現、分泌される正常T細胞)としても知られるケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド5(CCL−15)の発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0085】
[0099]
図6は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、トロンボスポンジンモチーフ4を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS−4)の発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
【0086】
[0100]DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0087】
[0101]
図7は、1.5μMオレウロペイン(OLP)のNF−κB(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー)の発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0088】
[0102]
図8は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)としても知られるプロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2の発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0089】
[0103]
図9は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、インターロイキン−6(IL−6)発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFα 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0090】
[0104]
図10は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)発現に対する効果を示す。TNF−α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFα 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFα 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
【0091】
[0105]これらの結果を併せて、オレウロペインは、炎症経路を介した炎症の影響を抑えてタンパク質分解を制限し、筋肥大を刺激することが示唆された。
【0092】
[0106]実施例3:老齢のラットは、加齢に関連する筋肉の衰えにおける栄養介入効果を評価するに当たり良好なモデルである。このモデルにより、ヒトの場合と同様、加齢に伴う筋量の減少及び機能の低下を観察することができる。本発明者らが使用したこのモデルでは、20ヶ月齢のラットには、通常の飼料、あるいはポリフェノール、ルチン、及びn−3脂肪酸(n−3 FA)のうちの1種を添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。核磁気共鳴(NMR)による測定では、除脂肪部分増加量は、対照群と比較してルチン+n−3 FA群において有意に大きかった。移動能力についてのパラメータである、加齢に伴って観察される歩行速度の減少は、ルチン+n−3 FAの補給により有意に軽減した。α−2マクログロブリン循環濃度を測定することにより、軽度の炎症を評価したところ、かかる炎症はルチン及びn−3FAにより減少した。(
図11〜13)
図11は、ルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の、老齢ラットにおける除脂肪部分増加に対する効果を示す。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。CTL:対照飼料。RUT+n−3 FA:ルチン及びn−3脂肪酸を添加した対照飼料。
【0093】
[0107]次に、
図12は、老齢ラットにおいてベースラインから3ヶ月の補給までの歩行速度の変化に対するルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の効果を示す。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。CTL:対照飼料。RUT+n−3 FA:ルチン及びn−3脂肪酸を添加した対照飼料。
【0094】
[0108]同様にして、
図13は、老齢ラットにおける、ルチン及びn−3脂肪酸(RUT+n−3 FA)の、軽度の炎症(α2マクログロブリン)に対する効果を示す。20ヶ月齢のラットに、対照飼料又はルチンとn−3FAとを添加した同じ飼料のいずれかを3ヶ月間給餌した。結果を平均±標準誤差で表した。CTL:対照飼料。RUT+n−3 FA:ルチン及びn−3脂肪酸を添加した対照飼料。
【0095】
[0109]これらの結果を併せて、ルチン及びn−3 FAの補給により、老齢ラットにおいて筋量の低下が軽減され、かつ機能が改善したことが示された。これは、軽度の炎症の軽減に関連付けられる。