特許第6859354号(P6859354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6859354医療用の輸液又は輸血装置のドリップチャンバ用フート弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859354
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】医療用の輸液又は輸血装置のドリップチャンバ用フート弁
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20210405BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20210405BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61M5/168 506
   A61M39/22
   A61M5/14 520
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-536809(P2018-536809)
(86)(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公表番号】特表2019-503781(P2019-503781A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】IB2017050525
(87)【国際公開番号】WO2017134564
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】102016000012348
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507028619
【氏名又は名称】インドゥストリー・ボルラ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】Industrie Borla S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・グアラ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−509599(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102772842(CN,A)
【文献】 登録実用新案第3163771(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
A61M 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の輸液又は輸血装置のドリップチャンバ(1)に使用されるフート弁(7)であって、閉位置と開位置との間で軸方向に移動可能なフロートオブチュレータ(11)が協働する環状の弁座(15)を備え、前記フート弁(7)は、弾性的に変形可能な軸方向部分(9)を有する格納ケージブッシュ(8)を備え、前記弾性的に変形可能な軸方向部分(9)の内部で前記フロートオブチュレータ(11)がガイドされた態様で浮動し、前記格納ケージブッシュ(8)の前記軸方向部分(9)及び前記フロートオブチュレータ(11)は、それぞれ相対する表面(14,16;14,18)を備え、前記格納ケージブッシュ(8)の半径方向の変形によって、前記フロートオブチュレータ(11)が前記環状の弁座(15)から離れる方向に軸方向の推力が生じるように構成され
前記格納ケージブッシュ(8)の側壁は、弾性的に変形可能な軸方向部分(9)の頂部によって形成され、自由端は広がった表面(14)を有し、フロートオブチュレータ(11)の対応する広がった環状の表面(16;18)に面することを特徴とする、フート弁(7)。
【請求項2】
前記格納ケージブッシュ(8)は前記環状の弁座(15)を形成する平坦な基部(10)を備え、前記フロートオブチュレータ(11)は、軟質の円板状の膜(13)を備え、前記軟質の円板状の膜(13)は、前記閉位置で前記平坦な基部(10)に当接することを特徴とする、請求項1に記載のフート弁。
【請求項3】
医療用の輸液又は輸血装置のドリップチャンバは、半径方向に弾性的に変形可能な側壁(2)と、出口開口(4)を有する底壁(3)とを備える中空の長尺な円筒状の本体(1)、並びに前記出口開口(4)に面すると共に、閉位置と開位置との間で軸方向に移動可能なフロートオブチュレータ(11)が協働する環状の弁座(15)を有するフート弁(7)を備え、前記フート弁(7)は、前記本体(1)の前記側壁(2)と、前記底壁(3)との間に密着するように取り付けられている格納ケージブッシュ(8)を備え、前記格納ケージブッシュ(8)は、弾性的に変形可能な軸方向部分(9)を有し、前記弾性的に変形可能な軸方向部分(9)の内部で前記フロートオブチュレータ(11)はガイドされた態様で浮動し、前記格納ケージブッシュ(8)の前記軸方向部分(9)と、前記フロートオブチュレータ(11)とは、それぞれ相対する表面(14,16;14,18)を備え、前記本体(1)の側壁(2)の半径方向の変形は、前記格納ケージブッシュ(8)の軸方向部分(9)に伝わり、フロートオブチュレータ(11)が前記環状の弁座(15)から離れる方向に軸方向の推力が生じるように構成され
前記格納ケージブッシュ(8)の側壁は弾性的に変形可能な軸方向部分(9)の頂部により形成され、広がった表面(14)を備える自由端は、フロートオブチュレータ(11)の対応する広がった環状の表面(16;18)に面することを特徴とする、フート弁(7)を備える、ドリップチャンバ。
【請求項4】
前記格納ケージブッシュ(8)は、前記環状の弁座(15)を形成する平坦な基部(10)を有し、前記フロートオブチュレータ(11)は、前記閉位置において前記平坦な基部(10)に当接する軟質の円板状の膜(13)を備えることを特徴とする、請求項に記載のドリップチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療用の輸液又は輸血装置に関し、より詳細には、典型的にはバッグ又はボトルに収容され患者に提供される医療用の液体の計量供給用ドリップチャンバ(drip chamber)に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなドリップチャンバは、出口開口を有する底壁を備えており、中空で長尺の円筒形の本体から構成されている。出口開口に繋がる通路は、フート弁(foot valve)によって制御されており、フート弁は環状の弁座を備え、使用中においてドリップチャンバに液体が存在する開位置と、液体がなくなったと考えられる閉位置との間で軸方向に移動できるフロートオブチュレータ(float obturator)が協働する。そして、半径方向に弾性的に変形可能なドリップチャンバの側壁より加えられた半径方向の推力(radial thrust)は、フロートオブチュレータまで伝わるため、フロートオブチュレータを弁座より離すための弁の再開放は手動によっても行われ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フロートオブチュレータは従来、ドリップチャンバ本体の内部を自由に移動することができる単純なボール要素によって構成されている。シンプルかつ経済的ではあるが、この構成は、使用中、ドリップチャンバが完全に垂直でない場合、環状の弁座上のボールオブチュレータによる閉鎖が不正確で不完全となり得、ドリップチャンバ底壁の出口開口を通る空気の流れの完全な封鎖をし損じる危険性があるという機能上の問題を示す。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0125103号は、ドリップチャンバ本体に固定されたオブチュレータと、ドリップチャンバの弾性的に変形可能な管状付属物に固定されたスリーブを回転させることによってオブチュレータに対して軸方向に移動可能である弁座とを含むフート弁を備えたドリップチャンバを開示している。
【0005】
本発明の目的は、このような欠点を克服することである。この目的は、請求項1の前段で規定されたフート弁によって達成され、このフート弁の固有の特徴は、弾性的に変形可能な側壁を有する格納ケージブッシュ(containment cage bush)を含み、側壁の内部をフロートオブチュレータがガイドされた態様で浮動することにある。格納ブッシュの側壁とフロートは、表面がそれぞれ互いに面しており、格納ブッシュの半径方向の変形は、フロートオブチュレータに環状の弁座から離れる方向へ軸方向の推力を与えるように構成される。
【発明の効果】
【0006】
この解決策によって、ドリップチャンバに液体がある状態である開位置から液体のない状態である閉位置へのフロートオブチュレータの動きが使用中においてガイドされ、従って制御された態様で生じ、その結果、不正確又は不完全な封鎖となるリスクを回避している。従来の解決策に対して、オブチュレータがドリップチャンバ中で浮動する動きは自由でなく、格納ケージブッシュによって制限されるという事実によってフート弁の再開放も、より効率的かつ安全な方法で実行することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、格納ブッシュは環状の弁座を形成する平坦な基部を有し、フロートは、弁の閉位置でその基部に当接する軟質の円板状の膜を備える。
【0008】
格納ブッシュは、有利には、弾性的に変形可能な軸方向部分の頂部(crown)によって形成され、その自由端は広がった部分を有し、この広がった部分はフロートの対応する広がった環状壁に面する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付の図面を参照して、あくまで限定しない例として詳細に説明される。
【0010】
図1】本発明によるフート弁を備えた医療用輸液又は輸液装置のドリップチャンバの開位置における軸方向の断面模式図。
図2】フート弁が閉位置のときの図1の一部分の拡大詳細図。
図3】フート弁が開位置のときの拡大詳細図。
図4】フート弁の斜視図。
図5】本発明によるフート弁の変形例の閉位置における軸方向の断面図。
図6】本発明によるフート弁の変形例の開位置における軸方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1を参照すると、医療用の輸液又は輸血装置用のドリップチャンバが1で示されており、ドリップチャンバは、プラスチック材料で作られる中空で長尺の円筒形の本体から形成されており、当該本体は、半径方向に弾性的に変形可能な側壁2と、フレキシブルパイプにドリップチャンバを接続するための管状のコネクタ5に連通する出口開口4を備える底壁3とを有する。
【0012】
6で示されるように、底壁3の反対側におけるドリップチャンバ1の端部は図示しない公知のタイプの穿孔要素を液密な態様で受容するように設計されている。
【0013】
ドリップチャンバ1の内部には、概して7で示されるフート弁が配置されている。フート弁は、出口開口4を通る流れを制御する機能を有しており、このような通路はドリップチャンバ1の中に液体が存在しているときには開いていなければならず、液体がなくなると自動的に閉じなければならない。
【0014】
本発明によると、フート弁7は格納ケージブッシュ8を備える。格納ケージブッシュ8は、弾性的に変形可能な軸方向部分(axial sector)9の頂部によって形成され、軸方向部分9はドリップチャンバ1の側壁2と底壁3との間に密封するように固定され、環状の弁座15を形成している平坦な基部10から突出している。
【0015】
フロートオブチュレータ11は、図示するように2つの部品から作られる若しくは単一の部品から作られる、下壁12及び成形された環状の表面16を有する中空の本体によって形成されており、格納ケージブッシュ8の内部でガイドされた態様で浮動する。
【0016】
円板状の膜13は、軟質な材料から作られ、格納ケージブッシュ8の環状の弁座15と軸方向で面しており、下壁12の外側で固定されている。
【0017】
フロートオブチュレータ11の側壁は、ドリップチャンバ1の端部6の方向に広がる環状の表面16を有し、格納ケージブッシュ8の変形可能な軸方向部分9の対応する広がった表面14に面して配置されている。
【0018】
図2に示されるフート弁7の閉位置では、環状の弁座15を閉鎖し、ドリップチャンバ1の出口開口4を閉鎖するように、フロートオブチュレータ11の円板状の膜13は、格納ケージブッシュ8の平坦な基部10に当接する。この状態はドリップチャンバ1に液体のない状態と対応している。
【0019】
液体が存在している状態では、フート弁7は図1及び図3に示される開位置をとる。すなわちフロートオブチュレータ11は、ドリップチャンバ1の出口開口4へ繋がる通路を開いておくために格納ケージブッシュ8から離れ、円板状の膜13が環状の弁座15から離れた位置をとっている。
【0020】
フロートオブチュレータ11の開閉の変位は、格納ケージブッシュ8によって効果的にガイドされる。加えて、2本の指を使用して単にドリップチャンバ1の弾性的に変形可能な側壁2を半径方向に変形させ、それに応じて格納ケージブッシュの変形可能な軸方向部分9を半径方向に変形させ、自由端である広がった表面14と広がった環状表面16との間の相互作用によって、ドリップチャンバ1の端部6に向いた軸方向の推力をフロートオブチュレータ11に伝達することで、フロートオブチュレータ11の閉位置から開位置への移動を、手動であっても、楽に、かつ容易な態様で行うことができる。
【0021】
以上の説明を考慮すると、格納ケージブッシュ8による効果的なガイドの態様によってのみではなく、フート弁7の完全な閉鎖と迅速な再開放の保証に寄与する限定された軸方向の行程によっても、フート弁7の開閉に対応するフロートオブチュレータ11の変位が起こることは明らかである。
【0022】
図5及び図6は、それぞれ開位置及び閉位置で表された本発明によるフート弁の変形例を示す。
【0023】
好ましいと考えられるこのような変形例では、先に説明したものと同一又は類似の部分を同じ参照符号を用いて表している。先の実施形態との違いは、フロートオブチュレータ11の本体の平坦な基部10が側壁と共に単一の部品によって作られていることにあり、17で示されるように長尺の円筒形状を有する。18に示されるように、円筒壁17の上端部は、実質的に半径方向外側に向かって回転し、格納ケージブッシュ8の変形可能な軸方向部分9の広がった表面14と連動するため、丸い面を有しており、ある意味で先に説明したものと同じである。
【0024】
構造の詳細及び実施形態は、説明及び図示されたものに関して、以下の本発明の請求項に記載の保護の範囲から逸脱することなく広く変形し得ることは明白である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6