(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項2に記載の製剤であって、任意に、前記薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、前記製剤。
VEGF−A療法に対して応答性の疾患を治療する方法に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物または製剤であって、任意に、前記疾患が、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患から選択される、前記組成物または製剤。
前記組成物または製剤が、筋肉内、皮内、皮下、心臓内、もしくは心外膜経路によって、門脈カテーテルを介して、冠静脈洞カテーテルを介して、および/または治療される領域への直接的投与によって、前記対象に投与される、請求項10に記載の使用のための組成物または製剤。
前記組成物または製剤が、MIの約7日後、MIの約10日後、MIの約2週後、MIの約3週後、またはMIの約6週後に投与される、請求項9または12に記載の使用のための組成物または製剤。
治療が、駆出率が低下した心筋梗塞を治療する、または駆出率が保たれた心不全を治療することを含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の使用のための組成物または製剤。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.概要
本開示は、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNA分子、およびその改変RNAを含む製剤に関する。開示されるのはまた、タンパク質発現のためのこれらの製剤中のVEGF−A改変RNAの、結果として生じる利益、より低い毒性をもつ治療法をもたらすこと、および、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療するのに有用なツールを提供することである。
【0007】
本開示のある種の実施態様を、以下の段落にまとめて示す。このリストは、例示的に過ぎず、この開示によって提供される実施態様のすべてを網羅しない。
【0008】
実施態様1.改変RNA、好ましくは配列番号2のVEGF−Aポリペプチドをコードする配列番号1の改変RNAと、緩衝液、好ましくはクエン酸生理緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液、またはトロメタミン(THAM)緩衝液であって、二価カチオンを実質的に含まない緩衝液とを含む組成物。
【0009】
実施態様2.薬学的に許容し得る量の改変RNA、好ましくは配列番号2のVEGF−Aポリペプチドをコードする配列番号1の改変RNAと、緩衝液、好ましくはクエン酸生理緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液、またはトロメタミン(THAM)緩衝液であって、二価カチオンを実質的に含まない緩衝液とを含む製剤。
【0010】
実施態様3.二価カチオンを実質的に含まない前記緩衝液が、クエン酸生理緩衝液である、実施態様2の製剤。
【0011】
実施態様4.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様3の製剤。
【0012】
実施態様5.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様3の製剤。
【0013】
実施態様6.薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、実施態様2の製剤。
【0014】
実施態様7.薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、実施態様6の製剤。
【0015】
実施態様8.VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療する方法であっ
て、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤を対象に投与することを含む方法。
【0016】
実施態様9.前記組成物または製剤中の二価カチオンを実質的に含まない緩衝液が、クエン酸生理緩衝液である、実施態様8の方法。
【0017】
実施態様10.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様9の方法。
【0018】
実施態様11.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様9の方法。
【0019】
実施態様12.製剤が、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、実施態様8の方法。
【0020】
実施態様13.薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、実施態様12の方法。
【0021】
実施態様14.疾患が、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患から選択される、実施態様8の方法。
【0022】
実施態様15.疾患が、駆出率が低下したまたは保たれた心不全である、実施態様8の方法。
【0023】
実施態様16.疾患が、心筋梗塞後の心機能不全である、実施態様8の方法。
【0024】
実施態様17.疾患が、虚血性心疾患である、実施態様8の方法。
【0025】
実施態様18.疾患が、外傷または手術による血管損傷である、実施態様8の方法。
【0026】
実施態様19.疾患が、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍である、実施態様8の方法。
【0027】
実施態様20.疾患が、重症虚血肢である、実施態様8の方法。
【0028】
実施態様21.疾患が、肺高血圧症である、実施態様8の方法。
【0029】
実施態様22.疾患が、末梢動脈疾患である、実施態様8の方法。
【0030】
実施態様23.組成物または製剤が、筋肉内、皮内、皮下、心臓内、もしくは心外膜経路によって、門脈カテーテルを介して、冠静脈洞カテーテルを介して、および/または治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される、実施態様8の方法。
【0031】
実施態様24.組成物または製剤が、対象に筋肉内に投与される、実施態様8の方法。
【0032】
実施態様25.組成物または製剤が、対象に皮内に投与される、実施態様8の方法。
【0033】
実施態様26.組成物または製剤が、対象に皮下に投与される、実施態様8の方法。
【0034】
実施態様27.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、対象に、心臓内にまたは心外膜に投与される、実施態様8の方法。
【0035】
実施態様28.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、門脈カテーテルを介して対象に投与される、実施態様8の方法。
【0036】
実施態様29.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、冠静脈洞カテーテルを介して対象に投与される、実施態様8の方法。
【0037】
実施態様30.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、治療される領域への直接的投与によって対象に投与される、実施態様8の方法。
【0038】
実施態様31.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、0.1から1μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様8の方法。
【0039】
実施態様32.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、1から10μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様8の方法。
【0040】
実施態様33.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、10から50μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様8の方法。
【0041】
実施態様34.クエン酸生理緩衝液を伴う組成物または製剤が、対象にとって、脂質ベースの組成物または製剤よりも毒性が低い、実施態様9の方法。
【0042】
実施態様35.哺乳類の細胞、組織、または対象において、生理的プロセスを調節するための方法であって、前記哺乳類の細胞、組織、または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0043】
実施態様36.調節することが、血管形成を誘導すること、血管細胞増殖を刺激すること、心外膜前駆細胞(epicardial derived progenitor cell)の、増殖を増大させることおよび/または運命を変更すること、内皮化を上方調節すること、心筋再生を誘導すること、創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させること、血管機能を改善すること、組織灌流および新しい血管の形成を増大させること、瘢痕組織を減少させること、および心機能を改善することから選択される、実施態様35の方法。
【0044】
実施態様37.調節することが、血管形成を誘導することを含む、実施態様35の方法。
【0045】
実施態様38.調節することが、血管細胞増殖を刺激することを含む、実施態様35の方法。
【0046】
実施態様39.調節することが、心外膜前駆細胞の、増殖を増大させることおよび/または運命を変更することを含む、実施態様35の方法。
【0047】
実施態様40.調節することが、内皮化を上方調節することを含む、実施態様35の方法。
【0048】
実施態様41.調節することが、心筋再生を誘導することを含む、実施態様35の方法。
【0049】
実施態様42.調節することが、創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させることを含む、実施態様35の方法。
【0050】
実施態様43.調節することが、血管機能を改善することを含む、実施態様35の方法。
【0051】
実施態様44.調節することが、組織灌流および新しい血管の形成を増大させることを含む、実施態様35の方法。
【0052】
実施態様45.調節することが、瘢痕組織を減少させることを含む、実施態様35の方法。
【0053】
実施態様46.調節することが、心機能を改善することを含む、実施態様35の方法。
【0054】
実施態様47.前記組成物または製剤中の二価カチオンを実質的に含まない緩衝液が、クエン酸生理緩衝液である、実施態様35の方法。
【0055】
実施態様48.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様47の方法。
【0056】
実施態様49.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様47の方法。
【0057】
実施態様50.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、0.1から1μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様35の方法。
【0058】
実施態様51.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、1から10μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様35の方法。
【0059】
実施態様52.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、10から50μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様35の方法。
【0060】
実施態様53.哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法であって、前記哺乳類の細胞または組織を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0061】
実施態様54.前記組成物または製剤中の二価カチオンを実質的に含まない緩衝液が、クエン酸生理緩衝液である、実施態様53の方法。
【0062】
実施態様55.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様54の方法。
【0063】
実施態様56.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様54の方法。
【0064】
実施態様57.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、0.1から1μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様53の方法。
【0065】
実施態様58.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、1から10μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様53の方法。
【0066】
実施態様59.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、10から50μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様53の方法。
【0067】
実施態様60.対象においてVEGF−Aを産生する方法であって、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤を、前記対象に投与することを含む方法。
【0068】
実施態様61.前記組成物または製剤中の二価カチオンを実質的に含まない緩衝液が、クエン酸生理緩衝液である、実施態様60の方法。
【0069】
実施態様62.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様61の方法。
【0070】
実施態様63.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様61の方法。
【0071】
実施態様64.製剤が、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、実施態様60の方法。
【0072】
実施態様65.薬学的に許容し得る賦形剤が、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、実施態様64の方法。
【0073】
実施態様66.対象が、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患っている、実施態様60の方法。
【0074】
実施態様67.疾患が、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患から選択される、実施態様66の方法。
【0075】
実施態様68.疾患が、駆出率が低下したまたは保たれた心不全である、実施態様66の方法。
【0076】
実施態様69.疾患が、心筋梗塞後の心機能不全である、実施態様66の方法。
【0077】
実施態様70.疾患が、虚血性心疾患である、実施態様66の方法。
【0078】
実施態様71.疾患が、外傷または手術による血管損傷である、実施態様66の方法。
【0079】
実施態様72.疾患が、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍である、実施態様66の方法。
【0080】
実施態様73.疾患が、重症虚血肢である、実施態様66の方法。
【0081】
実施態様74.疾患が、肺高血圧症である、実施態様66の方法。
【0082】
実施態様75.疾患が、末梢動脈疾患である、実施態様66の方法。
【0083】
実施態様76.組成物または製剤が、筋肉内、皮内、皮下、心臓内、もしくは心外膜経路によって、門脈カテーテルを介して、冠静脈洞カテーテルを介して、および/または治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される、実施態様60の方法。
【0084】
実施態様77.組成物または製剤が、対象に筋肉内に投与される、実施態様60の方法。
【0085】
実施態様78.組成物または製剤が、対象に皮内に投与される、実施態様60の方法。
【0086】
実施態様79.組成物または製剤が、対象に皮下に投与される、実施態様60の方法。
【0087】
実施態様80.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、対象に、心臓内にまたは心外膜に投与される、実施態様60の方法。
【0088】
実施態様81.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、門脈カテーテルを介して対象に投与される、実施態様60の方法。
【0089】
実施態様82.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、冠静脈洞カテーテルを介して対象に投与される、実施態様60の方法。
【0090】
実施態様83.組成物または製剤が、好ましくは複数回投与での固定投薬量で、治療される領域への直接的投与によって対象に投与される、実施態様60の方法。
【0091】
実施態様84.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、0.1から1μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様60の方法。
【0092】
実施態様85.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、1から10μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様60の方法。
【0093】
実施態様86.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、10から50μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様60の方法。
【0094】
実施態様87.組成物または製剤を調製するための方法であって、改変RNA、好ましくは配列番号2のVEGF−Aポリペプチドをコードする配列番号1の改変RNAを、緩衝液であって、二価カチオンを実質的に含まない緩衝液、好ましくはクエン酸生理緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液、またはトロメタミン(THAM)緩衝液と組み合わせて、組成物または製剤にすることを含み、かつ前記組成物または製剤が、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療するのに有効である方法。
【0095】
実施態様88.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様87の方法。
【0096】
実施態様89.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様87の方法。
【0097】
実施態様90.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、0.1から1μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様87の方法。
【0098】
実施態様91.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、1から10μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様87の方法。
【0099】
実施態様92.組成物または製剤が、好ましくはクエン酸生理緩衝液中に配合される、10から50μg/μLの濃度の改変RNAを含む、実施態様87の方法。
【0100】
実施態様93.クエン酸生理緩衝液を伴う組成物または製剤が、対象にとって、脂質ベースの組成物または製剤よりも毒性が低い、実施態様87の方法。
【0101】
実施態様94.対象におけるVEGF−A治療の毒性を低下させるための方法であって、改変RNA、好ましくは配列番号2のVEGF−Aポリペプチドをコードする配列番号1の改変RNAを、緩衝液であって、二価カチオンを実質的に含まない緩衝液、好ましくはクエン酸生理緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液、またはトロメタミン(THAM)緩衝液と共に配合して、組成物または製剤にすることを含む方法。
【0102】
実施態様95.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない、実施態様94の方法。
【0103】
実施態様96.クエン酸生理緩衝液が、カルシウムもマグネシウムも含有しない、実施態様94の方法。
【0104】
実施態様97.改変RNA、好ましくは配列番号2のVEGF−Aポリペプチドをコードする配列番号1の改変RNAの産生のためのインビトロ転写鋳型を含む核酸配列。
【0105】
実施態様98.哺乳類組織または対象における創傷治癒を向上させるための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0106】
実施態様99.哺乳類組織または対象における血管新生を誘導するための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0107】
実施態様100.哺乳類組織または対象における血管形成を誘導するための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0108】
実施態様101.哺乳類組織または対象における血管拡張を誘導するための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0109】
実施態様102.哺乳類組織または対象における血流上方調節を誘導するための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0110】
実施態様103.哺乳類組織または対象における毛細血管および/または細動脈密度を増大させるための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0111】
実施態様104.哺乳類組織または対象における線維症を和らげるための方法であって、前記哺乳類組織または対象を、実施態様1による組成物、および/または実施態様2〜7のいずれか1態様による製剤と接触させることを含む方法。
【0112】
4.図面の説明
当分野の技術者は、以下に記載される図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。これらの図面は、本発明の教示の範囲を制限することを決して意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】
図1A−1B:実施例で使用されるVEGF−A改変RNAの構造(
図1A)および配列(配列番号1、
図1B)。
【
図2】
図2A−2C:より高い用量の改変RNAのトランスフェクションは、ヒト大動脈平滑筋細胞における、より多いVEGF−Aタンパク質の産生をもたらした(
図2A)。ヒト大動脈平滑筋細胞における改変RNAでのトランスフェクション後のVEGF−Aタンパク質産生の時間経過(
図2B)。改変RNAでのトランスフェクション後の、マウス心臓線維芽細胞(
図2C、左パネル)およびブタ内皮細胞(
図2C、右パネル)におけるVEGF−Aタンパク質産生。
【
図3】
図3A−3C:VEGF−A改変RNAから産生されたVEGF−Aタンパク質は、ヒト内皮細胞におけるVEGFR2のリン酸化(
図3A)、およびヒト内皮細胞における下流シグナル伝達経路eNOSの活性化(
図3B)、およびマウス心臓線維芽細胞におけるAkt(
図3C)を誘導した。
【
図4】
図4A−4C:VEGF−A改変RNAから産生されたVEGF−Aタンパク質は、血管形成プロセスにおけるいくつかの重要なステップに影響を与える。VEGF−A改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質は、培養されたヒト内皮細胞の増殖(
図4A)および遊走(
図4B)を増大させた。VEGF−A改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質は、内皮細胞でコーティングしたビーズを用いる3D培養における血管形成性出芽形成を増大させた(
図4C)。
【
図5】
図5A−5C:内皮細胞でコーティングし、対照培地(
図5A)または改変RNAによって産生されたVEGF−Aを含む馴化培地(
図5B)で処理したビーズからの、血管形成性出芽形成の画像。内皮細胞でコーティングし、改変RNAによって産生されたVEGF−Aで処理したビーズからの、血管形成性出芽形成の拡大図。
【
図6】
図6A−6C:クエン酸生理食塩水(
図6A)、LacZ改変RNA(リポフェクタミン中に(100μg、
図6B)またはクエン酸生理緩衝液中に(150μg、
図6C)配合されたもの)の、50μL心臓内注射後にマウス心臓において産生されたβ−ガラクトシダーゼ酵素を示すX−gal染色の比較。
【
図7】リン酸緩衝生理食塩水(PBS、n=3)、クエン酸生理食塩水(C/S、n=6)、またはトロメタミンAKA 2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(THAM、n=3)中に配合されたホタルルシフェラーゼ改変RNAの心臓内注射後にマウス心臓において産生されたルシフェラーゼタンパク質の評価。PBS、C/S、およびTHAM緩衝液(n=2/群)は、陰性対照として使用した。
【
図8】
図8A−8D:未処置のラットにおける15μg(円)、150μg(正方形)、または1800μg(三角形)の、クエン酸生理食塩水に配合されたVEGF−A改変RNAの心臓内注射後の異なる時点でのVEGF−Aタンパク質の心臓レベル(
図8A)。心筋梗塞を施された、クエン酸/生理食塩水またはVEGF−A改変RNA(150または1800μg、クエン酸/生理食塩水中に配合)を心臓内に注射されたラットにおける、左室駆出率および(左室質量の%としての)梗塞サイズの比較。駆出率(
図8B)および梗塞サイズ(
図8C)は、梗塞の誘発および注射の8日後、心臓核磁気共鳴画像法によって評価した。心筋梗塞の誘発の1日後の、クエン酸/生理食塩水、またはクエン酸/生理食塩水中に配合されたVEGF−A改変RNAを心臓内に注射したラットから採取した静脈血内の心筋トロポニンI(TnI)のレベル(
図8D)。
【
図9】
図9A−9B:LacZ改変RNAを心外膜に(3つの別の注射部位に100μg)注射されたGoettingenミニブタにおける左室自由壁から回収した代表的な試料。組織は、注射の6時間後に回収して、18時間X−gal染色した。左の試料は、リポフェクタミン中に配合されたLacZ改変RNAを注射した組織(
図9A)、右の試料は、クエン酸/生理食塩水中に配合されたLacZ改変RNAを注射した組織(
図9B)における染色をそれぞれ示す。
【
図10】Goettingenミニブタにおける様々な用量のVEGF−A改変RNAの心外膜注射の6時間後の、ブタ左室組織試料におけるヒトVEGF−Aタンパク質。
【
図11-1】
図11A−11G:クエン酸生理緩衝液中のLacZおよびルシフェラーゼ改変RNA心臓トランスフェクションおよび翻訳。75μgのLacZ改変RNAを、クエン酸生理緩衝液と共にマウス心臓に注射した。β−ガラクトシダーゼの産生は、心臓の左室のおよそ10%に見られた(
図11A、
図11C、および
図11Dに代表的な画像)。LacZ改変RNAの注射後の心臓におけるβ−ガラクトシダーゼの産生を示すX−gal染色の拡大図(
図11B)。ルシフェラーゼ改変RNAを心臓に注射した。ルシフェラーゼプローブを用いるRNAインサイツハイブリダイゼーションは、注射の部位の心筋におけるルシフェラーゼ改変RNAの存在を明らかにした(
図11E)。ルシフェラーゼ改変RNAの存在を示す、ルシフェラーゼプローブを用いるRNAインサイツハイブリダイゼーションの拡大図(
図11F)。免疫組織化学は、ルシフェラーゼ改変RNAの注射後の、注射の部位の心筋におけるルシフェラーゼタンパク質発現を明らかにした(
図11G)。
【
図11-2】
図11A−11G:クエン酸生理緩衝液中のLacZおよびルシフェラーゼ改変RNA心臓トランスフェクションおよび翻訳。75μgのLacZ改変RNAを、クエン酸生理緩衝液と共にマウス心臓に注射した。β−ガラクトシダーゼの産生は、心臓の左室のおよそ10%に見られた(
図11A、
図11C、および
図11Dに代表的な画像)。LacZ改変RNAの注射後の心臓におけるβ−ガラクトシダーゼの産生を示すX−gal染色の拡大図(
図11B)。ルシフェラーゼ改変RNAを心臓に注射した。ルシフェラーゼプローブを用いるRNAインサイツハイブリダイゼーションは、注射の部位の心筋におけるルシフェラーゼ改変RNAの存在を明らかにした(
図11E)。ルシフェラーゼ改変RNAの存在を示す、ルシフェラーゼプローブを用いるRNAインサイツハイブリダイゼーションの拡大図(
図11F)。免疫組織化学は、ルシフェラーゼ改変RNAの注射後の、注射の部位の心筋におけるルシフェラーゼタンパク質発現を明らかにした(
図11G)。
【
図12】
図12A−12C:クエン酸/生理緩衝液を用いる心臓への改変RNA注射後のVEGF−Aタンパク質発現は、飽和性であり、複数の種にわたって同様の薬物動態を有する。72時間にわたるマウスにおけるクエン酸生理緩衝液(NTB)−対−リポフェクタミン(LNP)中に配合されたVEGF−A改変RNAの単回心臓注射後のVEGF−Aタンパク質薬物動態(
図12A)。クエン酸生理食塩水中のVEGF−A改変RNAの漸増投与後のVEGF−Aタンパク質レベルの異種間の比較(
図12B)。漸増用量のVEGF−A改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質のラット薬物動態。72時間時点で産生されたVEGF−Aタンパク質についての曲線下面積(AUC)測定(
図12C)。
【
図13】
図13A−13B:マウス、ラット、およびブタにおける、ヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後のヒトVEGF−Aタンパク質産生の評価。クエン酸/生理食塩水中に配合された100μg VEGF−A改変RNAの心臓内注射後に、マウス(塗りつぶされた正方形)、ラット(塗りつぶされた星)、およびブタ(塗りつぶされた円)心臓において産生されたVEGF−Aタンパク質の大きさおよび時間プロフィール(
図13Aでは0から72時間;
図13B0から192時間)。示されるのは、幾何平均±SDである。
【
図14】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、左室駆出率(EF)に対する、ヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。左前下行枝の永久的閉塞の前(BF)および後(AF)に、EFの連続的評価を実施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。次いで、閉塞の7日後の試験薬物注射の時点での(7D AF)、およびもう一度、2か月後の(2MO AF)、EFのその後の評価を実施した。7D AFでは、ブタを、それぞれ、クエン酸/生理食塩水(塗りつぶされた正方形、n=8)、または1mg(塗りつぶされた円、n=8)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形、n=8)の総用量のVEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(塗りつぶされたひし形、n=5)、のいずれかの20本の心外膜注射(各100μL)を受けることに無作為に割り付けた。
*;2MO AF時点でクエン酸/生理食塩水対照群に対してP<0.05、
**;2MO AF時点でクエン酸/生理食塩水対照群に対してP<0.01、†;7D AFから2MO AFまでの変化を比較してP<0.001、††;7D AFから2MO AFまでの変化を比較してP<0.0001。
【
図15】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、経時的最大左室圧発生(dP/dt max)に対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。ミニブタに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的閉塞を施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。7日後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水ビヒクル(2mL、塗りつぶされた正方形)、1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)の盲検化された心外膜注射に無作為に割り付けた。この用量/体積を、梗塞周囲領域に、20本の別の注射(各100μL)として投与した。注射の2か月後に、左室機能を、侵襲的に測定した。示されるのは、個々のデータおよび平均±SEMである。
【
図16】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、経時的最小左室圧発生(dP/dt min)に対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。ミニブタに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的閉塞を施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。7日後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水ビヒクル(2mL、塗りつぶされた正方形)、1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)の盲検化された心外膜注射に無作為に割り付けた。この用量/体積を、梗塞周囲領域に、20本の別の注射(各100μL)として投与した。注射の2か月後に、左室機能を、侵襲的に測定した。示されるのは、個々のデータおよび平均±SEMである。
【
図17】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、収縮機能(変力性、ESPVR)に対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。ミニブタに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的閉塞を施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。7日後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水ビヒクル(2mL、塗りつぶされた正方形)、1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)の盲検化された心外膜注射に無作為に割り付けた。この用量/体積を、梗塞周囲領域に、20本の別の注射(各100μL)として投与した。注射の2か月後に、左室機能を、侵襲的に測定した。示されるのは、個々のデータおよび平均±SEMである。
【
図18】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、拡張機能(コンプライアンス、EDPVR)に対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。ミニブタに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的閉塞を施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。7日後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水ビヒクル(2mL、塗りつぶされた正方形)、1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)の盲検化された心外膜注射に無作為に割り付けた。この用量/体積を、梗塞周囲領域に、20本の別の注射(各100μL)として投与した。注射の2か月後に、左室機能を、侵襲的に測定した。示されるのは、個々のデータおよび平均±SEMである。
【
図19】心筋梗塞を施されたミニブタにおける、前負荷動員一回仕事量(PRSW)に対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。ミニブタに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的閉塞を施した。別の群のブタに、冠動脈閉塞を伴わない偽処置を施した(塗りつぶされていない円、n=5)。7日後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水ビヒクル(2mL、塗りつぶされた正方形)、1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)の盲検化された心外膜注射に無作為に割り付けた。この用量/体積を、梗塞周囲領域に、20本の別の注射(各100μL)として投与した。注射の2か月後に、左室機能を、侵襲的に測定した。示されるのは、個々のデータおよび平均±SEMである。
【
図20】
図20A−20C:心筋梗塞を施されたミニブタにおける、梗塞サイズに対するヒトVEGF−A改変RNAおよび組換えヒトVEGF−Aの効果。梗塞サイズは、クエン酸/生理食塩水(塗りつぶされた正方形)、または1mg(塗りつぶされた円)もしくは10mg(塗りつぶされた三角形)VEGF−A改変RNA、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(200ng)(塗りつぶされたひし形)を心外膜に注射されたミニブタにおいて、左室全体の梗塞サイズ(切片2、3、4、および5、
図20A)、左室中央の梗塞サイズ(切片3および4、
図20B)、および左室の最も中心部の梗塞サイズ(切片4、パネル
図20C)として示した。注射は、左前下行枝の永久的閉塞を通した心筋梗塞の誘発の7日後に施した。注射の2か月後に、梗塞サイズを測定した。示されるのは、平均±SEMである。
【
図21】実施例14における試験1中のマウスの体重。各マウスの体重は、各撮像時点で記録した。示されたデータは、平均±SEM、黒色バー;単回注射されたビヒクル、斜線バー;2回注射されたビヒクル、灰色バー;単回注射されたVEGF−A改変RNA、横線バー;2回注射されたVEGF−A改変RNA、
*;p<0.05(単回注射されたビヒクルに対する2回注射されたビヒクルに対して)である。
【
図22】実施例14における試験1におけるマウスの空腹時および食後血糖測定。第0日に、4時間の絶食期間後に、血糖を測定した。第18日に、食後血糖を測定した。示されたデータは、平均±SEM、黒色バー;単回注射されたビヒクル、斜線バー;2回注射されたビヒクル、灰色バー;単回注射されたVEGF−A改変RNA、横線バー;2回注射されたVEGF−A改変RNA、
*;p<0.05(単回注射されたビヒクルに対する単回注射されたVEGF−A改変RNAに対して)である。
【
図23】実施例14における試験1についての創傷治癒曲線。3人の観察者からの中央値の平均の正規化された開放創面積を、手術後の日数に対してプロットする。示されたデータは、平均±SEM、
*p<0.05(それぞれ第6日の単回(塗りつぶされた円)および2回(塗りつぶされていない円)注射されたビヒクルに対するVEGF−A改変RNA2回注射(塗りつぶされていない正方形)、および、それぞれ第10日のビヒクル2回注射に対するVEGF−A改変RNA2回注射に対して)である。塗りつぶされた正方形;単回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図24】実施例14における試験1からの創傷治癒曲線の三次スプライン補間。25%、50%、および75%閉鎖までのおよその時間に対して、水平な灰色の破線によって明らかにされる通りの三次スプライン補間を作成した。示されたデータは、3人の観察者からの中央値の正規化された開放創面積の平均である。Φ;p<0.05(ビヒクル単回注射(塗りつぶされた円)に対するVEGF−A改変RNA2回注射(塗りつぶされていない正方形)に対して)。#;p<0.05(ビヒクル2回注射(塗りつぶされていない円)に対するVEGF−A改変RNA2回注射に対して)。塗りつぶされた正方形;単回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図25】実施例14における試験1における時点間の創傷治癒(%)。各時点間の創傷閉鎖の平均パーセントを、正規化された創傷面積データを使用して算出した。示されたデータは、平均±SEM;
*p<0.05(それぞれ第3から6日についての、ビヒクル2回(斜線バー)および単回注射(黒色バー)に対するVEGF−A改変RNA2回注射(横線バー)に対して、より高い平均パーセント創傷閉鎖について、およびそれぞれ第10から13日についての、ビヒクル2回および単回注射に対するVEGF−A改変RNA単回注射(灰色バー)に対して、より低い平均創傷閉鎖について)である。
【
図26】実施例14における試験1における創傷のヘマトキシリン−およびエオシン−染色された切片の代表的な画像。A;単回注射されたビヒクル、B;2回注射されたビヒクル、C;単回注射されたVEGF−A改変RNA、D;2回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図27】実施例14における試験1における創傷のCD31染色された切片の代表的な画像。矢印は、強いCD31染色の領域を示す。A)単回ビヒクル、B)2回ビヒクル、C)単回VEGF−A改変RNA、D)2回VEGF−A改変RNA。
【
図28】実施例14における試験1におけるCD31染色の定量化。パネルAからDは、得られた代表的な画像であり、パネルEからHは、CD31陽性染色(ブラウンチャンネル)の代表的なしきい値処理された画像である。AおよびE;単回ビヒクル、BおよびF;2回ビヒクル、CおよびG;単回VEGF−A改変RNA、DおよびH;2回VEGF−A改変RNA、I;CD31染色の面積(パーセント)(黒画素によってカバーされる面積)の定量化。黒色バー;単回注射されたビヒクル、斜線バー;2回注射されたビヒクル、灰色バー;単回注射されたVEGF−A改変RNA、横線バー;2回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図29】実施例14におけるウエスタンブロットを用いる下流VEGFシグナル伝達分析(試験1)。上パネル;第0日でのビヒクルの単回投与、第0日および3日でのビヒクルの2回投与、第0日でのVEGF−A改変RNAの単回投与、および第0日および3日でのVEGF−A改変RNAの2回投与を受けたマウスからの第18日試料のpAKTおよびAKTブロット。下パネル;pAKT/AKTの定量化された比は、治療群間で統計的な差を示さない。左バー;単回ビヒクル注射、左内側バー;2回ビヒクル注射、右内側バー;単回VEGF−A改変RNA注射、右バー;2回VEGF−A改変RNA注射。
【
図30】実施例14における試験1から第18日に回収されたマウス創傷におけるpVEGFR2、VEGFR2、およびVEGF−Aのウエスタンブロット分析。上パネル;第0日でのビヒクルの単回投与、第0日および3日でのビヒクルの2回投与、第0日でのVEGF−A改変RNAの単回投与、および第0日および3日でのVEGF−A改変RNAの2回投与を受けたマウスからの第18日試料のpVEGFR2、VEGFR2、およびVEGFAブロット。下パネル;pVEGFR2/VEGFR2の定量化された比は、治療群間で統計的な差を示さない。左バー;単回ビヒクル注射、左内側バー;2回ビヒクル注射、右内側バー;単回VEGF−A改変RNA注射、右バー;2回VEGF−A改変RNA注射。
【
図31】実施例14における試験2中のマウスの体重。各マウスの体重は、各撮像時点で記録した。示されたデータは、平均±SEMである。左バー;2回注射されたビヒクル、右バー:2回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図32】実施例14における試験2におけるマウスにおける空腹時および食後血糖。第0日に、4時間の絶食期間後に、血糖を測定した。第18日に、食後血糖を測定した。示されたデータは、平均±SEMである。左バー;2回注射されたビヒクル、右バー:2回注射されたVEGF−A改変RNA。
【
図33】酸素感受性ナノ粒子のインビボ適用の図。A)全層皮膚創傷内のナノ粒子の適用。励起時に、ナノ粒子は、強い室温蛍光(B)および強い酸素依存性リン光(C)を放出した。創傷床内の酸素の相対レベルを報告するために、蛍光とリン光との間の比のレシオ測定画像を構築する(D)。
【
図34】実施例14における試験2における創傷床内の相対的酸素化レベルのレシオ測定画像。各時点についての、2回ビヒクル(上半分)および2回VEGF−A改変RNA(下半分)で治療された創傷についての、代表的な明視野およびレシオ測定画像。創傷境界は、黒で輪郭が描かれる。
【
図35】創傷床における酸素感受性ナノ粒子からの蛍光およびリン光の画像分析を介する酸素化の定量化。それぞれの未加工の蛍光対リン光画像の平均グレー値を、創傷床について算出した。示されたデータは、平均±SEM、
*p<0.05(ビヒクル2回注射(左バー)に対するVEGF−A改変RNA2回注射(右バー)に対して、平均グレー値について)である。
【
図36】実施例14における試験2における創傷治癒曲線。3人の独立した観察者からの中央値の平均の正規化された開放創面積を、手術後の日数に対してプロットする。示されたデータは、平均±SEM、
*p<0.05(それぞれ第6日での、ビヒクル2回注射(塗りつぶされていない円)に対するVEGF−A改変RNA2回注射(塗りつぶされていない正方形)に対して、より小さい開放創面積について)である。曲線下面積は、それぞれ、ビヒクル2回注射について641.31、VEGF−A改変RNA2回注射について604.35であった。
【
図37】実施例14における試験2からの創傷治癒曲線の三次スプライン補間。25%、50%、および75%閉鎖までのおよその時間に対して、灰色の破線によって明らかにされる通りの三次スプライン補間を作成した。示されたデータは、3人の観察者からの中央値の正規化された開放創面積の平均である。#;p<0.05(2回ビヒクル注射(塗りつぶされていない円)に対するVEGF−A改変RNA2回注射に対して)。
【
図38】実施例14における試験2における時点間の創傷治癒(%)。各時点間の創傷閉鎖の平均パーセントを、正規化された創傷面積データを使用して算出した。示されたデータは、平均±SEM;
*p<0.05(第3〜6日について、ビヒクル2回注射(左バー)に対するVEGF−A改変RNA2回注射(右バー)に対して、より大きい創傷閉鎖の平均パーセントについて)である。
【
図39】マウスの耳における高用量VEGF−A改変RNAに対する血管反応の光音響顕微鏡分析。第1行;血管構造;第2行;sO
2(%);第3行;血流速度(mm/s)。破線円;注射部位。第3行における矢印;血流が有意に上方調節された血管。第1行の上の表示は、VEGF−A改変RNAの皮内注射(100μg)からの時間を示す。
【
図40】高用量VEGF−A改変RNAを皮内注射されたマウスの耳における新生血管形成および血管形成。100μg VEGF−A改変RNAを皮内注射されたマウスの耳における新生血管(第2行、矢印によって標識)および血管形成の拡大画像。拡大された領域は、第1行における破線正方形によって示される。第1行の上の表示は、VEGF−A改変RNAの皮内注射(100μg)からの時間を示す。
【
図41】マウスの耳における低用量VEGF−A改変RNAに対する血管反応の光音響顕微鏡分析。第1行;血管構造;第2行;sO
2(%);第3行;血流速度(mm/s)。破線円;注射部位。第1行の上の表示は、VEGF−A改変RNAの皮内注射(10μg)からの時間を示す。
【
図42】マウスの耳におけるヒト組換えVEGF−Aタンパク質に対する血管反応の光音響顕微鏡分析。第1行;血管構造;第2行;sO
2(%);第3行;血流速度(mm/s)。破線円;注射部位。第1行の上の表示は、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質の皮内注射(1μg)からの時間を示す。明白な血流上方調節を伴う血管は第3行において矢印で示す。
【
図43】マウスの耳におけるクエン酸/生理食塩水に対する血管反応の光音響顕微鏡分析。第1行;血管構造;第2行;sO
2(%);第3行;血流速度(mm/s)。破線円;注射部位。第1行の上の表示は、クエン酸/生理食塩水の皮内注射(10μg)からの時間を示す。
【
図44】マウスの耳における血管反応に対する、VEGF−A改変RNA、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質、およびクエン酸/生理食塩水の効果。マウスの耳におけるVEGF−A改変RNA(100μg、塗りつぶされた正方形)、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質(1μg、塗りつぶされた三角形)、またはクエン酸/生理食塩水(10μL、塗りつぶされた円)の皮内注射によって誘導される、短時間および長期の血管反応(血管径、左パネル、および容積測定的な血流、右パネル)の定量分析。示された値は、平均±SD、n=3/群である。
【
図45】マウスの耳におけるVEGF−A改変RNAの注射後の、微小血管血流および酸素飽和度に対する影響。VEGF−A改変RNA(100μg)を、マウスの耳に皮内注射した。微小血管血流(パネルA)および酸素飽和度(パネルB)を、注射前(ベースライン)および7日後に評価した。
【
図46】マウスの耳における組換えヒトVEGF−Aタンパク質の注射後の、微小血管血流および酸素飽和度に対する影響。組換えヒトVEGF−Aタンパク質(1μg)を、マウスの耳に皮内注射した。微小血管血流(パネルA)および酸素飽和度(パネルB)を、注射前(ベースライン)および7日後に評価した。
【
図47】マウスの耳におけるクエン酸/生理食塩水ビヒクルの注射後の、微小血管血流および酸素飽和度に対する影響。クエン酸/生理食塩水ビヒクル(10μL)を、マウスの耳に皮内注射した。微小血管血流(パネルA)および酸素飽和度(パネルB)を、注射前(ベースライン)および7日後に評価した。
【
図48】
図48A−48B:実施例16についての実験設計を、
図48Aに例示する。実施例16についてのVEGF−A改変RNA注射の位置を、
図48Bに例示する。
【
図49】VEGF−A改変RNAを皮内注射されたウサギからの微小透析溶出液のヒトVEGF−A濃度。ウサギ後脚の皮内に挿入された100kDa微小透析プローブからの溶出液のヒトVEGF−Aの濃度。示されたデータは、平均±SEMである。t=0時間で微小透析を開始し、t=1時間でVEGF−A改変RNA注射(各50μg)の4本の皮内注射を施した。点線は、定量下限(LLOQ、33.4pg/mL)を示す。各ウサギ(n=4ウサギ)に2つのプローブを挿入した。
【
図50】
図50A−50C:インビボでの心筋梗塞を施されたブタにおけるヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後の、毛細血管密度(
図50A)、細動脈密度(
図50B)、および線維症(
図50C)に対する効果。ミニブタに、左前下行枝の永久的結紮を施し、7日後、VEGF−A改変RNA(1mg、塗りつぶされた灰色バー(n=8)、または10mg、斜線バー(n=8))またはクエン酸/生理食塩水(塗りつぶされた黒色バー、n=8)を心外膜に注射した。別の群の動物は、偽処置を受け(冠動脈は結紮されず)、心外膜注射も施さなかった(白抜きバー、n=5)。結紮の2か月後、動物を生命終焉させ、梗塞周囲(境界)域における毛細血管密度(
図50A)の評価のために心組織を回収した。示されるのは、平均±SEMである。
*;P<0.05および
***;P<0.001(クエン酸/生理食塩水治療された動物に対して)(一元配置ANOVAおよびダネットの事後検定)。
図50Bでは、結紮の2か月後、動物を生命終焉させ、梗塞周囲(境界)域における細動脈密度の評価のために心組織を回収した。示されるのは、平均±SEMである。
**;P<0.0(クエン酸/生理食塩水治療された動物に対して)(一元配置ANOVAおよびダネットの事後検定)。
図50Cでは、結紮の2か月後、動物を生命終焉させ、梗塞を起こした領域から離れた線維症(コラーゲン沈着)の評価のために心組織を回収した。示されるのは、平均±SEMである。
*;P<0.05および
**;P<0.01(クエン酸/生理食塩水治療された動物に対して)(一元配置ANOVAおよびダネットの事後検定)。
【
図51】ヒト大動脈平滑筋細胞(hAoSMC、塗りつぶされていない円)における、および人工多能性細胞から誘導されたヒト心筋細胞(hiPS−CM、塗りつぶされた三角形)における、VEGF−A改変RNAトランスフェクション後の、ヒトVEGF−Aタンパク質産生の時間プロフィール。示されたデータは、平均±SEMである。
【
図52】
図52A−52B:
図52Aは、組織回収前の、3、7、または14日間の、梗塞を起こしていない正常なマウス心臓(対照)における、および左前下行枝の永久的閉塞を施された心臓における、心外膜由来細胞(EPDC)のマーカーとしてのウィルムス腫瘍1転写因子(Wt−1)の免疫組織化学を例示する。矢印は、Wt−1発現を示す。
図52Bは、組織回収前の、3、7、または14日間の、梗塞を起こしていない正常なマウス心臓(対照)における、および左前下行枝の永久的閉塞を施された心臓における、Wt−1
+細胞の存在のスコアリングを例示する。MI;心筋梗塞。
*;P<0.05、
***;P<0.001(対照(各研究群内にn=3〜5)に対して)。
【発明を実施するための形態】
【0114】
5.詳細な説明
言及したすべての参考文献の全体を、参照によって本明細書に組み込む。
【0115】
前述の説明および付随する図面において与えられる教示の利益を有する、本明細書で説明する本開示の多くの改変および他の実施態様は、これらの開示が属する分野の技術者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、開示される具体的実施態様に限定されるべきではないこと、また、改変および他の実施態様が、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されることが理解されよう。本明細書では特定の用語が用いられるが、これらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0116】
単位、接頭辞、および記号は、それらのSI承認形で表示することができる。別に示されない限り、それぞれ、核酸は、5’から3’方向に左から右に書かれ;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向に左から右に書かれる。数値範囲には、範囲を定義する数字が含まれる。アミノ酸は、本明細書では、その一般に知られている3文字記号によって、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されている1文字記号によって称することができる。ヌクレオチドも同様に、その一般に受け入れられている1文字コードによって称することができる。下で定義する用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0117】
5.1.定義
別に具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示が属する分野の技術者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。別に言及しない限り、本明細書で用いられるまたは企図される技術は、当分野の技術者に周知の標準の方法論である。本開示の実施は、別に示されない限り、当分野の技術内である、微生物学、組織培養、分子生物学、化学、生化学、および組換えDNA技術の従来の技術を用いることとなる。材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定ではない。以下のものは、例示の目的で示され、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0118】
いくつかの実施態様では、本明細書(それに特許請求の範囲全体が組み込まれる)に記述する数値パラメータは、概数であり、特定の実施態様によって得られることが求められる所望される特性に応じて変動し得る。いくつかの実施態様では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示の広範にわたるいくつかの実施態様を記述する数値範囲およびパラメータは概数であるが、具体的な例において記述される数値は、可能な限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施態様において示される数値は、そのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含有する可能性がある。本明細書の値の範囲の記述は、単に、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に言及する簡便表記方法としての役割を果たすことを意図するに過ぎない。本明細書において別に示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0119】
便宜のために、本出願全体(明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲を含む)において用いられるある種の用語を、ここに集める。別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示が属する分野の技術者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「投与すること」は、所望される部位または組織位置での医薬組成物または医薬製剤の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、少なくとも1つの改変RNAを含む医薬組成物または医薬製剤の、対象への配置を指す。いくつかの実施態様では、改変RNAを含む医薬組成物または医薬製剤は、対象における有効な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。すなわち、投与は、対象における所望される位置または組織への送達をもたらし、ここでは、改変RNAによって発現される少なくとも1部分のタンパク質は、所望される標的組織または標的細胞位置に位置される。
【0121】
投与は、筋肉内、経動脈的、腹腔内、静脈内、動脈内、皮下、心室内、皮内、心臓内、心外膜投与、門脈カテーテルを介するもの、冠静脈洞カテーテルを介するもの、および/または治療される領域への直接的投与であり得る。医薬組成物は、各投与経路のために、特別に配合され、投与特異的な医薬製剤がもたらされる。
【0122】
本明細書で使用される用語「組成物」は、一般に、何かを構成する少なくとも2つの部分または要素の組み合わせを意味すると理解される。例えば、本明細書で使用される組成物は、通常、本開示による少なくとも1種のポリヌクレオチド、一次構築物、または改変RNAと、適切な担体または賦形剤とを含む。
【0123】
用語「含む」、「有する」、および「含まれる」は、制約のない連結動詞である。これらの動詞の1つ以上のあらゆる形態または時制、例えば、「含む(三人称単数現在形)」、「含むこと」、「有する(三人称単数現在形)」、「有すること」、「含まれる(三人称単数現在形)」、および「〜を含めて」なども、制約がない。例えば、1つ以上のステップ「を含む(三人称単数現在形)」、「を有する(三人称単数現在形)」、または「が含まれる(三人称単数現在形)」いずれかの方法は、それらの1つ以上のステップのみを有することに限定されず、他の列挙していないステップも包含することができる。同様に、1つ以上の特徴「を含む(三人称単数現在形)」、「を有する(三人称単数現在形)」、または「が含まれる(三人称単数現在形)」いずれかの組成物は、それらの1つ以上の特徴のみを有することに限定されず、他の列挙していない特徴も包含することができる。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書に別に示されない、または文脈によって別に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。ある種の実施態様に関して提供される、ありとあらゆる例、または例示的な言葉(例えば「などの」)の使用は、本明細書では、本開示を、単に、より明らかにするためのものであり、別に主張される本開示の範囲に対する制限を与えない。本明細書中の言葉は、本開示の実施に不可欠であるものとしてのいずれかの主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0124】
用語「本質的に〜からなるは、特許請求の範囲の範囲を、指定した材料またはステップおよび主張される発明の「基本のおよび新規の特性に実質的に影響を与えないもの」に限定する。re Herz,537 F.2d 549,551−52,190 USPQ
461,463(CCPA 1976)(強調は原本によるもの)では、上訴人が主張した分散剤を必要とする従来の技術の作動流体は、ある種の構成要素「から本質的になる
」機能性流体に限定される特許請求の範囲から除外された。
【0125】
用語「からなる」は、実施態様の説明において列挙されていないあらゆる要素を除外する、本明細書に記載した通りの組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素を指す。
【0126】
用語「疾患」または「障害」は、本明細書では互換的に使用され、体のまたはいくつかの器官の状態の、いずれかの変化、機能の実行の中断または妨害、および/または悩んでいる人または人と接触するものに、不快、機能障害、苦痛、またはさらには死亡などの症状が起こることを指す。疾患または障害はまた、不健康(distemper)、病的状態(ailing)、慢性的な軽い病気(ailment)、慢性病(malady)、不調(sickness)、疾病(illness)、愁訴(complaint)、体調不良(indisposition)、または病気(affection)に関連し得る。
【0127】
本明細書で使用する場合、用語「VEGF−A療法に対して応答性の疾患」は、VEGF−Aタンパク質または本明細書に開示する改変RNAなどのVEGF−Aタンパク質を産生する能力がある薬剤を含む医薬組成物または医薬製剤の投与後に、1つ以上の症状または臨床マーカーの改善を示す障害を指す。あるいは、疾患は、疾患の進行が、VEGF−Aタンパク質またはVEGF−Aタンパク質を産生する能力がある薬剤を含む医薬組成物または医薬製剤の投与と共に縮小または停止されるならば、VEGF−A療法に対して「応答性」である。有益または所望される臨床結果としては、限定はされないが、1以上の症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定(すなわち悪化せず)、疾患進行の遅れまたは緩徐化、疾患状態の回復または緩和、および寛解(部分か完全かにかかわらず)が挙げられる。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「二価カチオン」は、2という正の原子価をもつイオン種を指す。例えば、マグネシウムイオンMg
2+、およびカルシウムイオンCa
2+は、二価カチオンである。
【0129】
「剤形」は、錠剤(コート錠、遅延放出型錠剤、分散性錠剤など)、カプセル剤、軟膏、または注射剤(粉末、溶液)などの、薬物(例えば改変RNA)が製造および分配される物理的形態である。
【0130】
語句「薬物製品」は、必ずしもというわけではないが一般に、不活性成分と共に、活性な薬物成分(例えば改変RNA)を含有する、完成した剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤などを意味する。
【0131】
用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減させるのに、または所望される効果を提供するのに十分な、治療薬(例えば改変RNA)、医薬組成物、または医薬製剤の量を指す。例えば、これは、心血管状態、または他の疾患もしくは障害を有する典型的な対象に投与された場合に、心機能不全または他の障害と関連する症状または臨床マーカーの治療的または予防的に有意な低下をもたらす量であり得る。
【0132】
本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からの(例えば転写による)RNA鋳型の産生;(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;および(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0133】
用語「製剤」または「医薬製剤」は、本明細書で使用する場合、特定の投与経路を介して哺乳類(例えば、それを必要とするヒト)に投与するのに適した薬学的に許容し得る担体/希釈剤/賦形剤と共に、活性な医薬成分(例えば改変RNA)を含有する医薬混合物または溶液を含む組成物の型を指す。例えば、「製剤」は、本明細書で使用する場合、いくつかの経路の1つ以上を介する、例えば筋肉内、皮内、皮下、または心臓内経路による、門脈カテーテルを介する、冠静脈洞カテーテルを介する、および/または治療される領域への直接的投与による投与に適した送達剤および/または他の薬学的に許容し得る担体を含むように、特別に配合することができる。したがって、「製剤」は、特定の投与経路のために特別に配合された組成物であると理解することができる。製剤は、特定の剤形で存在する組成物であり得る。
【0134】
本明細書で使用する場合、用語「改変RNA」は、アデノシン(A)((2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール)、グアノシン(G)(2−アミノ−9−[3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−3H−プリン−6−オン)、シチジン(C)(4−アミノ−1−[3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル]ピリミジン−2−オン)、およびウリジン(U)(1−[(3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]ピリミジン−2,4−ジオン)と比較して、または、RNA分子内のAMP、GMP、CMP、およびUMPと比較して、1つ、2つ、または2つよりも多いヌクレオシド改変を含有するRNA分子、またはその部分を指す。ヌクレオシド改変の非限定的な例は、本明細書内の他の場所に提供される。主張される特定のRNAのヌクレオチド配列が、天然に存在するRNA分子の配列と他の点で同一である場合、改変RNAは、天然の対応物中に存在するものとは異なる少なくとも1つの改変を有するRNA分子であると理解されよう。相違は、ヌクレオシド/ヌクレオチドに対する化学変化、または配列内のその変化の位置であり得る。一実施態様では、改変RNAは、改変されたメッセンジャーRNA(または「改変されたmRNA」)である。
【0135】
本明細書で使用する場合、用語「生理的プロセスを調節すること」は、生体、および細胞または組織などのその一部の、多様な機能および物理的または化学的作用の調節を指す。例えば、VEGF−Aが中心的役割を果たす生理的プロセスについては、調節には、血管形成を誘導すること、血管細胞増殖を刺激すること、心外膜前駆細胞の、増殖を増大させることおよび/または運命を変更すること、内皮化を上方調節すること、心筋再生を誘導すること、創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させること、血管機能を改善すること、組織灌流および新しい血管の形成を増大させること、瘢痕組織を減少させること、前負荷動員一回仕事量(PRSW)を増大させること、最大圧発生(maximal pressure development)を増大させること、変力作用を増大させること、左室駆出率(LVEF)を増大させること、心機能不全に関連するバイオマーカー(例えば、NT−proBNP、BNP、hsTnT、およびhsTnI)のレベルを低下させること、梗塞サイズを低下させること、心組織の線維症を軽減させること、および/または心機能を改善することが含まれ得る。
【0136】
本明細書で使用する場合、用語「核酸」には、その最も広い意味では、ホスホジエステル結合を介して連結されたヌクレオチドのポリマーを含む、あらゆる化合物および/または物質が含まれる。これらのポリマーは、しばしば、サイズに応じてオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと称される。用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書では互換的に使用される。
【0137】
語句「薬学的に許容し得る」は、本明細書では、妥当なベネフィット/リスク比に相応する、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わない
、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に適した、適切な医学的判断の範囲内である、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために用いられる。薬物承認機関(例えば、EMA、US−FDA)は、ガイドラインを提供し、薬学的に許容し得る化合物、材料、組成物、および/または剤形を承認する。例は、薬局方に列挙され得る。
【0138】
語句「薬学的に許容し得る賦形剤」は、本明細書では、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、薬学的に許容し得る材料を指すために用いられる。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。
【0139】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合ペプチド結合によって共に連結される、アミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で使用する場合、あらゆるサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを意味する。ポリペプチドは、単一分子でもあり得るし、二量体、三量体、または四量体などの多分子複合体でもあり得る。これらは、抗体またはインスリンなどの単鎖または多連鎖ポリペプチドを含むこともでき、また、会合または連結され得る。最も一般的には、多連鎖ポリペプチド中に、ジスルフィド結合が見られる。用語ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーにも適用することができる。
【0140】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」は、本質的に20種のアミノ酸のいずれかからなるポリマーである。「ポリペプチド」は、多くの場合、比較的大きいポリペプチドに関して使用され、「ペプチド」は、多くの場合、小さいポリペプチドに関して使用されるが、これらの用語の使用法は、当技術分野で重なり合っており、また、多様である。用語「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」は、本明細書では、時として互換的に使用される。
【0141】
用語「組換え」は、本明細書で使用する場合、タンパク質が、「異種核酸」の導入または天然の核酸の変更によって遺伝子操作されている核酸の使用を通じて原核または真核生物発現系に由来することを意味する。
【0142】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性を指す。この用語は、差が存在するという統計的証拠を指す。これは、帰無仮説が実際には真である場合に帰無仮説を棄却することを決定する確率と定義することができる。この決定はしばしば、p値を使用してなされる。当技術分野で周知である、有意性の他のあらゆる尺度を使用することができる。
【0143】
用語「対象」および「個人」は、本明細書では互換的に使用され、本明細書に記載した方法および組成物を用いた、予防的治療を含めた治療が提供される動物、例えばヒトを指す。ヒト対象などの特定の動物に対して特異的である状態または疾患状態の治療については、用語「対象」は、その特定の動物を指す。
【0144】
用語「を実質的に含まない」は、組成物または製剤が、意味がある量の特定の要素を有しない条件を指す。例えば、二価カチオン「を実質的に含まない」組成物または製剤は、二価カチオンをほとんどまたは全く含有しない。
【0145】
本明細書で使用する場合、疾患、障害、および/または状態「を患う」対象または個人は、疾患、障害、および/または状態の1つ以上の症状と診断されているまたは呈する。いくつかの実施態様では、対象は、疾患、障害および/または状態を患うリスクがある可
能性がある。
【0146】
用語「組織」は、ある種の特別な機能を共に実施する、同様に特化された細胞の群または層を指す。用語「組織特異的な」は、特定の組織からの細胞の起源または決定的な特性を指す。
【0147】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」または「治療」または「治療すること」は、その目的が、疾患の発生を予防するまたは遅らせる、例えば、心機能障害の発生を減速させること、または、血管性の状態、疾患、または障害の少なくとも1つの有害作用または症状、例えば不十分なまたは望ましくない心機能を特徴とするいずれかの障害などを軽減させることである、治療的処置を指す。
【0148】
本開示が、本明細書に記載した特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、したがって変わり得ることを理解するべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の実施態様を説明する目的のためだけであり、本開示の範囲を限定することを意図せず、本開示は、もっぱら特許請求の範囲によって定義される。
【0149】
5.2.VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNA
インビトロ、インビボ、インサイチュ、またはエクスビボにかかわらず、核酸、例えばリボ核酸(RNA)を、細胞に送達すること、例えば核酸の細胞内翻訳およびコードされた対象となるポリペプチドの産生を引き起こすことができることは、治療法、診断法、試薬の分野において、また、生物検定にとって非常に興味深い。
【0150】
天然に存在するRNAは、4種の基本のリボヌクレオチド:ATP、CTP、UTP、およびGTPから合成されるが、転写後に改変されたヌクレオチドも含有する可能性がある。さらに、RNA内には、およそ100種の異なるヌクレオシド改変が特定されている(Rozenski,J,Crain,P,and McCloskey,J.,The
RNA Modification Database:1999 update,Nucl Acids Res,(1999)27:196−197)。
【0151】
本開示によれば、これらのRNAは、当分野の他のRNA分子の(例えば、投与時の自然免疫応答および急速分解を活性化する)欠点を回避するためのものとして改変されることが好ましい。したがって、これらのポリヌクレオチドは、改変RNAと呼ばれる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、対象への投与時の自然免疫応答を回避する。いくつかの実施態様では、改変RNAの半減期は、非改変RNAと比較して延長される。
【0152】
好ましい実施態様では、RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用する場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、対象となるポリペプチドをコードする、また、インビトロ、インビボ、インサイチュ、またはエクスビボで、翻訳されて、コードされた対象となるポリペプチドを産生する能力がある、あらゆるポリヌクレオチドを指す。
【0153】
図1Aに表す通り、従来、mRNA分子の基本構成要素には、少なくとも、翻訳領域、5’非翻訳領域(UTR)、3’非翻訳領域(UTR)、5’キャップ、およびポリA鎖が含まれる。この野生型モジュール構造の構築に関して、本開示は、モジュール構造化を維持するが、ポリヌクレオチドに有用な特性(いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドが導入される細胞の自然免疫応答の実質的誘発の欠如が含まれる)を付与する1つ以上の構造的および/または化学的改変もしくは変更を含む、ポリヌクレオチドまたは一次RNA構築物を提供することによって、従来のmRNA分子の機能性の範囲を拡大する。
【0154】
改変RNAは、例えば糖、核酸塩基(例えば、ピリミジン核酸塩基の原子を、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたチオール、任意に置換されたアルキル(例えば、メチルもしくはエチル)、またはハロ(例えば、クロロもしくはフルオロ)と置き換えるまたは置換することによるものなどの、核酸塩基の1つ以上の改変)、またはヌクレオシド間結合(例えば、ホスホジエステル骨格に対する1つ以上の改変)に対するものなどの、標準のRNAヌクレオチド鎖と比較した場合の、いずれかの有用な改変を含むことができる。改変RNAは、他の薬剤(例えば、RNAi誘発剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒活性DNA、tRNA、三重らせん形成を誘導するRNA、アプタマー、ベクターなどを任意に含むことができる。
【0155】
米国特許出願公開第2014/0073687号明細書は、いくつかの有用な改変、例えば、5−メチルシチジン(5mC)、N6−メチルアデノシン(m6A)、3,2’−O−ジメチルウリジン(m4U)、2−チオウリジン(s2U)、2’フルオロウリジン、シュードウリジン、2’−O−メチルウリジン(Um)、2’デオキシウリジン(2’dU)、4−チオウリジン(s4U)、5−メチルウリジン(m5U)、2’−O−メチルアデノシン(m6A)、N6,2’−O−ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2’−O−トリメチルアデノシン(m62Am)、2’−O−メチルシチジン(Cm)、7−メチルグアノシン(m7G)、2’−O−メチルグアノシン(Gm)、N2,7−ジメチルグアノシン(m−2,7G)、N2,N2,7−トリメチルグアノシン(m−2,2,7G)から選択される少なくとも1つ以上の改変ヌクレオシドを伴う例示的な改変RNAを開示している。追加の改変は、2014年10月7日に出願された米国特許出願公開第2015/0051268号明細書、および2014年2月3日に出願された米国特許第9,061,059号明細書に記載されている。したがって、これらの改変のすべての内容全体を、参照によって本明細書に組み込む。追加の改変は、本明細書に記載される。
【0156】
非限定的な例としては、いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されてN1−メチル−シュード−UMPが形成される、少なくとも1つのウリジン一リン酸(UMP)が含まれ得る。いくつかの実施態様では、N1−メチル−シュード−UMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%という、配列中のUMPの割合で、UMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのUMPが、N1−メチル−シュード−UMPによって置き換えられている。
【0157】
いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されてメチル−CMPが形成される、少なくとも1つのシチジン一リン酸(CMP)が(さらに)含まれ得る。いくつかの実施態様では、メチル−CMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のCMPの割合で、CMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのCMPが、5−メチル−CMPによって置き換えられている。
【0158】
いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されてN6−メチル−AMPが形成される、少なくとも1つのアデノシン一リン酸(AMP)が(さらに)含まれ得る。いくつかの実施態様では、N6−メチル−AMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のAMPの割合で、AMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのAMPが、N6−メチル−AMPによって置き換えられている。
【0159】
いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されて7−メチル−GMPが形成される、少なくとも1つのグアノシン一リン酸(GMP)が(さらに)含まれ得る。いくつかの実施態様では、7−メチル−GMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のGMPの割合で、GMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのGMPが、7−メチル−GMPによって置き換えられている。
【0160】
いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、5−メチルシチジン(5mC)、N6−メチルアデノシン(m6A)、3,2’−O−ジメチルウリジン(m4U)、2−チオウリジン(s2U)、2’フルオロウリジン、シュードウリジン、2’−O−メチルウリジン(Um)、2’デオキシウリジン(2’dU)、4−チオウリジン(s4U)、5−メチルウリジン(m5U)、2’−O−メチルアデノシンアデノシン(m6A)、N6,2’−O−ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2’−O−トリメチルアデノシン(m62Am)、2’−O−メチルシチジン(Cm)、7−メチルグアノシン(m7G)、2’−O−メチルグアノシン(Gm)、N2,7−ジメチルグアノシン(m−2,7G)、N2,N2,7−トリメチルグアノシン(m−2,2,7G)、およびN1−メチル−シュードウリジン、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも1つの改変ヌクレオシドが(さらに)含まれ得る。それぞれの可能性および組み合わせは、本開示の別々の実施態様に相当する。
【0161】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’ジグアノシンキャップなどの5’キャップに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、翻訳領域に対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、3’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、ポリA鎖に対する改変を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、翻訳領域、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、またはポリA鎖に対する改変のいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、アルカリホスファターゼで任意に処理することができる。
【0162】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、一般に心血管の生理機能、特に動脈形成の制御における中心的役割を果たす、血管内皮増殖因子(VEGF)ポリペプチド、すなわち、VEGFタンパク質の大きなファミリーのいずれか1つをコードする(Holmes D.I.et al.,Genome Biol.,(2005)6(2):209)。VEGFの役割には、一酸化窒素(NO)シグナル伝達、血管透過性、発生上および出生後の血管形成、腫瘍血管形成、動脈形成、内皮複製、および多能性心血管前駆細胞のための細胞運命スイッチの活性化も含まれる。
【0163】
ある特定のVEGF遺伝子について、1以上のバリアントまたはアイソフォームが存在し得ることが、当分野の技術者によって理解されよう。本開示によるVEGF−Aポリペプチドの非限定的な例を、表1に列挙する。表1に開示する配列が、隣接領域の可能性を含むことが、当分野の技術者によって理解されよう。これらは、オープンリーディングフレームの5’(上流)または3’(下流)のいずれかに対して各ヌクレオチド配列内にコードされる。オープンリーディングフレームは、ヌクレオチド参照配列を教示することによって明確かつ具体的に開示される。1つ以上の利用可能なデータベースまたはアルゴリズムを利用することによって、5’および3’隣接領域をさらに特徴付けることも可能である。データベースは、NCBI配列の隣接領域に含まれる特徴に注釈を施しており、これらは、当技術分野で利用可能である。
【0166】
VEGF−Aポリペプチド、例えばヒトVEGF−AポリペプチドをコードするRNA分子が、表1に列挙したVEGF−A mRNAアイソフォームにしたがって設計できることが、当分野の技術者によって理解されよう。当業者は、一般に、残りのVEGFファミリーメンバーの複数のアイソフォームを熟知している。
【0167】
一実施態様では、本開示は、VEGF−Aポリペプチド(例えば配列番号2)をコードする改変RNAを提供する。いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGF−Aポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1を含む。いくつかの実施態様では、改変RNAは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、またはこれらのいずれかの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施態様では、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリA鎖、またはこれらのいずれかの組み合わせは、1以上の改変されたヌクレオチドを含むことができる。
【0168】
いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAは、配列番号1である、
図1Bに表す通りの構造を有することができる。
【0169】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGFポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1の核酸配列内に、1つ以上の改変されたUMPヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAには、例えば、改変されてN1−メチル−シュード−UMPが形成される少なくとも1つのUMPが含まれ得る。いくつかの実施態様では、N1−メチル−シュード−UMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のUMPの割合で、UMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのUMPが、N1−メチル−シュード−UMPによって置き換えられている。
【0170】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGFポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1の核酸配列内に、1つ以上のCMP改変ヌクレオチドを(さらに)含む。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAには、例えば、改変されてメチル−CMPが形成される少なくとも1つのUMPが含まれ得る。いくつかの実施態様では、メチル−CMPは、0.1%、2%、3%、4%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のCMPの割合で、CMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのCMPが、5−メチル−CMPによって置き換えられている。
【0171】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGFポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1の核酸配列内に、1つ以上のAMP改変ヌクレオチドを(さらに)含む。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAには、例えば、改変されてN6−メチル−AMPが形成される少なくとも1つのAMPが含まれ得る。いくつかの実施態様では、N6−メチル−AMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のAMPの割合で、AMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのAMPが、N6−メチル−AMPによって置き換えられている。
【0172】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGFポリペプチドをコードし、ここでは、改変RNAは、配列番号1の核酸配列内に、1つ以上の改変されたGMPヌクレオチドを(さらに)含む。いくつかの実施態様では、改変RNAには、例えば、改変されて7−メチル−GMPが形成される少なくとも1つのGMPが含まれ得る。いくつかの実施態様では、7−メチル−GMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、および100%から選択される、配列中のGMPの割合で、GMPの代わりに存在する。いくつかの実施態様では、すべてのGMPが、7−メチル−GMPによって置き換えられている。
【0173】
いくつかの実施態様では、改変RNAは、VEGFポリペプチドをコードし、ここでは、この改変RNAは、配列番号1の核酸配列内に、1つ以上の改変されたヌクレオチドを(さらに)含む。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAには、例えば、5−メチルシチジン(5mC)、N6−メチルアデノシン(m6A)、3,2’−O−ジメチルウリジン(m4U)、2−チオウリジン(s2U)、2’フルオロウリジン、シュードウリジン、2’−O−メチルウリジン(Um)、2’デオキシ ウリジン(2’ dU)、4−チオウリジン(s4U)、5−メチルウリジン(m5U)、2’−O−メチルアデノシン(m6A)、N6,2’−O−ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2’−O−トリメチルアデノシン(m62Am)、2’−O−メチルシチジン(Cm)、7−メチルグアノシン(m7G)、2’−O−メチルグアノシン(Gm)、N2,7−ジメチルグアノシン(m−2,7G)、N2,N2,7−トリメチルグアノシン(m−2,2,7G)、およびN1−メチル−シュードウリジン、またはこれらのいずれかの組み合わせから選択される、少なくとも1つ以上の改変ヌクレオシドが含まれ得る。それぞれの可能性および組み合わせは、本開示の別々の実施態様に相当する。
【0174】
5.3.改変RNAを含む組成物
いくつかの実施態様は、開示した改変RNAを含む特定の製剤を含めた組成物に関する。いくつかの実施態様では、製剤は、薬剤として有効な量の1つ以上の改変RNAを含む。
【0175】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、脂質ベースの複合体、リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子などの中に、少なくとも1つ以上の改変RNAを含むことができる。これらの製剤は、ポリヌクレオチド、一次構築物、または改変RNAによる細胞トランスフェクションを増大させる;および/またはコードされたタンパク質の翻訳を増大させることができる可能性があるので、一般に、リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を、ポリヌクレオチド、一次構築物、または改変RNAによって誘導されるタンパク質産生の有効性を向上させるために使用することができる。一つのこうした例には、ポリプレックスプラスミドDNAの有効な全身送達を可能にするための脂質封入の使用が含まれる(Heyes et al.,Mol Ther.(2007)15:713−720;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子はまた、ポリヌクレオチド、一次構築物、または改変RNAの安定性を増大させるために使用することができる。
【0176】
したがって、いくつかの実施態様では、改変RNAの医薬組成物は、リポソームを含む。リポソームは、主として脂質二重層から構成することができ、かつ栄養および医薬製剤の投与のための送達ビヒクルとして使用することができる、人工的に調製される小胞である。リポソームは、様々なサイズのもの、例えば、限定はされないが、多重層小胞(multilamellar vesicle)(MLV)(直径が数百ナノメートルであり得る、かつ狭い水性の区画によって隔てられている連続する同心性の二重層を含有することができる)、小型単層小胞(small unicellular vesicle)(SUV)(直径が50nm未満であり得る)、および大型単層小胞(large unilamellar vesicle)(LUV)(直径が50から500nmであり得る)であり得る。リポソーム設計には、リポソームの不健康組織への接着を向上させる、または、限定はされないがエンドサイトーシスなどの事象を活性化させるために、限定はされないが、オプソニンまたはリガンドを含めることができる。リポソームは、医薬組成物の送達を向上させるために、低pHまたは高pHを含有することができる。
【0177】
いくつかの実施態様では、改変RNAの医薬組成物は、リポプレックス、例えば、限定はされないが、ATUPLEX(商標)システム、DACCシステム、DBTCシステム、およびSilence Therapeutics(London,United Kingdom)からの他のsiRNA−リポプレックス技術、STEMGENT(登録商標)(Cambridge,Mass.)からのSTEMFECT(商標)、および核酸のポリエチレンイミン(PEI)またはプロタミンに基づく標的化および非標的化送達を含む(Aleku et al. Cancer Res.,(2008)68:9788−9798;Strumberg et al.Int J Clin Pharmacol Ther,(2012)50:76−78;Santel et al.,Gene Ther,(2006)13:1222−1234;Santel et al.,Gene Ther,(2006)13:1360−1370;Gutbier et al.,Pulm Pharmacol. Ther.,(2010)23:334−344;Kaufmann et al. Microvasc Res,(2010)80:286−293;Weide et al.J Immuno Ther.,(2009)32:498−507;Weide et al.J Immuno Ther.,(2008)31:180−188;Pascolo Expert Opin.Biol.Ther.4:1285−1294;Fotin−Mleczek et al.,J.Immunother,(2011)34:1−15;Song et al.,Nature Biotechnol.,(2005)23:709−717;Peer et al.,Proc Natl Acad Sci USA.,(2007)6;104:4095−4100;deFougerolles Hum Gene Ther.,(2008)19:125−132;これらすべて、その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。
【0178】
いくつかの実施態様では、改変RNAの医薬組成物は、固体脂質ナノ粒子を含む。固体脂質ナノ粒子(SLN)は、10から1000nmの平均直径を有する球状であり得る。SLNは、親油性分子を可溶化することができ、かつ界面活性剤および/または乳化剤で安定化させることができる、固体脂質コアマトリックスを有する。さらなる実施態様では、脂質ナノ粒子は、自己組織化脂質−ポリマーナノ粒子であり得る(Zhang et al.,ACS Nano,(2008),2(8),pp1696−1702(その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0179】
追加の脂質ベースの組成物は、米国特許出願公開第2015/0051268号明細書(その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)に論じられている。したがって、いくつかの実施態様では、本開示による改変RNAの医薬製剤は、米国特許出願公開第2015/0051268号明細書に論じられている通りに、脂質ベースの製剤中に配合される。
【0180】
本開示のいくつかの実施態様では、改変RNAの医薬製剤は、いかなる脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子など)も含まず、本明細書ではネイキッドRNA製剤と呼ばれる。国際公開第WO2012/103985号パンフレットは、ネイキッドRNAが、二価カチオン、好ましくはカルシウムの存在下で配合された場合にのみ、細胞を透過することができることを示唆している。さらに、他の研究は、ネイキッドRNA分子をインビボで動物組織に誘導させるためにはカルシウムが必要であることを示唆および示している(Wolff J.A.et al.,Science,(1999),247,1465−1468)。同様に、Probstらは、インビボでのネイキッドRNAの注射が、注射液内のカルシウムの存在に強く依存することを示した(Probst J.et al.,Gene Ther,(2007)14,1175−1180)。したがって、ネイキッドRNAの細胞および組織への送達に取り組んでいるこれらの研究は、製剤中のカルシウムの必要性を強く示唆している。
【0181】
さらに、本開示のいくつかの実施態様では、ネイキッド改変RNAは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液と共に配合される。例えば、改変RNAは、二価カチオンを実質的に含まないpH7.4 PBS緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムまたはマグネシウムを実質的に含まないpH7.4 PBS緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムもマグネシウムも含有しないpH7.4 PBS緩衝液と共に配合することができる。
【0182】
いくつかの実施態様では、ネイキッド改変RNAは、クエン酸生理緩衝液と共に配合される。例えば、改変RNAは、二価カチオンを実質的に含まないpH7.0クエン酸生理緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムまたはマグネシウムを実質的に含まないpH7.0クエン酸生理緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムもマグネシウムも含有しないpH7.0クエン酸生理緩衝液と共に配合することができる。例えば、改変RNAは、10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)を含有するpH7.0クエン酸生理緩衝液(ここでは、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない)と共に配合することができる。
【0183】
いくつかの実施態様では、ネイキッド改変RNAは、トロメタミン(THAM)緩衝液と共に配合される。例えば、改変RNAは、二価カチオンを実質的に含まないpH8.0
THAM緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムまたはマグネシウムを実質的に含まないTHAM緩衝液と共に配合することができる。いくつかの実施態様では、改変RNAは、カルシウムもマグネシウムも含有しないpH8.0 THAM緩衝液と共に配合することができる。例えば、改変RNAは、pH8.0 THAM緩衝液(トロメタミンAKA 2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、300mmol/L Tris−HCl)(ここでは、THAM緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない)と共に配合することができる。
【0184】
いくつかの実施態様では、ネイキッドRNA医薬製剤は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含むことができ、これには、本明細書で使用する場合、限定はされないが、所望される特定の剤形に適合された、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤などが含まれる。賦形剤はまた、限定はされないが、ポリマー、コア−シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、およびそれらの組み合わせを含むことができる。医薬組成物を製剤化するための種々の賦形剤、およびその組成物を調製するための技術は、当技術分野で公知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22
nd Edition,Edited by Allen,Loyd V.,Jr,Pharmaceutical Pressを参照のこと;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。従来の賦形剤媒体の使用は、いずれかの従来の賦形剤媒体が、いずれかの望ましくない生物学的影響をもたらすまたは別の方式で医薬組成物のいずれかの他の成分と有害な方式で相互作用することによって物質またはその誘導体と適合しない可能性がある場合を除いて、本開示の範囲内であると考えることができる。
【0185】
いくつかの実施態様では、ネイキッドRNA製剤は、薬剤として有効な量の1つ以上の改変RNAを含み、ここでは、製剤は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液を含み、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施態様では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0186】
いくつかの実施態様では、ネイキッドRNA製剤は、薬剤として有効な量の1つ以上の改変RNAを含み、ここでは、製剤は、THAM緩衝液を含み、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。
【0187】
いくつかの実施態様では、ネイキッドRNA製剤は、薬剤として有効な量の1つ以上の改変RNAを含み、ここでは、製剤は、クエン酸生理緩衝液を含み、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。
【0188】
ある種の実施態様では、本開示による改変RNAを含む製剤は、脂質ベースの複合体(
リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)、0.1から1μg/μLの濃度のリン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中である。いくつかの実施態様では、本開示による改変RNAを含む製剤は、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)、1から10μg/μLの濃度のリン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。いくつかの実施態様では、本開示による改変RNAを含む製剤は、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)、10から50μg/μLの濃度のリン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。
【0189】
好ましい実施態様では、本開示による改変RNAを含むネイキッドRNA製剤は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、この製剤は、0.1から1μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、この製剤は、1から10μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、この製剤は、10から50μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。
【0190】
いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液中に配合される、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAを含むネイキッドRNA製剤は、脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。
【0191】
5.4.VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療すること
VEGF−Aの発現が不十分である対象は、限定はされないが、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患を含めた、多くの血管疾患を患う可能性がある。VEGF−Aポリペプチドをコードする1以上の改変RNA分子の直接的投与によって、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療することが、本開示の目標である。いくつかの実施態様では、ネイキッドVEGF−A RNAは、脂質およびカルシウムを含まないクエン酸生理緩衝液中で対象に投与される。
【0192】
一般に、細胞に導入された外来性の核酸は、自然免疫応答を誘発し、インターフェロン(IFN)産生および細胞死をもたらす。しかし、改変RNAは、これらの問題の少なくともいくつかを克服しており、インビボまたはエクスビボで、核酸、例えばリボ核酸(RNA)を細胞の内側に送達するための、例えば、核酸の細胞内翻訳およびコードされたタンパク質の産生を引き起こすための、治療法、診断法、試薬にとって、また、生物検定にとって、非常に興味深いものである。
【0193】
本明細書に記載した改変RNA、および改変RNAから翻訳されたタンパク質は、治療薬として使用することができる。例えば、本明細書に記載した改変RNAは、対象に投与することができ、ここでは、改変RNAは、対象において、翻訳されて、いずれかのVEGFファミリーメンバーの治療用タンパク質、またはその断片を生じる。提供されるのは、ヒトおよび他の哺乳類における疾患または状態の治療のための方法である。VEGF−Aに関する本明細書に記載した製剤はすべて、いずれかの他のVEGFファミリーメンバーと共に快適に使用することができる。
【0194】
いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む組成物および特定の製剤を、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、裂傷などの創傷の治癒、
重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患などの疾患の治療のために使用することができる。
【0195】
いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、駆出率が低下したまたは保たれた心不全を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、心筋梗塞後の心機能不全を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、虚血性心疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、外傷または手術による血管損傷を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、創傷治癒において、例えば、裂傷を治癒させることにおいて使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、重症虚血肢のために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、肺高血圧症を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、末梢動脈疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、腎疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様では、VEGF−Aポリペプチドをコードする1つ以上の改変RNAを含む製剤を、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患を治療するために使用することができる。
【0196】
本開示の他の態様は、それを必要とする対象への、改変されたRNAを含む製剤の投与に関する。製剤の投与は、筋肉内、経動脈的、腹腔内、静脈内、動脈内、皮下、心室内、皮内、心臓内、心外膜投与、門脈カテーテルを介するもの、冠静脈洞カテーテルを介するもの、および/または治療される領域への直接的投与であり得る。
【0197】
しかし、本開示は、薬物送達の科学の進歩の可能性を考慮に入れた、あらゆる適切な経路による、ネイキッド改変RNA分子または改変RNA複合体、および/またはその医薬用、予防用、または診断用製剤の送達も包含する。
【0198】
非限定的な例としては、いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、筋肉内、皮内、皮下、心臓内、もしくは心外膜経路によって、門脈カテーテルを介して、冠静脈洞カテーテルを介して、および/または治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に筋肉内に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に皮内に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に皮下に投与される。
【0199】
いくつかの実施態様では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、対象に心臓内に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、門脈カテーテルを介して対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、冠静脈洞カテーテルを介して対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される。例えば、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、直視下心臓手術中の損傷領域への直接的注射によって、対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、対象に心外膜に投与される。例えば、冠動脈バイパス術(CABG)を受けている患者では、製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与での固定投薬量で、心臓の外側から、患者に投与される。この段落内のそれぞれの実施態様では、「複数回投与」は、互いに、短い(1〜5分)、中程度の(6〜30分)、または長い(30分よりも長い、数時間、さらには数日)時間間隔だけ離すことができる。
【0200】
製剤は、疾患、障害、および/または状態を治療するのに有効な、いずれかの量の投与を使用して、対象に投与することができる。必要とされる厳密な量は、対象の人種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、個別の製剤、その投与様式、その活性様式などに応じて、対象ごとに変わることとなる。しかし、製剤の1日の総使用量は、正確な医学的判断の範囲内で主治医によって決定することができることが理解されよう。任意の特定の患者にとっての、薬剤として有効な具体的な投与レベルは、治療される疾患およびその疾患の重症度;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な製剤;患者の年齢、体重、全身の健康、性別、および食事;用いられる具体的な化合物の投与時刻、投与経路、および排出速度;治療の期間;用いられる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物(例えば改変RNA)、ならびに医療分野で周知の同様の因子を含めた、様々な要因に応じて決まることとなる。
【0201】
ある種の実施態様では、本開示による製剤が、対象に投与され、ここでは、製剤は、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)を含む。他の実施態様では、ネイキッド改変RNAは、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中で投与される。他の実施態様では、ネイキッド改変RNAは、カルシウムを含めた二価カチオンの非存在下で投与される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む心臓内または皮内投与のための製剤は、カルシウムもマグネシウムも含有しないクエン酸生理緩衝液中に配合される。いくつかの実施態様では、製剤は、0.1から1μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、1から10μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、10から50μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。
【0202】
ある種の実施態様では、所望の治療的または予防的効果を得るために、本開示による製剤を、1日あたり対象の体重あたり約0.0001mg/kgから約100mg/kg、約0.001mg/kgから約0.05mg/kg、約0.005mg/kgから約0.05mg/kg、約0.001mg/kgから約0.005mg/kg、約0.05mg/kgから約0.5mg/kg、約0.01mg/kgから約50mg/kg、約0.1mg/kgから約40mg/kg、約0.5mg/kgから約30mg/kg、約0.01mg/kgから約10mg/kg、約0.1mg/kgから約10mg/kg、または約1mg/kgから約25mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで、1日1回以上投与することができる。所望される投薬量は、24時間の期間内での秒、分、または時間という時間をかけてボーラス投与でもしくは複数回投与で、1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに、3日に1回、毎週、2週ごとに、3週ごとに、4週ごとに、または単回投与として1回送達することができる。ある種の実施態様では、所望される投薬量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の投与)を使用して送達することができる。
【0203】
いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、固定投薬量レベルで投与することができる。例えば、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約0.1mgから約1mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約1mgから約10mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約10mgから約25mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約25mgから約50mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約50mgから約100mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、投与あたりまたは総用量あたり約0.1mgから約25mgの固定投薬量レベルで投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、固定投薬量で投与することができる。例えば、いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、0.1mg固定投薬量で投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、1mg固定投薬量で投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、10mg固定投薬量で投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、25mg固定投薬量で投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、50mg固定投薬量で投与することができる。いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、投与あたりまたは総用量あたり、100mg固定投薬量で投与することができる。
【0204】
いくつかの実施態様では、本開示による製剤は、対象に投与され、ここでは、クエン酸生理緩衝液中に配合されるVEGF−Aポリペプチドをコードするネイキッド改変RNAを含む製剤は、脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。本開示による製剤におけるRNA送達が原因の毒性の評価は、当技術分野で周知の方法によって求めることができる。例えば、典型的には、カチオン性脂質が、RNA封入および安定性を向上させるために、RNA治療法の脂質製剤に含められる。しかし、いくつかのカチオン性脂質は、膜構造の完全性を用量依存的に破壊する、細胞の溶解および壊死を引き起こす、および/ま
たは複数の遺伝子の発現を望ましくない様式で変える可能性がある(Xue H.Y.,Curr Pharm Des.,(2015)21(22):3140−7;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。したがって、毒性の例は、本開示による製剤におけるRNA送達が原因の、細胞の溶解および壊死、および/または複数の遺伝子の発現の変更の程度を測定することによって評価することができる。前臨床および臨床レベルでは、いくつかのリポプレックスの用量依存性の全身毒性が、十分に裏付けられている。肝臓内のクッパー細胞によるいくつかのリポプレックスの捕捉は、炎症反応を誘発する可能性があり、これは、肝臓に損傷を与え、主要肝機能指標のレベル上昇をもたらす可能性がある。白血球減少および血小板減少も起こる可能性がある(Zhang J.,Adv
Drug Deliv Rev.,(2005)57(5):689−698;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。したがって、毒性の例は、本開示による製剤におけるRNA送達が原因の炎症反応を測定することによって評価することができる。さらに、毒性の例は、呼吸困難、低酸素、悪寒、背部痛、低血圧、および肝損傷などの、注入に伴う反応を測定することによって評価することができる。
【0205】
血管疾患を患う対象は、1つ以上の症状または臨床マーカーが低減するならば、治療に対して「応答性」である。あるいは、治療は、疾患の進行が縮小または停止されるならば、機能している。例えば、心不全(HF)は、心臓が弱くなり血液が充満されない、または血液および酸素の身体の必要性を満たすのに十分な血液を送り出すことができない場合に起こる。同様に、虚血性心疾患(IHD)を患う患者は、狭窄した心臓動脈によって引き起こされる心臓の問題を有する。動脈が狭窄すると、心筋に到達する血液および酸素が少なくなる。微小血管機能障害、機能血管の喪失、および/または心組織の喪失の結果として、患者は、通常、心筋梗塞後の心機能不全を発症する。さらに、血管構造は、最も一般的には、穿通性の外傷または手術によって損傷される。糖尿病は、創傷治癒の多数の要素を損ない、糖尿病性の創傷治癒を患う患者は一般に、血管機能障害が原因で、血流が変化している。したがって、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍を患う患者は、通常、創傷治癒の低下または遅延を有する。重症虚血肢(CLI)は、動脈の重度の閉塞であり、これは、四肢(手、足、および脚)への血流を著しく低下させ、激痛点、およびさらには皮膚潰瘍、ただれ(sore)、または壊疽に進行する。肺高血圧症(PHまたはPHTN)は、息切れ、眩暈、失神、脚のむくみ、および他の症状をもたらす、肺血管系として共に公知である肺動脈、肺静脈、または肺毛細血管における血圧の増大である。末梢動脈疾患(PAD)は、脚、胃、腕、および頭部への−最も一般的には脚の動脈における末梢動脈の狭窄である。これらの状態は、心エコー図法、血液検査、核磁気共鳴画像法(MRI)、心電図記録法、および他の適切な試験による確認を伴う様々な理学的検査に基づいて、臨床的に診断されることが通例である。例えば、重大な血管損傷の診断は、綿密な理学的検査および画像検査に依存する。したがって、患者が、理学的検査による、より深刻ではない症状、および/または心エコー図法、血液検査、MRI、心電図記録法、または任意の他の適切なおよび/または通例の試験からの試験結果の向上を示すならば、これらの状態のいずれか1つの治療は、機能している。
【0206】
いくつかの実施態様では、血管疾患を患う対象は、心筋梗塞を経験している。いくつかの実施態様では、対象は、本明細書に開示する製剤での治療前の約1か月以内に心筋梗塞を経験した。
【0207】
いくつかの実施態様では、心筋梗塞は、心外膜由来細胞(EPDC)の活性化を時間と共に誘発する。いくつかの実施態様では、心筋梗塞を経験している対象は、心筋梗塞の数日後、好ましくはEPDC活性化のピーク時に、本明細書に開示する製剤で治療される。いくつかの実施態様では、心筋梗塞を経験している対象は、心筋梗塞の約7日後、本明細書に開示する製剤で治療される。いくつかの実施態様では、心筋梗塞を経験している対象は、心筋梗塞の約10日後、心筋梗塞の約2週後、心筋梗塞の約3週後、または心筋梗塞
の約6週後に、本明細書に開示する製剤で治療される。
【0208】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した組成物または製剤での治療法は、駆出率が低下した心筋梗塞を治療することを含む。他の実施態様では、治療法は、駆出率が保たれた心不全を治療することを含む。いくつかの実施態様では、組成物または製剤は、健康な組織と梗塞を起こした組織との間の境界域に注射される。
【0209】
いくつかの実施態様では、血管疾患を患う対象は、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、心房細動、心臓弁膜症、心筋症、または感染症も患う。
【0210】
いくつかの実施態様では、血管疾患を患う対象は、左室機能不全を患っている。いくつかの実施態様では、対象は、約40%未満の左室駆出率(LVEF)を有する。いくつかの実施態様では、対象は、約45%未満のLVEFを有する。
【0211】
いくつかの実施態様では、対象は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全を患っている。いくつかの実施態様では、駆出率が低下したまたは保たれた心不全を患う対象は、New York Heart Association Functional Classification(NYHAFC)ガイドラインのステージII〜IVに分類される。
【0212】
いくつかの実施態様では、対象は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全を示す1つ以上のバイオマーカー(例えば、NT−proBNP、BNP、hsTnT、またはhsTnI)のレベルが上昇している。いくつかの実施態様では、対象は、BNP(b型ナトリウム利尿ペプチド)レベルが上昇している。いくつかの実施態様では、対象は、約100pg/mLのBNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約100〜300pg/mLのBNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約300〜600pg/mLのBNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約600pg/mLのBNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約600〜900pg/mLのBNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、NT−proBNP(n末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド)レベルが上昇している。いくつかの実施態様では、対象は、約450pg/mLのNT−pro BNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、50歳未満であり、かつ約450pg/mLのNT−pro BNPレベルである。いくつかの実施態様では、対象は、約900pg/mLのNT−pro BNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約50から75歳であり、かつ約900pg/mLのNT−pro BNPレベルである。いくつかの実施態様では、対象は、少なくとも1800pg/mLのNT−pro BNPレベルを有する。いくつかの実施態様では、対象は、約75歳であり、かつ約1800pg/mLのNT−pro BNPレベルである。いくつかの実施態様では、対象は、hsTnT(高感度トロポニンT)が上昇している。いくつかの実施態様では、対象は、hsTnI(高感度トロポニンI)が上昇している。
【0213】
いくつかの実施態様では、対象は、本明細書の製剤での治療前の約1か月以内に、約45%未満のLVEFを有する心筋梗塞を経験している。
【0214】
いくつかの実施態様では、対象は、約40%未満のLVEF、少なくとも約600pg/mLのNT−proBNPレベルを有する、駆出率が低下したまたは保たれた慢性虚血性心不全を患っており、NYHAFCガイドライン上でステージII〜IVに分類される。
【0215】
さらに、血管機能についての分子測定を使用して、全身的病態生理の向上を評価するこ
とができる。これらの測定の例としては、一酸化窒素(NO)利用可能性の亢進、血管形成/動脈形成の増加、および幹細胞の心組織への動員が挙げられる。したがって、血管疾患を患う患者は、これらの測定において分子機能の向上を示すならば、治療に対して「応答性」である。
【0216】
5.5.哺乳類の細胞、組織、または対象における生理的プロセスを調節すること
本開示の別の態様は、哺乳類の細胞、組織、または対象において生理的プロセスを調節するための、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAを含む組成物または特定の製剤の投与に関する。いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象における生理的プロセスを調節するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。非限定的な例としては、生理的プロセスの調節には、血管形成を誘導すること、血管細胞増殖を刺激すること、心外膜前駆細胞の、増殖を増大させることおよび/または運命を変更すること、内皮化を上方調節すること、心筋再生を誘導すること、創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させること、血管機能を改善すること、組織灌流および新しい血管の形成を増大させること、瘢痕組織を減少させること、前負荷動員一回仕事量を増大させること、最大圧発生を増大させること、変力作用を増大させること、左室駆出率を(例えば、約5から10%)増大させること、心機能不全に関連するバイオマーカー(例えば、NT−proBNP、BNP、hsTnT、およびhsTnI)のレベルを低下させること、梗塞サイズを低下させること、心組織の線維症を軽減させること、および/または心機能を改善することが含まれ得る。
【0217】
用語「接触させること」または「接触」には、細胞、組織、または対象を、本明細書に開示した通りの改変RNAと接触させることに関連して本明細書で使用する場合、改変RNAを細胞、組織、または対象と触れさせることまたは極めて近接させることが含まれる。したがって、いくつかの実施態様では、語句「接触させること」は、直接的または間接的であり得る曝露の方法を指す。ある方法では、こうした接触は、当技術分野で周知の任意の手段を介する、組成物の、細胞、組織、または対象への直接的注射を含む。別の実施態様では、接触させることはまた、間接的接触、例えば、組織を囲む局所的な媒体を介するもの、または当技術分野で公知の任意の経路を介するものも包含する。それぞれの可能性は、本開示の別の実施態様に相当する。
【0218】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において血管形成を誘導するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。血管形成を誘導することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Lopez J.J.et al.,Cardiovasc Res,(1998)40,272−281;Galiano R.D.et al.,Am J Pathol.,(2004)164,1935−1947;Lin Y.D.et al.,Sci Transl Med.,(2012)4(146):146ra109;Zangi L.et al.,Nat Biotechnol.,(2013)10,898−907(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0219】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において血管細胞増殖を刺激するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含
む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。血管細胞増殖を刺激することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Galiano R.D.et al.,Am J Pathol,(2004)164,1935−1947(その全体を参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0220】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、心外膜前駆細胞の、増殖を増大させるおよび/または運命を変更するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。心外膜前駆細胞の、増殖を増大させるおよび/または運命を変更することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Zangi L.et al.,Nat Biotechnol.,(2013)10,898−907(その全体を参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0221】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、内皮化を上方調節するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。内皮化を上方調節することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Galiano R.D.et al.,Am J Pathol,(2004)164,1935−1947(その全体を参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0222】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、心筋再生を誘導するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。心筋再生を誘導することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Zangi L.et al.,Nat Biotechnol.,(2013)10,898−907;Lin Y.D.et al.,Sci Transl Med.,(2012)4(146):146ra109(これらを両方とも参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0223】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を
、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。創傷治癒のために組織移植片の血行再建を増大させることに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Tohyama H.et al.,Chang Gung Med J,(2009)32,133−139;Chen J. et al.,Exp Ther Med,(2012)4,430−434(これらを両方とも参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0224】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、血管機能を改善するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。血管機能を改善することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Lopez J.J.et al.,Cardiovasc Res,(1998)40,272−281;Tio R.A.et al.,Hum Gene Ther.,(1999)10,2953−2960;Sato K.et al.,J Am Coll Cardiol.,(2001)37,616−23(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0225】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、組織灌流および新しい血管の形成を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。組織灌流および新しい血管の形成を増大させることに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Chiappini C.,et al.,Nat Mater.,(2015)14,532−539;Lin Y.D.et al,,Sci Transl Med.,(2012)4(146):146ra109;Zangi L.et al,,Nat Biotechnol.,(2013)10,898−907(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0226】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、瘢痕組織を減少させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。瘢痕組織を減少させることに対する改変RNAの効果は、当
技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Rosano J.M.et al.,Cardiovasc Eng Technol.,(2012)3,237−247;Galiano R.D.et al.,Am J Pathol,(2004)164,1935−1947;Lin Y.D.et al.,Sci Transl Med.,(2012)4(146):146ra109;Zangi L.et al.,Nat Biotechnol.(2013)10,898−907(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0227】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、心機能を改善するための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。心機能を改善することに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Rosano J.M.et al.,Cardiovasc Eng Technol.,(2012)3,237−247;Lin Y.D.et al,,Sci Transl Med.,(2012)4(146):146ra109;Zangi L.et al,,Nat Biotechnol.,(2013)10,898−907(これらすべてを参照によって本明細書に組み込む)を参照のこと)。
【0228】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、前負荷動員一回仕事量を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。前負荷動員一回仕事量を増大させることに対する改変RNAの効果は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる(例えば、Fenely et al.,JACC,(1992),19(7):1522−30を参照のこと)。
【0229】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、最大圧発生を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。最大圧発生を増大させることに対する改変RNAの効果は、左室造影、冠動脈造影、心エコー図法、MRIスキャン、CTスキャン、心電図同期心筋SPECスキャン、または心電図同期心筋PETスキャンなどの、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0230】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、変力作用を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝
生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。変力作用を増大させることに対する改変RNAの効果は、左室造影、冠動脈造影、心エコー図法、MRIスキャン、CTスキャン、心電図同期心筋SPECスキャン、または心電図同期心筋PETスキャンなどの、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0231】
いくつかの実施態様では、哺乳類の心臓細胞、組織、または対象において、左室駆出率(LVEF)を増大させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。左室駆出率を増大させることに対する改変RNAの効果は、左室造影、冠動脈造影、心エコー図法、MRIスキャン、CTスキャン、心電図同期心筋SPECスキャン、または心電図同期心筋PETスキャンなどの、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。いくつかの実施態様では、LVEFは、約4%から10%増大する。いくつかの実施態様では、LVEFは、約5%から8%増大する。
【0232】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、心機能不全に関連するバイオマーカー(例えば、NT−proBNP、BNP、hsTnT、およびhsTnI)を低下させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。
【0233】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、梗塞サイズを低下させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。いくつかの実施態様では、梗塞サイズが低下する。いくつかの実施態様では、梗塞が排除される。梗塞サイズに対する改変RNAの効果は、左室造影、冠動脈造影、心エコー図法、MRIスキャン、CTスキャン、心電図同期心筋SPECスキャン、または心電図同期心筋PETスキャンなどの、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0234】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞、組織、または対象において、線維症を軽減させるための方法は、哺乳類の細胞、組織、または対象を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施態様では、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい
実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。いくつかの実施態様では、線維症が軽減される。いくつかの実施態様では、線維症が排除される。線維症に対する改変RNAの効果は、左室造影、冠動脈造影、心エコー図法、MRIスキャン、CTスキャン、心電図同期心筋SPECスキャン、または心電図同期心筋PETスキャンなどの、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0235】
5.6.哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させること
本開示の別の態様は、哺乳類の細胞または組織におけるインビボ、インビトロ、インサイチュ、またはエクスビボタンパク質発現のための、VEGF−Aポリペプチドをコードする改変RNAを含む組成物または特定の製剤の投与に関する。
【0236】
いくつかの実施態様は、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法であって、哺乳類の細胞または組織を、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで、改変RNAを含む組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0237】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法は、哺乳類の細胞または組織を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含む。
【0238】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法は、哺乳類の細胞または組織を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含み、ここでは、この組成物は、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液中に配合される。好ましい実施態様では、改変RNAを含む組成物は、クエン酸生理緩衝液を含む。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。
【0239】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法は、哺乳類の細胞または組織を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含み、ここでは、この組成物は、0.1から1μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、組成物は、1から10μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、組成物は、10から50μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。
【0240】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法は、哺乳類の細胞または組織を、本開示による改変RNAを含む組成物と接触させることを含み、ここでは、この組成物は、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)中に配合される。
【0241】
いくつかの実施態様では、哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させるための方法は、哺乳類の細胞または組織を、クエン酸生理緩衝液中に配合された改変RNAを含む組成物と接触させることを含み、ここでは、この組成物は、脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。
【0242】
5.7.対象においてVEGF−Aを産生させる方法
いくつかの実施態様は、対象においてVEGF−Aを産生させる方法であって、本開示
による改変RNAを含む組成物または特定の製剤を、対象に投与することを含む方法に関する。
【0243】
非限定的な例としては、いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生させる方法は、本開示による改変RNAを含む製剤を、対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、クエン酸生理緩衝液中に配合される。いくつかの実施態様では、製剤は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、製剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。
【0244】
いくつかの実施態様では、製剤は、脂質、リピドイド(lipidoid)、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス、およびそれらの混合物から選択される、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0245】
いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生する方法は、本開示による改変RNAを含む製剤を対象に投与することを含み、ここでは、対象は、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患っている。いくつかの実施態様では、対象は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患から選択される疾患を患っている。いくつかの実施態様では、疾患は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全.である。いくつかの実施態様では、疾患は、心筋梗塞後の心機能不全である。いくつかの実施態様では、疾患は、虚血性心疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、外傷または手術による血管損傷である。いくつかの実施態様では、疾患は、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍である。いくつかの実施態様では、疾患は、重症虚血肢である。いくつかの実施態様では、疾患は、肺高血圧症である。いくつかの実施態様では、疾患は、末梢動脈疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、腎疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患である。
【0246】
いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生する方法であって、本開示による改変RNAを含む製剤を対象に投与することを含み、ここでは、製剤は、筋肉内、皮内、皮下、もしくは心臓内、経路によって、門脈カテーテルを介して、冠静脈洞カテーテルを介して、および/または治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に筋肉内に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に皮内に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に皮下に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に皮下に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に、心臓内に、好ましくは複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、またはそれ以上の)投与で、固定投薬量で投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、門脈カテーテルを介して対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、冠静脈洞カテーテルを介して対象に投与される。いくつかの実施態様では、製剤は、治療される領域への直接的投与によって、対象に投与される。
【0247】
いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生する方法は、本開示による改変RNAを含む製剤を対象に投与することを含み、ここでは、製剤は、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液を含む。好ましい実施態様では、改変RNAを含む製剤は、クエン酸生理緩衝液中に配合される。いくつかの実施態様では、
クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。
【0248】
いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生する方法は、本開示による改変RNAを含む製剤を対象に投与することを含み、ここでは、この製剤は、0.1から1μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、1から10μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、10から50μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。
【0249】
いくつかの実施態様では、対象においてVEGF−Aを産生する方法は、本開示による改変RNAを含む製剤を対象に投与することを含み、ここでは、この製剤は、クエン酸生理緩衝液を含み、かつ脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。
【0250】
5.8.製剤を調製するための方法
いくつかの実施態様は、製剤を調製するための方法であって、本開示による改変RNAを、脂質ベースの複合体(リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子など)、リン酸緩衝生理食塩水緩衝液、THAM緩衝液、またはクエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含む方法に関する。
【0251】
いくつかの実施態様は、製剤を調製する方法であって、改変RNAを、クエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含む方法に関し、ここでは、製剤は、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患う対象を治療する;哺乳類の細胞、組織、または対象において生理的プロセスを調節する;哺乳類の細胞または組織においてVEGF−Aを発現させる;および/または対象においてVEGF−Aを産生させるのに有効である。
【0252】
いくつかの実施態様では、製剤を調製するための方法は、本開示による改変RNAを、クエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含み、ここでは、製剤は、0.1から1μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、1から10μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、10から50μg/μLのクエン酸生理緩衝液中に配合される、ある濃度の改変RNAを含む。
【0253】
いくつかの実施態様では、製剤を調製するための方法は、改変RNAを、本開示にしたがってクエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含み、ここでは、この製剤は、クエン酸生理緩衝液を含み、かつ脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。
【0254】
いくつかの実施態様では、製剤を調製するための方法は、改変RNAを、本開示にしたがってクエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含み、ここでは、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムおよびマグネシウムを含めた二価カチオンを実質的に含まない。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液は、カルシウムもマグネシウムも含有しない。
【0255】
いくつかの実施態様では、製剤を調製するための方法は、改変RNAを、本開示にしたがってクエン酸生理緩衝液と組み合わせることを含み、ここでは、この製剤は、クエン酸生理緩衝液を含み、かつ薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は水性溶媒、である。
【0256】
製剤は、本開示によるいくつかの経路を介して、対象に投与することができる。皮内、心臓内、皮下、および筋肉内注射に適した特定の製剤は、当技術分野で公知である。例えば、活性成分の効果を延長させるために、筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。筋肉内投与された薬物形態の吸収遅延は、薬物(例えば改変RNA)をオイルビヒクルに溶解または懸濁させることによって実現される。注射可能デポー剤形は、ポリ乳酸−ポリグリコライドなどの生分解性ポリマー中に薬物(例えば改変RNA)のマイクロカプセル化(microencapsule)マトリックスを形成することによって作られる。薬物のポリマーに対する比、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。皮内および皮下注射については、製剤は、皮内区画に送達された場合に免疫応答を誘発しないように製剤化されることが好ましい。皮内注射のための製剤中に使用することができる添加剤としては、例えば、例えば、湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤が挙げられる。皮内注射のための製剤は、糖類およびポリオールなどの1以上の他の賦形剤も含有することができる。心臓内注射については、製剤は、注射針の使用後に心筋および冠動脈へのさらなる損傷を引き起こさないように製剤化されることが好ましい。心臓内注射に適した製剤を、本明細書に提供する。
【0257】
5.9.改変RNA組成物の毒性を低下させる方法
いくつかの実施態様は、改変RNAをクエン酸生理緩衝液と共に配合することを含む、対象における改変RNA治療の毒性を低下させる方法に関する。いくつかの実施態様では、クエン酸生理緩衝液を伴う改変RNAの製剤は、脂質ベースの製剤よりも対象に対する毒性が低い。いくつかの実施態様では、脂質ベースの製剤の毒性は、用量依存性の毒性である。いくつかの実施態様では、脂質ベースの製剤の毒性は、用量制限性の毒性である。
【0258】
いくつかの実施態様では、対象における治療の毒性を低下させる方法は、本開示による改変RNAをクエン酸生理緩衝液と共に配合することを含み、かつ薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。いくつかの実施態様では、薬学的に許容し得る賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、コア−シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施態様では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0259】
いくつかの実施態様では、対象における治療の毒性を低下させる方法は、本開示による改変RNAをクエン酸生理緩衝液と共に配合することを含み、ここでは、対象は、VEGF−A療法に対して応答性の疾患を患っている。いくつかの実施態様では、対象は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全、腎疾患、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患、心筋梗塞後の心機能不全、虚血性心疾患、外傷または手術による血管損傷、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍、重症虚血肢、肺高血圧症、および末梢動脈疾患から選択される疾患を患っている。いくつかの実施態様では、疾患は、駆出率が低下したまたは保たれた心不全である。いくつかの実施態様では、疾患は、心筋梗塞後の心機能不全である。いくつかの実施態様では、疾患は、虚血性心疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、外傷または手術による血管損傷である。いくつかの実施態様では、疾患は、糖尿病性潰瘍を含めた皮膚潰瘍である。いくつかの実施態様では、疾患は、重症虚血肢である。いくつかの実施態様では、疾患は、肺高血圧症である。いくつかの実施態様では、疾患は、末梢動脈疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、末梢動脈疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、腎疾患である。いくつかの実施態様では、疾患は、皮膚移植および組織移植を必要とする疾患である。
【0260】
5.10.核酸配列
いくつかの実施態様は、改変RNAの産生のためのインビトロ転写鋳型を含む核酸配列に関する。いくつかの実施態様では、核酸配列は、本開示による改変RNAの産生のためのインビトロ転写鋳型を含む。
【0261】
改変RNAの産生のための転写鋳型が利用可能になれば、本開示による改変RNAを、市販品として利用可能な出発材料を使用して、当技術分野で周知の任意の利用可能な技術にしたがって調製することができる(例えば、米国特許出願公開第2015/0051268号明細書;米国特許第8,710,200号明細書;米国特許出願公開第.2013/0259923号明細書;(これらすべてを参照によって組み込む)を参照のこと)。
【0262】
請求項リスト中の請求項はすべて、追加的実施態様として、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0263】
6.実施例
6.1.実施例1
VEGF−A改変RNAのトランスフェクションおよびVEGF−Aタンパク質の産生
VEGF−A改変RNAのトランスフェクションの可能性を調べるために、10,000個の細胞を、96ウェルプレート内の通常の培養培地に播種した。改変RNAによって産生されたVEGF−Aを含有する馴化培地を調製するために、250,000個のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Lonza,Basel,Switzerland)を、6ウェルプレート内の内皮増殖培地(EGM)培地(Lonza)に播種した。翌日、無血清内皮基本培地(EBM)培地(Lonza)中で、トランスフェクションを行った。VEGF A改変RNA(示された量)を、製造業者の指示書にしたがって、リポフェクタミン2000(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)と混合し、細胞に添加した。トランスフェクション対照として、水と混合したリポフェクタミン2000を使用した。4時間後、トランスフェクション培地を除去し、新鮮な無血清EBM培地に変え、指定した時点で培地を収集した。24時間後に、馴化培地を収集し、−80℃に維持した。下に記載する通りにELISAを用いて、ヒトVEGF A濃度を測定した。
【0264】
トランスフェクション後の細胞培養培地中のヒトVEGF−Aの量を、製造業者の指示書にしたがってヒトVEGF−A ELISAキット(Novex,Invitrogen)を用いて測定した。吸光度は、SpectraMaxリーダーにおいて、450nmで読み取り、試料中のVEGF A濃度を算出した。
【0265】
インビトロでのVEGF−A改変RNAの細胞へのすべてのトランスフェクションについて、リポフェクタミン2000が必要であった。VEGF−A改変RNAは、複数のヒト心臓細胞型に遺伝子導入することができた。より高用量の改変RNAは、より多くのVEGF−Aタンパク質の産生をもたらした(
図2A)。改変RNAからのタンパク質産生は、トランスフェクションのおよそ8時間後に最大になり、その後、減少した(
図2B)。さらに、改変RNAトランスフェクションおよびタンパク質産生は、種を越えて機能し、マウス心臓線維芽細胞とブタ内皮細胞はどちらも遺伝子導入することができ、VEGF−Aタンパク質の翻訳をもたらした(
図2C)。
【0266】
6.2.実施例2
組換えおよび改変RNAによって産生されたVEGF−AによるVEGF受容体2シグナル伝達の活性化
10万個のHUVECを、12ウェルプレート内のEGM培地に播種した。翌日、細胞を、EBM中で24時間飢餓させ、次いで、組換え(R&D Systems,Minn
eapolis,MN,USA)もしくは改変RNAによって産生された100ng/mL VEGF−A(馴化培地として添加)に、またはVEGF−Aを含まない培地に曝露させた。2、10、および20分後に、刺激を停止し、培地を除去した。プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Mesoscale Discovery,Rockville,MD,USA)を含有する溶解緩衝液を含む培養細胞から、全タンパク質を調製した。製造業者のプロトコルにしたがってBCAタンパク質アッセイキット(Pierce,Rockford,IL,USA)を使用して、タンパク質濃度を測定した。
【0267】
15マイクログラムのタンパク質を、4から12% Bis−Trisグラジエントゲルに装填し、MES SDSランニング緩衝液(Invitrogen)を使用して電気泳動を実施した。分画されたタンパク質を、ポリフッ化ビニル(PVDF)膜(Invitrogen)にエレクトロブロットした。膜を、5% BSA(TBS Tween(0.1%)中)でブロッキングし、続いて、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。使用した一次抗体は、VEGF受容体2(VEGFR2)、リン酸化されたVEGFR2(p−VEGFR2)、Akt、リン酸化されたAkt(p−Akt)、eNOS(すべてCellSignaling,Danvers,MA,USAより)、およびリン酸化されたeNOS(p−eNOS,BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ,USA)に対するものであった。膜を、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された二次抗体(Dako,Glostrup,Denmark)と共にインキュベートし、ECLウェスタンブロッティング基質(Pierce)を使用して免疫反応を検出した。ChemiDoc Touch Imaging System(BioRad,Hercules,CA,USA)を使用して、化学発光シグナルを可視化した。
【0268】
改変RNAから産生されたVEGF−Aタンパク質が活性であることを検証するために、VEGF−A改変RNAを遺伝子導入した細胞による馴化培地を、培養細胞に添加した。これは、ヒト内皮細胞における、主要なVEGF−A受容体、VEGF受容体2のリン酸化をもたらした(
図3A)。さらに、馴化培地はまた、下流シグナル伝達経路eNOS(ヒト内皮細胞における)(
図3B)およびAkt(マウス心臓線維芽細胞における)(
図3C)のリン酸化もそれぞれ誘導した。
【0269】
6.3.実施例3
改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質は、血管形成プロセスにおけるいくつかの重要なステップを刺激した活性なタンパク質である
HUVECを、96ウェルプレート内、EGM培地(Lonza)に、ウェルあたり3000細胞の密度で播種した。翌日、培地を、2% ウシ胎児血清(FBS)と組換えVEGF−A(R&D Systems)とを添加した基本EBM培地に、または、2% FBSを添加した、改変RNAによって産生されたVEGF−Aを含有する馴化培地に変え、VEGF−A濃度は、それぞれ、10ng/mL、50ng/mL、および100ng/mLであった。VEGF−Aを含まない培地を、対照として使用した。プレートを5% CO
2中、37℃に維持し、2日後、4%緩衝ホルムアルデヒド(Histolab,Gothenburg,Sweden)で固定し、核をHoechst(Invitrogen)で10分間染色した。Image Express High Content Analysis Systemで、核の数を決定した。
【0270】
HUVECを、製造業者の指示書にしたがって、Cell Tracker Red(Molecular Probes,Eugene,Oregon,USA)で染色し、24ウェルプレート(Corning,New York,USA)内、8μm孔径を有するFloroBlokメンブレンを備えたトランズウェル(transwell)インサート内の2%血清を添加したEBM培地に播種した。ヒト組換えVEGF−A(R&D Systems)と共に2%血清を含むEBM、または2%血清と共に改変RNAによって産生されたVEGF−Aを含有する馴化培地を、下側の容器に添加した。化学誘引物質としてのVEGF−Aを、10ng/mLおよび100ng/mLの濃度でそれぞれ研究した。VEGF−Aを含まない培地を、対照として使用した。24時間後、メンブレンの下側に遊走していた細胞を、Image Express High Content Analysis Systemを用いて計数した。
【0271】
HUVECを、EBM中でCytodex 3マイクロキャリアビーズ(GE Healthcare,Little Chalfont,United Kingdom)と混合し、管を37℃に維持し、一定の間隔で軽くたたいて、均一なコーティングを可能にした。4時間後、内皮細胞でコーティングしたビーズを、フラスコに播種し、37℃および5% CO
2で一晩維持した。ビーズを、500ビーズ/mLで、アプロチニン(0.15単位/mL,Sigma Aldrich)を含有するフィブリノゲン溶液(2mg/mL,Sigma Aldrich,St.Louis,MO,USA)に懸濁させ、次いで、96ウェルプレート内、トロンビン(0.625単位/mL,Sigma Aldrich)を含有するウェルに添加した。15分後、フィブリンゲルは、塊を形成しており、組換えVEGF−Aを含むEGM培地、または改変RNAによって産生されたVEGF−Aを含有する馴化培地を添加した。対照として、VEGF−Aを含まない培地を使用した。プレートを、37℃および5% CO
2で2日間維持し、血管形成性出芽形成を評価した。細胞を、カルセインで30分間染色し、Image Express High Content Analysis Systemで、プレートを読み取り、出芽形成を決定した。
【0272】
表した通り、血管形成プロセスにおけるいくつかの重要なステップは、改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質によって影響を受けた。VEGF−Aは、培養されたヒト内皮細胞の増殖(
図4A)および遊走(
図4B)を増大させた。さらに、内皮細胞でコーティングしたビーズを用いる3D培養における血管形成性出芽形成は、改変RNAによって産生されたVEGF−Aによって増大した(
図4Cおよび
図5)。重要なことには、内皮細胞では、改変RNAによって産生されたVEGF−Aタンパク質は、組換えVEGF−Aタンパク質と比較して同様の反応を誘導し、これは、改変RNAによって産生されたVEGF−Aが、血管形成に影響を与えるその性質および能力を保持することを示す。
【0273】
6.4.実施例4
マウスにおけるLacZ改変RNAの単回心臓内注射後のβ−ガラクトシダーゼタンパク質の評価
雄のC57Bl/6マウス(10から12週齢)を、イソフルランで麻酔した。左胸部領域を剃毛し、滅菌し、挿管後に、左開胸によって心臓を露出させた。クエン酸/生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)、またはリポフェクタミン(登録商標)(RNAiMAXトランスフェクション試薬(Transfection Reagent)、Thermo Fisher Scientific Inc.NY,USA)中に配合したLacZ改変RNAを、左室自由壁に、心尖から心臓の底部に向かって注射(50μL)した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、マウスを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。心臓注射後のあらかじめ決定した時点で、マウスを麻酔し、二度目の開胸を行った。心臓を切除し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)染色によって、トランスフェクション効率およびレポーターβ−ガラクトシダーゼ酵素の存在を調べた。X−galは、この酵素によって加水分解されて、活性なβ−ガラクトシダーゼの存在を示す濃い青色の不溶性生成物をもたらす。簡単に言うと、器官または組織を、リン酸緩衝液中ですすぎ、4%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、2mmol/L MgCl
2、0.01%デオキシコール酸ナトリウム、および0.02% Nonidet P40を含有する、0.1mmol/Lリン酸(pH7.3)洗浄緩衝液で3回(20から30分)洗浄した。続いて、新たに調製したX−gal溶液(5mmol/L K
4Fe(CN)
6、5mmol/L K
3Fe/CN)
6、および1mg/mL X−galを含有する、リン酸洗浄緩衝液)を、検体に添加し、次いで、これをホイルで包んで、37℃で一晩インキュベートした。次いで、検体をリン酸洗浄緩衝液で3回洗浄し、撮影した。
【0274】
左開胸後、麻酔したマウスに、クエン酸/生理食塩水またはLacZ改変RNAの単回心臓内注射を施した。およそ24時間後、マウスを屠殺し、心臓を切除した。次いで、心臓を、一晩、X−gal染色にかけた。
図6Bおよび6Cは、リポフェクタミン(
図6B)またはクエン酸/生理緩衝液(
図6C)中に配合された改変RNAを注射された心尖領域における、効率的な、かつ質的に同様のトランスフェクションおよびβガラクトシダーゼ酵素の産生を示す。クエン酸/生理食塩水のみを注射された心臓では、染色は観察されなかった(
図6A)。
【0275】
6.5.実施例5
未処置のマウスにおけるルシフェラーゼ改変RNAの心臓内注射後のルシフェラーゼタンパク質発現の評価
雄のC57Bl/6マウス(10から12週齢)を、腹腔内注射を介して投与されるケタミン(10mg/kg)とキシラジン(3.5から4mg/kg)との混合物で麻酔した。左胸部領域を剃毛し、滅菌し、挿管後に、左開胸によって心臓を露出させた。
【0276】
ホタルルシフェラーゼ改変RNAを、以下の緩衝液と共に配合した:
1.PBS緩衝液(1×PBS、カルシウムなし、マグネシウムなし、pH7.4)
2.クエン酸生理緩衝液(C/S、10mmol/Lクエン酸、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、pH7.0)
3.THAM緩衝液(トロメタミンAKA 2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、300mmol/L Tris−HCl、pH8.0)
【0277】
合計25μgのルシフェラーゼ改変RNAを、左室自由壁に、心尖から心臓の底部に向かって注射(50μL)した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。手術後、マウスは、塩酸アチパメゾール(1mg/kg)の腹腔内注射および塩酸ブプレノルフィン(0.02mg/kg)の皮下注射を受けた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、マウスを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。
【0278】
左開胸後、麻酔したマウスに、緩衝液のみ(PBS、C/S、またはTHAM対照)、またはPBS、C/S、もしくはTHAM緩衝液中に配合されたホタルルシフェラーゼ改変RNAの、単回心臓内注射を施した。生物発光IVISイメージングを介するルシフェラーゼタンパク質発現評価のために、心臓を切除した。下に示す結果は、2つの時差的なマウス研究の組み合わせである。表2は、個々の生のIVIS生物発光フラックス値を報告し、
図7は、グラフ化された平均値を示す(それぞれ、すべての治療群について)。
【0279】
【表2】
【0280】
図7に表す通り、ルシフェラーゼタンパク質発現は、ルシフェラーゼ改変RNAを注射されたすべての心臓において検出されたが、陰性対照(PBS、C/S、およびTHAM)は、シグナルをほとんどないし全く示さなかった。これらの対照におけるベースラインIVIS生物発光シグナルは、約4から7.5+E03単位の生物発光フラックス(光子/秒として表される)まで変動した。ルシフェラーゼ改変RNAを注射されたすべての心臓において、3から4桁でルシフェラーゼシグナルが検出された。種々の緩衝液の間に、統計的な差は検出されなかった。
【0281】
6.6.実施例6
ラットにおけるヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後のヒトVEGF−Aタンパク質産生の評価
雄のスプラーグドーリーラット(Sprague Dawley rat)(体重250から300g)を、イソフルランで麻酔し、鎮痛のためにマーカイン(25mg/kg)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg)を皮下注射した。左胸部領域を剃毛し、滅菌し、挿管後に、第5肋間腔での左開胸によって心臓を露出させた。クエン酸生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)中に配合したヒトVEGF−A改変RNA(1800、150、または15μg)を、左室自由壁に沿って、6本の別の注射(各15μL、総体積90μL)として注射した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、ラットを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。心臓注射後のあらかじめ決定した時点で、ラットを麻酔し、心臓組織採取のために、二度目の開胸を行った。心臓を切除し、右室ならびに左および右心房を切り落とした。注射部位を含む横軸切片を切り取り、2つの部分に分け、これを液体窒素中で瞬間凍結し、VEGF−Aタンパク質の分析まで−80℃で保管した。陰性対照として、注射部位から離れた心尖から、別の組織試料を採取した。
【0282】
麻酔したラットに、クエン酸/生理食塩水中に配合された3つの異なる用量(15、150、または1800μg)のVEGF−A改変RNAを心臓内注射した。各用量は、ある単一の時点で、左室自由壁を横断する、6本の別の注射として投与した。注射後の異なる時点で、動物を屠殺し、心臓を切除し、VEGF−Aタンパク質含有量分析のために、心室組織を回収した。
図8Aは、注射された3つの用量のそれぞれについての、産生されたVEGF−Aタンパク質の時間プロフィールおよび大きさをまとめて示す。これからわかるように、タンパク質産生は、用量線形性ではなく15、から150μgまでの用量の10倍の増大が、曲線下面積(AUC)の1.6倍の増大しか引き起こさず、150および1800μg用量群についても、同様のAUCが観察された(1.1倍差)。
【0283】
6.7.実施例7
心筋梗塞を施されたラットにおける、ヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射の後の、左室機能および梗塞サイズに対する効果
雄のスプラーグドーリーラット(体重250から300g)を、上に記載した通りに、麻酔し、前処置し、開胸した。続いて、この動物に、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的結紮を施した。結紮に続いて、90μLのクエン酸/生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)、またはクエン酸/生理食塩水中に配合した150もしくは1800μgヒトVEGF−A改変RNAのいずれかの心臓内注射を行った。全体積を、梗塞の境界域に沿った、6本の別の心外膜注射として送達した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、ラットを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。
【0284】
動物の処置の1日および8日後に、核磁気共鳴画像法(MRI)を介する左室機能および梗塞サイズの評価のために、撮像設備に運んだ。さらに、処置の翌日、心臓障害のバイオマーカーとしての心筋トロポニンIの分析(i−STAT(登録商標)心筋トロポニンI診断検査,Abbott Point of Care Inc.,Abbott Park,IL 60064,USA)のために、尾静脈から血液試料を採取した。4.7Tの磁場強度で、特化した小動物MRIシステムを使用して、MRIスキャニングを行った。短軸方向の画像が得られ、左室をカバーする画像の積み重ねを得た。心周期における特定の期での撮像を誘発するために、心電図記録法を使用した。1回の心拍動中の左室壁の移動を示す画像系列から、心機能を評価した。この画像系列を得る時に使用される撮像シーケンスは、10msの横断繰り返し時間と25のフリップ角を用いるグラジエントエコーシーケンスであった。左室の体積を、特化した画像分析ソフトウェアを使用して、経験を積んだ読み手による、異なる時点での手書き描写を介して評価した。収縮末期容積(ESV)および拡張末期容積(EDV)を、最小および最大左室体積とみなした。心機能を反映する駆出率(EF)を、式EF=(EDV−ESV)/EDVによって評価した。ガドジアミド、すなわちガドリニウムを含有する造影剤の投与後に、心筋梗塞の程度を示す画像を得た。画像獲得の10分前に、0.3mmol/kgガドジアミドを、尾静脈カテーテルを介して注射した。グラジエントエコーシーケンスを使用して、撮像を実施し、ここでは、コントラスト・プリパレーションは、逆パルスの使用を含んでいた。繰り返し時間は最小900msであり、フリップ角は、90°であった。左室壁(LVV)の、および梗塞(IV)の体積を、特化した画像分析ソフトウェアを使用して、手書き描写を介して、経験を積んだ読み手によって評価した。左室壁の梗塞を起こした割合として表される梗塞サイズ(IS)を、式IS=IV/LVVによって決定した。
【0285】
27匹のラットに、心筋梗塞を誘発するために、左前下行枝の永久的結紮、および、クエン酸/生理食塩水(n=8)または低(150μg、n=9)または高(1800μg、n=10)用量のクエン酸/生理食塩水中に配合したVEGF−A改変RNAの心臓内注射を施した。これらの動物を8日間追跡し、梗塞の誘発後、第1日および第8日に、MRIによって、左室駆出率および梗塞サイズに対する効果を評価した。心臓TnIを、心筋細胞傷害のバイオマーカーとして、第1日に静脈血内で測定した。2つの用量のVEGF−A改変RNAが、同様の量のVEGF−Aを産生させたので、両方の群からのデータを、有効性分析においてプールした。クエン酸/生理食塩水で治療されたラットと比較すると、VEGF−A改変RNAを投与された動物は、有意に高い左室駆出率(第8日)(
図8B)および低いレベルの心臓TnI(第1日)(
図8D)を有していた。さらに、積極的に治療したラットは、ビヒクルで治療されたラットに対して、梗塞サイズが低下する傾向があった(
図8C)。
【0286】
6.8.実施例8
GoettingenミニブタにおけるLacZ改変RNAまたはヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後のβ−ガラクトシダーゼおよびヒトVEGF−Aタンパク質の評価
一晩絶食させた雌のGoettingenミニブタ(体重約25kg)を、ミダゾラムおよびケタミンの筋肉内注射を介して鎮静させた。鎮静後、プロポフォールによる麻酔の誘発のために、静脈ラインを耳翼辺縁静脈に設定し、このブタを、気管内に挿管した。次いで、このブタを、実験室に移し、人工呼吸器につないだ。周期的な動脈血ガスモニタリングを伴う精密な吸入器および循環吸収式呼吸装置を通して送達されるイソフルランによって、全身麻酔を維持した。バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、O
2パルスオキシメーター、ECG、および体温)を、実験全体を通して連続的に監視した。血液喪失を置き換えるように調節された速度で処置全体を通して、または、低い全身血圧の場合に、静脈内輸液療法を施した。心臓を露出させるための左開胸を実施し、(様々な体積および用量の)LacZ改変RNAまたはVEGF−A改変RNAを、心外膜表面からの深さおよそ5mmで、左室自由壁に注射した。注射部位に、小さな縫い目で印を付け、6時間後、心臓を切除した。経壁的な組織の厚切りを、注射部位で回収し、上に記載した通りにβ−ガラクトシダーゼに対してX−gal染色した。VEGF−Aタンパク質分析については、それぞれの組織の厚切りを、心外膜から心内膜までの6つの別々の検体に分割した。これらの検体を、液体窒素中で瞬間凍結し、下に記載する通りのVEGF−A分析まで−80℃で保管した。
【0287】
LacZまたはVEGF−A改変RNAを、左室自由壁に心外膜注射し、6時間後、X−gal染色またはVEGF−Aタンパク質分析のために、組織を採取した。LacZ改変RNAを投与されたブタでは、β−ガラクトシダーゼの産生は、トランスフェクション培地としてリポフェクタミンが使用された場合(
図9A)、クエン酸/生理食塩水が使用された場合(
図9B)と質的に同様であった。
【0288】
6.9.実施例9
心組織におけるヒトVEGF−Aタンパク質の定量化
ホスファターゼ阻害剤IおよびIIおよびプロテアーゼ阻害剤を含有するTris溶解緩衝液(Meso Scale Discovery(MSD),Rockville,MD,USA)を、凍結された組織生検材料に添加し、ホモジナイゼーションまでおよそ−20℃で凍結した。次いで、セラミックビーズ(3mm)を添加し、Precellysホモジナイザー装置を使用して試料をホモジナイズした。ホモジネートを遠心し、上清を分析まで−80℃で保管した。
【0289】
電気化学発光検出を用いるサンドイッチ免疫測定法を使用して、VEGF−A濃度を決定した。組織ホモジネート中のVEGF−A濃度を測定するために、MSD V−PLEXサイトカインPanel 1(ヒト)VEGF−Aキットを使用した。このアッセイは、キット指示書の通りに実施した。スタンダードを、キット希釈剤で1対2で段階希釈し、各回分内に追加の対照を含めさせて、アッセイ性能を監視した。試料を、分析前に、キット希釈剤で最低1対10で希釈し、プレートをMSD Sector 600装置で読み取った。
【0290】
図10は、クエン酸/生理食塩水中に配合した、様々な用量(注射あたり50から2000μg)のVEGF−A改変RNAの心外膜注射後6時間時点でのVEGF−Aの用量依存性の産生をまとめて示す。産生されたタンパク質のレベルは、低用量の注射されたVEGF−A改変RNAでの飽和を示し、これは、ラットにおける知見と一致している(
図8A)。
【0291】
6.10.実施例10
クエン酸生理緩衝液におけるLacZおよびルシフェラーゼ改変RNAの心臓トランスフェクションおよび翻訳
表した通り、心臓注射での75μgのLacZコード改変RNAは、左室のおよそ10%において遺伝子導入および翻訳された(
図11A、11B、11C、および11D)。ルシフェラーゼ改変RNAに対するRNAインサイツハイブリダイゼーションは、注射の部位での心筋における染色発現(
図11Eおよび11F)、ならびに連続切片における免疫組織化学的分析を介して示される相関するルシフェラーゼタンパク質発現(
図11G)を明らかにした。
【0292】
6.11.実施例11
クエン酸生理緩衝液を用いる心臓への改変RNA注射後のVEGF−Aタンパク質発現は、飽和性であり、複数の種にわたって同様の薬物動態を有する
VEGF−Aタンパク質産生を比較するために、150μgのVEGF−A改変RNA(クエン酸生理緩衝液中)、および100μgのVEGF−A改変RNA(送達担体としてRNAiMax(脂質ベースの製剤)を使用)を、ラット心臓に注射した。24時間後、クエン酸生理緩衝液(NTB)を用いたラットにおけるVEGF−Aタンパク質レベルは、RNAiMaxを用いて注射したラットに匹敵するレベルであり、薬物動態プロフィールも同様であった(
図12A)。タンパク質発現は、用量制限性かつ飽和性であり、これは、種を越えて見られた(
図12B)。用量が10倍増大しても、曲線下面積は1.6倍しか増大しなかった(
図12C)。
【0293】
6.12.実施例12
マウス、ラット、およびブタにおける、ヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後のヒトVEGF−Aタンパク質産生の評価
VEGF−Aタンパク質産生を比較するために、150μgのVEGF−A改変RNA(クエン酸生理緩衝液中)、および100μgのVEGF−A改変RNA(送達担体としてRNAiMax(脂質ベースの製剤)を使用)を、ラット心臓に注射した。24時間後、を有するラットにおけるVEGF−Aタンパク質レベルは、〜。雄のC57Bl/6マウス(10から12週齢)を、イソフルランで麻酔した。左胸部領域を剃毛し、滅菌し、挿管後に、左開胸によって心臓を露出させた。クエン酸生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)中に配合した100μgのヒトVEGF−A改変RNA(ヒトVEGF−Aタンパク質(VEGF−A)をコードする)を、左室自由壁に、心尖から心臓の底部に向かって注射(50μL)した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、マウスを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。心臓注射後のあらかじめ決定した時点で、マウスを麻酔し、心臓組織採取のために、二度目の開胸を行った。心臓を切除し、右室ならびに左および右心房を切り落とした。残存する心組織(すなわち、左室自由壁および心室中隔)を、液体窒素中で瞬間凍結し、下に記載する通りのVEGF−Aタンパク質の分析まで−80℃で保管した。
【0294】
雄のスプラーグドーリーラット(体重250から300g)を、イソフルランで麻酔し、鎮痛のためにマーカイン(25mg/kg)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg)を皮下注射した。左胸部領域を剃毛し、滅菌し、挿管後に、第5肋間腔での左開胸によって心臓を露出させた。クエン酸生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)中に配合したヒトVEGF−A改変RNA(100μg)を、左室自由壁に沿って、3本の別の注射(各20μL、総体積60μL)として注射した。注射後、縫合することによって胸郭および皮膚を閉じ、軽い胸部圧迫によって、胸腔から余分な空気を取り除いた。続いて、正常な呼吸が確認されたら、ラットを人工呼吸器から外し、自分のケージに戻した。心臓注射後のあらかじめ決定した時点で、ラットを麻酔し、心臓組織採取のために、二度目の開胸を行った。心臓を切除し、右室ならびに左および右心房を切り落とした。注射部位を含む横軸切片を切り取り、2つの部分に分け、これを液体窒素中で瞬間凍結し、下に記載する通りのVEGF−Aタンパク質の分析まで−80℃で保管した。
【0295】
一晩絶食させた雌のGoettingenミニブタ(体重約25kg)を、ミダゾラムおよびケタミンの筋肉内注射を介して鎮静させた。鎮静後、プロポフォールによる麻酔の誘発のために、静脈ラインを耳翼辺縁静脈に設定し、このブタを、気管内に挿管した。次いで、このブタを、実験室に移し、人工呼吸器につないだ。周期的な動脈血ガスモニタリングを伴う精密な吸入器および循環吸収式呼吸装置を通して送達されるイソフルランによって、全身麻酔を維持した。バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、O
2パルスオキシメーター、ECG、および体温)を、実験全体を通して連続的に監視した。血液喪失を置き換えるように調節された速度で処置全体を通して、または、低い全身血圧の場合に、静脈内輸液療法を施した。心臓を露出させるための左開胸を実施し、クエン酸生理食塩水(10mmol/Lクエン酸塩、130mmol/L塩化ナトリウム(Hyclone水中)、水酸化ナトリウムでおよそ7.5にpH調整)中に配合したVEGF−A改変RNA(100μg)を、心外膜表面からの深さおよそ5mmで、左室自由壁に注射した。注射部位に、小さな縫い目で印を付け、6時間後、心臓を切除した。経壁的な組織の厚切りを回収した。VEGF−Aタンパク質分析については、それぞれの組織の厚切りを、心外膜から心内膜までの6つの別々の検体に分割した。これらの検体を、液体窒素中で瞬間凍結し、下に記載する通りのVEGF−A分析まで−80℃で保管した。
【0296】
図13Aおよび13Bに示す通り、産生されたタンパク質の量は、注射のおよそ6から12時間後に最大になり、産生されたVEGF Aタンパク質の大きさおよび時間プロフィールは、種を越えて同様であった。ヒトVEGF−Aタンパク質は、ラットでは、注射の192時間後でもまだ、心組織内に観察された(
図13B)。
【0297】
6.13.実施例13
心筋梗塞を施されたブタにおける、ヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射の後の、左室機能および梗塞サイズに対する効果
いずれかの性別の、34匹の性的に成熟したLanyuミニブタ(約5か月齢)を、一晩絶食させ、麻酔し、気管内に挿管し、酸素、空気、およびイソフルランの混合物を用いて、人工呼吸器を通して人工的に換気した。バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、O
2パルスオキシメーター、ECG、および体温)を、実験全体を通して連続的に監視した。血液喪失を置き換えるように調節された速度で処置全体を通して、または、低い全身血圧の場合に、静脈内輸液療法を施した。心臓を露出させるための左開胸を実施し、動脈を閉塞させない5匹(偽群)を除くすべてのブタにおいて、左前下行枝中央の永久的閉塞を行った。続いて、胸部を閉じ、ブタを、およそ2時間、集中治療室に移行させ、その後、その檻に戻した。痛みを軽減し、感染症を予防するために、手術の前後に鎮痛剤および抗生物質を投与した。
【0298】
これらのブタに、最初の手術の7日後、上に記載した通りに第2の手術の準備をし、手術室に戻した。準備の後、梗塞を起こしたブタを、クエン酸/生理食塩水(n=8)、VEGF−A改変RNA(低用量)(1mg、n=8)、VEGF−A改変RNA(高用量)(10mg、n=8)、または自己組織化ナノファイバー中に配合された組換えヒトVEGF−Aタンパク質(n=5)での盲検治療に無作為に割り付けた。臨床用途については認められていないが、ナノファイバー構築物は、陽性対照療法に含められた(Lin Y.D.et al.,Science Transl Med,(2012)4:146ra109;その内容全体を参照によって本明細書に組み込む)。左開胸後、試験薬物を、梗塞周囲/梗塞領域に配分される、各注入体積が100μLである20本の心外膜注射として投与した。処置後、ブタを、上に記載した通りに治療し、2か月間回復させ、その後、最終実験を実施した。
【0299】
研究全体を通して、左室機能の連続測定値を、心エコー図法を用いて評価した。したがって、閉胸したブタにおいて、心筋梗塞の誘発の直前および直後に、試験薬物の心臓内注射の直前に、および屠殺の日に、麻酔下で測定を行った。心機能を、3.5MHzプローブを用いるVivid Q(GE Healthcare,Horten,Norway)を使用して、2D心エコー図法によって評価した。ブタを、左側臥位に置いた。Mモードによって、左室容積を測定して左室駆出率を得るための傍胸骨長軸視野を得た。研究の最後(すなわち、試験薬物投与の2か月後)に、上に記載した通りにブタを麻酔し、右頸動脈カテーテル法を介して左室内腔に配置した圧力−容積ループ記録カテーテル(Millar Instruments,Houston,Texas,USA)を用いる侵襲性の血行動態評価のために備えた。市販のソフトウェア(AD Instruments)を用いて、血行動態データを解析した。血行動態評価の後、ブタを屠殺し、心臓を回収した。心臓を3回洗浄し、心尖から乳頭筋レベルまでの5つの切片に加工した。各の切片の画像を撮影し、市販のソフトウェア(ImageJ)を使用して梗塞サイズを推定した。梗塞サイズは、内部空間の面積を引いた全心室の面積の割合として算出した。
【0300】
研究の過程中に、左室駆出率(EF)の連続的評価を実施した。
図14からわかるように、左前下行枝の永久的閉塞は、試験薬物が注射された場合、EFの、およそ65%から45%未満までの即時的な減少を伴っており、減少は、閉塞の7日後まで保持された。こうした低下は、偽処置を施したブタでは見られなかった。注射の2か月後、自己組織化ナノファイバー中に配合されたVEGF−A改変RNAまたは組換えVEGF−Aタンパク質を投与されたブタは、クエン酸/生理食塩水を注射されたブタに対して、EFの向上を有することが観察された。注射の日から研究終了までのEFの変化を比較すると、VEGF−A改変RNA群とVEGF−Aタンパク質群の両方について、統計的に有意な向上が見られたが、クエン酸/生理食塩水群については見られなかった。研究停止時に実施した左室機能の侵襲性の血行動態評価は、経時的最大左室圧発生(dP/dt max、
図15)、経時的最小圧発生(dP/dt min、
図16)、収縮末期圧容積関係(ESPVR、
図17)、拡張末期圧容積関係(EDPVR、
図18)、および前負荷動員一回仕事量(PRSW、
図19)の差によってそれぞれ証明される通りの、同様の向上を示した。
【0301】
研究終了時に、組織回収後に梗塞サイズを測定し、左室全体の梗塞サイズ(切片2、3、4、および5、
図20A)、左室中央の梗塞サイズ(切片3および4、
図20B)、および左室の最も中心部の梗塞サイズ(切片4、
図20C)として定量化した。
図20A、20B、および20Cからわかるように、VEGF−A改変RNAならびにVEGF−Aタンパク質/ナノファイバー治療は、クエン酸/生理食塩水で治療されたブタに対する、梗塞サイズの用量依存性の低下を伴っていた。
【0302】
6.14.実施例14
糖尿病マウスにおける創傷治癒モデルにおけるヒトVEGF−A改変RNAのインビボ効果
この実験の目的は、ヒトVEGF−A改変RNAが、皮膚創傷治癒遅延の糖尿病マウスモデルにおいて生理活性を呈するかどうかを決定することであった。点変異が原因でレプチン受容体発現の欠損を有し、健康な対照マウスと比較して皮膚創傷治癒の遅延を経験するdb/dbマウスを使用して、2つの試験を実施した。このdb/dbマウスは、創傷
治癒を促進することを目的とする様々な治療の治療有効性を試験するために、公開されている文献において広く使用されている。第1の試験、試験1は、32匹の雄db/dbマウスを含んでおり、1)ヒトVEGF−A改変RNAの、創傷治癒速度に対する効果を評価する、2)治療が肉芽組織形成の異常を引き起こすかどうかを決定する、および、3)ヒトVEGF−A改変RNAの、肉芽組織における血管分布に対する効果を決定するために設計された。第2の試験、試験2は、7匹の雄db/dbマウスを含んでおり、ホウ素ベースの新規の酸素センシングナノ粒子のレシオ測定イメージングを使用して、経時的な創傷の酸素化を評価するために設計された。簡単に言うと、試験の1日目(第0日)に、各マウスの背側に、1cm直径の全層皮膚創傷を作り、ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクル対照(n=8マウス/群)を、創傷の周囲に、直ちに皮内注射した。マウスの部分集合(n=8マウス/群)に、第3日に、ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクル対照のいずれかをまた送達させた。創傷を、テガダーム(Tegaderm)を使用して覆い、マウスを個々にケージに収容した。その後の時点で、創傷の連続的な写真を獲得し、最終エンドポイント(第18日)で、創傷組織を回収し、免疫組織化学(内皮細胞のためのCD31+染色、およびヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色)のために処理した。試験2では、第0日および3日での投与のみを行うこと以外は試験1と同様の実験処置の後、酸素センシングナノ粒子を創傷床に局所的に送達した後、蛍光およびリン光の連続的な画像を獲得した。試験1からの結果は、ヒトVEGF−A改変RNAの連続的投与(第0日での100μgおよび第3日での100μg)は、ビヒクル対照の連続的投与と比較して、第6日および第10日での開放創面積を有意に(p<0.05)低下させたが、ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクル対照のいずれかの単回投与は低下させなかったことを示した。早期の時点(第3日から第6日)の間の創傷閉鎖の平均パーセントは、ビヒクル対照と比較して有意に増大した。肉芽組織におけるCD31+染色も、ヒトVEGF−A改変RNAの連続的投与を受けたマウスにおいて増大した。試験2では、第6日での創傷における酸素レベルも、2回注射されたビヒクル群と比較して、100μgのヒトVEGF−A改変RNAの連続的2回の連続的投与を受けたマウスにおいて有意に(p<0.05)増大した。この実験は、糖尿病マウスの背側における、ヒトVEGF−A改変RNAの連続的投与での皮膚創傷の治療が、創傷治癒の早期の、より臨床的に関連する時期の間の創傷治癒を有意に促進することを裏付けている。治癒の促進は、早期の時点での、肉芽組織の血管新生の増大および創傷床の酸素化の増大を伴う。
【0303】
【表3】
【0304】
【表4】
【0305】
【表5】
【0306】
実験手順
実験は、2つの試験、試験1および試験2に分けた。試験1は、もっぱら、糖尿病性の創傷治癒という観点でのヒトVEGF−A改変RNAの生理活性を評価することにのみ焦
点を合わせた。試験2は、やはり、同じ創傷治癒モデルにおいてヒトVEGF−A改変RNAの生理活性を試験したが、創傷床内の酸素化を決定するために酸素感受性ナノ粒子の使用も用いた。以下に列挙した処置は、別に記述がない限り、両方の試験に共通である。
【0307】
全層皮膚創傷(第0日):マウスを、2%吸入用イソフルラン/酸素混合物で麻酔し、次いで、除毛し、手術前に滅菌した。型紙を使用して、マウスの背側に直径1cmの円の印を付けた。皮膚(真皮および表皮を含む)を、輪郭線領域から慎重に切除して、全層皮膚創傷を形成した。ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクルを、皮内注射した。手術後に鎮痛剤(ブプレノルフィン、0.1mg/kg)を投与し、テガダーム(Tegaderm)ドレッシング材および自着性ラップで創傷を覆った。
【0308】
皮内注射(第0日および3日):10μL×4のヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクル(上に概説)を、皮膚の切除の直後に注射した。第0日(創傷形成の日)に、ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクルを、創傷の周囲に、0、90、180、および270度の位置で、皮膚の真皮層に注射した。第3日に、ヒトVEGF−A改変RNAまたはビヒクルを、同じ位置への2本の注射を避けるために、創傷の周囲に、45、135、225、および315度の位置で、皮内注射した。
【0309】
撮像処置(第0、3、6、10、13、および18日):創傷を撮像する前に、自着性ラップおよびテガダーム(Tegaderm)ドレッシング材を取り除いた。撮像前に、毎日(第0、3、6、10、13、および18日)、体重を記録した。1200万画素のカメラでの創傷上からの固定距離の画像を獲得した一方で、マウスを2%吸入用イソフルラン/酸素混合物で麻酔した。撮像後、(ナノ粒子イメージングが実施されないならば)創傷を、新しいテガダーム(Tegaderm)ドレッシング材で覆い、既存の自着性ラップを巻いた。
【0310】
酸素感受性ナノ粒子を用いる撮像処置(第0、3、6、10、13、および18日):試験2では、酸素レベルに対する撮像のみを実施した。上に記載した通りの撮像後、マウスを麻酔し続け、カスタム設計された撮像プラットフォームを伴う温度制御された顕微鏡ステージに置いた。各創傷についてUV照射下で、1)10フレーム(ホウ素ベースのナノ粒子(BNP)の適用前に創傷の3フレーム/秒で獲得される)、および2)60フレーム(創傷床内に50μLのナノ粒子溶液を注いだ後に3フレーム/秒で獲得される)からなるM−JPEGを獲得した。撮像後、創傷を、新しいテガダーム(Tegaderm)ドレッシング材で覆い、既存の自着性ラップを巻いた。
【0311】
創傷酸素化画像分析:試験2では、酸素レベルに対する撮像のみを実施した。UV照射された創傷画像(上に記載した通りにに獲得したもの)を、カスタム設定されたMATLABプログラムを使用して解析した。バックグラウンドシグナルを明らかにするために、創傷床内の選択された点を、ナノ粒子の添加の前に、赤および青チャンネル輝度について分析した。これらのバックグラウンド輝度値を、ナノ粒子の添加後に得られた赤および青輝度値から引いた。青チャンネル輝度と赤チャンネル輝度との比を、蛍光(BNPの存在下で一定)とリン光(酸素の存在下で消光される)との比を表すために、各画素についてコンピュータ算出した。次いで、レシオ測定画像を、蛍光−対−リン光比を時間空間的に解明するための比の範囲にスケール調整した256値のカラーマップを使用して、質的に表示した。創傷床内の酸素の量を定量化するために、生の青および赤チャンネル輝度値を使用して、グレースケール画像を作成した(低酸素;黒画素、高酸素;白画素)。創傷床を、対象となる領域として選択し、定量化し、平均の灰色画素値を、ImageJソフトウェアを使用して定量化した。
【0312】
組織の回収、組織学的切片作製、および染色(第18日):マウスを、CO
2窒息によ
って安楽死させ、創傷の最終画像を獲得した。創傷中心を囲む1.5cm×1.5cm領域を切除し、3つの別々の分析のために、長軸方向の3分の1に分離した。組織の1つの3分の1は、液体窒素中で瞬間凍結し、下流VEGFシグナル伝達タンパク質の評価に送った。組織の中間の3分の1は、10%ホルマリン中で1週間固定し、パラフィン包埋のために処理した。5μm切片に切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、ならびにCD31(Santa Cruz Biotechnology,sc−1506,PECAM−1(M−20))で染色した。
【0313】
血糖測定(第0日および第18日):第0日での最初の創傷形成の前に、すべてのマウスを、食物無しの紙製床敷きケージ内で4時間絶食させた。創傷形成前に、最初の空腹時血糖測定を行った。第18日に血液を回収しながら、非空腹時血糖測定を行い、血液の少量の試料を採取した。
【0314】
データ解析
創傷面積定量化:試験1および2の時点。ImageJを使用して、観察者らが、創傷周囲をトレースし、ImageJが、開放創傷の面積を算出した。観察者らの判断間の差を解決するために、各創傷について、3つの創傷面積の中央値を報告した。各時点での創傷面積を、最初の創傷面積(第0日)に対して正規化して、最初の創傷サイズのわずかな違いを解決した。p<0.05で仮定される有意性を用いる反復測定二元配置ANOVAを使用して、データを統計的に解析した。これらのデータの三次スプライン補間を実施して、創傷の25%、50%、および75%閉鎖までの推定する時間を、それぞれ、コンピュータ算出した。各時点の間の治癒の平均パーセントを、残存する創傷面積のパーセントを以前の残存する創傷面積のパーセントから引くことによって算出した。p<0.05で仮定される有意性を用いる反復測定二元配置ANOVAを使用して、データを統計的に解析した。
【0315】
CD31染色分析(試験1):創傷組織の組織学的横断面を、CD31に対して免疫染色し、40×対物レンズを用いる透過型顕微鏡分析を使用して撮像した。ブラウンチャンネル(陽性CD31標識)を、白および黒に二値化させて、バックグラウンドおよび非特異的標識を除去した。CD31陽性染色の二値化された面積(パーセント)を、治療群(n=3)のそれぞれについて算出した。
【0316】
ヘマトキシリンおよびエオシン染色分析(試験1):各創傷からのパラフィン切片を、H&Eで染色し、4×対物レンズを使用する透過型顕微鏡分析を使用して撮像した。肉芽組織を視覚的に調べて、表皮の厚さおよび連続性、肉芽組織の断面積(幅および厚さ)、および血管腫などのいずれかの異常組織構造の存在または非存在を質的に評価した。
【0317】
下流VEGFシグナル伝達分析(ウエスタンブロット)(試験1):皮膚組織試料を、RIPA溶解緩衝液(sc−24948,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)と共にホモジナイズし、遠心し、Bradfordタンパク質アッセイ(#5000112、Bio−Red、Hercules、CA)によって、上清のタンパク質濃度を決定した。総タンパク質30μgを、ポリアクリルアミドゲル(#3450124,Bio−Red,Hercules,CA)に装填し、膜に移した(#1620232,Bio−Red,Hercules,CA)。膜を、以下の抗体:抗pAKT抗体(S473,#4060,Cell Signaling,Danvers,MA)および抗AKT抗体(#4691,Cell Signaling Technology,Danvers,MA)、抗ウサギIgG二次抗体(IRDye
800CW,LI−COR biosciences,Lincoln,NE)で探索した。ImageJプログラム29を使用して、pAKTおよびAKTバンドの定量化を実施した。
【0318】
体重および血糖分析:体重および血糖値を、p<0.05で仮定される有意性を用いる反復測定二元配置ANOVAを使用して、統計的に解析した。
【0319】
酸素定量化分析(試験2):生のナノ粒子画像の平均グレー値を、p<0.05で仮定される有意性を用いる反復測定二元配置ANOVAを使用して、統計的に解析した。
【0320】
結果
創傷面積測定からの結果(試験1)
試験1に含まれるすべての群におけるdb/dbマウスの体重を、
図21に示す。体重は、第13日時点で有意な(p<0.05)差が存在していた単回注射されたビヒクル群と単回注射されたVEGF−A改変RNA群を除いて、すべての時点ですべての群について同様であった。この差は、研究結果に影響を与えるとは考えられない。
【0321】
第0日でのおよび第18日でのすべての群のdb/dbマウスにおける空腹時および食後血糖値を、
図22に示す。第0日時点で85mg/dLの有意な(p<0.05)差が存在していた単回注射されたビヒクル群と単回注射されたVEGF−A改変RNA群を除いて、すべての群が同様であった。この差は、研究結果に影響を与えるとは考えられない。
【0322】
18日の観察期間中の創傷面積の測定からの結果を、
図23〜25に示す。開放創面積の閉鎖に関しては、第0日での単回注射されたVEGF−A改変RNA群の用量は、その単回注射されたビヒクルと比較して、同じ18日の観察期間中、いずれの有意な効果も示さなかった。一方で、第0日および3日にVEGF−A改変RNAを2回注射された群は、第6日に55%の開放創面積および第10日に27%の開放創面積であり、それぞれ第6日の71%の開放創面積および第10日の49%の開放創面積であったビヒクルを2回注射された群と比較して、有意に(p<0.05)早い閉鎖を示さなかった(
図23)。曲線下面積は、それぞれ、ビヒクル単回注射について962.83、ビヒクル2回注射について998.21、VEGF−A改変RNA単回注射について895.12、VEGF−A改変RNA2回注射について792.79であった。25%閉鎖までの時間は、それぞれ、単回注射されたビヒクルについて6.2日、2回注射されたビヒクルについて5.4日、単回注射されたVEGF−A改変RNAについて5.1日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて4.2日であった(
図24)。50%閉鎖までの時間は、それぞれ、単回注射されたビヒクルについて8.9日、2回注射されたビヒクルについて9.8日、単回注射されたVEGF−A改変RNAについて7.8日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて6.3日であった(
図24)。75%閉鎖までの時間は、それぞれ、単回注射されたビヒクルについて12.3日、2回注射されたビヒクルについて13.7日、単回注射されたVEGF−A改変RNAについて12.5日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて10.4日であった(
図24)。各時点の間の創傷閉鎖の平均パーセントを比較すると、2回注射されたVEGF−A改変RNA群が、20%の変化を伴う2回注射されたビヒクル群と比較して、第3日から第6日の間の40%の変化を伴う有意な(p<0.05)差を示したのに対して、単回注射されたVEGF−A改変RNA群は、単回注射されたビヒクル群と比較して、有意性を示さなかった(
図25)。
【0323】
組織学的評価からの結果(試験1)
第18日での創傷領域のH&E染色切片からの代表的な結果を、
図26に示す。この染色は、異常組織構造のいずれの徴候もない正常な肉芽組織を示した。
図27では、それぞれ、単回および2回注射されたビヒクルおよびVEGF−A改変RNA後の創傷領域切片について、代表的なCD31陽性染色が示される。
図28に示される創傷領域における内皮細胞に基づく血管の定量化は、それぞれ、単回(3.2±0.6)および2回(3.2
±0.6)注射されたビヒクルと比較して、単回(4.3±4.0、平均±SD)と2回(8.4±4.4)注射されたVEGF−A改変RNAの両方について、CD31陽性染色を用いてしきい値処理された面積(パーセント)の増大をもたらした。
【0324】
ウエスタンブロットを用いる下流VEGFシグナル伝達分析(試験1)
AKTおよびVEGFR2を含む第18日での下流VEGFシグナル伝達の分析の結果を、
図29および
図30に示す。これらの結果は、第18日(研究終了)時点でいかなる継続中の下流シグナル伝達も示さなかった。
【0325】
酸素センシングナノ粒子を用いる測定からの結果(試験2)
試験2における2つの群、すなわち2回注射されたビヒクルおよびVEGF−A改変RNAに含まれるdb/dbマウスの体重を、
図31に、時間の関数として示す。体重は、すべての時点でのすべての群について同様であった。試験2における2回注射されたビヒクルおよびVEGF−A改変RNAのdb/dbマウスにおける第0日および第18日での空腹時および食後血糖値を、それぞれ、
図32に示す。空腹時および食後血糖値は、両方の群において、同様であった。
【0326】
試験2では、酸素化を推定するために、酸素感受性ナノ粒子を創傷に乗せた。
図33には、ナノ粒子酸素定量化を手助けする技術の図を示す。室温で、励起後に、ナノ粒子は、青チャンネルシグナルによって捕捉される蛍光と、赤シグナルチャンネルによって捕捉される酸素依存性のリン光を放出する。これらのシグナルをまとめた場合、その結果は、創傷における相対的酸素化の画像である。
図34では、2回注射されたビヒクルマウスおよび2回注射されたVEGF−A改変RNAマウスについての代表的な画像を、時間の関数として示す。黄色および赤色は、第3日で既に、2回注射されたVEGF−A改変RNAマウスの創傷面積では、2回注射されたビヒクルマウスと比較して、より突出している。第6日では、2回注射されたVEGF−A改変RNA群についての酸素化の、2回注射されたビヒクル群と比較した場合の有意な(p<0.05)増大が存在する(
図35)。
【0327】
18日の観察期間中の創傷面積の測定からの結果を、
図36〜38に示す。第0日および3にVEGF−A改変RNAを2回注射された群は、第6日に45%の開放創面積であり、それぞれ、62%の開放創面積であったビヒクルを2回注射された群と比較して、有意に(p<0.05)早い閉鎖を示さなかった。25%閉鎖までの時間は、それぞれ、2回注射されたビヒクルについて3.4日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて3.8日であった。50%閉鎖までの時間は、それぞれ、2回注射されたビヒクルについて7.1日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて5.6日であった。75%閉鎖までの時間は、それぞれ、2回注射されたビヒクルについて8.9日、2回注射されたVEGF−A改変RNAについて7.8日であった。各時点の間の創傷閉鎖の平均パーセントを比較すると、2回注射されたVEGF−A改変RNA群は、それぞれ、14%の変化を伴う2回注射されたビヒクル群と比較して、第3日から第6日の間の40%の変化を伴う有意な(p<0.05)差を確かに示した。
【0328】
結論
受傷後第0日と第3日の両方での、創傷周囲の近くの4つの注射部位に分けた100μg VEGF−A改変RNAの皮内投与は、第6日および第10日時点でのdb/dbマウスにおける開放創面積を、ビヒクル対照と比較して有意に低下させた。
【0329】
受傷後第0日と第3日の両方での、創傷周囲の近くの4つの注射部位に分けた100μg VEGF−A改変RNAの皮内投与は、早期の時点(第3日から第6日)の間の創傷閉鎖の平均パーセントを、ビヒクル対照と比較して有意に増大させた。
【0330】
受傷後第0日と第3日の両方での、創傷周囲の近くの4つの注射部位に分けた100μg VEGF−A改変RNAの皮内投与は、第18日での肉芽組織の組織学的横断面におけるCD31+免疫染色の領域を、ビヒクル対照と比較して、また、最初の時点(第0日)でのVEGF−A改変RNAのみでの投与と比較して増大させる。
【0331】
受傷後第0日と第3日の両方での、創傷周囲の近くの4つの注射部位に分けた100μg VEGF−A改変RNAの皮内投与は、第6日での創傷内の酸素の量を、ビヒクル対照と比較して有意に増大させる。
【0332】
6.15.実施例15
インビボでのマウスの耳における血行動態および血管新生に対するヒトVEGF−A改変RNAの効果の光音響顕微鏡分析
この実験では、健康なマウスの耳において、ヒトVEGF−A改変RNA(VEGF−A改変RNA)に対する急性および慢性の血管反応をインビボで監視した。血管直径、ヘモグロビンの酸素飽和度(sO
2)、血流、および血管新生に対するVEGF−A改変RNAの効果を動的に特徴付けるために、多パラメータ光音響顕微鏡分析(PAM)技術を適用した。VEGF−A改変RNA、組換えヒトVEGF−Aタンパク質、およびクエン酸/生理食塩水/ビヒクルに対する反応の、対照および定量比較を実施した。さらに、これらの反応の用量依存性を、高用量(100μg/耳)および低用量(10μg/耳)VEGF−A改変RNAによって誘導される結果を比較することによって探究した。これらの研究は、VEGF−A改変RNAが、注射後間もなく(30分から6時間)、注射部位の近くの局所的血流の顕著な上方調節を誘導することを示した。さらに、高用量VEGF−A改変RNAの注射の7から14日後の、有意な毛細血管形成および血管新生が確認されたが、低用量VEGF−A改変RNA、VEGF−Aタンパク質、またはクエン酸/生理食塩水を注射された耳では確認されなかった。さらに、VEGF−A改変RNAは、注射部位の下流の微小血管血流の著しいかつ空間的に制限された上方調節を誘導し、これは、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質に対する高度に濃縮された反応と明確に異なっていた。
【0333】
本研究の目的は、インビボで、健康なマウスの耳において多パラメータ光音響顕微鏡分析(PAM)技術を用いて、血管直径、ヘモグロビンの酸素飽和度(sO
2)、血流、および血管新生に対するVEGF−A改変RNAの効果を動的に特徴付けることであった。
【0334】
【表6】
【0335】
対照/参照化合物は、R&D Systems Inc,614 McKinley Place NE,Minneapolis,MN 55413,USAからの組換えヒトVEGF−A
165タンパク質である。
【0336】
【表7】
【0337】
【表8】
【0338】
実験手順
マウスの耳の撮像については、完全に非侵襲性であり、同じマウスを、血管直径、sO
2、血流、血管形成、および血管新生に対する様々な薬物の効果の経時的モニタリングのために繰り返し撮像することができる。試験薬物の皮内注射の前に、マウスの耳のベースライン画像を獲得した。次いで、薬物治療された耳を、6時間監視して、急性的な血管反応を捉え、また、第7日に再撮像して、慢性的な血行動態反応および血管新生の可能性を記録した。VEGF−A改変RNAによって誘導される血管リモデリングの持続性を調べるために、高用量VEGF−A改変RNAで治療されたマウスを、それぞれ、第14、21、および28日に、さらに撮像した。
【0339】
詳細なPAMイメージングプロトコルは、次の通りであった:マウスを、3%イソフルラン吸入ガス(典型的な流速1から1.5L/分、体重に依存)を満たした小さな容器内で麻酔した。実験全体を通して、1.5%イソフルランで、麻酔を維持した。正常な生理学的状態にマウスを維持するための吸入ガスとして、医療用空気を使用した。純粋な酸素は、静脈血酸素化を、正常な生理学的レベルよりも高く上昇させ、PAM測定を偏らせる
ので、適切ではない。続いて、マウスを、麻酔容器から、すぐ近くの定位固定台に移した。マウスの体温を、加熱パッドを使用して37℃に維持した。定位固定台に置いた後、超音波検査用ゲルの層を、撮像されることとなる耳の表面に適用した。ゲルの内側への気泡の閉じ込めを避けることに注意を払った。次いで、耳を、脱イオン水を満たした水槽の下方に入れ、超音波検査用ゲルが、水槽の底と穏やかに接触し、ポリエチレンの薄膜によって被覆されるまで、ゆっくりと引き上げた。乾燥および偶発的なレーザー損傷を予防するために、軟膏を眼に適用した。次いで、音響レンズが水槽に浸されるまで、撮像する頭部を下ろした。レンズ下に閉じ込められた気泡はいずれも除去した。したがって、この構成は、水面から底まで垂直に、音響レンズ、水槽、超音波検査用ゲル、およびマウスの耳を含んでいた。次いで、米国国家規格協会(American National Standards Institute)のレーザー安全標準(すなわち、20mJ/cm2)内で作動することを確実にするために、レーザーフルエンスを確認した。画像獲得後、マウスの耳を、脱イオン水で清浄し、自分のケージに戻した。
【0340】
多パラメータPAMによって、3つの血管パラメータを同時に獲得した(Ning et al.,Simultaneous photoacoustic microscopy of microvascular anatomy, oxygen saturation, and blood flow.Opt Lett,2015,40:910−913)。血管解剖学的構造は、各採取位置でのPAMによって獲得された生の光音響シグナルのヒルベルト変換によって直接的にもたらされた。血管sO
2は、その光吸収スペクトルを介して酸素化および脱酸素化ヘモグロビンを区別するために、2波長励起で獲得された。血流速度は、532nmで得られた100個の連続的なAライン(A−line)を相関させることによって定量化した。相関分析についての時間窓を、10msにセットした。コンピュータ算出された相関係数の時間経過は、二次指数的減衰に従い、血流定量化のために、血流速度と線形比例する減衰定数を抽出した。さらに、個々の血管の平均直径、sO
2、および血流を、文書化された血管セグメンテーションアルゴリズム(Soetikno et al.,Vessel segmentation analysis of ischemic stroke images acquired with photoacoustic microscopy.Proc.SPIE,2012,8223:822345)の助けを借りて抽出した。各群内の異なる動物の測定を、統計解析のために組み合わせた。
【0341】
データ分析
示された結果は、平均値±SDである。クエン酸/生理食塩水、VEGF−A改変RNA、およびヒト組換えVEGF−タンパク質で治療されたマウス間の量的差異を調べるために統計解析を実施するための反復測定のための混合モデルを使用した。共分散行列の自己回帰構造をもつ個々の切片モデルを、ベースラインからの直径または体積流量の差に適合させた。さらに、ベースライン血管直径または体積流量を、共変数として使用して、あらゆる差を補正した。
【0342】
結果
3匹の健康なマウスの耳に、高用量のVEGF−A改変RNAを皮内注射した。血管構造、sO
2、および血流の、代表的な経時的PAM画像を、
図39に示す。注射後間もなく(すなわち、最大6時間)、3匹すべてのマウスにおける注射部位の周囲で、血管sO
2および血流の有意な上方調節が観察された。第7、14、21、および28日に反復的に得られたPAM画像は、以前に上方調節されたsO
2が、徐々に退行するのに対して、血流はベースラインよりも上に維持されたことを示した。3つの高用量VEGF−A改変RNA注射された耳のうちの2つでは、血流の上方調節維持に加えて、著しい血管形成および血管新生が観察された(
図40)。PAM画像におけるこれらの新生血管の強い対比は、これらが、赤血球で高度に覆われていることを暗示する。具体的には、
図40に見ら
れるように、新生血管は、の14日後に現れ、第21日に退行し、第28日に「消失する」。同様に、第2の高用量マウスでは、新生血管は、第7日に現れ、注射の14日後に「消失する」。新生血管の「退行/消失」は、血液灌流の喪失が原因である可能性が高かった。
【0343】
低下させたVEGF−A改変RNA投与量が、血流上方調節および血管新生を誘導することができるかどうかを探究するために、より低い用量のVEGF−A改変RNA(30μgおよび10μg)に対する血管反応を評価した。30μg VEGF−A改変RNAを注射された1匹のマウスでは、sO
2および血流の持続性がより低い上方調節が誘導され、これは、第14日でのベースラインに戻っていた。注射部位の周囲に毛細血管形成をもたらす能力はあるが、顕著な血管新生は観察されなかった。2匹のマウスにおいてVEGF−A改変RNA投与量をさらに低く(10μgまで)低下させることは、さらに損なわれた血管反応をもたらした(
図41)。具体的には、血管sO
2および血流の急性的な上方調節は、やや弱く、持続性がより低く(第7日でのベースラインに戻っていた)、注目すべき血管新生も血管形成も観察されなかった。これらの結果は、VEGF−A改変RNAに対する血管反応の用量依存性をさらに裏付ける。
【0344】
比較のために、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質に対する血管反応を、3匹のマウスにおいて研究した(
図42)。高および中用量VEGF−A改変RNAと同様、VEGF−Aタンパク質は、7日の監視期間全体を通して、局所的sO
2および血流の上方調節維持を誘導した。しかし、非常に穏やかにすぎない毛細血管形成が、第7日の3匹のマウスのうちの2匹において観察され、新生血管は、すべての場合に観察されなかった。
【0345】
最後に、クエン酸/生理食塩水に対する血管反応を調べるために、3つの対照実験を実施した。
図43に示す通り、局所的sO
2および血流は、注射後間もなく、おそらく間質液圧の上昇が原因で、わずかに上方調節され、第7日までにベースラインレベルに戻った。血管形成も、血管新生も、炎症反応も観察されなかった。
【0346】
血管セグメンテーションを使用して、高用量VEGF−A改変RNA、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質、およびクエン酸/生理食塩水に対する血管反応を、さらに定量的に比較した。これを
図44に示す。VEGF−A改変RNAおよびVEGF−Aタンパク質の注射後間もなく、急性的で顕著な血管拡張および血流上方調節が観察された。クエン酸/生理食塩水注射に応答して、おそらく間質液圧上昇の結果、血管径および血流における穏やかな反応も観察された。反応としての、ベースライン(注射前)からの血管径(4本の血管の平均)の変化を、治療、および対照とみなされるクエン酸/生理食塩水に対して、経時的に比較した。治療と時間との間の相互作用は、統計的に有意であった(p<0.0001)。すべての治療は、7日時点で互いに統計的に異なり(p=0.0009)、VEGF−A改変RNAおよびヒト組換えVEGF−Aタンパク質は、6時間時点で生理食塩水とは異なっていた(p=0.004)。ベースラインからの体積流量(4本の血管の平均)の変化について、同様の分析を実施した。体積流量の変化を、治療、および対照とみなされるクエン酸/生理食塩水に対して、経時的に比較した。治療と時間との間の相互作用は、統計的に有意であった(p=0.02)。第7日で、VEGF−A改変RNAおよびヒト組換えVEGF−Aタンパク質は、クエン酸/生理食塩水とは異なっていた(p=0.0015)。注射の7日後、クエン酸/生理食塩水群における血管径および血流は、ベースラインに戻り、これは、VEGF−A改変RNAおよびヒト組換えVEGF−Aタンパク質群における血管拡張維持および血流上方調節とは著しく対照的であった。
【0347】
局所注射に対する微小血管反応の空間依存性を、さらに探究した。この目的のために、50μmよりも大きい直径を有する主要なすべての血管を、血管セグメンテーションを使用して除去し、続いて、残った微小血管を、マイクロセグメント(microsegme
nt)に分けた。次いで、微小血管sO
2および血流を、個々のマイクロセグメントの値を重ね合わせることによって、組織レベルに拡大した。重ね合わせにおける重み付け係数は、マイクロセグメントの重心と、対象となる組織の位置との間の距離の逆数と定義した。VEGF−A改変RNAの注射の前(すなわちベースライン)に得られた組織レベル血流およびsO
2マップを、第7日に得られたものから引くことによって、注射部位の下流の微小血管血流の、著しい(すなわち約4倍)かつ空間的に制限された上方調節が示された(
図45)のに対して、微小血管sO
2の変化は穏やかであった(
図45)。対照的に、微小血管血流のVEGF−Aタンパク質によって誘導される上方調節は、あまり顕著ではなく、注射部位の周囲で、より濃縮されていた(
図46)が、微小血管sO
2の増大は、より著しかった。予想通り、生理食塩水注射に対する微小血管反応は、第7日に消失した(
図47)。
【0348】
結論
多パラメータ光音響顕微鏡分析および血管セグメンテーションを使用して、VEGF−A改変RNA、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質、およびクエン酸/生理食塩水の皮内注射に対する時間空間的血管反応を監視および比較した。VEGF−A改変RNAが、用量依存性の顕著かつ持続性の血管拡張、血流上方調節、毛細血管形成、および血管新生をインビボで誘導することができることが実証された。さらに、VEGF−A改変RNAは、注射部位の下流の微小血管血流の、著しいかつ空間的に制限された上方調節を誘導し、これは、ヒト組換えVEGF−Aタンパク質に対する高度に濃縮された反応と明確に異なっていた。
【0349】
6.16.実施例16
ウサギにおけるインビボでのVEGF−A改変RNAの皮内注射後のヒトVEGF−Aタンパク質の発現および検出
この実験では、クエン酸/生理食塩水中に配合されたヒトVEGF−A改変RNA(VEGF−A改変RNA)の皮内(id)注射後のウサギ皮膚におけるVEGF−Aタンパク質の産生を、微小透析技術を用いて研究した。
【0350】
2種の微小透析プローブを、4匹の麻酔したウサギのそれぞれの左後脚に、皮内挿入した。t=0時間(h)で、両方の微小透析プローブの回収時間を開始した。1時間後、VEGF−A改変RNAの4本の注射(各50μLおよび50μg)を、各微小透析プローブの近くに施した。t=2hで開始して、t=6hまで、1hごとに、タンパク質含有溶出液を、氷上で収集した。最後の溶出液収集後、注射部位を取り囲む領域を切除した。
【0351】
VEGF−A改変RNAの注射の3時間後、検出可能なレベル(218±155、平均±SEM)のヒトVEGF−Aが、8プローブのうちの3からの溶出液中に発見された。それに対応して、注射後4および5時間で、VEGF−Aタンパク質が、それぞれ、8プローブのうちの5、および8プローブのうちの5からの溶出液中に検出された。観察される濃度の大きな変動にもかかわらず;タンパク質レベルは、これらの時点でプラトー(それぞれ、369±217および360±203pg/mL)に達する傾向があった。
【0352】
ウサギ皮膚における微小透析技術を用いて、VEGF−A改変RNAの皮内注射の3から5時間後に、ヒトVEGF−Aタンパク質を検出することができることが結論付けられる。
【0353】
【表9】
【0354】
【表10】
【0355】
【表11】
【0356】
実験手順
麻酔および恒常性の維持:ニュージーランドホワイト(NZW)雄ウサギを、静脈内急速静注として投与されるケタミン(5mg/kg,Ketalar(登録商標),Pfizer AB,Sollentuna,Sweden)およびメデトミジン(0.15mg/kg,Domitor(登録商標),Orion Pharma,Espoo,Finland)で麻酔し、続いて、それぞれ維持注入(11および0.33mg/kg*h)を行った。これらのウサギに挿管し、Servo人工呼吸器(900D,Siemens,Elema,Solna,Sweden)を用いて、室内空気と10% O
2との混合物で人工的に換気した。呼吸数を、30サイクル/分で一定に維持した。実験前および実験中、血液ガス分析器(ABL800 Flex,Radiometer,Copenhagen,Denmark)によって、動脈血中の血液ガスおよびpHを測定し、必要であれば、一回換気量を調整することによって、ウサギにとっての正常な生理的範囲内に入るように調整した。直腸内温度は、動物を覆うことによって、および外部加熱によって、38から39.5℃に維持した。
【0357】
動物準備:anaestheticsの投与のための経皮的ポリエチレンカテーテル(Venflon 0.8mm,Viggo,Helsingborg,Sweden)を、左耳の辺縁静脈に挿入した。ポリエチレンカテーテル(Intramedic PE−90 Clay Adams,Becton Dickinson,Sparks,MD,USA)を、圧力トランスデューサ(Peter von Berg Medizintechnik Gmbh,Kirchseeon/Englharting,Germany)を用いる動脈圧記録のために、および血液採取のために、それぞれ右頸動脈に挿
入した。血圧測定からのシグナルを記録し、コンピュータおよびソフトウェア(PharmLab V6.6,AstraZeneca R&D Moelndal,Sweden)を使用することによって採取した。左後脚の毛を、電気カミソリを用いて除去した。
【0358】
微小透析:2つの100kDa線状(linear)微小透析プローブ(各実験においてAおよびBと名付けられる)(66線状カテーテルおよび66高カットオフ線状カテーテル、M Dialysis AB,Hammarby,Stockholm,Sweden)を、製造業者によって提供される指示書にしたがって、ウサギの左後脚の上部に皮内挿入した。微小透析プローブを、0.5μL/分生理的食塩水(9mg/mL、Fresenius Kabi AG,Bad Homburg,Germany)で灌流し、溶出液試料を、あらかじめ秤量した0.5mL管内で氷上で収集した(Protein LoBind,Eppendorf AG,Hamburg,Germany)。透析膜と収集管出口との間のデッドスペースは、約1.5μLであった。各溶出液の体積を決定し、2%ウシ血清アルブミン(BSA,A7979,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS pH7.4、gibco(登録商標)、life technologies(商標),Paisley,UKによる)に入れたものを、1:1条件で添加した。試料を、分析するまで−80℃で保管した。
【0359】
実験プロトコル:実験設計を、
図48Aに例示する。t=0時間で、両方の微小透析プローブに対する回収期間を開始した。1時間後(すなわちt=1時間)、回収溶出液を収集し、続いて、微小透析−プローブ部位での4本の注射を、
図48Bに表す通りに実施した。t=2hからt=6hまで1hごとに、タンパク質含有溶出液を収集し、上に記載した通りに処理した。研究終了時に動物を、致死静脈内用量のペントバルビタールナトリウム(Allfatal vet,Omnidea AB,Stockholm,Sweden)によって生命終焉させた。
【0360】
微小透析溶出液中のヒトVEGF−Aタンパク質の評価:微小透析溶出液試料における発現されたヒトVEGF−A濃度の決定のために、Gyrolabプラットフォームを使用した。Gyrolabは、微細構造ウェル(Gyros,Uppsala,Sweden)を伴うアフィニティフロースルーフォーマットを使用する。ストレプトアビジンコーティング材料(Gyros)を用いるアフィニティ捕捉カラムを含有する96微細構造ウェルからなるGyrolab bioaffy 1000 CDを使用した。最初に、ヒトVEGF Aに対するビオチン標識された捕捉ポリクローナル抗体(AF−293−NA,R&D systems,Abingdon,UK)を、ストレプトアビジンカラム(ここでは、試料は回転重力によってフロースルーし、分析物は抗体上に捕捉される)に固定した。次いで、ヒトVEGF−Aに対するAlexa標識された検出抗体(R&D systems)を、カラムをフロースルーさせ、リガンドの定量化のために蛍光強度を使用した。5パラメータ線形適合を使用して標準曲線を作成し、その吸光度にしたがって、標準曲線から試料濃度を算出した。16.7pg/mLから12170pg/mLの範囲の標準曲線は、MSD希釈剤9(Meso Scale Discovery,Rockville,Maryland,USA)に入れたヒトVEGF−A165(293−VE−010,R&D systems)を用いて準備した。品質管理は、MSD希釈剤9に入れたヒトVEGF−A165(National Institute for Biological Standards and Control,Hertfordshire,UK)のWHO標準から準備した。標準、QC、および試料はすべて、分析前にRexxip HN−max(Gyros)と1:1混合した。
【0361】
データ分析:結果は、平均±SEMとして示す。
結果
4匹のウサギ(2つのプローブ、それぞれAとBを挿入)からの個々のヒトVEGF−Aタンパク質レベルを、
図49に、平均±SEMとして示す。VEGF−A改変RNAの注射の3時間後、検出可能なレベル(218±155、平均±SEM)のヒトVEGF−Aが、8プローブのうちの3からの溶出液中に発見された。それに対応して、注射後4および5時間で、VEGF−Aタンパク質が、それぞれ、8プローブのうちの5、および8プローブのうちの5からの溶出液中に検出された。観察される濃度の大きな変動にもかかわらず、タンパク質レベルは、これらの時点でプラトー(それぞれ、369±217および360±203pg/mL)に達する傾向があった。
【0362】
結論
微小透析技術を用いて検出されるヒトVEGF−Aタンパク質は、VEGF−A改変RNAの皮内注射の3から5時間後のウサギ皮膚において発現される。
【0363】
6.17.実施例17
インビボでの、心筋梗塞を施されたブタにおけるヒトVEGF−A改変RNAの心臓内注射後の、毛細血管および細動脈密度および線維症に対する効果
毛細血管および細動脈密度および線維症に対する、VEGF−A改変RNA(1もしくは10mg)、クエン酸/生理食塩水(2mL)、または偽処置の効果の評価を、Lanyuミニブタにおいて行った。
【0364】
毛細血管および細動脈密度アッセイ:研究停止後、梗塞周囲領域からの組織試料を、4%パラホルムアルデヒド中で4℃で少なくとも24時間固定し、次いで、パラフィン包埋した。切片作製、脱パラフィン、および再水和後、10mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6)中で10分間煮沸することによって、抗原賦活化を実施した。次いで、切片を抗心筋トロポニンI(1:200,DSHB,Iowa,IA,USA)、抗イソレクチン(1:100,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)、およびSM−22α(1:200,Abcam,Cambridge,UK)と共に一晩インキュベートした。3回洗浄した後、切片を、関連するAlexa Fluor 488または568抗体(Invitrogen)と共にインキュベートした。核を、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI,Sigma−Aldrich,St. Louis,MO,USA)で染色した。マウントした後、毛細血管および細動脈密度を、梗塞周囲領域に沿う、ランダムに選択された3つの領域で撮影された画像(200×倍率)から手作業で数えるおよび平均することによって算出した。
【0365】
線維症測定:梗塞/梗塞周囲領域から離れた試料を、梗塞周囲領域試料について上に記載した通りに処理した。線維症を、コラーゲン沈着の関数として、マッソントリクローム染色を使用して決定した。各切片に対して明視野顕微鏡法(200×倍率)を使用して、ランダムに選択された3つの領域からの画像を撮影し、次いで定量化(AxioVision,Zeiss,Munich Germany)し、平均した。
【0366】
結果
図50Aおよび
図50Bは、心筋梗塞の誘発の2か月後に評価される、梗塞周囲(境界)域における、毛細血管および細動脈密度に対する、偽処置、またはVEGF−A改変RNA(1もしくは10mg)またはクエン酸/生理食塩水(2mL)の注射の効果を示す。見てわかるように、VEGF−A改変RNAの注射は、クエン酸/生理食塩水の注射に対して、用量依存性かつ統計的に有意な、毛細血管および細動脈密度の増大と関連していた。
【0367】
クエン酸/生理食塩水に対するVEGF−A改変RNAの注射は、梗塞を起こした領域から離れた、回収された組織試料におけるコラーゲン含有量(すなわち、線維症)を統計
的に有意に和らげることが実証された(
図50C)。
【0368】
6.18.実施例18
インビトロでのヒトVEGF−A改変RNAトランスフェクション後のVEGF−Aタンパク質産生の時間経過
VEGF−A改変RNAトランスフェクション後のヒトVEGF−Aタンパク質産生の時間プロフィールを調べるために、10,000個のヒト大動脈平滑筋細胞(hAoSMC、Lonza,Bazel,Switzerland)または人工多能性細胞から誘導された、20,000個のヒト心筋細胞(hiPS−CM、Cellular Dynamics,Madison,WI,USA)を、それぞれ、96ウェルプレート内、増殖因子を添加した平滑筋細胞基本培地(SmGM−2,Lonza)または完全に添加された心筋細胞維持培地(Cellular Dynamics)に播種した。翌日、無血清培地中でトランスフェクションを行い、250ng VEGF−A改変RNAを、製造業者の指示書にしたがってリポフェクタミン2000(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)と混合し、細胞に添加した。水と混合したリポフェクタミン2000を、トランスフェクション対照として使用した。培地を、8時間ごとに新鮮な培地で置き換え、異なる時点でELISAを用いて、上清中のヒトVEGF−Aタンパク質を測定した。
【0369】
VEGF−A改変RNAから産生されたヒトVEGF−Aタンパク質の大きさは、ヒト大動脈平滑筋細胞とヒト心筋細胞の両方において、トランスフェクションのおよそ8時間後に最大になり、その後、低レベルに減少した(
図51)。トランスフェクション後32時間では、まったくまたは非常に低レベルのタンパク質しか検出されなかった。
【0370】
6.19.実施例19
マウスにおける心筋梗塞後の心外膜由来細胞増殖の時間経過
雄のC57BL/6マウスを、イソフルランで麻酔し、挿管し、人工呼吸器につないで、空気および酸素(80/20%)を添加した2.5から3%イソフルランを用いて人工的に換気した。直腸内温度を、手術台の加熱および加熱灯によって、37.5℃に維持した。続いて、胸部を剃毛し、心拍数およびECGの評価のために、ECG針電極を足に挿入した。皮膚を切開し、胸部筋肉を注意深く切り離し、胸部開創器挿入のために第4肋間腔を開いた。心膜を優しく切開し、永久的閉塞のために、左心房のすぐ下の左前下行枝の周りに7−0絹糸結紮を行った。目視検査(糸の遠位の左室の蒼白)およびECGのST上昇を介して虚血を確認した。対照動物は、動脈閉塞を施さなかった。次いで、6−0吸収性縫合糸で肋骨および皮膚を閉じた。鎮痛剤(ブプレノルフィン、0.05mg/kg、10mL/kg)を皮下に施し、マウスを、電気加温パッド上のそのケージ内で回復させた。マウスを、第3日、第7日に、および心筋梗塞(MI)後第14日に屠殺した。心臓を切除し、次いで、生理食塩水中ですすいだ後、ホルマリン固定を行った。心外膜由来細胞(EPDC)活性化を、免疫組織化学を介してウィルムス腫瘍タンパク質1(Wt−1)発現によって評価した。
【0371】
ホルマリン固定された心臓を、心尖から心臓の底部まで、横方向に1mm切片に薄切りにした。これらの心臓切片を、エタノールおよびキシレン中で脱水し、パラフィンに包埋し、最後に4μm切片に切断した。EPDCのマーカーとしてのWt−1に対する免疫組織化学を、Wt−1に対するウサギポリクローナル抗体(希釈1:200,Calbiochem,San Diego,CA,USA)を使用して、Ventana Discovery XT自動染色装置(autostainer)内で実施した。試薬はすべて、Ventana製品(Roche,Basel,Switzerland)であった。Wt−1陽性(Wt−1
+)細胞を、盲検的に、手動スコアリングシステムを用いて評価した。スコアは、0;Wt−1
+細胞なし、1;極めて少ない数のWt−1
+陽性細胞、2;心臓内に特定のレベルで位置する単一層の、少数のWt−1
+陽性細胞、3;心臓内にいくらかのレベルで位置する中程度の数のWt−1
+陽性細胞、および4;心臓内にいくらかのレベルで位置する厚い層の多数のWt−1
+陽性細胞と定義した。
【0372】
対照、すなわち梗塞を起こしていない心臓の心外膜には、少数のWt−1
+EPDCが見られた(
図52A)。MIの誘発後、Wt−1
+EPDCは、活性化されて、数が増え、MI後7日にピークに到達する(
図52B)。
【0373】
7.配列表
7.1.配列番号1:実施例内で使用されるVEGF−Aをコードする改変RNA
【化1】
ここでは:
A、C、G、およびU=それぞれAMP、CMP、GMP、およびN1−メチル−シュードUMP、
Me=メチル
p=無機リン酸塩
【0374】
7.1.配列番号2:ヒトVEGF−AアイソフォームVEGF−165のアミノ酸配列
【化2】
【0375】
【表12】
【0376】
【表13】
【0377】
【表14】
【0378】
【表15】
【0379】
【表16】
【0380】
【表17】
【0381】
【表18】
【0382】
【表19】